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四肢循環障害の診察・診断
症状と身体所見
激痛⇒動脈性血流障害 鈍痛⇒静脈性還流障害
感覚異常(しびれ)※、冷感
色調:蒼白、チアノーゼ
皮膚温の低下
皮膚の潰瘍、壊死
脈拍・拍動減弱 / 消失
浮腫、腫脹
間欠跛行※神経支配領域に一致しないことが多い
閉塞性血栓性血管炎
Thromboangiitis Obliterans: TAO(バージャー病 / Buerger's disease)
○30~40才台の比較的若い男性に多い
○四肢の動脈が閉塞
○膝窩動脈以下、上腕動脈以下に多い=比較的末梢
○原因不明 -ほとんどは喫煙者
喫煙が病状進行に関与
閉塞性血栓性血管炎(バージャー病):症状
○手足の冷え、しびれ、痛み
○歩行時の下肢痛=間欠性跛行
○進行すると足先に潰瘍→壊死
○約40%に静脈炎を合併 –
皮下静脈に沿った皮膚発赤、疼痛
○好発部位:下腿足部動脈、膝窩動脈、浅大腿動
脈
→下肢に多い
診断足背動脈・膝窩動脈〇触診拍動の左右差または減弱、欠如
〇超音波ドップラー検査拍動の左右差または減弱、欠如
〇ABI( Ankle Brachial Systolic Pressure Index )
足関節収縮期圧、上肢収縮期圧の比0.9以下
〇血管造影〇MRA
閉塞性動脈硬化症 ASO
○高齢者に多い
○下肢の動脈の粥状硬化
○血栓性血管炎(TAO)より中枢に発生
○血管細小化による血管閉塞・血行障害
○しびれ、下肢痛、冷感
○間欠性跛行
○進行すると安静時痛
○最終的には切断になるケースも
間欠性跛行を呈する疾患
閉塞性血栓性血管炎(バージャー病)Thromboangiitis Obliterans:TAO
閉塞性動脈硬化症Arteriosclerosis Obliterans: ASO
腰部脊柱管狭窄症
糖尿病性壊疽
糖尿病(主にコントロール不良)を基盤に生じる四肢(主に下肢)の潰瘍・壊死
○血行障害(糖尿病性動脈硬化)○神経障害(糖尿病性神経炎):感覚障害により小外傷が発生しやすく、外傷に気がつかない
○易感染性〇自覚症状を欠く場合が多い
足部に多い
糖尿病性壊疽 治療
○糖尿病の厳重なコントロール:
感染が発生すると血糖値が安定しなくなる(悪循環)○感染巣の治療(血行がないので抗菌薬届きにくい)○デブリードメント(壊死組織の除去)○血行再建術○植皮術○切断(断端形成)
深部静脈血栓症DVTと肺塞栓PE
○下肢・腹部の手術後、妊娠中~分娩後などに下肢静脈のうっ滞
⇒血栓形成=DVT
○血栓より末梢の静脈性浮腫
○多くは安静解除とともに血栓が血流方向(末梢⇒心臓)に遊離
(静脈は血流方向に太くなる)
○心臓を通過後、肺動脈へ
○血栓の大半は肺動脈内で溶解 溶解しきれなかった血栓が
肺動脈末梢で血流を閉塞(∵動脈は血流方向に細くなる)=PE
○閉塞部より末梢の動脈血行障害(肺血栓⇒肺梗塞)
○呼吸によるガス交換(@肺)減少
○低酸素血症
○いわゆるエコノミークラス症候群
DVT 危険因子
○脱水・多血症○肥満○妊娠・分娩(とくに帝王切開)○経口避妊薬○脊椎・下肢手術後○下肢骨折、外傷後○下肢麻痺○長期臥床○悪性腫瘍○心不全・腎不全○DVT・PEの既往○血栓性素因(抗リン脂質抗体症候群)○ロングフライト(エコノミー症候群)
抗リン脂質抗体症候群(APS:antiphospholipid syndrome)
〇原因不明〇半数はSLE(膠原病)に合併〇血中に抗リン脂質抗体=自己抗体〇DVT~PE発症 ハイリスク〇動脈血栓症(脳梗塞>心筋梗塞)ハイリスク〇習慣流産 ハイリスク〇血液検査梅毒検査:生物学的偽陽性活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)延長抗カルジオリピン抗体陽性
流産歴が複数回ある女性に対して下半身手術を行う場合にはAPSを念頭に血液検査などで確認
頻度
初発は下腿の深部静脈内が大半
■深部静脈血栓症(DVT)
人工股関節置換術+人工膝関節置換術後:20 ~71 %
■肺血栓(塞栓)症(PE)
全手術周術期におけるPE:0.04%
脊髄,股関節・下肢手術でPE の発症頻度が高い.
ショックや心停止で発症が30%、死亡率20%
妊産婦死亡の主な原因となる 帝王切開後>経膣分娩後
DVTの診断
○疑わないと診断できない○下肢腫張・浮腫 とくに下腿○下肢疼痛(軽度)○下肢把握痛○Homan’s Sign(ホーマン徴候)陽性足関節背屈で腓腹部に疼痛
○血液検査: D-ダイマー高値○下肢エコー○造影CT
○静脈造影(侵襲大きくあまり行われない)
DVTの予防
○弾性ストッキング○間歇的空気圧フットポンプ○抗凝固薬●アスピリン:最近では効果がやや疑問視=抗血小板凝集
●エドキサバントシル酸塩水和物=経口血液凝固第X因子阻害=リクシアナ
●アピキサバン=経口抗凝固薬FXa阻害剤=エリキュース
●ヘパリン:欧米では頻用=アンチトロンビンIIIを活性化
など○早期離床、早期リハビリ(血流欝滞を防止)
DVTの治療
○肺血栓(PE)にならないように早期発見!早期治療○抗凝固薬●クマディン=ワーファリン=第II因子(プロトロンビン)の阻害
●エドキサバントシル酸塩水和物=経口血液凝固第X因子阻害=リクシアナ
●アピキサバン=経口抗凝固薬FXa阻害剤=エリキュース
●ヘパリン=アンチトロンビンIIIを活性化
○下大静脈フィルター(血栓の肺動脈への移動を防止)
◎DVTが発見された場合はフットポンプや下肢マッサージは禁(DVTから肺血栓PEを発症する危険性があるため)
肺塞栓(PE)理学的所見
呼吸数>20/分(70%),ラ音(crackles)(51%),頻拍>100/分(30 %),肺動脈II音の亢進(23%).血圧低下,冷汗など(ショック症状)
一般採血般検査所見:LDHとTB上昇,GOT正常のclassical triad(10%)
動脈血ガス分析:通常は低CO2血症を伴う低O2血症: 26%はPaO2>80mmHg
胸部X線写真:初期には異常影なし 右心不全の所見
心電図:70%が異常.非特異的ST-T変化が最多.新たに出現した右脚ブロック,SIQIIITIII (深いS@I、深いQ波と陰性T波@III),V1-3の陰性T,ST上昇など.
※心電図や胸部X線写真は他疾患を除外する意味で重要である.
DVTに続発する肺血栓
致死率高い!
離床時に発生しやすい
発生リスク:術直後から3ヶ月まで
離床、リハビリテーション開始時にはDVT有無を
必ず確認(下肢浮腫、腫脹の有無)
低酸素血症が術後の貧血と勘違いされる場合もある
見逃すと本当に怖い!
リハ開始時の発症も多い!
肺塞栓 治療
死亡率高い
○抗凝固療法○血栓溶解療法:術直後の症例=止血部から出血するリスク+
○カテーテル療法:血栓溶解療法、血栓吸引術、破砕術
○血栓摘除術○下大静脈フィルター
治療は困難=肺塞栓発症前 深部静脈血栓の段階で治療=深部静脈血栓の予防が大切
コンパートメント症候群
○コンパートメント内の圧が上昇することにより
コンパートメント内の網細血管が閉塞、
筋・腱・神経の阻血が発生
○内圧が上昇した状態が継続すると
内部組織の非可逆的な変性や壊死をおこす
○内圧上昇の原因:
コンパートメント内の出血(外傷)、
筋の過使用による浮腫
静脈還流障害
見逃すと怖い
コンパ-トメント症候群
筋区画(骨,骨間膜および筋膜で構成される
筋周囲の閉鎖性空間)内の組織圧上昇
↓
筋肉や神経へ分布する細動脈が閉塞
↓
区画内の組織(主に筋肉)の阻血
↓
筋壊死、非可逆性拘縮
↓
重症では横紋筋融解、挫滅症候群
○四肢や体幹のいかなる部位にも発生しうる
好発部位:下腿
コンパ-トメント症候群
原因
区画内における筋肉体積の増加=腫脹(内出血・浮腫)
外傷(骨折、挫傷、切創、高圧注入、毒蛇咬症)
筋肉の過負荷(マラソン、ハイキング)
軟部組織の長時間機械的圧迫
循環障害、とくに環流障害
コンパ-トメント症候群症状・診断
○当該コンパートメントの腫脹,緊満、圧痛、水疱、末梢の環流障害、浮腫
○当該コンパートメントの疼痛(激痛)→
患者があまり痛がるときは本症の合併を疑う
○passive stretch test陽性
当該コンパートメント内に存在する筋肉の作用方向と反対方向に他動的に
筋を伸張させると痛みが誘発される
○resisted motion test陽性
当該コンパートメント内の筋肉の随意性収縮を指示し,検者がその筋の
作用方向と反対に抵抗を加えることで痛みが誘発される
○当該コンパートメントを走行している神経の知覚障害と筋力低下
○内圧測定 意識障害がある場合には唯一の診断方法
※純然たるコンパートメント症候群の場合には
末梢動脈の拍動は消失しない→末梢動脈の拍動があるからと
いって本症は否定できない!
コンパートメント症候群
症状
激痛(とくにギプスを巻いている場合注意!)
症候群発生部と末梢の腫脹、浮腫、水泡
症候群発生部より末梢の動脈血行は
最後まで阻害されない!
⇒足背動脈が触知可能であっても
下肢のコンパートメント症候群は否定できない
区画内圧測定法(Whitesides法)
生理食塩水
空気空気
血圧計注射器
○ ピストンを押して生理食塩水が動き出した圧を内圧とする○ 区画内圧>拡張期血圧-20 (or 30) mmHg →減張切開の適応
18G針
コンパ-トメント症候群
治療
減張切開=筋膜切開=内圧開放=除圧術 が唯一の治療法
タイミング(6時間以内)を逸すると筋壊死、非可逆性拘縮
cf. フォルクマン拘縮
補助治療
薬物
medical leech
腫脹によりコンパートメント(閉鎖環境)内で
内圧が上昇
→網細血管圧を越えると筋肉の虚血が発生
→筋壊死
阻血時間が長くなると非可逆的
→筋壊死により筋原性タンパクが大循環内へ
→筋原性タンパクが腎尿細管を閉塞
(横紋筋融解症候群)
→急性腎不全
クラッシュ症候群○横紋筋溶解症候群のひとつ
○長時間の骨格筋への圧迫による
○阪神大震災で有名になった
○アルコール中毒や睡眠薬中毒などで
同姿勢を長時間続けた場合などにも発生
○筋の挫滅、虚血により 筋内のカリウム、
ミオグロビン(筋原性タンパク質)が筋外に遊出。
圧迫解除=血行再開とともにカリウム、ミオグロビンが
血液に吸収。
ミオグロビンが腎尿細管を閉塞、尿毒症を発症。
○筋由来のカリウムと、腎不全による
カリウム排出低下により心不全を発症
○CPK(筋原性酵素)高値、ミオグロビン尿(暗赤色)
フォルクマン拘縮
○上腕骨顆上骨折に合併したものが多い(小児)
○上腕骨顆上骨折への合併頻度は高くない
○骨折後のコンパートメント症候群の最終的な結果
○前腕屈筋群の虚血壊死性拘縮
○ときに正中神経・橈骨神経麻痺を合併
○最終的に前腕回内位・手関節屈曲・
拇指内転MP関節伸展・IP関節屈曲の肢位
訴えられると負けます・・・・
腰椎が過伸展(前弯の過増強)しトライツ靭帯により上腸間膜動脈が圧迫⇒上腸間膜動脈が閉塞⇒急性腹症
上腸間膜動脈は十二指腸の下部から横行結腸の3分の2までの腸(=腸のほとんど)を栄養⇒腸の壊死が発生すると極めて重篤
代表的な骨端症概ね男に多い 概ね成長期に多い
(すべてを循環障害のカテゴリーにいれるのは…)
部位 疾患名 好発年齢 性差 備考
大腿骨頭 ペルテス病 4~7 男
第2,3中足骨頭 フライバーグ・ケーラー病(第2ケーラー病)
13才以降 女
上腕骨小頭 パンナー病 10才以下 男
足舟状骨 ケーラー病 3~7 男
月状骨 キーンベック病 20才以上 男 力仕事
脛骨粗面 オスグット・シュラッター 10~14 男
キーンベック病(月状骨軟化症)月状骨無腐性壊死(成人発症)大工など手首を酷使する人に比較的多い骨端症に含めることもある
手関節運動痛 掌背屈制限
治療血管柄つき骨移植血管束移植橈骨短縮術腱球移植術関節固定術
大腿骨頭壊死(二次性)をきたす疾患など
肝硬変
アルコール多飲(アルコール性骨頭壊死)
潜函病
ゴーシュ病
鎌状赤血球症
DM
ステロイドパルス療法(ステロイド性骨頭壊死)
成人の大腿骨頸部内側骨折
小児の大腿骨頸部外側骨折
股関節脱臼(後方)
ゴーシェ(ゴーシュ)(Gaucher)病
○先天性代謝異常症 常染色体劣性遺伝
○グルコセレブロシダーゼ活性低下により
分解できなかったグルコセレブロシド
(糖脂質)が肝臓、脾臓、骨などに蓄積
○肝脾腫,貧血,血小板減少
○易骨折性
○神経症状を有するタイプもある
※試験に出るとしたら骨頭壊死の原因疾患として
上腕骨近位骨折 Neerの分類
4 part fractureは上腕骨骨頭壊死になりやすい
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/
pmc/articles/PMC3610277/pdf
/1756-0500-6-69.pdf
任意レポート締め切り6/16 提出方法遵守(Microsoft Wordで作成したファイルをメールに添付)
DVTとPEについて自己理解が進むようまとめる成書・文献を読む
特に病態についてDVTとPEを混同しないよう復習する
目標=DVTとPEについて患者に語れるレベル
※優秀者にはオマケつきポイント