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卒業論文 豊かな「食」とこれからの地球のために 2012 年 1 月 13 日 リベラルアーツ学群 4 年 208d1085 湯本香菜美 指導教員 牧田東一 1

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卒業論文

豊かな「食」とこれからの地球のために

2012 年 1 月 13 日

リベラルアーツ学群 4 年

208d1085 湯本香菜美

指導教員 牧田東一

1

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目次

はじめに………………………………………………………………..3

第1章 「もったいない」精神………………………………………….4

1節 現代のもったいない……………………..…………………4

2節 江戸時代……………………………………………………5

3節 第二次世界大戦前後………………………………………6

4節 高度経済成長期以降………………………………………7

第2章 フードマイレージ……………………………………………8

1節 フードマイレージとは何か……………………………….…8

2節 フードマイレージが大きくなることの問題…………...…..…9

3節 日本の輸入量とフードマイレージ………………………….11

4節 食品ロスと食の安全………………………………………...13

第3章 「食」を通じた取り組み(生活クラブ生協を例に)……...…...15

1節 具体的な活動…………………………………………..…..16

2節 環境への取り組み………………………...…………...…...16

3節 消費者との関わり…………………………….....................17

4節 TPPと自給率………………………………….……………17

おわりに…………………………………………………………………18

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はじめに

[1 日の献立]

朝食:ご飯1杯、ジャガイモ 2 個、ぬか漬け 1 皿

昼食:焼き芋 2 個、ジャガイモ 1 個、りんご 4 分の1

夕食:ご飯 1 杯、焼き魚 1 切れ、焼き芋 1 個[柴田 2009:18‐19]

柴田は、「国産の食料だけでまかなうことのできるメニューは上記のようなものである[柴田 2009:19]」と

述べている。日本に暮らす私たちは、肉料理、魚料理、乳製品、果物など様々な種類の食べ物が簡単に

手に入り、1 日 3 食、食事をすることが当然になっている。海外からの輸入に頼り、豊かな食生活に慣れた

日本人にとって、現在の食生活レベルを変えなければならない状況が生じたら、大混乱に陥るに違いな

い。日本の食料輸入は「安い価格」「高い品質」「大量の供給」という安定した点があった。しかし、世界の

食糧危機が迫っている今、上記のような危機は絵空事ではない[柴田 2009:18-19]。

筆者は、授業で行ったNGO1へのヒアリング(活動内容などのインタビュー)を通して食べ物について興

味を持った。筆者が訪れたNGOは、品質には何も問題がないのにパッケージの印字ミスや、販売するに

は賞味期限が十分ではないために廃棄されるはずだった食べ物を福祉施設や生活困窮者の自立支援

施設に配っているという活動をしている。倉庫を見学させてもらったところ、ダンボールに箱詰めされたト

マトソースやレトルト食品が山積みになっており、本来まだ食べることのできるものがこれほどたくさん廃棄

されてしまっているという事実に驚いた。その際、いくつか資料をいただいたのだが、日本の輸入量の多

さと、輸入に対しての廃棄の量の多さを知った。日本のようにまだ食べることのできる食べ物を捨てている

国がある一方で、十分に食事が採れず飢餓に陥っている国もある。筆者は、この不公平さと「もったいな

い」食べ物があることに対して興味を持ち、もったいないという考え方と私たちの豊かな生活について考え

ることにした。

「飽食の国」と言われる日本では、コンビニエンスストアや飲食店などがあちこちにあり、いつでもどこでも

食べたいときに食べたいものを食べることができる。では、食料自給率から考えたら飽食と言えるのだろう

か[中田 2008:4]。現在の日本の食物自給率はわずか 40%(2009 年度)。他の先進国ではオーストラリア1

73%、アメリカ 124%、ドイツ80%、韓国 44%(2007年度)である[農林水産省HP 2010,10.16]。オーストラ

リアやアメリカは広大な国土を持つ農業国であるため、自国での生産で食料をまかない、さらに余ってい

るということである。そのため 100%を超える数値になっている[柴田 2009:10]。食べ物の半分以上を輸入

に頼っている日本がこのまま飽食の国でいることができるのか疑問である。

1 セカンドハーベストジャパン。フードバンク活動を行っている団体。野宿者への炊き出しや、支援を必要としている福祉施

設や団体に無償で食べ物を提供している。また、団体を通し、個人の家庭にも支援をしている。個人の支援先は難民申請

をしている家庭、母子家庭、生活保護受給の家庭[セカンドハーベストジャパン HP 2010,10.16]。

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日本で 1 年間に消費する 9100 万トンの食料のうち、1900 万トンが捨てられており、そのなかにはまだ食

べることできる食べ物が 500~900 万トンも含まれているといわれている。飢餓人口は 10 億 2000 万人とい

われ、食糧価格の高騰により、2008 年から 2009 年の 1 年間で 6000 万人も増加している。先進国の私た

ちの食生活は、食糧だけでなく生産するための土地や水などの資源も海外に頼り、輸送のために大量の

エネルギーを消費することで成り立っている。先進国に住む私たちの生活を見直さなければ解決できな

いのは、環境問題だけではなく食料問題も同じである[ハンガー・フリー・ワールド HP 2011,12.12]。

本論の中で、第 1 章ではもったいないという考え方について、第 2 章ではフードマイレージ2という考え方

について、第 3 章では、「もったいない」を日本で実践していると考える生活クラブの取り組みについて述

べていきたい。

第1章 「もったいない」精神

第 1 章では日本で生まれた考え方である「もったいない」という言葉が生まれ、日本に根付いた背景を

述べていく。そして、現代どのようなところで「もったいない精神」が残されているのかを考えていく。

1.現代のもったいない

もったいないという言葉が見直されてきた。節電やエコという言葉も2011年 3 月 11 日の東日本大震災

後の原発事故以降さらに浸透したのではないかと考える。

ワンガリ・マータイ3は、環境分野とアフリカの女性で初めてノーベル平和賞を受賞した。彼女が 2005

年に来日した際、3R(Reuse Reduce Recycle)に加え命の大切さ、かけがえのない自然に対しての尊敬

の念(Respect)が含まれている「もったいない」に感銘を受けた。彼女が「もったいない」を世界に広げよう

と提唱し、「MOTTAINAIキャンペーン」として地球環境に負荷をかけないライフスタイルを広め、持続可

能な循環型社会の構築を目指す世界的な活動として展開している[MOTTAINAIキャンペーンHP

2011,12.10]。

「もったいない」と聞き、どのようなことが思い浮かぶだろうか。ものを大切に使うことや環境への配慮で

エコバックを持ち歩くことやリサイクルだろうか。ここではリサイクルについて述べていく。公共のゴミ箱を見

ると、缶・ビン・ペットボトルと分別回収が行われていることがわかる。もちろんリサイクルをすることは省資

源になってよい。しかし、小若は使用済みペットボトルの適正な扱いは焼却炉で燃やし、発電に使うことで

あり、燃やす方が石油の消費量は少なくて済むと述べている。古くなったタオルを雑巾にして使うようなリ

サイクルとは違い、古新聞から再生紙を作るにしても石油、水、化学薬品などが使われ環境汚染の側面も

ある。例えば、「アルミ缶がリサイクルできる」という意識の広がりからアルミ缶の消費量が伸びた。まさに、

2 食料の総輸送量・距離。輸送量×輸送距離で計算される。詳しくは第 2 章で述べる。 3 ケニア出身の環境活動家であり、祖国の貧困と環境破壊を改善するために、「グリーンベルト運動」という植樹活動を行っ

た。

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大量生産、大量消費、大量リサイクルである。日本社会に根付いていた、ビン回収というリサイクルシステ

ムを崩壊させた[小若 2007:45-54]。

近の「リサイクル」という言葉は江戸時代の「リサイクル」とは違う。昔は同じものを長く使ったのである。

ゴミのリサイクルに関して環境政策に積極的な地方の中小都市では 20 以上の分類をし、資源化につ

なげているところもある。事例を挙げると新聞・雑誌・缶・ビン・ペットボトルなどが地域団体や自治体によっ

て回収されている。また、家電リサイクル法対象製品やパソコンが販売店経由で回収され、再利用や回収

されたものは埋め立てや焼却に回されている。しかし、埋め立てそのものが希少な自然資源を劣化させる。

臨海部の干潟に埋立地を計画し問題になった市や、埋め立て処分によって失われる山間の谷地や浅場

の海岸などの自然資源の価値について見直されてきている。廃棄物とその処理によって悪影響を受ける

環境価値を重視すれば、資源循環の強化、分別回収、その前の段階の発生回避は排出側の丁寧な行

動が必要である。また、ゴミとなりにくい製品や資源化しやすい製品の設計を進めようということになる。

OECD 諸国は「持続可能な生産と消費」という概念で政策を提案、実行してきた。その内容は環境負荷

の少ない製品のエコデザイン、プロセス、利害関係者の協働とそれぞれの課題領域をつないで連携する

産業政策からなっている。特に、産業分野では企業活動や社会の経済福祉を大きくしながら環境負荷を

小さくする政策が環境効率性や資源生産性の概念をもとに提案や実行されてきた[盛岡 2008:

149-151]。

筆者が特に「もったいない」を感じているのが食べ物である。しかし、私たちが口にできなかった食べ物

を有効に使うために次のような法律がある。

「食品リサイクル法」である。食品リサイクル法は食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律とさ

れ、食品廃棄物等のリサイクル(発生の抑制、再生利用、減量)についての基本的事項、再生利用促進

策を定めている。食品関連業者による食品循環資源の再生利用を促進するための措置を行い、食品に

係る資源の有効な利用の確保と廃棄物の排出の抑制を図り、食品の製造等の事業の健全な発展の促進

と生活環境の保全や国民経済の健全な発展に寄与することを目的としている[環境省HP 2011,12.12;

末松 2002:13,25]。

背景には廃棄物問題の深刻化が挙げられる。昭和 50 年に 4205 万トンだった一般廃棄物は平成 12

年に 5483 万トンとなり、高水準で推移していたが、平成 21 年は 4625 万トンで、平成 12 年度以降、継

続的に減少している。大量の廃棄物が発生していることで、ゴミ処理の 終処分場の逼迫、ダイオキシン

問題の深刻化、天然資源への影響など多くの問題が発生している。食品産業でも国民への食料の安定

供給に大きな役割を果たしており、環境への負荷の低減、資源の有効活用の確保を担っていく必要があ

る。環境への負荷や食品廃棄物については後ほど述べる。今後、わが国の持続的発展を確保するため

には、天然資源の消費を抑制し、環境への負荷ができる限り低減される循環型社会の構築が必要となっ

てくる[環境省HP 2011,12.12; 末松 2002:3,7]。

2.江戸時代

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もったいないという意味の言葉は日本特有であるようだ。もったいない精神が日本人に根付き強化され、

今の日本人の性格を作り出したのは江戸時代後期であるといえる。江戸時代における農地拡張は、大変

な苦労を伴い、稲作のための工事は参加する人々の命を奪うほどのものであった。苦労をして作った水

路を使い、育てた米を大切にしようと思うことに不思議はない。また、江戸の初期には親、兄弟、下僕、下

女といった大家族から、現代と同じような小家族に移行した。小家族は親、子ども、祖父母という構成され

る家族で、長男だけでなく次男、三男も分家・独立させ、農地を拡大することに力を入れ始めた。今まで

は頑張って働いても得られたものは長男のものまたは、長男の子どものものになってしまうが、分家として

自分の家族を持つことで、より一層勤勉に働くきっかけができた。また、小家族では物を大切に扱い、これ

により財貨を残すことができれば子どもが使うことができると考えられる[川島 2010:29,201,203]。

また、江戸時代には人口が増加したことも大きく関係している。日本人口が世界人口に占める割合は奈

良時代から今日に至るまで世界の2%を占めてきた。しかし江戸時代初期から中期にかけて大きく増加し

ている。 も高い時代は1720年ごろであり、4.8%が日本人であった。人口増加の変遷を見てみると、稲

作伝来以降から日本の人口は増え始めたとされる。その後、江戸時代、明治時代に急増した。江戸時代

は今までの戦国時代が終わり、人心が安定したことが挙げられる。それに加え、領主の領内の開墾政策と

婚姻の変化によって人口増加をもたらしたとされる。開墾政策では各地の領主が先ほど述べた小家族制

に移行させ、領内の開墾をし、農地での耕作によって石高を増やそうとした。婚姻については、今まで結

婚しないことが多かったような次男や三男、下僕や下女として主人に仕えた人々が結婚し、家族を持つよ

うになった[川島 2010:28,54; 統計局 HP 2011,12.12]。

人口増加の日本では、18 世紀初頭には日本の人口が世界の人口に占める割合が 4.8%になった。し

かし、食料の生産に適した土地が世界の 0.33%しかない日本にとっては大きな負担であった。江戸時代

後期は「もったいない」精神が根付き、強化されていった。暖房、煮炊きに使う燃料や衣料品、明かりのた

めの油など、全てが不足気味であった。日本と同じように島国であるイギリスでは人口が多くなり、多くの

人が移民した。移民にとって新大陸は無限の広さを持つ土地であり、いかに資源を大切に使うかと考える

ことはなかった[川島 2010:46-48,204-205]。また、ヨーロッパでは人口密度が高かったため、ものを大切

にする意識が育った。一般にヨーロッパでは丈夫な家や家具を購入し、長い間使っている。祖父や曽祖

父の建てた家に住んでいることも珍しくなく、骨董品も大切にしている。「もったいない」精神は資源を大切

にするというよりは無駄な労働を避けたいという方向で発展したようである。 一方で日本人は資源をリサ

イクルするために労力を惜しまずものを徹底的に大切にしていた。これは良いものを長く使うという精神を

遥かに超えている。これは人口密度の関係で、一層の資源の有効活用が求められてきた結果と考えられ

る[川島 2010:206]。

3.第二次世界大戦前後

1930 年代から約 15 年に及んだ戦争の時代は「もったいない」が特に強調され、日中戦争から太平洋

戦争への規模の拡大によって本格的に物資が不足し始めた。庶民は自発的に行ったが、政府が強力に

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後押ししたことも大きな要因である。昭和 14 年の「贅沢は敵だ」、昭和 18 年の「欲しがりません、勝つまで

は」というスローガンでは、前者は贅沢を戒める内容になっているが、後者は贅沢品以外も欲しがっては

いけないという意味にも受け取ることができ、物資不足が一層深刻になっていることを表している[川島

2010:209,210]。

戦後の日本は食糧難に襲われた。原因は、敗戦の年が大不作であること、植民地を失い朝鮮や台湾

からの米輸入が途絶えてしまったこと、海外に在住していた人々や兵士が帰国したことが挙げられる。こ

のころは食料だけでなく空襲により多くの生産設備も破壊されてしまったため、何もない時代であった。こ

の時代には「もったいない」を発揮しなければならなかったのである。また、終戦直後には食料の供給が

一層困難になることが心配されたが、米の生産量はだんだんと改善されていった[川島 2010:210-211]。

「もったいない」は生きていくために必要な知恵であった。しかし、戦後数年経つと海外から大量に食料

の輸入をできる時代が到来し、戦後に「もったいない」は急速に失われていった[川島 2010:212]。

4.高度経済成長期以降

高度経済成長期は、1955 年から 1973 年の約 20 年間経済成長率が年間 10%を超えていた期間で

ある。この時代に「消費は美徳」との風潮が生まれ、経済成長のためには消費が必要であるから、大量生

産大量消費が新たな標語となった[川島 2010:211,212]。

1950 年代後半から 1960 年代は家電製品の普及とそれに伴う生活革新、物質的豊かさの憧れの時期

である。テレビ、冷蔵庫、洗濯機の三種の神器と呼ばれる家電が揃うと、それらは生活必需品となった。そ

の後の3C カラーテレビ、クーラー、カーが快適な生活のための購入目標となった[小玉 1994:31]。

また、食生活でも大きく変化があり、和食が中心であった戦前の家庭の食事に、洋食やアジア風のメ

ニューが加わった。洋風だけでなく、アジア、アフリカなどの食文化が取り入れられ、食生活が多様化して

いった[間1994:72]。1953年に日本で初めて東京・青山にスーパーマーケットが誕生し、1957年には大

阪・千林に「主婦の店ダイエー薬局4」がオープンした。薬、化粧品、日用雑貨、食料品を扱うディスカウン

ト店であった。 初のスーパーの誕生からわずか 10 年で 5000 店を超えるほどの急成長であった[岸

1996:216-217]。

スーパーは生鮮食品の生産、出荷体制に変化をもたらした。今まで野菜は気候の変動を受けやすいも

のであるが、周年安定供給を求めており、一年を通して安定した品ぞろえを望んでいる。「ほしいものが、

いつでもそろう店」を目指したのである。さらにもう一点求めたものは取り扱いが容易で、店頭に並べたと

きに客の購買意欲をそそることである。泥のついた野菜よりはきれいに洗ったものの方が扱いやすいし、

売り場も汚れない。客も洗う手間が省けると喜ぶ人が多かった。さらに、野菜の大きさや包装も、大量流通

にはそろっていることが望ましく、形が不揃いであると余分に大きい箱が必要で、輸送効率が悪くなるので

ある[岸 1996:216-217]。

4 後に現在のダイエーとなる。

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こういったスーパーの成長によって、進展した大量生産・流通、周年供給の体制は、日本人の食生活と

農業に大きな落とし穴を作った。スーパーでの買い物の便利さに慣れた消費者は、知らず知らずのうちに

農産物の本来の姿や味を忘れようとしていた5[岸 1996:226]。

この時期は、消費者に与えるメディアの影響も大きかった。1957 年に始まった NHK の「きょうの料理」

と、1963 年に始まった日本テレビ系の「3 分クッキング」は現在でも継続されているが、当時国民に大きな

影響をもたらし安定した人気を持っている長寿番組である。「きょうの料理」では日本人の食生活が戦前

の水準を超えたころに放送が始まった。週 6 日、旬の食材を生かし、栄養のバランスに心を配った料理の

作り方を放送し好評であった。「3 分クッキング」では 3 分見ればおかずのヒントが得られ、実用性を重視

する番組であった。どちらも国民生活の変化が正直に反映されている。例えば、「きょうの料理」では安く

て栄養があり、おなかもいっぱいになる食事が求められており、バター、みりん、スパイスなどのぜいたく品

は遠慮がちに使っていた。「3 分クッキング」が始まったころは、消費者のふところは以前よりも豊かになっ

ていた。しかし、料理の食材はまだ乏しかったため、牛肉の代わりに鯨肉、ウナギの代わりにサンマを使っ

ていた[岸 1996:236-238]。

このように現在の私たちの生活に近づき急速に豊かな生活になり、いつでも欲しいものが手に入る状

況になり、「もったいない」はだんたんと失われていった。

そして、平成に入ってから見直された「もったいない」であるが、環境問題が背景にあることは言うまでも

ない。資源が有限であることや環境問題を考えなければならないことを象徴的に表しており、有限の日本

列島で、多くの人々が生きていかなければならなかった江戸時代と現代は、同様の状況と言える。そのた

め、行動も江戸時代と同様なものにならざるを得ない[川島 2010:212]。

第2章 フードマイレージ

第 2 章では日本の食料自給率を考えるにあたってフードマイレージという視点から述べていきたい。

フードマイレージという考え方を知り、フードマイレージの数値の問題点を考えていきたい。 後に日本の

輸入とフードマイレージについて論じていく。

1. フードマイレージとは何か

フードマイレージとは、食料の輸送量と輸送距離を総合的・定量的に把握することを目的とした指標な

いしは考え方である。そして、食料の輸送に伴い排出される二酸化炭素が地球環境に与える負荷という

観点に着目するものである。フードマイレージを日本語に訳すと「食料の総輸送量・距離」となる。フード

マイレージの数値は食料の輸送量×輸送距離で求められ、トン・キロメートルという単位で表記される。

5 1980 年代に入るころから変化があり、「量販」から「質販」を強調するようになった。外観はきれいだが素性が明らかでなく、

味も良くない農産物に消費者が疑いの向け出したのに対応し、泥つきやしっかり畑で完熟させた野菜など、本物であること

を売りにし始めている[岸 1996:235]。

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フードマイレージの総量を再び品物別や相手国別に分解し、構成を見ることによって、その国の食料輸

入の構造や特徴を見ることができる。食料自給率という言葉で輸入食料の依存度の高さが表されるのが

一般的だが、その場合、輸送距離ということはまったく含まれていない。同じ食料輸入でも、陸続きのヨー

ロッパでドイツが隣国のフランスから輸入する場合と、日本がアメリカから輸入する場合とでは、経路や輸

送手段という背景が異なっても自給率にはまったく反映されない[中田 2008:94,99-100]。また、輸送距離

が含まれていることは、食料の安定供給や、食に対する消費者の安心感の確保という観点からも必要で

ある[山下・鈴木・中田 2008:26]。

この考え方はイギリスのフードマイルズ(Food Miles)運動を参考にした。イギリスの非営利団体サステイ

ン(Sustain: The alliance for better food and farming6)が中心となって展開している市民活動であり、フー

ドマイルズを意識してなるべく地域内で生産された食料を消費することを通じて、環境負荷を低減させて

いこうというものである。 近はイギリスの一部のスーパーにおいてフードマイルズの表示が行われるよう

になったそうである。本論では、フードマイルズではなくフードマイレージという言葉を用いる。理由は単な

る距離の「マイルズ」よりも総マイル数、道のり、経路などと言ったニュアンスを含む「マイレージ」の方がふ

さわしいと考えるからである[中田 2008:94‐97]。

2. フードマイレージが大きくなることの問題

食料の自給率が 40% は、逆に言えば日本は食料依存率が 60%に達しているということである。海外に

食料を依存して何が問題なのかという考えを持つ人もいるかも知れない。

筆者はフードマイレージが大きくなることで 2 つの問題点を挙げる。第 1 に、フードマイレージに含まれ

る輸送距離の問題、第 2 に、日本の食に対しての意識の問題である。

中田は、フードマイレージの値に輸送距離が含まれていることから、フードマイレージが大きくなる影響

で以下の 4 つのことが考えられる[中田 2008:100]と述べている。

まず第 1 に、輸送距離の長短が食料の安定供給につながるということである。輸送距離が長くなると、

経路が複雑になればなるほど、また輸送の時間が長くなれば長くなるほど輸送途上で不測の事態(自然

災害、事故、ストライキなど)が生じるリスクは大きくなると考えられる。第 2 に、食品の安全性の面である。

物理的な輸送距離が長くなることで直接的に食品の安全性の低下につながるわけではないが、日本に

到達するまでの供給ルートを適切に管理・監視する困難性が増すことは十分に考えられる。食品の「素

性」に関する情報を消費者に提供するという点や、トレーサビリティ7システム構築の観点からも望ましいと

言えない。食料は一般的に品質劣化しやすいものであり、生鮮食品の多くは時間がたてば「安全な食料」

ではなくなる。冷凍・冷蔵技術を使ったり、加工したり、また輸送時間の短縮のために航空機で輸送すれ

6 1994 年にイギリスのフードマイルズの現状や輸送距離について詳細にまとめたレポートを 初に発表した。 7 生産、加工および流通の特定の一つまたは複数の段階を通じて、食品の移動を把握できること。あくまで食品の移動を

追跡するための仕組みであり、食品の安全管理を直接的に行うものではない[農林水産省 HP 2010,11.27]。

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ばいいということもあるが、追加的なエネルギー消費(環境負荷)が生ずるという別の問題が出てくる。第 3

に、情報の非対称性との関連である。生産者から消費者が遠ざかることで、生産者と消費者の間で情報

の非対称性が起こる。例えば、生産者はどんな農薬や飼料を使ったのかの情報を知っているが、一般的

に消費者はこのような情報は得ることができない。その結果、「逆淘汰8」のメカニズムが起こり、経済厚生

の増加につながるはずの取り引き(貿易)が、かえって経済厚生が低下する可能性が考えられるのである。

第 4 に、環境負荷である。フードマイレージには輸入量に加え輸送されてきた距離が含まれているので、

二酸化炭素の排出量が多いということである[中田 2008:100-102]。

第 4 の環境について、どれくらいの差が出るのか考えてみる。年間の二酸化炭素排出量を、一人ひとり

が近くでとれたものを食べると、遠くで食べたものと比較してどれほどの違いが出るかということを考えた。

東京に住む 3 人家族の平均的な食生活を想定して、全て国産の場合と現在の日本の食料自給率のよう

に 40%は国産の食材を使い、60%は輸入した場合の 2 通りで比較をした。年間の二酸化炭素排出量は国

産で 60kg、現在の食料自給率並みの食生活だと 360kg であった。また、一つ一つの食材で考えてみても

二酸化炭素の削減に大きくつながることがわかる。アメリカ産の小麦でできた食パン 1 斤は 144.89g、北海

道産の小麦でできた食パンでは 34.7g である。110.2gの二酸化炭素が削減できるのである[大野

2008:77,79]。

食の意識の問題として、筆者は輸送距離が拡大するということは、ただ単に食べ物が遠くから運ばれて

くるというだけではなく。自分で作って自分で食べるという形が大きく変化していると考える。

中田は「食」と「農」の距離についてこのように述べている。「食」とは私たちが食料を消費する現場を表

す言葉であり、「農」とは食料を生産する現場を象徴し、具体的には田んぼや畑、農業地域、水産業の現

場である。フードシステムという考え方は、食料供給の流れを川上(農林水産業)、川中(食品生産業や食

品加工業)、川下(食品小売業食、外食産業)という概念で例えたものである。「食の外部化」が進み、川上

と川下の距離が拡大しているということである。この分析は、3 つの局面で展開される。第 1 に、「地理的距

離の拡大」で、遠くの国々から輸入された食べ物を日常的に食していることである。第 2 に、「時間的距離

の拡大」で、栽培技術や輸送技術、保管技術の発展に伴って、「旬」を意識せずに好きなものを好きなと

きに食べられるようになったことである。第 3 に、「社会的距離の拡大」で、「食の外部化」とも言われる。農

家が生産した農産物が市場や業者を経由し、その食材が外食企業やスーパーを経て、私たちの胃袋に

納まるというように、食料が段階的に、姿を変えながら、消費者の元にたどり着くというものである[中田

2008:42]。

また、中田が「食」に関する情報の氾濫と述べているように、現代の日本人は食に対して強い興味と関

心を持っている。しかし、豊かな食生活になったことで、栄養バランスが乱れたり、食に対する不安感も高

まるようになったりした[中田 2008:25,33]。

大原は食環境の変化について述べている。以前は食べ物をまだ食べられるか 5 感を使い食べ物の鮮

度を判断していた。しかし、今は外食や栄養補助食品に頼り生活している人も多く、「腐った食品」の判断

8 本来の目的のものではなく、そうでないものが残ってしまうこと。

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がわからず、賞味期限が切れたら中身を確かめることなく捨ててしまう人がいる。本来食べ物とは生き物

や植物などの命をいただくものである [大原 2009:15-16]。

また、「食の外部化」という言葉は、もともと家庭内で行われていた調理や食事を家の外に依存するよう

になっていることを表している。食の外部化率は 1981 年と 2003 年を比較すると、10 ポイント以上上昇して

いる。惣菜や調理食品というような「中食」の伸びも著しく、利用する理由で も多い回答としては「調理や

片付けをする手間が省ける」ということである[中田 2008:43]。 このように、新鮮な食材を手に入れ、料理

をし、時間をとって食事を楽しむという機会が、環境の変化によって失われつつあると考える。

3. 日本の輸入量とフードマイレージ

ここでは日本が輸入する食料のフードマイレージを計測し、諸外国と比較することなどにより、長距離輸

送を伴う大量の輸入食料に依存しているという日本の実態と、食と農の距離が離れることによる、地球環

境への負荷も考えていきたい。

日本の食料自給率は40%。米や野菜、キノコの自給率は80%以上であるが低いものは果物(41%)、小麦

(11%)、油脂類(14%)、豆類(8% )である。また、肉類の自給率は57%であるが、飼料を国産と考えた場合わず

か 8%である(平成 21 年度概算)[農林水産省 HP 2010,11.27]。

日本人の食卓は和食といっても、ほとんどが海外からの輸入品である。てんぷらうどんを例に挙げると、

衣、油、調味料の原材料や小麦など、輸入品が幅を利かせている。本気で食料の問題に取り組まないと、

日本は食料の依存体質が強まり、事実上ほとんどの食料を海外に頼ることになる。食料の安全性や食料

の確保のコントロールを失うことで日本は食料を持つ国々の影響を大きく受ける。日本はもっと食料の自

給に力を入れるべきである[山田・シンプソン 2002:1,10]。

では、日本は実際どのくらいのフードマイレージの値を出しているのか。フードマイレージの値が、どの

程度の大きさなのかわかりやすくするために、諸外国(先進国)と比較をする。ここで比較対象として挙げる

のが韓国、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツの 5 カ国である。理由は、韓国は、日本と同様に多くの食料

を海外に依存しているからである。次にアメリカは世界 大の輸出国でもあるが、輸入国でもあるため取り

上げた。ヨーロッパの 3 国は、人口の多い西欧の先進国であり、EU に加盟している国である。比較対象と

して先進国を選んだのには理由があり、日本のフードマイレージの大きさがどのくらいかを明らかにするた

めには、ある程度の人口と経済規模を有する国と比較することが適当だからである[中田 2008:102-103]。

中田の調査によると、2001 年に日本が輸入した食料は約 5800 万トンであり、国ごとの輸送距離をかけ

て累積して算出したフードマイレージの値は約 9000 億トンキロメートルである。韓国・アメリカのフードマイ

レージは約 3000 億トンキロメートル、イギリスやドイツは約 2000 億トンキロメートル、フランスにいたっては

1000 億トンキロメートルと日本とは大きく差がある。人口や経済規模によっても大きく左右されるが、日本

はフランスの 9 倍の水準である(表 1)[中田 2008:112-113]。

では、一人当たりの輸入量を考えるとどうなのだろうか。日本は461kg、韓国520kg、アメリカ163kg、イギ

リス 725kg、フランス 483kg、ドイツ 551kg である。日本は世界 大の輸入国であるといわれているが、一人

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当たりの輸入量では、日本よりも多くの輸入している国はたくさんあるのだ。ところが、この値に輸送距離を

かけると、欧米諸国と大きく差がでるのである(図 1)。日本のフードマイレージの特徴は国全体で見ても、

一人当たりで見ても大きい。輸入量以上に、非常に長い距離を輸送されてきていることが明らかである。

また、輸入相手国別で上位を占める国では、日本はアメリカ、カナダ、オーストラリア、韓国はアメリカ、ブ

ラジル、アルゼンチン、アメリカは 3 国ほぼ同じ数値で、タイ、オーストラリア、フィリピン、イギリスはアメリカ、

ブラジル、イタリア、フランスはブラジル、アメリカ、インドネシア、ドイツはブラジル、アメリカ、インドネシアと

なっている[中田 2008:114-120]。

(表1) 各国のフードマイレージの概要(2001 年)

単位 日本 韓国 イギリス フランス ドイツ アメリカ

食料輸入

千トン 58669 24847 42734 29004 45289 45979

同 上 ( 人

口 1 人あ

たり)

キログラム

/人

461 520 726 483 551 163

平均輸送

距離

キロメート

15396 12765 4399 3600 3792 6434

フ ー ド マ

イレージ

100 万トン

キロメート

900208 317169 187986 10447 171751 295821

同 上 ( 人

口 1 人あ

たり)

トン・キロ

メートル/

7093 6637 3195 1738 2090 1051

([中田 2008:125]より筆者作成)

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(図 1) 各国の 1 人当たりフードマイレージの比較

各国の1人当たりフードマイレージの比較

0 1000 2000 3000 4000 5000 6000 7000 8000

アメリカ

ドイツ

フランス

イギリス

韓国

日本

トン・キロメートル

([中田 2008:126]より筆者作成)

では、どの程度二酸化炭素を排出し、環境に負荷を与えているのだろうか。日本国内の食料輸送に伴う

環境負荷の量を計算し、輸入食料の輸送での環境負荷を考えていく。国内の食料輸送に伴う二酸化炭

素排出量は約 900 万トンと計算される。また、食料輸入に伴う二酸化炭素排出量は 1690 万トンであると試

算された。この値は、輸出国内の輸送経路や輸送手段を特定することは不可能であるため、トラックと船

舶の輸送が半々であると仮定をした。内向船舶の二酸化炭素排出量(1 トンの荷物を 1km 運ぶのに排出

する量とする)(40g)を1としたときに営業用普通トラック 4,5(179,8g)、鉄道は 0,5(22g)、航空は 36,2

(1460,7g)となっている。国産だからただ単に良いとは言えず、上記の二酸化炭素排出量からわかるように、

環境負荷を減らすためには、なるべく近くで生産されたものを消費することが必要となる[中田 2008:

123-127]。

4.食品ロスと食の安全

日本の食料環境負荷をかけ食料を輸入しているにも関わらず、行き過ぎた鮮度思考、賞味期限切れ、

包装による汚れや破損、加工、販売の過程での食品ロスが発生している。食品産業全体の食品廃棄物

の年間総発生量は 2272 万トンであり、一般家庭からは 1100 万トンである(平成 21 年度)[農林水産省H

P 2011,12.28]。

食品リサイクル法が施行された平成 13 年から 19 年までの推移をみると再生利用の実施率は上昇して

いる(表 2) [農林水産省HP 2012,1.10]。しかし、食品ロスの年間発生量自体の数値は、ほとんど変わっ

ていない。

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(表 2) 食品循環資源の再生利用等の実施率

年度 平成 13 年度 平成 14 年度 平成 15 年度 平成 16 年度 平成 17 年度 平成 18 年度

実施率(%) 37% 40% 43% 45% 52% 53%

([農林水産省HP 2012,1.10]より筆者作成)

農林水産省のホームページには以下のようなことが掲載されている。すべての食品事業者向けには、

「食品ロスの実態や削減目標を明確にして、食品ロスの削減に向けて社内意識を向上させる。食品ロスの

削減に向けた行動計画を策定して可能な限り公表する[農林水産省HP 2011,12.28]。」食品メーカー、

小売店向けには、「消費期限、賞味期限は科学的根拠に基づいて設定することを徹底する。納入期限や

販売期限は商品ごとの特性を踏まえて設定する。食品メーカーと小売店の取引は買い取り契約を原則と

して、返品がやむをえない場合はあらかじめ条件を明確にする。見切り値引き販売で売り切る努力をより

一層進めて、値引きの理由や品質には問題がないことを積極的に情報提供を行う[農林水産省HP

2011,12.28]。」飲食店向けには、「お客の好き嫌いや食べたい量をあらかじめ相談して料理を提供する。

天候やイベント開催など来店者数に影響のある情報をもとに需要予測を行い食材の仕入れや仕込みを

行う。品質的に問題のない食べ残しは、お客の自己責任であることをわかってもらった上で、食べきる目

安の日時な どの情報提 供を行って 、持ち帰 り 用に提供す ることを検 討する [ 農 林水産省 HP

2011,12.28]。」となっている。

それぞれの対象によってできることは異なるため、各立場の人が個人として、また企業として何ができる

のかを考え、行動する必要がある。食品廃棄の量に対しての家庭が占める割合は食品産業から発生する

廃棄量の約半分であるが、個人個人の意識と行動で商品の買い方や外食をしたときの頼み方が変わっ

てくるのではないか。

消費者は店から食べ物を買うことになるが、安全性も脅かされている。例えば、賞味期限や原材料表示

の偽造、残留農薬の問題などが挙げられる。過度の安全への意識から今まで考えられなかったクレーム

が発生している。平成 17 年度からの変化を見てもわかるとおり変化している[東京都保健福祉局HP

2011,12.30]。

(表 3) 過去 5 年間における苦情件数

年度 平成 17 年 18 年度 19 年度 20 年度 21 年度

件数 3948 件 4437 件 6348 件 7536 件 5937 件

(東京都保健福祉局HPより筆者作成)

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1962 年 3 月 18 日に「消費者の利益保護に関する特別教書」をケネディ9が発表した。これは、消費者

の持つ権利であり、「1,安全であることの権利 2,知らされる権利 3,選択する権利 4,意見が聞き届けられる

権利 [米虫・野口・平井 2010:3]」である。米虫は「『意見が聞き届けられる権利』の乱用としかいえない事

件が多くなってきた[米虫・野口・平井 2012:3]。」と述べており、ちりめんじゃこに混入してしまったタコの

子や小エビなどに対して、または鮭おにぎりや白身魚フライに入った魚の骨を「異物」として問題視する消

費者がいるということを述べている。食品製造分野では「消費者視点で生産する」という顧客重視の考え

方が注目されているが、本当の食品の安全を危うくしているのである[米虫・野口・平井 2010:2]。

また、わたしたちが欲しいものを買いに行ったとき、売り場は常に商品で埋め尽くされていることがほと

んどである。なぜなら小売店、製造業者、流通業者ともに需要に対して欠品が生じないように在庫商品を

保有しているからである。しかし、天候の影響やマスメディアの影響によって「欠品」が生じることがある。

「欠品」が生じても、消費者は代替商品(購入店を変更する)を確保できるし、欠品が原因で生活を脅かす

ような事態を招くことは考えにくい。しかし、欠品を良しとしない風潮が生まれ、消費者はいつでも欲しいも

のが店頭にあるのが当たり前になってきたため、フードチェーンは欠品しない量の在庫を抱えることに

なった[米虫・野口・平井 2010:116]。

消費者の小さな需要変動が卸売業者、製造業者、材料供給者へと川上に伝えられるうちに大きな変動

となる現象を「フォレスター(ブル・ウィップ)効果」という。在庫の管理において、フードチェーンの受注側

は「本当はもっと必要かもしれない」という予測から、需要数の根拠は真の需要数ではなくなり、さらに、

フードチェーン全体で同様に在庫を持つため、小売店の販売量が急激に下がったときに過剰在庫となる

のである。真の需要数が低下するとフードチェーンの各段階(卸・製造など)で過剰在庫となり、通常販売

されることなく、 終的に廃棄処分となってしまう。売り場は商品で埋め尽くされていて、選択肢はたくさん

あったほうがよいという消費者の欲求に応えてきた結果である。食品ロスを削減させる方法として、フード

チェーンの各組織は多く見積もるような受注をやめ、廃棄になるかもしれない在庫を抱えることはやめる

べきである。また、私たち消費者は欠品していたとしても「生活に大きな支障はない」という認識を持つ必

要がある [米虫・野口・平井 2010:79,116]。

第3章 「食」を通じた取り組み(生活クラブ生協を例に)

第 3 章では筆者が興味を持った食と環境についてまた生産者と消費者を結びながら事業を展開してい

る生活クラブ生協の取り組みを紹介する。筆者は生活クラブ神奈川で古島優へのインタビュー10を行った。

生活クラブと他の生協との大きな違いは組合員が深く関わっている点である。商品の開発や安全な食べ

物のために組合員が協力し、決定している。

生活クラブの消費材は基本的に国産であり、また添加物や遺伝子組み換えに対しても国の基準よりも

厳しく設けている。生活クラブは 8 つの理念を持っており、1,安全・安心・おいしさ 2,オリジナル消費材 3,

9 アメリカ第 35 代大統領、J・F・ケネディ 10 2011 年 12 月 7 日 15:30-17:30 生活クラブ生活協同組合総務部、古島優にインタビューを行った。

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生産する消費者4,自治5,共生(たすけあい)6,仕事7,福祉・子育て8,環境、社会づくりを目標としている。

生活クラブ神奈川は今年 40 周年を迎える。生活クラブ神奈川と5つの地域生協(横浜北・横浜みなみ・か

わさき・湘南・さがみ)の 6 つがある[生活クラブHP 2011,12.7]。

生活クラブは、全国組織としての連合会が組織されており、各地域生協が単独で活動している。1965

年に「安全な牛乳を飲みたい」というお母さんたちの思いから、牛乳の共同購入が始まった。「すべての素

性が明らかな食べ物をみんなで食べ支える(共同購入)[生活クラブHP 2011,12.8]。」という考え方は、

生産者が安心してもの作りをできるしくみなど、誰もが助け合って健康に暮らしていくための社会作り、環

境作りにつながり、助け合いの輪を広げてきた[生活クラブHP 2011,12.8]。生活クラブの理念や神奈川

の活動を通して、食の安全性や循環型社会の理想を述べていく。

1. 具体的な活動

2011 年から 2015 年の中期計画では「食・環境・ケアの自給圏づくりをすすめよう」という運動テーマを

掲げ、4 つの柱で活動している。

第 1 が、予約共同購入政策である。これは 2 週間前に用紙を提出し、頼まれたものを配達するシステム。

これにより、一般のスーパーのように期限が過ぎてしまい捨てることになうような食品ロスは減ることになる。

特に主要品目(牛乳・卵・肉・米・農産物)の利用率の向上を目標としている。第 2 が、デポー11政策であ

る。デポーは消費財の共同購入の場所であり、地域で人と人がつながる拠点である。この拠点に「ケアの

自治圏」の拡大を目指している。第 3 が、環境政策である。神奈川の主要な政策であり、石けんの利用を

進め、合成洗剤が生態系に与える影響などを組合員が自分たちで学び、石けんを使う暮らしを広げてい

こうとしている。また、 近は風車の建設を通してエネルギー自給に対しても取り組んでいる。第 4 が、共

済・福祉政策である。都市の中にたすけあい・支えあいが息づく場をつくる目的として、市民主体の参加

型福祉を広げ「ケアの自給圏」を作ることを目指している。また、子育て支援の活動と事業を広げることも

目的としている。「システム」作りではなく「ケア」(人間関係の構築)に力を入れていく[生活クラブ神奈川創

立 40 周年記念誌 2011:62-67]。

2. 環境への取り組み

2008 年にフードマイレージプロジェクト12に参加をしている。何か取り組みをしているというよりも、生活

クラブの消費材を買うと自然とフードマイレージが削減されていく。プロジェクトは、国産品を消費した場合

と海外からの輸入品を消費した場合の輸送にかかる二酸化炭素の量を比較し、国産を選んだことで削減

11 生活クラブの店舗のこと。独自の厳しい基準で作られた食材や環境にやさしい生活用品を取り扱っている。一般のスー

パーより規模は小さい。神奈川には 19 店舗ある。 12 株式会社大地を守る会、生活クラブ事業連合生活共同組合連合会、生活協同組合グリーンコープ連合、パルシステム

生活協同組合連合会の 4 者が食料自給率の向上に取り組んでいる。

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できた二酸化炭素量を独自の単位(poco13)で表した。自給率が低く大豆や小麦などの日常的に食べる

5 つの分野を対象として比較している。生活クラブは食料自給率の向上を目指しており、生活クラブの自

給率は約 59%である。日本の自給率 40%と比較すると高いことがわかる。また、日本の家畜の飼料は多

くが輸入に頼っているが、日本で自給できるよう、「飼料用の米」を育てる取り組みを行っている[生活クラ

ブHP 2011,12.7]。

生活クラブが行っている浪費社会から持続社会への具体的行動は、リユースのしくみを広げることであ

る。現在はビンのリユースを行っており、飲料だけでなく調味料もビンで販売されており、回収し再利用さ

れている。このような取り組みを行う理由を、古島は以下のように述べている。「ビンのリユースは、社会に

必要だと思っているから行っている。生産や流通の中で問題になっているのは安全・安心について。利益

だけを追求してしまえば賞味期限や食品添加物などの偽造問題が出てくる。情報の公開を大切にして生

活クラブでは活動をしている。」

筆者が共感をしたことは、基本的に一つの商品に対して 1 アイテムしか選択肢はないということである。

しかし、アイテムを増やすことはロスを増やすことにもつながるため、豊かすぎなくても十分生きていけるが、

消費者もたくさんの選択肢から選ぶことに慣れてしまっているために、一般のスーパーではできないだろ

うと感じた。

3.消費者との関わり

筆者は、生活クラブ生協が生産者と消費者両方と深く関わっている印象を持っている。多少高くても

「国産品」を選ぶことが環境にもよいとわかっていても、「本当に安心して食べられるものかどうか」を見極

めず、安いものをつい買ってしまう消費者にも課題があるのかどうかと疑問を持った。

古島は、以下のように述べている。「「いいものを安く」に越したことはないが、「いいもの」基準は何なの

か、高いからいいとも限らない。消費者側の判断が大切である。値段だけでなく裏側のラベルを自分で

しっかりと見るという行動をし、添加物の有無、100gあたりで考えた単価など、それは本当に価格に見

合ったものなのかを考えるべきである。家計のやりくりを考えたときに、主要材は生協で購入し、他の物は

スーパーの安売りで購入するという組合員もいる。また、生活クラブでは「生産する消費者」という言葉が

あり、委員会のメンバーが消費材の開発からスタートしている。連合会の中に商品会があり、組合員の代

表が決めていく。もし初年度や天候不順などで形が良くないものができても、しっかり引き取り生産者の生

活を安定できるよう協力している。良いものしか引き取れないではなく、組合員に説明をして責任を持って

販売している。」

また、価格について古島は以下のように述べている。「一般的に販売されている商品は 初に価格が

決まる。そこから、パッケージのコストやえさ代が決められていく。そのため、いかに飼料代を抑えて育てる

かが重要視されている。しかし、生活クラブでは飼い方を先に考え、実際に協力してくれる農家を探し、結

果的に生産者の負担にならないような価格に決めている。消費者は単に価格が安いからという理由で買

13 「poco」という単位を設定し二酸化炭素 100gは 1poco と定めた。

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うのではなく、比較したときに価格差はどこから来るのかを考えることが必要である。」

4.TPP14と自給率

生活クラブでは「『安全』は誰かにお任せするのではなくみんなでつくり続けていくもの[生活クラブ神奈

川HP 2011,12.7]。」という思いを持っている。そのため基本的な材は自分たちでまかなえる力が必要で

あるという考えである。古島は、TPP参加に対して全てがネガティブなのではなく、危険性を理解すること

が大切であると述べている。例えば、家畜の飼料は全て海外からの輸入に頼ればよいという姿勢では、も

し、輸入ができなくなったときにどうなるのかという危険がある。生活クラブのホームページによると、事業

仕分けにより、飼料穀物備蓄対策事業が対象となり、60 万トンの備蓄を 40 万トンに削減するよう農林水

産省は要求をし、さらに事業仕分けで 20 万トンまで削減するよう結論付けられた。しかし、3 月に東日本

大震災が発生して東北の港が壊滅し、飼料の輸入がストップしたため畜産業の飼料在庫は逼迫した。食

料安全保障の観点から、3 点重要視する点がある。まず、目先の経費削減ではなく輸入に依存している

飼料穀物をしっかり備蓄している必要があること、次に、過度な輸入依存によるリスクを低減し、飼料穀物

の自給力を向上させること、 後にTPPの参加を前提としている政府の姿勢を見直すべきという 3 点を重

要視している[生活クラブ神奈川HP 2011,12.7]。

TPPへの姿勢は「日本の第一次産業に壊滅的な打撃を与える恐れが高く、『食料・農業・農村基本計

画』で掲げた『自給率向上』政策に反しており、食料安全保障政策の放棄につながりかねない。」もう一点

は「TPPによるさらなる価格破壊によって、志ある生産者、自覚的消費者が日本にますます存在しにくく

なることは避けるべきである[生活クラブ神奈川HP 2011,12.7]。」という立場である。

おわりに

筆者は豊か過ぎる今の生活がこれからいつまで続くのだろうかと疑問に思っている。限りある資源を守

り、これから先も生活できる環境を作るためには今までどおりの生活をして「持続可能な社会を」と言って

いる余裕はないと考える。そのため環境に負荷をかけない一人ひとりの行動が必要であると考える。

具体的な行動の第一は、輸入品ではなく国産を積極的に取り入れることである。食料の供給に関して、

環境の面に加え、安全性や安定した供給が続くためにも重要だと考える。フードマイレージの考え方から

わかるように、日本は他の先進国と比較し数値が高い。海外へ依存しすぎることは食料自給率の低下に

つながり、日本国内の第一次産業が衰退することになる。国産を積極的に取り入れることは、環境を守り、

日本が持つ力も守っていくことにもなると筆者は考える。

第二は、もったいない精神を持ちモノを大切にすることである。日本人特有の精神として根付いてきた

14 環太平洋経済協力協定。関税をなくし、自由貿易を推進する協定。

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ものであり、限られた資源の中で生きていた江戸時代から学ぶべきことは多くある。日本人は高いリサイク

ル技術をもっているが、取り返しのつかない地球環境問題を悪化させないためにも、ごみの発生を抑える

ことや余計なエネルギーを使わないことなど環境にやさしい生活を送ることによって、冒頭に述べた食料

問題の解決に少しでも近づくことができるのだと考える。

「飽食の国」であり、欲しいものはすぐに手に入る環境の日本で、一人ひとりが「もったいない」を意識す

ることは難しいのではないかと考える。しかし、「このままではよくない」と感じる人が増えることを望んでい

る。

本論文では、自給率の低さや日本の現状について中心に述べたが、飢餓や世界全体の食料の問題

については扱うことができなかった。そのため、今後機会があれば、「食」を中心に調査をしたいと考えて

いる。私たちの豊かな食生活が、直接輸入元の国にどのように影響しているかという点について、また、飢

餓の問題について現状や背景とともに研究したいと考える。

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