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薬生食基発 0529 第5号 令和2年5月 29 日 各 検疫所長 殿 厚生労働省医薬・生活衛生局 食品衛生法第8条に規定する指定成分等の試験法について 食品衛生法等の一部を改正する法律(平成 30 年法律第 46 号)による改正後 の食品衛生法(昭和 22 年法律第 233 号)第8条の施行に伴い、同条に規定する 指定成分等含有食品の製造等を行う営業者は、指定成分等含有食品の製造又は 加工の基準(令和2年厚生労働省告示第121号。以下「製造基準告示」という。) の遵守が求められることから、製造基準告示の適切な運用に資するための指定 成分等の試験法については、別添のとおりですので、関係者への周知方よろしく お願いします。

薬生食基発0529第5号 食品基準審査課長 (公印省略) · USP Powdered Forskohlii Extract RSの確認指標成分の一つ。 2. 適用食品 コレウス・フォルスコリーを含有する食品

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薬生食基発 0529 第5号

令 和 2 年 5 月 2 9 日

各 検疫所長 殿

厚生労働省医薬・生活衛生局

食 品 基 準 審 査 課 長

( 公 印 省 略 )

食品衛生法第8条に規定する指定成分等の試験法について

食品衛生法等の一部を改正する法律(平成 30 年法律第 46 号)による改正後

の食品衛生法(昭和 22 年法律第 233 号)第8条の施行に伴い、同条に規定する

指定成分等含有食品の製造等を行う営業者は、指定成分等含有食品の製造又は

加工の基準(令和2年厚生労働省告示第 121 号。以下「製造基準告示」という。)

の遵守が求められることから、製造基準告示の適切な運用に資するための指定

成分等の試験法については、別添のとおりですので、関係者への周知方よろしく

お願いします。

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(別添)

第1章 -総則-

1.用語

(1) 「分析対象化合物」とは、第2章に規定する試験法によって分析する化合

物であって、食品衛生法第8条に規定される指定成分等の成分であるものを

いう。

(2) 「管理成分」とは、分析対象化合物のうち、原材料、製品及び中間品に含

まれる指定成分等が規格に適合していることを確認するために分析される

ものをいう。

(3) 「定量限界」とは、適切な精確さをもって定量できることが確認された分

析対象化合物の最低量又は濃度をいう。

2.装置

第2章の個別試験法に規定する試験法によって試験を実施する場合の装置に

ついて、「高性能薄層クロマトグラフ」(HPTLC:High Performance Thin-layer

Chromatograph)とは、通常の薄層板と比べて、より小さく均一なシリカゲルを

ガラス面に均一に塗布したものを用いる薄層クロマトグラフのことをいう。使

用する HPTLC の条件は、個別試験法の規定に従うこと。

3.試薬・試液

第2章の個別試験法に規定する試験法によって試験を実施する場合の試薬・

試液は、同章において個別に示すもののほか、食品、添加物等の規格基準(昭和

34 年厚生省告示第 370 号)の第2添加物の部 C 試薬・試液等の1.に掲げるも

のとする。

4.試料採取

第2章の個別試験法によって試験を実施する場合の試料採取は、別に規定す

る場合を除き、以下の方法に従って行う。

(1) 原料植物

植物を乾燥したものをハサミで細切した後、ミルサーで粉砕・粉末化した

上で均一化する。

(2) 錠剤

粉砕・粉末化した上で、均一化する。

(3) カプセル剤

外皮を除去した内容物を必要に応じて粉砕し、粉末化した上で均一化する。

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5.分析上の留意事項

(1) 第2章に規定する試験法以外の方法によって試験を実施しようとする場

合には、同章に規定する試験法と比較して、選択性、真度、精度及び定量限

界において、同等又はそれ以上の性能を有すると認められる方法によって実

施するものとする。

(2) 個別試験法に示す定量限界は本通知で示す方法により試験を実施した場

合に得られる一般的な数値を示すものである。

食品が含有する濃度を測定することが困難な場合には、機器の測定条件(例

えば、カラムの種類、カラム温度、移動相の流速及び組成、質量分析の場合

には測定モード、測定イオン、キャリヤーガスの流速、電圧)を変更する、

機器への試験溶液注入量を増やす、試験溶液を濃縮する、精製を追加してノ

イズを減らす、試料量を増やすことなどの対応が必要な場合がある。

(3) 第2章に規定する試験法のうち、定性分析としているものは、指定成分等

の該当性を確認するものである。ただし、試験法の感度の観点から検出され

ないことも考慮し、不検出をもって直ちに指定成分等非該当となるものでは

なく、トレーサビリティを含め総合的に判断する必要がある。

(4) 第2章に規定する試験法のうち、定量分析としているものは、原材料、製

品及び中間品に定めた管理成分の規格に適合していることを確認し、工程管

理が適正に行われていることを確認するために行うものである。

第2章 -個別試験法-

1.コレウス・フォルスコリー試験法

2.ドオウレン試験法

3.プエラリア・ミリフィカ試験法

4.ブラックコホシュ試験法

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1.コレウス・フォルスコリー試験法

〇TLC 分析法(定性分析)

1. 分析対象化合物

フォルスコリン(Forskolin)(管理成分)

C22H34O7=410.51 CAS: 66575-29-9

イソフォルスコリン(Isoforskolin)

C22H34O7=410.51 CAS: 64657-21-2

USP Powdered Forskohlii Extract RS の確認指標成分の一つ。

2. 適用食品

コレウス・フォルスコリーを含有する食品

3. 装置

薄層クロマトグラフ(TLC)

4.試薬・試液

次に示すもの以外は、第1章総則の3に示すものを用いる。

フォルスコリン標準品(CAS: 66575-29-9) 本品はフォルスコリン 95%以上

を含む。

イソフォルスコリン標準品(CAS: 64657-21-2) 本品はイソフォルスコリン

95%以上を含む。

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5. 試験溶液の調製

試料 20 mg (試料量は適宜調整する。)にメタノール 2 mL を加えて 15 分間超

音波抽出した後、遠心分離し、上澄液を試験溶液とする。

6.標準溶液の作成

標準溶液:フォルスコリン標準品 1 mg 及びイソフォルスコリン標準品 1 mg

をそれぞれメタノール 1 mL に溶かし、標準溶液とする。

7. 分析条件

試験溶液 10 μL(スポット量は適宜調整する。)及び各標準溶液 2 μL を薄層

クロマトグラフィー用シリカゲルを用いて調製した薄層板にスポットする。次

に酢酸エチル/ヘキサン混液(1:1)を展開溶媒として約 7 cm 展開した後、薄層

板を風乾する。これに 4-メトキシベンズアルデヒド・硫酸試液を均等に噴霧し、

105℃で 3分間加熱した後、放冷し、このとき、試験溶液から得た数個のスポッ

トのうち 2個のスポットは、標準溶液から得たスポットと色調及び Rf 値が等し

い(フォルスコリン、イソフォルスコリン)。

プレート:TLC Silica gel プレート、層厚 250 μm 10×20 cm

F フォルスコリン標準溶液

IF イソフォルスコリン標準溶液

USP USP Powdered Forskohlii Extract RS 溶液

T1 試験溶液 1

T2 試験溶液 2

T3 試験溶液 3

F IF USP

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標準溶液及び陽性対照とした USP Powdered Forskohlii Extract RS 溶液の

TLC クロマトグラム(例)

標準溶液及び試験溶液の TLC クロマトグラム(例)

F IF T1 T2 T3

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○HPLC 分析法(定量分析)

1. 分析対象化合物

フォルスコリン(Forskolin)(管理成分)

C22H34O7=410.51 CAS: 66575-29-9

2. 適用食品

コレウス・フォルスコリーを含有する食品

3. 装置

紫外分光光度型検出器付き高速液体クロマトグラフ(HPLC-UV)

4.試薬・試液

次に示すもの以外は、第1章総則の3に示すものを用いる。

フォルスコリン標準品(CAS: 66575-29-9) 本品はフォルスコリン 95%以上

を含む。

5. 試験溶液の調製

試料の粉末約 0.1 g(試料量は適宜調整する。)を精密に量り、メタノール 5

mL を加えて 10 分間振り混ぜた後、遠心分離し、上澄液を分取する。残留物にメ

タノール 3 mL を加えて振り混ぜた後、遠心分離し、上澄液を分取する。全上澄

液を合わせ、メタノールを加えて正確に 10mL とし、試験溶液とする。

試験溶液調製は各試料について 3 回ずつ、分析は各試験溶液について 3 回ず

つ行う。

6. 標準溶液の作成

標準溶液:フォルスコリン標準品をメタノールに溶解し、4 mg/mL の標準原液

を調製する。これを段階希釈した溶液を数点調製し、標準溶液とする。

7. 分析条件

カラム:オクタデシルシリル化シリカゲル 内径 4.6 mm、長さ 150 mm、粒

子径 5 μm

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カラム温度:30 ºC

移動相:水及びアセトニトリルの混液(55:45)で 25 分間維持し、(55:

45)から(0:100)までの濃度勾配を 0.01 分間で行い、(0:100)で 5

分間維持する。その後、(0:100)から(55:45)までの濃度勾配を

0.01 分間で行い、(55:45)で 10 分間維持する。

流速:1.0 mL/min

測定波長:210 nm

注入量:10 μL

保持時間の目安:フォルスコリン約 16 分

定量限界:1.28 μg/mL、検出限界:0.42 μg/mL

8. 定量分析

含量計算:標準溶液及び試験溶液を上記(7. 分析条件)条件で分析し、標準

溶液のフォルスコリンのピーク面積と濃度から検量線を作成し、

作成した検量線から試験溶液中のフォルスコリン濃度 (mg/mL)

を求め、試料中のフォルスコリン含有量 (mg/g あるいは mg/1 日摂

取目安量) を算出する。

(計算式)

・試料中のフォルスコリン含有量 (mg/g)

= 試験溶液中のフォルスコリン濃度 (mg/mL) × 定容量 (mL) ÷ 試料採

取量 (g)

・試料中のフォルスコリン含有量 (mg/day)

= 試験溶液中のフォルスコリン含有量 (mg/g) × 1 日摂取目安量当たり

の重さ* (mg)

* 実測値を使用

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標準溶液、試験溶液及び陽性対照とした USP Powdered Forskohlii Extract RS

の HPLC クロマトグラム(例)

*イソフォルスコリンは参考のために示した。

標準溶液

試験溶液(例)

フォルスコリン

(イソフォルスコリン)

フォルスコリン

(イソフォルスコリン)

USP RS 溶液 フォルスコリン (イソフォルスコリン)

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2.ドオウレン試験法

○:HPTLC 分析法(定性分析)

1. 分析対象化合物

コプチシン(Coptisine)(管理成分)

C19H14NO4 = 320.27 CAS: 3486-66-6

サンギナリン(Sanguinarine)

C20H14NO4 = 332.28 CAS: 2447-54-3

2. 適用食品

ドオウレンを含有する食品

3.装置

高性能薄層クロマトグラフ(HPTLC)

4. 試薬・試液 次に示すもの以外は、第1章総則の3に示すものを用いる。

コプチシン塩化物標準品(CAS:6020-18-4)本品はコプチシン塩化物 95%以上

を含む。

塩化サンギナリン標準品(CAS:5578-73-4)本品は塩化サンギナリン水和物

95%以上を含む。

5. 試験溶液の調製

試料 100 mg (試料量は適宜調整する。)を精密に量り、0.1 vol% ギ酸含有メ

タノール 5 mL を加え、室温で 10 分間、超音波処理する。ろ紙(No. 2, ひだ折)

でろ過し、ろ液を回収する。残渣に 0.1 vol% ギ酸含有メタノール 5 mL を加え、

室温で 10 分間、超音波処理する。ろ紙(No. 2, ひだ折)でろ過し、ろ液を 1回

目抽出液と合わせた後、0.1 vol% ギ酸含有メタノールで 10 mL に定容したもの

を試験溶液とする。別にコプチシン塩化物 1 mg と塩化サンギナリン水和物 1 mg

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をそれぞれメタノール 1 mL に溶かし、標準溶液とする。これらの液につき、薄

層クロマトグラフィーにより試験を行う。

6. 分析条件

試験溶液 5 μL(スポット量は適宜調整する。)及び標準溶液 5 μL を高性能

薄層クロマトグラフィー用シリカゲルを用いて調製した薄層板にスポットする。

次にメタノール/水/ギ酸混液(90:9:1)を展開溶媒として約 7 cm 展開した後、

薄層板を風乾する。これに紫外線 365 nm を照射するとき、試験溶液から Rf 値

0.3~0.8 に複数のスポットを認め、このうち 1 個のスポットは、コプチシン標

準溶液から得たスポットと色調及び Rf 値が等しく、別の 1 個のスポットは、サ

ンギナリン標準溶液から得たスポットと色調及び Rf 値が等しい。

プレート:HPTLC Silica gel プレート、層厚 150 - 200 μm 10×20 cm

C コプチシン標準溶液

S サンギナリン標準溶液

T1 試験溶液(植物抽出液)1

T2 試験溶液(植物抽出液)2

T3 試験溶液(植物抽出液)3

T4 試験溶液(植物抽出液)4

P1 試験溶液(製品)4

〇参考資料

欧州薬局方(EP)/ GREATER CELANDINE / Chelidonii harba

日本薬局方 / 生薬等 / オウバク、 オウレン

標準溶液及び試験溶液の TLC クロマトグラム

(例).P1 はチンキ剤の 100 倍希釈液.

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○HPLC 分析法(定量分析)

1. 分析対象化合物

コプチシン(Coptisine)(管理成分)

C19H14NO4=320.27 CAS: 3486-66-6

2. 適用

ドオウレンを含有する食品

3. 装置

紫外分光光度型検出器付き高速液体クロマトグラフ(HPLC-UV)

4. 試薬、試液

次に示すもの以外は、第1総則の3に示すものを用いる。

コプチシン塩化物標準品(CAS:6020-18-4) 本品はコプチシン塩化物 95%以

上を含む。

50 mM ギ酸アンモニウム緩衝液 (pH 4.6) ギ酸アンモニウム 3.15 g を水 600

mL に溶かし、ギ酸を加えて pH 4.6 に調整した後、水を加えて 1000 mL と

する。

5. 試験溶液の調製

試料の粉末約 1 g (試料量は適宜調整する。)を精密に量り、0.1 vol% ギ酸含

有メタノール 50 mL を加え、室温で 10 分間、超音波処理する。ろ紙(No. 2, ひ

だ折)でろ過し、ろ液を回収する。残渣に 0.1 vol% ギ酸含有メタノール 50 mL

を加え、室温で 10 分間、超音波処理する。ろ紙(No. 2, ひだ折)でろ過し、ろ

液を 1回目抽出液と合わせた後、0.1 vol% ギ酸含有メタノールで 100 mL に定

容したものを試験溶液とする。

試験溶液調製は各試料について 3 回ずつ、分析は各試験溶液について 3 回ず

つ行う。

6. 標準溶液の作成

コプチシンとして 1 mg/mL のメタノール溶液を調製し、100 μg/mL の標準

原液を調製する。これを段階希釈で 50、25、10、1 μg/mL の標準液を調製する。

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7. 分析条件

装置:液体クロマトグラフ(HPLC-UV)

カラム:オクタデシルシリル化シリカゲル 内径 4.6 mm、長さ 150 mm、粒子

径 3 μm

カラム温度:30 ºC

移動相 50 mM ギ酸アンモニウム緩衝液 (pH 4.6)及びアセトニトリルの混液

(80:20)から(60:40)までの濃度勾配を 20 分間で行い、(60:40)から

(5:95)までの濃度勾配を5分間で行い、(5:95)で5分間維持する。

その後、(5:95)から(80:20)までの濃度勾配を5分間で行い、(80:20)

で5分間保持する。

流速:1.0 mL/min

測定波長:290 nm

注入量:5 μL

保持時間の目安:コプチシン約 10 分

定量限界:コプチシン 4.27 μg/mL

8. 定量分析

含量計算:標準溶液及び試験溶液n試験を行い、標準溶液のコプチシンのピー

ク面積と濃度から検量線を作成し、作成した検量線から試験溶液

中のコプチシン濃度 (mg/mL) を求め、試料中の含有量 (mg/g ある

いは mg/1 日摂取目安量) を算出する。

(計算式)

・試料中のコプチシン含有量 (mg/g)

= 試験溶液中のコプチシン濃度 (mg/mL) × 定容量 (mL) ÷ 試料採取量

(g)

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標準溶液及び試験溶液(国産植物からの抽出液)の HPLC クロマトグラム

(例)

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3.プエラリア・ミリフィカ試験法

○LC-MS/MS 分析法(定性分析)、HPLC-DAD 分析法(定性分析、定量分析)

1. 分析対象化合物

ミロエストロール(Miroestrol)(管理成分)

C20H22O6 =358.39 CAS: 2618-41-9

※デオキシミロエストロール(Deoxymiroestrol)は、微量かつ不安定なため

ミロエストロールのみを管理成分とした。

クワクリン(Kwakhurin)(定性における確認指標成分及び定量における基準物

質)

C21H20O6 = 368.39 CAS: 111922-23-7

2. 適用食品

プエラリア・ミリフィカを含有する食品

3. 装置

超高速液体クロマトグラフ・フォトダイオードアレイ検出器・質量分析計

(UHPLC-DAD-MS)

4. 試薬・試液

次に示すもの以外は、第1章総則の3に示すものを用いる。

クワクリン標準品(qNMR により値付けされた純度 (%) が表示されているも

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の)

※ミロエストロール標準品の入手は困難であるため、クワクリン標準品より

調製した外部標準溶液を用いて定性及び定量する(7.定性分析及び 8.定

量分析を参照)。

5. 試験溶液の調製

試料約 0.4 g(試料量は適宜調整する。)を精密に量り[WT]、遠心沈殿管に入

れ、80 vol%メタノール溶液約 2 mL を加えて 15 分間超音波処理した後、遠心分

離し、上澄液を合わせて正確に 2 mL [VT] とし、試験溶液とする。

試験溶液調製は各試料について 3 回ずつ行い、分析は各試験溶液について 3

回ずつ行う。

6. 標準溶液の作成

標準溶液:クワクリン標準品をメタノールに溶解し、1 mg/mL の標準原液を調

製する。これを希釈し、5 µg/mL の濃度 [ConcS] の標準溶液を作成する。

7.分析条件

LC 条件

カラム: UHPLC 用オクタデシルシリル化シリカゲル 内径 2.1 mm、長さ 100

mm、粒子径 1.8μm

カラム温度:55℃

移動相: 0.1 vol% ギ酸溶液及び 0.1 vol%ギ酸アセトニトリル溶液の混液

(85:15)を8分保持し、(85:15)から(73:27)までの濃度勾配を2分

間で行い、(73:27)で8分間維持する。その後、(73:27)から(2:98)

までの濃度勾配を 0.5 分間で行い、(2:98)で 1.5 分間維持する。その後、

(2:98)から(73:27)までの濃度勾配を 0.5 分間で行い、(73:27)で

4.5 分間維持する。

流量:毎分 0.3mL

測定波長: 285 nm(定量)

注入量:1 µL

保持時間の目安:ミロエストロール約 7分、クワクリン約 16 分

分析時間:25 分

MS 条件(定性)

MS Mode: ESI Negative

Capillary: 2.50 kV

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Cone: 40 V

Source Temperature: 150℃

Desolvation Temperature: 550℃

Cone Gas Flow: 50 L/Hr

Desolvation Gas Flow: 1000 L/Hr

測定イオン ミロエストロール m/z 357、クワクリン m/z 367

8. 定性分析

クワクリンの標準溶液及び試験溶液を上記(6. 分析条件)条件で分析し、試

料中のミロエストロール(m/z 357 [M-H]-)及びクワクリン(m/z 367 [M-H]-)

の検出を確認する。

クワクリンは標準溶液との直接比較により、標準溶液と同じ保持時間と同じ

m/z を有するピークを確認する。ミロエストロールは、クワクリンの保持時間を

1 とした時の相対保持時間(0.43)付近に、分析用標品ミロエストロールと同じ

UV 及び MS スペクトル(λmax = 215、285 nm、m/z 357)を有するピークの検出

を確認する。クワクリンが検出されない場合、クワクリン標準溶液のピークの保

持時間から、ミロエストロールのピークを確認する。

なお、本法の分析条件はアイソクラテック溶出ではなくステップワイズ溶出

であるため、保持時間は機器ごとに確認することが望ましい。

A

Time5.00 10.00 15.00

0.0

2.0e-3

4.0e-3

6.0e-3

8.0e-3

1.0e-2

285Range: 1.247e-2

16.03

6.86

クワクリン

ミロエストロール

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B C

D E

図 1. 標準溶液の UHPLC クロマトグラム(UV 285 nm)(A) 、クワクリン (B、

D) 及びミロエストロール(C、E) の UV 及び MS スペクトル

分析例)

機器:Acquity UPLC-I-CLASS – Xevo TQD (Waters)(高圧混合システム)

カラム:Acquity UPLC HSS C18 column (100 x 2.1 mm, 1.8μm)

9. 定量分析

標準溶液及び試験溶液を用い、試験溶液中のミロエストロール及び標準溶液

中のクワクリンのピーク面積 AT及び ASを測定することで、後述の参考)で示す

考え方に基づき求めた RMS 値(0.2553)を用いて試料中のミロエストロール含量

を算出する。

(計算式)

ミロエストロール含量 = × × × 100 × 1 ×

ただし、m, 分子量; ConcS, クワクリン標準溶液濃度 (mg/mL); PKWA, クワク

リン標準品の純度 (%); VT, プエラリア試験溶液量 (mL); WT, プエラリア試料

の秤取量 (mg)

nm200 225 250 275 300 325 350 375 400

0.0

2.0e-2

4.0e-2

6.0e-2

8.0e-2

9.591e-2218

290

nm200 225 250 275 300 325 350 375 400

0.0

5.0e-3

1.0e-2

1.5e-2

2.0e-2

2.5e-22.609e-2190

215

284

m/z200 400 600 800 1000

%

0

100 7.85e6367

366234131

367

368

368435

368525435 615 953794657 848

m/z200 400 600 800 1000

%

0

100 3.50e6357

339192110

208

357

358

950552

403457502

880796703657553 963

[M-H]- [M-H]-

クワクリン ミロエストロール

クワクリン ミロエストロール

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参考) ミロエストロールのクワクリンに対する RMS 算出について

RMS の算出の考え方については、以下の文献を参考とした。

1) Nishizaki Y. et al., “Determination of Hesperidin and

Monoglucosylhesperidin Contents in Processed Foods Using Relative

Molar Sensitivity Based on 1H-Quantitative NMR,” Shokuhin Eiseigaku

Zasshi (J. Food Hyg. Soc. Japan), 59, 1-10 (2018). (in Japanese)

2) Masumoto N. et al., “Determination of perillaldehyde in perilla herbs

using relative molar sensitivity to single-reference diphenyl

sulfone,” J. Nat. Med., 73, 566-576 (2019)

●ミロエストロールのクワクリンに対する RMS の算出(概略)

a) 物質量比の算出(qNMR による)

定量シグナル:ミロエストロール(MIR) 6.25ppm、1H(H-2)

クワクリン(KWA) 7.56ppm、1H(H-2)

*化学シフトは 1,4-BTMSB-d4を 0 ppm としたときの値.

1. クワクリン由来シグナルを 1.00 としたときのミロエストロール由来シグ

ナルの積分値の平均(3回測定分/1 調製)を求める。

2. クワクリンとミロエストロールの積分値を水素数で除して、クワクリンに

対するミロエストロールの物質量比 Rnを算出する。

= ⁄ = ÷ ⁄⁄

ただし、n, 物質量(mol); S, シグナル面積; H, S に由来するプロトン数

b) 応答比の算出(HPLC による.6)分析条件参照)

1. 検出波長 285 nm におけるクワクリンとミロエストロールの混合標準溶液

(各 3 µg/mL) におけるそれぞれの面積値の平均(3回測定分/1 調製)を求

める。

2. クワクリンの面積値をミロエストロールの面積値で除して、応答比 Rrを算

出する。

= ⁄

ただし、A, ピーク面積

c) RMS の算出

a)、b) で算出した物質量比及び応答比から、以下の式で RMS を算出する。

RMS = ⁄

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4.ブラックコホシュ試験法

○:HPTLC 分析法(定性分析)

1. 分析対象化合物

アクテイン(Actein)(管理成分)

C37H56O11 = 676.83 CAS: 18642-44-9

イソフェルラ酸(Isoferulic acid)

C10H10O4 = 194.18 CAS: 573-73-5

2. 適用

ブラックコホシュを含有する食品

3. 装置

高性能薄層クロマトグラフ(HPTLC)

4.試薬・試液

次に示すもの以外は、第1章総則の3に示すものを用いる。

アクテイン標準品(CAS: 18642-44-9) 本品はアクテイン 95%以上を含む。

イソフェルラ酸標準品(CAS: 573-73-5) 本品はイソフェルラ酸 95%以上を

含む。

5. 試験溶液の調製

試料 100 mg (試料量は適宜調整する。)を精密に量り、0.1 vol% ギ酸含有メ

タノール 5 mL を加え、室温で 10 分間、超音波処理する。ろ紙(No. 2, ひだ折)

でろ過し、ろ液を回収する。残渣に 0.1 vol% ギ酸含有メタノール 5 mL を加え、

室温で 10 分間、超音波処理する。ろ紙(No. 2, ひだ折)でろ過し、ろ液を 1回

目抽出液と合わせた後、0.1 vol% ギ酸含有メタノールで 10 mL に定容したもの

を試験溶液とする。別にアクテイン 1 mg をアセトニトリル 1 mL に、またイソ

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フェルラ酸 1 mg をメタノール 1 mL に溶かし、標準溶液とする。これらの液に

つき、薄層クロマトグラフィーにより試験を行う。

6 分析条件(例)

試験溶液 5 μL(スポット量は適宜調整する。)及び標準溶液 5 μL を、高性

能薄層クロマトグラフィー用シリカゲルを用いて調製した薄層板にスポットす

る。次にトルエン/ギ酸エチル/ギ酸混液(5:3 : 2)を展開溶媒として約 7 cm

展開した後、薄層板を風乾する。これに紫外線 365 nm を照射するとき、試験溶

液から Rf 値 0.5 以下に複数のスポットを認め、このうち 1 個のスポットは、標

準溶液から得たスポットと色調及び Rf 値が等しい。または、希硫酸を噴霧し 100

ºC で 5 分間以上加熱するとき、1 個のスポットはアクテイン標準溶液から得た

スポットと色調及び Rf 値が等しい。

プレート:HPTLC Silica gel プレート、層厚 150 - 200 μm 10×20 cm

I イソフェルラ酸標準溶液

A アクテイン標準溶液

T1 試験溶液(植物抽出液)1

T2 試験溶液(植物抽出液)2

T3 試験溶液(植物抽出液)3

T4 試験溶液(植物抽出液)4

〇参考資料

欧州薬局方(EP)/BLACK COHOSH / Cimicifugae rhizoma

米国薬局方(USP)/ Dietary Sapplement / Black Cohosh

標準溶液及び試験溶液の TLC

クロマトグラム(例)

左: UV365 nm 照射、右:希硫酸噴霧

後加熱

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○LC-MS/MS 分析法(定性分析及び定量分析)

1. 分析対象化合物

アクテイン(Actein)(管理成分)

C37H56O11 = 676.83 CAS: 18642-44-9

2. 適用

ブラックコホシュを含有する食品

3. 装置

液体クロマトグラフ・タンデム型質量分析計(LC-MS/MS)

4. 試薬

次に示すもの以外は、第 1章総則の3に示すものを用いる。

アクテイン標準品(CAS: 18642-44-9) 本品はアクテイン 95%以上を含む。

5. 試験溶液の調製法

試料の粉末約 1 g (試料量は適宜調整する。)を精密に量り取り、0.1 vol% ギ

酸含有メタノール 50 mL を加え、室温で 10 分間、超音波処理する。ろ紙(No.

2, ひだ折)でろ過し、ろ液を回収する。残渣に 0.1 vol% ギ酸含有メタノール

50 mL を加え、室温で 10 分間、超音波処理する。ろ紙(No. 2, ひだ折)でろ過

し、ろ液を 1回目抽出液と合わせた後、0.1 vol% ギ酸含有メタノールで 100 mL

に定容したものを試験溶液とする。

試験溶液調製は各試料について 3 回ずつ、分析は各試験溶液について 3 回ず

つ行う。

6. 標準溶液の作成

アクテインの 1 mg/mL アセトニトリル溶液を調製し、100 μg/mL の混合標準

原液を調製する。これを段階希釈で 10、5、1 μg/mL の標準液を調製する。

7. 分析条件(例)

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LC 条件

カラム:オクタデシルシリル化シリカゲル 内径 4.6 mm、長さ 150 mm、粒

子径 3 μm

カラム温度:40 ºC

移動相 0.1 vol% ギ酸水溶液及び 0.1 vol% ギ酸含有メタノール・アセト

ニトリル混液(1 : 1)の混液(50:50)から(5:95)までの濃度勾配

を 20 分間で行い、(5:95)で5分間維持する。その後、(5:95)から

(50:50)までの濃度勾配を5分間で行い、(50:50)で5分間維持する。

流速:0.5 mL/min

注入量:10 μL

MS 条件

測定モード: MRM モード

イオン化モード:ESI (+)

キャピラリ電圧(kV):1.0

ソース温度(℃):150、 脱溶媒温度(℃):650

コーンガス:窒素、50 L/hr、脱溶媒ガス:窒素、1200 L/hr

コリジョンガス:アルゴン

MS/MS 定量イオン:プリカーサーイオン 677.48、プロダクトイオン 467.33

保持時間の目安:アクテイン約 14 分及び約 14.5 分*

*: アクテインは2本のピークとして検出される。面積値はピーク 2本の値

の合算。

アクテインの定量限界: 3.77 μg/mL、検出限界:1.13 μg/mL

8 定性分析

アクテインの標準溶液及び試験溶液を上記(7. 分析条件)条件で分析し、標

準溶液との直接比較により、アクテインの検出を確認する。

9. 定量分析

含量計算:標準溶液及び試験溶液を上記(7. 分析条件)条件で分析し、標準

溶液のアクテインのピーク面積と濃度からそれぞれの検量線を作

成し、作成した検量線から試験溶液中のアクテイン濃度 (mg/mL)

を求め、試料中の含有量 (mg/g あるいは mg/1 日摂取目安量) を

算出する。

(計算式)

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・試料中のアクテイン含有量 (mg/g)

= 試験溶液中のアクテイン濃度 (mg/mL) × 定容量 (mL) ÷ 試料採取量

(g)

・試料中のアクテイン含有量 (mg/day)

= 試験溶液中のアクテイン含有量 (mg/g) × 1 日摂取目安量当たりの重

さ* (mg)

* 実測値を使用

標準溶液及び試験溶液(例)の LC-MS/MS クロマトグラム(例)