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取材を終えて 株式会社 泉 いずたに 谷印刷 代表取締役社長 泉谷 (いずたに)美津也 〒533-0021 大阪市東淀川区下新庄5-18-17 TEL. 06-6370-7014 FAX. 06-6370-7024 資本金/10,000千円 従業員/12名 主な取引先/印刷会社、デザイナー、メーカーなど 主な保有設備/オフセット印刷機、断才機、フィルム刷版機、 計数機、帯封機など 主力製品/名刺、はがき、チラシ、パンフレット、   カタログ、会社案内、新聞、冊子、手帳、 ポスターなど 79 株式会社 谷印刷 熟練職人の技術やノウハウを共有化し、 高品質の特色印刷を提供 σβΠϯ৭ͷΘΓ カラー印刷や特色印刷を得意とする印刷会社で、主 にパンフレットや学術的な文献、市販品の商用パッケー ジなど、デザインや色彩にこだわる印刷物を数多く手 がける。昭和43年に、泉 いずたに 谷美津也社長の父・鯉 りいつ 弌氏 が創業。小型オフセット印刷機1台で、美術印刷に取 り組むなど、当時から探求心や創意工夫の精神を持ち、 クオリティーの高い印刷物を生み出してきた。 ڠͳͰ৴པಘ 特に、印刷職人がインクの色を配合し、顧客の 希望した色を忠実に再現する特色印刷には自信を持 つ。例えば、商品パッケージは若干でも色が異なる と、商品やブランドのイメージが大きく変わってしま う。そのために、常に安定した色合いや発色が求め られる。インクや用紙の知識を身に付け、印刷機の 調整や品質管理を徹底し、妥協のない仕事を積み 重ねることで顧客の厚い信頼を得てきた。 事業内容 ৭ʹΔͷར カラー印刷は4色の網点を掛け合わせてさまざ まな色を再現するが、時に色が濁ってしまうなどの マイナス面もある。一方、特色印刷は、色見本を 参考にしながら複数のインクを配合し、手作業で 練り合わせて色を出す。色の掛け合わせはしないた め、カラー印刷よりも鮮やかに仕上がる。 ΠϯΫͷഇغίετߴ՝ ただ、インク調合の際、熟練職人はほぼ1回で必要量 を合わせられるが、若手は何度もやり直さないと目指す 色にはならない。時間もかかり、廃棄するインキ量も多 いという問題点があった。加えて、依頼ごとに印刷用の 版を作って対応しており、少部数の注文はコスト高になっ ていた。そのために受注を見送ることも少なくなかった。 これらの課題解決のために中小企業庁の「ものづくり 補助金」の活用を申請。インク調合作業の機械化や印 刷工程でのコストダウンを進めることにした。 補助事業 ௐ߹ɺ࿅Γ߹Θͷʹ 今回、補助事業ではインキ自動計量装置とフル カラー複写機を導入。インキ自動計量装置はイン クの配合量や割合を数値で管理することができ、 調合や練り合わせ工程は自動で作業が進む。1色 のインクを作り上げる所要時間はわずか5分。これ まで熟練職人の手作業でも20分は要しており、作 業時間を4分の1に短縮できた。 泉谷社長は「インクの調合や練り合わせの作業 中、ほかの仕事ができるようになり、作業の効率 化が進んだ。作業者によって色のばらつきが生じる ことがなくなり、若手技術者でも指定された色を 簡単に再現できるようになった」と話す。 খϩοτจʹରԠՄ また、作業のやり直しによる時間のロスがなく なったほか、廃棄するインク量も大きく減らすこと ができ、大幅なコスト削減が実現できた。 さらに、フルカラー複写機は印刷用の版を作る 必要がないため、小ロット(10―100枚)の特 色印刷の注文にも低コストで対応できるようになっ た。印刷用の版を作るコストは、従来の10分の1 まで引き下げることができたという。 具体的成果 धཁͷ ·ߴΓをडʹͳΔ ロゴにコーポレートカラーを用いたり販促物に共 通のイメージカラーを使ったりするなど、ビジュア ルを強く意識した戦略で、他社との差別化を図ろう とする企業が増えている。商品パッケージの分野で も、季節ごとのイベントや記念日などに合わせて特 別なデザインが求められるケースも多い。また、「通 常のカラー印刷とは異なる色使いや雰囲気を出し たい」というこだわりの強いデザイナーからの要望 も多く寄せられている。 このように特色印刷への需要の高まっており、受 注を着実に増やしていくのが今後の目標だ。 ͷߴज़をʹܧ平成7年にDTP設備を導入して、デジタル化にいち早く 対応。平成14年にはパソコン上で製作した印刷データを 直接、印刷用の版に焼き付けるCTPシステムを取り入れた。 技術革新が進展し、情報化や機械化が進んでも、顧 客の要望に柔軟に応えたり品質の高い印刷物を作ったり するには、熟練した職人の経験や勘は不可欠。泉谷社長 は「職人が持つ技術は当社にとって財産。印刷業界の将 来のためにも、これを次世代に引き継いでいきたい」と 想いを語る。 今後の戦略 特色印刷で仕上げた冊子など ࡐݪྉのߴۀଶのมԽɺҹྉ金のԼམͳͲɺҹۀքΛऔりרڥݫΛΔɻҹのاըσβΠϯの事ʹಛԽɺҹۀ࡞֎෦のۀʹΔҹձもΔɻ৬ਓΛɺઃඋΛ ɺज़のలܧঝʹΛೖΕΔઘ୩ҹのɺ·ޙࠓ·ॏཁ ʹͳΔΖɻʮઓʯʮΛҾܧʯͱઘ୩のݴ༿ʹɺҹ จԽのՐΛ౮ଓΔͱؾΛײɻ ҹจԽͷՐを ౮ଓΔଘ ʹࡏhttp://izutanip.co.jp/ 最新鋭の印刷設備をいち早く導入し、品質 の向上や作業の効率化に努めてきました。 難易度の高い仕事にチャレンジすることで 技術力が底上げされ、顧客の信頼にもつな がると考えています。 挑戦する姿勢を持ち続ける 代表取締役社長 いずたに 谷 美津也 導入したフルカラー複写機 自動計量装置を使ってインク調合 短納期 企画力 小ロット OK オンリー ワン技術 量産 OK 試作 OK 平成26・27年度ものづくり補助金成果事例集 平成26・27年度ものづくり補助金成果事例集 163 162

高品質の特色印刷を提供 - maido.or.jp · 主力製品/名刺、はがき、チラシ、パンフレット、 カタログ、会社案内、新聞、冊子、手帳、

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取材を終えて

株式会社 泉いずたに

谷印刷代表取締役社長 泉谷(いずたに) 美津也〒533-0021 大阪市東淀川区下新庄5-18-17TEL. 06-6370-7014  FAX. 06-6370-7024資本金/10,000千円 従業員/12名主な取引先/印刷会社、デザイナー、メーカーなど主な保有設備/オフセット印刷機、断才機、フィルム刷版機、

計数機、帯封機など主力製品/名刺、はがき、チラシ、パンフレット、  

カタログ、会社案内、新聞、冊子、手帳、ポスターなど

79株式会社 泉

い ず た に

谷印刷

熟練職人の技術やノウハウを共有化し、高品質の特色印刷を提供

デザインや色彩へのこだわりカラー印刷や特色印刷を得意とする印刷会社で、主

にパンフレットや学術的な文献、市販品の商用パッケージなど、デザインや色彩にこだわる印刷物を数多く手がける。昭和43年に、泉

いずたに谷美津也社長の父・鯉

り い つ弌氏

が創業。小型オフセット印刷機1台で、美術印刷に取り組むなど、当時から探求心や創意工夫の精神を持ち、クオリティーの高い印刷物を生み出してきた。

妥協なき仕事で信頼獲得特に、印刷職人がインクの色を配合し、顧客の

希望した色を忠実に再現する特色印刷には自信を持つ。例えば、商品パッケージは若干でも色が異なると、商品やブランドのイメージが大きく変わってしまう。そのために、常に安定した色合いや発色が求められる。インクや用紙の知識を身に付け、印刷機の調整や品質管理を徹底し、妥協のない仕事を積み重ねることで顧客の厚い信頼を得てきた。

事業内容

色鮮やかに仕上がるのが利点カラー印刷は4色の網点を掛け合わせてさまざ

まな色を再現するが、時に色が濁ってしまうなどのマイナス面もある。一方、特色印刷は、色見本を参考にしながら複数のインクを配合し、手作業で練り合わせて色を出す。色の掛け合わせはしないため、カラー印刷よりも鮮やかに仕上がる。

インクの廃棄やコスト高が課題ただ、インク調合の際、熟練職人はほぼ1回で必要量

を合わせられるが、若手は何度もやり直さないと目指す色にはならない。時間もかかり、廃棄するインキ量も多いという問題点があった。加えて、依頼ごとに印刷用の版を作って対応しており、少部数の注文はコスト高になっていた。そのために受注を見送ることも少なくなかった。

これらの課題解決のために中小企業庁の「ものづくり補助金」の活用を申請。インク調合作業の機械化や印刷工程でのコストダウンを進めることにした。

補助事業

調合、練り合わせ時間は4分の1に今回、補助事業ではインキ自動計量装置とフル

カラー複写機を導入。インキ自動計量装置はインクの配合量や割合を数値で管理することができ、調合や練り合わせ工程は自動で作業が進む。1色のインクを作り上げる所要時間はわずか5分。これまで熟練職人の手作業でも20分は要しており、作業時間を4分の1に短縮できた。

泉谷社長は「インクの調合や練り合わせの作業中、ほかの仕事ができるようになり、作業の効率化が進んだ。作業者によって色のばらつきが生じることがなくなり、若手技術者でも指定された色を簡単に再現できるようになった」と話す。

小ロット注文に対応可能また、作業のやり直しによる時間のロスがなく

なったほか、廃棄するインク量も大きく減らすことができ、大幅なコスト削減が実現できた。

さらに、フルカラー複写機は印刷用の版を作る必要がないため、小ロット(10―100枚)の特色印刷の注文にも低コストで対応できるようになった。印刷用の版を作るコストは、従来の10分の1まで引き下げることができたという。

具体的成果

需要の高まりを受注につなげるロゴにコーポレートカラーを用いたり販促物に共

通のイメージカラーを使ったりするなど、ビジュアルを強く意識した戦略で、他社との差別化を図ろうとする企業が増えている。商品パッケージの分野でも、季節ごとのイベントや記念日などに合わせて特別なデザインが求められるケースも多い。また、「通常のカラー印刷とは異なる色使いや雰囲気を出したい」というこだわりの強いデザイナーからの要望も多く寄せられている。

このように特色印刷への需要の高まっており、受注を着実に増やしていくのが今後の目標だ。

質の高い技術を次世代に継承平成7年にDTP設備を導入して、デジタル化にいち早く

対応。平成14年にはパソコン上で製作した印刷データを直接、印刷用の版に焼き付けるCTPシステムを取り入れた。

技術革新が進展し、情報化や機械化が進んでも、顧客の要望に柔軟に応えたり品質の高い印刷物を作ったりするには、熟練した職人の経験や勘は不可欠。泉谷社長は「職人が持つ技術は当社にとって財産。印刷業界の将来のためにも、これを次世代に引き継いでいきたい」と想いを語る。

今後の戦略

特色印刷で仕上げた冊子など

原材料の高騰や業態の変化、印刷料金の下落など、印刷業界を取り巻く環境は厳しさを増している。印刷物の企画やデザインの仕事に特化し、実際の印刷作業は外部の業者に任せる印刷会社も増えている。職人を抱え、設備を持ち、技術の発展や継承に力を入れる泉谷印刷の役割は、今後ますます重要になるだろう。「挑戦」や「財産を引き継ぐ」という泉谷社長の言葉には、印刷文化の火を灯し続けるという気概を感じた。

印刷文化の火を灯し続ける存在に

http://izutanip.co.jp/

最新鋭の印刷設備をいち早く導入し、品質の向上や作業の効率化に努めてきました。難易度の高い仕事にチャレンジすることで技術力が底上げされ、顧客の信頼にもつながると考えています。

挑戦する姿勢を持ち続ける

代表取締役社長 泉いずたに

谷 美津也

導入したフルカラー複写機

自動計量装置を使ってインク調合

短納期 企画力 小ロットOK

オンリーワン技術

量産OK

試作OK

平成26・27年度ものづくり補助金成果事例集平成26・27年度ものづくり補助金成果事例集

加工技術

部品部材

機 械

生活・サービス

素 材

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