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造血器腫瘍領域の外来化学療法レジメン
横浜市立大学附属市民総合医療センター 薬剤部
山口 智子
第3回薬薬連携ワーキングセミナー
2018年11月29日
本日の内容
1.ホジキンリンパ腫(HL)
①ABVD療法
2.非ホジキンリンパ腫(NHL)
①CHOP療法
②リツキシマブ(RTX)療法
③GDP療法
④ベンダムスチン±リツキシマブ(RB)療法
3.参考文献
4.さいごに
入院にて化学療法導入基本2コース目から外来へ
2
ホジキンリンパ腫
3
ホジキンリンパ腫
•治療目的:根治
•比較的予後良好
•化学療法(ABVD療法)および放射線療法が極めて有効
※IRFT:化学療法併用時に使用される照射方法で、治療開始前に病変が存在した領域への放射線治療
限局期(StageⅠ、Ⅱ)
ABVD療法×2/4/6コース
+IFRT
自家移植(<65歳)
救援療法
進行期(StageⅢ、Ⅳ)
ABVD療法×6/8コース
PRの場合はIFRT追加を考慮
非寛解再発
ブレンツキシマブ べドチン(外来)、ニボルマブ(HLに対し当院未使用)ESHAP(入院)、GDP(外来) など
4
適応
限局期(non-bulky stageⅠA、ⅡB)および
進行期(stageⅢ、Ⅳ)ホジキンリンパ腫
スケジュール
ABVD療法
薬剤名 投与量投与
day1
day2-14
day15
day16-28
ドキソルビシン 25mg/㎡ div
お休み お休み
ブレオマイシン 10mg/㎡(max:15mg/body)
div
ビンブラスチン 6mg/㎡(max:10mg/body)
div
ダカルバジン 375mg/㎡ div
5
投与の流れ
ABVD療法
パロノセトロン+デキサメタゾン(9.9㎎)
ビンブラスチン
ラクテック
ダカルバジンドキソルビシン制吐剤
ブレオマイシン
15分 15分 15分 15分 180分
イメンド内服
輸液バック、ルートをアルミで遮光
6
主な副作用(All grade)*
• 骨髄抑制
• 悪心・嘔吐(33%)
…高度催吐性リスクに分類
化学療法誘発悪心・嘔吐(CINV)リスクを評価
→高リスクの場合はオランザピン追加を検討
• 脱毛(24%)
<ドキソルビシン>心機能異常
<ブレオマイシン>肺毒性、一過性の発熱
<ビンブラスチン>末梢神経障害、便秘
<ダカルバジン>血管痛
…光分解物が激しい血管痛の原因となる
ABVD療法
*N Engl J Med, 327: 1478-1484, 1992 7
注意事項、モニタリングポイント• ブレオマイシンの総投与量は300mg/bodyを超えない• ブレオマイシンとG-CSF併用により肺毒性のリスク上昇…G-CSFの予防投与は行わない血液毒性の程度に応じ減量・延期
• アンスラサイクリン系の累積投与量に注意…治療開始前にEF(左室駆出率)の確認乳癌や卵巣癌の既往、他院治療歴などを確認自覚症状(頻脈、労作時呼吸困難、胸痛、下肢浮腫)の確認
• ドキソルビシンによる尿・汗の着色• ビンブラスチンによる末梢神経障害のモニタリング…文字が書きにくい、ボタンがかけにくい、箸が持ちにくい、飲み込みにくい、歩行困難、といった症状は現れていないか
• 排便状況、下剤の調節方法の確認• ダカルバジンによる血管痛対策
ABVD療法
8
非ホジキンリンパ腫
9
びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫(DLBCL)
DLBCLR-CHOP療法×6-8コース±IFRT
移植検討救援療法
経過観察CR
PR以下
R-ESHAP(入院)、R-DeVIC(入院)R-GDP(外来) など
PD
•臨床分類:中悪性度(月単位で進行)
•治療目的:治癒
• NHL全体の約1/3を占める最も頻度の高い病型
•標準療法はR-CHOP療法
ドキソルビシンをピラルビシンに変更したTHP-COP療法(外来)はCHOP療法と比較し、治療効果は同等で心障害が少ない
CR、PR<65歳
11
濾胞性リンパ腫(FL)
FLR-化学療法→RTX維持
or
RTX単剤移植検討化学療法±RTX
RB(外来)、R-CHOP(外来) など
再発 適応あれば
RB(外来)R-CHOP(外来) など
•臨床分類:低悪性度(年単位で進行)
•治療目的:延命
• 5年間で約10%が中悪性度リンパ腫へ形質転換する
• 「オビヌツズマブ(ガザイバ®)」が2018年8月に承認
→infusion reaction問題なければ2投目より外来へ
低腫瘍量の場合
12
マントル細胞リンパ腫(MCL)
MCLⅡ,Ⅲ,Ⅳ期
移植
移植適応あり
1st line化学療法移植適応
なし
1st line化学療法
進行/再発 2nd line化学療法
進行/再発
R-HyperCVAD/MA(入院)、R-CHOP(外来)、R-DHAP(入院) など
R-CHOP(外来)、RB(外来)、VR-CAP(外来) など
R-CHOP(外来)、RB(外来)、DLBCLに準じた救援療法、イブルチニブ(外来) など
•臨床分類:低-中悪性度(年-月単位で進行)
•治療目的:治癒・延命
• NHL全体の約3%程度、初発時に9割が進行期
•標準治療が確立されていない
13
適応
DLBCL、FL(Grade3)など
※中悪性度非ホジキンリンパ腫に対する基本レジメン
スケジュール
CHOP療法
薬剤名 投与量 投与day1
day2
day3
day4
day5
~day21
シクロホスファミド 750mg/m2 div
ドキソルビシン 50mg/m2 div
ビンクリスチン 1.4mg/m2
(max:2mg/body)div
プレドニゾロン100mg/body分2(朝・昼食後)
po お休み
お休み
14
投与の流れ(day1)
CHOP療法
day1セット処方
・プレドニゾロン(5mg錠) day1~5
ビンクリスチン シクロホスファミドドキソルビシン制吐剤
パロノセトロン
点滴終了後、院外薬局へ→day1のプレドニゾロンは点滴後に朝昼分まとめて内服
15分 15分 15分 60分
イメンド125mg内服…1コース目の悪心状況による
ラクテック
15
主な副作用(All grade)*
• 骨髄抑制(→感染症:65%)
…投与後10~14日でnadir(好中球最低値)を示す
• 悪心・嘔吐(48%)
…高度催吐性リスクに分類されるが実臨床では制吐剤として
2剤併用が行われる傾向があり、当院でもルーチンでのイメンド
併用は行っていない
• 脱毛(97%)
<シクロホスファミド>出血性膀胱炎
…飲水励行を指導
<ドキソルビシン>心機能異常(35%)
…EF(左室駆出率)、既往歴の確認
<ビンクリスチン>末梢神経障害(54%)、便秘(41%)
<プレドニゾロン>不眠、胃部不快感、高血糖
CHOP療法
*N Engl J Med, 2002, 346, 235-4216
注意事項、モニタリングポイント• 当院では70歳以上の方は年齢を考慮して80%doseへ減量• 発熱性好中球減少症(FN)発症率:17~50%…治癒を目指した治療の場合、薬剤の減量をせずにG-CSFの予防投与を行う
• CINVリスクが高い方にはイメンドの追加を提案…イメンドとの相互作用を考慮したPSLの減量は行わない
• 赤色尿と出血性膀胱炎の区別• アンスラサイクリン系の累積投与量に注意…治療開始前にEF(左室駆出率)の確認乳癌や卵巣癌の既往、他院治療歴などを確認※8コース施行でドキソルビシン総投与量400mg/㎡
• 末梢神経障害のモニタリング…蓄積性・用量依存性、Grade2で減量を検討
• 排便状況、下剤の調節方法の確認
CHOP療法
17
適応
• CD20陽性のB細胞性非ホジキンリンパ腫 など
スケジュール
リツキシマブ療法
薬剤名 投与量 投与 day1
リツキシマブ 375mg/m2 div
※他の抗がん剤と併用する場合は、併用するレジメンの投与間隔に合わせて1サイクルあたり1回投与※維持療法に用いる場合は投与間隔は8週間を目安とし、最大投与回数は12回
18
投与の流れ
リツキシマブ療法
※リツキシマブ投与速度について<初回投与時>…入院・50mL/hrより開始し、以降30分ごとに50mL/hrずつ、最大400mL/hrまで速度を上げることが可能
<2回目以降>…外来・100mL/hrより開始し、以降30分ごとに100mL/hrずつ、最大400mL/hrまで速度を上げることが可能
リツキシマブ
約3時間
点滴開始30分前に・カロナール(200)2錠・ポララミン(2)1錠を内服
19
主な副作用• infusion reaction
• B型肝炎の再燃(HBs抗原、HBs抗体、HBc抗体の確認)
• 腫瘍崩壊症候群
• 遅発性の好中球減少
注意事項、モニタリングポイント• 特に重篤なinfusion reactionの約80%は初回投与時に発現
• 投与速度に注意が必要(前スライド)
• 前投薬として、投与30分前にカロナール、ポララミンを内服
• 当院では、腫瘍崩壊症候群やinfusion reactionのリスクを
考慮しCHOP療法後、day15を目安にリツキシマブを投与
• 維持療法では投与間隔は8週間を目安、保険適応は計12回
リツキシマブ療法
20
適応
再発難治性B細胞性リンパ腫など
スケジュール
GDP療法
薬剤名 投与量 投与day1
day2-4
day5-7
day8
day9-21
シスプラチン 75mg/m2 div お休み
ゲムシタビン 1000mg/m2 div
33mg/body div
40mg/body分2(朝・昼食後)
po
デキサメタゾン
お休み お休み
お休み
21
投与の流れ
<day1>
<day8>
GDP療法
day1セット処方
・イメンド(80mg) day2~3・デカドロン(4mg錠) day2~4
ラクテック硫酸Mg
制吐剤
ラクテックマンニットール シスプラチン 生食 ゲムシタビン
制吐剤
生食
ゲムシタビン
15分 60分 45分 60分 30分 30分 60分
15分 30分ウォッシュアウト
パロノセトロン+デキサメタゾン(33mg)
グラニセトロン
イメンド内服
22
主な副作用(All grade)*
• 骨髄抑制(→FN:18%)
• 悪心・嘔吐(66%)
…day1は高度リスク、day8は軽度リスクに準じる
• 脱毛
<シスプラチン>腎機能障害、神経障害、高音域聴力障害
<ゲムシタビン>血管痛
<デキサメタゾン>不眠、胃部不快感、高血糖
注意項目、モニタリングポイント• シスプラチンによる腎毒性予防のために、補液追加・利尿剤使用・飲水励行の指導
• ゲムシタビンは30分で投与
• 血管痛対策(ホットパックの使用、GEM補液をブドウ糖液ヘ変更)
GDP療法
*Med Oncol, 29: 2409-2416, 201223
適応
•低悪性度B細胞性非ホジキンリンパ腫
• マントル細胞リンパ腫(MCL)
•慢性リンパ性白血病(CLL)
スケジュール
<ベンダムスチン+リツキシマブ療法>
ベンダムスチン±リツキシマブ療法
薬剤名 投与量 投与 day1 day2 day3-28
リツキシマブ 375mg/m2 div
ベンダムスチン 90mg/m2 div お休み
お休み
※リツキシマブはday1またはday2に投与
24
ベンダムスチンの用法用量
ベンダムスチン±リツキシマブ療法
①低悪性度B細胞性非ホジキンリンパ腫
(1)抗CD20抗体併用 90mg/㎡(day1-2)、28days/サイクル
(2)単剤投与 120mg/㎡(day1-2)、21days/サイクル
②マントル細胞リンパ腫
(1)未治療リツキシマブとの併用において90mg/㎡(day1-2)、28days/サイクル
(2)再発難治性 120mg/㎡(day1-2)、21days/サイクル
③慢性リンパ性白血病
100mg/㎡(day1-2)、28days/サイクル
※トレアキシン®適正使用ガイド 25
投与の流れ(リツキシマブ併用の場合)
<day1>
<day2>
ベンダムスチン±リツキシマブ療法
リツキシマブ
約3時間
制吐剤
ベンダムスチン
15分
ラクテック
1時間
制吐剤
ベンダムスチン
15分
ラクテック
1時間
点滴30分前に・カロナール(200)2錠・ポララミン(2)1錠を内服
生理食塩液+デキサメタゾン(3.3mg)
パロノセトロン+デキサメタゾン(3.3mg)
※リツキシマブはday1またはday2に投与26
主な副作用(All grade)*
• 骨髄抑制(→感染症:36.8%)
• 悪心嘔吐(38%)
…中等度催吐性リスクに分類
<ベンダムスチン>発熱、皮疹(16.1%)、血管痛(29%)
<リツキシマブ>infusion reaction、B型肝炎の再燃
注意事項、モニタリングポイント• 適応により用法用量が異なる(前スライド参照)
• リンパ球減少により日和見感染のリスクが増加するため、ST合剤
やアシクロビルによる予防が推奨される
• 血管痛出現の可能性を事前に説明
…重症化する場合にはCVポートの使用を考慮
ベンダムスチン±リツキシマブ療法
*Cancer Sci, 101: 2059-64, 201027
造血器腫瘍診療ガイドライン
悪性リンパ腫治療マニュアル
抗悪性腫瘍コンサルトブック
がん化学療法レジメンハンドブック
G-CSF適正使用ガイドライン
参考文献
28
Take home message
いつも電話やトレーシングレポートでの貴重な情報提供を
ありがとうございます
造血器腫瘍は化学療法による奏功が期待できるため、
QOLを維持しながら治療が継続できるようサポートを
行うことが大切と考えています
患者情報を薬局および病院間で共有
することで、患者さんに安全でより質の高い
医療を提供していきましょう
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