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自然地盤および複合地盤における杭の地盤反力特性 土木研究所寒地土木研究所 ○国際会員 冨澤 幸一 国際会員 西本 聡 北海道大学大学院工学研究科 国際会員 三浦 清一 1.はじめに 道路橋における杭基礎の設計は, 常時およびレベル 1 地震時において基礎全体の力学挙動が一般に弾性範囲内にある ことを所要条件としている. そのため, 設計時に杭の許容水平変位量を一定の限界値以内に収めることを義務づけてい る.この際の杭許容水平変位量は, 道路橋では多数の既往の水平載荷試験成果の検討より残留変位の関係などから, 通 常において杭径の 1%(ただし, 杭径 1.5m 以下においては 15mm)とされている 1) . 一方, 筆者らは杭周辺に複合地盤を併設する基礎工法を研究開発し「北海道における複合地盤杭基礎の設計施工法に 関するガイドライン(案)」 2) として取りまとめた. その際に複合地盤中の常時およびレベル 1 地震時における杭許容水 平変位量を複合地盤の健全性を確保するため, 一連のモデル実験・数値解析・材料試験成果より杭径の 0.5%と定めた. れは複合地盤では杭の水平抵抗が自然地盤に比べ一般に大きくなることから, 自然地盤と同様の杭許容水平変位量を設 定した場合に, 複合地盤本体の損傷が懸念され同時に杭基礎の挙動が弾性範囲内に収まらない可能性があるためである. 本報では, 自然地盤と複合地盤における杭の地盤反力特性を検討することにより, 複合地盤における杭の許容水平変 位量設定の考え方について基礎的な整理をした. 検討手法は, 弾性地盤反力法解析より, 自然地盤および固結工法で改 良した複合地盤を対象に, 場所打ち杭と鋼管杭の杭種別および常時とレベル 1 地震時の荷重状態において, 水平荷重に 対する応答水平地盤反力度と地盤せん断強度から評価した水平地盤反力度の上限値との対比によることとした. 2.複合地盤杭基礎の設計概要 軟弱地盤中の杭に主に固結工法による複合地盤を併用する複合地盤杭基礎を研究し実用化した 3), 4) . 本手法を泥炭性 軟弱地盤などの現場条件に応じて活用することで, 基礎の縮小化と同時に耐震性向上の有用性が一連の研究により検証 されたことから, 設計施工ガイドライン(案)の策定に至った. 複合地盤杭基礎の静的な基本設計手法を以下に示す. 2.1 複合地盤の改良領域の設定 杭周辺の複合地盤の改良領域は, 土の極限状態の釣り合いを考慮するこ とで受働破壊の範囲が設定される 5) .つまり, 必要な地盤改良領域を杭の 水平抵抗の影響範囲とすれば, 杭特性長 1/β Characteristics length)の深さ から受働すべり面の勾配 θ=45°φ/2)(φ:土のせん断抵抗角)で立ち 上げた逆円錐形を含む 3 次元の四角形を杭周辺に設定することができる 図-1).これは, モール・クーロンの破壊基準や極限地盤反力法を工学的 根拠とする. 2.2 杭の水平地盤反力の算定手法 杭周辺に複合地盤を形成する複合地盤杭基礎では, 複合地盤は杭との剛 性や力学特性の違いなどから杭と一体の構造物ではなく, あくまでも(複 合)地盤として扱うことを前提とする. その結果, 杭の水平抵抗は作用荷 重に対する水平地盤反力として評価される. その際, 弾性地盤反力法解析 では複合地盤中の杭の水平地盤反力係数 k , 複合地盤の変形係数 E から 1)式 1) より算定される. 1ここに, k:杭の水平地盤反力係数(kN/m 3 , E:複合地盤の変形係数(kN/m 2 , α:水平地盤反力推定に用いる係数, D杭径(m, β:杭特性値(m -1 β= , E y I:杭の曲げ剛性(kNm 2 )である. 一方, 固結工法で複合地盤を形成する場合, 所要強度の改良体を地盤内に施工することになるが, その際の複合地盤 のせん断強度 S , 改良体の強度 S p と原地盤の強度 S 0 を改良率 a p に従い合成した(2)式 6), 7) で算定される. Subgrade reaction characteristics of pile foundations in natural and composite grounds Koichi TOMISAWA (Civil Engineering Research Institute for Cold Region, PWRI) Satoshi NISHIMOTO (Civil Engineering Research Institute for Cold Region, PWRI) Seiichi MIURA (Graduate School of Engineering, Hokkaido University) 4 / 3 3 . 0 / 3 . 0 1 D E k 図-1 杭周辺の複合地盤領域 4 4 / ) ( I E kD y

自然地盤および複合地盤における杭の地盤反力特性 - ceri.go.jpSubgrade reaction characteristics of pile foundations in natural and composite grounds Koichi TOMISAWA

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自然地盤および複合地盤における杭の地盤反力特性

土木研究所寒地土木研究所 ○国際会員 冨澤 幸一

同 上 国際会員 西本 聡

北海道大学大学院工学研究科 国際会員 三浦 清一

1.はじめに

道路橋における杭基礎の設計は, 常時およびレベル 1 地震時において基礎全体の力学挙動が一般に弾性範囲内にある

ことを所要条件としている. そのため, 設計時に杭の許容水平変位量を一定の限界値以内に収めることを義務づけてい

る.この際の杭許容水平変位量は, 道路橋では多数の既往の水平載荷試験成果の検討より残留変位の関係などから, 通

常において杭径の 1%(ただし, 杭径 1.5m 以下においては 15mm)とされている 1). 一方, 筆者らは杭周辺に複合地盤を併設する基礎工法を研究開発し「北海道における複合地盤杭基礎の設計施工法に

関するガイドライン(案)」2)として取りまとめた. その際に複合地盤中の常時およびレベル 1 地震時における杭許容水

平変位量を複合地盤の健全性を確保するため, 一連のモデル実験・数値解析・材料試験成果より杭径の 0.5%と定めた. これは複合地盤では杭の水平抵抗が自然地盤に比べ一般に大きくなることから, 自然地盤と同様の杭許容水平変位量を設

定した場合に, 複合地盤本体の損傷が懸念され同時に杭基礎の挙動が弾性範囲内に収まらない可能性があるためである.

本報では, 自然地盤と複合地盤における杭の地盤反力特性を検討することにより, 複合地盤における杭の許容水平変

位量設定の考え方について基礎的な整理をした. 検討手法は, 弾性地盤反力法解析より, 自然地盤および固結工法で改

良した複合地盤を対象に, 場所打ち杭と鋼管杭の杭種別および常時とレベル 1 地震時の荷重状態において, 水平荷重に

対する応答水平地盤反力度と地盤せん断強度から評価した水平地盤反力度の上限値との対比によることとした.

2.複合地盤杭基礎の設計概要

軟弱地盤中の杭に主に固結工法による複合地盤を併用する複合地盤杭基礎を研究し実用化した 3), 4). 本手法を泥炭性

軟弱地盤などの現場条件に応じて活用することで, 基礎の縮小化と同時に耐震性向上の有用性が一連の研究により検証

されたことから, 設計施工ガイドライン(案)の策定に至った. 複合地盤杭基礎の静的な基本設計手法を以下に示す. 2.1 複合地盤の改良領域の設定

杭周辺の複合地盤の改良領域は, 土の極限状態の釣り合いを考慮するこ

とで受働破壊の範囲が設定される 5) .つまり, 必要な地盤改良領域を杭の

水平抵抗の影響範囲とすれば, 杭特性長 1/β(Characteristics length)の深さ

から受働すべり面の勾配 θ=(45°+φ/2)(φ:土のせん断抵抗角)で立ち

上げた逆円錐形を含む 3 次元の四角形を杭周辺に設定することができる

(図-1).これは, モール・クーロンの破壊基準や極限地盤反力法を工学的

根拠とする. 2.2 杭の水平地盤反力の算定手法

杭周辺に複合地盤を形成する複合地盤杭基礎では, 複合地盤は杭との剛

性や力学特性の違いなどから杭と一体の構造物ではなく, あくまでも(複

合)地盤として扱うことを前提とする. その結果, 杭の水平抵抗は作用荷

重に対する水平地盤反力として評価される. その際, 弾性地盤反力法解析

では複合地盤中の杭の水平地盤反力係数 k は, 複合地盤の変形係数 E から

(1)式 1)より算定される.

(1)

ここに, k:杭の水平地盤反力係数(kN/m3), E:複合地盤の変形係数(kN/m2), α:水平地盤反力推定に用いる係数, D:

杭径(m), β:杭特性値(m-1 ) β= , EyI:杭の曲げ剛性(kN・m2)である. 一方, 固結工法で複合地盤を形成する場合, 所要強度の改良体を地盤内に施工することになるが, その際の複合地盤

のせん断強度 S は, 改良体の強度 Sp と原地盤の強度 S0 を改良率 ap に従い合成した(2)式 6), 7)で算定される.

Subgrade reaction characteristics of pile foundations in natural and composite grounds Koichi TOMISAWA (Civil Engineering Research Institute for Cold Region, PWRI) Satoshi NISHIMOTO (Civil Engineering Research Institute for Cold Region, PWRI) Seiichi MIURA (Graduate School of Engineering, Hokkaido University)

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3.0/

3.01

DEk

図-1 杭周辺の複合地盤領域

4 4/)( IEkD y

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H21年度スタンプ
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p0spp aSaSS 1 2/upp qS , 2/u00 qS , AAa pp / (2)

ここに, S :複合地盤のせん断強度(kN/m2), Sp:改良体のせん断強度(kN/m2), αS:破壊ひずみに対する原地盤強度の

低減率, S0:原地盤のせん断強度(kN/m2), ap:地盤改良率(%), qup:改良柱体の一軸圧縮強度(kN/m2), qu0:原地盤

の一軸圧縮強度(kN/m2), Ap:改良体の断面積(m2), A:改良体一本当りの分布面積(m2)である.なお, 複合地盤の

改良体の一軸圧縮強度 qup は, 一般的な設計基準強度で qup=200~500kN/m2 程度である. 複合地盤中の杭の水平地盤反力を適正に設定するためには, 地盤改良により増加した地盤のせん断強度 S の効果を変

形係数 E の増加の度合として評価する必要がある. 改良体のせん断強度 Sp は, (2)式に示すように改良体の一軸圧縮強

度 qup と Sp=qup /2 の関係にある. また, 改良体の一軸圧縮強度 qup と変形係数 Ep は比例的な関係にあることが広く知られ

ており, 例えば, 粘性土系地盤を地盤改良した場合に Ep =100qup の関係式が提案されている 6).つまり, 複合地盤の変形

係数 E はせん断強度 S の増加と同等と扱うことが可能と考えられる. その結果, 複合地盤の変形係数 E は, (3)式に示

すように改良柱体の変形係数 Ep と原地盤の変形係数 E0 を改良率 ap で合成した和によって算定することができる.

E = Ep・ap + αs・Eo (1 - ap ) (3)

ここに, Ep:改良体の変形係数(kN/m2), Eo:原地盤の変形係数(kN/m2)である. この増加せん断強度を考慮した変形

係数 E を用い(1)式より複合地盤の水平地盤反力係数 k を設定することで, 静的荷重に対し, 未改良の原地盤よりも大

きな杭の水平抵抗が確保される. これらの複合地盤における杭の静的な基本設計手法を踏まえ, 自然地盤と対比した複合地盤の地盤反力特性を弾性地

盤反力法解析を用いて以下に検討する.

3.杭の水平地盤反力度の検討

3.1 検討概論

一般に道路橋における杭基礎の設計は, 常時およびレベル 1 地震時の水平方向の安定検討として, 応答水平地盤反力

度と地盤条件や構造条件により評価される地盤反力度の上限値を比較して照査することは行わず, 許容水平変位量以下

であることを照査している 1).これは,杭は近傍の周

辺地盤が仮に塑性変形しても, 許容水平変位量以下で

あれば基礎全体の変形や残留変位の増大に至ることは

なく, 弾性範囲内であると見なされるからである. こ

のことは, 既往の多数の水平載荷実験により確認され

ておりケーソン基礎でも同様の扱いが成されている.

ここでは, 常時およびレベル 1 地震時における応答

水平地盤反力度とその上限値の関係を検討するため,

レベル 2 地震時において適用されている手法を準用し

杭の水平方向抵抗特性として上限値を有するバイリニ

ア型の水平地盤反力度を設定する(図-2)1). すなわち,

杭の周辺地盤に発生する応答水平地盤反力度 p が図-2

に示す水平地盤反力度の上限値 pHU を越えた場合に該

当範囲の地盤が非線形挙動するものと考える.

3.2 検討方法

本検討は杭の応答水平方向地盤反力度とその上限値の関係を対比する考察とした. それぞれの値の算出に際しては,

以下に示す方法を採用する.

(1)杭の水平地盤反力度の算出

杭の水平地盤反力度 p は, 弾性地盤反力法解析により杭水平変位量 y に水平地盤反力係数 k を乗じて算出する 1).

p = k・y(x) (4)

ここに, p:水平地盤反力度(kN/m2), y(x):各深度 x における杭の水平変位(m)である. 杭の水平変位は, 頭部に一定の

変位を設定して各深度における変位 y(x)を線形弾性地盤反力法解析により算出する.

図-2 杭の水平地盤反力度の検討図

tan-1kE

水平地盤反力度の上限値

水平変位 δ (m)

水平地盤反力度

p (kN/m2)

pHU

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H y(x)=――――e-βx{(1+βh0)cosβx-βh0sinβx} (5)

2EIβ3

ここに, H:杭の軸直角方向力(kN),h0:Mt /H(m),Mt:杭頭の外力としてのモーメント(kN・m)である.

また, 杭頭に設定する水平変位量は, 自然地盤において常時およびレベル 1 地震時とも道路橋の設計法における許

容値である 15mm とする. 複合地盤に関しては, 自然地盤と同様の 15mm に加えて, 杭許容水平変位量をガイドライ

ン(案)で定めた杭径の 0.5%とした 2 つのケースを設定する.

(2)杭の水平地盤反力度の上限値

杭の水平地盤反力度の上限値は, 受働土圧強度に補正係数を考慮して算出する 1).

phu=αp・pu (6)

ここに, pHU:水平方向地盤反力度の上限値(kN/m2), αp:杭の水平方向地盤反力度の上限値の補正係数(砂地盤:3.0,粘性土地盤:1.5,複合地盤:1.5), pu:受働土圧強度(kN/m2)である.

補正係数 αp は杭の水平地盤反力度の 3 次元的な広がりを考慮したものであり, 単杭の載荷試験結果などをもとに砂

地盤と粘性土地盤に対応した値が設定されている 1).複合地盤については, 原地盤は粘性土系地盤が主であることか

ら粘性土に準じて 1.5 をガイドライン(案)で採用している. 図-3 に検討方法の概念図を示す.

図-3 検討方法概念図

3.3 検討条件

検討条件として, 地盤条件, 杭種および計算ケースを表-1 のとおりに設定した. 地盤条件は, 一般的な杭の適用地盤

で想定される地盤種別と標準貫入試験の N 値を組み合わせて, 粘性土で N=5,10,15 と砂質土で N=10,15,20 を設

定した. 複合地盤は地盤改良の一軸圧縮強度 qu を一般的な地盤改良強度を想定し, 200 kN/m2,400 kN/m2,600kN/m2

とした. この際, 複合地盤の改良率は接円改良の 78.5%とした. なお, 地層構成はいずれの地盤条件においても深さ方向, 水平方向とも一様とした(図-3). 杭種は道路橋における施工実績の多い場所打ちコンクリート杭と鋼管杭とした. 杭

径は一般的に使用されている場所打ち杭でφ1000mm, φ1200mm, φ1500mm, 鋼管杭でφ600mm, φ700mm, φ800mmとした. 検討は常時およびレベル 1 地震時を対象とした. なお, 杭頭水平変位量は常時およびレベル 1 地震時とも同一

の値としているが, 係数 αが異なることにより杭の水平地盤反力係数に違いがあるため, 同一水平変位量を発現させる

ための水平荷重はレベル 1 地震時の方が大きくなる.

杭頭水平変位 y0=15mm または杭径 0.5%

場所打ちコンクリート杭 (φ1000,φ1200,φ1500) 鋼管杭 (φ600,φ700,φ800)

深度 x の水平変位 y(x)

粘性土地盤 N=5,10,15 砂地盤 N =10,15,20 複合地盤 qu=200,400,600kN/m2

地盤面

深度 x における 杭の水平地盤反力度 p(x)

深度 x における

杭の水平地盤反力度の上限値

pHU(x)

深度 x

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表-1 自然地盤における地盤条件

地盤種別 地盤条件 杭頭変位 杭種・杭径

N=5 N=10 粘性土

N=15 15mm

N=10 N=15 砂質土

N=20 15mm

qu=200kN/m2 qu=400kN/m2 qu=600kN/m2

15mm

qu=200kN/m2 qu=400kN/m2

複合地盤

qu=600kN/m2

杭径の 0.5%

場所打ち杭

φ1000mmφ1200mmφ1500mm

鋼管杭

φ600mm

φ700mm

φ800mm

3.4 検討成果

検討成果のうち, 代表的な事例として場所打ち杭の杭径の中間値であるφ1200mm について, レベル 1 地震時の自然

地盤の粘性土と複合地盤を図-4 および図-5 に示す. ここで, レベル 1 地震時を対象とするのは, 水平荷重が大きいため

常時よりも傾向が明確に現れているためである. また, 複合地盤には一定の粘着力があることから, 水平地盤反力度の

上限値の補正係数も粘性土と同一としているため, 自然地盤の粘性土と複合地盤について対比検討することとした.

図-4 は自然地盤の粘性土, また図-5 は複合地盤について, 杭頭水平変位量を 15mm に設定した場合の地盤反力分布

である. 横軸は応答地盤反力度および地盤反力度の上限値, 縦軸は深さであり, 実線は応答地盤反力度, 波線は地盤反

力度の上限値をそれぞれ表している. また, 図中には各地盤条件における応答地盤反力度と地盤反力度の上限値の交点

深さを表記している. この交点より上部は計算塑性化範囲すなわち杭の非線形挙動が想定される領域である. 本解析は

応答地盤反力度が上限なく線形応答する場合を仮想的に表したものであるが, 各ケースにおける交点深さを比較するこ

とで杭変位による地盤の応答状態を相対的に総合評価することが可能となる.

図によれば, 図-4 の自然地盤の粘性土では交点深さが 1.6~1.8m であるのに対し, 図-5 の複合地盤では強度増加に伴

い交点深さが逆に 2.2~1.8m となっており, 杭頭の応答地盤反力度も 5 倍程度に非常に大きくなっていることが分かる.

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

3.0

3.5

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0 1000 2000 3000 4000 5000 6000

応答地盤反力度および地盤反力度の上限値(kN/m2)

深さ

(m)

応答値:200kN/m2

応答値:400KN/m2

応答値:600kN/m2

上限値:200kN/m2

上限値:400kN/m2

上限値:600kN/m2

交点:200kN/m2

交点:400kN/m2

交点:600kN/m2

2.2m1.9m

1.8m

0.0

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0 200 400 600 800 1000 1200 1400

応答地盤反力度および地盤反力度の上限値(kN/m2)

深さ

(m)

応答値:N=5

応答値:N=10

応答値:N=15

上限値:N=5

上限値:N=10

上限値:N=15

交点:N=5

交点:N=10

交点:N=15

1.6m 1.7m

1.8m

図-4 応答地盤反力度と地盤反力度の上限値の関係

(場所打ち杭φ1200mm,粘性土)

(レベル 1 地震時)

図-5 応答地盤反力度と地盤反力度の上限値の関係

(場所打ち杭φ1200mm,複合地盤:15mm)

(レベル 1 地震時)

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図-6 は, 図-5 に対して複合地盤の杭頭水平変位量を杭径の 0.5%(杭径φ1200mm では 6mm)としたケースである. こ

の場合, 交点深さがいずれも 1.0m で図-4 の粘性土よりも小さく, 杭頭の応答地盤反力度は 2 倍程度に収まっている. 図-4~図-6を総合評価すると複合地盤で杭頭水平変位量を 15mm とした場合, 自然地盤の粘性土における 15mm より

も計算塑性化範囲が深くなり過度な非線形挙動が想定される. ただし, 複合地盤で杭頭水平変位量を杭径の 0.5%とした

場合, 粘性土地盤における 15mm と同程度もしくはそれを下回る計算塑性化深さを確保できる結果であり, 杭挙動が弾

性範囲内にあるものと判断される. この傾向は, 他の杭種や杭径でも同様で, また常時においても同様であった. なお図-7 には, 常時における複合地盤の杭頭水平変位量を杭径の 0.5%としたケースの関係を整理している. 図によ

れば, 概ね応答地盤反力度は地盤反力度の上限値以内に収まる結果である. つまり, この範囲において複合地盤は損傷

をすることはない弾性内にあり, 杭は線形挙動するものと考えられる.

3.5 追加検討(突出杭検討)

図-4~図-7 は応答地盤反力度が上限なく比例的に応答する場合を仮想的に表したものであるため, 実際の計算塑性化

範囲はこれよりも深くなるものと考えられる. それは, 地盤反力度の上限値を越える部分の応答地盤反力度は実際には

上限値までの抵抗となるため, 同一杭頭水平変位量に対する変位曲線の曲率が大きくなり, 応答地盤反力度と地盤反力

度上限値との交点が深くなるためである.

そこで, ここでは応答地盤反力度と地盤反力度上限値との交点深さより上部を突出杭と考え, 突出がない場合とした

式(5)を地上に突出している杭の場合の式(7)に置き換え, 同様の検討を行うこととした. ただし, 実際に弾塑性解析を

した場合には計算塑性化深さは, 応答地盤反力度が線形の場合の式(5)による検討と突出杭の場合の式(7)による検討の

中間位置にあるものと想定される 1).

H y(x)=――――[β3x3+3β3(h+h0)x2-3{1+2β(h+h0)}βx+3{1+β(h+h0)}] (7)

6EIβ3

式(7)による検討成果のうち, 式(5)による場合と同様の場所打ち杭φ1200mm のレベル 1 地震時を整理して, 図-8~

図-11 に示した. 図-8 の粘性土では交点深さが 2.2~3.1m であるのに対し, 図-9 の複合地盤では 4m 程度と 1.4~2.0 倍

と大きくなっており, 杭頭の応答地盤反力度は 4~5 倍である. ただし, 図-10 の複合地盤の杭頭水平変位量が杭径の

0.5%のケースでは交点深さが 1.9~2.3m で粘性土よりも小さく, 杭頭応答地盤反力度は 1.5~2.0 倍程度である.

図-8~図-10 は図-4~図-6 の総合評価と同様であるが, その傾向はより顕著に現れている. つまり, 複合地盤の杭頭

水平変位量 15mm の場合には杭は非線形挙動となる懸念があるが, 複合地盤の杭水平変位量が杭径 0.5%の場合では杭が

弾性挙動内に収まる可能性が高いと考えられる. この傾向は, 他の杭種および杭径においても同様である.

0.0

0.5

1.0

1.5

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2.5

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3.5

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0 500 1000 1500 2000 2500

応答地盤反力度および地盤反力度の上限値(kN/m2)深

さ(m

)

応答値:200kN/m2

応答値:400KN/m2

応答値:600kN/m2

上限値:200kN/m2

上限値:400kN/m2

上限値:600kN/m2

交点:200kN/m2

交点:400kN/m2

交点:600kN/m2

1.0m1.0m

1.0m

0.0

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3.5

4.0

4.5

5.0

0 200 400 600 800 1000 1200 1400

応答地盤反力度および地盤反力度の上限値(kN/m2)

深さ

(m)

応答値:200kN/m2

応答値:400KN/m2

応答値:600kN/m2

上限値:200kN/m2

上限値:400kN/m2

上限値:600kN/m2

交点:600kN/m2

0.1m

図-6 応答地盤反力度と地盤反力度の上限値の関係

(場所打ち杭φ1200mm,複合地盤:0.5%)

(レベル 1 地震時)

図-7 応答地盤反力度と地盤反力度の上限値の関係

(場所打ち杭φ1200mm,複合地盤:0.5%)

(常 時)

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また, 常時において複合地盤の杭頭水平変位量を杭径の 0.5%としたケースについては図-11に示すとおり図-7と同様

に, 杭が線形挙動すると考えられ応答地盤反力度は地盤反力度の概ね上限値以内に収まる結果である. 以上の検討より, 杭に複合地盤を併用する複合地盤杭基礎においては杭許容変位量を杭径 0.5%以下とすることが概ね妥当と判断される.

4.計算塑性域検討

4.1 検討方法別の塑性化深さ

杭の突出がない場合の検討(h=0)と地上に突出がある場合の検討(h>0)を同一に整理する. 代表例とし, 図-12

に場所打ち杭φ1200mm,図-13 に鋼管杭φ700mm の場合の h=0 と h>0 および常時とレベル 1 地震時の関係を示した.

横軸は地盤条件, 縦軸は計算塑性化範囲と 1/βの比である非線形応答深さ比である. この計算塑性化範囲とは, 線形弾

性地盤反力法解析で得られた応答地盤反力度と地盤反力度の上限値の交点深さを意味する.

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

3.0

3.5

4.0

4.5

0 200 400 600 800 1000 1200 1400

応答地盤反力度および地盤反力度の上限値

(kN/m2)

深さ

(m)

応答値:N=5

応答値:N=10

応答値:N=15

上限値:N=5

上限値:N=10

上限値:N=15

交点:N=5

交点:N=10

交点:N=15

3.1m

2.9m

2.2m

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

3.0

3.5

4.0

4.5

0 1000 2000 3000 4000 5000 6000

応答地盤反力度および地盤反力度の上限値(kN/m2)

深さ

(m)

応答値:200kN/m2

応答値:400KN/m2

応答値:600kN/m2

上限値:200kN/m2

上限値:400kN/m2

上限値:600kN/m2

交点:200kN/m2

交点:400kN/m2

交点:600kN/m24.0m

3.9m

3.9m

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

3.0

3.5

4.0

4.5

0 500 1000 1500 2000 2500

応答地盤反力度および地盤反力度の上限値

(kN/m2)

深さ

(m)

応答値:200kN/m2

応答値:400KN/m2

応答値:600kN/m2

上限値:200kN/m2

上限値:400kN/m2

上限値:600kN/m2

交点:200kN/m2

交点:400kN/m2

交点:600kN/m2

2.3m2.2m

1.9m

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

3.0

3.5

4.0

4.5

0 200 400 600 800 1000 1200 1400

応答地盤反力度および地盤反力度の上限値(kN/m2)

深さ

(m) 応答値:200kN/m2

応答値:400KN/m2

応答値:600kN/m2

上限値:200kN/m2

上限値:400kN/m2

上限値:600kN/m2

交点:600kN/m2

0.1m

図-8 応答地盤反力度と地盤反力度の上限値の関係

(場所打ち杭φ1200mm,粘性土)

(レベル 1 地震時)

図-9 応答地盤反力度と地盤反力度の上限値の関係

(場所打ち杭φ1200mm,複合地盤:15mm)

(レベル 1 地震時)

図-10 応答地盤反力度と地盤反力度の上限値の関係

(場所打ち杭φ1200mm,複合地盤:0.5%)

(レベル 1 地震時)

図-11 応答地盤反力度と地盤反力度の上限値の関係

(場所打ち杭φ1200mm,複合地盤:0.5%)

(常 時)

yokohm
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-212-
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図-12 において, 常時では複合地盤の 15mm 以外では h=0 と h>0 による非線形応答深さ比の違いは現れていないの

に対し, レベル 1 地震時では h=0 と h>0 に差がある. 地盤条件別に比較すると常時およびレベル 1 地震時ともに複合

地盤の 15mm で h=0 と h>0 の範囲が粘性土よりも上方にあり, 非線形応答深さ比が大きいことが明確である. 特に, レ

ベル 1 地震時においては, 非線形応答深さ比が 1.0 を越える可能性もあり, 杭の水平抵抗に支配的な範囲である 1/βが

塑性変形する可能性を示唆している. これに対して, 複合地盤で杭頭水平変位量を杭径の 0.5%にした場合, 常時では塑

性化範囲が見られずレベル 1 地震時でも非線形応答深さ比が粘性土よりも小さい. すなわち, 自然地盤の粘性土におけ

る 15mm と同程度もしくはそれを下回る非線形応答深さ比を確保でき, 杭は弾性挙動を示すと考えられる.

図-13 も図-12 と同様の結果であるが, 傾向がより顕著に現れている. すなわち, 常時およびレベル 1 地震時ともに複

合地盤の 15mm が h=0 と h>0 の範囲が粘性土よりも上方にあり, 非線形応答深さ比が大きい結果である. レベル 1 地

震時においては, 非線形応答深さ比が 1.0 を越える可能性があり 1/βの塑性変形が懸念される. これに対して, 複合地

盤で杭頭水平変位量を杭径の 0.5%とした場合には非線形応答深さ比が粘性土よりも小さい結果である.

以上より, 複合地盤で杭頭水平変位量を 15mm とした場合は, 自然地盤における 15mm よりも非線形応答深さ比が大

きくなり, 杭が非線形挙動する可能性がある. これに対し, 複合地盤で杭頭水平変位量を杭径の 0.5%とした場合には, 杭は線形挙動し複合地盤は弾性挙動内に収まる可能性が高いと考えられる. この傾向は, 他の杭種や杭径でも同様であ

った.

4.2 杭種・杭径別の計算塑性化深さ

ここでは, 杭種および杭径による計算塑性化範囲の違いを整理する. 式(5)による突出がない場合の検討(h=0)を対

象とする. 常時およびレベル 1 地震時を図-14 および図-15 に示す. 横軸は地盤条件, 縦軸は計算塑性化範囲と 1/βの比

である非線形応答深さ比である. 図-14 の常時では, 複合地盤の杭径 0.5%で塑性化が発生しない結果である. ただし, 自然地盤の粘性土および複合地

盤の 15mm は計算塑性化範囲が現れており, 杭径が 1500mmから 600mmへと小さくなるに伴い非線形応答深さ比が大き

くなっている. また, 複合地盤の 15mm で粘性土よりも非線形応答深さ比が大きく, 複合地盤の杭径 0.5%では非線形応

答深さ比が同等以下である. 図-15では自然地盤の粘性土においては, 杭径が 1500mm から 600mm へと小さくなるに伴い非線形応答深さ比が大き

くなっている. また, 地盤条件別に比較では複合地盤の 15mm で粘性土よりも非線形応答深さ比が大きく, 複合地盤の

杭径 0.5%ではほぼ同等である. 以上より, 非線形応答深さ比と杭径には相関関係があり, 自然地盤の粘性土では杭径が大きいほど非線形応答深さ比

(計算塑性化範囲/(1/β))が小さくなる傾向にある. また, 複合地盤においても常時には同様の関係が認められる. また, 複合地盤の 15mm は粘性土における 15mm よりも非線形応答深さ比が大きくなり, 杭が弾性挙動内に収まらない可能性

がある. これに対して, 複合地盤で杭径 0.5%とした場合には杭が弾性挙動内にあるものと想定される.

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

1 2 3 4 5 6 7 8 9

常時h=0

常時h>0

レベル1地震時h=0レベル1地震時h>0

x/(1/β)

塑性化深さ比

地盤条件

粘性土 N

5   10  15   200    400    600   200    400    600

複合15mm qu 複合0.5% qu

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

3.0

1 2 3 4 5 6 7 8 9

常時h=0常時h>0

レベル1地震時h=0レベル1地震時h>0

x/(1/β)

塑性化深さ比

地盤条件

粘性土 N 複合15mm qu 複合0.5% qu

5   10  15   200    400    600   200    400    600

図-12 非線形応答深さ比(計算塑性化範囲/(1/β))

(場所打ち杭φ1200mm)

図-13 非線形応答深さ比(計算塑性化範囲/(1/β))

(鋼管杭φ700mm)

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5.まとめ

自然地盤と複合地盤における弾性地盤反力法解析による杭の地盤反力特性の検討より, 概ね以下の結果が得られた. 1)自然地盤(粘性土)において杭頭水平変位量を杭径 1%(杭径 1.5m 以下は 15mm)とした場合, 杭は弾性範囲内にある

と考えられるが, レベル 1 地震時において応答地盤反力度は上限値を上回る傾向にあり, その範囲において地盤は非

線形挙動するものと考えられる. 2)複合地盤において杭頭水平変位量を自然地盤と同様に杭径 15mm とした場合, 地盤反力の交点深さである計算塑性化

範囲は自然地盤の粘性土におけるものより深く, 応答地盤反力も非常に大きくなる傾向にある. そのため, 杭は弾性

挙動を逸脱する可能性がある. 3)複合地盤において杭頭水平変位量を杭径の 0.5%とした場合, 常時の応答地盤反力度は地盤反力度の上限値以内に収ま

り, 複合地盤は損傷することがない弾性内にあり杭は線形挙動すると考えられる. レベル 1 地震時では計算塑性化範

囲は自然地盤の 15mm の場合と同程度もしくはそれ以下となり, 杭は弾性挙動内にあるものと判断される. そのため, 杭に複合地盤を併用する複合地盤杭基礎では杭許容変位量を杭径の 0.5%以下とすることが概ね妥当と判断される.

4)上層地盤の計算塑性域を想定した突出杭における弾性地盤反力法解析の検討においては, 上記 2)および 3)の傾向は同

様でより顕著である. 5) 計算塑性化範囲と杭の特性値 1/βの比である非線形応答深さ比は複合地盤の杭頭水平変位量 1%すなわち 15mm で大

きくなる. また, 常時およびレベル 1 地震時の計算塑性範囲には, 杭種・杭径と一定の相関関係が認められる.

6.おわりに

杭基礎やケーソン基礎は一般の設計では地盤反力照査はせず, 地盤が塑性化した場合でもその回復性については必ず

しも十分に議論されていない. 本検討は基礎的な線形弾性解析のため計算上の塑性化範囲がすぐに地盤の損傷を意味す

るものではないが, 今後は, 基礎の健全性を確保させるためその周辺地盤も含めた全体系の挙動検証が重要と考える.

参考文献

1). 日本道路協会:道路橋示方書・同解説 IV 下部構造編, pp.348-433, 2002. 2). 土木研究所 寒地土木研究所:北海道における複合地盤杭基礎の設計施工法に関するガイドライン(案), 2009.11 3). 冨澤幸一, 西川純一:深層混合処理工法により形成した複合地盤における杭設計手法, 土木学会論文集, No.799 /

III-72, pp.183-193, 2005. 4). Kouichi Tomisawa and Seiichi Miura:Mechanical behavior of pile foundation constructed in composite ground and its

evaluation, Soils and Foundations, Vol.47, No.5, pp.961-972, 2007. 5). 例えば, 赤井浩一:土質力学, pp.124-149, 1997. 6). 土木研究センター:陸上工事における深層混合処理工法 設計・施工マニュアル, pp.48.-148, 1999. 7). 北海道開発土木研究所:泥炭性軟弱地盤対策工マニュアル, pp.95-129, 2004.

0.0

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0

1 2 3 4 5 6 7 8 9

場所打ち杭φ1000 場所打ち杭φ1200

場所打ち杭φ1500 鋼管杭φ600

鋼管杭φ700 鋼管杭φ800

x/(1/β)

塑性化深さ比

地盤条件

粘性土 N 複合15mm qu 複合0.5% qu

5   10  15   200    400    600   200    400    600

0.0

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0

1.2

1.4

1 2 3 4 5 6 7 8 9

場所打ち杭φ1000 場所打ち杭φ1200

場所打ち杭φ1500 鋼管杭φ600

鋼管杭φ700 鋼管杭φ800

x/(1/β)

塑性化深さ比

地盤条件

粘性土 N 複合15mm qu 複合0.5% qu

5   10  15   200    400    600   200    400    600

図-14 非線形応答深さ比(計算塑性化範囲/(1/β))

(常時 h=0)

図-15 非線形応答深さ比(計算塑性化範囲/(1/β))

(レベル 1 地震時 h=0)

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深礎杭の周面抵抗力に関する実証的評価

土木研究所寒地土木研究所 正会員 ○江川 拓也

同 上 国際会員 西本 聡

同 上 国際会員 冨澤 幸一

同 上 国際会員 福島 宏文

1.はじめに

深礎杭は,杭施工用大型機械の使用が困難な山岳地の急斜面で主に採用される基礎形式であり,大規模な斜面

掘削を必要としない特徴がある.深礎杭の施工は,人力または小規模掘削機械により杭必要深さまで掘削が行わ

れ,施工時の孔壁崩壊防止のために孔壁の土留め工が併用される.孔壁土留め工は,従来ライナープレート方式

が用いられてきたが,近年の技術開発により型枠を用いた直打ちのモルタルライニングや吹付けコンクリートを

用いた新しい土留め工法の採用が可能となっている.これらの新工法では,地山と杭体の密着が期待でき,従来

工法ではライナープレートと地山との隙間に注入されるグラウト施工の不確実性から困難とされていた杭の周面

抵抗力を設計に考慮できるとされる.国土交通省北海道開発局においても全国的な深礎杭設計法改訂の動向を踏

まえ,旧日本道路公団の設計要領 1)に準じた杭の周面抵抗力を考慮する設計法を採用している 2).しかしながら,

国土交通省北海道開発局において新しい土留め工法による深礎杭の施工事例は少なく,試験等により杭の周面抵

抗力の実発現が確認された事例もない.

そのため著者らは,国土交通省北海道開発局において新しい土留め工法を用いた深礎杭を対象に,上載荷重の

増加に伴う杭軸力の長期計測結果を整理し,杭の周面抵抗力の実発現を検証する一連の検討を行ってきた 3)~5).

本検討ではこれまでの検討結果も踏まえ,今回新たに土留め工として従来工法であるライナープレートを一部用

いた深礎杭の杭軸力長期計測結果を整理し,土留め工の違いによる杭の周面抵抗力の発現について評価を行った.

2.深礎杭の周面抵抗力の評価手法

杭の周面抵抗力の実発現の確認には,一般に杭の鉛直載荷試験 6)が実施され

る.しかし,杭径が大きな深礎杭では,載荷装置,反力装置に限界があり現実

的ではない.そこで,深礎杭の周面抵抗力の実発現を検証する一連の検討では,

杭体施工後に杭頭部に順次施工される下部工ならびに上部工の上載荷重の増加

に伴う杭軸力の変化から杭の周面抵抗力の実発現を確認し,設計値と実測値の

比較により評価を行っている.

現行の設計法 2)では,深礎杭施工時にモルタルライニング等の新しい土留め

工法を用いた場合,杭に作用する鉛直荷重は杭周面の鉛直方向せん断地盤反力

(杭の周面抵抗力)および杭底面の鉛直方向地盤反力で支持するものとされる.

これらの鉛直方向地盤反力は,ケーソン基礎の設計 7)に準じ線形ならびにバイ

リニア型のバネとして与えられる.図-1に深礎杭体と地盤抵抗要素の関係を

示す.このうち杭周面の鉛直方向せん断地盤反力は,RSVB と RSVD である.

RSVB と RSVD は, 水平方向地盤反力係数を地盤定数から求め, 補正係数を乗じ

て鉛直方向せん断地盤反力係数ならびに鉛直方向せん断地盤バネを算定し, さ

らに鉛直変位を乗じて設計される. それぞれは以下の手順で算定される.

斜面傾斜および隣接杭の影響を考慮した水平方向地盤反力係数 kHθμは式(1)

より求める.

HHθ kαk μθμ

4

3

30 .Bkααk HH0k δkH

An Empirical Evaluation of the Frictional Resistance of Caisson Type Pile

Takuya EGAWA, Satoshi NISHIMOTO, Kouichi TOMISAWA and Hirofumi FUKUSHIMA

Civil Engineering Research Institute for Cold Region, PWRI

V0

H0

Ri RSVB

RSHD

RV

SB

M0

RSVB

RSVD

R i:杭前面水平方向地盤反力

S B:杭底面水平方向せん断地盤反力

R SHD:杭側面水平方向せん断地盤反力

R SVB:杭前背面鉛直方向せん断地盤反力

R SVD:杭側面鉛直方向せん断地盤反力

R V:杭底面鉛直方向地盤反力

図-1 地盤抵抗要素 ・・・(1)

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H21年度スタンプ
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また, 杭前背面と側面の鉛直方向せん断地盤反力係数 kSVB, kSVD および杭前背面と側面の鉛直方向せん断地盤

バネ KSVB, KSVD は式(2),(3)より求める.

kSVB = 0.3kHθμ, kSVD = 0.3kHθμ

KSVB = 2kSVBDeΔL, KSVD = 2kSVDDeΔL

kSVB, kSVD:杭前背面と側面の鉛直方向せん断地盤反力係数(kN/m3) KSVB, KSVD:杭前背面と側面の鉛直せん断地盤バネ(kN/m)

De:杭の有効載荷幅(m)で, 一般に De=0.8×D(D:基礎径) ΔL:バネ間隔長さ(m)

よって,深礎杭の周面抵抗力である杭前背面と側面の鉛直方向せん断地盤反力 RSVB,RSVD は式(4)により求め

られる.

RSVB = KSVBδVi, RSVD = KSVDδVi

RSVB, RSVD:杭前背面と側面の鉛直方向せん断地盤反力(kN) δVi:杭軸位置での各深度における鉛直変位(m)

本検討では, RSVB,RSVD を含む周辺地盤の抵抗要素および杭体を弾性体としてモデル化した,地盤バネに支持

された梁モデルの杭頭へ各施工段階に応じた上載荷重を作用させることにより深礎杭の設計軸力を算出した.

各施工段階において得られた実測の杭軸力から杭の周面抵抗力度(鉛直方向せん断地盤反力度)ならびに鉛直変

位を算定し,杭周面における鉛直方向せん断地盤反力係数の設計値との比較を行った.

3.現地計測概要

今回新たに杭の周面抵抗力を評価

した対象は,一般国道 229 号神恵内

村尾根内大橋(4 径間連続 PC ラーメ

ン箱桁橋)の P1 橋脚大口径深礎杭

( = 5.0m,L = 11.0m)である.

図-2に,尾根内大橋 P1 橋脚深

礎杭の設計断面と設計時に用いた設

計定数を示す.当該箇所は,火山角

礫岩(Uvb3)層を基盤とし,その上

位に砂礫(dt-g)層,粘性土(dt-c)

層が堆積する.深礎杭設置の対象と

なる砂礫層と火山角礫岩層の変形係

数 Eo は,孔内水平載荷試験からの

実測値である.地盤定数 c, は,

砂礫層では N 値からの推定値,火山

角礫岩層では,岩石試験の結果から

の判定値である.計画ルートが海岸

線である尾根内大橋の P1 橋脚終点

側には,張り出した岩体が確認され

kHθμ:斜面傾斜および隣接杭の影響を考慮した

水平方向地盤反力係数(kN/m3) αθ:斜面傾斜に関する補正係数 μ:隣接杭の影響に関する補正係数 kH:水平方向地盤反力係数の基本値(kN/m3) kH0=1/0.3αE0:直径 30cm の剛体円板による平

板載荷試験の値に相当する水平

方向の地盤反力係数(kN/m3)

E0:地盤の変形係数(kN/m2) α:E0 の求め方に対応する係数

βA,ββD HHB 1  1 :基礎の換算載荷幅(m)

D:杭径(m) 4 4EIDkβ h :深礎杭の特性値(m-1)(常に周面摩

擦を考慮しない値)

kh:水平方向地盤反力係数(kN/m3)

EI:杭の曲げ剛性(kN・m2) AH:荷重作用方向に直交する基礎の載荷面積

(=Dℓ, ℓ:杭長) αk:水平方向地盤反力係数の補正係数

αkδ:常時・暴風時・地震時(震度法)の地盤

反力・変位・断面照査の設計で用いる水

平地盤反力係数の補正係数

・・・(2)

・・・(3)

・・・(4)

N = 32

γt = 20 kN/m3

φ = 36 °

C = 0 kN/m2

Eo = 19,000 kN/m2

dt-g(砂礫)

図-2 尾根内大橋 P1 橋脚深礎杭の設計断面(橋軸方向)と設計定数

dt-c

dt-g

Uvb3

N = 32

γt = 20 kN/m3

= 36 °

c = 0 kN/m2

Eo = 19,000 kN/m2

dt-g(砂礫)

N = 50

γt = 22 kN/m3

= 37 °

c = 100 kN/m2

Eo = 2,250,000 kN/m2

Uvb3(火山角礫岩)

無効断面

深礎杭

φ = 5.0m,L = 11.0m

深礎杭

= 5.0m,L = 11.0m

yokohm
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ており,図中に示す斜線部は設計上無効な断面とされている.

尾根内大橋 P1 橋脚深礎杭施工時の土留め工は,砂礫層ではライナ

ープレートが,火山角礫岩層ではロックボルト併用の吹付けコンクリ

ートが用いられている.図-3に,深礎杭に設置した計測器の配置を

示す.計測器は,コンクリートひずみ計を杭外周 7 断面に各 4 点、杭

底面に 5 点配置している.各土留め工における計測器の設置は,ライ

ナープレート内側(杭体側)ならびに吹付けコンクリート内部として

いる.杭の周面抵抗力の実測値は,各断面 4 点の平均計測値より評価

している.

図-4に,尾根内大橋 P1 橋脚深礎杭の周面抵抗力を評価するため

に用いた杭頭に作用する上載荷重を施工ステップ毎に示す.本検討で

は,橋脚1段目施工前を初期値とし,施工ステップ毎における杭軸力

の変化から計測断面毎の周面抵抗力を評価した.

図-5に,上載荷重の増加によって杭外周で得られた実測の杭軸力

と,各計測断面上段との軸力差より得られる杭の周面抵抗力を単位面

積当たりで基準化した杭の周面抵抗力度の深度方向の分布を設計値と

比較して示す.なお,尾根内大橋 P1 橋脚深礎杭の施工は平成 17 年度

に完了しており,その後約 3 年を経て平成 21 年度に下部工,上部工の

施工が行われている.そのため,杭体コンクリート硬化時の膨張収縮

による計測値への影響はないものと考えられる.

図-5より,杭軸力の実測値は,いずれの施工ステップにおいても

設計値よりも過少な傾向を示し変動が大きい.また,杭頭位置におい

て,各施工ステップに相当する上載荷重が作用していないことが分か

る.この傾向は,これまでの一連の検討においても同様であり,これ

は,杭の周面抵抗力を考慮する深礎杭の設計では,杭体深度方向の各

断面に作用する杭軸力は半径方向に均等であるとして設計されるが,

杭径が大きな大口径深礎杭では半径方向の杭軸力分布は単純ではなく,

杭中心軸位置と杭外周位置では軸力に差が生じるものと考えられる.

そのため,杭外周で得られた実測値と設計値とでは差異が生じると考

えられる.各計測断面上段との軸力差より求めた杭の周面抵抗力度に

ついても設計値とは傾向が異なる.

5 000

100100 φ5 000

6 000

11 000

EL=30.820

ボルト

5002000 2000

500

500

1500

2000

1750

1500

1500

1500

750

1断面

2断面

3断面

4断面

5断面

6断面

7断面底 盤

(起点側)

(山側) (海側)

(終点側)

100φ5 000100

ライナ

コンクリート

5002000 2000

500

ロック

ひずみ計

吹付

けコン

クリー

トプ

レート

図-3 計測器の配置

図-5 尾根内大橋 P1 橋脚深礎杭における実測の杭軸力と周面抵抗力度の深度分布

0.0

1.0

2.0

3.0

4.0

5.0

6.0

7.0

8.0

9.0

10.0

11.0

12.0

-500

-400

-300

-200

-100

0 100

200

300

周面抵抗力度(kN/m2)

深度

(m)

STEP1 実測値 STEP2 実測値 STEP3 実測値 STEP4 実測値 STEP5 実測値

STEP1 設計値 STEP2 設計値 STEP3 設計値 STEP4 設計値 STEP5 設計値

0.0

1.0

2.0

3.0

4.0

5.0

6.0

7.0

8.0

9.0

10.0

11.0

12.0

-8,000

-6,000

-4,000

-2,000

0 2,000

4,000

6,000

8,000

軸力(kN)

深度

(m)

図-4 施工ステップ

と上載荷重

STEP5 上部工打設   (6,414kN)

STEP4 支承据付   (2,578kN)

STEP3 橋脚2段目   (2,462kN)

STEP2 橋脚1段目   ( 772kN)

STEP1 橋脚施工前   ( 0kN)

※( )の上載荷重は累積

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-217-
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4.周面抵抗力の評価

4.1 FEM解析

上載荷重の増加によって杭外周で得られた実測の杭軸力は,杭中心軸に線形梁要素を置いて求める設計杭軸力

と異なる傾向を示した.そこで一連の検討では,大口径深礎杭の杭体内において半径方向に異なって作用してい

るであろう鉛直方向発生応力の分布をFEM解析により把握し,解析で得られる杭体内応力から杭軸力を算定す

ることにより杭の周面抵抗力の評価を行っている.本検討においても同様の手法により尾根内大橋 P1 橋脚深礎

杭における杭の周面抵抗力の評価を行った.

FEM解析は,杭外周における実測の杭軸力と解析結果による杭外周の杭軸力が合致するように解析モデルの

設定を行っている.詳細には,解析モデルに用いる地盤の各物性値は図-2における設計定数を基本とするが,

最大上載荷重作用時の杭外周における杭軸力の実測値と解析値が合致するように変形係数 E を増減させている.

図-6に,FEM解析モデル,合致させた最大上載荷重時の杭外周における杭軸力の実測値と解析値,その際

の変形係数 E とポアソン比,ならびに解析の結果得られた鉛直方向発生応力の分布図を示す.解析モデルは半断

面軸対象としており,水平方向に杭径の5倍,鉛直方向に杭長の5倍の要素を設定している.地盤の変形係数 E

は,設計定数の 1.0~3.0 倍の値となった.ライナープレートの変形係数 E は,鉄とコンクリートのヤング係数か

ら合成して求めている.ここで、地層 2 および地層 4 において変形係数 E の増減だけでは実測値と解析値に大き

な差異が生じ,解析モデル内に示した①②の範囲においてライナープレートの剛性を低下させることにより実測

値と解析値が概ね合致した.ライナープレート部において,考えられる所要の剛性が得られていないとすれば,

ライナープレート背面への確実なグラウト充填が困難な現場条件であった可能性もあり,地山との密着が期待で

きないとされる現行の設計思想の妥当性を示すものと考えられる.

杭体内の鉛直方向発生応力は、応力の分布傾向のみを示したが,同じ深度における杭中心軸と杭外周では異な

った応力が発生しており,鉛直方向発生応力が半径方向に異なって作用していることが分かる.杭外周における

杭軸力の実測値が設計値と異なる傾向を示した要因のひとつであると考えられる.

4.2 解析結果からの周面抵抗力の評価

FEM解析結果による杭体内鉛直方向発生応力から杭軸力を算定し,杭の周面抵抗力の評価を行った.このと

き,杭体内の鉛直方向発生応力は,杭体深度方向各断面において半径方向に異なることから,各断面における応

力の分布面積を考慮して各深度における杭軸力を算定している.

0.0

1.0

2.0

3.0

4.0

5.0

6.0

7.0

8.0

9.0

10.0

11.0

12.0

-8,000

-6,000

-4,000

-2,000

0 2,000

4,000

6,000

8,000軸力(kN)

深度(m)

STEP5

実測値

STEP5

解析値

地層1

地層2

地層3

地層4

地層5

地層6

地層7

地層8

地層9

地層10

ライ

ナー

プレー

ト吹

付けコ

ンクリ

ート

※①②ライナープレート剛性低下部

杭中心軸杭外周 杭外周

杭中心軸

4,950,000 0.167

22,000,000 0.167

49,500,000 0.167

24,800,000 0.167

2,250,000 0.4

25,000,000 0.167

3,375,000 0.4

3,375,000 0.4

4,500,000 0.4

4,500,000 0.4

57,000 0.4

2,250,000 0.4

ライナープレート②部

吹付けコンクリート

変形係数E(kN/m2)

ポアソン比

19,000 0.4

19,000 0.4

57,000 0.4

杭体コンクリート

ライナープレート

ライナープレート①部

地層9

地層10

dt-g

Uvb3

地層5

地層6

地層7

地層8

地層1

地層2

地層3

地層4

図-6 尾根内大橋 P1 橋脚深礎杭におけるFEM解析モデルと解析結果

(a)解析モデル (b)合致させたときの

変形係数 E とポアソン比

(c)合致させた杭外周杭軸力の

実測値と解析値

(d)鉛直方向発生応力の

分布図

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-218-
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図-7に,尾根内大橋 P1 橋脚深礎杭における解析結果から算定した杭軸力と周面抵抗力度の深度方向の分布

を設計値と比較して示す.ここでは,これまでの一連の検討において同様の手法により評価を行っている,旭川

紋別自動車道上滝橋の P2 橋脚大口径深礎杭( = 5.0m,L = 12.5m)における同様の関係を図-8に示す.上滝橋

P2 橋脚深礎杭は,杭全長に渡り土留め工に吹付けコンクリートが用いられている.上滝橋 P2 橋脚深礎杭におけ

る解析は,床版打設終了までを図中の凡例に示す施工段階荷毎の累積上載荷重で評価している.

図-7より,尾根内大橋 P1 橋脚深礎杭における杭軸力の解析値は,いずれの施工ステップにおいても深度 4.0m

まで杭頭に作用した上載荷重がほとんど減少せずに伝達されている.同区間における杭の周面抵抗力度の解析値

には若干の発現が確認されるものの,この深度 4.0m までにあたる位置は土留め工としてライナープレートが用

いられており,杭の周面抵抗力の発現は期待できないものとされる現行の設計法は妥当であると考えられる.

吹付けコンクリート部に相当する深度 5.0m 以深における杭軸力の解析値は,設計値と比べ深度が深くなる毎に

大きく減少しており,最大上載荷重作用時には杭の周面抵抗力度は設計値以上の値を示している.

一方,図-8より,杭全長に渡って吹付けコンクリートが用いられた上滝橋 P2 橋脚深礎杭における杭軸力の

解析値は,上載荷重の増加に伴い設計値より過少となる傾向が見られるものの,杭軸力の伝達傾向は概ね設計値

と合致している.杭の周面抵抗力度の解析値は,杭頭部において設計値を下回っているものの,最大上載荷重作

用時には深度 4.0m以深において設計値以上の値を示している.

図-7 尾根内大橋 P1 橋脚深礎杭における解析結果による杭軸力と周面抵抗力度の深度分布

FEM解析から求めた周面抵抗力度(kN/m2)

0.0

1.0

2.0

3.0

4.0

5.0

6.0

7.0

8.0

9.0

10.0

11.0

12.0

0 10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

深度

(m)

STEP2 解析値 STEP3 解析値 STEP4 解析値 STEP5 解析値

STEP2 設計値 STEP3 設計値 STEP4 設計値 STEP5 設計値

FEM解析から求めた軸力(kN)

0.0

1.0

2.0

3.0

4.0

5.0

6.0

7.0

8.0

9.0

10.0

11.0

12.0

0 2,000

4,000

6,000

8,000

10,000

12,000

14,000

深度

(m)

図-8 上滝橋 P2 橋脚深礎杭における解析結果による杭軸力と周面抵抗力度の深度分布

0.0

1.0

2.0

3.0

4.0

5.0

6.0

7.0

8.0

9.0

10.0

11.0

12.0

13.0

0 10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

FEM解析から求めた周面抵抗力度(kN/m2)

深度

(m)

橋脚1段目 解析値 橋脚3段目 解析値 橋脚5段目 解析値 桁架設 解析値 床版打設 解析値

橋脚1段目 設計値 橋脚3段目 設計値 橋脚5段目 設計値 桁架設 設計値 床版打設 設計値

0.0

1.0

2.0

3.0

4.0

5.0

6.0

7.0

8.0

9.0

10.0

11.0

12.0

13.0

0 2,000

4,000

6,000

8,000

10,000

12,000

14,000FEM解析から求めた軸力(kN)

深度

(m)

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4.3 杭周面における鉛直方向せん断地盤反力係数の評価

深礎杭の設計では,杭体は地盤バネに支持された梁としてモデル化される.この地盤バネを評価するため,解

析により得られた杭周面の鉛直方向せん断地盤反力度(杭の周面抵抗力度)と鉛直変位から杭周面における鉛直

方向せん断地盤反力係数を求め設計値と比較した.

ここで,杭の周面抵抗力を考慮する深礎杭の設計では,杭周面の鉛直方向せん断地盤反力度に上限値が定めら

れ,砂質土および岩盤における上限値は下式により設定される.

fu = f / m

f = min[5N, (c + p0 tanφ)] ≦ 200

fu:杭周面のせん断地盤反力度の上限値(kN/m2) f:杭周面の最大せん断抵抗力度(kN/m2) N:標準貫入試験の N 値 c:土の粘着力(kN/m2)

p0:壁面に作用する静止土圧強度(kN/m2) φ:土のせん断抵抗角(度) m:上限値決定のための補正係数(常時:3,地震時:2)

図-9に,尾根内大橋 P1 橋脚深礎杭の解析結果から各施工ステップに対応した深度毎の鉛直変位と鉛直方向

せん断地盤反力度の関係を設計値と比較して示す.また,各施工ステップで得られた鉛直方向せん断地盤反力度

をそれぞれ対応する鉛直変位で除した鉛直方向せん断地盤反力係数について,上限値を考慮しない初期の設計値

に対する比を深度毎に示した.図-10に,上滝橋 P2 橋脚深礎杭における同様の関係を示す.

(6)式から求める杭周面の最大せん断抵抗力度 f は,N 値または有効土被り圧より算定し安全側となる値が設定

される.尾根内大橋 P1 橋脚深礎杭では,図-2に示す斜線部を設計上無効な断面としていることから上限値が

小さくなる有効土被り圧により設定されており,有効土被り圧が異なる深度毎に上限値が設定されている.上滝

橋 P2 橋脚深礎杭では,算定の結果上限値が小さくなる N 値により設定されており,深度 8.75m 以深ではほぼ同

じ値が設定されている.

図-9より,尾根内大橋 P1 橋脚深礎杭周面における鉛直方向せん断地盤反力係数である鉛直方向せん断地盤

反力度と鉛直変位の各点と原点を結ぶ割線勾配は,土留め工として吹付けコンクリートが用いられた深度 5.0m

以深ではいずれの深度においても設計値を下回り,鉛直方向せん断地盤反力係数の設計値との比は施工ステップ

4 までは約 0.6 倍,最大上載荷重作用時である施工ステップ 5 では約 0.3 倍となっている.しかし,最大上載加重

作用時においては,いずれの深度においても設計上設定される上限値を超える杭周面の鉛直方向せん断地盤反力

度が得られており,基礎の安定に必要とされる杭の周面抵抗力は確保されている.このことは,今後,杭周面の

鉛直方向せん断地盤反力係数ならびに鉛直方向せん断地盤反力度の上限値設定について,合理的な設計法の確立

に向けた検討が必要であることを示唆しているものと考えられる.

・・・(5)

・・・(6)

図-9 各深度の鉛直変位に対する杭周面の鉛直方向せん断地盤反力度と鉛直方向せん断地盤反力係数の比

(尾根内大橋 P1 橋脚深礎杭)

-0.1

0.0

0.1

0.2

0.3

0.4

0.5

0.6

0.7

0.8

0.9

1.0

0.00000 0.00005 0.00010 0.00015 0.00020 0.00025 0.00030

鉛直変位(m)

地盤

反力係

数の

比 (解

析値

/設

計値

)

深度2.00m 設計値=0

深度4.00m 設計値=0

深度5.75m

深度7.25m

深度8.75m

深度10.25m

-10

0

10

20

30

40

50

60

0.00000 0.00005 0.00010 0.00015 0.00020 0.00025 0.00030

鉛直変位(m)

杭周

面の

鉛直方

向せ

ん断

値地盤

反力

度(kN/m2)

深度2.00m 解析値

深度4.00m 解析値

深度5.75m 解析値

深度7.25m 解析値

深度8.75m 解析値

深度10.25m 解析値

深度2.00m 設計値=0

深度4.00m 設計値=0

深度5.75m 設計値

深度7.25m 設計値

深度8.75m 設計値

深度10.25m 設計値STEP2 → STEP3 → STEP4 → STEP5 順の変位

上限値 fu

(a)鉛直変位と

杭周面の鉛直方向せん断地盤反力度の関係

(b)鉛直変位と

杭周面の鉛直方向せん断地盤反力係数の比

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一方,土留め工としてライナープレートが用いられた深度 5.0m 以浅では,設計上杭の周面抵抗力の発現は見

込んでいないが少なからず鉛直方向せん断地盤反力度の発現が見られる.しかし,その値は小さく,施工ステッ

プ 4 以降における鉛直方向せん断地盤反力度の増加も少ないことから現行の設計法どおり杭の周面抵抗力の発現

は見込めないものと評価される.

図-10より,土留め工として杭全長に吹付けコンクリートが用いられた上滝橋 P2 橋脚深礎杭では,いずれ

の深度においても鉛直方向せん断地盤反力度と鉛直変位の各点と原点を結ぶ割線勾配は設計値よりも小さく,最

大上載荷重作用時である床版打設後の鉛直方向せん断地盤反力係数の設計値との比は,最深部の深度 11.75m で約

0.6 倍,最浅部の深度 3.00m でほぼ 0 に近く,深度が浅いほど小さい傾向にある.これは,図-6の鉛直方向発

生応力の分布図に見られるように,杭頭付近への応力の作用が小さいためと考えられる.杭周面の鉛直方向せん

断地盤反力度は,最終施工ステップに至るまで弾性的な挙動を示しており,深度 3.00m を除き最大上載荷重作用

時において設計上の上限値相当あるいはそれ以上の発現が得られている.

これらの結果,土留め工として吹付けコンクリートを用いた場合,杭周面における鉛直方向せん断地盤反力係

数は設計値と比較し小さいものの,杭の周面抵抗力は設計値相当あるいはそれ以上の発現が得られるものと評価

される.いずれの深礎杭においても非常に微少な変位内での評価であるが,上述の傾向が確認された.

5.まとめ

本検討では,深礎杭の周面抵抗力について特に杭施工時に併用される土留め工の違いによる杭の周面抵抗力の

発現傾向について,上載荷重の増加に伴う杭軸力の実測値ならびに実測値と合致させたFEM解析結果に基づき

評価を行った.その結果を以下に要約する.

(1)深礎杭外周で得られる実測の杭軸力は設計杭軸力と異なる発現傾向を示す.これは,杭径が大きな大口径

深礎杭では半径方向の杭軸力分布は単純ではなく,杭中心軸と杭外周では異なった鉛直応力が発生してい

るものと考えられた.

(2)土留め工としてライナープレートを用いた場合,当該上位に作用した上載荷重がほとんど減少せずに下位

に伝達し,鉛直方向せん断地盤反力度の発現は小さい傾向にある.杭の周面抵抗力の発現は見込めないと

する現行の設計法は妥当であると評価された.

(3)土留め工として吹付けコンクリートを用いた場合,杭周面における鉛直方向せん断地盤反力係数は設計値

と比較し小さいものの,鉛直方向せん断地盤反力度に設計値相当あるいはそれ以上の発現が得られるもの

と評価された.このことは,杭周面の鉛直方向せん断地盤反力係数ならびに鉛直方向せん断地盤反力度の

上限値設定について合理的な設計法の確立に向けた検討が必要であると示唆される.

図-10 各深度の鉛直変位に対する杭周面の鉛直方向せん断地盤反力度と鉛直方向せん断地盤反力係数の比

(上滝橋 P2 橋脚深礎杭)

-0.1

0.0

0.1

0.2

0.3

0.4

0.5

0.6

0.7

0.8

0.9

1.0

0.0000 0.0005 0.0010 0.0015 0.0020

鉛直変位(m)

地盤

反力係

数の

比 (解

析値

/設

計値

)

深度3.00m

深度5.00m

深度7.25m

深度8.75m

深度10.25m

深度11.75m

-10

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

0.0000 0.0005 0.0010 0.0015 0.0020

鉛直変位(m)

杭周

面の

鉛直

方向

せん

断値

地盤

反力

度(kN/m2)

深度3.00m 解析値

深度5.00m 解析値

深度7.25m 解析値

深度8.75m 解析値

深度10.25m 解析値

深度11.75m 解析値

深度3.00m 設計値

深度5.00m 設計値

深度7.25m 設計値

深度8.75m 設計値

深度10.25m 設計値

深度11.75m 設計値橋脚1段目→3段目→5段目→桁架設→床版打設順の変位

上限値 fu

(a)鉛直変位と

杭周面の鉛直方向せん断地盤反力度の関係

(b)鉛直変位と

杭周面の鉛直方向せん断地盤反力係数の比

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6.おわりに

本検討結果を踏まえ,杭体内における半径方向に異なった鉛直応力の分布,また,杭周面の鉛直方向せん断地

盤反力係数ならびに鉛直方向せん断地盤反力度の上限値設定について,合理的な設計法を検討する必要があると

考える.現在,今回検討を行った 2 基の深礎杭の他,6 基の深礎杭において同様の杭軸力長期計測を実施してい

る.今後,これらの結果も検証のうえ深礎杭の周面抵抗力の発現機構を明確にし,合理的な設計法の確立に寄与

する資料として取りまとめたい.

参考文献

1) 日本道路公団:設計要領第二集,橋梁設計編 4 章,pp.56-92,1998.7

2) 北海道開発局:道路設計要領第 3 集第 4 章,pp.1-62

3) 角田富士夫,西本聡,冨澤幸一,福島宏文:大口径深礎杭の現地計測に基づく周面摩擦力の評価,

第 47 回地盤工学会北海道支部年次技術報告会,2007.2

4) 角田富士夫,西本聡,冨澤幸一,福島宏文:吹付けコンクリート土留め工による深礎杭の周面抵抗力の評価,

第 48 回地盤工学会北海道支部年次技術報告会,2008.2

5) 角田富士夫,西本聡,冨澤幸一,福島宏文:大口径深礎杭の周面抵抗力に関する解析的評価,

第 49 回地盤工学会北海道支部年次技術報告会,2009.2

6) 地盤工学会:杭の鉛直載荷試験方法・同解説,2002.5

7) 日本道路協会:道路橋示方書・同解説,Ⅳ下部構造編,pp.295-347,2002.3

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-222-
Page 17: 自然地盤および複合地盤における杭の地盤反力特性 - ceri.go.jpSubgrade reaction characteristics of pile foundations in natural and composite grounds Koichi TOMISAWA

引抜き試験結果に及ぼす供試体サイズの影響

苫小牧高専 正会員 中村 努

苫小牧高専専攻科 学生会員 ○ 照井 秀幸

苫小牧高専 正会員 吉澤 耿介

札幌市 阿部 貴仁

1.はじめに

土とジオグリッドの摩擦特性を室内で評価するための手段として一面せん断試験と引抜き試験が知られている

が,試験方法については 1994 年に土質工学会(現地盤工学会)より「土とジオテキスタイルの摩擦特性試験方法」

として基準 1)が示され, 2009 年にこれを「土とジオシンセティックスの一面せん断試験」と「土とジオシンセテ

ィックスの土中引抜き試験」とに分割する形で改正された.本研究ではジオシンセティックスの中で主に補強用

として使用されるジオグリッドを用いた引抜き試験を対象としている.引抜き試験は土中のジオグリッドを直接

引抜く単純な仕組みであるが,一般的に装置が大掛かりであり,多種多様な条件に合わせて引抜き試験を行うこ

とは容易ではない.一方,ジオグリッドの土中での摩擦特性を評価するためには土質材料およびジオグリッド自

体の性質だけではなく土とジオグリッドの相互作用も大きな要因となる.ジオグリッドは開口部を持つという特

性上,大部分でジオグリッドをはさむ上下の土が接しており,変形に対しては土とジオグリッドが一体となって

抵抗するため,そのメカニズムは複雑であり未だ未解明の部分が多い.また引抜き試験方法に関しても,試験結

果に及ぼす諸要因が完全に解明されているわけではなく,改正された学会基準においても 1994 年版の規準と同様

特に供試体寸法等は目安を記述するにとどまっている.以上のような理由から引抜き試験はその多くがジオグリ

ッド製品の性能検査や研究対象として実施されている程度であり,実際の補強土構造物の設計に対して引抜き試

験結果が広く用いられているとは言いがたい.このような背景のもと,摩擦特性試験から得られた摩擦特性値の

信頼性が得られていないこともあり,実際の設計には土自体の強度定数に補正係数を乗じて用いているのが現状

である 2).また,上述したように試験装置の寸法効果が未解明なことにより,装置の小型化が進んでいないこと

も引抜き試験の普及の妨げの一因となっている.

そこで本研究では,ジオグリッド供試体および土試料を充填する引抜き土槽のサイズに着目し,さまざまな条

件にて引抜き試験を実施し,ジオグリッドおよび土供試体のサイズが試験結果に及ぼす影響を明らかにすること

を目的としている.また,ジオグリッド供試体のネッキングや前壁が存在することによって生じるアーチ作用な

ど,引抜き試験が有する機構的な問題について検討を加える.さらに,これまで各試験機関によって独自に行わ

れてきたジオグリッドを土槽後方へ出して行うタイプと土槽内に収まるように敷設し試験を実施するタイプの双

方の引抜き試験を比較検討し土槽後端部の形状の影響について明らかにしている.

2.実験

2.1 土試料およびジオグリッド

本研究で用いたジオグリッドはポリエステル繊維を格子状に接合し,

表面にアクリル樹脂をコーティングした製品を用い,物性を表-1 に,

形状を図-1 に示す.また,土試料は気乾状態の豊浦砂を用い,引抜き

土槽内に多重ふるい空中落下法によって,相対密度 80%となるように

堆積させた.

目合い(mm) 引張強度 (kN/m) 厚さ(mm)

縦 横

変形係数

(kN/m)

60.0 2.0 25 25 511

Influence of giogrid or soil specimen size on pull-out test results. Tsutomu NAKAMURA, Hideyuki TERUI & Kohsuke

YOSHIZAWA (Tomakomai National College of Technology), Takahito ABE (Sapporo City)

表-1 ジオグリッドの物性

図-1 ジオグリッドの形状

yokohm
H21年度スタンプ
yokohm
テキストボックス
-223-
Page 18: 自然地盤および複合地盤における杭の地盤反力特性 - ceri.go.jpSubgrade reaction characteristics of pile foundations in natural and composite grounds Koichi TOMISAWA

 σ

250

mm

500 mm

4mm200

mm

2.2 引抜き試験条件および方法

本研究で用いた土中引抜き試験装置の概

略を図-2 に示す.引抜き土槽のサイズは

幅;250×長さ;500×高さ;200mm であり,引

抜き口の大きさはジオグリッドの厚さを考

慮し 4mm とした 3).ジオグリッドは土槽中

央に設置して約 125mm おきに土中の節点

(土槽外 1 ヶ所を含む)にピアノ線を固定

し,土槽後方に取り出して変位を計測する.

ジオグリッドの引抜き量は引抜き口部分の

変位量とした.ピアノ線はシンフレックス

チューブの中を通し,土との摩擦が生じな

いようにしてある.垂直応力は上方からラ

バーメンブレンを介して空気圧によって載

荷し(25,49,74 kN/m2),土槽前方から取り

出したジオグリッドを,円形クランプを用

いスクリュージャッキに取り付けたロードセ

ルに固定し引抜き力を計測した.引抜き速

度は円形クランプの部分で 1mm/min の変位速度で試験を実施した.

本研究では土槽のサイズが,試験結果に及ぼす影響を明らかにするため,土槽内側の側面および後方に木製の

スペーサを設置し土槽サイズを変化させた.土とジオグリッドの摩擦特性を引抜き試験によって評価するために

はジオグリッド供試体のサイズを土槽の大きさに合わせ,全面に敷設する必要性が広く知られているが,今回は

土槽サイズを変えた試験結果と比較するために,ジオグリッドのサイズも土槽のサイズよりも小さなものを用い

た試験も実施した.また,引抜き試験で用いるジオグリッド供試体のように,面状補強材に張力がかかると,供

試体がくびれることによって供試体幅が減少するネッキング 4)と呼ばれる現象が知られている.本研究ではネッ

キングの影響について明らかにするために,スペーサのジオグリッド設置高さの部分に隙間を設け,ジオグリッ

ド供試体がネッキングを生じても土試料との接触面積の減少が生じないような試験も実施した.全ての試験にお

いて土槽内の周面摩擦を軽減するために,側面にグリースを塗布しメンブレンを貼り付けた.

それぞれの引抜き試験で用いた土およびジオグリッド供試体のサイズ,スペーサの形状の詳細については,実

験結果と考察の各節で述べる.

3.実験結果と考察

3.1 土槽幅の影響

本研究で用いた引抜き試験装置の土槽(幅;250×長さ;500×高さ;200 mm)内側の両側面にスペーサを設置

することで土槽幅を 160 および 70mm に変化させ,スペーサ無しの状態と合わせて 3 種類の土槽幅で引抜き試験を

実施した.全てのケースで土槽の長さ(500mm)および高さ(200mm)は等しい状態で試験を実施した.スペー

サを設置し土槽幅を変化させた引抜き試験装置土槽の概略図

を図-3 に示す.

図-4(a)~(c)は幅の異なる 3 種類の土槽を用いた引抜き試

験による単位幅あたりの引抜き力 f と引抜き量 D の関係を垂

直応力(σ=25,49,74 kN/m2)毎に示したものである.これら

の図より,どの垂直応力においても土槽幅が 250,160mm のと

きの曲線は近似しており,70mm とした場合のみ下方にプロ

ットされた.これらの試験結果から得られる土とジオグリッ

ド間の最大せん断応力τpmax と垂直応力σの関係を図-5 に示

す.図-5 より,土槽幅を 250, 160mm とした場合の引抜き試験

結果から得られた強度定数(cp,φp)はともに同程度であ

るが,土槽幅を 70mm とした場合のcp,φp はともに他の 2 種

σ

ジオグリッド

土試料 節点

図-2 土中引抜き試験装置

図-3 スペーサ設置状況

ジオグリッド

σ

20

0 m

m

ジオグリッド

250 mm

70, 160 mm

スペーサ

yokohm
テキストボックス
-224-
Page 19: 自然地盤および複合地盤における杭の地盤反力特性 - ceri.go.jpSubgrade reaction characteristics of pile foundations in natural and composite grounds Koichi TOMISAWA

類の土槽幅で行った試験結果から得られた値よりも小さく,特

に粘着力cp は負の値となった.以上の結果から,土槽高さと

比較し,ある程度の土槽幅があれば引抜き試験から求まる強度

定数は同程度であり,本研究で用いた 200mm 程度の高さの土

槽であれば 160mm 程度までは小型化が可能であると考えられ

る.一方今回の試験で用いた 70mm の土槽幅の場合, 土槽高さ

と比較して土槽幅が小さいため垂直応力がアーチ作用によって

側面へ分散・伝達され,ジオグリッドにかかる垂直応力が減少す

ることによりせん断強度が低下したと考えられる.土槽の高さ

が小さくなれば 160mm よりも小さな土槽幅でも上述したよう

な垂直応力減少の影響は小さくなることが予想されるが,土中

のジオグリッドが引抜かれる際の土試料への影響範囲を考慮す

ると,土槽の高さを 100mm よりも小さくすることは適当では

ないと考えられる.よって今回の結果が示すように土槽幅が最

低 160mm 程度以上という値は装置を小型化する上で重要な目

安になると考えられる.一方,このような傾向は使用する土試

料, ジオグリッドの形状により変化すると考えられるため, 今後

さらなるデータの蓄積が必要である.

土槽幅に対して敷設幅が小さなジオグリッドを用いて引抜き

試験を実施した場合,より大きな引抜き強度を示すことがこれ

までにも報告されている 5),6),7).それらの報告はすべて土槽幅が

一定の試験装置を用いジオグリッドの敷設幅のみを狭くして実

施した引抜き試験から得られた結果である.本研究では上述し

たように,幅が 250mm の土槽に全面敷設した場合と試験結果

に大きな差がなかった,土槽幅が 160mm の際に使用したジオ

グリッド供試体と同じ幅のもの用いて,異なる土槽幅で引抜き

試験を実施した.

図-6 は,上述の土槽幅 160mm の試験結果,すなわち土槽内

に全面敷設した場合とジオグリッドの敷設幅のみを 160mm(土

槽幅は 250mm)とし,部分敷設した場合の引抜き試験結果を示

したものである.図より,どの垂直応力で実施した場合もジオ

グリッドの敷設幅のみを小さくした場合の方が引抜き初期から

大きな引抜き力を発揮している.これらの試験結果から求まる

最大せん断応力τpmax と垂直応力σの関係を図-7 に示す.この

図よりτpmax とσの関係においても両試験結果には大きな差が

見られた.これは,引抜きに伴いジオグリッドに接する部分の

砂がダイレイタンシーにより膨張する際,ジオグリッドの敷設

幅が土槽の幅よりも小さい場合には,ジオグリッドの敷設され

0 10 200

10

20

引抜き力

; f (k

N/m

)

引抜き量; D (mm)

(a) σ=25 kN/m2

図-4 土槽幅の影響 (f~D の関係)

0 10 20 300

20

40

引抜き量; D (mm)0 10 20 30

0

20

40

250mm160mm 70mm

土槽幅

引抜き量; D (mm)

(b) σ=49 kN/m2 (c) σ=74 kN/m2

0 20 40 600

20

40

60

250mm: cp=4.0kN/m2 ,φp=30.1°

垂直応力;σ(kN/m2)

160mm: cp=4.1kN/m2 ,φp=30.4°70mm: cp=–1.9kN/m2 ,φp=24.9°

最大せん断応力;τ

pmax

(kN

/m2 )

図-5 土槽幅の影響(τpmax~σの関係)

0 20 400

4

874kN/m 2

49kN/m 2

25kN/m 2

土槽幅250mm

土槽幅160mm

敷設幅160mm

敷設幅160mm

引抜き量; D (mm)

引抜き力

; F (k

N)

0 25 50 750

25

50

75

垂直応力; σ (kN/m2)

最大せん断応力;τ

pmax

(kN

/m2 )

c p=4.1kN/m

2 φ p=30.4°c p=

5.5kN/m

2 φ p=38.9°

土槽幅250mm,敷設幅160mm土槽幅160mm,敷設幅160mm

図-6 土槽幅の影響(F~D の関係)

図-7 土槽幅の影響(τpmax~σの関係)

yokohm
テキストボックス
-225-
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ていない部分の土試料によりダイレイトゾーンの土試料の膨張

が拘束されるために,ジオグリッド面上に過剰な垂直応力が発

生したためである.この結果はこれまでにも広く報告されてい

るように,ジオグリッド供試体を全面敷設する必要性を示す結

果となった.

3.2 土槽の長さの影響

土槽の引抜き方向の長さの違いが試験結果に及ぼす影響につ

いて明らかにするために,スペーサを土槽後端部に設置し土槽

の長さを 3 種類(300,400,500 mm)に変化させた引抜き試験を

実施した.敷設幅は全て 250mm,敷設長はそれぞれ土槽の長さ

にあわせ全面敷設とした.図-8(a)~(c)はこのような一連の引

抜き試験による単位幅あたりの引抜き力 F と引抜き量 D の関係

を垂直応力(σ=25,49,74 kN/m2)毎に示したものである.これ

らの図より,敷設長が異なるために,どの垂直応力においても土槽の長さが大きいほど大きな引抜き力が発揮さ

れている.また,引抜き初期に着目すると,ほぼ等しい経路で引抜き力が増加している.これは引抜き初期には

引抜き抵抗の大半が引抜き口付近で発揮され,土中奥のジオグリッドに関しては引抜き挙動に影響を及ぼしてい

ないためである.その後引抜きが進むにつれ敷設長が短いジオグリッドから順に引抜きに至る.これらの試験結

果から得られる土とジオグリッド間の最大せん断応力τpmax と垂直応力σの関係を図-9 に示す.図-9 より,3 種類

の土槽の長さで実施した引抜き試験による破壊線はほぼ平行であり,土槽の長さが短いほど上方に示されている.

しかし,これらの引抜き試験から得られたcp,φp には大きな違いは見られず,実務上 300mm 以上の長さを持っ

た引抜き土槽を用いることによりほぼ一定の試験結果が得られることがわかる.一方,土槽の長さが短いほど大

きなせん断強度を示した理由は,引抜き口周辺で生ずるアーチ作用の影響と考えられる.引抜き試験のように剛

な土槽中にある土試料からジオグリッドを引抜くと,土槽前方に剛な前壁が存在することにより土粒子の移動が

制限されることでアーチ作用が生じ,過剰な抵抗力が発生する 8),9).土槽前壁で生ずるアーチ作用による抵抗力

の大きさは,土槽の長さによらず同程度発生すると考えられるため,土とジオグリッドの接触面積の小さい,す

なわち土槽の長さが短い場合ほどその影響を大きく受けせん断強度が過大に評価されたと考えられる.

3.3 ネッキングの影響

2.2 で述べたように引抜き試験中にジオグリッ

ド供試体にはネッキング(くびれ)と呼ばれる現

象が生じ,敷設幅が減少する.

本研究ではネッキングの影響について明らかに

するために,スペーサのジオグリッド設置高さの

部分に隙間を開け,ジオグリッド供試体幅が土槽

幅よりも広く敷設できる状態にし,ネッキングを

生じても土試料との接触面積の減少が生じないよ

うな試験を実施した. 3.1 で実施した土槽幅

160mm の引抜き試験を type A(図-3 参照),土槽

0 10 20 300

5

引抜き量; D (mm)0 20 40

0

2

4

引抜き力

; F (k

N)

引抜き量; D (mm)0 10 20 30

0

10

500mm400mm300mm

土槽長さ

引抜き量; D (mm)

(a) σ=25 kN/m2 (b) σ=49 kN/m2 (c) σ=74 kN/m2

図-8 土槽の長さの影響 (F~D の関係)

0 20 40 600

20

40

60

500mm cp=4.0kN/m2 φp=30.1°

最大せん断応力;τ

pmax

(kN

/m2 )

垂直応力; σ (kN/m2)

400mm cp=4.7kN/m2 φp=30.2°

300mm cp=5.6kN/m2 φp=30.5°

図-9 土槽の長さの影響 (τpmax~σの関係)

図-10 スペーサ設置状況(type B)

σ

20

0 m

m

ジオグリッド

250 mm

70, 160 mm

スペーサ

yokohm
テキストボックス
-226-
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幅 160mm となるように中央に隙間を施したスペーサを設置

しジオグリッドの両側端部をスペーサ内に敷設した引抜き試

験を type B とする.type B で用いた土槽の概略を図-10 に示

す.両タイプの試験結果から得られた最大せん断応力τpmax

と垂直応力σの関係を図-11 に示す.図より両試験から得ら

れた粘着力cp は同程度であったが,ジオグリッド側端部を

スペーサ内に設置した type B から求まる内部摩擦角φp は

type A のよりも大きくなった.以上の結果は,type B のよう

にジオグリッド供試体にネッキングが生じても,土とジオグ

リッドの接触面積が変化しないような土槽の形状が望ましい

ことを示している.しかし一般的な引抜き試験装置はこのよ

うな土槽の形状はしていない.そこで type A のような試験土

槽を用いネッキングによるジオグリッド供試体の敷設面積の

減少を加味した強度定数を求めるために,最大引抜き力に達

するときのジオグリッドの正確な幅,すなわちネッキングが生じた後のジオグリッド供試体の幅を測定し真の敷

設面積あたりの最大せん断応力を計算した.これらの計算結果から求まる最大せん断応力τpmax と垂直応力σの

関係を同じ図上に示す(図-11).図より type A の土槽を用いネッキングを考慮した結果から得られる破壊線は

type B の直線とほぼ一致している.このことから, type A のような一般的な土槽を用いても,ネッキングを生じ

た後のジオグリッド供試体の敷設幅を測定することにより,type B のような仕組みを持った土槽を用いることな

く,土とジオグリッドの強度定数を正確に求めることが可能であることがわかった.

3.4 土槽後端部の形状の影響

引抜き試験で用いられる土槽後端部の形状は図-12(a)に示すような

ジオグリッドを土槽外に引き出し,引抜きが進んでも土とジオグリッ

ドの接触面積が変わらないタイプ(type C)と図-12(b)に示すようにジ

オグリッド後端を土槽外へは出さずに,引抜きに伴い土とジオグリッ

ドの接触面積が減少するタイプ(type D)に分けられる 1).1994 年に示さ

れた基準では type C の形状を基本とし,type D の試験を行う場合には

土中端の変位が生じないような大きな垂直応力によって試験を実施し,

有効面積法 10)による結果の整理を推奨していた.しかし有効面積法は

試験後のデータ整理の手順が複雑であり,計算および報告図の作成等

に手間がかかるため,実用的とは言いがたい.また,引抜き試験はあ

る程度剛性の大きな素材を対象とすることが多く,引抜けるまで実験

を進めそのピーク強度から強度定数を求める全面積法が現在は一般的

である.

そこで本研究では引抜き土槽と同じ幅の

スペーサを土槽後端部へ設置することによ

り,ジオグリッド供試体を土槽後方へ出し

た場合(type C)と出させない場合(type D)を

再現し,土槽後端部の形状の影響について

調べた.type C の土槽の概略を図-13 に示

す.type D はスペーサに隙間の無いもので

ある.大きさの異なる 2 種類のスペーサを

土槽内に設置することによって土槽長さを

400,300mm の 2 種類とし,それぞれの土槽

長さに対して type Cおよび type D にて実施

した.図-14 はこれらの引抜き試験から求

まる最大せん断応力と垂直応力の関係を示

0 25 50 750

25

50

75

垂直応力; σ (kN/m2)

最大せん断応力;τ

pmax

(kN

/m2 )

type Atype A (ネッキング考慮) type B

土槽幅:160mm

図-11 ネッキングの影響 (τpmax~σの関係)

(a) type C

(b) type D

図-12 土槽後端部の形状の違い

図-13 スペーサ設置状況(type C)

20

0 m

m

σ

ジオグリッド

500 mm

300, 400 mm

スペーサ

yokohm
テキストボックス
-227-
Page 22: 自然地盤および複合地盤における杭の地盤反力特性 - ceri.go.jpSubgrade reaction characteristics of pile foundations in natural and composite grounds Koichi TOMISAWA

したものである.図より,土槽長さがどちらの場合も type C と

type D の引抜き試験から得られる強度定数(cp,φp)に違いが見

られなかった.これは,引抜き力がピークに達した際に,ジオ

グリッドの土中端はさほど変位をしていないためである.つま

り土中のジオグリッドを引抜く際,引抜き力の増加と共にジオ

グリッドに生じるひずみが土中端に向かって徐々に進行し,ひ

ずみが土中端まで達すると引抜けに至る.このときのジオグリ

ッドの土中端での土との相対変位はこれまでの研究 3)から 5~

8mm 程度と推定することが出来る.即ち土中端のジオグリッド

が変位しダイレイタンシーが生じた場合でも土槽後壁の近傍で

あるために,3.1 で述べたようなダイレイタンシーを拘束する

ような状態にならずに,type C の引抜き試験と同等の結果が得

られたと考えられる.以上の結果から,type C,D どちらの方法

を用いても同等の強度定数が得られることがわかった.

4.結論

引抜き試験結果に及ぼす諸要因を明らかにするために実施した,一連の引抜き試験結果から以下の結論が得ら

れた.

1) 土槽高さと比較しある程度の土槽幅と長さを有すれば,引抜き試験から求まる強度定数は同程度であり,本研

究で用いた 200mm 程度の高さの土槽であれば幅 160mm,長さ 300mm 程度までは小型化が可能であると考えら

れる.

2) 土槽の長さが短い場合ほど土槽前壁で生ずるアーチ作用の影響を大きく受け,せん断強度が過大に評価される.

3) ネッキングを生じた後のジオグリッド供試体の敷設幅を測定することにより,type B のような仕組みを持った

特殊な土槽を用いなくても,土とジオグリッドの強度定数を正確に求めることが可能である.

4) ジオグリッドを土槽外に引き出し,引抜きが進んでも土とジオグリッドの接触面積が変わらないタイプとジオ

グリッド後端を土槽外へは出さずに,引抜きに伴い土とジオグリッドの接触面積が減少するタイプのどちらの

方法を用いても同等の強度定数が得られる.

[参考文献]

1) 土質工学会:基準案 JSF 土とジオテキスタイルの摩擦特性試験方法,T 941-199X,土と基礎,第 42 巻,第 1

号,pp.93-102,1994.

2) ジオテキスタイル補強土工法普及委員会:ジオテキスタイルを用いた補強土の設計・施工マニュアル(改訂版),

2000.

3) Nakamura, T., Mitachi, T. and Ikeura, I.:Estimating method for the in-soil deformation behavior of geogrid based on the

results of direct box shear test,Soils and Foundations, Vol.43, No.1,pp.47-57, 2003.

4) ジオグリッド研究会:ジオグリッド工法ガイドライン,1990

5) ジオグリッド研究会:ジオグリッドの引抜き一斉試験結果について,第 4 回ジオテキスタイルシンポジウム発

表論文集,pp.114-118,1989

6) 中村努,三田地利之,松永英也:砂とジオグリッドの摩擦抵抗機構とその試験方法について,ジオテキスタイ

ル試験方法に関するシンポジウム発表論文集, pp.31-36, 1994

7) Hayashi, S., Alfaro, M.C., Watanabe, K.,: Dilatancy effects of granular soil on the pullout resistancenof strip

reinforcement. Earth Reinforcement, Vol. 1, pp.39-44, 1996.

8) 中村努,桑島知香,吉澤耿介:土槽境界面の剛性が引抜き試験結果に及ぼす影響について,地盤工学会北海道

支部技術報告集,第 47 号,pp237-242,2007

9) 中村努,岩田雄太郎,吉澤耿介:ジオグリッドの引抜きに伴うアーチ作用の影響,土木学会第 63 回年次学術

講演会概要集,Ⅲ-257,pp.513-514,2008.

10) Ochiai, H., Hayashi, S., Otani, J., Hirai, T.: Evaluation of pull-out resistance of geogrid reinforced soil, Proceeding of

the International Symposium on Earth Reinforcement, Kyushu, Japan, Vol.1, pp.141-146, 1992.

0 20 40 600

20

40

60

最大せん断応力

;τ

pmax

(kN

/m2 )

垂直応力;σ (kN/m2)

type C, 400mmtype D, 400mmtype C, 300mmtype D, 300mm

土槽の長さ

図-14 土槽後端部の形状の影響 (τpmax~σの関係)

yokohm
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凍結融解履歴を与えることが可能な繰返し一面せん断試験装置の開発

函館高専技術教育支援センター 正会員 ○岩渕祐一

函館高専環境都市工学科 国際会員 川口貴之

函館高専環境都市工学科 国際会員 片岡沙都紀

1.はじめに

北海道のような寒冷地の自然斜面や盛土・切土法面等の人工斜面において,融雪期に斜面表層が崩壊すること

や凍上・融解を繰り返すことで表層土が少しずつ法面下方へ移動することが報告されている 1), 2).このとき,斜

面内の凍結面は斜面とほぼ平行であり,アイスレンズが形成する層も斜面とほぼ平行であると考えられる.よっ

て,融雪期においてアイスレンズが消失すると,微視的レベルにはクラックに似た空洞が生じ,斜面方向に対す

るせん断抵抗が低下することも考えられる.また,凍上・融解によるアイスレンズの発生と消失が土の堆積構造

そのものを変化させ,強度やその異方性を変化させる可能性もある.

一方,各種室内せん断試験の中でも,一面せん断試験装置はせん断面が規定されているため,無限長斜面内の

土要素に作用する応力状態やせん断機構を再現することに適した試験方法と考えられ,斜面崩壊や地すべりの安

定解析に必要なパラメーターを得るために適用された事例が幾つか報告されている 3), 4), 5).しかし,凍結・融解

履歴が土のせん断強度に与える影響を検証した過去の研究例では三軸試験装置が用いられることが多く 6), 7), 8),

特に水分の出入りを許した凍上・融解履歴が土のせん断強度に与える影響を,アイスレンズが形成した層とほぼ

同一方向にせん断できるという利点を持つ一面せん断試験装置を用いて検証した例は極めて少ない 9).

以上のことを背景に,筆者らは応力解放や熱的攪乱を与えることなく凍結(凍上)・融解から一面せん断までを

実施することが可能であり,必要に応じては繰返し一面せん断試験も実施することが可能な試験装置を開発した.

本文では,この試験装置・システムの詳細を紹介するとともに,凍上性を有する火山灰質粘性土を用いた凍結融

解履歴の有無による一面せん断挙動の違いについて報告する.

2.開発した試験装置・システム

図1は開発した試験装置・システムの概略図である.土供試体に対するせん断力の載荷はダイレクトドライブ

モーター(a)と,これに連結された減速機(1/160)およびスプラインボールネジ(リード長 10mm)によって行わ

れている.モーターはシリアルポートを介して PC (b)と接続されたドライブユニット(c)とのコマンドのやり取り

図1 開発した試験装置・システムの概略図

Development of the Direct Shear Box Test Apparatus for Soils Subjected Freezing and Thawing

IWABUCHI, Yuichi, KAWAGUCHI, Takayuki, and KATAOKA Satsuki (Hakodate National College of Technology)

b

f

e

j

hm

dg

n

q

k

l

v

u

ps

o

b

ir

vu

t

a

c

a :ダイレクトドライブモーターb :制御・測定・記録用PCc :ドライブユニットd :垂直力測定用荷重計e :せん断力測定用荷重計f :スライドユニットg :リニアローラーウェイh :垂直変位測定用変位計i :ストレインアンプj :A/D変換ボードk :D/A変換ボードl :E/P変換機m :ベロフラムシリンダーn :低温恒温水槽o :白金測温抵抗体p :表示機能付き変換器q :DIOボードr :スイッチ機構s :二重管ビューレットt :吸排水量測定用差圧計u :レギュレーターv :元圧

yokohm
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によって,高分解能(1/2621440回転)な位置決めだけでなく,

同分解能で現在位置の読み出しを行うことも可能である.従っ

て,本システムにおけるせん断変位はこの機能を用いて計測し

た値としており,変位計を別途設置していない.さらに,モー

ター,減速機,ボールネジのバックラッシュはいずれも極めて

小さく設計されているため,載荷反転時にもせん断変位の時間

的な連続性を保って繰返し一面せん断試験を行うことが可能で

ある.また,せん断面でのモーメントをほぼ 0にするために載

荷軸の中心はせん断面と一致しており,圧密過程等で垂直力測

定用荷重計(d)等が圧縮し,反力板(底盤)自体の沈下がせん断

力測定用荷重計(e)などに影響を与えることを避けるためにス

ライドユニット(f)が設置されている.

垂直力と垂直変位の測定は反力板と可動箱(下箱)が線形か

つ滑らかに動くためのリニアローラーウェイ(g)に剛結された

荷重計(d)と垂直変位測定用変位計(h)によって行っており,これ

らのひずみゲージ式変換器より得られた電気信号をストレイン

アンプ(i)によって増幅し,A/D変換ボード(j)を介して PC (b)に

取り込んでいる.圧密や定圧・定体積せん断時には,この結果

をフィードバックすることで PC (b)に内蔵した D/A変換ボード

(k)から E/P 変換器(l)に電圧を与え,ベロフラムシリンダー(m)

上室内の空気圧を増減させ,垂直力や垂直変位を制御している.

凍結融解過程における供試体上下端温度の制御は2台の低温

恒温水槽内(n)で管理された冷媒をそれぞれ加圧板(キャップ)

と反力板に循環させることで行っており,加圧板と反力板に埋

め込まれた白金測温抵抗体(o)ならびに表示機能付き変換器(p)

による測定値を A/D 変換ボード(j)を介してフィードバックし,

DIO(リレー)ボード(q)に接続されたスイッチ機構(r)で水槽内温度を制御することで行っている.なお,本試験

システムで使用している低温恒温水槽は本来手動による操作しかできないが,電磁弁を内蔵したスイッチ機構に

電気信号を与えることで小型エアシリンダーを動作させ,これによって自動操作を実現している.

図2は土供試体に様々な温度履歴を与えた際の制御結果を示したものである.低温恒温水槽自体の温度調節精

度は±0.1°C であるが,制御プログラム内での許容値を±0.05°C とし,制御時間間隔を温度変化させる速度に応

じて変化するように工夫した結果,上昇・降下・一定のいずれの履歴に対しても,測定値(白丸)は目標値(実

線)に対して±0.1°C の範囲内(破線)で制御できていることが分かる.なお,圧密および凍結・融解過程では

せん断箱周面ならびにその周辺全体を断熱材で覆っており,垂直力測定用荷重計は反力板の温度変化の影響を受

けるため,反力板に埋め込まれた白金測温抵抗体の測定値に応じて補正をしている.

図3はせん断箱周辺を拡大した概略図である.供試体は直径 6cm,高さ 5cmの円柱形を標準としており,せん

断面は供試体底面から 2.5cmの高さにあるが,後述の試験では凍上量が大きいために高さ 4cmとしている.供試

体のセットから圧密・凍結融解過程では,上下せん断箱の間にドーナツ型にしたゴムスリーブを挟み,2本の上

下せん断箱固定ネジを締めることでせん断箱間隔からの水・空気の漏えいを防いでいる.また,加圧板には O-

リングが付いており,吸排水量を二重管ビューレット(s)と差圧計(t)を用いて測定することが可能である.なお,

圧密や凍結融解過程では供試体上部からのみ吸排水を許している.

供試体のセットは,飽和度を高めるために予め脱気水を充填させたせん断箱内に底板のポーラスメタルを通じ

て脱気水を排出させながら成形した供試体を押し込むことで行っている.また,加圧板もセットした供試体上部

に脱気水を充填し,ポーラスストーンを通じて排出させながらせん断箱内に挿入している.なお,摩擦低減を目

的として2つの凍上試験法 10)で規定されている供試体直径を容器内径より小さくすることはしていない.せん断

時にはスペーサーを設置して上下せん断箱固定ネジ,冷媒循環用チューブ,断熱材などを外し,ゴムスリーブを

引き抜いた後に上せん断箱を吊り上げることでせん断箱に所定のすき間を与えている.このとき,制御プログラ

ムで吊り上げたことなどによって減少した荷重を補正し,所定の応力になるよう再度垂直力を与えている.

図2 温度制御結果

白金測温抵抗体

ポーラスストーン

O-リング 上下せん断箱固定ネジ

ポーラスメタル

白金測温抵抗体

土供試体アクリル樹脂

二重管ビューレットへ

冷媒

冷媒

図3 せん断箱周辺の概略図

0 2 4 6 8 10 12 14 16 18

–1

0

1

2

3

4

温度

( C

)

経過時間, t (h)

°

10.2

10.2

目標温度±0.1 C°: 測定値

yokohm
テキストボックス
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3.試験結果・考察

表1は本試料の物理的性質と実施した 5つの試験条件を

まとめたものである.試験に用いた試料は清水町美蔓の切

土斜面から採取された火山灰質粘性土であり,風乾状態に

ある試料を液性限界 wLの約 2倍のスラリー状にし,鉛直応

力 100kPa で一次元予圧密したものを用いた.表中の wLと

塑性限界 wPは JIS法に従って得られた値であるが,コーン

先端角 90°,落下質量 100g,基準貫入量をそれぞれ 9.5,1.2

mm としたフォールコーン法で得られた wLc=29.9,wPc=

18.6%とほぼ等しかった.また,初期含水比は供試体成形

の際に削り落した試料から,湿潤密度ρt はセット前の供試

体寸法と質量から算出したものであるが,サンプリングし

た試料から得られた原位置の湿潤密度ρtf=2.03g/cm3 と含

水比 wf=21.7%にほぼ等しかった.

図4は予圧密後の試料を用いた粒度試験結果(黒実線)

を示したものであり,上下せん断箱のすきまは本試験から

得られた平均粒径 D50の約 10 倍である 0.4mm とした 11).

また,図中には表1中に示した 3つの試験終了後の供試体

を用いた粒度試験結果も示している.火山灰質粗粒土に対

して行った他の研究成果ほど明瞭な違いは見られなかった

が,先述した供試体のセット時や融解過程などで細粒分が

幾分流出していることも考慮すれば,凍結融解履歴を与え

たことで粒子破砕が生じ,わずかではあるが細粒分が増加

する傾向にあると判断できる.

図5は凍結融解履歴を与えた試験 FT1, 2, 3における凍結

開始からせん断直前までの凍上量および解凍沈下量∆H,単

位断面積あたりの吸排水量∆Hw,上端面温度 Tw,下端面温

度 Tc の推移を示したものである.供試体内の温度勾配が

0.1°C/mm となるよう上下端をそれぞれおよそ 4°C と 0°C

にし,サーマルショックを与えて氷核を形成してから再度

これらの温度に戻した後に凍結過程を始めている.また,

凍結融解過程における温度の下降・上昇速度はともに

0.2°C/hとしており,いずれの試験も 22時間程度で凍結過程を終了しているので,凍上速度 Uは 1.8mm/h程度と

なる.凍結過程における凍上量∆H~時間 t関係はいずれの試験もほぼ同様な挙動を示しており,再現性の高い凍

上試験が実施できていることが分かる.また,開始直後と終了判定後を除いてほぼ一定の傾きを有しており,こ

の結果から得られる凍結膨張率ξ は 40%弱,凍上速度 Uhは 0.8mm/h 程度となり,高い凍上性を有する土である

ことが分かる.一方,融解過程は供試体高さが凍結開始時にほぼ等しくなった時点で終了しているが,上昇速度

一定での融解過程における∆H~t 関係はそれぞれ大きく異なるものの,この融解過程を終了させて室温に戻した

後にはいずれも同様な挙動に収束することが分かる.融解挙動に違いが生じる原因の一つには,供試体側面とア

クリル容器内面との摩擦が含まれているものと推測される.なお,凍結過程では相変化に伴う体積変化によって

∆Hwは∆Hより小さいが,融解後には∆Hwと∆Hがほぼ等しくなっている.

表1 物理特性と試験条件のまとめ

試験 名

土粒子密度 ρs (g/cm3)

液性限界 wL (%)

塑性限界 wP (%)

初期高さH0 (mm)

初期含水比w0 (%)

湿潤密度

ρt (g/cm3)圧密応力

(kPa) 凍結融解 履歴

温度勾配 (°C/mm)

温度変化

速度(°C/h)NF1

2.65 28.6 17.7

39.25 19.0 2.06

12.2

無 - - NF2 40.11 20.4 2.01 無 - - FT1 40.29 20.1 2.02 有 0.1 0.2 FT2 40.20 20.4 2.00 有 0.1 0.2 FT3 40.55 19.5 2.00 有 0.1 0.2

図4 粒度試験結果

図5 凍結融解試験結果

0 10 20 30 40 50 60 70–4

0

4

8

12

16

20

供試体上端面温度

, Tw

( C

)

FT1 :Tw Tc

FT2 :FT3 :

供試体下端面温度

, Tc (

C)

° °

経過時間, t (h)

1 10.2 0.2

0

4

8

12

16

20

凍上量および解凍沈下量

, ∆H

(mm

)単位断面積当たりの吸排水量

, ∆H

w (m

m)

FT1 :∆H ∆Hw

FT2 :FT3 :

1

0.8

0.001 0.01 0.1 1 10 1000

20

40

60

80

100

通過質量百分率

(%)

粒径 (mm)

: 予圧密後

: NF2: FT1: FT3

試験後

試験後

試験後

粘土 シルト 砂 礫

D50

yokohm
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図6は定圧一面せん断時におけるせん断応力τ,垂直変位

∆H,垂直応力σ とせん断変位δ の関係を示したものであり,

FT1, 2, 3については融解過程終了後,NF1, 2については凍結

開始から融解過程終了までに要したのとほぼ同じ時間だけ上

下端面の温度を 20°C 一定になるよう制御しながら圧密した

後に実施したものである.凍結融解履歴を与えていない NF1,

2は凍結融解履歴を与えた FT1, 2, 3に比べてせん断初期の剛

性が高く,せん断中に生じる∆H(収縮量)が小さいことが分

かる.小野ら 8) は軸対称三軸応力下において凍結融解履歴が

粘性土のせん断挙動に及ぼす影響は過圧密比 OCR によって

大きく異なり,OCR が大きな粘性土に凍結融解履歴を与え

ると過圧密の度合いが小さくなり,正規圧密状態にあるかの

ような挙動を示すことやせん断強度が低下することを報告し

ている.凍結融解開始時における本供試体の OCR は 8 程度

であり,凍結融解履歴を与えたことで剛性が小さくなって延

性的なせん断挙動を示し,負のダイレイタンシーによる収縮

量が大きくなった点ではこの報告と一致している.しかし,

せん断強度については NF1, 2 はほぼ同じ強度が得られてい

るものの,FT1, 2, 3は大きくばらついており,小野ら 8) の報

告とは逆に強度が増加しているものもある.本研究は実施した試験数も少なく,垂直力が小さいので側面摩擦な

どの試験装置・方法上の問題点が結果に与える影響も大きいことが予想される.よって,現時点でこの理由を判

断することは早計であるが,凍結融解前後の間隙比がほぼ等しいことを考えると,例えばアイスレンズの消失に

よる微視的な空隙などによってできた相対的に密度が小さい部分と土粒子周辺の吸着水と自由水が元に戻らずに

排出されたことなどによってできた相対的に密度の高い部分とが生じることで供試体内における密度の不均一性

が高まったことや,履歴に伴う骨格構造の変化によって強度異方性そのものにも変化が生じたことなどが考えら

れるが,今後試料や試験条件を変化させた数多くの実験を行うことにより,更に検討を重ねたいと考えている.

4.まとめ

・応力解放や熱的攪乱を与えることなく凍結・融解からせん断に至るまでを実施可能な一面せん断試験装置の開

発に成功し,正確な供試体上下端の温度制御ができることや再現性のある凍上挙動が得られることを確認した.

・比較的大きな過圧密比を有する火山灰質粘性土を用いて凍結融解履歴の有無による一面せん断試験挙動の違い

を比較したところ,過去の研究成果と同様に履歴を与えることで剛性が小さく延性的なせん断挙動を示すよう

になり,負のダイレイタンシーによる収縮量が大きくなることを確認したが,せん断強度については低下する

だけでなく,ばらついた結果となった.この理由については更なる検討を重ねたいと考えている.

謝辞:本研究で使用した試料や実施した試験方法に関して,北海道大学地盤環境解析学研究室の三浦清一先生,

石川達也先生,所哲也氏には多大な御協力を賜った.ここに記して感謝の意を表します.

参考文献

1) 地盤工学会北海道支部 地盤凍上に関する研究委員会:「寒冷地における凍上被害とその対策」講習会テキスト,2006.

2) 上野邦行,松田航,鈴木輝之,山下聡:有限植生保護法面の凍結融解過程における挙動,地盤工学会北海道支部技術報告集,No.49,pp.207-212,2009.

3) Mitachi, T., Okawara, M. and Kawaguchi, T. : Method for determining design strength parameters for slope stability analysis, Proc. of the International Symposium on Slope Stability Engineering, Vol.1, pp.781-785, 1999.

4) Shibuya, S., Kawaguchi, T. and J. Chae : Failure of Reinforced Earth as Attacked by Typhoon No.23 in 2004, Soils and Foundations, Vol.47, No.1, pp.153-160, 2007.

5) 川尻峻三,澁谷啓,川口貴之,鳥居宣之:現場調査および室内試験による砂丘斜面の安定性の評価,地盤工学ジャーナル,Vol.4,No.3,pp.233-244,2009.

6) 石川達也,尾崎悠太,三浦清一:凍結融解作用を受ける火山灰質粗粒土の力学特性の評価試験方法の検討,土木学会論文集 C,Vol.64,No.3,pp.712-717,2008.

7) 小野丘,三田地利之:粘性土の軸対称三軸応力下における凍結・融解履歴について,土木学会論文集,No.617/III-46,pp.275-282,1999.

8) 小野丘,小玉大樹,加藤幸輝:凍結・融解履歴を受ける正規圧密および過圧密飽和粘土の性質について,土木学会論文集,No.743/III-64,pp.47-57,2003.

9) 長澤徹明,梅田安治:凍結融解土の諸性質について,土と基礎,Vol.29,No.2,pp.39-46,1981.

10) 地盤工学会:地盤材料試験の方法と解説,2009. 11) 澁谷啓:土の一面せん断試験と結果の解釈における最近の進展,直接型せん断試験の方法と適用に関するシンポジウム,地盤工学会,pp.67-86,1995.

図6 定圧一面せん断試験結果

0 1 2 3 4 5 60

4

8

12

16

20

0

10

20

00.40.81.21.6

垂直応力

σ (k

Pa)

垂直変位

∆H (m

m)

せん断応力

τ (k

Pa)

せん断変位, δ (mm)

NF1:NF2:

FT1:FT2:FT3:

yokohm
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凍結融解による岩石の強度劣化に関する推定法の考察

(独)土木研究所寒地土木研究所○正会員 日下部祐基

(独)土木研究所寒地土木研究所 正会員 伊東 佳彦

北海道開発局帯広開発建設部 坂本 多朗

1.はじめに

積雪寒冷地の軟岩からなる岩切法面では、施工時は新鮮で堅固な岩盤であっても、長年の凍結融解などによる

経年劣化により、法面崩壊を引き起こす場合がある。このような岩切法面の長期的安定を保持するためには、岩

盤の経年劣化を設計に取りこむ必要がある。

岩切法面に関する凍結融解の影響を調査した研究は、これまでにも行われている。例えば、高橋他 1)は、長野

県の秩父帯に属する砂岩を対象にした切土斜面の試料を用いて室内凍結・融解試験を行って凍上性との関係を考

察し、凍結融解の繰り返しによる凍上の変位量がほぼ一定の比率で発生して融解後に変位が一部残留することな

どを推察している。また、浅井他 2)は、長野県の秩父帯に属する堆積岩を主体とするダムの建設現場の切土斜面

で行った、岩盤変位計や地中温度計などによる現場計測結果をもとに岩盤の凍結融解による挙動を考察し、凍結

深度が積雪による断熱効果によって浅くなることや、凍結による岩盤の膨張が土砂化して水を含みやすくなった

箇所で大きく生じることなどを確認している。しかしながら、現状では劣化現象を定量的・具体的に把握するま

でには至っておらず、劣化現象の予測手法などは、確立されていないのが現状である。

本研究は、岩盤の経年劣化の評価方法を確立することを目的としている。ここでは、室内試験結果を用いて岩

石の凍結融解による強度劣化を、物性値や初期強度より推定する方法を検討したので報告する。

2.試験に用いた岩石

試料の岩種は、堆積岩類 12(礫岩 1、砂岩 8、

泥岩 3)、火山岩類 4(安山岩 4)、火山砕屑岩類 4

(火山礫凝灰岩1,凝灰質砂岩1,流紋岩質凝灰

岩1、水冷破砕岩 1)の計 20 試料である。試料採

取箇所は以下の通りであり、主に道路建設工事箇

所から採取した。試料採取地を、図-1 に示す。

(1) 札幌開発建設部管内(芦別市)

(2) 小樽開発建設部管内(赤井川村、岩内町、

喜茂別町)

(3) 室蘭開発建設部管内(厚真町)

(4) 函館開発建設部管内(乙部町、鹿部町)

(5) 釧路開発建設部管内(釧路町)

3.試験方法

対象岩石の凍結融解による物理力学特性値の変化を求めるため、凍結融解を繰り返した後の比重吸水試験、超

音波伝播試験、および一軸圧縮試験を実施した 3)。

供試体の作成は JIS M 0301 に準拠した。供試体のサイズは、直径約 50mm、長さ約 100mm であり、数量は1試

料複数本用意した。凍結融解の温度条件は、コンクリートの凍結融解試験 4)に準じて、供試体中心温度(制御用

コンクリートダミー供試体の中心温度)で-18℃~+5℃になるように設定し、1 日約 8 サイクル(以下、サイクル

の単位を c と記す。)とし、凍結融解サイクルを最大 300c とした。

Estimation method for degradation of rock strength by freeze and thawing

Yuki KUSAKABE, Yoshihiko ITO, (Civil Engineering Research Institute for Cold Region),

Taro SAKAMOTO ,( Hokkaido Development Bureau)

図-1 試料採取位置図

乙部鹿部

芦別

釧路町岩内

喜茂別

赤井川厚真

yokohm
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yokohm
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一軸圧縮強さ等の測定サイクルは、比較的状態の

良い岩石の場合でも、最初の測定は 1 日すなわち 8c

程度で一度測定を行った。また、軟質な岩石などの

凍結融解初期に劣化が確認された岩石では、初期サ

イクル時に慎重を期すため 1c で測定し、供試体の状

況を見ながら徐々に測定間隔を拡げた。

4.試験結果

4.1 試験結果

試験結果を表-1に示す。試験に用いた岩石の一

軸圧縮強さは、最大値が 98.0MN/m2(天寧層礫岩,

釧路町)、最小値が 0.8 MN/m2(凝灰質砂岩,鹿部)

で軟岩を中心として、硬岩をカバーしている。

同表に示した圧縮強さ比係数と崩壊サイクルは、

岩石の強度劣化を定量化する指標として考えたもの

である。圧縮強さ比係数 sf とは、任意凍結融解サイ

クル c 後の一軸圧縮強さ quc と初期一軸圧縮強さ qu0

との比を圧縮強さ比 sc(=quc/ qu0)として、これをもと

に凍結融解サイクル c との回帰計算により自然対数

の指数で表したものである。回帰計算には、縦軸切

片を 1.0 に固定(0c の圧縮強さ比は 1.0 になる。)し

た指数近似曲線を用いた。縦軸切片を固定した指数

近似曲線とすることにより、後述する強度劣化の指

標とする推定値の数を減らすことができる。回帰計

算による圧縮強さ比を s として式で示すと以下のと

おりである。

(1)

雄別層砂岩(試料 No.3)における圧縮強さ比係数の算出例を図-2に示す。縦軸切片を 1.0 に固定すると、圧

縮強さ比係数 sf= -0.0214 が得られる。この係数が小さくなるほど(絶対値は大きくなるほど)強度低下が大きい

ことを示す。図-3に、全試料の凍結融解サイクルと圧縮強さ比との関係を示す。対数軸の凍結融解サイクルに

対して圧縮強さ比は、直線的に減少する傾向を示す試料が見られる。

)exp( csfs ⋅=

表-1 実験結果表

No. 試料名 岩種 採取地吸水率

(%)有効間隙率

(%)飽和密度

(g/cm3)乾燥密度

(g/cm3)P波速度(km/sec)

S波速度(km/sec)

動弾性係数

(kN/m2)一軸圧縮強さ

(MN/m2)圧縮強さ比

係数崩壊サイクル(c)

1 春採層 砂岩1 堆積岩 釧路町 5.62 13.05 2.45 2.32 3.43 1.79 2.05E+07 31.1 -0.0157 1862 春採層 砂岩2 〃 〃 5.08 12.16 2.52 2.40 3.60 1.72 2.02E+07 35.1 -0.0065 3003 雄別層 砂岩 〃 〃 10.42 21.86 2.32 2.10 1.26 0.51 1.61E+06 6.7 -0.0214 1064 雄別層 泥岩1 〃 〃 6.46 14.63 2.41 2.27 2.14 0.93 5.75E+06 7.7 -0.1939 115 雄別層 泥岩2 〃 〃 6.46 14.63 2.41 2.27 2.38 0.77 4.00E+06 3.3 -0.3472 76 天寧層 礫岩 〃 〃 1.60 4.13 2.62 2.58 4.53 2.22 3.48E+07 98.0 -0.0010 3007 天寧層 炭質泥岩 〃 〃 7.67 15.77 2.21 2.05 2.42 0.85 4.53E+06 6.7 -0.0732 328 春日層 火山礫凝灰岩 火砕岩 赤井川 14.31 26.32 2.10 1.83 2.43 1.14 7.43E+06 9.3 -0.0192 549 春日層 風化安山岩  火山岩 〃 4.77 11.24 2.47 2.35 3.86 1.86 2.30E+07 32.8 -0.0041 20010 春日層 安山岩 〃 〃 2.25 5.75 2.60 2.55 4.71 2.21 3.45E+07 60.0 -0.0010 30011 館層 粗粒砂岩 堆積岩 乙部 24.63 39.20 1.99 1.60 2.66 1.31 9.16E+06 8.1 -0.1328 1312 館層 細粒砂岩 〃 〃 33.00 46.38 1.86 1.40 2.31 1.07 5.78E+06 9.4 -0.3329 613 流紋岩質凝灰岩 火砕岩 鹿部 14.43 26.25 2.08 1.82 2.70 1.50 1.20E+07 12.9 -0.0438 3714 凝灰質砂岩 〃 〃 27.09 41.55 1.95 1.54 1.22 0.59 1.89E+06 0.8 -0.3044 615 蝦夷層群 砂岩 堆積岩 芦別 2.11 5.24 2.58 2.53 4.26 2.14 3.37E+07 58.5 -0.0011 30016 川端層 砂岩1 〃 厚真 6.22 14.05 2.41 2.27 2.80 1.35 1.22E+07 11.0 -0.0235 4017 川端層 砂岩2 〃 〃 7.07 15.91 2.41 2.25 2.71 1.39 1.22E+07 26.1 -0.1127 4018 美笛層 風化安山岩1 火山岩 岩内 5.17 11.82 2.48 2.36 4.52 2.22 3.30E+07 20.8 -0.0004 30019 美笛層 風化安山岩2 〃 〃 13.08 25.65 2.22 1.97 3.01 1.53 1.33E+07 5.4 -0.1677 2020 水冷破砕岩 火砕岩 喜茂別 3.49 7.53 2.25 2.17 4.32 2.21 2.88E+07 61.8 -0.0032 300

図-2 凍結融解サイクルと圧縮強さ比の関係

(圧縮強さ比係数を求めた 1 例)

y = e‐0.0214 x

R² = ‐0.4002 

0.00

0.20

0.40

0.60

0.80

1.00

1.20

0 50 100 150

強さ

凍結融解サイクル (c)

図-3 全試料の凍結融解サイクルと圧縮強さ比の関係

0.00

0.20

0.40

0.60

0.80

1.00

1.20

1 10 100 1000

圧縮

強さ

凍結融解サイクル (c)

春採層 砂岩1

春採層 砂岩2

雄別層 砂岩

雄別層 泥岩1

雄別層 泥岩2

天寧層 礫岩

天寧層 炭質泥岩

春日層 火山礫凝灰岩

春日層 風化安山岩

春日層 安山岩

館層 粗粒砂岩

館層 細粒砂岩

流紋岩質凝灰岩

凝灰質砂岩

蝦夷層群 砂岩

川端層 砂岩1

川端層 砂岩2

美笛層 風化安山岩1

美笛層 風化安山岩2

水冷破砕岩

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崩壊サイクル cfとは、凍結融解を繰り返した後に一軸圧縮強さが測定できた限界サイクルを示したものである。

厳密にはこの崩壊サイクル後に供試体が崩れたことになるが、正確な崩壊サイクルが求められなかったため、一

軸圧縮試験の最終実施サイクルで示した。なお、崩壊サイクルの値が 300 となっているものは、凍結融解試験の

最大サイクル 300c で崩壊しなかった試料である。これらの試料については、その後どの程度のサイクルで崩壊す

るかは予想できない。特に圧縮強さの大きい試料では、強度劣化が確認できないものもあった。

4.2 岩石の物理力学特性と各指標との関係

ここでは、強度劣化の指標とした圧縮強さ比係数および崩壊サイクルと物理力学特性値との関係の代表例とし

て、物理特性には吸水率を、力学特性には一軸圧縮強さを用いてそれらの関係を示す。

図-4,5に、吸水率と強度劣化の指標の圧縮強さ比係数および崩壊サイクルとの関係を示す。ばらつきがあ

るものの圧縮強さ比係数は、吸水率が大きいほど小さくなり(絶対値は大きくなる)負の比例関係がみられる。

崩壊サイクルと吸水率には、反比例の関係がみられる。また、一軸圧縮強さと強度劣化の指標との関係を、図-

6,7に示す。圧縮強さ比係数には負の反比例の関係が、崩壊サイクルには正比例の関係がみられる。

他の物理力学特性と各指標との関係にも同様の関係がみられ、強度劣化の指標とした圧縮強さ比係数および崩

壊サイクルと物理力学特性値との関係には、上記2種類の関係に分類されることが確認された。次項の強度劣化

の推定に用いる特性値としては、それぞれの傾向の代表例として示した吸水率と一軸圧縮強さを用いる。

なお、関係図において岩種別として礫岩,砂岩,泥岩を堆積岩類とし、それ以外の岩と分けて示した。図-4

の中に丸で囲んで示したように、特性値と圧縮強さ比係数との関係に、堆積岩類のばらつきが大きくなる傾向が

みられた。図中の丸にある 2 点は、堆積岩類の試料 No.4 と No.5 の雄別層泥岩で同一試料である。試料 No.4 が堆

積層の層理を水平に、試料 No.5 が層理を鉛直にして一軸圧縮強さを求めたもので、吸水率などの物性値は同じ値

になる。このことから、堆積岩では地層構造の違い、換言すると異方性がこれらの相関に影響することが分かる。

図-4 吸水率と圧縮強さ比係数の関係 図-5 吸水率と崩壊サイクルの関係

-0.40

-0.35

-0.30

-0.25

-0.20

-0.15

-0.10

-0.05

0.00

0.00 10.00 20.00 30.00 40.00 圧

縮強

さ比

係数

吸水率(%)

堆積岩類

堆積岩以外

0

50

100

150

200

250

300

350

0.00 10.00 20.00 30.00 40.00

崩壊

サイ

クル

(c)

吸水率 (%)

堆積岩類

堆積岩以外

-0.40

-0.35

-0.30

-0.25

-0.20

-0.15

-0.10

-0.05

0.00

0.0 20.0 40.0 60.0 80.0 100.0

圧縮

強さ

比係

一軸圧縮強さ (MN/m2)

堆積岩類

堆積岩以外 0

50

100

150

200

250

300

350

0.0 20.0 40.0 60.0 80.0 100.0

崩壊

サイ

クル

一軸圧縮強さ (MN/m2)

堆積岩類

堆積岩以外

図-6 一軸圧縮強さと圧縮強さ比係数の関係 図-7 一軸圧縮強さと崩壊サイクルの関係

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今回の試験データでは、同一試料で層理の方向を変えた試験は、この 1 試料のみであることからこの影響を定量

的に明らかにすることができない。今後の検討課題と考える。

5.考察

5.1 強度劣化の指標とした圧縮強さ比係数と崩壊サイクルの推定式の検討

既往の研究には、岩石などの凍結融解による劣化や凍上性とその物性に普遍的な相関がみられないことを示す

もの 5)がある一方、1軟岩の実験から強度劣化が飽和度に大きく依存するとして推定法を示したもの 6)もある。

凍結融解による強度劣化と工学特性の関係は単純でないことが推測されるが、ここでは、実用性を考慮して 20

種類の岩石データを用いて統計計算による推定法を検討する。

推定法は、強度劣化の指標とした圧縮強さ比係数および崩壊サイクルを、前述した特性値の吸水率と一軸圧縮

強さとの相関式を求めて推定する。相関式は回帰計算により求めるが、計算に用いる各特性値および指標を平均

値あるいは最大値で除して正規化した。これは回帰計算から求められる係数の位を同程度にするためである。

各値の正規化は、圧縮強さ比係数 sf と吸水率 ab(%)一軸圧縮強さ qu (MN/m2)には平均値(圧縮強さ比係数の

平均値 A=-0.1,吸水率の平均値 C=10%,一軸圧縮強さの平均値 D=25MN/m2)を、崩壊サイクル cf(c)には試験最

大サイクル B=300c を用いた。これらの正規化した値を以後、圧縮強さ比係数比(=sf/A)、崩壊サイクル比(=cf/B)、

吸水率比(=ab/C)、一軸圧縮強さ比(=qu/D)と呼ぶ。

図-8~11 に、吸水率比と一軸圧縮強さ比、および圧縮強さ比係数比と崩壊サイクル比のそれぞれの関係を示

す。前述したように圧縮強さの大きい岩石において 300c で崩壊しなかった試料が、その後どの程度のサイクルで

崩壊するか予想できないため、ここでは一軸圧縮強さ qu=50MN/m2(一軸圧縮強さ比 qu/D=2.0)以下を対象とす

ることにした。一軸圧縮強さを限定した理由は、図-7に示すように qu=50MN/m2 以上では全ての試料の崩壊サ

イクルが 300c になっているが、qu=50MN/m2 以下では崩壊サイクルが 300c 以下であるものが混在しているため

である。回帰計算の対象範囲として、全ての試料を対象として崩壊サイクル 300c を示した範囲を全て含めた場合、

あるいは崩壊サイクル 300c 以下が混在する一軸圧縮強さ qu=50MN/m2 以下に限定して崩壊サイクル 300c を除外

図-8 吸水率比と圧縮強さ比係数比の関係 図-9 吸水率比と崩壊サイクル比の関係

図-10 一軸圧縮強さ比と圧縮強さ比係数比の関係 図-11 一軸圧縮強さ比と崩壊サイクル比の関係

y = 0.43x1.98

R² = 0.62

y = 0.89xR² = 0.43

0.00

0.50

1.00

1.50

2.00

2.50

3.00

3.50

4.00

4.50

5.00

0.0 1.0 2.0 3.0 4.0

圧縮

強さ

比係

数比

吸水率比

y = 0.12 x-1.36

R² = 0.42

0.00

0.20

0.40

0.60

0.80

1.00

1.20

0.0 1.0 2.0 3.0 4.0

破壊

サイ

クル

吸水率比

y = 0.10 x-1.48

R² = 0.64

0.00

2.00

4.00

6.00

8.00

10.00

12.00

14.00

16.00

18.00

0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0

圧縮

強さ

比係

数比

一軸圧縮強さ比

y = 0.32x1.02

R² = 0.52

y = 0.53xR² = 0.58

0.00

0.20

0.40

0.60

0.80

1.00

1.20

0.0 0.5 1.0 1.5 2.0

破壊

サイ

クル

一軸圧縮強さ比

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した場合には、相関式は過小な値を示し、過度な安全側の評価となる。

各図中には反比例の関係にあるものは累乗近似曲線を、正比例の関係にあるものは線形近似直線も加えて示し

た。累乗近似曲線を主に用いた理由は、正・反比例の両方の関係を 1 つの式で表せるためである。これらの関係

から相関係数を考慮して、以下の相関式を推定式として決定した。

吸水率と圧縮強さ比係数:

(2)

吸水率と崩壊サイクル:

(3)

一軸圧縮強さと圧縮強さ比係数:

(4)

一軸圧縮強さと崩壊サイクル:

(5)

また、吸水率比と一軸圧縮強さ比を変数として、

圧縮強さ比係数比および崩壊サイクル比の関係つい

て、それぞれ重回帰計算を行った。得られた式は以

下の通りである。

(6)

(7)

5.2 推定式の実測値との対比

これらの式の関係より、圧縮強さ比係数と崩壊サイクルの推定値を求めて実測値と比較した。図-12、13 にそ

れらの関係を示す。圧縮強さ比係数の関係では、推定値が実測値と大きく外れているものがある。今回の結果で

みると、推定値が sf= -0.5 以下(絶対値では 0.5 以上)になるものは異常値として対象外にすることが望ましいと

思われる。崩壊サイクルの関係については、実測値 300c 以上に対して推定値もそれ以上になるものがあるが、推

定値で 300c 以下になるものもあり、これらは過小評価されることが想定される。

表-2および図-14 は、式(2)、(3)を用いて吸水率 ab をパラメーターにして凍結融解サイクルと圧縮強さ比お

よび崩壊サイクルの関係を示したものである。表-3および図-15 に、式(4)、(5)を用いて一軸圧縮強さ qu をパ

ラメーターにして凍結融解サイクルと圧縮強さ比および崩壊サイクルの関係を示す。図-16 に、式(6)、(7)を用

いて吸水率 ab および一軸圧縮強さ qu をパラメーターにして凍結融解サイクルと圧縮強さ比および崩壊サイクル

の関係を示す。これらの関係図を用いると、対象岩石の物性値から概略の凍結融解サイクルと圧縮強さ比および

崩壊サイクルの関係を求めることができる。なお、各図の同一濃淡鉛直線は各パラメーターの崩壊サイクルを示

したものである。

98.1

43.0 ⎟⎠⎞

⎜⎝⎛=⎟

⎠⎞

⎜⎝⎛

Cab

Asf

48.1

10.0−

⎟⎠⎞

⎜⎝⎛=⎟

⎠⎞

⎜⎝⎛

Dqu

Asf

88.004.1

19.0−

⎟⎠⎞

⎜⎝⎛

⎟⎠⎞

⎜⎝⎛=⎟

⎠⎞

⎜⎝⎛

Dqu

Cab

Asf

R2=0.671

36.1

12.0−

⎟⎠⎞

⎜⎝⎛=⎟

⎠⎞

⎜⎝⎛

Cab

Bcf

⎟⎠⎞

⎜⎝⎛=⎟

⎠⎞

⎜⎝⎛

Dqu

Bcf

53.0

R2=0.537

74.071.0

24.0 ⎟⎠⎞

⎜⎝⎛

⎟⎠⎞

⎜⎝⎛=⎟

⎠⎞

⎜⎝⎛

Dqu

Cab

Bcf

図-12 圧縮強さ比係数の実測値と推定値の関係

図-13 崩壊サイクルの実測値と推定値の関係

0

100

200

300

400

500

600

700

800

0 100 200 300 400

崩壊

サイ

クル

推定

崩壊サイクル 実測値

推定cf(ab)

推定cf(qu)

推定cf(ab,qu)

-1.8

-1.6

-1.4

-1.2

-1.0

-0.8

-0.6

-0.4

-0.2

0.0

-0.4 -0.3 -0.2 -0.1 0.0 圧

縮強

さ比

係数

推定

値圧縮強さ比係数 実測値

推定Sf(ab)

推定Sf(qu)

推定Sf(ab,qu)

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5.3 推定式の活用法

これらの式や関係図の利用方法としては、圧縮強さ比については今後凍結融解を何サイクル受けるとどの程度

強度が低下するかを予測する方法と、現状の岩石と新鮮な岩石の圧縮強さ比から現状の岩石が何サイクルの凍結

融解を受けたかの予測にも利用できると考える。崩壊サイクルについては、対象岩石がどの程度の凍結融解サイ

クルで自立しなくなるかの目安にすることができると考える。ただし、崩壊サイクル後の岩石は、一軸圧縮強さ

が測定不可になることを意味するものであって、岩石強度が 0 になるものでないことに留意する必要がある。崩

壊サイクル後の岩石は、土砂と同様に粘着力や内部摩擦角によるせん断強さを有していることが予測される。今

後は、実法面での推定式の適用を検討する必要があると考える。

6.まとめ

岩石の凍結融解による劣化を物理力学特性値から推定する方法について検討した。得られた結果は、以下のと

おりである。

1)強度劣化の指標とした圧縮強さ比係数および崩壊サイクルと、物理力学特性値との関係には、2種類の傾向

が確認された。

2)礫岩,砂岩,泥岩を堆積岩類とし、それ以外の岩とに分類して、各特性値と圧縮強さ比係数との関係をみた

結果、堆積岩類に地層構造の違いによる影響がみられた。この影響の定量的な解明は、今後の課題である。

3)吸水率と一軸圧縮強さを用いて、強度劣化の指標とした圧縮強さ比係数および崩壊サイクルを推定する式を

示した。

表-2 吸水率 ab をパラメーターにした凍

結融解サイクルと圧縮強さ比の関係表

表-3 一軸圧縮強さ qu をパラメーターに

した凍結融解サイクルと圧縮強さ比の関係表

凍結融解サイクル

圧縮強さ比

qu =5MN/m2圧縮強さ比

qu =15MN/m2圧縮強さ比

qu =40MN/m2圧縮強さ比

qu =100MN/m2

0 1.000 1.000 1.000 1.0005 0.582 0.899 0.975 0.994

10 0.339 0.808 0.951 0.98715 0.197 0.727 0.928 0.98120 0.115 0.653 0.905 0.97530 0.039 0.528 0.861 0.96240 0.013 0.427 0.819 0.95050 0.004 0.345 0.779 0.93875 0.000 0.202 0.688 0.908

100 0.000 0.119 0.607 0.879125 0.000 0.070 0.536 0.852150 0.000 0.041 0.473 0.825200 0.000 0.014 0.369 0.773250 0.000 0.005 0.287 0.725300 0.000 0.002 0.224 0.680

崩壊サイクル cf 32 95 254 636

凍結融解サイクル

圧縮強さ比ab =1%

圧縮強さ比ab =3%

圧縮強さ比ab =5%

圧縮強さ比ab =10%

圧縮強さ比ab =30%

0 1.000 1.000 1.000 1.000 1.0005 0.998 0.980 0.947 0.807 0.151

10 0.996 0.961 0.897 0.651 0.02315 0.993 0.942 0.849 0.525 0.00320 0.991 0.924 0.804 0.423 0.00130 0.987 0.888 0.721 0.275 0.00040 0.982 0.853 0.647 0.179 0.00050 0.978 0.820 0.580 0.116 0.00075 0.967 0.743 0.442 0.040 0.000100 0.956 0.673 0.336 0.014 0.000125 0.945 0.609 0.256 0.005 0.000150 0.935 0.552 0.195 0.002 0.000200 0.914 0.453 0.113 0.000 0.000250 0.894 0.371 0.066 0.000 0.000300 0.874 0.304 0.038 0.000 0.000

崩壊サイクル cf 825 185 92 36 8

図-14 吸水率 ab をパラメーターにした凍結融

解サイクルと圧縮強さ比の関係

図-15 一軸圧縮強さ qu をパラメーターにした

凍結融解サイクルと圧縮強さ比の関係

0.0

0.1

0.2

0.3

0.4

0.5

0.6

0.7

0.8

0.9

1.0

0 100 200 300 400

圧縮

強さ

凍結融解サイクル (c)

5MN/m2

15MN/m2

40MN/m2

100MN/m2

0.0

0.1

0.2

0.3

0.4

0.5

0.6

0.7

0.8

0.9

1.0

0 100 200 300 400

圧縮

強さ

凍結融解サイクル (c)

1%

3%

5%

10%

30%

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4)推定式では、圧縮強さ比係数の推定値が sf= -0.5 以下になるものは、異常値として対象外にすることが望ま

しいと思われた。

5)推定式やその関係図表の利用方法としては、今後凍結融解を何サイクル受けるとどの程度強度が低下するか

を予測する方法と、現状の岩石と新鮮な岩石の圧縮強さ比から現状の岩石が何サイクルの凍結融解を受けた

かの予測にも利用できると考える。

7.おわりに

ここでは、コンクリートの凍結融解試験条件下での岩石の強度劣化を、定量的に推定する方法を構築した。本

推定法は、試験条件が自然条件と比較して浸水状態やサイクル温度が過酷な条件となっていることから、安全側

にあることが推察される。今後は、この成果をもとに実岩切法面の自然条件を考慮した推定法を検討する所存で

ある。本成果が、岩切法面の設計・施工、あるいは維持管理に関しての一助になれば幸いである。

謝辞:本報告をまとめるにあたり、北海学園大学工学部(博士)小野丘教授には、貴重なご助言をいただいた。

また、国土交通省北海道開発局の関係各位には、岩石試料や調査資料などの提供をしていただいた。ここに深く

感謝の意を表します。

(a) qu=5MN/m2(固定)の ab パラメーターとした

凍結融解サイクルと圧縮強さ比の関係

(b) qu=15MN/m2(固定)の ab パラメーターとし

た凍結融解サイクルと圧縮強さ比の関係

(c) qu=40MN/m2(固定)の ab パラメーターとし

た凍結融解サイクルと圧縮強さ比の関係

(d) qu=100MN/m2(固定)の ab パラメーターとし

た凍結融解サイクルと圧縮強さ比の関係

図-16 式(6)、(7)による ab 、qu をパラメーターとした凍結融解サイクルと圧縮強さ比の関係

0.0

0.1

0.2

0.3

0.4

0.5

0.6

0.7

0.8

0.9

1.0

0 100 200 300 400

圧縮

強さ

凍結融解サイクル (c)

1%

3%

5%

10%

30%

0.0

0.1

0.2

0.3

0.4

0.5

0.6

0.7

0.8

0.9

1.0

0 100 200 300 400

圧縮

強さ

凍結融解サイクル (c)

1%

3%

5%

10%

30%

0.0

0.1

0.2

0.3

0.4

0.5

0.6

0.7

0.8

0.9

1.0

0 100 200 300 400

圧縮

強さ

凍結融解サイクル (c)

1%

3%

5%

10%

30%

0.0

0.1

0.2

0.3

0.4

0.5

0.6

0.7

0.8

0.9

1.0

0 100 200 300 400

圧縮

強さ

凍結融解サイクル (c)

1%

3%

5%

10%

30%

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参考文献

1)高橋信之,星野吉昇,岡部豊二,高橋章,小野丘:岩盤切土斜面安定に関する凍結融解の影響検討,(社)土

木学会,第 36 回岩盤力学に関するシンポジウム講演論文集,pp353~356,2007.1

2)浅井大輔,小早川博亮,石田良二,矢野康明:寒冷地における切土軟岩斜面の凍結融解挙動,土の凍結と室

内凍上試験方法に関するシンポジウム,pp147~152,2001.10

3)日下部祐基,伊東佳彦,岡﨑健治,高橋克也:岩盤風化を伴う道路路床の合否判定法に関する研究,開発土

木研究所月報,No.601,pp35~39,2003.6

4)(社)土木学会:コンクリート標準示方書[規準編],pp323~326,2002.3

5)中村大,後藤隆司,鈴木輝之,伊藤陽司,山下聡:岩石の凍上に関する基礎的研究-岩石の内部構造,物性

値の比較を基にした凍上メカニズムの解明-,Journal of MMIJ, Vol.124, No.4,5,pp.231~239, 2008

6)京谷孝史,白鏞,恩田千早:多孔質軟岩(大谷石)の凍結融解による力学特性劣化の定量的把握について,

土木学会論文集,No.652,Ⅲ-51,pp103~114,2000.6

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Page 35: 自然地盤および複合地盤における杭の地盤反力特性 - ceri.go.jpSubgrade reaction characteristics of pile foundations in natural and composite grounds Koichi TOMISAWA

Sample disturbance due to different geometric designs of tube samplers

Hokkaido University Graduate Student ○Vuthy HORNG

Hokkaido University Member Hiroyuki TANAKA

1. Introduction

Tube sampling provides many subsequent chances for sample disturbance. Basic sources of disturbance can

be classified into two main groups: relief of in situ stresses and mechanical disturbances. In the process of retrieving

a soil sample from the ground, the sample is inevitably disturbed by stress relief from anisotropic in situ total stress

state to isotropic none total stress before testing. Therefore, whatever good sampling equipments and care taken, a soil

sample must be unavoidably subjected to disturbance in terms of stress conditions, i.e., stress relief. In addition to the

stress relief, mechanical disturbances can occur even before sampling. The mechanical disturbances identified in the

past consist of: 1). Before sampling: drilling methods, collapse of borehole; 2). During sampling: compression and

shearing by pushing penetration of tube sampler into the soil mass, suction or twisting during withdrawal of tube

sampler; 3). After sampling: vibration during transportation, loss of water content and chemical alteration of samples

during storage, compression and shearing due to sample extrusion from a tube sampler, trimming, and handling of

specimen. It can be seen that most of stages of mechanical disturbances on soil sample can be eliminated or reduced by

care taking. However, the stage of during sampling, which is believed to significantly affect sample quality the most,

is controlled by geometric designs of tube sampler itself.

Therefore, in this paper, one geometric design of a tube sampler was varied while the other dimensions and

mechanisms of sampling procedures remained constantly fixed. Edge angle and area ratio are believed to be the most

important features that affect sample quality. Various tube samplers with separately varying edge angles and area ratios

were designed and fabricated for field sampling in this investigation. Unconfined compression test (UCT) was used to

evaluate sample quality of the tube samplers.

2. Test site and tube samplers

Takuhoku test site is located in Sapporo, Japan. The fundamental properties of this site are shown in Fig. 1.

The deposits consist of 5-m fill and peat followed by a 4.5 m silty sand deposit, overlying the clay layer investigated in

this study. A sandy silt layer at a depth of 15 to 18.5 m separates the soil profile into the upper and the lower clay layers.

The upper layer is the objective clay layer in this study. The ground water table is located at about 3 m below the ground

surface. The natural water content varies between 60 and 70% and the plasticity index (Ip) is about 45~53.

The yield consolidation pressure (p′y), which was measured by CRS oedometer at strain rate of 0.02%/min (3.3×10-6/s),

is somewhat lower than the effective overburden pressure (p'vo) calculated, assuming that the pore water pressure

distribution is hydrostatic. However, the fill material at ground surface was placed in the 1960’s, thus it is believed that

the sampling clayey soil is still undergoing consolidation. The mean undrained shear strengths from field vane test

(FVT) for the sampling depth are approximately 20 kPa. The detailed properties of the site can be referred to Horng et

al. (2010).

Geometric designs of tube samplers are indicated in Table 1. The JPN sampler (JGS 1221-2003) is used in Japan for

sampling soft clay with low SPT N values, generally less than 4. The dimensions of the standard tube consist of an inside

diameter of 75 mm, a length of 1.0 m, and an effective sampling length of 0.8 m. The area ratio in the table is defined

by Hvorslev (1949): area ratio=(Do2˗Di

2)/Di2, where Do and Di are the outside and inside diameter of a tube sampler,

respectively. The edge angle of the standard JPN sampler is 6o. The thickness of the tube wall is 1.5 mm for stainless

steel, corresponding to an area ratio of 8.2%. More details of this sampler can be referred to JGS (1998) and Tanaka et

al. (1996). In this study, more geometrically different tube samplers consisting of the same inside diameter of 75 mm

were designed. The first sampler in the table, 6oF1.5, is the standard sampler currently used in Japan. The fourth tube

sampler, 90oF10, has edge angle of 90o and wall thickness of 10 mm, resulting in an area ratio of 60.4%. The last sampler,

6oF1.5(O), is the 6oF1.5 without using fixed piston (open drive sampler) during sampling.

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Figure 1 Soil profile of Takuhoku

Table 1 dimensions of tube samplers used in this study

3. Testing method

The undrained shear strength (qu/2) from unconfined compression test (UCT) is widely used for stability

designs in geotechnical engineering and this type of test is believed to be the most sensitive to sample disturbance

(Tanaka et al., 1996; Mitachi et al., 2001). UCT was carried out by following the test standard of the Japan Geotechnical

Society (JIS A 1216-1998). The specimen was trimmed by a wire saw to the diameter and height of 35 mm and 80 mm,

respectively. Compression stress of shearing was done at a constant strain rate of 1%/min.

4. Test results

Figs. 2 through 5 show the typical test results of UCT on samples from various types of samplers in this study.

Vertical axes (qu/2/p y) are the unconfined compressive strength normalized by in situ preconsolidation pressures.

Samples retrieved by the four bottom tube samplers shown in Table 1 are compared with the standard sampler (6oF1.5),

which is well-known for its high quality compared with Laval sampler (see Tanaka et al., 1996). As shown in Fig. 1, the

undrained shear strengths of UCT from the standard sampler are well in agreement with those from FVT.

4.1 Effect of edge angle

It can be seen from Fig. 2 that the sample retrieved by tube sampler 90oF1.5 has lower qu/2/p y than that of the

standard sampler. The difference of sample quality, resulting from the edge angle, is more significant if the wall

thickness of a tube sampler becomes large (see 90oF10 sample in Fig. 3). The results imply that a large edge angle more

disturbs soil sample than a smaller one.

30

20

10

0

0 50 100

2.6 2.7 2.8

1.4 1.6 1.8

0 25 50 75 100

0 100 200 300

0 50 100

Dep

th (m

)

p'y (kPa)Grain composition(%)

Sand

Silt Clay

RI−CPTMeasured

ρs(g/cm3)

wL

Filling

Peat

Sand

Clay

Sandy silt

Clay

Water content (%)Undrained shear strengths (kPa)

CPTFVT

Obj

ectiv

e cl

ay la

yer

UCTw

Pw

n

ρt(g/cm3)

CRS

σ'vo

Field samplers

Edge angle (α) (o)

Tube thickness (t) (mm)

Area ratio (%) Piston Sampling depth

(m) 6oF1.5 6 1.5 8.2 Yes 13 6oF10 6 10 60.4 Yes 12

90oF1.5 90 1.5 8.2 Yes 14 90oF10 90 10 60.4 Yes 11

6oF1.5(O) 6 1.5 8.2 No 15

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4.2 Effect of area ratio (or wall thickness)

Fig. 4 shows comparisons between samples from the tube samplers of the same edge angle but different wall

thicknesses; one from the standard sampler (6oF1.5) and the other from the tube sampler with wall thickness of 10 mm,

i.e., area ratio of 60.4% (6oF10). The stress-strain curves of samples collected from both tube samplers are almost

identical. However, if the edge angle of the thick wall sampler is increased to 90o, i.e., 90oF1.5 and 90oF10, it can be

seen from Figs. 2 and 3 that the samples from the sampler 90oF10 are markedly disturbed compared with 90oF1.5. The

stress-strain curve of 90oF10 move to the right hand side and harden up to the final axial strain of 15%; and the curves are completely different from other tube samples. It can be concluded from these results that once the edge angle of a

tube sampler are kept sharply small, a large area ratio can be permitted up to 60% without affect sample quality; on the

other hand, once the angle becomes large the area ratio must be limited as thin as possible.

Fig. 2 Effect of large edge angle Fig. 3 Effect of large edge angle Fig. 4 effect of area ratio

and thin wall thickness and thick wall thickness

4.3 Effect of fixed piston

Fig. 5 shows comparative results between open drive and fixed piston samples. It clearly indicates that there

is no sign of disturbance by collecting samples with the open drive sampler. The stress-strain curves of both fixed piston

and open drive tube samplers are of no difference in sample quality. Tanaka et al. (1996) conducted the similar studies

using the fixed piston and open drive Japanese standard samplers at Kinkai site and it was found that there was no

difference in quality between the two types of samplers. The insignificant role of a fixed piston on sample quality may

surprise readers. At the same time, it should be noted that the site of this investigation has soil properties being of

typical Japanese clay, which are not so sensitive. If the soil properties are very sensitive such as the Scandinavian and

Ariake clays as reported by Tanaka (2000), whether the fixed piston plays any role in sample disturbance, should be

more investigated.

It can be seen that geometric designs strongly influence the results of UCT. All UCT parameters, i.e.,

undrained compressive strengths (qu/2), Young’s moduli (E50), and peak strains (εf) vary with different tube samplers

and their summarized results are shown in Figs. 6 through 8.

5. Conclusions

The main points of this paper can be concluded as follows: Small and sharp edge angle is important to reduce

sample disturbance. If the edge angle is small and sharp area ratio of a tube sampler can be tolerated up to 60%. However,

if the edge angle is large area ratio must be kept as small as possible. Open drive sampler plays no significant role in

disturbing sample quality.

0 3 6 9 12 150

0.1

0.2

0.3

0.4

εa (%)

q u/2

/p' y

6oF1.590oF1.5

α =90o and t =1.5mm

0 3 6 9 12 150

0.1

0.2

0.3

0.4

εa (%)

q u/2

/p' y

6oF1.590oF10

α =90o and t =10mm

0 3 6 9 12 150

0.1

0.2

0.3

0.4

εa (%)

q u/2

/p' y

6oF1.5

α =6o and t =10mm

6oF10

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Fig. 5 Effect of fixed piston Fig. 6 Effect of types of tube samplers on qu/2

Fig. 7 Effect of types of tube samplers on E50 Fig. 8 Effect of types of tube samplers on εf

ACKNOWLEDGEMENTS

The authors would like to express our thanks to Toa Corporation for their kindly permission to conduct

sampling on the site using tube samplers of Hokkaido University.

6. References

1) Horng, V., Tanaka, H., and Obara T. (2010): Effects of sampling tube geometry on soft clayey sample quality

evaluated by nondestructive methods, Soils and Foundations (To be published).

2) Hvorslev, M. J. (1949): Subsurface Exploration and Sampling of Soils for Civil Engineering Purposes, U.S.

Waterways Experimental Station, Vicksburg.

3) JGS (1998): Standard of Japanese Geotechnical Society for Soil Sampling-Standards and Explanations (English

Version), Japanese Geotechnical Society, Tokyo.

4) JGS (1999): Standards of Japanese Geotechnical Society for laboratory shear test (English Version), Japanese

Geotechnical Society, Tokyo.

5) Mitachi, T., Kudoh, Y., and Tsushima, M. (2001): Estimation of In-situ Undrained Strength of Soft Soil Deposits by

Use of Unconfined Compression Test with Suction Measurement, Soils and Foundations, Vol. 41, No. 5, pp. 61-71.

6) Tanaka, H., Sharma, P., Tsuchida, T., and Tanaka, M. (1996): Comparative study on sample quality using several

types of samplers, Soils and Foundations, Vol. 36, No. 2, pp. 57-68.

7) Tanaka, H. (2000): Sample quality of cohesive soils: Lessons from three sites, Ariake, Bothkennar and Drammen,

Soils and Foundations, Vol. 40, No. 4, 57-74.

0 3 6 9 12 150

0.1

0.2

0.3

0.4

εa (%)

q u/2

/p' y

6oF1.5

Without piston (Open drive)

6oF1.5(O)

0

0.1

0.2

0.3

0.4

6oF1.5

q u/2

/p' y

90oF1.5 90oF10 6oF10 6oF1.5(O)

0

10

20

30

40

50

6oF1.5

E 50/p

' y

90oF1.5 90oF10 6oF10 6oF1.5(O)0

3

6

9

12

15

18

6oF1.5

ε f (%

)

90oF1.5 90oF10 6oF10 6oF1.5(O)

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図-1 実験の流れ

写真-3 サンプリングの順番

サンプリングにより採取された地盤試料の乱れに関する研究

北海道大学大学院 学生会員 ○近藤 雄大

同上 正会員 福田 文彦

同上 正会員 田中 洋行

北海道大学工学部 川畑 敬介

1.はじめに

現在、ボーリング調査(サンプリング)により得られた試料を用いて様々な室内試験が行われている。そして

それにより得られたデータから地盤の強度を推定するという手法が用いられている。しかし、それらのデータは

地中にサンプラーを貫入した際の試料の乱れの影響を考慮していないのが現状である。よって、試料採取時にお

ける試料の乱れがどの程度生ずるのかを研究することは、地盤の本来の原位置強度を推定するに当たり、たいへ

ん重要であるといえる。

そこで、本研究ではサンプリングによる試料の乱れがどの程度生ずるのかを調べる為、図-1 に示すようにまず

予圧密法によって試料ブロックを作成し、このブロックからトリミング法により得た試料とシンウォールサンプ

ラーを貫入することにより得た試料に対してサクション測定試験、ベンダーエレメント試験(以下 Gmax 測定)、

一軸圧縮試験を行い、サンプラーの貫入によって生じる試料の乱れが室内土質試験結果に及ぼす影響について研

究する。将来的には室内試験の結果を補正して、地盤が本来持つ原位置強度を推定できるようにすることを最終

目的とする。

2.実験

2.1 実験概要

実験は図-1 に示す流れで行った。粘土試料は NSF 粘土(土

粒子密度 2.76g/cm3、液性限界 53%、塑性限界 32%)を使用し、

予圧密期間は 3 日間、予圧密圧力は 200kPa で予圧密を行った。

各試験はトリミング法により得られた乱れの影響が小さいと考

えられる試料と、サンプラー(写真-1)を貫入するにより得ら

れた乱れの影響が大きいと考えられる試料の 2 種類に対して行

った。

トリミング法により得られた試料は予圧密粘土を高さ 80mm、

直径 35mm に整形した。サンプラーを貫入することにより得ら

れた試料は予圧密したセル内の粘土試料に内径 39mm のサンプ

ラーを貫入し、サンプラー内に入った試料を取り出し、直径は

39mm のままで高さを 80mm に整形した。サンプリング時の様

子を写真-2 に示す。1 回の予圧密から 4 本のサンプルを取り出

すことが出来、サンプラーを貫入する順番は写真-3 に示すよう

に時計回りとした。試験条件をまとめたものを表-1 に示す。

写真-2 サンプリング時の様子 写真-1 サンプラー

Research of disturbance that samples were got by sampling, Yuta KONDO, Hiroyuki TANAKA, Keisuke KAWABATA

and Fumihiko FUKUDA, Hokkaido University

英文で題名,著者,所属を記入(1ページ目のみ)(フォントは本文と同じく Times New Roman, 9 ポイント)

② ③

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図-2 サクション

表-1 試験条件

*笠岡粘土を使用した。

**サクション測定中に O-RING で乱した。

***サンプリング時のミスにより、得られた試料の量が他のものと比べて約半分になった。

2.2 サクション測定

サクションの測定は、サクションの値と時間のグラフを描き、

サクションの値が安定するまで測定を行った。サクションプレ

ートは真空ポンプによる 10時間以上の脱気と 2時間以上の通水

を行ってから実験を開始した 1)。NSF 粘土を用いた Trim-1、

Trim-2 でサクションの値が安定しなかった。この原因として、

①サクション測定中の供試体の乾燥、②NSF 粘土の特性、③サ

クションプレートの目詰まりを考えた。そこで、まず①と②に

ついて調べるため、NSF 粘土を笠岡粘土に、供試体乾燥防止に

サランラップと輪ゴムからメンブレンと O-RING に変えた実験

を行った(Trim-3)。しかし、Trim-1、Trim-2 と同様にサクショ

ンの値が安定しなかった。その為、サクションプレートに問題

があると判断し、実験 No.Trim-4 からサクションプレートを変

えて再び NSF 粘土の試料を用いて実験を行ったところ、図-2

に示すようにサクションの値が安定した。以降は同じサクション

プレートを用いて実験を行った。Trim-5 までは Trim-3 からの流れで供試体の乾燥防止にメンブレンと O-RING を

使用していたが、Trim-6 において、誤って O-RING を供試体にかけて乱してしまうという事故があった為、Trim-7

では供試体の乾燥防止に再びサランラップと輪ゴムを使用した。その実験において、サランラップと輪ゴムでも

サクションは問題なく測定できた為、これ以降は再び供試体の乾燥

防止にはサランラップと輪ゴムを用いた。サクションの値は表-1 に

示す通りで、トリミング法により得た試料についてはサクションが

測定出来たが、サンプリングで得た試料は 1 番にサンプラーを貫入

して採取した試料のみしかサクションの値が出なかった。

2.3Gmax 測定

Gmax 測定は、波の種類は sin 波と矩形波の 2 種類で行った。使用

した周波数はそれぞれ 500Hz、1000Hz、2000Hz である。波の伝播時

間を出す方法は送信時間と到達時間の差を伝播時間とする T.D.法を

用いた。また、T.D.法における到達時間は送信波形と受信波形の立

ち上がり点の時間差とする Start to Start 方式で決定し、伝播距離は BE

実験 No. 試料の

採取方法

初期

含水比

(%)

ρt

(g/cm3)

サクション

値(kPa)

Gmax

(sin1000Hz)

(MPa)

Gmax

(sin2000Hz)

(MPa)

qu

(kPa)

最終

含水比

(%)

Trim-1 トリミング 45.15 1.75 測定できず 34.2 39.8 104 44.63

Trim-2 トリミング 44.47 1.77 測定できず 19.6 23.0 90.6 45.54

Trim-3* トリミング 43.5 1.74 測定できず 18.7 19.8 78.9 42.5

Trim-4 トリミング 43.65 1.75 11.9 23.2 30.0 83.5 45.59

Trim-5 トリミング 44.91 1.73 10.8 19.0 23.0 72.6 46.68

Trim-6** トリミング 44.79 1.74 3.6 6.88 9.35 56.3 47.12

Trim-7 トリミング 44.31 1.78 17.0 20.8 27.2 77.5 46.43

Tube-1 サンプラー 46.62 1.82 2.4 9.54 10.1 84.21 44.53

Tube-2 サンプラー 45.74 1.77 0.0 2.54 2.79 46.28 45.07

Tube-3*** サンプラー 42.81 1.75 0.0 3.14 3.82 40.32 45.62

Tube-4 サンプラー 47.18 1.71 0.0 3.13 3.64 43.08 45.22

図-3 Gmax 測定の結果例

(sin1000Hz)

0 0.002 0.004

–10

0

10

–0.05

0

0.05

経過時間(sec)

送信波の電圧(

V)

送信波

受信波

受信波の電圧(

mV)

100 102

–10

0

経過時間(min)

サクション

(kP

a)

Trim–2

Trim–4Trim–5Trim–7

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図-4 応力-ひずみ曲線 図-5 一軸圧縮強度-含水

比関係

図-6 Gmax-含水比関係

の先端間距離(tip to tip)としてせん断波速度 Vs を求めた。せん断剛性率 G は以下の式で算出した。

G = Vs2 ∙ ρ

ここで、G:せん断剛性率(kPa)、Vs:せん断波速度(m/s)、ρ:供試体の密度(g/cm3)である。

矩形波は受信側の波が非常に乱れて正確な到達時間が判断できなかった為、結果の整理からは除外した。また、

sin 波の周波数 500Hz のデータは、周波数 1000Hz、2000Hz のデータと比較して波の到達時間が違いすぎたため、

結果の整理から除外した。

3.実験結果と考察

3.1 一軸圧縮試験結果

図-4 に一軸圧縮試験より得られ

た応力-ひずみ曲線を示す。本実験の

一軸圧縮試験では明瞭なピークが見

られなかった。また、トリミング法

により得た試料とサンプリングで得

た試料で曲線の形が大きく違うこと

が解る。このことから、試料に与え

た乱れの程度により曲線の形が変わ

ってくることが考えられる。

一軸圧縮強度と含水比の関係を図

-5 に示す。ここでは曲線の形が似てい

るグループを 3 つに分け、それぞれ平

行な直線を 3 つ引いた。トリミング法より得た試料、サンプリングで得た試料共に含水比の値が小さいと一軸圧

縮強度は大きい傾向にある。しかし、トリミング法とサンプリングで得たそれぞれの試料の一軸圧縮強度 -含水比

関係は明らかに異なっていることが解る。また、サンプリングで得た試料はトリミング法より得た試料と比較し

て含水比が低いにも関わらず、一軸圧縮強度は Tube-1 を除き、かなり低い結果となっている。この原因としては、

サンプラーを貫入したことによって、土粒子の構造が変化したことが考えられる。図-4 における Tube-2 以降の

曲線が、始め下に凸な曲線になったのも土粒子の構造が変化したことによるものではないかと考えられ、サンプ

ラー貫入による粘土試料の土粒子構造が 1 番に採取した場合は変化が少なく、2 番以降は劇的に変化しているの

ではないかと考えられる。Tube-1 と Tube-2 以降にサンプリングした試料の乱れの差が大きくなった原因としては、

写真-3 に示すサンプリング間隔が狭いことが挙げられる。通常、現場でのサンプリングは他のサンプリングの影

響が生じない位置にサンプラーを貫入するが、本研究ではサンプリング間隔が約 10cm と非常に近い位置でサン

プリングを行っており、先に行われたサンプリングの影響を大きく受けてしまったといえる。

3.2Gmax 測定結果

Gmax(sin1000Hz)と含水比

の関係を図-6 に示す。トリミン

グ法の場合とサンプラーを貫入

した場合で Gmax が大きく異な

った原因としては土粒子の構造

が影響しているのではないかと

考えられる。また、この図でも

図-5 と同じグループ分けをし、

それぞれ平行な直線を引いた。

トリミング法より得た試料、サ

ンプリングで得た試料共に含水

比が小さいほど Gmax の値は大きくな

る傾向にある。しかし、図-5 の場合と同様にトリミング法とサンプリングで得たそれぞれの試料の Gmax-含水比

関係は明らかに異なっている。図-5、図-6 において引いた 3 つの平行な直線が仮に正しいとすると、乱れの程度

図-7 Gmax による正規化

0 10

0

0.01

0.02

圧縮ひずみ(%)

σ/G

sin

10

00

Hz

Trim–4

Trim–5

Trim–6

Trim–7

Tube–1

Tube–2

Tube–3

Tube–4

0 10

0

50

圧縮ひずみ(%)

一軸圧縮応力(

kP

a)

Trim–4Trim–5Trim–6Trim–7

Tube–1Tube–2Tube–3Tube–4

40 50

40

60

80

最終含水比(%)(log)

一軸圧縮強度(

kP

a)

トリミング法

サンプリング

Trim–6

Tube–1

Tube–2Tube–4

Tube–3

Trim–4

Trim–7

Trim–5

40 50

10

20

最終含水比(%)(log)

Gm

ax(

sin1000H

z)

(MP

a)

トリミング法

サンプリング

Tube–1

Tube–2Tube–3

Tube–4

Trim–4

Trim–5

Trim–6

Trim–7

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-247-
Page 42: 自然地盤および複合地盤における杭の地盤反力特性 - ceri.go.jpSubgrade reaction characteristics of pile foundations in natural and composite grounds Koichi TOMISAWA

により直線の切片が変わることになる。現段階ではこの切片が乱れの大きな指標となっていると考えられるが、

データ数が少ないので今後もデータを蓄積する必要がある。

図-7 に図-4 の曲線を Gmax(sin1000Hz)により正規化したものを示す。トリミング法により得た試料の応力-

ひずみ曲線はこの正規化により、サクション測定の途中で乱れを与えてしまった Trim-6 以外がほぼ一致し、サン

プリングで得た試料は、Tube-2 が若干ずれてはいるものの、Tube-1 を除きほぼ一致した。このことから、乱れの

程度により Gmax の値は決まると考えられる。また、サクション測定中に誤って O-RING を供試体にかけてしま

った Trim-6 と予圧密試料から一番最初にサンプリングを行った Tube-1 が一致することから、これら 2 つの試料

の乱れの程度はほぼ同じであったのではないかと考えられる。sin2000Hz の Gmax で正規化した場合も同様の結

果が得られた。

3.3 サクション測定結果

サンプリングで得た試料は、サンプラーから取り出した時点で供

試体表面がトリミング法により得た試料と比較して湿っており、自

立が難しいほど柔らかかった。特に 2 番目以降にサンプラーを貫入

したものは乱れの影響が大きい為か、成形後に時間経過とともに若

干ではあるが供試体が沈下した。これは拘束圧に相当するサクショ

ンが無かった為であると考えられる。一般的には乱れの影響が大き

いとサクションの値は小さくなるといわれている。本実験でもサン

プラーにより大きく乱れを与えた試料のサクションの値がトリミン

グ法により得た試料と比較して小さくなった。また、図-8 に Trim-6

のサクション測定中に乱れを与えてしまった時のサクションの変化

を示す。初めは順調にサクションが出ていたが、図に示す乱れを与

えた時点(図の◎の部分)からサクションの値が小さくなり、後に一

定となった。このことから、試料の乱れが大きいとサクションの値は

小さくなるというのは正しいといえ、サクションの値は乱れの指標になるといえる。

4.結論・今後の課題

・試料に与えた乱れの程度により、サクションや Gmax の値、一軸圧縮強度が影響を受けることが解った。その

原因としては、土粒子構造の変化が挙げられる。

・図-5、図-6 における直線の切片が乱れの大きな指標であると考えられるため、データを蓄積し、原地盤が本来

持つ強度を推定可能かどうか研究する。

5.参考文献

1) 橋詰 哲治,平成 4 年修士論文,異方圧密粘性土の応力解放時のサクションと非排水強度の関係 ,p40

図-8 Trim-6 のサクション

10–1 100 101

–4

–2

経過時間(min)

サクション

(kP

a)

Trim–6

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0 50 100 150

0 50 100

2.4 2.6 2.8

0.5 1 1.5 2

20 40 60 80 100120

0 20 40 60

20

15

10

5

0

20

15

10

5

0

p'y (kPa)

粒度組成 (%)

ρs (g/cm

3)

ρt (g/cm

3)

含水比 (%)

非排水せん断 強度 (kPa)

深度

(m

)

粘土

粘土

シルト

シルト

砂wp wn wL

:RI:実測

σ'v0

泥炭

粘土

有機質土

:ベーン:一面:qu/2

対象とした地盤

:三軸

0 200 400

0 50 100

2.4 2.6 2.8

1 1.5 2

0 20 40 60 80

0 20 40 60 80

30

25

20

15

10

5

0

30

25

20

15

10

5

0

p'y (kPa)

粒度組成 (%)

ρs (g/cm

3)

ρt (g/cm

3)

含水比 (%)

非排水せん断 強度 (kPa)

深度

(m

)

粘土

シルト

wp wn wL

:RI:実測σ'v0

泥炭

粘土

有機質土

:ベーン:一面:qu/2

細砂混シルト

有機質土

盛土 地下水位≒原地盤面

30

20

10

020 40 60 80

2.6 2.7 2.8

1.4 1.6 1.8

0 50 100

埋土泥炭

砂層

粘土

wp wn wL

含水比(%)

ρs(g/cm3)

ρt (g/cm3)

粒度組成 (%)

ClaySilt

SandRI

mearsure

深度 (m)

図-1 盛土施工前(2006 年)

図-2 盛土施工後(2007 年)

図-3 拓北の地盤特性

北海道大学大学院 学生会員 ○岡 尚志

北海道大学大学院 正会員 田中 洋行

Geo statistical study using data from CPT: Takashi Oka (Graduate Student, Hokkaido University ) Hiroyuki Tanaka

(Graduate School of Engineering, Hokkaido University)

CPT データによる地盤の統計的考察

1. 研究の背景

近年,信頼性設計の地盤工学への導入が進められている.しかしながら,その概念はコンクリート等の人工材

料の分野で確立されため,地盤工学の分野にその考えを直接適用させることは難しい.この理由は,人工材料は

その製作程で品質が管理されているが,地盤は自然によって堆積されたものだからである.筆者らは,海外を含

む 10 か所以上の CPT による先端抵抗 qt を用いて地盤の統計解析を行ってきた.本論文では,北海道の美原と拓

北における CPT による qt を用いて統計解析を行うとともに,地盤のバラツキの原因について検討を行った.

2. 調査地点の概要 1),2)

本論文では,江別市美原地区と札幌市拓北で行った地盤調

査によるデータを用いて統計解析を行った.以下に,調査地

点の詳細を示す.

① 美原

この地点は札幌市内から約 20km のところに位置しており,

2006、2007 年度の 2 度にわたり調査を行っている.これらの

調査地点は 1km 程離れているが,ほぼ同一な地層を有してい

る.2007 年度は盛土施工後の地盤について調査を行った.本

論文では「盛土前」,「盛土後」と区別とする.土層構成およ

び物理特性の詳細を図-1 に示す.表層から 4m ほどまで泥炭

層で,その下に有機質土層,砂層と続き 11m から層厚 10m の

粘土層が存在する.本論文ではこの粘土層を解析の対象とし

た.地下水位は 0.88m であった.

図-2に盛土後の地盤特性を示す.施工完了時の盛土層は約

9m あったが,沈下により調査時(2007 年 7 月)の盛土天端のレ

ベルは原地盤面より 5.9m であった.地下水位面は盛土載荷

前の原地盤面とほぼ一致しており,粒度組成や土粒子密度な

どの物理特性は盛土前(図-1)とほぼ同じであった.解析の対

象としたのは表層から約 15m から層厚 8m の粘土層である.

粘土層はプラスチックドレーンを打設し圧密促進を図ってい

るものの,調査時点では圧密が完了していなかった.図より,

圧密降伏応力(py)が有効土被り圧(σ’vo)を下回っていることか

らも,未圧密地盤であることが分かる.

② 拓北

図-3 に札幌市拓北(以下、拓北と略記)の土層構成および物

理特性の詳細を図に示す.この地点は昭和 48 年に敷設された

埋地が表層にある.その下に泥炭,砂層が存在し,粘性土が

層厚約 20m 堆積している.圧密試験から,このサイトも未圧

密地盤であることがわかっている.

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400 600 800

18

16

14

12

実測値 トレンド

深さ

 (m

)

qt (kN/m

2)

盛土前

Case (a)

400 600 800

18

16

14

12

実測値 トレンド

深さ

 (m

)

qt (kN/m2)

Case (b)

600 800 1000

26

24

22

20

実測値 トレンド

深さ

 (m

)

qt (kN/m2)

盛土後

Case (a)

700 800 900 1000

26

24

22

20

実測値 トレンド

深さ

 (m

)

qt (kN/m2)

Case (b)

300 600 900 1200 1500

30

25

20

15

10

実測値 トレンド深

さ 

(m)

qt (kN/m2)

拓北

Case (a)

400 800 1200

30

25

20

15

10

実測値 トレンド

深さ

 (m

)

qt (kN/m2)

拓北

Case (b)

統計解析

0

qt(t)

深さ

Case (b)

0qt(t)

深さ

Case (a)

0 残差qt(ξ)

深さ

図-4 本論文における解析手法

3. 解析手法

3.1 トレンド

地盤の強度は,拘束圧と過圧密比に大きく影響される.したがって,粒径や塑性指数などの物理特性が同じ地盤

でも,地盤の強度は深さ方向に対して変化する.さらに,CPT から得られる先端抵抗 qt は,粘土地盤の場合には,

(1)式によって表わすことができるので,qt 値も深さ方向に規則的に変化する.

qt=Nktsu+σv0 (1)

ここに,Nkt:コーン係数,su:非排水せん断強度,σv0:全応力による土被り圧

である.

土の単位体積重量γt は深さ方向に対して,それほど変化しないので,σv0

は深さ方向に直線的に増加する.また,正規圧密地盤であれば,su も圧密

圧力も深さ方向に増大するので,σv0 と同様に増加する.したがって,qt

は深さ方向に線形的に増加すると考えられる.

本研究では,2 通りの方法で統計解析を行った.図-4 に解析方法の概細

を示す.Case (a)では,比較的均質と思われる土層を対象として 1 本のトレ

ンドを求めた.Case(b)では,数 m ごとに土層を分けて Case (a)と同様にト

レンドを求めた.図-5から図-7に盛土前,盛土後,拓北での層全体でトレ

ンドを求めた場合と 1m の土層で区切ってトレンドを求めた場合の結果を

それぞれ示す.当然であるが,1m ごとに層分けした方が,層全体とした

場合に比べて,qt の分布を忠実に再現している.

図-5 計測値と直線近似(盛土前) 図-6 計測値と直線近似(盛土後) 図-7 計測値と直線近似(拓北)

3.2 残差

地盤のバラツキを把握するために,qt からトレンドを除去した値を残差とし,残差の深度分布について検討を

行う.盛土前,盛土後,拓北での残差の深度分布図を図-8 から図-10 にそれぞれ示す.全体的に見ると,Case(a)

による深度分布図は調査地点を問わず残差は深さ方向に一様に分布せず,その形状は”く”の字状になっている.

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Page 45: 自然地盤および複合地盤における杭の地盤反力特性 - ceri.go.jpSubgrade reaction characteristics of pile foundations in natural and composite grounds Koichi TOMISAWA

-80 -40 0 40 80

18

16

14

12

深さ

 (m

)

残差 (kN/m2)

Case (a)

盛土前

-40 -20 0 20 40

18

16

14

12

深さ

 (m

)

残差 (kN/m2)

Case (b)

0 .0 0 .5 1 .0 1 .5 2 .0 2 .5

- 0 .2

0 .0

0 .2

0 .4

0 .6

0 .8

1 .0

盛 土 前 盛 土 後

自己

相関

関数

 R

距 離   δ z (m )

美 原

0 1 2 3 4 5 6

- 1 . 0

- 0 . 5

0 . 0

0 . 5

1 . 0

自己

相関

関数

 R

距 離   δ z ( m )

拓 北

-100 -50 0 50 100

26

24

22

20

深さ

 (m

)

残差 (kN/m2)

盛土後

Case (a)

2 σ

-40 -20 0 20 40

26

24

22

20

深さ

 (m

)

残差 (kN/m2)

Case (b)

-200 -100 0 100 200 300

30

25

20

15

10

深さ

 (m

)

残差 (kN/m2)

拓北

Case (a) 2 σ

-100 -50 0 50 100

30

25

20

15

10

深さ

 (m

)

残差 (kN/m2)

Case (b) 拓北

2 σ

これは qt がトレンドから離れている個所が存在しているからである.Case(b)では,深さによっては 2σの幅(σは

残差の標準偏差)から大きくかけ離れた値を示しているものの,残差は全体的に深さ方向に一様である.Case(a)

と(b)の横軸のスケールを比較すると分かるが,σそのものの値も大きく違う.すなわち,Case(b)の方が小さい.

このことから,Case(b)の解析結果が qt の挙動をうまく表現できていることが分かる.

図-8 残差の深度分布(盛土前) 図-9 残差の深度分布(盛土後) 図-10 残差の深度分布(拓北)

3.3 自己相関関数

地盤の統計的性質を表現するためには,平均と分散の他に自己相関の情報も必要である.本論文では,深さ方

向に対する残差の自己相関関数 Rを(2)式で定義する.

( ) ( ) ( ) ( )∑∑ ⋅+⋅=m

ii

m

ii zzzzzR11

ξξδξξ (2)

ここにξ(zi)とξ(zi+δz)はCase(a)での深さziおよびzi+δzの残差である.

図-11に美原での Rの結果を示す,なお,盛土前では深さ 11 から 15m,盛土後では深さ 20 から 24m を解析の

対象としている.両者の Rの形状にはそれほど変わりがないが,盛土後では自己相関性が大きくなっている.図

-12 に拓北での R の結果を示す.ここでは,深さ 20 から 22m の残差を用いている.図からも分かるように自己

相関性が非常に大きく,δz が 3m までは,Rが 1 に近い値となっている.δz が 5m を超えると,急激に Rの値

が小さくなっている.このことから,未圧密地盤(盛土後,拓北)では自己相関性が大きくなることが分かる.

図-11 自己相関関数(美原) 図-12 自己相関関数(拓北)

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∆z (m)

0.2

相関距離相関距離相関距離相関距離

∆z (m)

σ2

err 0

2 −

σ

r0:相関距離

方法 1

方法 2

図-13 相関距離の算出方法

0 1 2 3

24

23

22

21

20

19

方法1 方法2

深さ

 (m

)相関距離 (m)

盛土後

400 600 800 1000

20

18

16

14

12

10

深さ

 (m

)

q t (kN/m2)

盛土前

(a)

12 14 16 18

20

18

16

14

12

10深

さ 

(m)

γt (kN/m3)

500 1000 1500 2000 2500

27

26

25

24

23

22

21

20

19

深さ

 (m

)

q t (kN/m

2)

(b)

盛土後

12 14 16 18

27

26

25

24

23

22

21

20

19

深さ

 (m

)

γt (kN/m3)

図-17 RI-CPT の結果(美原)

0 2 4 6

17

16

15

14

13

12

11

方法1 方法2

深さ

 (m

)

相関距離 (m)

盛土前

0 2 4 6 8

28

26

24

22

20

18

16

14

12

10

方法1 方法2

深さ

 (m

)

相関距離 (m)

拓北

表-1 qt およびγt の残差のσ

拓北 美原(盛土前) 美原(盛土後)

σ (kN/m2) qt 61.210 27.210 83.3

拓北 美原(盛土前) 美原(盛土後)

σ (kN/m3) γt 0.380 0.400 0.35

調査地点

調査地点

相関距離 r0 を図-13 に示すように,2 通りの方法によって算出した.方法 1 で

は Rが 0.2 の時のδz を相関距離,方法 2 では Rを指数関数 R=σ2e-r/r0 で近似し,

r0 を相関距離とした.図-14から図-16に盛土前,盛土後,拓北での 2 つの方法か

ら算出した相関距離の深度分図をそれぞれ示す.算出方法の違いによる相関距離

の値の違いはそれほど見られない.従って,本研究で対象とした地盤の Rの形状

は指数関数型であることが分かる.次に,相関距離の値に着目してみる.盛土後

では深さ 10m を除いては相関距離の値が 1m 以上である.また,拓北では深さ 16m

から 18m を除いては,2 つの方法で算出した相関距離の値が 1m 以上になってお

り,深さによっては 5m 以上の値となっている.このことから,2 つの方法から

算出した相関距離の値からも分かるように未圧密地盤では自己相関性が高いこと

が分かる.

図-14 相関距離の深度分布(盛土前) 図-15 相関距離の深度分布(盛土後) 図-16 相関距離の深度分布(拓北)

4. バラツキの要因

本論文では、RI-CPT によって得られた結果を基に、地盤のバラツ

キについて検討を行った。RI-CPT は、ラジオアイソトープを用い

て貫入と同時に地盤の含水比と湿潤密度を深さ方向に連続して測

定することができる。図-17 に美原((a) 盛土前,(b) 盛土後)で行

った RI-CPT の試験結果を示す。盛土前では深さ 11~18m、盛土

後では深さ 19~27m を対象として、qt とγt を深さ方向に対する回

帰直線とその残差に分けて統計解析を行った。表-1に各地域の qt

とγt の残差の標準偏差をそれぞれ示す。なお,参考までに拓北で

の同様の解析結果も記す.表からも分かるように、γt に対するバ

ラツキは 0.5kN/m3 未満であり,非常にσの値が小さい。このこと

から、非排水せん断強度 su が地盤のバラツキに大きく関係してい

ることが分かる。

5. まとめ

江別市美原,拓北での CPT から得られた qt を用いて統計解析を行った.その結果,未圧密地盤では自己相関性

が高く,算出した相関距離が 5m 以上になる個所もある.また,地盤のバラツキには非排水せん断強度 su が大き

く関係していることが分かった. 参考文献

1) 西田浩太:せん断弾性波速度による自然堆積粘土の品質評価に関する研究,北海道大学学位請求論文,2007.

2) 松山雄介,田中洋行,小原隆志,平林弘,富田龍三:札幌市拓北の原位置及び室内試験から得られた強度特性,地盤工学会北海道支部報告集,第 49 号,pp.159-162,

2009.

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-252-
Page 47: 自然地盤および複合地盤における杭の地盤反力特性 - ceri.go.jpSubgrade reaction characteristics of pile foundations in natural and composite grounds Koichi TOMISAWA

十勝川下流河川敷の地盤材料調査

株式会社開発工営社 正会員 ○中山 博和

株式会社開発工営社 国際会員 西村 右敏

北海道開発局帯広開発建設部 石郷岡 淳

北海道開発局帯広開発建設部 大西 公彦

株式会社ソイルラボ北海道 坂上 貴男

株式会社ソイルラボ北海道 森本 智法

1.はじめに

帯広開発建設部池田河川事務所管内の十勝川下流域では、河川整備計画に基づき洪水時の流下能力確保と堤防

強化に向けた整備事業を進めている。

堤防強化(嵩上げ・拡幅)で使用する材料には、河川工事掘削土を利用するが、十勝川下流域に堆積するその

殆どが含水比の比較的高い第 4 種発生土または泥土に分類される単独での利用は困難な材料であることから、浚

渫発生土である礫質土および砂質土を用いた粒度調整による土質改良によって、効率的で効果的な整備を実施し

てきた 1)。

しかし、礫質土および砂質土の資源量は限られていることから、粒度調整によらない土質改良を実施していく

必要がある。

そこで、盛土材料として活用するための含水比低下、曝気ストック等の計画的な土砂管理と運用することを目

的として、今後の掘削対象範囲において土質性状と材料特性を把握するための土質試験を実施したので報告する。

2.調査検討箇所

池田河川事務所管内の十勝川下流域の平面図を

図-1 に示す。

本報告における調査検討は、十勝川右岸(KP0/28

~0/36)の延長約 8km の河川敷に堆積する土質を

対象としている。

現在の十勝川河道は、大正 12 年から昭和 16 年

の間において茂岩橋下流から千代田鉄道橋下流ま

での約 15.8km 区間で実施された十勝川統内新水

路により形成されたもので、調査対象区間はこの

新水路の上流部分に該当する。

十勝川整備計画に基づく掘削範囲(十勝川

KP0/28~0/38 区間)を図-2 に示す。

調査にあたっては、地盤表面と整備計画に基づ

いた掘削高さとの比高差を測量により求め、調査

掘削深度を決定した。

十勝川整備計画に基づく掘削断面の例を図-3 に

示す。

土層確認および試料採取は、調査深度が 3m 以

浅では、ハンドオーガーボーリングを実施し、調

査深度が 3m より深い、または地下水等で孔壁の

自立が困難でオーガーボーリングの実施が困難な

場合には、機械ボーリングを実施した。

Material Characterization of Clayly soil in the lower of Tokachi River : NAKAYAMA Hirokazu, NISHIMURA Migitoshi

(Kaihatsu Koei. Co., Ltd), ISHIGOUOKA Atsushi, OONISHI Kimihiko (Hokkaido Regional Development Obihiro

development and construction department), SAKAGAMI Takao, MORIMOTO Tomonori (Soillabo Hokkaido Co., Ltd)

豊頃町

幕別町

池田町

利別川

猿別

礼作別川

牛首別川

礼文内川

旧利別川

浦幌十勝川

浦幌川

千代田大橋

豊頃大橋

茂岩橋

十勝河口橋

下頃

辺川

第一十勝川橋

十勝

川→

浦幌町十勝川右岸KP0/28~0/36

図-1 十勝川下流域平面図(池田河川事務所管内図より)

yokohm
H21年度スタンプ
yokohm
テキストボックス
-253-
Page 48: 自然地盤および複合地盤における杭の地盤反力特性 - ceri.go.jpSubgrade reaction characteristics of pile foundations in natural and composite grounds Koichi TOMISAWA

図-2 十勝川整備計画に基づく掘削範囲(十勝川 KP0/28~0/38 区間)

図-3 十勝川整備計画に基づく掘削断面(KP0/30 と KP2/35)

3.十勝川右岸(KP0/28~0/36)の土質分布状況

河道掘削工事箇所における採取試料の土質試験結果を表-1(a)および(b)に示すとともに、これらの粒径加積曲線

を図-4 に示す。

掘削対象範囲に分布する土質の分布割合は、粘性土 60%、砂質土 15%、礫質土 5%、泥炭 20%程度であると推

定される。

粘性土は、シルト(MH,MHS,MS-S,MS,MLS,MLSG 他)と有機質粘土(OH,OHS,OH-S,OHS-G,OS)が

大部分を占めており、自然含水比wn は 30~320%程度の範囲にあるが、ほとんどがwn≧40%の高い含水状態に

ある。コーン指数qc は 10~330kN/m2 程度の範囲にあり、一部の有機質粘土(OHS,qc≒440kN/m2 や OHS-G,

qc>1700kN/m2)を除けば、通常の施工性を確保することが出来ない「第 4b 種」および「泥土b」の発生土区分2) に分類される。

砂質土は、細砂を主体としシルトを含有する砂(SCs)、および細砂または中砂を主体とし、シルト、礫を含有す

る砂(SCsG,SCs-G)がほとんどであり、wn は 20~50%程度と高く「第 4a 種」発生土相当に分類される。また砂

分は細砂を主体とするため耐浸食性に劣る材料であると考えられる。

礫質土は、砂分を 20~40%程度含有する礫質土(GCsS,GS-Cs)であり、qc≧800kN/m3 の「第 2a 種」に分類さ

れる。

泥炭は、wn が 95~320%程度であり、qc は 100kN/m2 未満であることから「泥土 c」に分類される。

このように、泥炭は含水比が極めて高く、有機分を含むため取り扱いが非常に困難であることから河川土工材

料として好ましくない材料であるが 3)、農業分野に対して土壌改良材として地域に泥炭を提供する試みが、関係

自治体との連携により行われている 4)。

打内川

0/29

0/29

0/30

0/30

0/31

0/31

0/32

0/32

←利別川

← 十 勝 川

0/33

0/33

0/34

0/34

0/35

0/35

0/36

0/36

0/37

0/37

0/38

0/38

二里塚樋門

上統内樋門

←猿別川

武山樋門

第一十勝川橋梁JR

千代田大橋

明野樋門

新川樋門

←十

勝川

幕 別 町

池 田 町

豊 頃 町

豊 頃 町

池 田 町

幕 別 町

池 田 町

整備計画に基づく掘削範囲

H=13.290

20

18

16

14

12

10

8

6

410 30

DL= 2.00 0 100 200 300 400 500 600 700 8001030

3000

1

S

300

1

DL= 0.00 0 100 200 300 400 500 600 700 800103010 30

H=9.970H=10.015

H=13.342

H=8.33H=8.99

H=10.99

H=8.99

H=10.99

18

16

14

12

10

8

6

4

2

河川改修計画断面(平成19年度以前)

整備計画断面

河川改修計画断面(平成19年度以前)

整備計画断面0

30

2

35

H=11.99

H=13.19

H=5.83

H=11.21H=11.19

H=13.19

H=3.49

現況断面

現況断面

20

18

16

14

12

10

8

6

4

18

16

14

12

10

8

6

4

2

河川改修計画(H19以前)

整備計画掘削ライン

河川改修計画(H19以前)

整備計画掘削ライン

30001

S

300

1

H21 KP2/35 L-650GH=13.22mH3 KP2/35 L-590

GH=13.58m

H21 KP2/35 L-545GH=13.12m

H3 KP2/35 L-200

GH=13.58m

H3 KP0/30 L-190

GH=11.06m

H18 KP0/30 (H)GH=11.98m

H3 KP0/30 L-120GH=12.97m

H21 KP0/30 L-565GH=10.31m

H3 KP0/30 L-580

GH=10.82m H3 KP0/30 L-620GH=10.94m

H3 KP0/30 L-700GH=12.11m

H21 KP0/30 L-680GH=11.77m

yokohm
テキストボックス
-254-
Page 49: 自然地盤および複合地盤における杭の地盤反力特性 - ceri.go.jpSubgrade reaction characteristics of pile foundations in natural and composite grounds Koichi TOMISAWA

表-1(a) 十勝川(KP0/28~0/38)右岸試料の土質試験結果一覧表-1

表-1(b) 十勝川(KP0/28~0/38)右岸試料の土質試験結果一覧表-2

図-4 十勝川(KP0/28~0/38)右岸河川敷を構成する土の粒度分布

4.代表試料における材料特性の比較

ここでは、十勝川 KP0/28~0/38 右岸の堤外地盤を構成する代表的な土質の地盤材料特性の比較を行う。

表-2(a)および(b)は、代表試料の土質試験結果一覧表である。

表中の試料番号は、締固め試験結果において高い最大乾燥密度を示すものから番号付けている。

代表試料に選定した土質は、粘性土質礫質砂(SCsG) 1 試料,粘性土質砂(SCs) 1 試料,砂質シルト(MS) 3 試料,

砂まじりシルト(MH-S) 6 試料,シルト(MH) 3 試料,泥炭(Pt) 3 試料の 6 材料分類 17 試料である。

1E-3 0.01 0.1 1 10 100

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

粒子の直径 (mm)

0.005

シルト

0.075 0.25 0.85 2 4.75 19 75

粗礫中礫細礫粗砂中砂細砂粘土

MH,MHS, MH-S,MS, MLS,MHSG, MHS-G,MLSG, MLS-G

OH,OHS, OH-S,OHS-G, OS

Pt CLS SCs,SCsG,

SCs-G,SWG, SOG

GS-Cs,GCsS

通 過

分 (

%)

泥 炭

土粒子の密度 ρs  g/㎝3 2.629 2.616 2.536 2.057~2.258 2.587~2.688 2.641~2.663 2.658~2.677 2.688 2.509 2.614~2.670 2.674~2.704

自然含水比 Wn  % 46.0 35.1 29.8 96.2~324.1 19.6~48.4 16.0~22.4 14.1~22.2 6.4 58.4 18.7~25.6 5.0~9.0

礫  分 2~75㎜ % 7.5 9.0 10.0 0 0.1~2.4 17.2~26.0 5~13.5 37.2 22.5 43.4~46.3 53.0~72.3

砂  分 75μm~2㎜% 31.1 36.7 28.3 5.3 53.6~80.1 40.3~56.2 50.3~74.4 57.9 28.1 25.9~30.4 20.6~38.6

シルト分 5~75μm % 32.4 39.2 38.3 82.9 19.9~32.9 9.3~31.6 20.6~36.2 4.9 30.7 10.7~16.2 5.7~9.5

粘 土 分 5μm未満 % 29.0 15.1 23.4 11.8 8.5~10.9 18.7 12.6~14.5

最大粒径 (㎜) 19 26.5 37.5 2 2~19 37.5~53 19~26.5 53 26.5 37.5~53 37.5~75

液性限界 WL  % 61.9 45.7 60.0 97.8~211.3 - - - - 88.6 44.9~46.6 -

塑性限界 Wp  % 41.2 30.1 37.3 54.3~103.1 - - - - 44.1 29.2~31.8 -

塑性指数 Ip 20.7 15.6 22.7 43.5~108.2 - - - - 44.5 14.8~15.7 -

分類名礫まじり

砂質シルト(高液性限界)

礫まじり砂質シルト

(低液性限界)

礫まじり砂質有機質粘土

(高液性限界)泥炭 粘性土質砂

粘性土質礫質砂

礫まじり粘性土質砂

粒径幅の広い礫質砂

有機質礫質砂粘性土質砂質礫

粘性土まじり砂質礫

分類記号 ρdmax g/㎝3 (MHS-G) (MLS-G) (OHS-G) (Pt) (SCs) (SCsG) (SCs-G) (SWG) (SOG) (GCsS) (GS-Cs)

試験方法 - - - A-c A-c A-c - - - - -

最大乾燥密度 ρdmax g/㎝3 - - - 0.690~0.973 1.520 1.786 - - - - -

最適含水比 Wopt  % - - - 36.3~54.0 21.3 14.9 - - - - -

コーン指数 コーン指数 qc kN/m2 190.7 250.0 1759以上 46.6~65.1 - - - - 281.0 330.6 -

細粒分含有率 Fc % 61.4 54.3 61.7 94.7 19.9~38.9 17.8~42.5 8.1~36.2 4.9 49.4 4.9~30.7 5.7~9.5

強熱減量 Li % - - - 12.5~29.7 2.6 2.3 - - - - -

砂   質   土 礫  質  土土         質 粘性土

締 固 め

一  般

粒  度

コンシステンシー

分  類

土粒子の密度 ρs  g/㎝3 2.312~2.612 2.480~2.536 2.407~2.605 2.555~2.670 2.631~2.649 2.240~2.491 2.587 2.127~2.517 2.481 2.607 2.623 2.655

自然含水比 Wn  % 52.7~135.0 56.5~76.5 41.5~121.0 28.6~104.3 30.6~41.1 71.7~181.2 43.3 60.1~318.4 56.5 35.3 42.2 36.5

礫  分 2~75㎜ % 0~0.3 0~1.4 0~1.5 0~0.4 0~1.9 0~0.1 0.8 0~0.5 0.9 0 18.6 18.6

砂  分 75μm~2㎜% 0.5~4.4 17.4~39.3 5.7~12.8 30.7~47.7 20.2~39.8 0.4~4.8 29.4 6.5~10.6 36.5 18.4 27.9 27.1

シルト分 5~75μm % 44.9~66.8 44.5~64.7 32.4~72.5 40.9~54.6 37.5~56.4 42.3~57.5 53.3 43.1~58.9 62.5 53.1 28.8 32.5

粘 土 分 5μm未満 % 29.7~35.6 14.8~31.6 16.1~57.2 11.4~20.0 19.1~23.4 42.1~55.0 16.5 36.2~50.4 28.5 24.7 21.8

最大粒径 (㎜) 2~4.75 2~9.5 0.85~4.75 2~4.75 2~4.75 0.425~4.75 10 2~9.5 9.5 2 37.5 37.5

液性限界 WL  % 61.8~127.4 71.5~85.0 51.9~114.3 - 42.4~48.8 91.2~159.1 52.7 76.9~188.6 - 48.7 60.7 44.4

塑性限界 Wp  % 36.8~64.2 43.0~60.2 31.0~62.7 - 29.8~33.0 47.2~79.9 35.2 44.2~80.8 - 24.2 39.0 28.2

塑性指数 Ip 20.4~68.9 25.6~42.0 18.2~38.4 - 12.6~20.4 41.5~79.5 17.5 32.7~107.8 - 24.5 21.7 16.2

分類名シルト

(高液性限界)砂質シルト

(高液性限界)砂まじりシルト(高液性限界)

砂質シルト砂質シルト

(低液性限界)有機質粘土

(高液性限界)

砂質有機質粘土

(高液性限界)

砂まじり有機質粘土

(高液性限界)砂質有機質土

砂質粘土(低液性限界)

砂礫質シルト(高液性限界)

砂礫質シルト(低液性限界)

分類記号 ρdmax g/㎝3 (MH) (MHS) (MH-S) (MS) (MLS) (OH) (OHS) (OH-S) (OS) (CLS) (MHSG) (MLSG)

試験方法 A-c - A-c A-c - - - - - - - -

最大乾燥密度 ρdmax g/㎝3 0.962~1.119 - 0.915~1.321 1.301~1.379 - - - - - - - -

最適含水比 Wopt  % 37.3~51.6 - 29.8~56.2 25.6~28.3 - - - - - - - -

コーン指数 コーン指数 qc kN/m2 13.9~172.7 51.2~335.2 84.0~298.1 - 214.2 145.0~235.0 442 117.0~270.0 - - 260.8 65.1

細粒分含有率 Fc % 94.9~99.5 59.3~82.6 80.6~94.2 55.2~68.9 58.3~79.8 95.1~99.6 69.8 89.0~93.5 62.5 81.6 53.5 54.3

強熱減量 Li % 9.5~16.2 - 8.0~15.2 2.9 - - - - - - - -

締 固 め

一  般

粒  度

コンシステンシー

分  類

土         質 粘   性   土

yokohm
テキストボックス
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Page 50: 自然地盤および複合地盤における杭の地盤反力特性 - ceri.go.jpSubgrade reaction characteristics of pile foundations in natural and composite grounds Koichi TOMISAWA

表-2(a) 十勝川(KP0/28~0/38)右岸の代表試料の土質試験結果一覧表-1

表-2(b) 十勝川(KP0/28~0/38)右岸の代表試料の土質試験結果一覧表-2

4-1 物理特性

図-5 は、泥炭(Pt)を除く代表試料の粒径加積曲線を示したものである。

曲線の形状は、シルト(MH)は比較的良い一致を示しているが、砂質シルト(MS)および砂まじりシルト(MH-S)

は同じ分類でもバラツキを有している。

図-6 は、泥炭(Pt)を除く代表試料の三角座標にプロットしたものである。

図-5 および図-6 からは、地盤材料の工学的分類と最大乾燥密度を与える締固め特性との関係には、分類毎に大

まかな序列があるものの、同一分類の土質においては粒度分布と締固め特性との間には明瞭な関係は見られない

ようである。

図-7 は、粘性土質礫質砂(SCsG),粘性土質砂(SCs)および NP である砂質シルト(MS)を除く代表試料を塑性図上

にプロットしたものである。

同図によると当該地域の粘性土は、A 線の下側で、B 線の右側にプロットされることから、一般には圧縮性が

大きく、塑性が小さい性状を示すようである。

① ② ③ ④ ⑥ ⑤ ⑦ ⑧ ⑪ ⑭ ⑮KP0/34L-660

KP0/36L-650

KP6/33L-650

KP0/30L-680

KP6/29L-665

KP2/28L-645

KP6/28L-770

KP4/35L-555

KP4/30L-655

KP8/28L-795

KP2/29L-1000

0.00~1.00 0.30~1.00 0.30~1.00 0.00~0.90 0.70~1.80 0.00~1.50 0.00~2.00 0.00~1.00 0.00~1.10 0.00~1.00 1.00~2.50

土粒子の密度 ρs  g/㎝3 2.641 2.663 2.620 2.606 2.603 2.604 2.559 2.560 2.517 2.450 2.422

自然含水比 Wn  % 22.4 23.9 44.5 45.3 48.9 47.8 77.6 57.3 73.9 79.9 121.0

礫  分 2~75㎜ % 26.0 0.0 0.1 0.0 0.0 0.0 1.5 0.0 0.1 0.1 0.5

砂  分 75μm~2㎜% 56.2 71.8 34.7 30.7 47.7 10.3 8.9 5.8 6.8 7.3 12.8

シルト分 5~75μm % 9.3 16.4 45.6 54.6 40.9 56.4 32.4 58.8 72.7 72.5 39.2

粘 土 分 5μm未満 % 8.5 11.8 19.6 14.7 11.4 33.3 57.2 35.4 20.4 20.1 47.5

最大粒径 (㎜) 37.5 2.0 4.75 2 2.0 2 4.75 2 4.75 4.75 4.75

液性限界 wL  % NP NP NP NP NP 55.4 72.1 76.6 91.2 106.3 114.3

塑性限界 wp  % NP NP NP NP NP 34.0 39.9 44.3 47.7 62.7 58.1

塑性指数 Ip NP NP NP NP NP 21.4 32.2 32.3 43.5 43.6 56.2

分類名粘性土質礫質砂

粘性土質砂 砂質シルト 砂質シルト 砂質シルト砂混じりシルト(高液性限界)

砂混じりシルト(高液性限界)

砂混じりシルト(高液性限界)

砂混じりシルト(高液性限界)

砂混じりシルト(高液性限界)

砂混じりシルト(高液性限界)

分類記号 ρdmax g/㎝3 (SCsG) (SCs) (MS) (MS) (MS) (MH-S) (MH-S) (MH-S) (MH-S) (MH-S) (MH-S)

試験方法 A-c A-c A-c A-c A-c A-c A-c A-c A-c A-c A-c

最大乾燥密度 ρdmax g/㎝3 1.786 1.520 1.379 1.369 1.301 1.321 1.209 1.142 0.958 0.909 0.915

最適含水比 wopt  % 14.9 21.3 28.3 25.6 27.7 29.8 38.6 39.6 50.1 56.2 41.6

コーン指数 コーン指数 qc kN/m2 228.1 500以上 51.2 116.4 149.1 163 51.2 297.8 349.4 321.3 121

強熱減量 強熱減量 Li % 2.3 2.6 2.9 5.1 3.7 8.0 8.1 10.5 12.2 15.0 15.2

wqc400 % 21.0 27.5 35.0 40.0 42.5 43.0 52.0 56.0 71.5 77.0 83.0締固めに伴うコーン指数試験で

qc=400kN/m2を得る含水比

図中凡例記号

締 固 め

 試  料  番  号

 採  取  位  置

 採 取 深 度   (m)

一  般

粒  度

コンシステンシー

分  類

⑨ ⑩ ⑬ ⑫ ⑯ ⑰KP4/28L-690

KP2/30L-670

KP4/30L-655

KP6/29L-665

KP0/29L-935

KP2/31L-600

0.00~2.00 0.50~2.15 1.10~2.50 2.30~3.50 0.80~3.00 0.40~1.50

土粒子の密度 ρs  g/㎝3 2.519 2.533 2.552 2.397 2.347 2.258

自然含水比 Wn  % 72.2 76.9 89.0 102.0 149.0 170.3

礫  分 2~75㎜ % 1.1 0.1 0.0 - - -

砂  分 75μm~2㎜% 4.0 3.3 1.3 - - -

シルト分 5~75μm % 59.3 62.1 63.3 - - -

粘 土 分 5μm未満 % 35.6 34.5 35.4 - - -

最大粒径 (㎜) 4.75 4.75 2 - - -

液性限界 wL  % 80.5 75.8 102.0 97.8 140.2 155.3

塑性限界 wp  % 46.5 47.2 47.0 54.3 54.9 82.9

塑性指数 Ip 34.0 28.6 55.0 43.5 85.3 72.4

分類名シルト

(高液性限界)シルト

(高液性限界)シルト

(高液性限界)泥炭 泥炭 泥炭

分類記号 ρdmax g/㎝3 (MH) (MH) (MH) (Pt) (Pt) (Pt)

試験方法 A-c A-c A-c A-c A-c A-c

最大乾燥密度 ρdmax g/㎝3 1.119 1.100 0.962 0.973 0.843 0.690

最適含水比 wopt  % 37.3 39.5 51.6 36.3 46.4 54.0

コーン指数 コーン指数 qc kN/m2 83.6 74.4 - 55.9 28.1 55.9

強熱減量 強熱減量 Li % 10.6 9.5 11.9 12.5 21.1 29.7

wqc400 % 61.0 62.0 74.0 73.5 99.0 111.0締固めに伴うコーン指数試験で

qc=400kN/m2を得る含水比

図中凡例記号

締 固 め

 試  料  番  号

 採  取  位  置

 採 取 深 度   (m)

一  般

粒  度

コンシステンシー

分  類

yokohm
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図-5 代表試料の粒径加積曲線

図-6 代表試料の三角座標による表示

図-7 代表試料の塑性図

図-7 の塑性図において、粘性土および泥炭のプロットは、B 線に近いものは高い最大乾燥密度を示し、また同

一液性限界付近では A 線に近いものほど高い最大乾燥密度を示す傾向が見られる。

これらのことから、粘性土の材料特性を特徴付けるものは、粒度分布形状の他にコンシステンシーが大きな要

因であるものと考えられる。

粘性土の物理的および力学的性質を支配する粘土の含有量と性質について、より定量的に示す指標として A=

粘土分含有量(2μm 以下)/塑性指数 Ip によって定義される活性度 A がある。

粘性土の Ip は、粘土の含有量が増えると増加し、また粘土の種類が異なると Ip が異なり、これが粘性土の工

学的性質を特徴付けているようである 5)および 6)。

1E-3 0.01 0.1 1 10 100

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

粒子の直径 (mm)

0.005

シルト

0.075 0.25 0.85 2 4.75 19 75

粗礫中礫細礫粗砂中砂細砂粘土

①SCsG(KP0/34 L-660) ②SCs(KP0/36 L-650) ③MS(KP6/33 L-650) ④MS(KP0/30 L-480) ⑥MS(KP6/29 L-665) ⑤MH-S(KP2/28 L-645) ⑦MH-S(KP6/28 L-770) ⑧MH-S(KP4/35 L-555) ⑪MH-S(KP4/30 L-655) ⑭MH-S(KP8/28 L-795) ⑮MH-S(KP2/29 L-1000) ⑨MH(KP4/25 L-690) ⑩MH(KP2/30 L-670) ⑬MH(KP4/30 L-655)

通 過

分 (%)

⑪⑮

⑨⑩

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

1000

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

細粒

分(0.075m

m未

満) 

(%)

① SCsG(KP0/34 L-660)② SCs(KP0/36 L-650)③ MS(KP6/33 L-650)④ MS(KP0/30 L-680)⑥ MS(KP6/29 L-665)⑤ MH-S(KP2/28 L-645)⑦ MH-S(KP6/28 L-770)⑧ MH-S(KP4/35 L-555)⑪ MH-S(KP4/30 L-655)⑭ MH-S(KP8/28 L-795)⑮ MH-S(KP2/29 L-1000)⑨ MH(KP4/28 L-690)⑩ MH(KP2/30 L-670)⑬ MH(KP4/30 L-655)

礫分

(2~

75m

m) 

(%)

砂分(0.075~2mm) (%)

①②

⑮⑤⑦

⑧⑪⑭⑨

⑩⑬

0 50 100 150 200

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

110

120

塑性指数

 Ip

液性限界 wL (%)

⑤ MH-S(KP2/28 L-645)⑦ MH-S(KP6/28 L-770)⑧ MH-S(KP4/35 L-555)⑪ MH-S(KP4/30 L-655)⑭ MH-S(KP8/28 L-795)⑮ MH-S(KP2/29 L-1000)⑨ MH(KP4/28 L-690)⑩ MH(KP2/30 L-670)⑬ MH(KP4/30 L-655)⑫ Pt(KP6/29 L-665)⑯ Pt(KP0/29 L-935)⑰ Pt(KP2/31 L-600)

(MH)

(CH)

(CL)

(ML)

A線

B線

⑦⑧

⑫⑭

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図-8 は、代表試料の活性度をプロットしたものであるが、当該地域の粘性土は、A≒1.5 の活性粘土と A≧2 の

非常に高い活性粘土の性状を示している。同図によると活性度 A が小さいほど、または粘土分含有量が小さいほ

ど、締固め試験における最大乾燥密度が大きくなる傾向を示すようである。

以上のように、粘性土の材料特性は、砂やシルトの含有粒度とともに、もしくはそれ以上に粘土分含有量や粘

土鉱物の影響が大きいものと考えられる。

図-9 は、代表試料の土粒子密度ρs と強熱減量 Li との関係を、図-10 は、代表試料の自然含水比wn と強熱減量

Li との関係を示したものである。当該地域の材料は、概ね図に示す関係が見られるようであるが、泥炭はその傾

きが若干異なるようである。

泥炭試料は、Li の増加に伴って無機質土粒子が減少し、繊維質有機物が増加することから、一般にwn とρs

は Li と強い相関性があるといわれており 7)、基本的な物理量も Li によって大きく支配されているようである。

図-8 代表試料の活性度の比較

図-9 代表試料の土粒子密度と強熱減量との関係 図-10 代表試料の自然含水比と強熱減量との比較

図-9 と図-10 の凡例は共通

4-2 材料特性(締固めおよびコーン指数特性)

代表試料の材料特性を図-11(a)~(c)に示す。図-11(a)は、締固め試験における乾燥密度と含水比の関係を、図-11(b)

は、締固め試験に伴い実施したコーン指数試験と含水比の関係を、図-11(c)は、同図(b)から求めた通常の施工性

が確保される 2) qc=400kN/m2 を得る目安としての含水比を、液性限界と塑性限界の範囲内にプロットしたもので

ある。

最大乾燥密度と最適含水比の関係およびコーン指数と含水比の関係は、概ね材料分類毎に区分できそうである。

ただし、砂混じりシルト(MH-S)の材料特性は、砂質シルト(MS)からシルト(MH)までの範囲にまたがっている

ことから、粒度分布および地盤材料の工学的分類のみでは材料特性を評価することが難しいと考えられる。

例えば、図-11(c)からは、砂混じりシルト(MH-S)は「⑤,⑦,⑧」と「⑪,⑭,⑮」のグループに材料特性が

大別できそうであり、これは図-8 に示した活性度の大小と対応しているものと推察される。

次にシルト(MH)の材料特性に着目すると、粒度分布(図-5 参照)は比較的良い一致を示しているが、「⑨,⑩」

0 10 20 30 40 50 60 70 80

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

塑性

指数

 IP

粘土分(0.002mm未満)含有率 (%)

⑤ MH-S(KP2/28 L-645)⑦ MH-S(KP6/28 L-770)⑧ MH-S(KP4/35 L-555)⑪ MH-S(KP4/30 L-655)⑭ MH-S(KP8/28 L-795)⑮ MH-S(KP2/29 L-1000)⑨ MH(KP4/28 L-690)⑩ MH(KP2/30 L-670)⑬ MH(KP4/30 L-655)

A=1

A=1.5A=2

⑦⑧

⑭ ⑪

0 5 10 15 20 25 30 35

0

20

40

60

80

100

120

140

160

180

200

wn=6

Li

自然

含水比 w

n (%)

強熱減量 Li (%)

wn=

10Li

0 5 10 15 20 25 30 35

2.2

2.3

2.4

2.5

2.6

2.7

2.8 ① SCsG(KP0/34 L-660) ② SCs(KP0/36 L-650) ③ MS(KP6/33 L-650) ④ MS(KP0/30 L-680) ⑥ MS(KP6/29 L-665) ⑤ MH-S(KP2/28 L-645) ⑦ MH-S(KP6/28 L-770) ⑧ MH-S(KP4/35 L-555) ⑪ MH-S(KP4/30 L-655) ⑭ MH-S(KP8/28 L-795) ⑮ MH-S(KP2/29 L-1000) ⑨ MH(KP4/28 L-690) ⑩ MH(KP2/30 L-670) ⑬ MH(KP4/30 L-655) ⑫ Pt(KP6/29 L-665) ⑯ Pt(KP0/29 L-935) ⑰ Pt(KP2/31 L-600)

土粒

子密度

 ρs (g/cm3)

強熱減量 Li (%)

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と「⑬」では異なる特性を示している。これも活性度と対応しているようで、活性度の比較図(図-8)において

ほぼ同じ粘土分含有量(20%程度)であるにもかかわらず、「⑬」のみが著しく高い活性度を示していることによる

ものと考えられる。

NP である砂質シルト(MS)の材料特性は、粒度分布(図-5 参照)が「③,④」と「⑥」では特に異なる形状を示し

ている。他の分類の粘性土に比べて材料特性の差は小さいが、材料特性を特徴付けるものは、細粒分含有率(75

μm 以下)ではなく、粘土分含有率(2μm 以下)が影響を及ぼしている可能性が示唆される。

泥炭(Pt)の材料特性については、コンシステンシーと相関性があるものと考えられる。

図-11 代表試料の材料特性

(a) 締固め曲線,(b) 締固め試験に伴い実施したコーン指数試験

(c)液性限界と塑性限界の範囲と qc=400kN/m2 を得る含水比

0

200

400

600

800

1000

1200

0.4

0.6

0.8

1.0

1.2

1.4

1.6

1.8

2.0

0 20 40 60 80 100 120 140 160

(b) コーン指数~含水比

⑰⑯

コー

ン指

数 q

c (kN

/m

2)

⑬⑫

⑪⑩

⑤④

     

乾燥

密度

ρd 

(g/cm

3 )

① SCsG(KP0/34 L-660)② SCs(KP0/36 L-650)③ MS(KP6/33 L-650)④ MS(KP0/30 L-680)⑥ MS(KP6/29 L-665)⑤ MH-S(KP2/28 L-645)⑦ MH-S(KP6/28 L-770)⑧ MH-S(KP4/35 L-555)⑪ MH-S(KP4/30 L-655)⑭ MH-S(KP8/28 L-795)⑮ MH-S(KP2/29 L-1000)⑨ MH(KP4/28 L-690)⑩ MH(KP2/30 L-670)⑬ MH(KP4/30 L-655)⑫ Pt(KP6/29 L-665)⑯ Pt(KP0/29 L-935)⑰ Pt(KP2/31 L-600)

⑮ ⑭

⑬⑫ ⑪

③④⑤

⑦⑧

⑨ ⑩

(a) 乾燥密度~含水比

(c) 液性限界と塑性限界の範囲と

   qc=400kN/m2を得る含水比

⑬⑫

⑪⑩

⑤④

     

含水比 w (%)

⑮ ⑭

⑬⑫ ⑪

③④⑤

⑦⑧

⑨ ⑩

⑤⑦

⑧⑪

⑭⑮

⑨⑩

⑯⑫

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図-12 wqc400 と液性限界の関係 図-13 (wqc400-塑性限界)と塑性指数の関係

図-12 と図-13 の凡例は共通

施工性が確保される含水比(wqc400)とコンシステンシーの関係(図-11(c))を、wqc400 と液性限界wL の関係

を単純にプロットしたものが図-12 である。同図によると、通常の施工性を確保することができる含水比wqc400

は、液性限界wL と良い相関関係があるようで、概ねwqc400=0.75×wL の関係にある。

これらの関係から、当該区域の砂まじりシルト(MH-S)、シルト(MH)および泥炭(Pt)については、液性限界によ

って施工性可能な含水比の目安が推定できるものと想定される。

図-13 は、通常用いられる自然含水比wn をwqc400 時に置換えてIp に対してプロットした液性指数ⅠL であ

り、ⅠL≒1 で不安定、ⅠL≒0 で安定を意味する。

同図からは、概ねⅠL=0.45 の関係にあるようで、通常の施工性を得るためにはⅠL は 0.45 程度以下である必

要がある。

5.おわりに

十勝川下流域の掘削工事で発生する土の約8割が第4種発生土または泥土であり、今後の河道整備を進めてい

く上であり、これら発生土の活用および処理を考えていくことは重要な課題である。

その解決には、土取場または曝気乾燥ヤードにおいて効率・効果的に含水比を低下させる手法の検討が重要で

あると考えられる。

今後は、発生土の材料区分や含水状態に応じて、盛土材料として活用するための計画的な土砂管理と運用方法

の確立を目指して検討・検証していく予定である。

参考文献

1) 西村右敏,大熊浩明,林田寿文,飯尾直人,伊藤秀一,金井克尚:十勝川下流における高水敷地盤調査と盛

土材への流用検討,地盤工学会北海道支部技術報告集,第 48 号,pp.61-70,2008.2.

2) 建設大臣官房技術調査室監修:建設発生土利用技術マニュアル(第 3 版),土木研究センター,3.土質区分基準

および土質区分判定のための調査,2004.9.

3) 国土技術研究センター:河川土工マニュアル,第 3 章 3.1.3 堤体材料の選定,pp.62-70,2009.4.

4) 林田寿文,平野正則,金川正次:河川整備に伴う発生物の有効利用について-関係自治体との連携による資

源としての活用に向けて-,第 52 回北海道開発技術研究発表会論文集,No.連-3,2009.2.

5) 田中洋行,林宏親,深沢健,中村明教,西田浩太,吉村貢,小泉和広,中島睦:夕張川河川敷の地盤調査結

果,地盤工学会北海道支部技術報告集,第 46 号,pp.239-246,2006.2.

6) 西田浩太,田中洋行,林宏親,深沢健,中村明教,三田地利之,小原隆志:江別市美原の原位置試験および

室内試験結果,地盤工学会北海道支部技術報告集,第 47 号,pp.145~150,2007.2.

7) 地盤工学会:地盤材料試験の方法と解説,2009.11.

0 40 80 120 160

0

40

80

120

160 ⑤ MH-S(KP2/28 L-645) ⑦ MH-S(KP6/28 L-770) ⑧ MH-S(KP4/35 L-555) ⑪ MH-S(KP4/30 L-655) ⑭ MH-S(KP8/28 L-795) ⑮ MH-S(KP2/29 L-1000) ⑨ MH(KP4/28 L-690) ⑩ MH(KP2/30 L-670) ⑬ MH(KP4/30 L-655) ⑫ Pt(KP6/29 L-665) ⑯ Pt(KP0/29 L-935) ⑰ Pt(KP2/31 L-600)

qc=400kN/m2 を

得る

含水比

 wqc400 

(kN/m2 )

液性限界 wL (%)

wqc40

0=0.7

5wL

0 50 100 150

0

10

20

30

40

50

60

70

80

wqc400-

wp (

kN/m2)

塑性指数Ip (wL-wp) (%)

IL=

(wqc

400-

wp)

/Ip=

0.45

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