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新規直接作用型抗ウイルス薬(DAAs)の副作用発現状況
ならびに影響因子に関する検討
○中川幸紀1、三木育子1 、高瀬尚武1
田中智也1 、三浦紋佳2、濱口常男2
高尾雄二郎3、勝谷誠3、三井康裕3
室井延之1
1赤穂市民病院 薬剤部2神戸薬科大学 臨床教育センター3赤穂市民病院 消化器内科
背景
• C型肝炎治療において従来のIFNを用いた
治療では発熱、頭痛が高頻度に発現し、抑うつや臓器障害などの重篤な副作用も報告されている。
• 近年C型肝炎の治療薬として(新規直接作用型抗ウイルス薬:DAAs)が市場され、
著効率が高く、重篤な副作用も少ないことから広く使用されている。
目的
• DAAsは現在5種が市場されているが、
患者背景や併用薬などの要因と副作用
を比較した報告はない。
• 今回、当院採用の4種のDAAs間の副作用
発現状況の比較、副作用発現の影響因子について調査したので報告する。
方法
【対象】2014.11~2016.12の間にDAAsが処方された患者
【調査方法】電子カルテを用いて後方視的に調査
ハーボニ―
SOF/LDV
ダクルインザ/スンベプラ
DCV/ASV
ヴィキラックス
OBV/PTV/r
エレルサ/グラジナ
EBR/GZR
対象症例 62 22 1 2
中止症例 1 2 0 0
調査項目
• 患者背景年齢、性別、体重、併用薬、C型肝炎前治療歴の有無
• 臨床検査値肝機能(AST,ALT)、腎機能(eGFR)、電解質(Na,K)
AST、ALT、eGFRの副作用はCTCAE(ver4.0)のGrade分類を用いて投与前の値と、投与中の最高値を評価
• 副作用症状消化器症状(悪心、便秘、下痢、口内炎、腹部不快感)皮膚および皮下組織(掻痒、発疹)神経系(頭痛)全身症状(発熱、倦怠感)呼吸器系(咽頭炎、咽頭痛)
患者背景ハーボニー
SOF/LDV(n=62)
ダクルインザ/スンベプラ
DCV/ASV(n=22)
ヴィキラックスOBV/PTV/r
(n=1)
エレルサ/グラジナEBR/GZR
(n=2)
年齢(歳) 69.7±9.9 66.8±12.2 80 67±15.6
性別(男/女) 27/35 8/14 0/1 1/1
体重(kg)57.3±10.4
(n=57) 54.2±12.5 70 69.7±19.3
※注意薬併用患者数
6 0 0 0
前治療歴あり 12 2 0 1
SVR24 100%(60/60) 95%(19/20) 100%(1/1) -
※添付文書に記載されている併用注意薬を使用している患者数ハーボニ―、ダクルインザ/スンベプラ間で患者背景に有意差なし
肝機能への影響
・ASTとALTで同一患者による重複あり
・肝代謝であるダクルインザ/スンベプラにおいて肝機能
への影響は高かった。
ハーボニーSOF/LDV(n=62)
ダクルインザ/スンベプラ
DCV/ASV(n=22)エレルサ/グラジナEBR/GZR(n=2)
AST(Grade0→1) 2(3.2%) 4(18.1%) 1(50%)
AST(Grade1→2) - 1(4.5%) -
ALT(Grade0→1) 2(3.2%) 3(13.6%) 1(50%)
腎機能への影響
ハーボニーSOF/LDV(n=62)
ダクルインザ/スンベプラDCV/ASV(n=22)
エレルサ/グラジナEBR/GZR(n=2)
Gradeが上昇した症例
8(12.9%) 3(13.6%) 1(50%)
Grade 0→1 7(11.3%) 2(9.1%) 1(50%)
Grade 2→31(1.6%) - -
Grade 3→4- 1(4.5%) -
・腎排泄のハーボニーではGrade0→1への上昇が多かった。・ダクルインザ/スンベプラでもGradeが上昇した頻度は、ハーボニーと同等であった。
その他の副作用症状
ハーボニーSOF/LDV(n=62)
ダクルインザ/スンベプラ
DCV/ASV(n=22)
副作用発現症例(例) 28(45.2%) 16(72.7%)
消化器症状
(悪心、便秘、下痢、口内炎等)14(22.5%) 8(36.4%)
皮膚症状 (掻痒、発疹) 6(9.7%) 2(9.1%)
神経系 (頭痛) 2(3.2%) 3(13.6%)
全身症状 (発熱、倦怠感) 7(11.3%) 6(27.3%)
呼吸器 (咽頭炎、咽頭痛) 2(3.2%) 5(22.7%)
・消化器症状、全身症状については同一患者での重複あり・副作用発現率はDCV/ASVの皮膚症状以外は、国内臨床試験より高かった。
3.8
4.0
4.2
4.4
4.6
4.8
5.0
p=0.152130
132
134
136
138
140
142
144
146
148
150(mEq/L)
投与前 投与後 p=0.317
電解質への影響
ns
p=0.193
ns
4.0
4.1
4.2
4.3
4.4
4.5
4.6
4.7
4.8
4.9
5.0
p=0.276
ハーボニ― Na値(n=62) ハーボニー K値(n=62)
ダクルインザ/スンベプラ Na値(n=22) ダクルインザ/スンベプラ K値(n=22)(mEq/L)
投与前 投与後
投与前 投与後投与前 投与後
ns ns
130
132
134
136
138
140
142
144
146
148
150
(mEq/L)
(mEq/L)
・電解質は薬剤投与前後で有意差は認められなかった。
ハーボニーでの血清K値と全身症状の関連
• ハーボニー(SOF/LDV)において、投与前K値と全身症状(発熱、倦怠感)の副作用で相関がみられた。
・相関係数:0.28041・P値:0.028518(スピアマンの順位相関)
・P値:0.028518(マンホイットニーのU検定)
(mEq/L)
3.9
4.1
4.3
4.5
4.7
4.9
投与前K値と全身症状
副作用あり(n=7)
副作用なし(n=55)
P<0.05
症例・80歳代 男性 HCVのL31/Y93領域に変異あり
[入院の契機]ハーボニー投与9週目で倦怠感と腎機能悪化でハーボニーを入院3日前から自己中断し、入院となる。
[既往歴]狭心症、慢性腎臓病、糖尿病、高血圧
[併用薬]カンデサルタン8mg、ウルソデオキシコール酸600mg、アスピリン腸溶錠100mg、アムロジピン2.5mg、オロパタジン10mg、ファモチジン40mg
[経過]入院後グルアセト(維持液)、ソリタT-4(術後回復液)の補液が開始となり、腎機能回復後、退院となる。
症例
3.6
3.8
4
4.2
4.4
4.6
0
10
20
30
40
50eGFR K値
中断
(ml/min/1.73m2) (mEq/L)
ハーボニー開始
入院
グルアセト 500ml
ソリタT-4 500ml
・ハーボニーは9週目で中止となったが、SVR24達成。・副作用が少ないと言われるDAAsだが、入院を要する副作用が発現することもある。
ハーボニーは中止のまま
1日
3日
考察
• 今回の調査では消化器症状や全身症状などの副作用の発現頻度が国内臨床試験より高かった。
• 代謝・排泄経路の違いによる各薬剤の副作用プロファイルを理解し、代謝経路に関連した副作用も発現することから、副作用が重篤化しないように併用薬や検査値等を確認しておくことが重要である。
• 副作用発現の影響因子として、ハーボニー(SOF/LDV)では薬剤投与前のK値が高い患者で
全身症状の副作用が出やすい傾向にあることが示唆された。
資料① 副作用発現状況
0
2
4
6
8
10
12
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12
呼吸器症状
全身症状
神経症状
皮膚症状
口内炎
消化器症状
(週)
件数 SOF/LDV 副作用症状
資料② 副作用発現状況
0
1
2
3
4
5
6
7
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 12 14 15 20
呼吸器症状
全身症状
神経症状
皮膚症状
口内炎
消化器症状
(週)
件数 DCV/ASV 副作用症状