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哺乳類の精子形成 精子分化の進行はランダムに行われるのではなく、脊椎動物では、異なるステージの間で厳密な時間的・空間的関係が存在する。
精原細胞は、繰り返し体細胞分裂により増殖を繰り返す。不完全な細胞質分裂により形成される細胞間橋(cytoplasmic bridge)によりお互いが
つながれており、クローンを形成する。その後の分化の過程においても細胞間橋は保持される。
ラット精巣
rete testis 精巣網
tunica albuginea 白膜
epididymis 精巣上体
ductuli efferentes精巣輸出管
tubulus rectus直細管
seminiferous tuble精細管
interstitial tissue間質
哺乳類の精細管断面
哺乳類では、精細管はセルトリ細胞からなる管状の構造物で、セルトリ細胞同士の間に密着結合(tight junction) が存在し、内側(adluminal compartment)と外側(basal compartment)を隔てる血液・精巣関門(blood-testes barrier)を形成している。この関門によって精細管の内側は血液やリンパ液などの循環系から隔離されている。精原細胞や前細糸期、細糸期の精母細胞は関門の外側にいるが、分化するにつれて内側に入り込む。即ち、減数分裂が開始されるまでは関門の外側にいる。関門の完成はラットでは生後16 ~ 19日、ヒトでは4 ~5歳。
哺乳類の精細管断面(セルトリ細胞を省く)
精原細胞や前細糸期、細糸期の精母細胞は関門の外側にいるが、分化するにつれて内側に入り込む。即ち、減数分裂が開始されるまでは関門の外側にいる。
分化の進行を2つの座標軸で考える。精細管の長軸方向をX 軸、精細管の断面において基底膜から中心に向かう方向を Y 軸とする。
生殖細胞は分化するにつれて、一つのセルトリ細胞に接着しつつ、Y軸のプラス方向(精細管断面の中心)に移動する。この過程が連続的に起こるため、ある時刻に見るといくつかのステージが同時に一つのセルトリ細胞に密着して存在する。
ラットの精子形成サイクルY軸方向のいくつ
かの異なるステージの細胞の組み合わせを1セットとすると、ラットでは形態学的に14のセットが存在し、14の異なるセットを経て元の組み合わせに戻るまでを精細管サイクル(seminiferuscycle) と呼び、約
12日半を要する。A1型精原細胞か
ら成熟精子が分化するまでに約4サイクルを要するので、合計48日を要することになる。
マウス精子形成周期のステージとウェーブ
哺乳類の精子形成サイクル
分化の進行を2つの座両軸で考える。精細管の長軸方向をX 軸、精細管の
断面において基底膜から中心に向かう方向を Y 軸とする。
生殖細胞は分化するにつれて、一つのセルトリ細胞に接着しつつ、Y軸の
プラス方向(精細管断面の中心)に移動する。この過程が連続的に起こるため、ある時刻に見るといくつかのステージが同時に一つのセルトリ細胞に密着して存在する。X軸方向には、Y軸方向の異なる分化
ステージごとに連続的な分化ステージが存在する。
連続したステージが波のように配列しているので、精細管上皮波(wave of seminiferous epithelium)と呼ばれて
いる。この波はある1点での時間変化と同じで、精巣網で始まり、末梢方向へ進む。
Y軸方向のいくつかの異なるステージの細胞の組み
合わせを1セットとすると、ラットでは形態学的に14のセットが存在し、14の異なるセットを経て元の組み合わせに戻るまでを精細管サイクル(seminiferus cycle)と呼び、約12日半を要する。A1型精原細胞か
ら成熟精子が分化するまでに約4サイクルを要するので、合計48日を要することになる。
培養系での精子形成(1)
精子形成の研究は主として形態学的方向から行われてきた。しかし、精子形成の機構に関しては推測による部分が多い。その理由の一つは精巣から各精子形成段階の精子を得ることが難しいことによる。そこで、精巣の器官培養、細胞培養の技術の確立が求められてきている。
イモリ、カエルなどの両生類では細胞培養が可能となりつつある。
培養系での精子形成 (2)
イモリ・カエル等の両生類での細胞培養の進展は、鞭毛成長過程などの精子変態の分子レベル研究が可能となりつつあると同時に、精子形成における濾胞刺激ホルモン、黄体形成ホルモンや雄性ホルモンの役割についての解明にも、培養系での精子形成の技術は有効であり、その進展が期待される。
精子変態(精子形態形成,精子完成)(spermiogenesis)
精子の核は雄性前核となって雌性前核と融合して受精卵に雄の遺伝情報を伝達する。この受精を完成するため、通常は球形の細胞である精細胞は、いろいろな形をした精子へと分化してゆく。この過程をこのように呼ぶ。
精子は頭部、中片、尾部からなる。頭部には父系の遺伝子を含む核と、卵と特異的な結合をする役割の先体がある。中片は中心体と運動のためのエネルギー生成器官のミトコンドリアを含む。尾部は、9+2対の微小管からなる鞭毛である。
成熟精子に不要な物質やオルガネラを含む細胞質は、残余小体として放出され、セルトリ細胞に取り込まれる。
精子変態(精子形態形成, 精子完成)(spermiogenesis)
成熟精子に不要な物質やオルガネラを含む細胞質は、残余小体として放出され、セルトリ細胞に取り込まれる。
哺乳類の精巣の位置 (1)
タイプ 1
長鼻類 (ゾウ)ハイラックス海牛類 (ジュゴン)ハネジネズミキンモグラミミズクイ単孔類 (ハリモグラ、 カモノハシ)
腎臓の後方の背側体腔壁
タイプ 2
アルマジロ
マッコウクジラ
コメテンレック
背側体腔壁近傍にあるが膀胱の近くまで移動
哺乳類の精巣の位置 (2)
タイプ 3
サイ
コウモリ
ハリネズミ
センザンコウ
ツチブタ
アザラシ
バク
腹側体腔壁まで移動
タイプ 4
トガリネズミ
モグラ
尾の基部近くの精巣挙筋の袋の中に移動 ただし、外部からは膨らみが見えない
哺乳類の精巣の位置 (3)
タイプ 5
齧歯類 (ネズミ)
兎類 (ウサギ)
食肉類 (イヌ、 ネコ )
馬類 (ウマ)
ブタ、イノシシ、カバ
オットセイ、アシカ
『陰嚢』内へ移動
タイプ 6
反芻類 (ウシ、ヤギ)
霊長類 (サル、ヒト)
有袋類 (カンガルー、コアラ )
陰嚢内へ移動
イヌの精巣下降(1)
(a) 21日齢 PGC(GE)が生
殖隆起に到達 。
(b)23日齢 後腎(metanephro
成体の腎臓)原基(Mb)が造腎索(nc)の後端に発達。後腎輸管(md)により総排泄腔(cl)につながる。
(c) 25日齢 中腎(meson)が最
大のサイズとなり、精巣(G)がはっきりとした膨らみとなる。導帯(gubernaculum 胎生期精巣を発達中の陰嚢と結びつける間質性の組織柱)(Gub)が発達しはじめ後腎が頭方向へ移動始める。
(d) 28日齢 精巣(G)後腎(Metan)
が発達を続け、中腎(meson)が退化し始める。
(e) 33日齢 中腎は退化し続け、後腎と精巣は発達し続ける。導体(gub)の付着点が鼠径部に達する。
イヌの精巣下降(2)
(a) 36日齢
鼠径管(inguinal canal)(Ic)が
導帯(gub)末端に形成される。
中腎(meson)は更に退化し、精
巣(T)は尾部方向に移動始める
(b) 出生
鼠径管(Ic)は更に発達 し、そ
の末端には導帯を伴っている。
精巣は後腎から離れ、鼠径管
の口の方へ移動している。
(c) 出生後26日齢
精巣は鼠径管(Ic)内へ入り込
み、ほとんど最終到達点に達
している。