Upload
others
View
14
Download
0
Embed Size (px)
Citation preview
院内感染を防ぐためのテクニック
周南市立新南陽市民病院
安全管理師長・感染管理認定看護師
中村和美
本日の内容
1.感染対策の基本
2.個人防護具の着脱演習
手洗い演習
2
感染を成立させる6要素
病因
病原巣
排出門戸
感染経路
侵入門戸
感受性
宿主
3
主な感染経路
4
飛沫感染
感染している人が咳やくしゃみをした際に口から飛ぶ、病原体が含まれた水しぶき(飛沫)を、近くにいる人が吸い込むことで感染する。
飛沫が飛び散る範囲:1~2m
直径:5㎛以上
落下速度:毎秒30~80cm
5
空気感染 感染している人が咳やくしゃみをした際に、口から飛び出した飛沫が乾燥し、その芯(飛沫核)となっている病原体が感染性を保ったまま空気の流れによって拡散し、それを吸い込んで感染する。
飛沫核:直径5㎛以下
落下速度 毎秒0.06~1.5cm
長時間、空気中を漂う
6
7
飛沫の産生 2㎛以下の粒子
呼吸 0~少し 少し
鼻をかむ 少し 少し
大声でカウントする 少し~ 大部分
咳 100~数千 大部分
くしゃみ 数百~数万 大部分
日常の行為で発生する飛沫
引用:INFECTION CONTROL 2020 vol.29 no.12(1187)
接触感染
①間接接触感染
接触感染する微生物が、
医療器具や環境表面から
感染する。
②直接接触感染
患者の皮膚や粘膜、
手指の汚染から感染する。
8
接触予防策飛沫予防策
感染対策の基本
9
標準予防策
空気予防策
標準予防策を行ったうえで,感染経路に応じた対策を行う
標準予防策とは?
あらゆる人の血液、すべての体液、分泌物、汗以外の排泄物、創傷のある皮膚、及び粘膜には感染性があると考えて取り扱う。
目的:病原体の感染・伝搬リスクを減少させる
10
明らかに感染症と
診断された症例
診断されない症例とは?
• 未検査
• ウインドウピリオド
• 未知の感染症
引用:INFECTION CONTROL 2016年 25巻4号より
感染症の有無にかかわらずすべての患者に適応される
標準予防策の主な項目
・手指衛生
・個人防護具の使用
・呼吸器衛生/咳エチケット
・患者ケアに使用した器材・器具・機器の処理
・患者周辺の環境整備及びリネンの取り扱い
・患者配置
・安全な注射手技
・特別な腰椎穿刺処置での感染対策手技
・血液媒介病原体曝露防止 など
11
手指衛生
最も基本的かつ効果的な感染対策
<手指衛生のポイント>
「流水と石鹸による手洗い」と「擦式アルコール製剤を用いた手指
消毒」の使い分け
適切な手技
適切なタイミング
12
石鹸と流水での手洗い場面
手指に目に見える汚染がある
嘔吐・下痢のある患者に触れた/その病室から出た直後
アルコール消毒薬に抵抗性がある微生物が想定される場合
例:ノロウイルス、
クロストリジウム・ディフィシルなど
食事前、トイレの後
擦式アルコール製剤使場面
流水と石鹸による手洗いを要する場面以外
(目に見える汚染がない時)
石鹸と流水で手洗いを行った後
12
14
17出典森功次他:感染症学雑誌、80:496-500,2006 http://journal.kansensho.or.jp/Disp?pdf=0800050496.pdf
擦式アルコール製剤使用手順
18
擦式アルコール製剤使用時のポイント
擦式アルコール製剤の適量の目安:3ml
(液状タイプの場合)
⇒除去率 3ml : 98%、
1ml : 50%程度
擦りこむことで消毒効果がある
⇒ふき取ったり、手を振って乾燥させない
19
20
21厚生労働省の「接触感染に注意!」https://www.mhlw.go.jp/content/000658585.pdf より
環境整備
22
23
医療環境における主要な病原体の生存期間
病原体 生存期間
黄色ブドウ球菌(MRSA含む) 7日~7カ月
腸球菌属(VRE含む) 5日~4カ月
アシネトバクター属 3日~5カ月
クロストリジウム・ディフィシル(芽胞) 5カ月
ノロウイルス(及びネコ科カリシウイルス) 8時間~7日
緑膿菌 6時間~16カ月
クレブシエラ属 2時間~30カ月以上
インフルエンザウイルス 1~2日
B型肝炎ウイルス 7日間以上
引用:INFECTION CONTROL 2018年 夏季増刊、保存版 環境整備ICTマニュアル
24
引用:BUSINESS INSIDERよりhttps://www.businessinsider.com/coronavirus-lifespan-on-surfaces-graphic-2020-3
25
引用:国立感染症研究所、ダイアモンドプリンセス号環境検査に関する報告 2020年8月30日
ダイアモンドプリンセス号 部屋の物品におけるSARS-COV-2 RNA検出頻度
環境消毒
・確定または疑われる患者の周辺の高頻度接触環境表面や、患者の皮膚に直接接触した器材(体温計や血圧計など)は、アルコール(濃度60%以上)や次亜塩素酸ナトリウム溶液(濃度0.1%~0.05%)を用いて清拭消毒する。
・消毒薬の噴霧は行わない。
・床や壁など大掛かりかつ広範囲の消毒は不要。
・環境消毒を行う際は、個人防護具を着用する。
※マニュアルに、「誰が」「どこを」「1日何回」「消毒剤の種類」「手順」を
記載し、遵守状況を実際に確認することが大切。26
病室:高頻度接触面(手が頻回に触れるところ)
ベッド柵
ナースコール
スイッチ
リモコン
テーブル
床頭台、つまみ部分
27
28
清拭消毒時のクロスの使い方
出典:INFECTION CONTROL 2018年夏季増刊
29
出典:INFECTION CONTROL 2018年夏季増刊
個人防護具(Personarl Protective Equipment:PPE)
30
ユニバーサルマスキング
31
引用:https://news.yahoo.co.jp/byline/kutsunasatoshi/マスク着用による新型コロナの感染部防止について
発症出現の2日ほど前から、症状出現直後にかけて、ウイルスの増殖が見られ、感染性を発揮する可能性が指摘されている。
⇒無症状・軽症感染者からの飛沫を抑制する。ソーシャル・ディスタンシングが実施できない場合にマスクを着用する。
PPEの使用<目的>
血液や体液、排泄物、感染性微生物から粘膜、気道、皮膚、衣類を防護するため。
清潔処置時に医療従事者からの微生物で清潔野を汚染しないため。
<ポイント>
基本的に単回使用。
患者毎、処置ごとに交換する。
着用前後には手指衛生を行う。
正しい着脱方法・着脱の順番・着脱のタイミング(廃棄も含め)に気を付ける。
32
33
PPEの着用の順番
SARAYA ホームページより引用
SARAYA ホームページより引用34
新型コロナウイルス感染(疑い例含む)感染対策
標準予防策に飛沫予防策・接触予防策を追加する。
ポイント:
・ウイルスを含む飛沫が目、鼻、口の粘膜に付着するのを防ぐ。
・ウイルスが付着した手で、目、鼻、口の粘膜と接触するのを
防ぐ。
⇒PPEの適切な着脱
手指衛生の遵守
35
36
通常の場合
・サージカルマスク
・ゴーグル・アイシールド・フェイスシールドの組み合わせ
もしくは、アイシールド付きサージカルマスク
・長袖ガウン、手袋、(キャップ)
エアロゾルが生じる手技の場合
・上記で、サージカルマスクをN95マスクへ変更する。
37
N95マスク種類
引用:医療従事者のためのN95マスク適正使用ガイドより
38
ユーザーシールチェック(フィットチェック)
陽圧の確認装着し、N95マスクのフィルターの表面を手で覆う。ゆっくり息を吐き、その際にN96マスクと顔の間から空気が漏れているように感じられれば、マスクの位置を修正し、再度確認を行う。
陰圧の確認同様に手でフィルターを手で覆い、ゆっくり息を吸い込み、マ
スクが顔に向かってひこまれれば、陰圧のチェックは完了となる。
注意:装着するたびに、毎回行うこと。フィットテストの代わりになるものではない。
引用:医療従事者のためのN95マスク適正使用ガイドより
39引用:職業感染制御研究会.職業感染防止の為の安全対策カタログ集 第4版
フィットテスト
40引用:職業感染制御研究会 個人防護具の手引きとカタログ集 第4版
41引用:職業感染制御研究会 個人防護具の手引きとカタログ集 第4版
42引用:職業感染制御研究会 個人防護具の手引きとカタログ集 第4版
43
N95マスク外し方
着脱方法 | 3M™微粒子用マスク | 医療用製品(Adobe PDF)multimedia.3m.com/mws/media/.../hpm-577.pdf
その他
タイベック®などの全身を覆う防護服は必須ではない。
タイベック®スーツは、エアロゾル発生手技など、
侵襲性が高い手技を行う際に限定して使用する。
キャップ
装着は必須ではない。特に髪を触りやすい方は被ることを推奨。
シューズカバー
シューズカバーを脱ぐ際に手指が汚染するリスクを考慮すると、基本的に新型コロナウ
イルス感染症の予防を目的としたシューカバーの使用は推奨されない。
履物に血液・体液汚染が生じる恐れのある場合は、標準予防策の考え方に基づいて使用
する。
44
45
手袋 サージカルマスク
N95マスク
ガウン ゴーグル又はフェイスシール
ド
診察(15分未満)
〇 〇 〇 △
診察(15分以上)
〇 〇 〇 〇
呼吸器検体採取 〇 〇 〇 〇
エアロゾル手技 〇 〇 〇 〇
環境整備 △ 〇 △ △
リネン交換 △ 〇 △ △
患者搬送 △ 〇 △ △
場面ごとのPPE
〇:必ず使用する、△:状況により感染リスクが高くなる際に使用する
日本環境感染学会 医療機関における新型コロナウイルス感染症への対応ガイド 第3版より
46
引用:日本環境感染学会:医療機関における新型コロナウイルス感染症への対応ガイド第3版
47
適切に着脱ができる個人防護具(ガウン・手袋・マスク)(複数回答可)
柏谷淳ら:医療関係者におけるバイオセーフティに対する意識の現状:日本臨床微生物学会総会参加者を対象としたアンケート調査報告、日本臨床微生物学雑誌 Vol24、No2、2014、p33 より
PPE着脱手順
着用の際は、正しく着用できているか、PPEが破綻していないか確認する。
脱ぐときは、ゆっくりと慎重に確実に行う。
脱いだPPEから曝露しないように、周囲を汚染させないように留意する。
脱いだ後は、感染性医療廃棄物容器に速やかに廃棄する。
手指衛生を遵守し、手指衛生の前に目や顔を触らないように注意する。
48
演習1.個人防護具を実際に着脱してみましょう
49
サージカルマスクの着脱
ゴムや紐をつまんで、マスクの表面に触れずに廃棄する。
<着用時> <外し方>
引用:職業感染制御研究会 個人防護具の手引きとカタログ集 第4版
50
演習2.実際に手洗いを行ってみましょう
51
病院感染対策における医療従事者の役割
52
① 自分が感染しない
② 患者を感染させない
③ 患者間の感染を媒介しない
引用:INFECTION CONTROL 23(4),2014
引用・参考文献
1)日本感染環境学会.医療機関における新型コロナウイルス感染症への対応ガイド.
第3版.
2)国立感染症研究所.新型コロナウイルス感染症に対する感染管理2020年10月2日
改訂版
3)国立感染症研究所.新型コロナウイルス(2019-nCoV)関連情報 ページ (niid.go.jp).
ダイアモンドプリンセス号環境検査に関する報告(2020年8月3日)
4)職業感染制御研究会.職業感染暴威sのための安全対策カタログ集 第4版
5)INFECTION CONTROL 2020 vol.29 no.12
6)日本臨床微生物学会.医療関係者におけるバイオセーフティに対する意識の
現状:日本臨床微生物学会総会参加者を対象としたアンケート調査報告.2014.
www.jscm.org/journal/full/02402/024020124.pdf
53