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多層基板の耐 CAF(Conductive Anodic Filament)性評価
エスペック技術情報 No.45 1
小林 晶子、青木 雄一、戸井 恵子 技術開発本部 信頼性研究室
電子部品の高密度配線が進むにつれて、イオンマイグレーション現象による絶縁劣化が重要な問題
となってきている。イオンマイグレーションの一種であるデンドライトの発生機構は数多くの研究
がなされているが、CAF(Conductive Anodic Filament)の発生機構については十分な解明がなされ
ていない。そこで、多層基板の耐 CAF 性評価を行い、CAF 発生時の絶縁抵抗値の挙動と CAF 発生形
態との関係を調査した。その結果、CAF 発生時の絶縁抵抗値は、瞬時に低下と復帰を繰り返すこと
がわかった。また、絶縁劣化推定箇所に CAF と考えられる物質が観察され、ガラス繊維に沿って成
長していることを確認した。
携帯電話などの電子機器の内部には、数多くの電子部品を実装したプリント配線板が組み込まれ
ている。プリント配線板には、通常、銅のパターンが張り巡らされており、銅のラインや基板を貫
通するスルーホールが存在する。これらのラインやスルーホールは隣接するライン・スルーホール
とは常に絶縁が保たれていなくてはならない(図 1)。
絶縁劣化の要因であるイオンマイグレーションは、電極の金属が絶縁物上あるいは中を移動し、
電極間を短絡させる現象である。代表的な現象としてデンドライトと CAF がある(図 2)。
図 1 プリント配線板拡大写真 図 2 イオンマイグレーション発生箇所
技術レポート
多層基板の耐CAF(Conductive Anodic Filament)性評価
1. はじめに
多層基板の耐 CAF(Conductive Anodic Filament)性評価
エスペック技術情報 No.45 2
これまでプリント配線板材料の改良などにより、イオンマイグレーションを防いでいたが、近年、
高密度配線が進み、イオンマイグレーション現象による絶縁劣化がさらに重要な問題となってきて
いる。また、多層基板や部品内蔵基板が使用されるようになり、基板内部で発生する CAF が重要で
ある。
CAF はプリント配線板の絶縁基板内部のガラス繊維などに沿って析出する金属あるいは酸化物が、
陽極金属から繊維状に伸びる形態を示す 1)。
近年、耐 CAF 性評価の規格化の動きが進み、2003 年に IPC(Association Connecting Electronics
Industries:アメリカ電子回路協会)は CAF Resistance Test の規格を発行した。また、日本国内で
も表 1の X~Z社の事例のような試験が実施されており、国際規格化への提案の動きも起こりつつあ
る。
以上のような背景から、耐 CAF 性評価の必要性がより高まってきている。
これまでの研究から、CAF は樹脂/ガラス繊維の界面の劣化と、電気化学的要因により発生し、樹
脂/ガラス繊維の界面に沿って陽極から陰極へ成長すると言われている 2)。しかし、基板内部で発生
するため、CAF の発生・成長機構はいまだ十分に解明されていない。そこで、本研究では、多層基板
の高温高湿試験、高度加速寿命試験(HAST)を実施し、スルーホール間の絶縁抵抗値の挙動と CAF 発
生形態との関係を調査した。
表 1 耐 CAF 性評価(スルーホール間の絶縁信頼性評価を含む)の試験事例
試験事例 温度
(℃)
湿度
(%)
試験電圧
(V)
測定電圧
(V)
試験時間
(h)
IPC-TM-650
2.6.25
65±2
or
85±2
87 +3 -2 100 100
500,1000
X社 85 85 100 * 500,1500
85 85 50 * 1000 Y社
110 85 50 * 300
85 85 50 * 1000,2000
120 85 24 * 300 Z社
60 90 30 * 1250
3)、4)
5)
6)
7)、8)
9)
9)
*記載なし
多層基板の耐 CAF(Conductive Anodic Filament)性評価
エスペック技術情報 No.45 3
本研究では試験後の絶縁劣化箇所を特定しやすいと考えられる基板を作製し、温湿度、基板材料、
スルーホール壁間および径を変えて信頼性試験を行い、絶縁劣化と CAF 発生との関係を調べた。試
験中は絶縁抵抗値を連続的にモニタして、その挙動を調べた。試験後、絶縁劣化推定箇所を研磨し、
各種顕微鏡で観察した。
写真 1に試験装置を示す。試験装置は小型環境試験器、高度加速寿命試験装置と併行して、イオ
ンマイグレーション評価システムを使用した。温湿度は 85℃85%、110℃85%、120℃85%の 3条件
とし、印加電圧は試験電圧、測定電圧ともに 50V とした。
また、試験中はリーク電流を連続的に監視し、基準設定値以上のリーク電流を検出すると印加電
圧を停止するリークタッチ検出機能および、リーク電流検出後に挙動確認し、設定回数以上の検出
後に印加電圧を停止するリークタッチ挙動確認機能を用いた。リーク電流の基準設定値は 1μA(抵
抗は 5×107Ω)とし、1分おきに 5回連続、またはリーク電流が復帰し、5回目にリークタッチ挙動
確認サイクルに入ったときの、いずれか早い方を故障時間とした。
小型環境試験器 高度加速寿命試験装置 イオンマイグレーション評価システム
写真 1 試験装置
2. 試験方法
多層基板の耐 CAF(Conductive Anodic Filament)性評価
エスペック技術情報 No.45 4
図 3 に試験に用いた基板の表面パターンの概略図と外観写真を示す。基板の種類は FR-4 の 8 層と
し、A、B(ハロゲンフリー材)、C(海外製)、Dの基板を用いた。基板にはスルーホール壁間/スルー
ホール径(図 4参照)がそれぞれ 0.3/0.2、0.4/0.2、0.5/0.2、0.3/0.6、0.3/1.0(単位:mm 以
下同様)のスルーホールを各 10 対設けた。10対は銅パターンでつながっており、試験中は 10 対同
時に電圧を印加し、試験後は銅パターンを切り離すことで、各対の抵抗値を個々に測定できる構造
とした。この方法により、各対の抵抗値を測定し、絶縁劣化箇所の特定を行った。
図 3 表面パターンの概略図と外観写真 図 4 基板断面図
3. 試験サンプル
多層基板の耐 CAF(Conductive Anodic Filament)性評価
エスペック技術情報 No.45 5
図 5 に 110℃85%で試験実施時の基板 C(海外製)の絶縁抵抗値挙動を時間に対して示す。スルーホ
ール壁間/スルーホール径は 0.3/0.2 を用いた。絶縁抵抗値の挙動を確認するため、リーク電流の基
準設定値は 50μA(抵抗は 1×106Ω)とし、故障に至っても試験を継続し、約 45 時間で試験を終了
した。図 5より、CAF 発生時の絶縁抵抗値は、瞬時に低下と復帰を繰り返すことがわかった。
図 5 絶縁抵抗値の挙動
(110℃85% 基板 C(海外製) 0.3/0.2)
図 6 に 85℃85%、110℃85%、120℃85%で 500 時間試験時の温度加速性のワイブルプロットを示
す。基板は C(海外製)、スルーホール壁間/スルーホール径は 0.3/0.2 を用いた。
ワイブルプロットの傾きが 120℃85%の条件だけ他の条件と異なることから、120℃85%の試験は
故障モードが他の温湿度条件と異なり、今回の試料では 120℃85%の試験は過酷すぎる可能性がある
と考えられる。
図 6 温度加速性のワイブルプロット
(500 時間 基板 C(海外製) 0.3/0.2)
4. 試験結果
4-1 絶縁抵抗値の挙動
4-2 温度加速性の試験結果
多層基板の耐 CAF(Conductive Anodic Filament)性評価
エスペック技術情報 No.45 6
図 7 に 110℃85%、500 時間試験時の各種基板のワイブルプロットを示す。スルーホール壁間/ス
ルーホール径は 0.3/0.2 を用いた。基板 Aについては、ばらつきが大きく、偶発故障や初期故障を
含んでいると考えられるため、解析ソフトを用いた推定ワイブルプロット(実線)に加えて、ばらつ
きの大きなものを除いたワイブルプロットを点線で表示した。
試験結果より、今回の試料では、基板 C(海外製)は基板 A・Bに比べて故障に至るまでの時間が短
いことがわかった。
基板 B(ハロゲンフリー材)は、サンプル数 9個中、試験時間 500 時間以内に故障したのは 3個であ
り、故障に至るまでの時間が長いことがわかった。
また、図 8にこれらの基板の 110℃85%での吸湿特性を示す。吸湿率と故障時間に相関は見られず、
吸湿特性だけで耐 CAF 性を判断し難い場合があることがわかった。内層に残ったフラックス、ドリ
ル加工によるスルーホール壁へのダメージ、樹脂/ガラス繊維の界面の密着性などが影響していると
考えられる。
図 7 各種基板のワイブルプロット
(110℃85%、500 時間 0.3/0.2)
図 8 吸湿特性
(110℃85%)
4-3 各種基板の試験結果
CAF(Conductive Anodic Filament)性評価 多層基板の耐
図 9、図 10に 85℃85%、3000 時間試験時の各スルーホール壁間および径のワイブルプロットを示
す。基板は C(海外製)を用いた。図中のηは尺度パラメータ(h)である。 スルーホール壁間 0.3~0.5mm の範囲では、スルーホール壁間が小さい方が故障に至るまでの時間
は短かった。
また、スルーホール径 0.2~1.0mm の範囲でも、スルーホール径が小さい方が故障に至るまでの時
間が短い傾向にあった。可能性として、加工に用いたドリルや電極間の電界分布の違いが影響して
いると考えられるが、データにばらつきがあるため今後も実験を続ける予定である。
図 9 各スルーホール壁間の
ワイブルプロット
(85℃85%、3000 時間 基板 C(海外製))
図 10 各スルーホール径の
ワイブルプロット
(85℃85%、3000 時間 基板 C(海外製))
4-4 各スルーホール壁間と径の結果
5. 観察結果
図 11 に基板 C(海外製)、Sample1 の 110℃85%で試験時の絶縁抵抗値変化を示す。スルーホール壁
間/スルーホール径は 0.4/0.2 を用いた。試験開始後約 90 時間で絶縁抵抗値が 5×105Ω以下となり
(図中×部)、試験が終了した。試験後、この基板の絶縁劣化箇所を断面観察した。
5-1 観察結果 1
図 11 絶縁抵抗値変化(Sample1)
(110℃85% 基板 C(海外製) 0.4/0.2)
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多層基板の耐 CAF(Conductive Anodic Filament)性評価
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写真 2、写真 3に初期および試験後の実体顕微鏡写真を示す。初期でスルーホールの壁が平らで
ないのは、ドリル加工でついた傷に、Cuめっきが入り込んだ痕跡と考えられる。試験後の実体顕微
鏡観察より、樹脂中にガラス繊維に沿った CAF と考えられる物質を観察した。さらに詳しく分析す
るために、金属顕微鏡観察と EPMA (Electron Probe Micro-Analyzer) による Cu のマッピング分析
を行った。
写真 2 初期 実体顕微鏡写真
写真 3 試験後 実体顕微鏡写真
(Sample1)
写真 4、写真 5に金属顕微鏡写真および Cu マッピング像を示す。金属顕微鏡観察から、この物質
が 金属であると推測された。また、Cuマッピング像からこの物質の主成分が Cu であることがわか
った。
写真 4 金属顕微鏡写真
(Sample1)
写真 5 EPMA Cu マッピング像
(Sample1)
多層基板の耐 CAF(Conductive Anodic Filament)性評価
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次に、基板 C(海外製)の別の Sample2、Sample3、Sample4 を、同じ 110℃85%の試験条件で試験時
の、絶縁抵抗値変化と試験後の絶縁劣化箇所の観察結果を示す。
図 12~14 に、Sample2~4 の絶縁抵抗値変化を示す。図中の×はリークタッチが発生し、抵抗値が
5×107Ω以下であることを示す。(ただし図 14 はリーク電流の基準設定値を 50μAに設定したため、
抵抗値が 1×106Ω以下であることを示す。)
また、図 13のように抵抗値が低下と復帰を繰り返すのは、細い CAF の一部分が切れたり繋がった
りすることで起こる現象と考えられる。
図 12 絶縁抵抗値変化(Sample2)
(110℃85% 基板 C(海外製) 0.5/0.2)
リーク電流設定値は 1μA(抵抗は 5×107Ω)
図 13 絶縁抵抗値変化(Sample3)
(110℃85% 基板 C(海外製) 0.4/0.2)
リーク電流設定値は 1μA(抵抗は 5×107Ω)
図 14 絶縁抵抗値変化(Sample4)
(110℃85% 基板 C(海外製) 0.3/0.2)
リーク電流設定値は 50μA(抵抗は 1×106Ω)
5-2 観察結果 2
多層基板の耐 CAF(Conductive Anodic Filament)性評価
エスペック技術情報 No.45 10
また、写真 6~9に Sample1~4の試験後の絶縁劣化箇所の実体顕微鏡写真を示す。Sample1 および
Sample2 は 5×105Ω以下で試験終了した試料である。また、Sample3 は 7.21×108Ωで試験終了した
試料であり、Sample4 は 5.11×109Ωで試験終了した試料である。
写真 6~9より、5×105Ω以下まで絶縁劣化した試料の方が、7.21×108Ωや 5.11×109Ωまで絶縁
劣化した試料よりも、CAF の直径が太く見えることがわかった。今回の実験では、CAF は陽極と陰極
をまたいだ後は、密度を増して絶縁劣化に至る可能性があると考えられる。
写真 6 絶縁劣化箇所(5×105Ω以下)
(Sample1)
写真 7 絶縁劣化箇所(5×105Ω以下)
(Sample2)
写真 8 絶縁劣化箇所(7.21×108Ω)
(Sample3)
写真 9 絶縁劣化箇所(5.11×109Ω)
(Sample4)
多層基板の耐 CAF(Conductive Anodic Filament)性評価
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図 15 に基板 D、Sample5 の 110℃85%で試験時の絶縁抵抗値変化を示す。スルーホール壁間/スル
ーホール径は 0.3/0.2 を用いた。試験後、この基板の絶縁劣化推定箇所を断面観察した。写真 10、
11 に初期および試験後の実体顕微鏡写真を示す。
観察の結果、この試料の絶縁劣化要因はガラス繊維に沿った CAF ではなく、コア材*とプリプレグ**
間に発生したイオンマイグレーションであると考えられる。
図 15 絶縁抵抗値変化(Sample5)
(110℃85% 基板 D 0.3/0.2)
写真 10 初期 実体顕微鏡写真
写真 11 試験後 実体顕微鏡写真
(Sample5)
*コア材:多層プリント配線板の内層の積層板。
**プリプレグ:コア材を接着し多層化する接着シート。
5-3 観察結果 3
多層基板の耐 CAF(Conductive Anodic Filament)性評価
エスペック技術情報 No.45 12
次に、基板 C(海外製)の Sample6 および Sample7 を 110℃85%で試験し、絶縁劣化する前に試験終
了し、良品解析した場合にも CAF が観察された例を示す。図 16 に Sample6 の絶縁抵抗値変化、写真
12,13 に試験後の実体顕微鏡写真および金属顕微鏡写真を示す。また、図 17 に Sample7 の絶縁抵抗
値変化、写真 14,15 に試験後の実体顕微鏡写真および金属顕微鏡写真を示す。
図 16,17、写真 12~15 より、Sample6 も Sample7 も絶縁抵抗値に大きな変化はないが、試験後の
観察結果よりガラス繊維に沿った CAF が観察された。Sample7 の観察結果より、CAF は陽極からも陰
極からも成長しているように見えるが、そのメカニズムは不明である。
図 16 絶縁抵抗値変化(Sample6)
(110℃85% 基板 C(海外製) 0.3/0.2)
写真 12 試験後 実体顕微鏡写真
(Sample6)
写真 13 試験後 金属顕微鏡写真
(Sample6)
5-4 観察結果 4
多層基板の耐 CAF(Conductive Anodic Filament)性評価
エスペック技術情報 No.45 13
図 17 絶縁抵抗値変化(Sample7)
(110℃85% 基板 C(海外製) 0.3/0.2)
写真 14 試験後 実体顕微鏡写真
(Sample7)
写真 15 試験後 金属顕微鏡写真
(Sample7)
多層基板の耐 CAF(Conductive Anodic Filament)性評価
エスペック技術情報 No.45 14
ここまで基板を断面方向に切断した観察結果を示したが、次に基板を平面方向に切断した観察結
果を示す。
図 18 に基板 D、Sample8 の 120℃85%で試験時の絶縁抵抗値変化を示す。スルーホール壁間/スル
ーホール径は 0.3/0.2 を用いた。また、写真 16 に初期の実体顕微鏡写真、写真 17,18 に絶縁劣化箇
所の試験後の実体顕微鏡写真および金属顕微鏡写真を示す。
金属顕微鏡観察時に、CAF が陽極から陰極へ、斜め奥に伸びていることを確認した。これは、CAF
がガラス繊維に沿って存在するためと考えられる。このように、基板平面方向に切断し、観察する
ことも可能な場合もあるが、各層ごとに徐々に研磨し観察しなければならないため、断面方向に切
断して観察するよりも難しく、時間を要した。
図 18 絶縁抵抗値変化(Sample8)
(120℃85% 基板 D 0.3/0.2)
写真 16 初期 実体顕微鏡写真
写真 17 試験後 実体顕微鏡写真
(Sample8)
写真 18 試験後 金属顕微鏡写真
(Sample8)
5-5 観察結果 5
多層基板の耐 CAF(Conductive Anodic Filament)性評価
エスペック技術情報 No.45 15
高温高湿試験、高度加速寿命試験(HAST)を実施し、多層基板の耐 CAF 性評価を行った。
今回の実験では、以下のことがわかった。
・CAF 発生時の絶縁抵抗値は、瞬時に低下と復帰を繰り返す挙動を示す。
・基板 C(海外製)は基板 A・Bに比べて故障に至るまでの時間が短いが、今回の吸湿試験では吸湿
量が特に多くないため、吸湿特性だけで耐 CAF 性を判断し難い場合がある。
・今回使用した基板 C(海外製)では、120℃85%の試験は故障モードが他の温湿度条件と異なり、
過酷すぎる可能性がある。
・絶縁劣化推定箇所に、ガラス繊維に沿った CAF やコア材とプリプレグ間に発生したと考えられ
るイオンマイグレーションを観察することができた。また、絶縁劣化していない試料にも CAF
が発生していることを確認した。
本研究では、CAF は陽極からも陰極からも成長しているように観察されたが、その成長過程やメカ
ニズムについて今後さらに研究を進める予定である。また CAF の発生・成長に、多層基板の加工条
件やプレコンディショニングがどの程度影響を与えるのかも調査する必要がある。
今回の評価はあくまでも相対的評価であり、市場故障との相関性などについても今後の課題であ
る。今後、他の温湿度条件の信頼性試験も実施し、温湿度加速性について研究を進める予定である。
〔参考文献〕
1)電子機器の絶縁信頼性に関する諸問題調査専門委員会:「電気学会技術報告 第 915 号」、
電気学会、P.4、(2003)
2)Laura J. Turbini, Ph.D.:「Conductive Anodic Filament (CAF) Formation:An Historic
Perspective」, ECWC10 Conference、(2005)
3)石上富美男、酒井広志、中村幸雄:「高多層用 Tg FR-4 材料」、日立化成テクニカルレポート、
No.39、P.25-28、(2002)
4)宮武正人、村井 曜、福田富男、島岡伸治:「環境対応高耐熱基板材料 MCL-E-679FG」、
日立化成テクニカルレポート、No.45、P.31-35、(2005)
5)中村善彦、浅野卓也、伊藤直樹:「ハロゲンフリーで高耐熱の多層プリント配線板材料」、
松下電工技報、No.75、P.14-18、(2001)
6)古森清孝、渡辺達也、松下幸生:「低誘電率多層板材料「MEGTRON5」」、松下電工技報、Vol.52、
No.1、P.23-27、(2004)
7)上野智也:「ハロゲンフリー高弾性高耐熱銅張積層板 CS-3666S」、利昌テクニカルレポート、
No.82、(2004)
8)片山統夫:「高弾性率基板とその応用」、利昌テクニカルレポート、No.76、(2001)
9)西口賢治:「ハロゲンフリー高弾性材料の信頼性評価」、利昌テクニカルレポート、No.80、(2003)
6. まとめ
7. 今後の課題
公益信託 エスペック地球環境研究・技術基金 - 平成 18 年度 助成対象者募集 -
エスペック技術情報 No.45 16
公益信託 エスペック地球環境研究・技術基金
-平成18年度応募要項(概要)-
1. 目的
この公益信託は、地球環境保全に関する科学的、技術的な知見を高める各種活動のための費用
の一部または全部を助成することにより、地球環境問題の克服に寄与することを目的としてい
ます。
2. 助成対象者
地球環境問題の解決に資する調査研究、観測監視または技術開発をしようとする大学、大学院
および工業高等専門学校並びにそれらに付属する研究機関の構成員またはそのグループを対
象とします。
3. 助成金額
平成 18 年度の助成総額は、650 万円程度で、10~12 件の助成となります。
4. 応募方法
所定の申請書をみずほ信託銀行株式会社(下記)からお取り寄せください。申請書に必要事項
をご記入のうえ、みずほ信託銀行株式会社宛お送りください。
5. 応募期間
平成 18 年 4月 1日~同年 5月 30 日(必着)
6. 申請書取り寄せ先、問い合わせ先
〒530-0057 大阪市北区曽根崎 2丁目 11 番 16 号 みずほ信託銀行株式会社大阪支店
法人営業部 公益信託エスペック地球環境研究・技術基金宛
TEL:06-6313-4713 FAX:06-6313-4724
大槻 浩 環境管理部 EM 推進グループ
当基金は平成10年3月に設立し今年で8年目を迎えました。当初は3,000万円でスタートし、年間で3~4
件のテーマに助成するという規模でしたが、平成14年度と平成17年度に総額4,000万円を増額して基金
総額7,000万円と大きくすることができました。
平成17年度の13件を含め、これまで51件のテーマに対して助成できましたことは、微力ながら地球環境
保全のお役に立っていると自負しております。
平成18年度も下記の要領で、助成対象者を募集いたします。多数の方のご応募をお待ちしております。
★応募要項の詳細は、弊社ホームページ(http://www.espec.co.jp/corporate/environment/kenkyu/kenkyu.html)でご覧になれます。
トピックス
公益信託 エスペック地球環境研究・技術基金
- 平成18年度 助成対象者募集 -