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鋼構造建築の部材の座屈現象から骨組の不安定現象の解明と耐震安全性の向上
Enhancement of Ultimate Seismic Capacity of Steel Structuresby Prevention and elucidation of Buckling Collapse
Mechanism
東北大学 教授
木 村 祥 裕
本論文の構成
2
1章 はじめに
2章 鋼構造骨組における部材の崩壊挙動と保有性能評価2.1 局部座屈崩壊型H形鋼梁の塑性変形性能と累積塑性変形性能2.2 球状黒鉛鋳鉄円形管部材の最大耐力と塑性変形性能
3章 大空間構造におけるH形鋼部材の横座屈と非構造部材による補剛効果3.1 H形鋼圧縮部材の座屈応力度に及ぼす非構造部材の必要補剛剛性・補剛耐力評価3.2 H形鋼梁の横座屈応力度に及ぼす引張側フランジ補剛材の必要補剛剛性・補剛耐力評価
4章 液状化地盤における鋼管杭の曲げ座屈耐力評価に及ぼす地盤特性の影響
4.1 液状化地盤において鉛直荷重を受ける鋼管杭の曲げ座屈耐力評価
4.2 液状化地盤において鉛直及び水平荷重を受ける鋼管杭の終局耐力評価
5章 層崩壊を生じる鋼構造骨組の終局耐震能力評価と層崩壊回避システムの提案
5.1 剛接梁を有さない通し柱による鋼構造骨組の層間変形集中の抑制効果
5.2 最下層柱脚を損傷させない柱脚機構を適用した鉄骨ラーメン骨組の終局耐震性能
6章 まとめ
1章 はじめに
4
本研究は,大地震時に部材が座屈崩壊し,骨組が不安定現象を生じる場合の鋼構造建築物の保有性能評価及び耐震安全性の向上である。
具体的には,南海トラフ地震,首都直下地震等を受ける鋼構造建築物において,梁もしくは杭が局部座屈,横座屈,連成座屈等の崩壊メカニズムを形成するとき,非構造部材や地盤等の座屈拘束・誘発作用を受けることから,これらの相互作用を合理的に考慮した上で,
1)激震時における鋼構造物の層崩壊・倒壊時の保有性能(終局耐震能力)を適切に把握した
2)鋼構造物の倒壊を防ぐための新しい損傷抑制機構の開発により終局耐震能力を向上させた
研究である。
1章 はじめに
2章 鋼構造骨組における部材の崩壊挙動と保有性能評価
2.1 局部座屈崩壊型H形鋼梁の塑性変形性能と累積塑性変形性能
2.2 球状黒鉛鋳鉄円形管部材の最大耐力と塑性変形性能
2章 鋼構造骨組における部材の崩壊挙動と保有性能評価
6
1995年の兵庫県南部地震では多くの鋼構造骨組で座屈・破断に
より大被害を生じ,層崩壊や倒壊に至るケースが見られた。地震外力による鋼構造骨組の終局耐震能力を評価する上で,部材の保有性能の把握は不可欠である。
本章では,2.1節で梁の保有性能を評価できる手法を提案した。繰
り返し載荷実験により局部座屈崩壊型となる梁の崩壊挙動を明らかにし,H形鋼梁の各種パラメータに対して塑性変形性能及び累積塑性変形性能,履歴吸収エネルギーを評価する。
2.2節でこれまで建築構造部材に適用例がほとんどない鋳鉄部材
の載荷実験を行い,局部座屈崩壊型の最大耐力や塑性変形能力を明らかにし,幅広く建築構造部材として鋳鉄部材を適用できる可能性を示す。
2.1 局部座屈崩壊型H形鋼梁の塑性変形性能と累積塑性変形性能
7
載荷装置 載荷実験概念図
水平力載荷方法 軸力載荷方法
Q・ L=M 塑性ヒンジ
ピン支持
Q
NL=NR
Q MN
NR
ベース
鉛直ジャッキCap. ±1,000 kN
水平ジャッキCap. ±1,000 kN
L =
1,5
00
載荷フレーム
スライドテーブル
反力ビーム
H形鋼梁
δ h / δp
2.04.06.0
-2.0-4.0-6.0
0サイクル
P
1.0
-1.0
Ν / Νmax
サイクル
N
P
断面番号
断面[mm]
材長[mm]
(b/tf)eq Wf
幅厚比区分
梁 柱 梁 柱
1 300 × 125 × 6 × 9
1500
0.42 0.51 0.60
P-I-1
P-III
2 300 × 125 × 9 × 9 0.35 0.40 0.51 P-I-2
3 300 × 125 × 9 × 12 0.29 0.34 0.43 P-I-1
4 300 × 150 × 6 × 9 0.46 0.54 0.66 P-III
2.1 局部座屈崩壊型H形鋼梁の塑性変形性能と累積塑性変形性能
1 – 2 – R 0.3軸力比 0, 0.15, 0.3
軸力載荷方法N: 無軸力,C: 一定圧縮軸力,R: 交番繰返し軸力
水平載荷繰り返し回数 0(単調),1,2
断面番号
8
9
(a)無軸力 (b)一定軸力 (c)正負交番軸力H形鋼梁の曲げモーメント回転角関係
-2-1.5
-1-0.5
00.5
11.5
2
-10 -5 0 5 10
実験解析
M/Mp
最大耐力(実験)最大耐力(解析)
0.040-0.04
-10 -5 0 5 10
実験解析
M/Mp
最大耐力(実験)最大耐力(解析)
0.040-0.04
θ/θp
-10 -5 0 5 10
実験
解析
M/Mp
最大耐力(実験)最大耐力(解析)
0.040-0.04
2.1 局部座屈崩壊型H形鋼梁の塑性変形性能と累積塑性変形性能
10骨格曲線
0
0.5
1
1.5
0 2 4 6 8
▽
θ/θp
M/Mp
▽
▽▽
1-2-R0.15
1-2-R0.3
1-2-C0.3
1-1-R0.3
▽: 最大耐力
0
0.5
1
1.5
0 2 4 6 8θ/θp
1-2-C0.3
1-2-N1-1-N
▽
M/Mp
▽: 最大耐力 ▽ ▽
▽
1-2-R0.3
1-0-C0.3
▽
骨格曲線作成手順(a)履歴曲線 (b)累積履歴曲線 (c)骨格曲線
(b) 載荷繰返し回数,軸力比の違い(a) 軸力載荷方法,載荷履歴の違い
-8 -4 4 8
1.5
-1.5
-40 -20 20 40
1.5
-1.5
-8 -4 4 8
1.5
-1.5
M/Mp
/ p
M/Mp
/ p
M/Mp
/ pmax
max
B max
2.1 局部座屈崩壊型H形鋼梁の塑性変形性能と累積塑性変形性能
11
(a)最大耐力 (b)塑性変形能力 (c)累積塑性変形能力変動軸力を受けるH形鋼梁の保有性能評価
1.0
1.2
1.4
1.6
0 0.5 1 1.5 2
τcmax
-10%
+10%
Wf '
0
4
8
12
16
20
0 0.5 1 1.5 2
µ'cmax
-30%
P-I-2P-I-1
+30%
Wf '
0
5
10
15
20
25
0 0.5 1 1.5 2
ηcmax
-30%
+30%
Wf '
0軸力比 0.05 0.10 0.15 0.20 0.25 0.30数値解析載荷実験
既往文献
2.1 局部座屈崩壊型H形鋼梁の塑性変形性能と累積塑性変形性能
修正Wf によって,梁断面,作用軸力によらず,梁の最大耐力比,塑性変形能力,累積塑性変形能力を評価できる
0
1
2
3
4
0 1 2 3 4 5
αB
xiN µΣ− log)1(
α B
=1+0.5(N -1)log Σi=1
µxi
0
20
40
60
0 20 40 60α
Bη
max (予測)
αBη
max (数値解析)
0
5
10
15
20
0 5 10 15 20α
Bη
max (圧縮)
αBη
max (引張)
数値解析と予測式によるエネルギー吸収量の比較
正負サイクル時の履歴吸収エネルギーの比較
バウシンガー効果による割増率
-8 -4 4 8
1.5
-1.5
-40 -20 20 40
1.5
-1.5
-8 -4 4 8
1.5
-1.5
M/Mp
/ p
M/Mp
/ p
M/Mp
/ pmax
max
B max
2.1 局部座屈崩壊型H形鋼梁の塑性変形性能と累積塑性変形性能
12本論文の評価式により,圧縮・引張軸力時のエネルギー吸収量を評価できる
2.2 球状黒鉛鋳鉄円形管部材の最大耐力と塑性変形性能
13
0
0.5
1
1.5
2
0 10 20 30
P / Py
δ / δy
FCD450管部材(管厚6mm 鋳肌)
STK490鋼管(管厚6mm 黒皮)
-10 -8 -6 -4 -2 0
Ⅱ-1Ⅱ-2Ⅱ-3Ⅱ-4
ε (%)
75
150
150
75
450
:歪ゲージ
Ⅰ-1~4Ⅱ-1~4Ⅲ-1~4
Ⅳ-1~4
Ⅴ-1~4Ⅵ-1~4Ⅶ-1~4
正面 側面局部座屈によるき裂
圧縮荷重軸変位関係 圧縮荷重歪関係 歪ゲージ貼付位置
14
4 3
φP P
2P
加力冶具 試験体
δ
12
100150 l=725875
L=1750
[ ]2δ [ ]4δ [ ]3δ [ ]1δ
:変位計
エンドプレート
5
0δ
100
0
200
400
600
800
0 0.1 0.2 0.3 0.4
FCD700FCD450FCD400ASTK490
σ (N/mm2)
ε
B 6 F70 M - 1表面状態: 0: 鋳肌,SB無,1: 鋳肌,SB有,2: 加工肌,
3: 黒皮
載荷形式: M: 単調載荷,C: 繰り返し載荷
材質: F70, FCD700 F45, FCD450 F40A, FCD 400A S49, STK490
板厚: 2: 2.4mm, 3: 3.1mm, 4: 3.9mm, 6: 5.4mm, 6mm
実験項目: B: 曲げせん断実験
2.2 球状黒鉛鋳鉄円形管部材の最大耐力と塑性変形性能
載荷方法と試験体
応力歪関係
15
P/Pp
δ/δp
0
0.5
1
1.5
2
0 2 4 6 8 10
B6F70M-1B6F45M-1B6S49M-3
P/Pp
δ /δp
0
0.5
1
1.5
2
0 2 4 6 8 10
B6F70M-1B4F70M-1B6F45M-1B4F45M-1
(a) B6F70M-1 (b) B4F70M-1 (c) B6F45M-1 (d) B6S49M-3材質及び径厚比が異なる円形管部材の最終状態
(a)材質の違い (b)径厚比の違い円形管部材の荷重変形関係
2.2 球状黒鉛鋳鉄円形管部材の最大耐力と塑性変形性能
16
脆性破面
延性破面
延性・脆性破面混在
延性破面
延性破面
脆性破面
境界面
へき開
ディンプル
へき開
ディンプル
ディンプル
(b) SEM
(c) SEM300倍B6F70M-1 B4F70M-1 B6F45M-1
(a)破断面
2.2 球状黒鉛鋳鉄円形管部材の最大耐力と塑性変形性能
17
◆繰り返し載荷実験により局部座屈崩壊型となるH形鋼梁の塑性
変形倍率や累積塑性変形倍率の評価式を提示した。繰り返し載荷履歴曲線も正確に評価できる。
◆制振鋼構造におけるH形鋼梁については交番繰り返し軸力の影響を考慮した評価法を初めて提示した。
◆建築分野では適用例がない鋳鉄管部材の力学挙動を明らかにし,建築用構造部材への適用の可能性を示した。
2章 鋼構造骨組における部材の崩壊挙動と保有性能評価
3章 大空間構造におけるH形鋼部材の横座屈と
非構造部材による補剛効果
3.1 H形鋼圧縮部材の座屈応力度に及ぼす非構造部材の必要補剛剛性・補剛耐力評価
3.2 H形鋼梁の横座屈応力度に及ぼす引張側フランジ補剛材の必要補剛剛性・補剛耐力評価
19
実際の建築物は構造部材と非構造部材で構成されるため,地震時に1)構造部材の損傷に伴い,非構造部材でも被害を生じる現象,2)非構造部材が構造部材の損傷を抑制する現象が確認されている。
実際の建築物は耐震設計時の解析モデルと異なるため,正確な地震応答や耐震性能を把握することは難しい。
本章では,3.1節では圧縮荷重を受けるH形鋼部材の曲げ座屈に対する非構造部材の座屈補剛効果と座屈誘発作用を,3.2節では曲げモーメントを受けるH形鋼梁の横座屈に対する補剛効果を明らかにする。
非構造部材が取り付いたH形鋼梁の横座屈
M1 M2
引張応力領域圧縮応力領域
非補剛部材(屋根折板)
曲げモーメントを受ける梁の応力分布
母屋材
3章 大空間構造におけるH形鋼部材の横座屈と非構造部材による補剛効果
屋根折板
20
( )2 2 2 2 2 2 211 12 21 221 2 11 1 21 20
1
2
l
f u
P P P PU EI u u GK k u k P z u P z u dz
l lββ β − − ′′ ′′ ′ ′ ′ ′ ′= + + + + − − − −
∫
ku:補剛材の
水平剛性
kβ:補剛材の
回転剛性
EIf : 上下フランジの曲げ剛性
GK : 梁の捩り剛性
P1,2 :曲げモーメント荷重
β
ud
u1
u2
α1
α2
水平補剛剛性
回転補剛剛性
:ウェブ変形
:捩れ変形
:ウェブ変形
3章 大空間構造におけるH形鋼部材の横座屈と非構造部材による補剛効果
( ) ( )2 22
1 2w f fGK GK GK GKβ β α β α′ ′′ ′ ′= + − + −ただし,
21
0
0.2
0.4
0.6
0.8
-1 -0.5 0 0.5 1m
(3),(9),(11)式(Type B)(8),(11)式(Type A)
LF座屈
(3),(8),(11)式(Type A)k
u/k
u0=0.5k
u/k
u0=1.0
σcr
(×103N/mm2)
b/h=0.5 λ1=200
χ2=0.56
UF座屈
LF座屈UF座屈
等曲げモーメント(m=-1.0)
(6)
(7)
連続補剛(水平・回転補剛) [2.4.2項,2.4.4項]
(3)
, , 1.0cr m N cr bP P C−= ⋅20.3 1.05 1.75 2.3bC m m= + + ≤
(2)
(1)
無補剛( -1.0≦m≦1.0) [2.4.1項]
連続補剛(水平及び回転補剛) [2.4.2項,2.4.4項]
( ){ }1.35 0.5 0.5 1.675bm mC C µ′ ′= = − + +・( 0.5<m≤ 1.0)
(11)
( ) 2
,1 20 1u u rek kµ −′ = − + (12)
・( -1.0 ≤m≤ 0.5)
bmC C= (10)
, 1.0A crP −Type A :(4)式(参考文献14))
, 1.0B crP −Type B :(5)式(参考文献14))
, 1.0 , 1.0A k A cr N crP P P− −= −
, 1.0 , 1.0B k B cr N crP P P− −= −
, , 1.0A cr m N cr Am kP P PC−= ⋅ +
, , 1.0B cr m N cr Bm kP P PC−= ⋅ +
Type B
Type A
, 1.0N crP −k’β =0
無補剛
(8)
(9)Type B
Type A
勾配曲げモーメント
モーメント勾配係数:Cb連続補剛-無補剛の差分=連続補剛による荷重上昇量
:APk ,BPk
[2.4.2項,2.4.4項]
[2.4.3項][2.4.1項]
k’u=0
0
0.5
1
0 50 100 150 200 250
ku/k
u0=0.5
b/h=0.5無補剛
n=1 n=2
n=1 n=2
n=3n=2
λ1
(3),(9),(11)式(Type B)
σcr
(×103N/mm2)
(3),(8),(11)式(Type A)
3.2 H形鋼梁の横座屈応力度に及ぼす引張側フランジ補剛材の必要補剛剛性・補剛耐力評価
弾性横座屈応力度
等曲げ
逆対称曲げ
1-0勾配
~~
引張側圧縮側無補剛
22
弾塑性横座屈耐力(圧縮フランジ補剛) 弾塑性横座屈耐力(引張フランジ補剛)
0
0.4
0.6
0.8
1
1.2
00.4 0.6 0.8 1 1.2 1.4 1.6 1.8 2
Mmax
/Mp
eλ
b
λb
鋼構造限界状態設計指針・同解説
等曲げ
逆対称曲げ
一端曲げ
0
0.4
0.6
0.8
1
1.2
00.4 0.6 0.8 1 1.2 1.4 1.6 1.8 2
Mmax
/Mp
eλ
b
λb
鋼構造限界状態設計指針・同解説
等曲げ
逆対称曲げ
一端曲げ
3.2 H形鋼梁の横座屈応力度に及ぼす引張側フランジ補剛材の必要補剛剛性・補剛耐力評価
連続補剛もしくは一点補剛されたH形鋼梁の弾塑性座屈応力度は,設計指針の
座屈曲線に誘導した弾性座屈荷重式を適用した修正一般化細長比を用いることで,補剛形式によらず安全側に評価できる
0
0.4
0.6
0.8
1
1.2
00.4 0.6 0.8 1 1.2 1.4 1.6 1.8 2
Mmax
/Mp
eλ
b
λb
鋼構造限界状態設計指針・同解説
等曲げ
逆対称曲げ
一端曲げ
0
0.4
0.6
0.8
1
1.2
00.4 0.6 0.8 1 1.2 1.4 1.6 1.8 2
鋼構造限界状態設計指針・同解説
Mmax
/Mp
eλ
b
等曲げ
逆対称曲げ
一端曲げ
λb
弾塑性横座屈耐力(等曲げ) 弾塑性横座屈耐力(勾配曲げ)
23
3.2 H形鋼梁の横座屈応力度に及ぼす引張側フランジ補剛材の必要補剛剛性・補剛耐力評価
連続補剛
等曲げ
勾配曲げ
無補剛 圧縮側 引張側
同様に,連続補剛もしくは一点補剛されたH形鋼梁の弾塑性座屈応力度は修正一般化細長比を用いることで荷重条件によらず,安全側に評価できる
連続補剛
等曲げ
勾配曲げ
無補剛 圧縮側 引張側
3章 大空間構造におけるH形鋼部材の横座屈と非構造部材による補剛効果
24
◆学校体育館等の大空間鉄骨ラーメン構造において,軸力や曲げを受けるH形鋼部材の曲げ座屈や横座屈,ウェブの板曲げ変形に
よる連成座屈に対して,それに取り付く母屋材や屋根折板等の非構造部材の座屈拘束効果や誘発作用の影響を,エネルギー法を基にした変分原理から誘導した弾性座屈荷重式により明らかにした。
◆載荷実験および弾塑性大変形解析により,非構造部材が取り付いた場合の弾塑性座屈応力度を求め,従来の座屈設計式に準用する方法を提案した。
4章 液状化地盤における鋼管杭の
曲げ座屈耐力評価に及ぼす地盤特性の影響
4.1 液状化地盤において鉛直荷重を受ける鋼管杭の曲げ座屈耐力評価
4.2 液状化地盤において鉛直及び水平荷重を受ける鋼管杭の
終局耐力評価
4章 液状化地盤における鋼管杭の曲げ座屈耐力評価に及ぼす地盤特性の影響
さらに上屋構造物の転倒モーメントによる偶力が杭に軸力として作用すると
地盤の水平剛性が低下する
地震動により地盤が液状化すると
杭に作用する軸力が増大する
杭の曲げ座屈に対する細長比制限が規定されていない
軟弱な地盤であっても地盤は杭の曲げ座屈に対して水平変形を拘束できると考えられている
建築基礎構造設計指針では・・
杭に曲げ座屈を生じる可能性がある
自重慣性力
慣性力による水平力
地盤抵抗
液状化層
P-Δ効果による偶力
26
80
60
60
75
260
60
110
40
40
40
40
40
40
h
xi yi
280
Y
100
200
0
200200
加速度計歪ゲージ
水圧計板バネX
基礎部
杭材A,C
せん断土槽
上屋構造物
杭材B,D
加振方向
単位:[mm]
基礎部拘束治具
◆試験体概要
試験体及び計測位置
試験体(上面)模型
スケール実大
スケール上屋
重量(N)30.5 1.95×106
基礎部重量(N)
13.0 8.30×105
板バネ厚さ(mm)
2.0 80.0
杭径(mm) 6 240
杭板厚(mm) 0.5 20
初期軸力比 0.37 0.37
杭長(mm) 260 1.04×104
・上部構造物-杭-液状化地盤系・基礎部の水平変形を拘束・杭材;真鍮, アルミ
27
4.1 液状化地盤において鉛直荷重を受ける鋼管杭の曲げ座屈耐力評価
450
150
60
80
40
杭A
杭D
杭B
上屋構造物
杭C
せん断土槽基礎部拘束治具
試験体杭材
杭長l (mm)
初期軸力N0(kN)
(初期軸力比)
板バネ長さ
h (mm)
上屋構造物の固有周期
T(s)
地盤の相対密度
Dr (%)入力波
入力波最大加速度(m/s2)
加振後の杭の性状
Case 1-1
アルミ
60000.37
1800 0.79
- Sweep
1.0 弾性2.5 崩壊
Case 1-2 4.5 崩壊
Case 1-31400 0.59
1.0 弾性2.5 崩壊
Case 1-4 3.0 崩壊
Case 1-59600
1800 0.791.0 弾性1.8 崩壊
Case 1-6真鍮
0.13 1400 0.591.0 弾性5.5 崩壊
Case 2-1アルミ 10400
0.37
1400 0.59 30Sweep 3.0
崩壊Case 2-2 1800 0.79 30 崩壊Case 2-3
1400 0.59
60 崩壊Case 2-4 30 臨海波 6.9 崩壊
Case 2-5真鍮
0.13 30 Sweep 3.0崩壊無し(塑性化)
28
*実大スケール
4.1 液状化地盤において鉛直荷重を受ける鋼管杭の曲げ座屈耐力評価
試験体一覧
0
0.8
0 10 20
杭B 杭A,C,Dε bi (%)
sec
0 5 10 15 20
0
Nb (×103kN)
sec
2.0
-2.0
0
1.0
0 10 20 sec水圧計①
ru
動座屈発生時
◆基準試験体Case2-1の応答性状
入力波時刻歴
過剰間隙水圧比応答時刻歴
29
杭に作用する軸力応答時刻歴
杭中央部の曲げ歪時刻歴
杭下端
鋼管杭の最終変形状態
杭中央
杭全体
sec-10
0
10
0 5 10 15 20
a (m/s2)
16.5
液状化発生時
4.1 液状化地盤において鉛直荷重を受ける鋼管杭の曲げ座屈耐力評価
弾性曲げ座屈荷重Pcr
(a)解析モデル (b)境界条件 (c)地盤条件
鋼管杭の境界条件及び地盤反力分布42 /3 cl EI Kπ>
42 /3 cl EI Kπ≤2 4
34
4c
cr
l KP EI
l EI
ππ
= +
( )2 2
8 1 1/ 3 2 /cr c
lP EI K EI
l
ππ
= − +
(i)両端固定支持
(ii)杭頭固定ローラー・下端固定支持22 2 2 2
2 2
1 64 1 6420 15 20 15 16
8 8cr c c
l lP EI K EI K X
l l
π ππ π π π
= − − − − − − ⋅
( )4 4
2 2
2 2 4
256 304 102416 51 5
9 81c c
lX EI K EI K
l
ππ π π π
= + − + − −
2 26 7
/5 6cr c
lP EI EI K
l
ππ
= +
( )40.63 /π >cK EI l
( )40.63 /π≥ cl K EI
エネルギー法により導出する
30
y
P
l
P P地盤反力分布
x
0
4.1 液状化地盤において鉛直荷重を受ける鋼管杭の曲げ座屈耐力評価
0
0.2
0.4
0.6
0.8
1
0 0.5 1 1.5
σ cr0
/σy
鋼構造限界状態設計指針- - - 鋼構造設計規準
弾塑性曲げ座屈応力度
cλ
骨組 単杭 実験地盤なし地盤あり
▲△
●〇
■□
弾塑性大変形解析遠心載荷実験 により算出
+ 静的増分解析結果一般化細長比
/λ =c y crP P
crP :弾性曲げ座屈荷重
エネルギー法を用いて導出し,弾性固有値解析により妥当性を確認している
杭の弾塑性座屈応力度は,設計指針の座屈曲線に杭の弾性座屈荷重式を適用した一般化細長比を用いて安全側に評価できる 31
液状化地盤における鋼管杭の弾塑性座屈応力度
4.1 液状化地盤において鉛直荷重を受ける鋼管杭の曲げ座屈耐力評価
Mmax
/Mp
0
0.2
0.4
0.6
0.8
1
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1
Nmax
/Ncr0
杭の弾塑性耐力は,曲げ座屈耐力を考慮することで,文献21)のM-N終局耐力曲線により評価できる
建築基礎構造設計指針鋼構造限界状態設計指針業績21) 終局耐力曲線
全塑性曲げモーメント
弾塑性曲げ座屈荷重
32
等分布三角形分布
数値解析結果λ=60 90 120
4.2 液状化地盤において鉛直及び水平荷重を受ける鋼管杭の終局耐力評価
液状化地盤における鋼管杭の終局耐力
N
l
0
x
l
y
u
N数値解析モデル
P P
三角形地盤反力分布地盤バネ
EI
4章 液状化地盤における鋼管杭の曲げ座屈耐力評価に及ぼす地盤特性の影響
33
◆実構造物における上屋の水平変形や基礎梁の回転抵抗及び地盤の水平剛性を考慮して誘導した杭の弾性座屈荷重式を修正一般化細長比に適用し,この修正細長比による圧縮材の座屈設計式を,軸力と曲げを受ける鋼管杭の終局耐力式に適用することで,これまで検討されてこなかった鋼管杭の終局耐力設計を可能にした。
◆杭の動座屈により上屋-杭基礎において,杭の動座屈発生後の応力再配分により複数の杭が崩壊することで,上屋構造の不安定現象を生じることを遠心載荷実験により世界で初めて明らかにした。
5章 層崩壊を生じる鋼構造骨組の終局耐震能力評価と層崩壊回避システムの提案
5.1 剛接梁を有さない通し柱による鋼構造骨組の層間変形集中の抑制効果
5.2 最下層柱脚を損傷させない柱脚機構を適用した鉄骨ラーメン骨組の終局耐震性能
35
1995年の兵庫県南部地震では,梁や柱の局部座屈や梁端の破断により,数多くの鉄骨ラーメン構造で層崩壊や倒壊を生じ,2007
年のE-ディフェンスによる実大4層鉄骨ラーメン骨組の倒壊実験では,最下層柱の局部座屈による層崩壊が検証された。
部材が崩壊するときの塑性変形能力を適切に把握することで,骨組の層崩壊や倒壊の過程を解明でき,終局時の骨組の保有性能を評価できることから,本章では,骨組内における部材の損傷に対する抑制効果や誘発作用等の相互作用を明確にし,骨組の倒壊を防ぐシステムを構築する。
5.1節では,鋼構造ブレース骨組層間変形集中を抑制する,剛接梁を有さない通し柱の効果を明らかにし,5.2節では梁先行降伏型
の鋼構造ラーメン骨組における最下層柱脚の降伏を回避し,架構の倒壊を防ぐ新しい柱脚機構により最下層の層間変形集中及び層崩壊を防ぐための要求性能を提示する。
5章 層崩壊を生じる鋼構造骨組の終局耐震能力評価と層崩壊回避システムの提案
5.1 剛接梁を有さない通し柱による鋼構造骨組の
層間変形集中の抑制効果
36
δ2F2
F1
b
∆2=µcr∆2cr(∆2cr:座屈変位)
l
∆1(=δ1)
b bθ
EAbi
EIi
h
h
H
h
h
H
V
µ
V
µ
K /2
Vfit
fity
i
s1 crs1
χ K /2
Vfi
1
Vficr
µcrµs1 µs2
Vficr0
Vfiy
(1+χ )K /2K
i
i
i
i
K =EA /li i
ii i
Vfic
µcr
Vficcr
Ki /2
χi Ki /2
1
Vs2=F2=2/3Vs1
Vs1=F1+F2
Vf2
= +
Vf1
Vc
Vc
Mc=Vch
+ =
(a)引張側ブレース (b)圧縮側ブレース (c)ブレース全体ブレース材に作用するせん断力と座屈変形倍率
二層ブレース架構モデル 座屈劣化型二層ブレース架構の応力
37
0
0.2
0.4
0.6
0.8
1B
D
F
H
Vsi/W
1
δi/h
下層(λ=80)上層(λ=80)
上層(λ=120)下層(λ=120)
▼
下層ブレース座屈
▼
▼
(×10-2)0.2 10.80.60.4
下層ブレース降伏
0
完全弾塑性[文献7)]
1
1.2
1.4
1.6
1.8
2
0.001 0.01 0.1 1
γ
α
λ=40λ=80λ=120λ=160
(31)式 解析結果
γ2.0
1.8
1.6
1.4
1.2
1.00.001 0.01 0.1 1 α
0
0.1
0.2
0.3
0.4
0.001 0.01 0.1 1
Mc/V
f1yh
α
λ=40 λ=80 λ=120 λ=160(32)式
解析結果
0.16
0.073
0.0320.011
①
②
①:弱軸H形鋼(H-400×400×15×15)②:強軸H形鋼(H-400×400×15×15)③:円形鋼管(○-400×7.9)
③
0.30
0.013
層せん断力-層間変形角関係
層間変形集中率-柱曲げ剛性比関係 柱の曲げモーメント-曲げ剛性比関係
5.1 剛接梁を有さない通し柱による鋼構造骨組の
層間変形集中の抑制効果
38
1
1.25
1.5
1.75
2
1 1.25 1.5 1.75 2
γd
γ , γ n
λ=40λ=80
λ=160λ=120
文献7)
γ [(31)式] γn [(33)式]
文献7)
0.001
0.01
0.1
1
0.001 0.01 0.1 1
Mcd
/Vf1y
hλ=40λ=80 λ=160
λ=120
Mc/V
f1yh
0.13(λ=160)
0.21(λ=40)
Mcd
/Vf1y
h
0.1
0.01
0.0010.001 0.01 0.1 M
c/V
f1yh
λ=40 λ=120 文献7)λ=80 λ=160
動的及び静的層間変形集中率の比較 動的及び静的作用曲げモーメントの比較
5.1 剛接梁を有さない通し柱による鋼構造骨組の
層間変形集中の抑制効果
5.2 最下層柱脚を損傷させない柱脚機構を適用した鉄骨ラーメン骨組の終局耐震性能
39
従来の鉄骨ラーメン構造
塑性ヒンジ
塑性ヒンジ
1階で柱脚部で塑性化後,柱頭でも塑性化し,建物は倒壊に至る可能性がある
ピン接合
鉄骨梁
新しい最下層柱脚を有する鉄骨ラーメン構造
塑性ヒンジ
鉄骨柱
RC柱
・ 1階中間高さ以下をRC構造とする・1階中間部で下部のRC柱と上部の鉄
骨柱をピン接合とする
1階柱脚部における柱を塑性化させず,建物の倒壊を防ぐことができる
5.2 最下層柱脚を損傷させない柱脚機構を適用した鉄骨ラーメン骨組の終局耐震性能
③コストの軽減柱脚部の作業性の向上鋼材量の削減
②工期の短縮コンクリート打設と鉄骨建て方のタイムラグの解消
①高い安全性の実現大地震時の建物の倒壊を防ぐ
支圧プレート
アンカーボルト
保護プレート
鉄骨柱
RC柱
新しい柱脚形式
接合部高さ
簡易接合
鋼材量の削減
41
ピン接合
6@3
.60
m
鉄骨部材
RC部材
支配面積
解析構面2@9.
00m
ピンローラー
ピン接合
F6
F5
F4
F3
F2
F1
F6
F5
F4
F3
F2
F1
wi wi
柱梁耐力比層数
骨組名称の記号A-6-1.4
A:提案型 B:埋め込み型
00.10.20.30.40.50.6
0 0.020.040.060.08 0.1
1
1
1
1Q1/W・R
t
δ2/h
A-6-1.4B-6-1.4A'-6-1.4B'-6-1.4
123456
0 0.050.1
n
δi/h(a)鉄骨ラーメン骨組 (b)魚骨型骨組
数値解析モデル 層せん断力―
層間変形角関係層間変形角分布
5.2 最下層柱脚を損傷させない柱脚機構を適用した鉄骨ラーメン骨組の終局耐震性能
42
0
2
4
6
8
10
0 2 4 6 8 10
柱
柱
柱
柱
柱
ラーメン骨組
魚骨形骨組
A-6-1.2A-6-1.4A-6-1.6A-6-1.8B-6-1.4
ηc
ηc
0
2
4
6
8
10
0 2 4 6 8 10
ラーメン骨組
魚骨形骨組 ηb
ηb
A-6-1.2A-6-1.4A-6-1.6A-6-1.8B-6-1.4
0
0.01
0.02
0.03
0.04
0 0.01 0.02 0.03 0.04
δ2/h
δ2/h
ラーメン骨組
魚骨形骨組
A-6-1.2A-6-1.4A-6-1.6A-6-1.8B-6-1.4
ηc
柱
梁
ηb
0 5 10 150
5
10
15
ηb
15
10
5
00 5 10 15
ηc
梁
柱 柱
梁
ηc0 5 10 15
梁
柱
0 5 10 15η
c
柱
梁
ηc0 5 10 150 5 10 15
ηc
梁
柱
(a) 3層骨組 (b)6層骨組 (c)9層骨組柱及び梁の累積塑性変形倍率分布(提案型柱脚)
(a)柱の累積塑性変形倍率 (b)梁の累積塑性変形倍率 (c)最大層間変形角提案型柱脚を有する3層ラーメン骨組と魚骨型骨組の地震応答解析結果の比較
5.2 最下層柱脚を損傷させない柱脚機構を適用した鉄骨ラーメン骨組の終局耐震性能
43
Σ Mr= Σ Mp・τ τ = 1.1(歪硬化考慮)τ = 1.0(考慮なし)
Σ Mq=F3・(h3+h2+(h1-h’))+F2・(h2+(h1-h’))+F1・(h1-h’)
Ds=0.2・Σ Mr /Σ Mq
架構の保有水平耐力
・抵抗曲げモーメント
・転倒モーメント
崩壊メカニズム
F3
F2
F1
鉄骨柱支点部
RC柱
h3
h2
h1h'
Mr:梁の抵抗曲げ モーメントの最大値
5.2 最下層柱脚を損傷させない柱脚機構を適用した鉄骨ラーメン骨組の終局耐震性能
0
0.2
0.4
0.6
0 0.01 0.02 0.03δ
i/h
Qi/WR
t
44
0 0.01 0.02 0.03δ
i/h(a)提案型柱脚 (b)埋め込み型柱脚
τ=1.1
τ=1.0
3.0(1.1)
2.8(1.1)
4.9 (1.1)
5 4 3 2 1µ =柱脚形式が異なる3層骨組の層せん断力-層間変形角関係
τ=1.1
τ=1.0 1層
2層
3層
1層
2層
3層
5.2 最下層柱脚を損傷させない柱脚機構を適用した鉄骨ラーメン骨組の終局耐震性能
45
鉄骨柱(□-200×200×9)
RC柱 400×400
基礎梁
スケール:2/3
鉄骨梁(H-194×150×6×9)
柱梁耐力比=1.74
2000kNアクチュエーター
埋め込み型
シアキャップ型 シアプレート型
架構変形角0.03 rad
部分架構試験体
5.2 最下層柱脚を損傷させない柱脚機構を適用した鉄骨ラーメン骨組の終局耐震性能
46
圧縮実験(接合部の圧縮力耐力の把握)
試験体
アムスラーヘッド試験体 実験変数
SP-c1 基準
SP-c2保護PL厚
SP-c3
SP-c4保護PL径
SP-c5
SP-c6 支圧PL無し
SP-c7支圧PL長さ
SP-c8
SP-c9SP-c1+スタッド
SP-c10
SP-c11支圧PL付着無
し
SC-c1SC側面長さ
SC-c2
SC-c3 SC厚
Lc=
80
0
Dc = 400
Lc=
40
0
フープ筋(D10@100)
アンカーボルトM33
ピンプレートφ100
主筋(12-D19)
鋼板
アムスラー載荷盤
ベースプレート 保護プレート
載荷荷重 N
(*1) せん断補強筋比=0.39
5.2 最下層柱脚を損傷させない柱脚機構を適用した鉄骨ラーメン骨組の終局耐震性能
試験体リスト
試験体形状
0
500
1000
1500
2000
2500N (kN)
47
N
(I)(II)
(III)
N:圧縮力 (I):保護プレートによる支圧
(II):支圧プレートの摩擦
(III) :支圧プレート下面からの支圧
棒グラフ:RC断面負担最大時(NRC,max) プロット:最大荷重時(Nmax)
Psp
(=PIII )
PRC(= PI+PII)
圧縮実験(接合部の圧縮力耐力の把握)
0
500
1000
1500
2000
2500
0 2.5 5 7.5 10δ (mm)
N (kN)
( )1
2/s c sFc A Aσ =
SP-c1 SP-c11
(I)での破壊時
5.2 最下層柱脚を損傷させない柱脚機構を適用した鉄骨ラーメン骨組の終局耐震性能
試験体
アムスラーヘッド
48
最下層柱脚を損傷させない柱脚機構の適用事例
5.2 最下層柱脚を損傷させない柱脚機構を適用した鉄骨ラーメン骨組の終局耐震性能
49
◆剛接梁を有さない通し柱を活用し,層崩壊を防ぐために通し柱に要求される曲げ剛性や耐力に関する実用性の高い設計式を提示した。
◆大地震時に骨組が倒壊する原因である最下層柱脚の損傷を回避した新しい柱脚機構を提案し,2章で得られた梁の塑性変形性能
を用いて,本柱脚機構を有する骨組の保有水平耐力評価や柱が弾性保持するための曲げ剛性と耐力の要求値を明らかにし,現行の耐震設計法に適用できる簡便な評価法を提案した。
5章 層崩壊を生じる鋼構造骨組の終局耐震能力評価と層崩壊回避システムの提案
6章 まとめ
本研究は,非構造部材や地盤の座屈拘束・誘発作用を考慮し,座屈崩壊する構造部材の保有性能の評価式を構築し,骨組の終局耐震能力に適用するとともに,耐震安全性を高めた構法を実用化したものである。
2章では,鋼構造骨組の層崩壊や倒壊時の終局耐震能力を把握するために,局部座屈崩壊型となる梁の保有性能を明らかにした。
3章では,学校体育館等の大空間鉄骨ラーメン構造において,軸力や曲げを受けるH形鋼部材の曲げ座屈や横座屈,ウェブの板曲
げ変形による連成座屈に対して,それに取り付く母屋材や屋根折板等の非構造部材の座屈拘束効果や誘発作用の影響を明らかにした。
50
4章では,実構造物における上屋の水平変形や基礎梁の回転抵
抗及び地盤の水平剛性を考慮した杭の弾塑性座屈応力度式及び軸力と曲げを受ける鋼管杭の終局耐力式を提示した。そして,上屋-杭基礎の遠心載荷実験を行い,杭の動座屈発生後の応力再配分により複数の杭が崩壊することで,上屋構造の不安定現象を生じることを明らかにした。
5章では,剛接梁を有さない通し柱により層崩壊を防ぐシステムを
提案した。さらに,大地震時に骨組が倒壊する原因である最下層柱脚の損傷を回避した新しい柱脚機構を提案し,本柱脚機構を有する骨組の保有水平耐力評価や柱が弾性保持するための曲げ剛性と耐力の要求値を明らかにした。
なお,本柱脚構法を適用した中低層鉄骨ラーメン建物が7年間で7
棟が竣工,1棟が着工している。
51
6章 まとめ
研究業績リスト
52
2章関連1) 木村祥裕:局部座屈崩壊型H形鋼梁の塑性変形性能と累積塑性変形性能に及ぼす載荷
履歴特性の影響―片持ち梁形式の載荷実験データベースの構築―,日本建築学会構造系論文集,第76巻,第664号,pp.1143-1151 (2011.6)
2) 木村祥裕,山西央朗,笠井和彦:交番繰り返し軸力を受けるH形鋼梁の繰り返し履歴挙動と保有性能,日本建築学会構造系論文集,第78巻,689号,pp.1307-1316 (2013.7)
3) 木村祥裕,山口貴之,原田哲夫,古賀瞬斗:曲げモーメントを受ける球状黒鉛鋳鉄管部材の塑性変形性状,日本建築学会構造系論文集,第78巻,683号,pp.183-192 (2013.1)
4) 木村祥裕,山口貴之,原田哲夫:球状黒鉛鋳鉄管部材の終局挙動に及ぼす表面状態の影響,日本建築学会構造系論文集,第79巻,700号,pp.529-537 (2014.6)
53
3章関連5) 木村祥裕,小河利行:偏心補剛されたH形鋼圧縮部材の座屈荷重と必要補剛剛性,日本
建築学会構造系論文集,第574号,pp.213-218 (2003.12)
6) 木村祥裕,小河利行,正岡典夫,山下哲郎:偏心補剛されたH形鋼圧縮部材の必要補剛剛性と必要補剛耐力,日本建築学会構造系論文集,第585号,pp.207-213 (2004.11)
7) 木村祥裕,天本朱美:偏心補剛されたH形鋼圧縮部材の座屈荷重に及ぼすウェブ変形の影響,日本建築学会構造系論文集,第600号,pp.187-193 (2006.2)
8) 木村祥裕,天本朱美:ウェブ変形の影響を考慮したH形鋼圧縮部材の座屈荷重に及ぼす偏心補剛材の水平及び回転拘束効果,日本建築学会構造系論文集,第74巻,第637号,pp.583-591 (2009.3)
9) 木村祥裕,天本朱美:材長方向に連続偏心補剛されたH形鋼圧縮部材の曲げ座屈荷重に対する回転補剛剛性及びウェブ変形の影響,日本建築学会構造系論文集,第614号,pp.147-153 (2007.4)
10) 木村祥裕,天本朱美:H形鋼圧縮部材の座屈応力度に及ぼす連続偏心補剛材の水平及び回転拘束効果と補剛力,日本建築学会構造系論文集,第75巻,第648号,pp.435-442
(2010.2)
11) 木村祥裕,吉野裕貴:引張側フランジ補剛されたH形鋼梁の横座屈荷重と必要補剛性能,日本建築学会構造系論文集,第76巻,第670号,pp.2143-2152 (2011.12)
12) 木村祥裕,吉野裕貴:曲げモーメント勾配を有するH形鋼梁の横座屈荷重に及ぼす補剛材の水平及び回転拘束効果,日本建築学会構造系論文集,第79巻,第700号,pp.761-
770 (2014.6)
研究業績リスト
54
3章関連13) 木村祥裕,吉野裕貴,小川淳子:引張側フランジ補剛されたH形鋼梁の横座屈荷重に及
ぼす連続補剛材の水平・回転拘束効果と補剛耐力,日本建築学会構造系論文集,第78
巻,第683号,pp.193-201 (2013.1)
14) 木村祥裕,吉野裕貴:勾配曲げモーメントを受ける上フランジ連続補剛H形鋼梁の横座屈荷重に及ぼす連続補剛材の水平及び回転拘束効果,日本建築学会構造系論文集,第81
巻,第726号,pp.1309-1319 (2016.8)
15) 木村祥裕,松尾健志,吉野裕貴:軸力と等曲げモーメントを受ける上フランジ補剛H形鋼梁の弾塑性横座屈応力度評価,日本建築学会構造系論文集,第79巻,第703号,pp. 1299-
1308 (2014.9)
16) 木村祥裕,杉田弥生,吉野裕貴:等曲げモーメントと圧縮軸力を受ける上フランジ連続補剛H形鋼梁の横座屈荷重と連続補剛材の水平・回転拘束効果,日本建築学会構造系論文集,第81巻,第726号,pp. 1321-1331 (2016.8)
研究業績リスト
55
4章関連
17) 木村祥裕,時松孝次:液状化地盤において鉛直荷重を受ける鋼管単杭の曲げ座屈応力度,日本建築学会構造系論文集,第595号,pp.73-78 (2005.9)
18) 木村祥裕,時松孝次:液状化地盤において杭頭水平変位を伴う鋼管単杭の曲げ座屈応力度,日本建築学会構造系論文集,第617号,pp.169-175 (2007.7)
19) 木村祥裕,時松孝次:液状化地盤において杭頭回転拘束を受ける鋼管杭の曲げ座屈応力度,日本建築学会構造系論文集,第74巻,第638号,pp.721-730 (2009.4)
20) 木村祥裕,岸野泰典,田村修次:遠心載荷装置を用いた上屋・杭基礎-液状化地盤系における中空円形断面杭の動座屈実験,日本建築学会構造系論文集,第80巻717号,pp.1707-1716 (2015.11)
21) 木村祥裕,時松孝次:液状化地盤において一定軸力及び水平力を受ける鋼管杭の最大耐力と終局曲げモーメント,日本建築学会構造系論文集,第77巻,第675号,pp.775-781
(2012.5)
研究業績リスト
56
5章関連
22) 木村祥裕,松尾陽平,中澤泰典:強震を受ける座屈劣化型二層ブレース構造物の履歴吸収エネルギーと層間変形集中に対する弾性柱材曲げ剛性の影響,日本建築学会構造系論文集,第77巻,第672号,pp.293-301 (2012.2)
23) 木村祥裕,御幡結,中澤泰典:強震を受ける損傷制御型二層ブレース構造物の層間変形集中に対するブレース材の二次剛性の影響,日本建築学会構造系論文集,第75巻,第651号,pp.997-1004 (2010.5)
24) 木村祥裕,グレゴリー・マクレイ:柱脚固定された二層ブレース架構の層間変形集中に及ぼす柱材の曲げ剛性及び曲げ耐力の影響,日本建築学会構造系論文集,第593号,pp.153-160 (2005.7)
25) 木村祥裕:損傷制御型二層ブレース構造物の層間変形集中に対する弾性柱材の抑制効果,日本建築学会構造系論文集,第612号,pp.187-196 (2007.2)
26) 木村祥裕,岩間聡史:強震を受ける損傷制御型二層ブレース構造物の層間変形集中に対する柱脚回転剛性の影響,日本建築学会構造系論文集,第73巻,第628号,pp.973-
982 (2008.6)
27) 木村祥裕,金田勝徳,和田章:新しい柱脚支持機構を有する鉄骨ラーメン骨組の終局耐震能力及び柱の要求性能評価に対する魚骨形骨組の適用,日本建築学会構造系論文集,第77巻,第675号,pp.765-773 (2012.5)
28) 木村祥裕,金田勝徳,和田章:新しい柱脚機構を有する鉄骨ラーメン骨組の終局耐震能力と鉄骨柱支点部の作用力の算定法,日本建築学会構造系論文集,第78巻,688号,pp.1149-1158 (2013.6)
研究業績リスト
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29) 木村祥裕,古川幸,金田勝徳,渡辺亨,和田章:層中間型柱脚機構を有する鉄骨ラーメン骨組における最下層柱の圧縮力伝達機構と鉄骨柱支点部の圧縮耐力,日本建築学会構造系論文集,第80巻,712号,pp.905-915 (2015.6)
研究業績リスト
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謝辞
本研究は,東京工業大学,長崎大学,東北大学に所属していたときの研究成果であり,ご指導いただきました先生方,研究室の学生諸君とともに積み上げてきたものです。皆様に厚く御礼申し上げます。
これからも耐震工学の立場から建物の安全性を高める研究を進め,社会に貢献できる研究者であり続けるよう,精進していきます。