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≪スタートアップカフェ大阪 ご利用≫ 飛田 恭兵様 インタビュー2019年2月1日収録) (株式会社NEXERA 代表取締役社長) ―まず、スタートアップカフェ大阪を知られたきっかけ を教えてください。 こちらがオープンする前に起業支援を行う施設がで きると聞いていました。というのも、最初はこの施設を 運営する関西大学出身のメンバーと僕の二人で事 業を立ち上げたので。 スタートアップカフェがオープンした日に「じゃあ行こう ぜ」と。 ―飛田さんは企業勤務を経て、今の事業をおこされ たのですか? もともと、大学卒業後すぐに財務戦略系のコンサ ルティングの会社に所属していました。 元々独立したい気持ちがありそういう業界に入った のですが、そこで経営のことを学んで、色々な企業を 見ていく中でそろそろ自分でやりたいと改めて思った のが2年前(2016年)です。 ―ちょうど関西大学梅田キャンパスが開設され、「ス タートアップカフェ大阪」がオープンした時期と同じ頃 ですね。 そうです。ちょうどタイミングが被って(笑)。 ―スタートアップカフェ大阪を訪れ、支援内容を知っ てどう思われましたか? 正直に言いますと、相談する前の段階では起業や 創業支援をされているところは関西圏でも沢山ある ので、その1つぐらいにしか思ってなかったです。 実際に行ってみると最初に対応してくださったコー ディネーターの方の雰囲気がとても良く、考えている事 業について話すと、とても興味を持って親身になって 聞いてくれるのでありがたいなと思いました。よし、もう 1回来てみよう…というところから始まり、改めて他の 支援施設にも一通り行ってみた結果、一番空気感 が合ったなというのがありました。 ―「雰囲気がいいこと」が他の支援施設よりもこちら を選ばれた一番強い要因だったのでしょうか。 そうですね。自分にとっては人(コーディネーター)が 一番良かった、というのがあって。 また、当時やろうとしていた事業がウェブ系のサービ スだったので、「ウェブ?なんなのそれ?」みたいな対 応をされる施設が他にはありました。「何それ?」って いうところから入ってっていう、下情報がない段階で 支援なんて期待できないじゃないですか。 新しいスタートアップ界隈とか、時代の最先端の分 野に明るい人たちがここに多かったので、最新の情報、 東京の方で今話題になっている話でも通じました。 コーディネーター含めて相談しに来る人も最新の動向 1

飛田 恭兵様 インタビュー - Kansai Uしておくことが重要だと思いました。 ―誰のために何を作っているかをみんな分かっていた 方が良い、ということですね。

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Page 1: 飛田 恭兵様 インタビュー - Kansai Uしておくことが重要だと思いました。 ―誰のために何を作っているかをみんな分かっていた 方が良い、ということですね。

≪スタートアップカフェ大阪 ご利用≫

飛田 恭兵様 インタビュー(2019年2月1日収録)

(株式会社NEXERA 代表取締役社長)

―まず、スタートアップカフェ大阪を知られたきっかけを教えてください。

こちらがオープンする前に起業支援を行う施設ができると聞いていました。というのも、最初はこの施設を運営する関西大学出身のメンバーと僕の二人で事業を立ち上げたので。 スタートアップカフェがオープンした日に「じゃあ行こう

ぜ」と。

―飛田さんは企業勤務を経て、今の事業をおこされたのですか?

もともと、大学卒業後すぐに財務戦略系のコンサルティングの会社に所属していました。 元々独立したい気持ちがありそういう業界に入った

のですが、そこで経営のことを学んで、色々な企業を見ていく中で”そろそろ自分でやりたい”と改めて思ったのが2年前(2016年)です。

―ちょうど関西大学梅田キャンパスが開設され、「スタートアップカフェ大阪」がオープンした時期と同じ頃ですね。

そうです。ちょうどタイミングが被って(笑)。

―スタートアップカフェ大阪を訪れ、支援内容を知ってどう思われましたか?

正直に言いますと、相談する前の段階では起業や創業支援をされているところは関西圏でも沢山あるので、その1つぐらいにしか思ってなかったです。 実際に行ってみると最初に対応してくださったコー

ディネーターの方の雰囲気がとても良く、考えている事業について話すと、とても興味を持って親身になって聞いてくれるのでありがたいなと思いました。よし、もう1回来てみよう…というところから始まり、改めて他の支援施設にも一通り行ってみた結果、一番空気感が合ったなというのがありました。

―「雰囲気がいいこと」が他の支援施設よりもこちらを選ばれた一番強い要因だったのでしょうか。

そうですね。自分にとっては人(コーディネーター)が一番良かった、というのがあって。 また、当時やろうとしていた事業がウェブ系のサービ

スだったので、「ウェブ?なんなのそれ?」みたいな対応をされる施設が他にはありました。「何それ?」っていうところから入って…っていう、下情報がない段階で支援なんて期待できないじゃないですか。

新しいスタートアップ界隈とか、時代の最先端の分野に明るい人たちがここに多かったので、最新の情報、東京の方で今話題になっている話でも通じました。コーディネーター含めて相談しに来る人も最新の動向1

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を把握している方が多かったので、そういう人たちが集まるような設計になっているのか、空間づくり、ブランディングをちゃんとされているんだろうなって思いました。

―他の方との交流はどのように深められましたか?

ここのイベントに参加した時や終了後の交流会、あとスタートアップカフェ主催で定期的に、よく来ている相談者の懇親会を開いてくださっていたので、そこに参加して仲良くなりました。

―スタートアップカフェの利用のメリットの1つに、「アイデアの壁打ちができる」とお答えいただきました。他の起業家ともディスカッションができる、ということですか?

そうですね。コーディネーターも含めて、他の相談者の人とも同じフェーズでぶつかる壁があったりするんです。事業は違えど、ディスカッションしあうことは多かったです。 また困っている内容が自分の事業に近く、先の段

階に進んでいる先輩起業家がいるので、「自分はこうしたよ」というアドバイスもいただくことがありました。 そこの繋がりはかなり大きかったですね。一緒に仕

事することもいくつかありました。

―スタートアップカフェ利用のメリットとして「バックグラウンドの違うコーディネーターがたくさん在籍されている」と、アンケートに答えていただいていました。 例えばどういった方に助けられたのでしょうか?

例えば海外で絵を売って生計を立てていた人で、元々大手企業出身の方がおられました。「こんな仕事つまらん!」とオーストラリアに行って絵を売って旅をしていた経験のあるコーディネーターさんとか。 あとは大手企業や金融機関、外資系のコンサル

ティングなどを転々とされ、いろいろな企業で働いた実績と経験を踏まえて話してくださる方とか。 バッグブランドが全然違うと、やってきた内容が違う

ので、そのタイミングによって話せる人が「この部分はこの人に話そう」と、選べるのは良かったですね。

―ご自身も現在(2019年1月時点)、スタートアップカフェのコーディネーターとして活躍されているそうですね。実際利用される側からコーディネーターになられた経緯は?

事業も軌道に乗ってきて、自分たちのやりたいこともやれるようになってきたタイミングで、スタートアップカフェ自体も新しい取り組みをしようとしていて。それがオウンドメディアの構築という、ウェブサイトを作ってもっと情報を外に発信していこうという取り組みをだったんですが、それをできる人間がいないという状態があったんです。 実際に運用をしていかなきゃいけないって時に、ちょ

うど私がウェブの制作ができて、起業相談も少し前を歩く先輩みたいな立場で相談に乗れるというのもあり、その二つの軸でちょうどお願いできないかってお声かけいただきました。

―自身の事業も進めながらコーディネーターとしても活躍なさっているということで、とても大変そうですね。

そうですね。時間には常に切羽詰まっています(笑)

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―どういった相談が多いですか?自分が通ってきた道と同じような相談が多いのでしょうか?

最初事業を始めるときに一番多い相談は、アイデアをどう事業化させていったらいいのかっていう部分です。

―やはり事業イメージが漠然とした段階から相談に来られるんですね。

それが一番多いんじゃないかなと思います。でも、●●で起業したいんです、という相談も、本当にしたいのはそれなのかな、とひっかかることがあれば議論をすることもあります。 とことん話していくと、違う別の手段でも実現可能

なんじゃないか、という結論が出ることもあります。

―そういった多方面からもアドバイスをされているんですね。

今サラリーマンをしている人が、例えば「こういうビジネスやりたいです」と来られた時に、そのビジネスをやりたい理由は月3万副業で欲しいからなのか、それともそれに乗り換えたいのか。それ一本で生きていきたい

のか、それとも何か自己実現のためなのか、みたいな目的によって絶対違ってくるので。 それによってビジネスにするといってもビジネス化させ

る手段が変わってきます。

―ご自身の事業として「20代で学んでおくべきマーケティングの基礎を体感できる研修用ボードゲーム」として企業導入されているそうですが、元々あったボードゲームを企業に研修ツールとして導入したのですか?

そういうことではなく、ボードゲームを作りました。ゲームのコンポーネントから作り、印刷会社を探して、あと今回のデザインも任天堂に十数年勤められていたデザイン系ではちょっと有名な方に依頼もさせていただきました。 全部自分たちで1からボードゲームを作って…「どう

やって作ったらえぇねん?」からスタートしました。

―マーケティングを学ぶためのボードゲーム自体は既にあると思うのですが、それでは分かりにくさとか伝わりにくさを感じられていたんですか?

マーケティングを学べるという観点では、実はボードゲームは少ないんです。また、本当に企業研修ツールだな、と感じる堅苦しいものが多く、面白さに欠けて没入しにくいイメージがかなりありました。 その中でどちらかというと私たちは20代で学んでお

くべきマーケティングの基礎をテーマにしているのですが、とっつきやすいものが絶対必要だっていう想いがあって。

―なぜ、マーケティングを20代で学んでおくべきだと思われたのですか?

今の時代は物があふれ、作り手も簡単に商品が作れるようになり、買い手としても情報過多です。そこをつなぐのがマーケティングですが、商品をユーザーに届けていくために何が必要かと考えたんです。そこで、マーケティングの担当者だけではなく、その商品に関わる一人一人、例えばエンジニア・デザイナー・営業・事3

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務含めて、基礎的なマーケティングの考え方を知って、どうやって商品がユーザーに届くのかを組織として認識しておくことが重要だと思いました。

―誰のために何を作っているかをみんな分かっていた方が良い、ということですね。

ユーザーに届けなきゃいけない。 知られなかったら「ない」と一緒じゃないですか。ま

ず知ってもらう必要がある。知ってもらってその人に届けるまでのことを考えるのがマーケティングなので。そこは絶対に一つのポジションだけが担うべきものではないと考えています。 このように感じたのも、私が最初に起こした事業を

つぶした経験があるからです。 その時にマーケティングに失敗したという反省もあり

ましたし、大手企業はお金もかけられるしネットワークも強い。そこを考えた時に、ちゃんと自分自身や関わる人たちと「いかに届けるか」について考えていたら、結果は違っていたかなと。

―マーケティングを学ぶためのボードゲーム事業はいつ頃はじめられたのでしょうか?

本格的に動き出したのが2018年の8月です。

―最初の事業をつぶして、もう一度何かやろうとなった時にもスタートアップカフェの方々に相談しながら、という形だった?

その通りです。

やりたいことはいくつかあったのですが、どこに絞るか、マネタイズや事業の展開の仕方も含めて相談をしました。 こんな経緯で相談しながら最終的にこの事業がで

きたことも面白くて。 また、私がビジネスに対する知識が実際の事業に

使えるものとして初めて腹落ちしたのが、他社が開発していたものをプレイした時で、ボードゲームで経営の一連の流れを体感できるのが凄いと思って。 あぁ、ボードゲームってすごくいいなと思ったんですが、

そのゲームではマーケティングが全然学べなかったんです。 ボードゲームでマーケティングが学べたら、と思ってい

るときに、ボードゲームを作れる人とスタートアップカフェで出会ったんですよ。

―すごいですね。交流会で出会われたんですか?

たまたま僕がスタートアップカフェにいる時に相談者としてその人が来られていて、「ボードゲームを作って食ってきたい」って。すごいじゃないですか。僕はそういうボードゲーム作りたいと思っていて、ビジネスモデルもある程度イメージできていました。1時間ほど話して「じゃあ一緒にやろう」ってことになり、そこから一気にブワーッと進んで今に至っています。 今はブランディングのためにいろいろな大企業さんに

売り込んでいますが、とても関心をもっていただけます。

―今後の事業課題について「ネットワーク・チーム・お金」とありましたが、すでに基礎はできあがっておられる印象を受けたのですが。

今の自分のネットワークだけでは、まだまだ足りないなって思っています。 もっと事業を広げていくとなると、やはり大手企業

の方とのつながりも必要ですし、あとはエンドユーザー、プレイヤーの方に直接届ける力が必要だと考えています。 4

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―そのためにスタートアップカフェの利用を継続されているんですか?

スタートアップカフェのコーディネーターに関西大学職員の財前さんという方がいらっしゃるんですが、その方には「面白そうやん」と言っていただいて、「今度こういう人と会うからその話をしとくよ」という風に、様々な方に興味を持っていただくきっかけや、事業紹介の機会をいただきました。

―すごいですね。面白そうやん、でつながっていく。「否定」がないんですね。

どうやったらできるかって観点でみなさん話してくれるのが良い。他の施設だと「いや無理やろ」と言われて相談が終わったこともありました。 「実績あるの?」みたいな。「ないから相談したいの

に」って(笑)。 アイデアを事業化するためには、モチベーションを維

持しなくてはならない大変さがありますが、ここではまず面白がって聞いてもらえますし、利用者同士の横のつながりで困った時に相談しあうことも沢山あります。なんなら起業家同士で「今度こういうところに営業行くんですけど」というような相談を受けたこともあります。

―コーディネーターとして見ておられる中で、起業のアイデアやイメージを持つ人が、実際に行動に踏み出されるきっかけみたいなものを感じられることは?

最初のスタートのきっかけだけ、こちらで作ってあげる。スタートダッシュだけ引っ張ることは多いです。 というのも、これはうちの会社の風土が、専業で働

く人を採用しないっていう方針なんです。 副業…うちはサブでもメインでもどっちでもいいから、

うちと兼業して自分の会社でやりたい事業をやって、という前提で、必要なことは情報共有し方向性とかも認識したうえで互いに自分の役割を果たす、プロジェクトチームみたいな関わり方がいいんじゃないかなと思ったりもします。

僕は仕事で個人こそポートフォリオを組むべきだと思っています。お金を稼ぐ場所、知識を得る場所、自己実現をする場所っていう仕事をちゃんと切り分けて。 縛るからいい人材が離れるんじゃないかなと思って。

―スタートアップカフェは、そういう人たちの集まりなんじゃないかと思います。良いグループですね。

いや本当に僕もそう思います。経営者同士で、「仕事これちょっと納期が短すぎて頼める人がいないからお願いできないですか」という相談が来て、その仕事を受けたりとか。そういう助け合いもできるのって経営者としていいなと思っています。

―本日はありがとうございました。

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