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— 31 — IIC REVIEW/2009/4. No.41 1.はじめに 「金属のガス分析」と言われても、ピンと来な い方が多いと思う。最も馴染みの深い金属のガス 分析例は「貴金属」である。「純度 99.99%の金」 等の表示をよく目にするが、これは金の含有量を 分析するのではなく、不純物を測定し 100%から 減じた値であり、不純物として酸素や窒素を分析 している。 鉄鋼中のガス成分は鉄鋼のじん性を低下させ、 凝固過程での気泡、熱処理における白点(鋼材の 破面に現れる白色の光沢をもった斑点)、毛割れ (腐食によって、断面に細く毛状に現れたキズ) の原因となる。酸素、窒素は固溶硬化のほか、焼 入れ時効、ひずみ時効の原因となり、固溶限度以 上になると酸化物、窒化物あるいは複雑な化合物 として析出する。水素の場合は金属原子内に入り 込み、遅れ破壊(静的な応力を受けた状態で、あ る時間経過後に外見上は殆ど塑性変形を伴わずに 突然、脆性破壊する現象)、水素脆化など種々の 劣化・損傷要因となる。しかし、窒素をアルミニ ウムとともに窒化アルミニウムの極微粒として金 属に分散させることにより張力を高められること から IN 鋼が作られるし、窒素含有ステンレス鋼 は破断強度が優れ、窒素が材料強度を高めること も見出されている。 2.酸素 酸素は溶融状態の金属中に溶解するが、溶存酸 素は凝固の際に酸素、一酸化炭素として揮散し、 温度の低下に伴って大部分が酸化物となり、極微 量が格子侵入型酸素として残留する。例えば、溶 鉄中の飽和酸素溶解度は 1,700 ℃では 4,600ppm1,600℃では 2,300ppm であるが、一般の鋼材では 100 300ppm 程度の酸素量となる。 酸素の定量方法は化学的方法、物理的方法に分 類されるが、金属材料の酸素分析方法として一般 に用いられているのは物理的方法に分類される溶 技 術 紹 介 計測事業部 化学・環境部 博士(理学) 金属材料等における元素分析(ガス成分)方法 知惠 賢二郎 * Knjiro Chie 金属の精錬・加工の過程で水素、酸素、窒素などのガス成分は金属中に取り込まれて残留する。これら は金属に種々の影響を及ぼし、製品の品質を低下させる場合と、積極的な添加により性能が向上する場合 がある。金属中のガス成分は材料特性に密接な関係があることから、分析法の精度向上に古くから関心が 寄せられ、多くの研究がなされている。本報では金属中のガス分析方法について業務を通じて得られた知 見の一端を紹介する。 キーワード:金属、ガス、溶融法、ガスクロマトグラフ

金属材料等における元素分析(ガス成分)方法— 32 — — 33 — 融法である。この溶融法は抽出方法、分析方法に よって表2.1に分類される。

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100 300ppm
*
K n j i r o C h i e




— 32 — — 33 —


2.2


3.1
— 34 — — 35 —







4.3
2,700




2,000
4.4
— 36 —
0.6g
2g
TEL. 045-784-6812 FAX. 045-784-6826