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蹴上発電所の歩み 水力発電事業発祥の地 2018.3 ބهٶӺԂӺਫ࿏

蹴上発電所の歩み - 関西電力...蹴上発電所の歩み 水力発電事業発祥の地 2018.3 琵琶湖疏水記念館 神宮丸太町駅 祇園四条駅 水路閣京都の誇りである琵琶湖疏水は、明治23年(1890)に5年の歳

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蹴 上 発 電 所 の 歩 み水力発電事業発祥の地

2018.3

琵琶湖疏水記念館

神宮丸太町駅

祇園四条駅

水路閣

 京都の誇りである琵琶湖疏水は、明治23年(1890)に5年の歳月をかけて完成しました。この琵琶湖疏水は、滋賀県大津市の琵琶湖取水地点から、京都市伏見区で一級河川濠川となる地点までの約20kmを流れています。疏水は、運河としても利用された「第1疏水」、第1疏水とほぼ同じ取水地点から全線トンネルを流れ、蹴上付近で合流する「第2疏水」及び、蹴上付近から分岐して北白川に至る「疏水分線」からなっています。 明治2年(1869)、東京遷都が行われ千年間続いた都の座を譲ることになりました。以来、市民は意気消沈、景気は衰退とまさしく町中の灯が消えたような状態であったと言われています。 このような状況の中、明治14年(1881)第3代京都府知事北垣国道は、京都の復興と近代化推進のための大きな柱として琵琶湖疏水工事を計画しました。 明治18年(1885)疏水工事は着工されましたが、この工事を担当したのが、工部大学校を卒業したばかりの青年技師田邊朔郎でした。田辺朔郎は工部大学校土木科在学中に、学術調査のため京都へ出張を命ぜられた時、たまたま京都で疏水事業が計画されていることを知り、独自の立場から現地調査を行い、これを主題とした卒業論文「琵琶湖疏水計画」をまとめました。このことが北垣知事に認められ、直ちに京都に呼び寄せられ、世紀の一大工事をまかされることになりました。

琵琶湖疏水

蹴上発電所と疏水系発電所の沿革

蹴上発電所からの電力供給区域は、発電所から20町(約2km)以内に限定されていましたが、発送電設備の増設により、順次拡大されていきました。京都電気鉄道は、蹴上発電所から受電して、明治28年(1895)1月、日本で初めて塩小路(京都駅)から伏見油掛間6.4kmの市街電気鉄道を開通させることになりました。

北垣知事 田邊博士

幹線水路の3ヶ所のトンネルのうち、長等山トンネルは、延長2,440mと当時の国内では最長のもので、その掘削精度は、中心線、高低ともに数cm単位でそのころから始められた三角測量の精度が伺われるものでした。工事は、すべて人力によるものでしたが、一部竪抗の巻き上げ工事に蒸気機関が使用された記録も残っています。工事用資材のうち、煉瓦は宇治郡御陵村(現山科区御陵原西町)に工場を設けたほか、セメントもイギリスからの輸入のほかに山口県小野田工場から搬入するなど国内の技術も活用されています。こうして、第1疏水は明治23年(1890)3月に完成しました。

 蹴上発電所のもつ意義のうち、最も大きなものは、日本で最初の一般供給用水力発電所であることです。 明治11年(1878)、東京の工部大学校(現東京大学)で初めてアーク灯がともって以来、政府の殖産興業政策に呼応するように、自家発電による電気の使用が始まりました。 明治25年(1892)1月、一般供給用として事業認可を受けたことは、発電コストの低減をもたらすとともに、以降長く続く電源の水主火従時代に先鞭をつけたという2つの重要な意味合いを持っています。

蹴上発電所は、琵琶湖疏水で得られる水力の有効活用の目的で建設され、明治24年(1891)年5月に発電機2台で運転を開始しました。以来、100年以上たった今なお現役の発電所として京都の街に電気を送り続けています。

第 1 期 蹴上発電所

第 2 疏水取入口

送水鉄管取付工事(第 2 期工事)

夷川発電所 建物

水路閣

(現 

墨染発電所)

(現 

墨染発電所)

建設工事着手

明治23年(

1890)1月

明治24年(

1891)5月

一部完成(ペルトン水車2台・発電機2台、出力160

kW)

明治25年(

1892)1月

事業認可

明治30年(

1897)5月

第1期工事竣工(ペルトン水車20台・発電機19台、出力

1760

kW)

明治43年(

1910)3月

第2期工事着手

明治45年(

1912)5月

第2期工事竣工(横軸フランシス水車5台・発電機5台、出力

4800

kW)

明治45年(

1912)5月

伏見発電所着工

明治45年(

1912)11月

夷川発電所着工

大正3年(

1914)4月

夷川発電所竣工(横軸フランシス水車1台・三相交流発電機1台、出力280 kW)

大正3年(

1914)5月

伏見発電所竣工(縦軸フランシス水車1台・三相交流発電機1台、出力

1320

kW)

昭和7年(

1932)6月

第3期工事着手

昭和11年(

1936)1月

第3期工事竣工(縦軸フランシス水車2台・三相交流発電機2台、出力

5700

kW)

蹴上発電所の歩み 蹴上発電所の歩み

◆ 第 1 期 蹴上発電所

 蹴上発電所は明治23年(1890年)1月に着工され、明治24年(1891)5月に運転を開始しました。その後、順次発電設備が増強され、明治30年(1897)5月に第1期工事が完成しました。明治24年5月の運転開始時は120馬力のペルトン水車2基と80kWの直流発電機2基でしたが、第1期工事完成時には20基の水車と19基の発電機が据え付けられ、出力は1,760kWとなりました。

当時の運転状況 発電所内には鉄管を2条設け、水車と発電機は長大なベルトで連結されていました。発電機は直流式と交流式が混在しているほか、電圧、周波数も個 に々相違していたことから、各発電機からの電力をそれぞれの独立した送電線で送電していました。しかも、発電機器の発電力に適応するよう、負荷を絶えず調整しなければならない状況でした。

◆ 第 2 期 蹴上発電所

 第2代京都市長西郷菊次郎は、京都の三大事業を計画し、その中核に第2疏水建設を据えることとしました。この第2疏水は、第1疏水とは別に新水路をつくり、両疏水を合流させ発電用として使用するもので、明治41年(1908)10月に着工、明治45年(1912)3月に完成しました。

第 2 疏水開発 明治28年(1895)の平安建都1100年の記念大会、第4回国内勧業博覧会を開催する頃には、著しい電力需要の増加により、従来の第1疏水だけでは対処できなくなってきました。

 横軸フランシス水車(5台)の発電効率向上、出力向上(1,760kWから4,800kWへ)と、各所に変電所が設置されたことにより、供給エリアが拡大されました。

第2期当時の発電設備発電機 5台(内1台は予備機)

〈型 式〉交流三相回転界磁型 〈出 力〉1,200kVA 〈電 圧〉6,600V 〈周波数〉60Hz 〈回転数〉450rpm 〈製造社〉米国ゼネラルエレクトリック社

水 車 5台(内1台は予備機)

〈型 式〉横軸フランシス水車 〈馬 力〉1,700HP 〈回転数〉450rpm

第1期

蹴上発電所

第2期

蹴上発電所

当時の蹴上インクライン 第 1 期 蹴上発電所建物

ベルトン水車配置図

初期の送電線

初期の発電設備配置図

インクラインドラム工場内部

ペルトン水車(疏水記念館)

初期の発電所内部

西郷市長

第 2 期 建物の正面に掲げられた

『功天亮』(てんこうをたすく)の文字は、

今上(平成)天皇の祖父である

久邇宮邦彦殿下の筆によるもの。

「水力エネルギーという自然の恵みを、

人々の暮らしに生かすことこそ、

天の意志に叶うものである。」

(当社の思い)

第2期 蹴上発電所の内部

蹴上放水路

第2期 蹴上発電所建物

蹴上発電所の歩み

◆ 第 3 期 蹴上発電所

 明治45年(1912)5月に第2期蹴上発電所が竣工したのち、電気の利用が年々増加の途をたどる一方で、産業界でのエネルギー需要も電気に頼る状態となり、まさに電気万能の時代へと移行していきました。 京都市においても、安価な水力発電による電力増大の必要性を痛感し、昭和7年(1932)より工事に着手、3年半の工事期間を費やし、発電所及び連携の変電所、送電線路を建設し、昭和11年(1936)1月に竣工しました。(現在の蹴上発電所)

 建設当時と比較すると、水道の使用量が年々増加し、昭和54年(1979)4月には、出力を5,700kWから4,500kWに変更しています。平成18年(2006)6月からは京都給電制御所より遠隔

操作を行い、現在も発電を続けています。

第3期

蹴上発電所

水車発電機取水口

発電設備発電機

2 台

〈型 式〉交流三相回転界磁型

〈出 力〉7,500kVA

〈電 圧〉6,600V

〈周波数〉60Hz

〈回転数〉257rpm

〈製造社〉日立製作所

水 車

2 台

〈型 式〉縦軸フランシス水車

〈馬 力〉10,500HP

〈回転数〉257rpm

〈製造社〉日立製作所

※2005年(H17)より1号機運転休止中

第 3 期(現)蹴上発電所

工事着手 昭和 7 年6月工事竣工 昭和11年1月使用水量 20.87m3 有効落差 33.485m出  力 5,700kW

水車発電機と発電所建物の断面図