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釧路水坑だよ り 84 (2002. 1) 道東産乾 ( プラ ザ 釧路水試加工部 数値の バラツ 平均値を比較する ミン 酸の 量が多い 傾 ) 0 こ れらの 結果か ら、品質の (= 級が高い もの )はマ ンニ ト ル 含量が く、 グル タミン 酸につ いても多く含む傾 とい えます。 近年、 道東産ナガコ ン プは、 輸出不振や の伸び悩みにより生産者価格が低迷しており 品質の 高い 製品づくりが求められています。 ここでは乾燥ナガコ ン プの 晶質( 等級) と化学 成分や色調の 関係につ いて調査を行っ た結果 を紹介します。 コンプの晶賞と化学成分 図1に乾燥ナガコ ン プの 成分( 無水物換算 値) 分析例を示しました。 この 図からナガコ ン プには炭水化物と灰分が圧倒的多く、この 二つ を足すと全体の 九割ぐらいに なるこ とが わかります。 コ ン プの 仲間には炭水化物の 構成成分とし てアル ギン 酸とマ ンニ トール とい う成分が多 く含まれます。アル ギン はコ ン プの 体を支 える役目をしており、 全体に対する割合( 成分 比) は採取時期に限らずほぼ一 定です。 もう一 方のマンニ ト ルは乾燥したコン プの表面に 析出する白粉 主成分で す。マ ンニ ト ルは、 貯蔵性物質であり、 採取時期や部位によっ その含量は大きく変動します。 また、 灰分 食品を焼いて灰化したあとの 残量をいい ま す。マ ンニ トール と灰分の間には'マンニ ル が多い きには灰分が少なく'マンニ ル が少ない と灰分が多い とい う負の 相関 ります。 この ようにコ ン プの 主要成分の うち' 大きく変動するのはマンニ トールと灰 分で あるこ とから、 こ れらの 成分の 合と晶 質の 関係を調べ '結果を図 2 に示しました。 マンニ トールの 含量は、 浜中および昆布森産 のいずれ 等級が高いほど多い 便向にありま した。灰分はその 逆の 傾向を示しました。貯 蔵性物質であるマ ンニ トール 含量は実入りと 療接な関係があると考え れ、 検査規格によ ると実入りが良いほど等級が高くなることか ら、マンニ トール 含量が多いほど等級が高く なるとい うこ らの 結果は理解できます。 また、コ ン プとい えばうま味成分の グル タ ミン 酸が有名です。この 成分を測定すると、 1 乾燥ナガコンプの成分 (無水物換算) ー7-

道東産乾燥ナガコンプの品質実態調査釧路水坑だより 第84号(2002.1) 道東産乾燥ナガコンプの品質実態調査 釧路水試加工部(プラザ事業から)

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釧路水坑だより 第84号 (2002.1)

道東産乾燥ナガコンプの品質実態調査

(プラザ事業から)

釧路水試加工部

数値のバラツキはありますが、各等級ごとの

平均値を比較すると'等級が高いほどグルタ

ミン酸の量が多い傾向がみられます

(図2下

段)0こ

れらの結果から、品質の良いもの

(=等

級が高いもの)はマンニトール含量が高く、

グルタミン酸についても多く含む傾向がある

といえます。

近年、道東産ナガコンプは、輸出不振や消費

の伸び悩みにより生産者価格が低迷しており、

品質の高い製品づくりが求められています。

ここでは乾燥ナガコンプの晶質

(等級)と化学

成分や色調の関係について調査を行った結果

を紹介します。

コンプの晶賞と化学成分

図1に乾燥ナガコンプの成分

(無水物換算

値)の分析例を示しました。この図からナガコ

ンプには炭水化物と灰分が圧倒的多く、この

二つを足すと全体の九割ぐらいになることが

わかります。

コンプの仲間には炭水化物の構成成分とし

てアルギン酸とマンニトールという成分が多

く含まれます。アルギン酸はコンプの体を支

える役目をしており、全体に対する割合

(成分

比)は採取時期に限らずほぼ

一定です。もう

方のマンニトールは乾燥したコンプの表面に

析出する白粉

の主成分です。マンニトールは、

貯蔵性物質であり、採取時期や部位によって

その含量は大きく変動します。また、灰分は'

食品を焼いて灰化したあとの残量をいいま

す。

マンニトールと灰分の間には'

マンニ

トールが多いときには灰分が少なく'マンニ

トールが少ないと灰分が多いという負の相関

があります。このようにコンプの主要成分の

うち'大きく変動するのはマンニトールと灰

分であることから、これらの成分の割合と晶

質の関係を調べ'結果を図2に示しました。

マンニトールの含量は、浜中および昆布森産

のいずれも等級が高いほど多い便向にありま

した。灰分はその逆の傾向を示しました。貯

蔵性物質であるマンニトール含量は実入りと

療接な関係があると考えられ、検査規格によ

ると実入りが良いほど等級が高くなることか

ら、マンニトール含量が多いほど等級が高く

なるというこれらの結果は理解できます。

また、コンプといえばうま味成分のグルタ

ミン酸が有名です。この成分を測定すると、

図 1 乾燥ナガコンプの成分(無水物換算)

ー 7 -

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釧路水試だより 第 84号 (2002.1)

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828 3書4讐01書 2書3書4事

1専2尊3専 4尊1事2尊3専 4尊図2 等級と化学成分の関係*拭料はいずれも1998年産、n-10

1等 2等 3等 4等

15

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乾燥ナガコンプの色

ナガコンプの色調もまた晶質を左右する重

要な要素であり、黒色が強いほど良品とされ

ています。この試験では、色調を数値化する

ため、測色色差計という機器を用い、数値を

*L*a*b表色系で表す方法について検討

しました。*L値というのはこの数字が大き

いほど色の明度が高くなることを示し'*a

値は赤色、*b値は黄色の強さをそれぞれ表

し'すべての色を*L値、*a値'*b値の

三つの値で表すことができます。

まず、乾燥したナガコンプを'コンプの色

調のみを基準として1等級から四等級まで等

級付けを行いました。等級付けは北海道水産

物検査協会釧路地区検査事務所の職員の方々

に協力していただきました。この等級別に分

けたコンプの色を測定した結果、図3に示し

たように*L、*

a、*b値のいずれも等級

が高いほど'値が小さくなる候向がみられま

した。先に述べたように'黒色が強いほど良

品とされるので、これらの数値はコンプの黒

色の強さと関係があるものと考えました。以

1等 2等 3等 4等 1等 2等 3等 4等

図3 等級と測色値との関係

書(+)・平均価を検定(危険率5%)した轄果、隣り合う等級Mで有意な差があったもの*1書●n-37、2事:n-56、3等.n=51、4事,n-32

- 8 -

5

0

5

0

3

3

2

2

.」

後の色調調査は、特に統計的にもすべての等

級間で差があらわれた*b値を基準として行

いました。

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釧路水洗だより 第84号 (2002.1)

表 1 乾燥別杖族の乾燥条件

採取日 採取場所 乾燥方法 天候 平均温度(℃)平均湿度(%)乾燥時間(h)

7月下旬 7月22日 浜中アゼチ 天日 晴 40 25 4.5機械 - 43 24 4.3

7月23日 昆布森 天日機械 晴 3837 2936 4.56.5

8月上旬 8月2日 浜中アゼチ 天日 晴のち曇り 36 39 4.346 27 3.8

8月2日 浜中散布 天日 晴のち霧 31 53 4.5機械 - 41 25 3.5

9月上旬 9月3日 浜中アゼチ 天日 晴 34 31 6.040 29 5.0

9月2日 昆布森 天日 晴 29 44 6.0

三兵中Tゼチ

JE布JB

0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0

0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.00 3

TL

2 0

21_0 l_5

b●■【

i兵中Tゼチ

■布

浜 中 Tゼナ

JLホJB

50.00.

図4 乾燥方法による色調の違い(+):天日と機械乾燥で有意差のあるもの

燦ではこの光沢が不足し

ている傾向がありまし

た。

コンプ表面の光沢は

黒色の強さとともにコン

プの品質にとって重要で

す。ツヤの程度は現段階

では数値で表すことがで

きないため、色の基準を

すべて*b値などの値で

判断することは困難と考

えられます。

まず'天日と機械乾燥による乾燥品の色の

違いを調査しました。

一般的には機械乾燥の

方がより黒っぼく仕上がるといわれています。

この調査は

1九九九年七月から九月にかけて、

浜中町アゼチ岬前浜、同町散布前浜および釧

路町昆布森前浜で採取したナガコンプについ

て、延べ六回行いました。乾燥条件を表1に

示し、*b値の平均値を比較した結果を図4

に示しました。この図から、天日乾燥と機械

乾燥の*b値の平均値を比べると'いずれも

機械乾燥の方が数値が低く'平均値の検定を

行うと'七月の浜中アゼチと八月の散布を除

くすべてが統計的に差があることを示しまし

た。これは前述の機械乾燥が黒く仕上がると

いうことが数値上でも証明されたことを示し

ています。ただし、ここで注意が必要なのは'

コンプ表面の光沢

(ツヤ)、の違いです。現場

で干し上がったコンプの表面を観察すると、

明らかに天日乾燥の方にツヤがあり、機械乾

おわりに

以上の結果から、乾燥

ナガコンプの成分や色調

の数値と晶質

(等級)との間には

1定の関係

があることが明らかとなりました。今後、こ

こで得られた知見を'道東産ナガコンプの品

質向上の一助となるように活用していただき

たいと思います。

最後に本試験に当たって'協力を頂きまし

た関係漁協の皆様と各地区の漁業士の皆様'

さらに、北海道水産物検査協会釧路地区検査

事務所の皆様にこの番を借りてお礼申し上げ

ます。また、本報告は釧路東部および西部地

区水産技術普及指導所

(現釧路地区水産技術

普及指尊所)と共同で行ったプラザ事業の結

果をまとめたものです。

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