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自動車の操縦安定性向上技術に関する特許出願技術動向調査
平成 14 年 5 月 24 日
総務部技術調査課
第1章 はじめに
自動車の操縦安定性を向上させるため、サスペンションの構造・機構等の改良、ブッシュ
類の剛性の改良、電子制御サスペンションによるダンパーの減衰力制御、エアサスペンショ
ン、油圧アクティブサスペンションへと積極的な制御へ拡大してきている。また、直接のト
ー角制御である前輪・後輪の操舵角制御や、駆動力制御、制動力制御技術が開発され、これ
らの電子制御による制御の自由度の拡大、制御の高度化が図られ今日に至っている。
欧州の自動車メーカーは自動車創成期からの長年の自動車の開発・製造に加え、高速での
操縦安定性を要求される走行環境等により、メカニカルな機構での運動特性の熟成は得意と
するところであるが、自動車の製造に関しては後発である日本は、メカニカルな改良もさる
ことながら、積極的に電子制御を取り入れることで大幅な性能向上を図ってきている。
一方、交通事故は自動車の普及とともに大きな社会問題としてクローズアップされてきた。
事故防止を図る基盤技術の一つとして自動車の操縦安定性は重要な技術である。交通事故を
未然に防いだり、ドライバの負担を軽減するための「予防安全技術」として、自動車自体の
技術革新とともに、ドライバの「ヒヤリ・ハット」体験に対応した装備(ABS や視界改善等)
や「こうあれば安全」等の改善策(ブレーキアシストや車両挙動安定化制御装置等)が具現
化されてきている。これからさらに予防安全技術を高めるためには、「ヒヤリ」とする以前、
またはドライバに車両の性能限界付近でのコントロールを求める以前に、ドライバの認知・
判断・操作特性を把握する研究をベースにして、この特性を車両側で補う運転支援システム
の研究・開発により交通事故を飛躍的に減少させることが期待される。これらの観点での国
家プロジェクトが ITS(Intelligent Transport Systems;高度道路交通システム)として進められ、
ASV(Advanced Safety Vehicle)、AHS(Advanced cruise-assist Highway Systems)等のプロジ
ェクトが行われている。 このような「予防安全技術」全体の研究・技術開発の現状を認識した上で、本調査では調
査ターゲットを明確にするため、「予防安全の基盤技術である車両自体の操縦安定性を向上
するための技術」を調査対象とし、「自動車の操縦安定性向上技術」に関わる約 20年間の特
許情報及び技術文献を検索・収集し、それぞれ第 1-1表 に示す自動車の操縦安定性技術分類
コードに従って分類・分析を行った。
第2章 技術発展状況、研究開発状況及び将来展望 第1節 特許及び技術文献の全般的分析
1.操縦安定性制御技術全般の三極出願推移比較
第 2-1図に示す操縦安定性制御技術全般の三極出願推移比較から以下のことが分かる。
・日本からの特許出願件数推移の特徴として、1982 年からの立ち上がりと、1990年前後及
び 1997年に二つのピークが見られる。
・特許出願件数は日本からの出願が多く、次いで欧州、米国の順である。
これらの要因として以下が考えられる。
-2-
・日本からの出願件数の立ち上がりは、ABSが普及し始めた時期とその普及状況(第 2-2図)
と一致している。その後、4WD・4WS・トラクションコントロール技術の普及と共に出願件
数が増大して 1990年~1993年のピークを迎える。バブル期後一時的に出願件数が低下する
が(第 2-3 図)、1995 年以降に車両挙動安定化制御、EBD 技術の関連する特許出願により、
1997 年に二つ目のピークとなる。
第 1-1 表 自動車の操縦安定性技術分類コード
・米国からの特許出願が少ない理由として、以下の二つが考えられる。
①NHTSA(National Highway Transportation Safety Administration)は、1973年にエアブレー
キ商用車に ABS 装着を義務付ける FMVSS(Federal Motor Vehicle Safety Standard) No.121(Air Brake Systems)を発行し ABS 装着が進んだが、アナログ制御方式で CB 無線機の
電波障害を受けやすいこと等により、発売後間もなくブレーキ事故が相次いで発生し、
NHTSAは法規発行後 1年足らずで撤回することとなった。
操縦安定性技術分類コード表
目的分類 大分類 中分類A1 車両単体制御 A11 操舵角制御システム
A12 制・駆動力制御システムA13 操舵角/制・駆動力協調制御システムA14 ロール角/ロール剛性制御システム
A2 外部情報との協調制御 A21 操舵角制御システムA22 制・駆動力制御システムA23 操舵角/制・駆動力協調制御システム
A24 ロール角/ロール剛性制御システム制御デバイス B1 エンジン制御
B2 ブレーキ制御 B21 前後独立制御B22 左右独立制御B23 ABSとの関連制御B24 トラクションコントロールとの関連制御
B3 デファレンシャル制御 B31 フロントB32 センターB33 リア
B4 ステア制御 B41 前輪B411 ステアリングギア比可変制御B42 後輪B43 前輪&後輪
B5 サスペンション制御B6 モータ(車輪駆動用)B7 複数デバイスの組合せ制御
B8 特定無し(運動制御理論等)制御目的 C1 アンダステア、ドリフトアウトの抑制 C11 小回り性向上
C2 オーバステア、スピンの抑制 C12 タイトコーナーブレーキング 対策C3 スピンとドリフトアウトの同時発生対策 C13 制動距離短縮、制動性能向上C4 横風対策 C14 発進性能向上(滑りやすい路面など)C5 ロール安定性、横転対策 C15 フェールセーフ対策C6 路面外乱対策 C16 センサ検出精度、制御精度などの向上C7 ピッチング抑制
C10 その他制御方式 D1 機械/油圧/電子制御系
D2機械/電気・電子制御系(アクチュエータが電気モータ等の場合)
D21 バイワイヤ
D3 その他(電制の無いシステム)E1 車両速度(変化率推定も含む)E2 E21 横方向挙動から推定
E22 前後方向挙動から推定E23 音波、電波、撮像等により推定E24 タイヤ回転状態から推定
E3 E31 横方向(CP,CF,SAT等)推定E32 前後方向(制駆動力)推定
E4車体横すべり角推定技術(変化率推定も含む)
E5 路面勾配推定技術E6 タイヤ状態(半径変,等)推定技術 E61 タイヤ空気圧
E7ヨーレイト、横G推定技術(変化率推定も含む)
E10その他(内容を備考または裏面に一言で記入)
車種分類 F1 乗用車 F2 トラック
F3 連結車両(トレーラー、ボート牽引、連結バス、トラック等)
操縦安定性制御態様
パラメータ推定 路面摩擦係数(路面状態に起因するμ)
推定技術
タイヤと路面間の摩擦係数(タイヤスリップ状態に起因するμ)推定技術
-3-
②その後、デジタル制御 ABS が普及したが、1994 年 IIHS(道路安全保険協会、
InsuranceInstitute for Highway safety)の調査報告 1では、ABS有無の保険請求指数に差が見
られないことが述べられている。
・欧州からの特許出願が少ない要因としては、欧州メーカーには長い車作りの歴史の中で機
械要素を改良・熟成して性能向上して行く伝統があると共に、Bosch社、Lucas 社等の限
られたメーカーによる技術開発が行われてきたことによると考えられる。
・
第 2-1 図 操縦安定性制御技術全般の三極出願推移比較 第 2-2 図 ABS の普及状況
第 2-3 図 生産台数の推移
参考資料:「自動車年鑑ハンドブック/2001~02 年度版」
(日刊自動車新聞社・(社)日本自動車会議所 共編)より JARIで作成
2.操縦安定性技術文献の三極比較
第 2-4 図に示す操縦安定性全体の技術文献数推移の三極比較と、第 2-5 図に示す 1991 年
以降の ITS関連文献数推移の三極比較から以下のことが分かる。 ・欧州、米国に対する日本優位は変らないが、特許件数比率に比べてその差異は少ない。欧
州と米国の文献数は接近しており、近年は日本からの発表は減少傾向にある。
・1995年以降 ITS関連の文献が多く出されているが、この分野においては日本の優位が明確
である。 操縦安定性文献全体では三極文献数は特許出願件数ほど差はないが、ITS 関連文献の日本
優位が明確であることから、近年の日本の減少傾向は、研究全体が ITS分野に移っていると
1 参考資料:Brian O’Neill,STATUS REPORT Vol.29 No.2. Insurance Institute for Highway safety
出典:自動車用 ABS の研究、日本エービーエス 株式会社編、山海堂
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出願年
特許
出願
件数
日米
欧
自動車生産台数の推移
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1960 1965 1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000
年
生産台数
(1000台
)
日 本米 国欧 州
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考えられる。
3.三極出願の相互関係
(1)操縦安定性関係の特許出願全件数 第 2-6図に示す操縦安定性関係の特許出願全件数の三極相互関係から以下のことが分かる。
・日本出願人によるものが欧米出願人のそれを圧倒して多くなっているが、その約 88%は日
本単独出願であり、国際的影響力は少ない。また、米国出願人の出願件数が少ない。
第 2-4 図 操縦安定性全体の文献数の三極比較 第 2-5 図 ITS 関連文献の文献数の三極比較
・日本出願人の欧州、米国への出願は国内特許の約 12%が出願されており、戦略的には欧州、
米国とも同様に重要視していると思われる。
・欧州出願人の日本、米国への出願は自国内特許の約 43%が出願されており、欧州企業は日
本、米国とも同様に重要視するとともに、三極全体を戦略域と捉えていると考えられる。
・米国出願人からは自国内特許のうち、欧州に約 79%、日本に約 30%が出願されており、
欧州に主眼を置いた出願となっている。
パラメータ推定関係の特許出願全件数の三極相互関係
第 2-7図に示すパラメータ推定の特許出願全件数の三極相互関係から以下のことが分かる。
・出願件数では第 2-6図に示す操縦安定性関係の特許出願全件数ほどの差異はないものの、
日本出願人によるものが優位である。また、日本単独出願は約 67%であり、近年パラメータ
推定関係の特許出願が増えていることから、日本企業のグローバル化に向けた特許戦略の方
向転換が読み取れる。
・日本出願人の欧州、米国への出願は国内特許の約 34%が出願されており、操縦安定性特許
全般に比べて欧州、米国への出願比率が大きい。
・欧州出願人の日本、米国への出願は自国内特許の約 40%が出願されており、欧州企業は日
本、米国とも同様に重要視していると考える。 ・米国出願人からは自国内特許のうち、欧州に約 78%、日本に約 21%が出願されており、
欧州に主眼を置いた出願となっている。
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1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001
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文献
数 日本米国欧州
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年
文献数 日本
米国欧州
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第 2-6 図 操縦安定性関係の特許出願全件数の 第 2-7 図 パラメータ推定関係の特許出願
全件数
三極相互関係 の三極相互関係
4.制御デバイス別特許出願の推移
第 2-8図に示す日本出願の制御デバイス別の特許出願件数推移から以下のことが分かる。
初めの立ち上がりはステア(操舵角)制御であり、1991年から 1992年にかけて最多出願の
ピーク(4WS 関連)を経た後一時的に減少し、1997 年には二つめのピーク(前輪制御等)
が見られる。次に特徴的なデバイスはブレーキ制御であり、1991年のピーク(ABS、トラク
ションコントロール)を経て一時的に減少したが、1994年以降は他の制御を上回る特許出願
(車両挙動安定化制御等)が続いている。最も早くピークに達したのはサスペンション制御
であり、1989年にピーク(エアサス、アクティブサス等)があり、その後減少している。
エンジン制御は 1990 年頃のピーク(トラクションコントロール等)が見られ、デファレ
ンシャル制御は 1986年のピーク(電子制御 4WDの導入期)と 1992年頃のピーク(駆動力
配分制御 4WD の開発期)が見られるが、出願件数はステア制御やブレーキ制御の半数程度
で推移している。また、モーター(車輪駆動用)や複数デバイスの組み合わせは 10 件未満
と出願件数は少ない。
第 2-8 図 日本出願の制御デバイス別特許出願件数の推移
第2節 技術区分別の三極出願比較
(1)車両単体制御と、外部情報との協調制御の比較
第 2-9図に車両単体制御を、第 2-10図に外部情報との協調制御の出願推移を示す。車両単
日本4,538件
欧州624件
米国132件
日本出願人の出願数4,558件
欧州出願人の出願数626件 米国出願人の出願数162件
271件
530件
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536件
104件
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日本895件
欧州273件
米国81件
日本出願人の出願数905件
欧州出願人の出願数273件 米国出願人の出願数100件
110件
293件 306件
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出願年
特許
出願
件数
B1*:エンジン制御全体
B2*:ブレーキ制御全体
B3*:デファレンシャル制御全体
B4*:ステア制御全体
B5:サスペンション制御
B6:モータ(車輪駆動用)
B7:複数デバイスの組み合わせ制御
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体制御は第 2-1図の操縦安定性全体の出願件数推移傾向と同様であるが、外部情報との協調
制御に関する出願件数は少ないものの、近年になり日本及び欧州からの出願が見られる。
第 2-9 図 車両単体制御の三極出願比較 第 2-10 図 外部情報との協調制御の三極出願比較
これらの「外部情報との協調制御」は、1999年に富士重工の ADA(車両挙動安定化制御)
に採用された「ナビ情報との協調制御」と同様の特許出願によるものである。
(2)制御デバイス別出願件数比率の三極比較
第 2-11 図に示す制御デバイス別の三極出願件数比率(20 年間の総件数に対する構成率)
から以下のことが分かる。
・三極いずれの場合もブレーキ制御に関する特許出願割合が最も多く、次いでステア(操舵
角)制御又はサスペンション制御、駆動系又はエンジン制御の順である。
・日本国内からの出願は、ステア制御の比率が高い。 ブレーキ制御が多い要因は、ABS、トラクションコントロール制御を含むためであり、日
本からステア制御出願が多いのは、日本がその開発を主導した 4WS 技術関連特許出願によ
る。このことより、以下の解析では操縦安定性制御技術として、「ブレーキ(制動)制御」、
「ステア(操舵)制御」、「駆動力制御」の三つのデバイスに注目して検討を進めることとす
る。
第 2-11 図 制御デバイス別出願件数比率
(3)個別制御デバイス(エンジン制御、サスペンション制御、モーター(車輪駆動用))の
三極出願件数推移
A1*:車両単体制御全体
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出願年
特許
出願
件数
日本
米国欧州
A2*:外部情報との協調制御全体
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出願年
特許
出願
件数
日本
米国欧州
B1 エンジン制御
B2 ブレーキ制御
B3 デファレンシャル制御
B4 ステア制御
B5 サスペンション制御
B6 モータ(車輪駆動用)
B7 複数デバイスの組合せ制御
B8 特定無し(運動制御理論等)
制御デバイス(出願人所属国:日本)
B1*7%
B3*9%B4*
27%
B810%
B71%
B61%
B518%
B2*27%
制御デバイス(出願人所属国:米国)
B3*2%
B71%
B2*58%
B88%B6
1%
B517%
B4*9%
B1*4%
制御デバイス(出願人所属国:欧州)
B4*15%
B71%B6
1%
B89%
B513%
B3*6%
B2*46%
B1*9%
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第 2-12図にエンジン制御、第 2-13図にサスペンション制御、第 2-14図にモーター(車輪
駆動用)の出願件数推移を示す。これらの日本の出願件数推移から以下のことが分かる。
・エンジン制御は出願件数が 1984年ころから立ち上がり、1990年にピークが見られる。
・サスペンション制御は出願件数が 1982年に立ち上がり、1989年にピークが見られる。 ・モーター(車輪駆動用)の出願件数は少ないが、1990年以降に出願増加が見られる。
この要因としては以下が考えられる。
・エンジン制御は、トラクションコントロール技術の市販化と同期して立ち上がり、技術の
熟成と景気後退により低下したと考えられる。 ・サスペンション制御は、その市販化に同期してエンジン制御より早く立ち上がっている。
・モーター(車輪駆動用)は、そのほとんどが電気自動車のモーター駆動の特許であるが、
1998 年出願の特許にはハイブリッド車等の後軸モーター駆動の特許も含まれる。
第 2-12 図 エンジン制御の出願件数推移 第 2-13 図 サスペンション制御の出願件数推移
第 2-14 図 モーター(車輪駆動用)の出願件数推移
(4)パラメータ推定の出願件数比率の三極比較 第 2-15 図にパラメータ推定に関わる三極からの出願件数比率(20 年間の総件数に対する
構成率)を、第 2-16図にパラメータ推定に関わる三極からの出願件数推移を示す。これらか
ら以下のことが分かる。
・三極から特許出願されるパラメータ推定要素はそれぞれ異なるが、件数比率は「路面摩擦
係数」、「車体横すべり角やヨーレート等の車両状態量」、「車両速度」の順に多い。
・パラメータ推定に関する特許は欧州からも出されているが、日本からの出願件数が最も多
く、日本からの出願件数推移には 1992年ごろと 1998年ごろに二つのピークが見られる。
B5:サスペンション制御
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出願年
特許出願件数
日本米国欧州
B1*:エンジン制御全体
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出願年
特許
出願
件数
日本米国
欧州
B6:モータ(車輪駆動用)
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出願年
特許
出願
件数
日本米国
欧州
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この要因としては以下が考えられる。 ・パラメータ推定は、車速推定、路面摩擦推定、車両状態量推定が主な内容であるが、第 1
のピークは ABS、4WS 制御のための車速推定、ヨーレート等の車両挙動推定が主であり、
第 2ピークは車両挙動安定化制御や制御の高度化のための路面摩擦推定、車両状態量推定に
関わる特許出願が増えたことによる。
第 2-15 図 パラメータ推定の出願割合
第 2-16 図 パラメータ推定に関わる三極からの出願件数推移
第3節 研究開発及び将来展望
本節では各技術分野ごとの特許出願件数推移の分析と共に、出願件数にとらわれない視点
での注目特許樹系図分析及び最近の技術文献の投稿状況から、研究開発の動向及び将来展望
について考察する。
1.操舵角(ステア角)による車両挙動制御
(1)操舵角制御に関する特許出願の推移 第 2-17 図に示す操舵角制御に関わる制御技術区分ごとの三極の特許出願件数推移から以
下のことが分かる。
・舵角制御に関する特許、特に 4WS 技術は日本主導で技術開発が行われたものであり、調
査対象期間を通じて日本が優位にある。 ・日本出願の操舵角制御全体の特許出願は 1992年と 1997年に二つのピークが見られるが、
一つ目のピークは主に 4WS 関連の後輪制御技術であり、二つ目のピークは前輪可変ギア比
制御等の前輪舵角制御技術によるものである。
E パラメータ推定
E1 車両速度(変化率推定も含む)
E2 路面摩擦係数(路面状態に起因するμ)推定技術
E3タイヤと路面間の摩擦係数(タイヤスリップ状態に起
因するμ)推定技術
E4 車体横すべり角推定技術(変化率推定も含む)
E5 路面勾配推定技術
E6 タイヤ状態(半径変,等)推定技術
E7 ヨーレイト、横G推定技術(変化率推定も含む)
E10 その他
パラメータ推定(出願人所属国:日本)
E115%
E2*38%
E711%
E106%
E6*4%
E52%
E416%
E3*8%
パラメータ推定(出願人所属国:米国)
E17% E2*
12%
E733%
E1023%
E3*14%
E54%
E6*2%
E45%
パラメータ推定(出願人所属国:欧州)
E18%
E2*14%
E1021%
E725%
E6*4% E5
3%
E45%
E3*20%
E:パラメータ推定
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出願年
特許出願件数
日本
米国欧州
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・操舵角制御は 4WS技術の熟成に伴い、前輪操舵系制御に主体が移行している。
第 2-17 図 操舵角制御に関わる特許出願の推移
2.制動力による車両挙動制御
(1)制動力制御に関する特許出願の推移 第 2-18図に示す制動力制御に関わる三極の特許出願件数推移から以下のことが分かる。
・制動制御に関する特許においても日本からの出願件数が多く、日本優位に推移している。
・日本出願のブレーキ制御全体の特許は 1991年と 1997年に二つのピークが見られるが、一
つ目のピークは ABS 及びトラクションコントロール制御に関わる特許が主であり、二つ目の
ピークは「前後輪独立制御」及び「左右独立制御」から構成される「車両挙動安定化制御」
の関連特許によるものである。
・制動制御は、前後輪及び/又は左右輪独立制御による「車両挙動安定化制御」に技術開発
の主体が移行していることが分かる。
(2)技術開発に係わる注目特許の樹系図
B4*:ステア制御全体
020406080
100120140160180200
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出願年
特許
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件数
日本
米国
欧州
B41*:ステア制御前輪全体
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1982
1984
1986
1988
1990
1992
1994
1996
1998
出願年
特許
出願
件数
日本米国欧州
B411:ステアリングギ ア比可変制御
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1980
1982
1984
1986
1988
1990
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出願年
特許
出願
件数
日本米国
欧州
B42:ステア制御後輪
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出願年
特許
出願
件数
日本
米国欧州
B43:ステア制御前輪&後輪
0
2
4
6
8
10
1980
1982
1984
1986
1988
1990
1992
1994
1996
1998
出願年
特許
出願
件数
日本米国
欧州
-10-
第 2-19 図に、主要国特許から抽出・分析した注目特許樹系図を示す。「制動力による車両挙動
安定化制御」に国内企業からの特許も多く出願されており、国内外で技術開発が活発であること
が伺える。同様に、操舵性制御や転倒防止制御の特許出願もされている。
さらに、1996 年(H8 年)に BOSCH からブレーキバイワイヤによる独立輪制御の特許が出願
されており、今後は制動力制御においてもバイワイヤ制御の方向に向かうことが伺える。
第 2-18 図 制動力制御に関わる特許出願の推移
3.両挙動制御分野へのバイワイヤシステム技術の導入
(1)バイワイヤシステムに関する特許出願の推移
バイワイヤシステムに関わる特許出願の状況を明確にするため、第 2-20図に制御方式に関
わる「機械/油圧/電子制御系」「機械/電気・電子制御系(アクチュエータが電気モーター等の
場合)」「バイワイヤ」の特許出願推移を示す。これらの出願推移から以下のことが分かる。
・前 2 者が第 1 節の特許の全般的解析で検討した二つのピークに一致しているのに対して、
「バイワイヤ」は 1995年以降の近年になって特許出願されていることが明確である。 ・「バイワイヤ」に関する特許は欧州からの出願が多く、次いで日本、米国の順である。
これらは「操舵角制御技術」や「制動力制御技術」の特許出願が日本優位であった状況と
は異なる。
B2*:ブレーキ制御全体
0
50
100
150
200
1980
1982
1984
1986
1988
1990
1992
1994
1996
1998
出願年
特許出願件数
日本米国
欧州
B21:前後独立ブレーキ制御
0
10
20
30
40
50
1980
1982
1984
1986
1988
1990
1992
1994
1996
1998
出願年
特許出願件数
日本米国
欧州
B22:左右独立ブレーキ制御
0
20
40
60
80
100
1980
1982
1984
1986
1988
1990
1992
1994
1996
1998
出願年
特許
出願
件数
日本米国欧州
B23:ABSとの関連制御
0
20
40
60
80
100
1980
1982
1984
1986
1988
1990
1992
1994
1996
1998
出願年
特許出願件数
日本米国
欧州
B24:トラクションコントロールとの関連制御
0
10
20
30
40
50
1980
1982
1984
1986
1988
1990
1992
1994
1996
1998
出願年
特許出願件数
日本
米国欧州
-11-
第 2-19 図 制動力制御に関わる技術開発の注目特許の樹系図
-11-
JP 8813188
1989-214506
19880122
MITSUNARI M
各輪の操舵、制動による挙動制御
US 88206735
1990-052620
19880615
AISIN SEIKI KK
実・目標ヨー比較に基づく制動による挙動安定化制御
DE 4123232
1993-019157
19910713
MERCEDES-BENZAG
実・目標ヨー比較からスキッドを検出する不安定挙動防止装置
JP 9410977
1995-270262
19940202
TOYOTA JIDOSHAKK
制動によるヨー挙動安定化制御と制御装置
DE 4446582
1996-289556
19941224
BOSCH GMBHROBERT
車輪回転情報に基づく制動による車両挙動安定化制御
DE 4447313
1996-301634
19941231
ITT AUTOMOTIVEEURO GMBH
制動とエンジン制御による車両挙動安定化制御
JP 95142475
1997-012928
19950517
TOYOTA JIDOSHAKK
VSCの制御ロジック
JP 95286416
1997-205319
19951006
TOYOTA JIDOSHAKK
VSCの制御ロジック
JP 95286417
1997-205320
19951006
TOYOTA JIDOSHAKK
VSCの制御ロジック
JP 96305216
1998-020175
19961115
HONDA GIKENKOGYO KK
制駆動力によるヨーモーメント制御、オーバステア抑制
DE 1031856
1998-121375
19960807
BOSCH GMBH
制動力によるヨーモーメント制御、BBW/EMBによる独立輪制御
1985年 1990年 1995年 2000年
制
動
力
に
よ
る
車
両
挙
動
制
御
制動力による車両挙動安定化制御
制動力による操舵性制御
制動力による転倒防止制御
バイワイヤ技術の適用
DE 1032943
1998-113084
19960816
DAIMLER-BENZ AG
制動力制御による転倒防止制御
DE 1001795
1997-373936
19960119
ITT AUTOMOTIVEEUROGMBH&CONTINENTAL TEVES制動力によるヨーモーメント増大制御
-12-
第 2-20 図 制御方式に関わる特許出願の推移
(2)バイワイヤ技術開発に関わる注目特許の樹系図 第 2-21 図に、DWPI データベースから抽出した主要国出願の注目特許樹系図を示す。
バイワイヤシステムとして、「ブレーキバイワイヤ(以下 BBW)」については 1988 年の
EMB ホイールブレーキシステムの特許、「ステアバイワイヤ(以下 SBW)」については
1996 年の故障時に制動力により操舵性を確保する特許が出願されたのを初めとして、
BBW と SBW のいずれにおいても多くのカーメーカーや部品メーカーから多くの特許出
願がなされている。また、日本出願人としては、SBW に関する特許が 1999 年(H11 年)
に光洋精工(株)から出願されているが、BBW に関する特許出願は見られない。
BBW は 1988 年(S63 年)に BOSCH から出願され、2001 年(H13 年)に世界で初
めて EHB としてメルセデスベンツに実車搭載された。この背景として、国際調和乗用車
ブレーキ法規である UN/ECE R.13H に電子制御システムの安全要件として Annex8 が追
加(2001 年 6 月 2)され、「バイワイヤシステム」のブレーキ適用が可能となったことに
よる。今後は、各社のシステムが実用化へと向かうことが予想される。なお、ステアバ
イワイヤについても、操舵装置の法規である UN/ECE R.79 がバイワイヤ適用に向けて検
討が開始されているとの報告 3 がある。
BBW の故障時の安全性に関しては、①2系統独立システムによるフォールトトレラン
ス(故障状態下でも要求する機能を遂行し続ける能力)、②アドオンタイプ、③液圧モー
ドとの切り替えなどが見られ、種々の技術が確立されてきている。 2 UN/ECE R.13H Annex8 では、主に以下を規定している。
・ 電子制御システムの故障時の機能安全を確保するため、システムに対する適切な安全性解析とそれに基づく適切な処置を 行い文書化する。
・ 設計・製造過程の適切さを示すため文書に残し管理する。(プロセス管理) 認証時に適切な安全性解析と設計・解析の妥当性を文書により判断すること。
2 参考資料:JASIC ホームページ、「平成 13 年 12 月 11 日検索」、インターネット、第 124 回 WP 会議 概要報告<URL:http://www.jasic.org/wp/124wp.html> 3 参考資料:SAE Paper 2000-01-0822 R.Harter,et al.(Bosch),Future Electrical Steering Systems Realizations with Safety Requirements,P.152,REGURATIONS VERSUS TECHNOLOGICAL EVOLUTION
D1:機械/油圧/電子制御系
0
100
200
300
400
5001980
1982
1984
1986
1988
1990
1992
1994
1996
1998
出願年
特許
出願
件数
日本米国
欧州
D2*:機械/電気・電子制御系(アクチュエータが電気モータ等の場合)
0
50
100
150
200
1980
1982
1984
1986
1988
1990
1992
1994
1996
1998
出願年
特許
出願
件数
日本米国欧州
D21:バイワイヤ
0
10
20
30
40
50
1980
1982
1984
1986
1988
1990
1992
1994
1996
1998
出願年
特許
出願
件数
日本米国欧州
-13-
SBW は 1996 年の VW の出願を初めとして近年多くの特許が出願され、故障時の安全性についても①制動力による操舵性確保、②二つのサブシステムによる冗長性、③機械的システムへの切り替えなどが見られ、バイワイヤ技術が確立しつつあることが分かる。 第 2-22 図に、日本出願特許の注目特許樹系図を示す。BBW に関する特許は 1999 年
(H10 年)以降に EHB システムの故障時の安全性技術が出願されている。SBW に関す
る特許は、①1997 年(H9 年)以降に光洋精工(株)とトヨタ自動車(株)から完全バ
イワイヤに関する多くの特許が、②1998 年(H10 年)に日産自動車からジョイスティッ
ク操舵装置、故障時に制動力により操舵性を確保する特許が、③1999 年(H11 年)には
障害物回避制御やドライバ意志を反映した制御等、バイワイヤによる制御自由度の大き
い特許が出願されている。
(3)最近の技術文献に見るバイワイヤ技術 注目特許の分析では、2000 年以降の特許データが入手できず直近の技術開発情報が得
られないため、JICST 検索により得た最近 3 ヵ年の技術文献から以下のことが分かる。8
件の抽出リスト中 4件が日本から出されており、BBW に関する文献が 3件(2 件は SBW
を含む)、SBW に関する文献が 7 件である。また、日本からの文献はいずれも SBW に
関する文献である。
以上のように、国内・国外特許及び技術文献のいずれから見ても、バイワイヤに関わ
る特許・技術発表が見られ活発に技術開発が行われている。法規面でもバイワイヤは適
用の環境が整いつつある。このような状況の中で、日本出願人からは SBW に関する特
許出願が多く、BBW に関する特許出願が少ないこと、及び技術発表においても BBW に
関する発表が見られないことは将来展望を検討する上で注目点である。
4.統合制御による車両挙動制御
(1)統合制御に関する特許出願の推移及び注目特許の樹系図分析
第 2-23 図に示す統合制御に関わる特
許出願の三極出願推移から以下のことが
分かる。
・出願件数は多くないが、日本からの出
願件数がほとんどである。また、1992 年
前後に多くの特許出願が見られる。 ・注目特許の分析(日本以外の特許出願
がわずかのため日本特許で分析)結果か
ら、1989 年から 1992 年にかけての特許
出願は以下のようである。
統合制御に関する国内特許の樹系図は、
①操舵と制動制御の協調、②操舵と駆動力配分制御の協調、③操舵と懸架系制御の協調、
④制動力と懸架系制御との協調に区分することができる。この中で多く出願されている
のは、①の操舵と制動制御の協調である。
(2)最近の技術文献に見る車両挙動の統合制御
第 2-23 図 統合制御に関わる特許出願の推移
B7:複数デバイスの組み合わせ制御
0
5
10
15
20
1980
1982
1984
1986
1988
1990
1992
1994
1996
1998
出願年
特許
出願
件数
日本米国欧州
-14-
最近 3 ヵ年の技術文献リストから以下のことが分かる。12 件の抽出リスト中 5 件が日
本、4件が米国、3件が欧州から出されており、12 件中 7件が大学からの投稿である。
-15-
第 2-21 図 バイワイヤシステムに関わる技術開発の注目特許の樹系図(主要国特許)
-15-
1985年 1990年 1995年 2000年
DE 3840685
1990-179709
19881202
BOSCH GMBH
BBW/EMBホイー
ルブレーキシステム
DE 1030735
1997-146394
19950822
BOSCH GMBH
BBW/EMBブレー
キシステム
DE 1034567
1998-123226
19960827
BOSCH GMBH
BBW,2系統独立
システムによるフォールトトレ
ランス
DE 10519691998-334203
19961213
CONTINENTAL
AG
BBW/EMBアク
チュエータ
GB 971389
1997-535698
19970123LUCAS IND PLC
BBW/EHB
US 97380431998-495670
19970306
KELSEY-HAYES
CO
BBW/EHB
US 97854459
1998-296490
19970512GENERAL MOTORS
CORP
BBWアドオンタイプブレーキシ
ステム
DE 10049321999-48018519980207ITT MFGENTERPRISESINC&CONTINENTALTEVESBBW
DE 10334602000-172182
19980724
BOSCH GMBH
ROBERT
SBW:2つの同
一サブシステ
ムで構成する
DE 1039953
2000-239010
19980902
DAIMLERCHRYSLER AG
SBW:故障時に
機械的バックアップに切り替
え
GB 9823201
2000-320834
19981024
LUCAS IND PLC
BBW/EHB:液圧
ブレーキモードとEHBモードの
切り替え
JP 99130272
2000-681310
19990511KOYO SEIKO CO
LTD&SUMITOMO
ELECTRIC INDCO
SBW
DE 1029428
2001-062808
19990626
BOSCH GMBHROBERT
SBW:電子制御
と電子油圧制御の独立2系統電
子油圧操舵シス
テム
DE 1035073
2001-169970
19990728
MERCEDES-BENZLENKUNGEN GMBH
SBW:電子制御
モータと油圧制御モータの2系
統で構成される
操舵システム
DE 99U2015559
2000-118065
19990903
TRWFAHRWERKSYSTEM
E GMBH
SBW
JP 99357451
2001-346067
19991216KOYO SEIKO CO
LTD
SBW
車両
挙
動
制
御へ
の
バ
イ
ワ
イヤ
シ
ス
テ
ムの
適
用
EHB 2001年メルセデスベンツSLに搭載
ブレーキバイワイヤシステム
DE 10183552000-666065
19990422
VOLKSWAGEN AG
SBW
* *
* *
* *
ステアバイワイヤシステム
DE 1032251
1998-121512
19960809VOLKSWAGEN AG
SBW、故障時の制動力制御によ
る操舵性確保
-16-
第 2-22 図 バイワイヤシステムに関わる技術開発の注目特許の樹系図(国内特許)
-16-
1985年 1990年 1995年 2000年
2000- 43691
10-230115H10. 7.31トキコ (株)
BBW/EHB 急操作時ストロークシミュレータのフィーリ
ング改善
11-301435
11- 40288H11. 2.18
日本電装 (株)
BBW/EHB 前後2系統配
管で、個別液圧制御を行う
2001- 80489
11-261581
H11. 9.16
日立製作所:(株)
BBW/EHB ストローク
シミュレータ下流に
独立した複数の液圧
供給源を配置して
フェールセーフ機能
を持たせる
10-218000
09- 25660H 9. 2. 7
光洋精工(株)
トヨタ自動車(株)
SBW 主副の操舵モ
-タ配置による故障時操舵力の確保
10-278826
09- 89780H 9. 4. 8光洋精工(株)
トヨタ自動車(株)
舵角センサの故障検出
11- 49010
09-209356H 9. 8. 4光洋精工(株)
トヨタ自動車(株)
トルクセンサ異常時制御
11-334559
10-159932H10. 5.25
日産自動車(株)
SBW 操舵装置故障時に各輪の制動制
御装置により旋回可能とする
2000- 53015
10-234943H10. 8. 5光洋精工(株)
SBW 制御システムの故障状態に応じ
て制御モ-ドを変更する
2000- 52955
10-236375H10. 8. 7
光洋精工(株)
SBW 制御装置等の
故障時に、ヨ-レ-ト目標変化量に
基づき制動力を制御する
車
両
挙
動
制
御
へ
の
バ
イ
ワ
イ
ヤ
シ
ス
テ
ム
の
適
用(
国
内
特
許)
ブレーキバイワイヤシステム
ステアバイワイヤシステム
ドライバの意志をトルクに反映
障害物回避制御
・ジョイスティック操舵装置
・故障時に制動力制御による操舵機能2000-19845311-369009H11.12.27DEロ-ベルト ボツシユ GMBHSBW ドライバの目標ハンドルトルクを算出して、ドライバ意思をフレキシブルに実行させる
2000- 7202311-227850H11. 7. 8DEダイムラ- クライスラ- AGSBW 障害物検知手段を有し、衝突舵取り角に一致する操舵指令の設定を行わない制御
11-192960
10- 2054H10. 1. 8日産自動車(株)
SBW ジョイスティック操舵装置
-17-
個々の制御技術はほぼ確立してきた段階にあると考えられるが、近年の技術文献では
統合制御に関わる大学等からの発表例も多く見られることから、学術的理論確立の段階
にあるものと考えられる。また、バイワイヤ技術の導入による制御の自由度の拡大や応
答性の向上等により、統合制御に向かうこともことが予想される。
5.路面摩擦係数の推定技術
第 2-24 図に示す路面摩擦係数に推定に関わる特許出願の三極出願推移から以下のこ
とが分かる。 ・推定技術全体では日本出願人からの出願件数が多いが、車両運動状態やタイヤの回転
状況から推定する技術については、欧州及び米国からの特許出願も見られる。
・路面摩擦係数推定全体では 1990 年、1993 年、1997 年の三つのピークが見られる。
・一つ目のピークは前後方向及び横方向の車両挙動から推定する技術、二つ目のピーク
はタイヤの回転状況から推定する技術、三つ目のピークは車両運動状態量とタイヤの回
転状況から推定する技術がそれぞれ含まれることが分かる。
第 2-24 図 路面摩擦推定に関わる特許出願の推移
6.車両運動状態の推定技術 車両運動状態推定は、制御すべき制御量を決定したり、制御の効果を判定するための
基本をなすものであり、制御性能に直接影響する。そのため、操縦安定性向上のために
は不可欠な技術であることから、ここで取り上げて分析する。
第 2-25 図に示す車両運動状態推定に関わる特許出願の三極出願推移から以下のこと
が分かる。
・車体横すべり角推定技術については日本出願人の特許出願が多く、1984 年から立ち上
がり、右肩上がりに増加している。1984 年は、4WDや 4WSに関する特許が出願された
E2*:路面摩擦係数(路面状態に起因するμ)推定
0
10
20
30
40
50
1980
1982
1984
1986
1988
1990
1992
1994
1996
1998
出願年
特許
出願
件数
日本米国欧州
E21:横方向挙動から推定
0
5
10
15
20
1980
1982
1984
1986
1988
1990
1992
1994
1996
1998
出願年
特許出願件数
日本
米国欧州
E22:前後方向挙動から推定
0
10
20
30
40
50
1980
1982
1984
1986
1988
1990
1992
1994
1996
1998
出願年
特許
出願
件数
日本
米国欧州
E24:タイヤ回転状態から推定
0
5
10
15
20
1980
1982
1984
1986
1988
1990
1992
1994
1996
1998
出願年
特許出願件数
日本米国
欧州
-18-
時期と一致している。また、1993 年をピークとする「4WS技術」関連と、1998 年をピ
ークとする「制動力制御による車両挙動安定化制御」技術に関わる特許出願が見られる。
・ヨーレート、横 G 推定技術は、1990 ごろまでは日本企業からの特許出願が多いが、
それ以降では欧州、米国からの特許出願と拮抗している。1991 年以前は 4WD,4WS技術
に関連した日本企業からの特許出願が多かったが、1994 年以降は欧州あるいは米国企業
から「制動力制御による車両挙動安定化制御」技術に関する特許が出願されたものであ
る。
車両運動状態の推定に関わる注目特許の樹系図分析から、①車両モデル、タイヤモデ
ルに基づく推定と、②車両運動量に基づく推定の二つに分けられる。②の推定技術はす
でに実用化されてきている技術の高度化の流れであり、①の推定技術は 1985 年(S60
年)の日産自動車(株)の出願(特願昭 60-4674 号)に始まり、高度制御のためこの観
点での推定技術開発が行われていることが分かる。
第 2-25 図 車両運動状態推定に関わる特許出願の推移
第3章 出願人の技術競争力、産業競争力
第1節 特許出願から見た全般的分析
1.操縦安定性向上技術分野への参画企業の業種、地域別展開 第 3-1 図に操縦安定性向上技術分野への参画企業の地域別展開状況、第 3-2 図には部品メ
ーカーの業種別三極構成比率を示す。これらより以下のことが分かる。
・特許出願企業の分析では、三極地域いずれの場合も部品企業数が多く、特に欧州にお
いてその傾向が顕著である。 ・「タイヤ」メーカーは欧州メーカーが半数を超え、日本メーカーがこれに次ぐが米国メ
ーカーからの出願は見られない。
・「電装」メーカーは欧州、米国、日本の順である。 ・「機械」メーカーは欧州が約 60%で、日本 30%、米国 10%の順である。
・「総合」メーカーは欧州、日本がそれぞれ約 40%で、米国が 20%弱である。
全分野について、欧州の部品メーカーからの出願が多く、国内の部品メーカーの特許出願
企業数は欧州に比べて少ない。この要因としては、欧州での技術開発の多くが部品メーカー
主体で行われ、複数の自動車メーカーに採用・納入されてきた経緯があり、日本国内は自動
車メーカー主導の研究開発、特許出願が行われて部品メーカーの多くが系列化していたこと
によるものと考えられる。
E4:車体横すべり角推定技術(変化率推定も含む)
0
10
20
30
40
50
1980
1982
1984
1986
1988
1990
1992
1994
1996
1998
出願年
特許出願件数
日本米国欧州
E7:ヨーレイト、横G推定技術(変化率推定も含む)
0
10
20
30
40
5019
80
1982
1984
1986
1988
1990
1992
1994
1996
1998
出願年
特許
出願
件数
日本米国欧州
-19-
第 3-1 図 操縦安定性向上技術分野への参画 第 3-2 図 部品メーカーの業種別三極構成比率
企業の業種、地域別展開
2.操縦安定性分野への新規参入状況 技術開発の活発度を第 3-3 図に示す操縦安定性分野への出願人数と特許出願件数との関係
と、第 3-4 図の業種別新規参入企業数の推移から分析すると以下のことが分かる。
・欧州の状況は、1991 年までは新規参入の増加と共に技術開発の拡大期であり、1992
年から 1995 年は安定期であるが、その後 1999 年に向けて拡大傾向にある。 ・日本の状況は、1990 年までは新規参入と共に技術開発の拡大期であるが、1991 年か
ら 1996 年までは衰退期、その後安定期にある。
・米国の状況は、件数は少ないが、ほぼ日本と同様である。 ・三極の新規参入企業数の推移を見ると、1990 年以降の安定期を経て近年なお拡大傾向
にあることから、日本に比べて出願人数と出願件数は少ないものの活発度の観点で欧州
が優位にあると言える。
・三極の新規参入企業数では、1980 年代は日本優位の状況も見られるが、1990 年以降
は欧州の新規参入が優位にあることが分かる。
・業種別では、部品メーカーの新規参入状況が明確である。
・部品メーカーの参入が多く、制御の多様化により制御デバイスに関する特許範囲が拡
大したものと考えられる。
3.縦性安定性に関わる特許出願件数の出願人ランキング
第 3-5 図に示す三極の出願人企業のランキングから以下のことが分かる。ただし、日本出
願人の場合は、欧州及び米国への特許出願について分析している。 ・日本の出願人企業は、上位 5 社及び 10 社中に 6 社の自動車メーカーが入っている。一
部の総合部品メーカーを除いて日本の技術開発が自動車メーカー主体で行われてきてい
ることが分かる。 ・米国の出願人企業は、第 1位の部品メーカーに続き上位 2 社及び 11 社中に 3 社の自動
車メーカーが入っている。技術開発が一部のメーカーに偏っているものの、日本と同様、
自動車メーカー主体の技術開発状況が伺える。
・欧州の出願人企業は、第 1 位が圧倒的な差で部品メーカーであり、第 2 位に自動車メ
ーカーが続く。10 社中 4 社が自動車メーカーであるが、上位を部品メーカーが占めてお
り、一部の自動車メーカーを除き欧州が部品メーカー主導であることが分かる。
メーカー 部品その他
米国
日本
欧州
0
10
20
30
40
50
60
参画企業・団
体数
業種
出願人国籍地域
0% 20% 40% 60% 80% 100%
企業数構成比(%)
総合
機械
電装
タイヤ
部品
メー
カー
業種
展開
欧州
米国
日本
-20-
第 3-3 図 操縦安定性向上技術分野への企業参入 第 3-4 図 操縦安定性向上技術分野への企業
状況(出願人数と出願件数の関係) 参入状況(業種別解析)
欧州出願人
80 81
82
83
8586
84
8889
87
90
93
929597 9491
98 96
99
0
20
40
60
80
100
0 5 10 15 20 25 30
出願人(企業)数
出願
件数
米国出願人
594
95
82 81 91
85
9290
96
98
0
20
40
60
80
100
0 5 10 15 20
出願人(企業)数
出願
件数
日本出願人
97
96
9495 99
9392
91
98
90
89
88
87
86
80 82 83
84 85
0
100
200
300
400
500
0 10 20 30 40
出願人(企業)数
出願
件数
(1) 欧州出願人の動向
(2) 日本出願人の動向
(3) 米国出願人の動向
(1) 出願人国籍別の新規参入状況の推移
(2) 業種別の新規参入動向
(3) 部品メーカーの製造種別の新規参入動向
02468
10121416
1980
1982
1984
1986
1988
1990
1992
1994
1996
1998
新規参入年
新規参入(
企業)
数
EU JP US その他
02468
10121416
1980
1982
1984
1986
1988
1990
1992
1994
1996
1998
新規参入年
新規参入(
企業)
数
自動車メーカー 部品 その他
02468
10121416
1980
1982
1984
1986
1988
1990
1992
1994
1996
1998
新規参入年
新規参入(
企業)
数
総合部品 機械部品 電装部品 タイヤ
-21-
第 3-5 図 操縦安定性向上技術に関わる特許出願件数の出願人ランキング
4.操縦安定性向上技術の対象技術要素ごとの出願件数ランキング
第 3-6 図に示す各技術要素ごとに三極の上位企業の特許出願件数ランキングから、技
術競争力を分析すると以下のことが分かる。 ・「競争度」で見ると技術要素全般にわたり日本企業の優位性が明確であり、次に欧州企
業であることが分かる。
・「競争度」から日本企業が優位にある技術要素は、制御デバイスでは「デフ(駆動力)
制御」「ステア(操舵角)制御」「サスペンション制御」「複数デバイスの組合せ制御」、
制御方式では「機械/油圧・電子制御系」、パラメータ推定では「車両速度」「路面摩擦
推定」「車両状態量推定」である。
・「競争度」から欧州企業が優位にある技術要素は、制御デバイスでは「ブレーキ(制動
力)制御」、制御方式では「バイワイヤ方式」、パラメータ推定では「タイヤ路面間の摩
擦係数推定技術」である。
・三極企業ごとの「集中度」では、日本自動車メーカー主体の競争度の高い技術分野へ
の集中と、欧州部品メーカーの「ブレーキ(制動力)制御」「パラメータ推定」が明確で
ある。
0 20 40 60 80 100 120 140 160 180
BOSCH GMBH ROBERT
DAIMLERCHRYSLER AG
CONTINENTAL TEVES & CO OHG AG
ITT AUTOMOTIVE EURO GMBH
VOLKSWAGEN AG
BAYERISCHE MOTOREN WERKE AG (BMW)
LUCAS IND PLC
SIEMENS AG
LAND ROVER GROUP LTD
TEVES GMBH ALFRED
WABCO GMBH
ITT MFG ENTERPRISES INC
GENERAL MOTORS CORP
FORD GROUP全体
FORD GLOBAL TECHNOLOGIES INC
DELPHI TECHNOLOGIES INC
TRW INC
FORD MOTOR CO LTD
KELSEY-HAYES CO
EATON CORP
DELCO ELECTRONICS CORP
VISTEON GLOBAL TECHNOLOGIES INC
日産自動車
トヨタ自動車
本田技研工業
マツダ
富士重工業
アイシン精機
三菱自動車工業
デンソー
ユニシア・ジェックス
トヨタ中央研究所
出願
人
出願数
日本企業 (欧米出願のみ)
米国企業
欧州企業
-22-
第 3-6 図 操縦安定性向上技術の対象技術要素ごとの出願件数世界ランキング(特許出願全件数)
5.操縦安定性関連特許と企業競争力の分析 日本の主要メーカー3 社の全分野の特許出願件数推移(第 3-7 図)、国内生産台数の推移(第
3-8 図)、全特許出願に占める操縦安定性制御特許の比率の推移(第 3-9 図)から、特許出願
件数を技術開発量、生産台数を企業競争力の指標として分析すると以下のことが分かる。
・特許出願件数の推移を見ると、トヨタ自動車がほぼ右肩上がり、日産自動車と本田技
研工業が 1985 年以降横ばいの状況である。
・生産台数推移は海外への生産移転等多面的に捉える必要があるが、全般的傾向として
生産台数と特許出願件数とはリンクしているとは言えない。企業競争力を維持・増強す
操縦安定性向上技術の対象技術要素毎の出願件数世界ランキング(◎1-5位、○6-10位、●11-15位、□16-20位)
日本企業 米国企業 欧州企業
出願人・業種、ランク
[1]制御態様 A* ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ○ ○ ○ ○ ● ● ○ ● □[1-1] 車両単体制御 A1* ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ○ ○ ○ ○ ● ● ○ ● □
① 操舵角制御システムA11 ◎ ◎ ◎ ◎ ○ ◎ ○ □ ○ ○ ● □ □ ●② 制・駆動力制御システム A12 ◎ ◎ ◎ ○ ◎ ◎ ○ ○ ○ ● □ □ ○ ● ● ●③ 操舵角/制・駆動力協調制御システム A13 ◎ ◎ ◎ ◎ ○ ○ ○ ◎ ○ ● ●④ ロール角/ロール剛性制御システム A14 ◎ ◎ ◎ ● ◎ ○ ○ ◎ ● ○ ● □ □⑤ その他の車両単体制御 A1 ◎ ○ ◎ ● ◎ ● ● ● ○ ○ ○ ● ◎ ○ ● ● ○ ● ◎ ●
[1-2] 外部情報との協調制御 A2* ◎ ◎ ◎ ◎ ●[2」 制御デバイス B ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ○ ○ ○ ○ ● ● ○ ● □ □
[2-1] エンジン制御(含AT制御) B1* ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ □ ○ ○ ○ ● ● ○ ○ ● ● □ □[2-1] ブレーキ制御 B2* ◎ ◎ ◎ ○ ○ ◎ ◎ ○ ○ ● □ □ ○ ● ● ● □
① 前後独立制御 B21 ◎ ◎ ◎ ○ ◎ ◎ ○ ● ○ ● □ ○ ○ ○ ●② 左右独立制御B22 ◎ ◎ ◎ ○ ◎ ◎ ○ ○ ○ ● ● □ ○ □ ○ ●③ ABSとの関連制御 B23 ◎ ◎ ◎ ○ ● ◎ ◎ ○ ● ● □ ○ □ ● ○ □④ トラクションコントロールとの関連制御 B24 ◎ ◎ ◎ ○ ○ ● ○ ○ ● ○ ● ● ◎ ◎ ○ □⑤ その他のブレーキ制御 B2 ◎ ◎ ◎ ● ○ ◎ ○ ○ ● ● ● ● ◎ ● ○ ○ □ □
[2-3] デファレンシャル制御 B3* ◎ ◎ ◎ ○ ◎ ● ○ ○ ◎ ● □ ● ● □① フロントデフ制御 B31 ◎ ◎ ◎② センターデフ制御 B32 ◎ ◎ ◎ ○ ◎ ○ ○ ○ ◎ ● ○③ リアデフ制御 B33 ◎ ◎ ◎ ○ ◎ ○ ◎ ● ○ ○④ その他のデフ制御 B3 ◎ ◎ ◎ ○ ◎ ● ○ ○
[2-4] ステア制御 B4* ◎ ◎ ◎ ◎ ○ ◎ ○ ○ ○ ● □ ● ●① 前輪制御 B41 ◎ ◎ ◎ ◎ ○ ○ ○ ● ○ ● ● □ ● ●② ステアリングギア比可変制御 B411 ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ○ ●③ 後輪制御 B42 ◎ ◎ ◎ ◎ ○ ◎ ○ □ ○ ● ● ● □④ 前後輪同時制御 B43 ◎ ◎ ○ ◎ ◎ ◎⑤ その他のステア制御 B4 ◎ ◎ ◎ ○ ○ ○ ○ ● ● ● ◎ ◎ ●
[2-5] サスペンション制御 B5 ◎ ◎ ◎ ● ◎ ○ ○ ◎ ● ○ ● □[2-6] 車輪駆動用モータ B6 ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ●[2-7] 複数デバイスの組合せ制御 B7 ◎ ◎ ◎ ○ ◎ ○ ○ ◎ ● ○ ○[2-8] 特定無し(運動制御理論等) B8 ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ○ ○ ● ● □ ● □ ○ ● □ □
[4」 制御方式 D ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ○ ○ ○ ○ ○ ● ● ●[4-1] 機械/油圧/電子制御系 D1 ◎ ◎ ◎ ○ ◎ ◎ ○ ○ ○ ○ ● ● □ □[4-2] 機械/電気・電子制御系(アクチュエータがモータ) D2* ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ○ ○ ○ ○ ● ● □ ○ ○ □ □[4-3] うちバイワイヤ方式 D21 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ◎ ◎ ◎ ○ ◎ ○ ●[4-4] その他(制御の無い方式等) D3 ◎ ◎ ◎ ◎ ○ ● ◎ ○
デルフ
ィ
テク
ノロ
ジー
ズ
IN
C・部
品
TRW
IN
C・
部品
ケルシ
ーー
ハ
イス
CO・
部品
ロベル
トボ
ッ
シ
ュ
GMB
H・
部品
コンチ
ネンタ
ルテ
ー
ベス
AG
・部品
フォ
ル
クスワ
ー
ゲ
ンAG
・メ
ー
カ
ー
ランド
ロー
バ
ー
グ
ルー
プ
LT
D・メ
ー
カ
ー
BMW
AG
・メ
ー
カ
ー
トヨタ
自動車
・メ
ー
カ
ー
三菱自
動車工
業・
メー
カ
ー
アイシ
ン精機
・部
品
競争度
イー
ト
ンCO
RP
・部品
デルコ
エレク
トロ
ニクス
CO
RP・
部品
シー
メ
ンスA
G・
部品
ダイム
ラー
ク
ライ
スラ
ー
AG
・メ
ー
カー
ルー
カ
ス I
ND
PL
C・
部品
ゼネラ
ルモ
ー
タ
ー
スCO
RP
・メ
ー
カー
デンソ
ー
・部
品
ITT
オー
ト
モ
ー
ティ
ブ
ユ
ー
ロGM
BH・
部品
日産自
動車・
メ
ー
カー
競争度
ITT
MF
G
エンタ
ー
プ
ライズ
IN
C・
部品
フォ
ー
ドGR
OU
P・メ
ー
カ
ー
ビステ
ロング
ロ
ー
バルテ
クノ
ロジ
ー
ズIN
C・
部品
ユニシ
アジ
ェッ
ク
ス・部
品
テー
ベ
スGM
BH
・部品
ワブコ
GMB
H・
部品
富士重
工業・
メ
ー
カー
競争度
マツダ
・メ
ー
カ
ー
カヤバ
工業・
部品
対象技術
本田技
研工業
・メ
ー
カ
ー
[5」 パラメータ推定 E ◎ ◎ ◎ ◎ ○ ○ ○ ● ● ● ● □ □ ◎ ● ○ ○[5-1] 車両速度(含変化率推定) E1 ◎ ◎ ◎ ◎ ● ◎ ○ ○ ○ ● □ ○ ● ●[5-2] 路面摩擦係数(μ)推定技術 E2* ◎ ◎ ◎ ◎ ○ ◎ ○ ○ ○ ● □ □ □ ● □ □ □
① 横方向挙動から推定 E21 ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ● ○ ○② 前後方向挙動から推定 E22 ○ ◎ ◎ ○ ○ ◎ ○ ◎ ● ● ● ● ● ● ●③ 音波、電波、撮像等から推定 E23 ◎ ◎ ◎④ タイヤ回転状態から推定 E24 ○ ◎ ◎ ○ ○ ◎ ◎ ● ● ○ ● ● ● ○ ○ ● ●⑤ その他のμ推定技術 E2 ◎ ◎ ◎ ◎ ○ ◎ ○ ○ ○ ● ○
[5-3] タイヤと路面間の摩擦係数推定技術 E3* ○ ◎ ◎ ● ○ ● ● □ □ ● □ ● ○ ◎ ◎ ◎ ● ● □① 横方向(CP,CF,SAT等)推定 E31 ◎ ◎ ○ ◎ ○ ○ ◎ ◎ ◎ ◎② 前後方向制駆動力推定 E32 ◎ ○ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ○ ○ ●③ その他のタイヤ路面間μ推定技術 E3 ○ ◎ ◎ ○ ◎ ● ◎ ● ◎ ◎ ◎ ○ ●
[5-4] 車体横すべり角推定技術 E4* ◎ ◎ ◎ ◎ ○ ◎ ● ○ ○ ● ● ● ○ ○ ●[5-5] 路面勾配推定技術 E5 ◎ ◎ ◎ ○ ◎ ◎ ○[5-6] タイヤ状態「空気圧、径変化等)推定技術 E6 ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ● ○ ○[5-7] ヨーレート、横G推定技術 E7 ◎ ◎ ○ ◎ ○ ● □ ● ○ ◎ ● ● ◎ ● ○ ◎ □ □ ●[5-8] その他のパラメータ推定技術 E10 ○ ● ◎ ● ● □ ● ● ◎ ● ◎ ◎ ○ ◎ ◎ ◎ □ ●
● ● ● ● ● ● ● ●注1. 自動車操縦安定性向上技術における各地域の出願上位企業22-25社の出願(1980 -1999年の20年間)を各技術要素毎に分析注2. 競争度判定基準:◎*5点、○:3点、●:2点、□:1点で総合20点以上注3. 集中度:◎及び○の数が全体項目数の50%以上注4. フォードグループは、フォードモーターとフォードグローバルテクノロジー等の合計注5. 対象技術分野の特許出願件数が少なく、特許出願件数が1件で世界のベスト20に入っている場合は、評価対象から外した。
集中度
-23-
0
2000
4000
6000
8000
10000
12000
14000
16000
1955/59 1960/64 1965/69 1970/74 1975/79 1980/84 1985/89 1990/94 1995/99
出願年
出願
件数
(5年
間の累
計) 日産自動車 (54011件)
トヨタ自動車 (60064件)
本田技研工業 (38365件)
るために企業収益のみにとらわれず技術開発を行っていることを示すものと思われる。 ・操縦安定性関連特許の比率は、ABS,4WS,トラクションコントロール等の開発時期
である 1985 年~1990 年に一時的に増加しているが、全体的にはおおむね 1%程度であ
る。
操縦安定性関連技術は予防安全に関わる基盤技術であるが一般ユーザーには理解され
にくい分野であるため、企業の安全性向上への姿勢を示す意味合いが強い。そのため、
特許出願が直接企業競争力に繋がるとの視点は見られない。
第 3-7 図 日本主要自動車メーカーの特許出願件数の推移比較
第 3-8 図 日本主要自動車メーカーの生産台数の推移比較
第 3-9 図 日本の主要自動車メーカーの全特許出願に占める操縦安定性制御特許の比率
6.まとめ
日本の技術競争力、産業競争力について、以下のようにまとめることができる。
・「バイワイヤ」技術については欧州企業が優位にあり、今後日本においても技術開発を
進めていく必要がある。 ・日本企業・大学等からの技術文献の発表件数は、欧州及び米国に比べて圧倒的に多く、
研究・技術開発が活発に行われ優位にあることが分かる。
・全技術分野について欧州の部品メーカー主導の技術開発が明確であり、国内の特許出
参考資料:自動車年間ハンドブック(2001・02 版)、日刊自動車新聞社/(社)日本自動車会議所 共編より JARI が作成
0
5,000
10,000
15,000
20,000
25,000
1955/59 1960/64 1965/69 1970/74 1975/79 1980/84 1985/89 1990/94 1995/99年
5年間の累計生産台数(千
台) 日産自動車
トヨタ自動車
本田技研工業
0.0
0.5
1.0
1.5
2.0
2.5
3.0
3.5
4.0
1975/79 1980/84 1985/89 1990/94 1995/99
出願年
構成
比(対
件数比
)
日産自動車
トヨタ自動車本田技研工業
-24-
願人の内訳として部品メーカーの特許出願企業数は欧州に比べて少なく、日本国内はメ
ーカー主導の研究開発、特許出願が行われて系列化していたことが伺える。
・三極の新規参入企業数の推移を見ると、1990 年以降は欧州の新規参入傾向が優位であ
り、業種別では部品メーカーの新規参入実態が明確である。 ・欧州企業が優位にある技術分野は、「バイワイヤ技術」、「制動力制御技術」、「摩擦係数
等パラメータ推定技術」である。
・操縦安定性関連特許出願が直接企業競争力に繋がるとの視点は見られないものと考え
る。
第2節 業界再編から見た検討
自動車メーカーにおいては海外及び国内メーカーとの業務提携・再編が進むと共に、
第 3-10 図及び第 3-11 図に示すように部品メーカーにおいても自動車メーカーとの系列
化の崩壊や部品メーカー間の業務提携・統合が進んできている。また、自動車メーカー
のコスト削減に向けた部品のモジュール化の動きも進展してきている。
10 年前の部品メーカーは、トヨタ自動車系列や日産自動車系列等を形成していた。最
近ではボッシュグループの統合の動きと共に、トヨタ自動車等による統合ブレーキシス
テム開発に向けたアドビックス社の設立、日立製作所等による電動ブレーキシステムの
共同開発、ブリヂストン等による足回りのモジュールシステム(MS)の開発、カルソニ
ックカンセイと日産自動車間のモジュール生産の導入等、部品メーカーの関わる再編や
将来のモジュール化に向けた部品メーカー側の動きが活発となっている。
これらの動きの中で業界に大きな波紋を投げたのは、速度 100km/h からの停止距離を
30m 以下とすることを目標としたコンチネンタル・テーベスの「30m カープロジェクト」
の成功である。タイヤメーカーであったコンチネンタル社がブレーキメーカーであるテ
ーベス社を買収して(1990 年代半ば)、シャシ統合制御分野へと脱皮したものである。
コンチネンタル・テーベスが今後どのように競争力を付けていくかは注目点であり、こ
れまで技術力競争力・産業競争力で勝ってきた日本の部品メーカーが、約 5 年遅れた体
制整備をどう克服していくかが課題の一つと言える。
-25-
第 3-10 図 10 年前の自動車部品業界の関連図 第 3-11 図 最近の自動車部品業界の再編
第3節 技術文献数による分析
(1)技術分野別の投稿文件数
第 3-12 図、第 3-13 図、第 3-14 図に、それぞれ「操舵制御関連の文献数」、「制動制御
関連の文件数」、「駆動制御関連の文件数」を示す。これらの図から以下のことが分かる。
・日本企業からの技術文献の発表件数は、3 分野とも他の二極の企業に比べて優位であ
り、技術開発が活発に行われている。 ・特に、操舵制御関連文献は日本企業からの投稿が多く、この分野は日本主導であるこ
とが分かる。また、国外企業からの投稿は 1996 年までであるのに対して、国内からの投
稿は今日まで継続している。
・制動制御関連文献は、1996 及び 1997 年にトヨタ自動車と三菱自動車から多くが投稿
されたが、それ以外では国内企業と国外企業間でそれほど大きな差は見られない。
・駆動制御関連文献は日本企業からの投稿が多く、国外企業からの投稿が 1998 年までと
なっているのに比べて、近年にわたり投稿が継続していることが分かる。
自動車部品業界の関連(1990年頃)
欧 州 日 本 米 国
-操安・制動・駆動-
(ブレーキ部品)
本 田
日信工業ルーカスオートモティブ (15%出資)
(ラジエータタンクとシートの組付技術)
(コンポーネントシステムブレーキ)
(プレッシャコントロールバルブ)
(イグニッション システム)
(エアオーバー用ALS)
モトローラ
(ワイヤ・ウインド・モータ関連製造技術)
光洋精工
アイシン精機
ユニシアジェックス(旧・アツギユニシア)
カルソニックカンセイ(旧・カルソニック)
オートモーティブプロダクツ
Valeo(仏)
ロバートボッシュ
TRW
GEソリッドステートパテント
GMAmbrake
トヨタ
Kelsey Hayes Co.
(合弁会社設立/88年)
デンソー(旧・日本電装)
(分離型燃料ポンプ/電子式燃料噴射装置 /ABS/O2センサー)
(自動車部品)
SKF(スウェーデン)
曙ブレーキ工業
(合弁会社設立/86年)
(半導体集積回路)
(半導体装置)
ZF(独)
日 産
コルモーゲン
GMハリソン
(可変容量コンプレッサー)
(パワステアリングギア)
ショーソン(仏)
TRW KOYOSTEERINGSYSTEM CO.
(ブレーキシステム)
クリスチャン・プールシェ・ド・カルボン氏(仏)
(ガスショックアブソーバ)
(ショックアブソーバ)
Girling Ltd.(英)
サスパ(独)
トキコ
(ガススプリング)
(ディスクブレーキ・ABSシステム)
(ブレーキシステム)
スタビラス(独) カヤバ工業
ブリヂストン
住友電工
日清紡
ファイアストーン(完全買収/88年)
ルーカスインダストリーズ(英)
アルフレッドテーベス(独)
(ドラムブレーキAssy)
(足周りのM.S.の開発)
(駆動・エアコン部門を買収)
欧 州 日 本 米 国
(2002.7に合併)
(完全買収/99年)
(完全分離)
ビステオン
(2001.10 設立)
(ブレーキシステムの開発)
(電動ブレーキシステム の共同開発)
(業務提携)
(モジュール生産の導入)(業務提携)
(業務提携)
(業務提携)
(カーナビ部門を買収)
(完全分離)
(技術提携)
曙ブレーキ工業
ブリヂストン
カヤバ工業
ボッシュブレーキシステム (旧自動車機器)
ボッシュオートモーティブシステム(旧ゼクセル)
光洋精工
トヨタ
アイシン
デンソー
住友電工
日清紡
トキコ
ユニシアジェックス
日立製作所
ユニシアジェックス
トキコ
日立電線
日 産
カルソニックカンセイ
本 田
日信工業
ルーカス・パリティ
ミシュラン(仏)
ロバートボッシュ
マニェティ・マレッリ(伊)
コンチネンタル(独)
コンチネンタル・テーベス
G M
デルファイ
TRW
フォード
アドヴィック
最近の自動車部品業界の再編-操安・制動・駆動-
資本提携業務提携(技術供与、共同開発、完成車供給、合弁事業など)
参考資料:新聞各紙情報からJARIが作成
資本提携業務提携(技術供与、共同開発、完成車供給、合弁事業など)
参考資料:「日本の自動車工業(1990年版)」(株)オート・トレード・ジャーナル よりJARIが作成
-26-
第 3-12 図 操舵制御関連の文献数の企業比較 第 3-13 図 制動制御関連の文献数の企業比較
第 3-14 図 駆動制御関連の文献数の企業比較
(2)学会別投稿文献数の三極比較
第 3-15 図に示す操縦安定性に関する主な国際会議又は論文集である AVEC、 SAE、
Vehicle System Dynamics、 FISITAへの投稿文献数の三極比較から以下のことが分かる。
・本調査の主目的となる電子制御に関わる技術発表の場である AVEC では、日本からの
投稿が 62%を占めており、日本が優位にある。次いで欧州、米国の順である。
・米国の学会である SAE では米国内からの投稿数が優位であるが、日本、欧州からの投
稿は両者とも同様の割合である。
・Vehicle System Dynamics 及び FISITAでは、日本及び欧州からの投稿がそれぞれ約 1/3を占める。
・以上より投稿文献数において、SAE を除き、日本の技術開発は操縦安定性分野全体に
おいても米国を凌ぎ、欧州と肩を並べるとともに、電子制御技術の適用においては優位
にあると言える。
上記学会への投稿企業・大学の概要を分析する以下のことが分かる。
・電子制御システムを対象とした AVEC では、上位 3 社の日本自動車メーカーや日本の
大学が上位にランキングしており、この分野では日本優位が明確である。 ・操縦安定性全体の投稿文献を含む SAE、Vehicle System Dynamics、FISITAでは、各
国からの投稿はそれぞれ数件であまり差は見られないが、いずれの場合も日本の企業・
大学が世界を牽引していると言える。
19801982
19841986
19881990
19921994
1996
19982000
トヨタ自動車
本田技研三菱自動車工業
アイシン精機
日産自動車富士重工業
日産ディーゼル工業
General Motors Corp.
Daimler Chrysler AG
Robert Bosch GmbH
BMW AGITT Automotive Europe GmbH
Volkseagen AG
0
12
3
4
5
6
7
8
9
10
文献数
年
トヨタ自動車
本田技研
三菱自動車工業アイシン精機
日産自動車
富士重工業
日産ディーゼル工業
General Motors Corp.
Daimler Chrysler AGRobert Bosch GmbH
BMW AGITT Automotive Europe GmbH
Volkseagen AG
19801982
19841986
19881990
19921994
19961998
2000
トヨタ自動車本田技研三菱自動車工業
カヤバ工業アイシン精機
日産自動車いすゞ自動車
富士重工業日野自動車
マツダ日産ディーゼル 工業
小松製作所Daimler Chrysler AG
BMW AG
0
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
文献数
年
トヨタ自動車
本田技研
三菱自動車工業
カヤバ工業アイシン精機
日産自動車
いすゞ自動車
富士重工業日野自動車
マツダ
日産ディーゼル工業
小松製作所Daimler Chrysler AG
BMW AG
19801982
19841986
19881990
19921994
19961998
2000
トヨタ自動車
本田技研三菱自動車工業
日産自動車富士重工業
Daimler Chrysler AG
Robert Bosch GmbH
BMW AGVolkswagen AG
0
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
文献数
年
トヨタ自動車
本田技研
三菱自動車工業
日産自動車富士重工業
Daimler Chrysler AG
Robert Bosch GmbHBMW AG
Volkswagen AG
-27-
・国内の学会では、自動車技術会では上位 4 社が自動車メーカー、次いで 4 大学が上位
を占める。日本機械学会では上位 2 メーカーを含み多くの大学からの投稿が見られ、日
本国内では産学両面において操縦安定性に関する研究・開発が行われていることが分か
る。
このことより、操縦安定性全体、特に電子制御システムによる将来技術に関わる日本
全体の技術・研究開発競争力をさらに向上させ、世界をリードし牽引していくためには、
学術分野での競争で得た研究成果を産業競争力に生かすために産学連携構造を構築して
いくことが有効であると考えられる。
第 3-15 図 学会別投稿文献数の三極比較
学会又は論文集:AVEC
15%
18%
5%
62%
日本米国欧州その他
総文献数:93件
学会又は論文集:SAE
23%
6%
23%
48%
日本米国欧州その他
総文献数:64件
学会又は論文集:Vehicle System Dynamics
19%
30%
16%
35%
日本米国欧州その他
総文献数:37件
学会又は論文集:FISITA
21%
38%10%
31%
日本米国欧州
その他
総文献数:2 9件
-28-
第4章 今後の日本が目指すべき技術開発の展望
前章までの検討結果をまとめ第 4-1 図に示すとともに、以下に見出した方向性を記述する。
第 4-1 図 日本が目指すべき技術開発の展望
第 1節 技術的視点
1.制動力制御技術の普及に向けた技術開発 制動力制御による操縦安定向上技術は ABS 技術に続く技術として普及しつつあるが、
予防安全を更に向上させるためには高機能でかつ安価なシステムを開発し、広く普及す
ることが望まれる。 2.シャシの統合制御化
・コンチネンタル・テーベス社が先鞭を付け、その実現可能性を示したタイヤを含むシ
ャシ統合制御化に向けた技術を確立する。
・制御技術の高度化、統合制御化に向けた「パラメータ推定技術」「車両状態量推定技術」
の技術開発を進める。 ・操縦安定性向上の技術発展に不可欠な技術であり、日本からの特許出願、技術文献の
投稿も活発に行われているが、欧州企業の技術開発が優位に進められている。
3.バイワイヤ技術の確立
制御技術の高度化、統合制御化を進めていく上で、制御デバイスの複雑化、搭載スペ
ース等が課題となると共に、モジュール化を進めるためにはバイワイヤ技術を導入する
ことにより、設計自由度や搭載性、重量軽減の観点で大きなメリットが得られるため、
予防安全の基盤技術としての操縦安定性向上技術
制動力制御技術の普及に向けた技術開発
パラメータ推定技術
車両状態推定技術
バイワイヤ技術の確立 ・故障時の安全性設計技術の確立
技術的視点
産業構造的視点
統合制御システム開発構造の構築 (大学、自動車メーカー、部品メーカーの連携)
部品モジュール化に対応した自動車メーカー、部品メーカーの連携
部品モジュール化に対応したバイワイヤ技術開発
シャシの統合制御化(ブレーキ、タイヤ、サスペンション)
自動車分野への適用
シャシ統合制御への適用
制動・
操舵・
駆動
制御技術
法規的視点
バイワイヤ技術等新技術実現に向けた基準・規格の整備 ・法的・社会的受容性に向けた検討
予防安全・事故回避技術の向上
ITS/ASV制御技術への適用
-29-
将来的にこれらの技術の確立が期待される。また、将来の ITS、ASV 技術の導入に当た
っては大きく貢献する技術である。
・「バイワイヤ」技術については、「ステアバイワイヤ」の技術開発は進んでいるが、特
許出願及び記述文献の両面において「ブレーキバイワイヤ」は欧州が優位にある。 ・電子制御装置の安全性に関わる安全要件法規の制定により、「バイワイヤ技術の導入」
が法規として認知されたため、世界的にこの方面の技術の進展が見込まれる。今後は、
国内への規制導入に合わせて、「バイワイヤシステム」実現に向けた、故障時の安全性設
計技術の確立や法的・社会的受容性に向けての検討が必要になる。 ・「バイワイヤ」を含む電子制御装置は、機械装置のように寿命や劣化を予測して交換し
たりすることが困難な場合が多く、システムに対する適切な安全性解析を行い、適切な
処置を施す等の故障時の機能安全を確保するための設計技術の確立が必要になる。今後
の「バイワイヤ」技術の実現・普及のためには必要・不可欠な技術である。 4.バイワイヤ技術を応用したシャシ統合制御
バイワイヤ技術が確立された場合にはシャシ統合制御に適用することにより、制御の自由
度、応答性、実車搭載自由度、軽量化による効果が見込まれる。
第2節 産業構造的視点
1.ブレーキ、タイヤ、サスペンションを含めた統合制御システム開発構造の構築
・日本における技術開発を更に押し進め、欧州で動きが見られるような、個別技術分野
での技術開発から総合的な技術開発ができる自動車メーカーと部品メーカーとの連携、
又はブレーキ、タイヤ、サスペンションを含む多分野にわたる部品メーカーの連携を進
める。
・統合制御化、電子制御の信頼性向上技術の研究・開発に当たっては、大学等研究開発
機構との連携を進める。
2.モジュール化に対応した新技術実用化構造の構築
今後、自動車分野において部品モジュール化が進むものと考えるが、日本全体の技術
開発力を維持、向上するためには以下の観点を考慮する必要がある。 ・自動車メーカーの開発・製造コスト削減に向けた部品モジュール化に対して、部品メ
ーカーの技術開発力、企業競争力を維持するための企業間(自動車メーカーと部品メー
カー、部品メーカー間等)の連携のあり方。
・バイワイヤ技術による更なる技術要素モジュール化への対応を考慮した技術開発のあ
り方。
第3節 法規・規格的視点 バイワイヤ技術等新技術実現に向けた基準・規格の整備
・バイワイヤシステムを含む電子制御システムの故障時安全性設計技術を確立する必要があ
る。
・法制度の整備(製造物責任なども含む)。
・新規システムやバイワイヤ制御に関わる社会的受容性を得て行く必要がある。
「ブレーキバイワイヤ」「ステアバイワイヤ」等、新技術に関して日本がデファクトスタン
ダードを提案できる取組み。
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