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~透析患者を支えるために~
上越地域透析医療ハンドブック作成検討会
2020年3月
透析患者を担当する介護支援専門員のためのハンドブック
○平成24年度に県立中央病院で透析患者を担当して
いる介護支援専門員の方々と事例検討会を行いました。
○3回に渡る検討会の中で、透析医療の基礎知識の学び
を深めたいという要望がありました。
○このような意見を受けて、平成25年6月から透析を実施
している管内の4病院の透析担当看護師と協力して介護
支援専門員向けのハンドブックを作成しました。
○平成26年10月には、管内の6病院の透析担当看護師と
協力し災害対策を追加しました。
○今後も必要に応じて内容を改定していく予定です。
どうぞ、日ごろの業務に、ご活用ください。
介護支援専門員のためのハンドブック作成にあたって
腎臓の働き
・老廃物の排泄 ・水分の調整
・電解質の調整 ・血圧の調整
・ホルモン分泌(造血に作用)
・ビタミンDの活性化(Caの吸収・骨の代謝を促す)
1 透析療法とは
腎機能が、10%以下になると・・・
透析・移植が必要
・腎臓の機能は回復しません。機能を完全に補うこともできません。・生涯治療が必要です(週3回通院)。長く続けると合併症も・・・
①腕の血管(シャント)に針を刺し、ポンプを使って血液
を体の外に取り出す
②ダイアライザ(透析器)に通して
尿毒素や余分な水分を除去して体に戻す
2 血液透析とは
血液透析では、1分間に約200ミリリットルの血液を
ダイアライザに通している。
この血液量を確保するための太い血管が必要。
そのため腕の動脈と静脈をつなぎ合わせ血管を太くする
内シャント手術を行う。
3 シャントは大切
シャントは透析を受けるためになくてはならない。
命と同じ
食事指導
シャント管理指導
服薬指導
血圧管理指導
通院指導
4 透析導入時指導の実際
チェックリストに沿って、パンフレットを用いながら指導をすすめています。
4-① 食事指導
どうして食事指導が必要??
○主にリン・カリウム・塩分・水分について指導
低下した腎機能によって毒素や水分の排出がうまくできず、体の中に老廃物がたまりやすくなってしまうため
患者の食事状況を把握し、担当看護師や栄養士が指導をしている。本人は調理できるのか、誰が調理するのか、指示が守れているのかチェック!
4-② 水分と塩分
塩分を摂取しすぎると・・・
↓
のどが渇き、水がほしくなる
↓
しかし・・・
腎機能が低下しているので尿が
少なくなる
↓
体重増加・むくみ ひどくなると・・・
・水分指示量の確認
・塩分をおさえる
・麺類・汁物注意
・練り物(かまぼこ)
に注意
・外食も控える
管理の工夫
透析終了時の目標体重を「ドライウエイト」と呼びます。ドライウエイトは体内に過剰な水分がないときの体重です。血圧や胸のレントゲン写真で
心臓の大きさを測定して医師が決めます。体重が自己管理の目安に
なります。
4-③ リン
リンは体にちょうどよい量
が決まっており、主に腎臓
が調整を行なっている。
腎不全ではリンを排泄でき
ず、身体に蓄積されること
でホルモンバランスが乱れ、
最終的には骨がもろくなっ
てしまう。
・蛋白質摂取量を適切に
・乳製品・レバー・卵の取りすぎ注意
・干し魚のとりすぎ注意
・リン吸着薬の服用
管理の工夫
4-④ カリウム
カリウムは尿中に排出され調整
されるが、腎不全では排出され
ず血液中に貯まる。
・生野菜を取り過ぎない
(調理の工夫。切り方・茹で
こぼしなど)
・生の果物を取り過ぎない
(ジュースにも注意・缶詰の
利用)
・いも・豆・海藻にも多く含
まれ注意が必要
管理の工夫
4-⑤ シャント管理
音の聴取・毎日聴診器でシャント音を確認(聞こえなければ、すぐ病院へ連絡を)・触って血液の流れを確認することもあり。
閉塞予防シャントへの血液の流れを妨げない・シャントのある腕に、腕時計・輪ゴム・鞄をかけない。・そではしめつけない服を。・腕枕しない。
感染予防・透析のあった日は入浴できない・シャント付近の発赤・熱感・腫れの観察・傷ができたら、悪化しないよう処置
出血予防出血部位に清潔なガーゼまたはタオルをのせ、上から圧迫止血をする。
腎臓の機能を補う手段として、薬はなくてはならないもの
4-⑥ 服薬指導
透析患者さんによく使われる薬
①透析ではコントロールしきれないものを抑える
・カリウム抑制剤、リン吸着薬尿酸を下げる薬
②腎不全により不足するものを補う
・ビタミンD3製剤、造血剤③合併症の薬
・降圧剤、下剤、かゆみの薬(抗アレルギー剤)
④その他
・眠剤
高齢者が増え、薬の自己管理が困難になっています。普段、誰が薬を管理しているのか要確認!
※病院では、1か月分薬をお渡ししています。
(院外処方の病院と院内処方の病院があります)
※透析日にのむ薬と、非透析日にのむ薬があり、注意が必要です。
※サプリメント・市販薬を使う場合は医師に確認を。
4-⑦ 血圧管理指導
腎性の高血圧が多い↓
○体重調整
○内服状況確認
○薬の変更・調整
透析後の血圧低下↓
○シャント閉塞につながる危険も!
○下肢を高くし、安静にする
○体重調整
○内服確認
○薬の変更・調整
血圧手帳を渡し、記入してもらう。施設・訪問看護師からのノート記載も情報に。
*透析患者さんは体液貯留やレニンというホルモンによるものなどから、高血圧が起こりやすい状態になっています。また、常時低血圧の患者さんもおり、入浴サービスなどでストップがかからないように、日ごろの数値を把握しておくことや医師の指示を受けておくなどの対応が必要です。
4-⑧ 排便コントロール
なぜ便秘になるの?・カリウム制限による繊維不足・尿量減少時の飲水制限・便秘になりやすい薬の服用(リン吸着薬など)・糖尿病のための自律神経障害など
便秘対策
・状態に応じた下剤によるコントロールを行っていく。・食事の工夫・適度な運動・食物繊維のサプリメントや市販薬などは相談してください。
*医師や看護師と相談しながら行っていくことが大切!
4-⑨ 通院指導
週3回の通院手段は
・自分で運転(高齢者・軽度
麻痺のある人も・・・)
・家族より送迎
・バス
・福祉タクシー
・タクシー
・徒歩
・自転車
透析後は、体がだるく階段や
徒歩も負担となる。
通院交通助成の利用
(タクシー・福祉タクシー券)
自己負担額も多い!
4-⑩ 感染予防
透析室は多くの患者さんが治療を受けます。個人の感染症予防に努めましょう。
・発熱、下痢の症状がある時は、入室までに連絡をお願いします。
・集団感染予防のため、インフルエンザの予防接種を受けてください。(アレルギーのある方以外は全員受けましょう)
・うがい、手洗い、咳エチケットを心がけましょう。
5 緊急入院の実際
緊急入院の理由は・・・
○呼吸が苦しい(心臓・肺に水が貯まる)
○シャント・グラフト閉塞
○肺炎
※その他 出血に注意が必要!!
(透析患者さんは、透析中に血液を
固まらせない薬を使用している。
血をサラサラにする薬を飲んで
いる患者さんも多い。)
↓
脳出血・出血による四肢の腫れなど注意。
6 福祉制度
通院を支える制度
①人工透析患者通院交通費の助成対象:人工透析療法(血液透析療法)を受けるために週2回以上
通院する必要がある方
②タクシーの利用料金の助成・自動車燃料費の助成対象:身体障害者手帳1~3級所持者
精神障害者保健福祉手帳1,2級所持者療育手帳A所持者
※①・②とも所得制限があります。※制度の詳細は上越市福祉課に確認してください。(TEL:025-526-5111)
障害による制度(上越市の場合)
6 福祉制度
通院を支える制度
①人工透析患者通院交通費の助成対象:身体障害者手帳を所持し人工透析療法を受けている方で、
通院距離片道5km以上ある医療機関に公共交通機関や自家用車を利用して通院している方
②タクシーの利用料金の助成・自動車燃料費の助成対象:身体障害者手帳1~3級所持者
精神障害者保健福祉手帳1,2級所持者療育手帳A所持者
※制度の詳細は妙高市福祉介護課に確認してください。(TEL:0255-74-0015)
障害による制度(妙高市の場合)
6 福祉制度
通院を支える制度
介護タクシー「介護タクシー」と言っても、訪問介護等の介護保険と連動した形で
運営する介護タクシーなのか、一般のタクシーと同様に利用者を目的地まで移送するだけの介護タクシーかでサービス内容や料金に違いがある。介護タクシーの料金はタクシーの乗車前後の介助もプラスした「乗降
介助」という部分(介護保険部分)とタクシーに乗車している間の「移送」という部分がある。介護保険と連動した介護タクシーであれば「乗降介助」も「移送」も
両方算定できるが、連動していない介護タクシーであれば乗車している間の運賃しか請求できない。
介護保険等の制度
6 福祉制度
在宅療養が難しくなる場合
ショートステイや施設サービスを利用する場合
○受入れ施設が少ない→送迎、夜間の看護師不在、老健施設の医師では責任が持てない等様々な要因がある。
○受入れ条件は?→送迎、急変時に往診可能等条件が合えば可能な場合もある。介護度によっては介護保険の利用限度額を超えてしまい、利用者の自己負担額が多くなる場合もある。
施設にいた人でも透析開始すると施設にいられなくなる場合がある。
〈患者自身が行うよう病院では指導〉
患者や家族が透析している施設へ連絡をとる
透析患者であることを周りの人や行政に申し出る
避難先へは透析条件(手帳等)の書いてあるもの・薬を持参する
7 災害対策
透析施設と連絡をとる
〈災害時の透析体制〉
・県内の透析施設間で
調整する体制がある。
・大災害の場合は透析
不足(短時間)となる
場合があるので体調
へ配慮が必要
・避難所では特別な食
事は配慮できない。 平常時に利用者が行動できるか確認しておいて下さい
緊急時の透析に役立つ情報
7 災害対策
他の施設で透析を受ける場合
いつも持ち歩きたいもの
健康保険証 身体障害者手帳災害用患者カード
いつも飲んでいる薬
連絡先のメモ
公衆電話を使うときのコイン(10円玉・100円玉)
〈最新の情報〉最近のドライウエイト飲んでいる薬の名前感染症の有無
災害はいつどこで遭うかわかりません。
ご飯やパンなどの主食は、しっかり食べる
塩分、カリウム、水分は取り過ぎないように工夫する
必要な薬が継続して飲めるようにする
7 災害対策
災害時には病状悪化しないよう生活の工夫をすること
・発熱
・息苦しさ・手足のむくみ等
・頭痛・吐き気・全身のだるさ等
・脱力感・唇や手足のしびれ・不整脈等
・シャントの閉塞
・シャントの感染・出血等
いつもと違う症状がある時は早めに相談
・体重増加量の抑制(心不全防止のため)とカリウムの摂取制限(高
カリウム血症による心停止の防止)を守ってください。
・外来で処方された薬は服用してください。
7 災害対策
災害時の日常生活での注意点
・心不全、シャント閉塞が多くなる→ 水分の摂取を控える
・疲労の蓄積→ 睡眠を十分にとる
シャントが閉塞しないように保護する
・精神的ストレスによる諸症状が発生→ 早めに病院に連絡をする
災害時にはライフラインが止まり、食事内容も偏りがちになります。
災害後1~3ヶ月は、症状が悪化する人が多くなります。
○新潟労災病院
○上越総合病院
○けいなん総合病院
○県立中央病院
○渡辺内科医院
○森田内科医院
○上越地域振興局健康福祉環境部(事務局)
透析患者を担当する介護支援専門員のためのハンドブック作成委員会メンバー