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資料体として以下の2点を取り上げる。 1.Pilar Díaz, María Luisa Rodríguez, El subjuntivo 1 (nivel intermedio), Edinumen, 2002 2.José Amenós, Pilar Díaz, María Luisa Rodríguez, El subjuntivo 2 (nivel avanzado), Edinumen, 2008 これらはPaso a pasoシリーズの一環として出版されたものである。こ のシリーズはスペイン語文法の初級~中級レベルを対象にしたものが多い のだが、接続法に関するこの2冊は中級者と上級者を対象としている。近 年の接続法の研究成果も取り入れ、非常に充実したものとなっている。し かも、具体的なコンテキストの中で接続法がどのように使われているかを 豊富な用例とともに披露してくれるので非常に分かり易い。学習者向けの 研究ノート 白鷗大学論集 第33巻 第1号 スペイン語接続法に関する覚書(1) Algunas notas sobre el subjuntivo español(1) TAKAHASHI Setsuko 髙 橋 節 子 − 131 −

論集 本文(4c) 201809 0913 - CORE · 2019. 11. 23. · Edinumen, 2002 2.José Amenós, Pilar Díaz, María Luisa Rodríguez, El subjuntivo 2 (nivel avanzado), Edinumen, 2008

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 資料体として以下の2点を取り上げる。

1.Pilar Díaz, María Luisa Rodríguez, El subjuntivo 1 (nivel intermedio),

Edinumen, 2002

2.José Amenós, Pilar Díaz, María Luisa Rodríguez, El subjuntivo 2

(nivel avanzado), Edinumen, 2008

 これらはPaso a pasoシリーズの一環として出版されたものである。こ

のシリーズはスペイン語文法の初級~中級レベルを対象にしたものが多い

のだが、接続法に関するこの2冊は中級者と上級者を対象としている。近

年の接続法の研究成果も取り入れ、非常に充実したものとなっている。し

かも、具体的なコンテキストの中で接続法がどのように使われているかを

豊富な用例とともに披露してくれるので非常に分かり易い。学習者向けの

研究ノート

白鷗大学論集 第33巻 第1号

スペイン語接続法に関する覚書(1)

Algunas notas sobre el subjuntivo español(1)

TAKAHASHI Setsuko

髙 橋 節 子

− 131 −

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髙 橋 節 子

教材という体裁をとっているが、外国人教師にとっても示唆に富む内容で

ある。本稿では、El subjuntivo 1のみを扱い、El subjuntivo 2に関しては

次稿で取り上げる。また、日本語で出版された文法書の代表として、『中

級スペイン語文法』1(以下、『中級』と略する)を取り挙げ、必要に応じて

El subjuntivo 1との比較を試みることにする。

 El subjuntivo 1の1課と2課では「願望を表す接続法」が取り挙げられ

ている。『中級』を始め、日本の文法書では、願望を表す接続法として、

「ojalá+接続法」「que+接続法」に殊更違いを設けない2が、ここでは、「ojalá

+接続法」を現在と未来に対する願望(expresar deseos sobre el presente

y el futuro)、「que+接続法」は未来に対する願望を表す(para formular

deseos para el futuro)としている。つまり、未来に対する願望の場合には

どちらの表現を使ってもよいが、現在に対する願望の場合には「ojalá+

接続法」を使う、ということになる。

 現在に対する願望の例として挙がっているものが、次の2例である。

 1. ¡Ojalá no esté lloviendo!

  雨が降っていないといいな。

 2. ¡Ojalá mi vestido tuviera mangas!

  私のドレスに袖があったらよかったのに。

 1は結婚式の早朝に目覚めた花嫁がベッドの中でつぶやく、という設定

になっている。現在の天候がまだ分からない状態で使っているので、接続

法現在が使われている。2は雨の中、外で写真撮影をしている時のつぶや

1 山田善郎(監修)『中級スペイン語文法』、1995、白水社2  『中級』514ページでは、que, ojalá, ojalá queが願望文として同列に扱われ、後に

接続法現在が来る場合には「現在・未来に対する可能性のある願望」を表す、としている。

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スペイン語接続法に関する覚書(1)

きである。花嫁のドレスに袖がなく、袖があるドレスだったら寒くなかっ

たのに、という場面である。不可能な願望なので、接続法過去が使われる。

現在に関する願望の例文は少ないので、貴重な例文である。

 「Que+接続法」に関しては、「他人に対する願望を表したいときに、

que+接続法現在を使う」という説明がある。ポイントは「他人に対する

願望」というところである。El subjuntivo 1では、決まり文句としての相

手に対する願望の例が豊富に載っている3。

 願望に用いられる「ojalá+接続法」「que+接続法」の相違に関しては、

El subjuntivo 2も含めて、さらに考察を深める必要があると感じた。

 4課では、個人的な好き嫌い(los gustos personales)について話すとき

の表現を学ぶ。

 「Me gusta, me encanta, me molesta que +接続法」は当然として、

「odiar/detestar que+接続法」など、あまり見かけない表現が載っている。

「odiar que+接続法」は白水社の『スペイン語大辞典』には載っているが、

他の辞書4には載っていないし、detestar queに関しては『スペイン語大辞典』

にも載っていない5。従ってあまり現れない表現なのかと思っていたが、こ

の課では、me gusta muchísimo, me encanta, me emocionaの反対の表現

として取り上げられている。3つの例が挙げられている事から判断すると、

よく使われる表現であることが分かる。

 3. Yo odio que aquí se cene tan tarde.  

3  ・Que te cunda. 仕事がはかどるといいね。  ・Que te sea leve. (病気が)軽いといいね。  ・Que se fastidie. ざまあみろ、いいきみ。4  白水社『スペイン語大辞典』、小学館『西和中辞典』、白水社『現代スペイン語辞典』、

研究社『プエルタ新スペイン語辞典』、三省堂『クラウン西和辞典』5  『中級』には、「感情を表す主節の動詞」一覧の中にodiar, detestarとも含まれている。

(p.337, p.338)

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髙 橋 節 子

  ここでは夕食が遅いのがすごく嫌だ。

 4. Pues yo detesto que los españoles sean tan impuntuales.

  スペイン人が時間を守らないのがすごくきらいだ。

 6課では、「すでに知っている情報について感情を述べる時に名詞節に

現れる接続法」について扱っている。ポイントは「すでに知っている情報

について」という条件が付いているところである。

 日本の文法書では、普通4課と6課に含まれる動詞は、「感情を表す動

詞(+接続法)」として一緒に扱われる。日本人学習者にとってはその方

が分かり易いだろう。

 「自分がなぜその感情を持っているかを説明するときには、“¡Qué bien!”,

“Me alegro”, “Siento”, “¡Qué lástima!”にque+接続法を付け加える」とある。

会話の例として以下のようなものが挙げられている。

 5. Me alegro de que hayas traído a tu primo a la fiesta.

  いとこを連れてきてくれて嬉しいわ。

   Es que llegó sin avisar y pensé que no te molestaría.

  実は急に来てさ、君は嫌がらないだろうと思ったんで。

 6. ¿Sabes que ya he encontrado piso... Es barato, céntrico, comodo...

  アパートを見つけたんだ。安くて、駅に近くて、快適なんだ。

   ¡Hombre, qué bien! Llevabas ya tiempo buscándolo, ¿no?

  そいつは良かったね。ずっと探していたもんな。

 5のケースでは、que以下がないと、相手に自分がなぜ喜んでいるのか

が伝わらない。6のケースでは、que以下は今初めて知った新情報なので、

¡Hombre, qué bien!と感情だけを述べても事足りる。この、「既知の情報」

か「新情報」という切り口は、 El subjunivo 2でさらに展開されることに

なる。

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スペイン語接続法に関する覚書(1)

 10課では、謝罪をするときに用いられる動詞として主にperdonarが取

り挙げられている。Perdonarの代わりにsentirが使える場合と使えない

場合があり、sentirがperdonarと同じように謝罪を表すときque節は現れ

ない、という記述がある。(p.78)

・Perdona que te llame a estas horas.

・〇 Siento llamarte a estas horas.

・× Siento que te llame a estas horas.

・Perdona que te haya gritado

・〇 Siento haberte gritado.

・× Siento que te haya gritado.

 このように類似の動詞の違いをはっきりと指摘してもらえるのは学者に

とって非常にありがたい。

 12章では、情報を提供するのか、それとも情報に対する評価をするのか

に関する直説法と接続法の違いを扱う。名詞節において情報を提供すると

きには直説法、情報に対して評価をする場合には、接続法が用いられる。

 “Me parece que”, “yo ya lo sabía que”, “Lo he oído en la radio que”,

“creo que”, “ten en cuenta que”, “te recuerdo que”, “es evidente que”

“Me parece extraño (raro, rarísimo) que”, “Es increíble que”, “me

asombra que”, “es inexplicable que”, “no sería bueno que” 等に交じって、

「comprendo que+接続法」の例が挙げられている。

 7. Comprendo que abran una maleta.(p.92)

  トランクを1つ開けるのは当然だと思う。

 「Comprender+接続法」の例は、白水社、小学館、三省堂の辞書には

載っているが、研究社には載っていない。『中級』(p.340)には、接続法

の例も提示してあるが、「+直説法」が普通、と断り書きがある。本書で

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髙 橋 節 子

この例が載っているのは、著者が中級レベルの外国語学習者に習得してほ

しい表現と考えているわけで、そこまで稀な言い方ではないのかもしれない。

 13章は、「名詞節の情報を否定する、あるいは、あり得ないと表明す

る」というタイトルで、“No parece que, parece increíble que, dudo que,

no creo que, es mentira que, es falso que, tampoco es cierto que, no es

verdad que, no veo ni oigo que, no está claro que+接続法” などの例が挙

げられている。

 “creo que, parace que, está claro que” は、「+直説法」になるが、“no

creo que, no parece que, no está claro”のように否定になると「+接続法」

になることは良く知られている。

 8の会話文で、「no veo ni oigo que+接続法」の例が出てくるが、あま

り扱われない例であり興味深い6。特に、oírに関して否定の場合に接続法

になる例文はどの辞書にも載っていなかった。

 8. ¿Se oye correr agua desde donde estás?

  君のいるところから水の音が聞こえる?

   No veo ni oigo que haya bajadas de agua por aquí cerca.

  このあたりに川があるようには見えないし、(音も)聞こえない。

 一つ問題があるとすれば、「no decir que+接続法」の例が載っていな

いことである。しかも7課で用いられている例文の中に、「no decir que

+接続法」を使った文(例9)が出てくるにもかかわらず取り挙げられて

6  『西和中辞典』には、「verが否定されている場合にはque 以下は接続法」という記述がある。Yo no veo que estén claras las condiciones.(私は条件がはっきりしているとは思いません)

  『白水社大辞典』では、「否定文では、+直説法・接続法」とあり、¿No ves que estoy ocupado? No veo que exista ninguna relación entre los dos acontecimientos.の2例が挙げられている。

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スペイン語接続法に関する覚書(1)

いないのは問題である。

 9. Ahora todo es diferente. No digo que tenga que ser tan estricto

como antes, pero quizá los padres sean demasiado protectores de

sus hijos.(p.57)

   今ではすべてが違っている。私は別に以前のように厳しくすべきだと

は言わないが、おそらく今の父親は子供に対して過保護になっている。

 さらに、“No creer que”の後に直説法が来る場合についても触れられて

いる。

 10. ¿No crees que el sonido más bonito de la Navidad es la carcajada

de un niño?

クリスマスで一番素敵な音は子供の笑い声だとは思いませんか? 

 11. ¿No ves que yo ya estoy viejo para estas cosas?

もうそんなことをする年じゃないってこと、分かるよね。

 12. (......)pero no creas que vas a hacerme decir lo que no pienso.

私に思ってもいないことを言わせようなんて思わないでね。

 13. No pienses que no podemos comer aquí por no tener dinero en

efectivo.

ここは現金をもっていなくちゃ食べられないってわけじゃないよ。

 相手に肯定のレスポンスを期待している疑問文、相手の間違いを正そう

としている否定の命令文の場合には直説法になる、と説明されている7。

7  『中級』では、「非現実な内容と直説法」という項目で、「非現実的な内容を表すにもかかわらず、直説法を用いることがある。」として、次の例が挙げられている。No ceas que soy tonto. 私のことをばかだと思わないでくれ。¿Crees que no lo sé?私が知らないとでも思っているのか? (334-335) この説明は若干分かりづらい。『中級』p.341には、「否定命令、反語的疑問の時、+直説法」という説明も見られる。形式的な説明だが、学習者にはこのほうが分かり易いだろう。

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髙 橋 節 子

 14課では、quizá, tal vez, puede que, seguramente といった推測を扱う。

まとめると以下のようになる。

・A lo mejorは直説法と組む。

・ Quizá, tal vezは、未来に言及する場合には通常、接続法。現在や過去

に言及する場合にはどちらも可

・ Seguramente8, probablemente, posiblementeで始まる文は、直説法、

接続法のどちらでも可能

・Es probable que, es posible queは、+接続法

 『中級』によると、seguramente, a lo mejorは直説法とのみ組む、とい

う記述があり(p.483)、本著の記述と異なっている。『スペイン語大辞典』

には、seguramenteはまれに接続法と組む、という記述がある。さらに、

『中級』には、quizá, tal vezは(動詞に先行した時)通常は接続法と組む、

過去の事柄の時は(動詞に先行しても)直説法のことが多い、とあり、こ

れも本著の記述と若干異なっている。

 15課:不定の名詞を先行詞とする関係節に現れる接続法

 接続法を使っているが、未来形と交代できる場合があるとして、以下の

ような例が載っている。

 14. Se prevé que en el año 2010 estén listos, y en el mercado, aparatos

de televisión y video que PERMITAN ver imagenes en tres

dimensiones (sin el uso de las gafas especiales que SON necesarias

8  ¿Hace mucho que no ves a Ricardo?(リカルドに大分会ってないの?)  Sí, desde que se marchó del trabajo, pero mira, seguramente le vea el sábado,

tenemos una cena de empresa y creo que le han invitado.(うん、彼が仕事を辞めてからね。でも、きっと土曜日に会うよ。会食があって彼も招待されているから。)

  という例文が挙がっている。

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スペイン語接続法に関する覚書(1)

en la actualidad). (p.113)

2010年には3Dのテレビやビデオが登場するだろう と 予想されて

いる(特殊な眼鏡は必要なくなる)

 15. Actualmente se está trabajando en lo que se llama tabletas web,

unos dispositivos planos que se PUEDAN colocar, por ejemplo, en la

puerta del frigorífico para que con sólo pulsar un botón se puedan

ver las noticias, conocer el tiempo, etc.

現在は、タブレットウェブと呼ばれるものの中で使われている。タ

ブレットウェブとは平らで例えば冷蔵庫のドアに等に設置可能であり、

ボタンを押すだけでニュースを見たり時刻が分かる装置である。

 ここで用いられているpermitan(接続法現在)はpermitirán(直説法未来)

に、 puedan(接続法現在)はpodrán(直説法未来)に変えることができる。

なぜならば、「まだ存在していないものであるが、具体的で定まったもの

に言及している」からである。まだ存在しないが具体的なもの、まだ存在

していないし不定なもの、という微妙な区別が法の選択に影響していると

ころが面白い。

 16課では、cuando, hasta que , en cuanto, antes (de) queなど、時に関

係する従属節と接続法の用法について学習する。

 “antes de que”と 、“después de que”について。“antes de que”の次は

いつも接続法になるが、“después de que”の時はいつも接続法になるわけ

ではない、という説明がある。『中級』には、「después de queは過去の出

来事を表すときには+直説法がふつう」とある(p.347) 。16課の例文には

過去に言及する“después de que”の例文が三つあるが、そのうちの二つが

接続法になっているところを見ると、過去に言及する場合でも接続法にな

るケースは結構あることが分かる。

・Después de que llegara la industria moderna,

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髙 橋 節 子

・Después de que salieron los bañistas,

・Después de que llearan los robots

 17課 は 仮 定 文 に つ い て で あ る。“Si, como, siempre que, siempre y

cuando, solo si, en caso de que”などが扱われる。特筆すべきは、警告や

脅しを表す「como+接続法」である。『中級』では、条件を表す副詞節の

項で「como+接続法」の例文が出てくるが 9、「警告や脅し」という注意

書きは見当たらない。El subjuntivo 1には以下のような例が挙がっていて、

よく使われる用法だということが分かる。

 16. Como no te comas los macarrones no tendrás helado de postre.

マカロニを食べないならデザートのアイスクリームはなしよ。

 17. Como te levantes de la mesa, mamá se enfada contigo.

テーブルを立ったりしたらママが怒るよ。

 18. Como no me devuelvas los apuntes antes del examen, no te vuelvo

a prestar nada.

試験の前にノートを返してくれないようなら、もうあんたには何も

貸さないよ。

 未来において実現の可能性が薄い場合には接続法過去形を使う、という

説明の後で、保険会社の宣伝文句から例(19)を引き、注に次のようなコメ

ントをつけているあたりは、学習者に対するきめ細かい配慮である。「生

命保険に入っている人の中には、事故にあったり死亡する可能性が高い人

もいるわけだが、保険の文書はあたかも事故や死亡が起こらないような書

き方をしている。被保険者に対する配慮である。」

9  Como mientas otra vez, te castigaré. また嘘をついたらお仕置きするよ。=Si mientes otra vez, te castigaré.とある。(『中級』p. 346)

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スペイン語接続法に関する覚書(1)

 19. Si tuviera un accidente, el asegurado recibiría la atención

hospitalaria necesaria. (p.144)

万が一事故にあったら、被保険者は必要な治療を受けられます。

 また、「ぼくが君だったら」というよく使われる表現として次の4例が挙

げられている。まとめとして役にたつ。

・Si yo fuera tú

・yo que tú(より口語的)

・yo, en tu lugar,

・si yo estuviera en tu lugar

 18課では譲歩の接続詞aunqueについて扱われている。

 『中級』(p.474)には、「譲歩文では直説法も接続法も用いられる。直説法

を用いた場合は事実を述べ、接続法を用いた場合は仮定を表す」という説

明があり、以下のような例が挙げられている。

・Aunque es español, no le gusta el fútbol.

・Iré aunque llueva. たとえ雨が降っても私は行く。

・ Se lo diré, aunque no le guste. たとえ彼の気にいらなくても、私は

彼にそう言おう。

 そして「現在の非現実的な仮定を表す譲歩文」は接続法過去、帰結節は

過去未来になるとしている。

 ・ Por mucho frío que hiciera, jugaría al golf. たとえどんなに寒くても、

私はゴルフをするだろう。

 El subjuntivo 1における以下の例文は、『中級』の「直説法を用いた場

合は事実を述べる」に相当する。

 20. ¿Te vienes con nosotros al cine, Carmen?

カルメン、一緒に映画に行く?

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髙 橋 節 子

   Bueno, aunque me duele mucho la cabeza.

いいわ、すごく頭が痛いんだけどね。

 21. Oye, ¿tú tienes coche?  

君、車、持っている?

   Sí. Y aunque es viejo, todavía funciona.

うん、すごく古いけど、まだ動くよ。

 問題は次の3例である。この3例においては接続法が使われているが、「仮

定」でも、「可能性に疑いがある」わけでもなく、「事実」を述べているの

で、『中級』の説明ではカバーしきれない。

 22. Oye, ¿y ya conoces a alguien allí?

そこにはもう知り合いがいるの?

   No, a nadie. Pero es lo que menos me importa..(....).No, aunque

todavía no conozca a nadie, digo yo que gente interesante habrá.

(pp.151-2)

いや、だれも。でもそれは一番どうでもいいことさ。(......) まだ知り

合いはだれもいないけど、面白い奴はいるだろうよ。

 23. Los dientes de leche se arreglan, aunque después se cambien.

(p.154)

後で生え変わりますが、乳歯は治療します。

 24. Pero es que yo ya no me siento bien aquí, papá. Estoy de mal

humor, casi no hablo con vosotros, nos estamos distanciando aunque

vivamos en la misma casa. (p.153)

ぼくはここじゃ幸せじゃないんだよ、不機嫌だし、おとうさんとも

おかあさんとも話さないし。同じ家に住んでいても心は離れていっ

てる。

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スペイン語接続法に関する覚書(1)

 El subjuntivo 1では、これらの文に現れる接続法を「他の人と共有して

いる情報」に言及する場合には接続法になる、と説明している。対話者と

共有していない「新しい情報」「新事実」であれば直説法が用いられる(20,

21, 25の例)。この「新しい情報」か「対話者と共有している情報」かとい

う観点は、次のEl subjuntivo 2 でさらに詳しく述べられる。

 25. Los chinos fueron los primeros que usaron el papel moneda, hacia

el año 650 de nuestra era. Aunque ninguno de esos billetes ha

soportado el paso del tiempo, sabemos el aspecto que tenían gracias

a los grabados de un viejo libro de historia chino. (p.153)

650年頃、初めて紙幣を用いたのは中国人である。その紙幣は経年に

耐えられず一枚も残っていないが、幸いにも中国の歴史の本に印刷

されたものによってどんなものかを知ることができる。

 次の例は、疑いがある情報を提示している。情報に可能性があれば動詞

は接続法現在、可能性が低ければ接続法過去になる。

 26. Pero no te canses porque ya lo tengo todo listo y me voy... aunque

haya serpientes y aunque haya mosquitos, me voy... y aunque fuera

una región salvaje y estuviera llena de serpientes pitón, también

me iría. (p.157)

何度言われようが、もう全部準備してあるんだから、ぼくは行くよ。

ヘビがいるかもしれないけど、ぼくは行く。仮に未開の地で毒蛇が

うじゃうじゃいたとしてもぼくは行くだろうよ。

 27. Usted...Usted acaba de quitarme la cartera. ¡Haga el favor de

devolvermela...¡Vamos, démela enseguida! (p.158)

あなたは今私の財布を盗みましたね。返してください。さあ、今すぐ、

よこしなさい。

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髙 橋 節 子

   ¿Yo...?¿Pero está usted loco...? Mire...me puede registrar. Yo no

tengo su cartera.

え、あなた頭がおかしいんじゃないですか?調べてもいいですよ。

私はあなたの財布なんか持っていませんから。

   Aunque no la tenga, usted me la ha sacado del bolsillo. Le he visto

cómo me la sacaba...

たとえ持っていなくても、あなたが私の財布を盗んだんです。盗む

のを見ました。

 28. Oye, Rafa, yo que tú no montaría ese caballo. Creo que es el que el

otro día estuvo a punto de tirarme. (p.158)

ラファ、僕ならその馬に乗らないな。その馬、この前もう少しでぼ

くを振り落としそうになった馬だよ。

   No, no. Te equivocas, conozco bien este caballo y no creo que sea el

mismo. Y aunque fuera el mismo, sé que lo puedo dominar.

いや、違うよ。ぼくはこの馬をよく知っている。この前の馬じゃな

いよ。もうそうだとしても、うまく御せるよ。

 26, 27, 28とも文脈が詳しく提示されているので、ニュアンスがはっきり

伝わり理解しやすい。

 次稿ではEl subjuntivo 2について考察する。こちらは上級編なので、本

稿で扱った中級レベルであるEl subjuntivo 1以上に興味深い内容となって

いる。

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スペイン語接続法に関する覚書(1)

引用文献Pilar Díaz, María Luisa Rodríguez, El subjuntivo 1 (nivel intermedio), Edinumen,

2002José Amenós, Pilar Díaz, María Luisa Rodríguez, El subjuntivo 2 (nivel avanzado),  Edinumen, 2008山田善郎(監修)『中級スペイン語文法』、白水社、1995年山田善郎、他(監修)『スペイン語大辞典』、白水社、2015年原誠、他(編者)『クラウン西和辞典』三省堂、2005年高垣敏博(監修)『西和中辞典(第2版)』、小学館、2007年山田善郎(監修)『現代スペイン語辞典(改訂版)』、白水社、1999年上田博人、他(編者)、『プエルタ新スペイン語辞典』、研究社、2006年

(本学経営学部教授)

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