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44 ビジネスコミュニケーション 2016 Vol.53 No.1 NTTコミュニケーションズ 技術開発部の取り組み 4.1J の推進 W3C における Web of Things の標 準化 Deep Learning による IoT データ 分析用 AI の開発 また、技術開発の推進のみならず、 知的財産に関しても下記の取り組み を実施している。 (1)事業戦略に基づく特許取得等の 推進、リスクマネジメント グローバル市場での競争、オール 仮想化時代の新たな技術で優位性を 発揮すべく、自社開発技術について 早期に特許取得の行うことで、自社 の市場優位性を高めることが有効で ある。「Global Cloud Vision」の下、 特にクラウド、セキュリティ、マネ ージド ICT 等などの分野において NTT Com が強みを発揮できるよう、 重点的に特許出願に取り組んでいる。 また、グローバル市場に進展する 際には、世界規模での知的財産侵害 リスクのマネジメントも重要となっ てくる。既に、海外グループ会社と も特許調査出願等の連携を進めて いるが、各社保有の「特許の見える 化」を行うなど更なる情報連携強化 術革新による新たな機会を捉え、 将来の市場の成長を取込むための 先行的な技術開発を推進すること である。この方針に基づき、技術 開発部では主に以下の開発に取り 組んでいる。 (1)NTT Com の事業戦略に基づく 技術開発 クラウドサービス向け SDN 制御 基盤の開発 セキュリティ独自防御技術の開発 DDoS 攻撃に対する防御技術 SAMURAI)の開発 UX デザイン手法を活用した自社 サービスの UX 改善 IoT データを含むビッグデータ解 析技術の開発 (2)オール仮想化、徹底的な自動化 のフロントランナーとして市場 をリードする技術開発 OpenStack の運用技術検証開発 トランスポート SDN の分散制御 コントローラー開発 クラウドネットワークリソース をシームレスに連携させるオー ケストレーション基盤開発 WebRTC プラットフォーム SkyWay)の開発 (3)将来のための先行的な技術開発 製造業界と連携したインダストリ 技術戦略部門は、NTT Com の事業 戦略に基づいた技術戦略の策定機能 として、グローバル市場での競争力 強化のため、技術開発戦略や知財戦 略を統合した新たな戦略を立案、推 進している。 また、適正な技術輸出管理を一元 的に行う技術輸出管理室を設置する と共に、NTT グループや社外の各 種団体、コミュニティと連携をする ための技術連携戦略を策定、推進す る役割も担っている。 開発業務を推進していく上で、3 つの方針を定めている。1 つ目は、 NTT Com のサービス戦略やオペレ ーション戦略等の事業戦略に基づ き、高度な技術スキルをベースとし たグローバル市場での競争に勝つた めの技術開発を推進すること。2 目 は、 オ ー ル 仮 想 化(Software Defined 化)、徹底的な自動化のフ ロントランナーとして、他社との差 異化を図り、市場をリードする技術 開発を推進すること。3 つ目は、技 技術開発部 技術戦略部門の取り組み 技術開発部ではグローバル市場での競争力強化のための技術開発の推進や、更に重要性の高まりつつある知的財産へ取り組むだけでなく、 NTT研究所やグループ会社、各種団体との連携の推進も行っている。それらをリードする技術戦略部門の活動を紹介する。 技術戦略部門の役割 技術開発部長 山下 達也 1 技術戦略 / 知財戦略 開発業務の取り組み方針 知的財産に関する取り組み

技術開発部 技術戦略部門の取り組み - bcm.co.jp・WebRTC プラットフォーム (SkyWay)の開発 (3)将来のための先行的な技術開発 ・製造業界と連携したインダストリ

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Page 1: 技術開発部 技術戦略部門の取り組み - bcm.co.jp・WebRTC プラットフォーム (SkyWay)の開発 (3)将来のための先行的な技術開発 ・製造業界と連携したインダストリ

44 ビジネスコミュニケーション 2016 Vol.53 No.1

特 集

NTTコミュニケーションズ 技術開発部の取り組み特 集

NTTコミュニケーションズ 技術開発部の取り組み

ー 4.1Jの推進・W3CにおけるWeb of Thingsの標準化

・Deep Learningによる IoTデータ分析用 AIの開発

また、技術開発の推進のみならず、知的財産に関しても下記の取り組みを実施している。

(1)事業戦略に基づく特許取得等の推進、リスクマネジメントグローバル市場での競争、オール仮想化時代の新たな技術で優位性を発揮すべく、自社開発技術について早期に特許取得の行うことで、自社の市場優位性を高めることが有効である。「Global Cloud Vision」の下、特にクラウド、セキュリティ、マネージド ICT等などの分野においてNTT Comが強みを発揮できるよう、重点的に特許出願に取り組んでいる。また、グローバル市場に進展する際には、世界規模での知的財産侵害リスクのマネジメントも重要となってくる。既に、海外グループ会社とも特許調査・出願等の連携を進めているが、各社保有の「特許の見える化」を行うなど更なる情報連携強化

術革新による新たな機会を捉え、将来の市場の成長を取込むための先行的な技術開発を推進することである。この方針に基づき、技術開発部では主に以下の開発に取り組んでいる。

(1)NTT Comの事業戦略に基づく技術開発

・クラウドサービス向け SDN制御基盤の開発

・セキュリティ独自防御技術の開発・DDoS 攻撃に対する防御技術(SAMURAI)の開発・UXデザイン手法を活用した自社サービスの UX改善

・IoTデータを含むビッグデータ解析技術の開発

(2)オール仮想化、徹底的な自動化のフロントランナーとして市場をリードする技術開発

・OpenStackの運用技術検証・開発・トランスポート SDNの分散制御コントローラー開発

・クラウド・ネットワークリソースをシームレスに連携させるオーケストレーション基盤開発

・WebRTC プ ラ ッ ト フ ォ ー ム(SkyWay)の開発

(3)将来のための先行的な技術開発・製造業界と連携したインダストリ

 

技術戦略部門は、NTT Comの事業戦略に基づいた技術戦略の策定機能として、グローバル市場での競争力強化のため、技術開発戦略や知財戦略を統合した新たな戦略を立案、推進している。また、適正な技術輸出管理を一元的に行う技術輸出管理室を設置すると共に、NTTグループや社外の各種団体、コミュニティと連携をするための技術連携戦略を策定、推進する役割も担っている。

開発業務を推進していく上で、3つの方針を定めている。1つ目は、NTT Comのサービス戦略やオペレーション戦略等の事業戦略に基づき、高度な技術スキルをベースとしたグローバル市場での競争に勝つための技術開発を推進すること。2つ目は、オール仮想化(Software

Defined化)、徹底的な自動化のフロントランナーとして、他社との差異化を図り、市場をリードする技術開発を推進すること。3つ目は、技

技術開発部 技術戦略部門の取り組み

技術開発部ではグローバル市場での競争力強化のための技術開発の推進や、更に重要性の高まりつつある知的財産へ取り組むだけでなく、NTT研究所やグループ会社、各種団体との連携の推進も行っている。それらをリードする技術戦略部門の活動を紹介する。

技術戦略部門の役割

技術開発部長 山下 達也

1 技術戦略/知財戦略

開発業務の取り組み方針

知的財産に関する取り組み

Page 2: 技術開発部 技術戦略部門の取り組み - bcm.co.jp・WebRTC プラットフォーム (SkyWay)の開発 (3)将来のための先行的な技術開発 ・製造業界と連携したインダストリ

特 集

NTTコミュニケーションズ 技術開発部の取り組み

45ビジネスコミュニケーション 2016 Vol.53 No.1

特 集

NTTコミュニケーションズ 技術開発部の取り組み

を推進し、NTT Comグループ全体での効果的な知的財産マネジメントを行っている。

(2)ブランド戦略に基づく商標マネジメント先述のとおり拡大するグローバル展開にあわせて世界 60ヵ国以上で自社ブランドの商標登録を推進する等により、NTT Comのプレゼンス向上にも貢献している。具体的には、世界約 50ヵ国で権利取得している「Arcstar」ブランドの他、データセンタブランド「Nexcenter」、ワンストップ ICTマネジメントサービスブランド「Global Management One」といった各種ブランドの商標登録を世界各国で行った。また、近年では NTTグループのグローバルでのプレゼンス拡大に伴い、NTTグループブランドの不適切な使用例も世界各国で見受けられるようになってきている。こういったケースに対しては、他社商標への異議申立てや無効化対策等の NTT

グループ全体での対策を行うことでNTTグループ全体のブランド価値向上に寄与している。

適正な技術輸出管理を図るべく法令順守と業務効率化の両面からの運用ルールの整備、維持を一元的に行う技術輸出管理室を設置し、社内各組織からの輸出案件相談に対する適切な社内手続きの遂行のためのサポートやアドバイス、また社内研修を

行っている。NTT Comのビジネス領域のグローバル化に伴うケース以外にも、昨今ではクラウド系サービスが輸出規制対象になるなどの法改正の要因で輸出関連相談が年々増加しつつある中で、クラウド等のビジネススキーム単位で輸出管理を一括チェックする等の効率化に取り組むことで、適正な法令の順守だけでなく、サービス提供の迅速化にもつながっている。

自社開発の推進に加え、中長期的な視点で NTT研究所や各種団体といった外部組織との連携強化を図っている。

(1)NTT研究所との連携技術戦略部門では、NTT研究所の研究開発技術を HP等を通じて社内関係者へ発信し、また、NTT研究所と社内関係者との意見交換の場を用意し、事業者目線の声を直に伝え、さらに経営陣クラスで NTT Comの技術戦略を提示し議論するなど、NTT研究所の研究開発が NTT Com

の事業に資するような活動を積極的に行い、NTT研究所の研究開発成果

をお客さま向けサービスの改善や発展、新たなサービス開発等へ適用できるよう推進している。また、社内の業務プロセス改善(効率化、自動化等)にもその成果を活用することで、業務品質向上、コスト削減等を図っている。

(2)社外の各種団体との連携O N F(O p e n N e t w o r k i n g

Foundation)や IETF、W3Cといった社外の各種団体や標準化組織に参画し、SDNやWebRTCにおける新たな技術やユースケースの提案を積極的に行っており、グローバルで各種団体と連携した技術開発を進めている。

(3)コミュニティとの連携さらに国内外のパートナー企業、ベンチャー企業やコミュニティと連携し、新たな技術やサービスの創出を積極的に進めている。OpenStack

Foundationに対してはバグ修正を中心に様々なコントリビュート活動を実施すると共に、クラウドサービスへの商用導入など、NTTグループとしての活動が評価され、2015年のOpenStack Summit TokyoでのOpen

Stack Superuser Awardの受賞につなげることができた(図 1がその受賞

の際の模様である)。

このような取り組みにより、NTT Comおよび NTT研究所の成果、国内外の最新技術等を連携させ、グローバルな競争を勝ち抜く技術開発を加速させている。図1 OpenStack Superuser Award授賞式

技術輸出に関する取り組み

NTT研究所および各種団体、コミュニティとの連携