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2017年12月13日(水)
株式会社プルータス・コンサルティング取締役 山田 昌史
第6回株式価値評価と司法事例
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本講義の内容
① 役員に対する損害賠償請求事件
② 虚偽記載による損害賠償請求事件
③ M&Aに関わる株式価格決定申立事件
2
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本講義の内容
① 取締役って大変
② 嘘を書いたら大変
③ 裁判所も大変
実務家 依頼者として、
事件で学ぶ、実務や専門家の限界と留意点!
3
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少々振り返り
4
Q: なぜM&Aをするのか?
A: 買い手:事業成長につながるから
A: 売り手:一気に投資回収できるから
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Q: なぜM&Aをするのか?
A: キーワード:コーポレート・ガバナンスコードROE
→意義のない内部留保は許されない
少々振り返り
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M&A件数推移
6(出所)MARR
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M&Aの成功事例
7
ソフトバンクの成功事例
日本テレコム、ボーダフォン、イー・アクセス
ガンホー、スプリント、スーパセル、アーム
約5,000億円の時価総額が現在約10兆円
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M&Aの失敗事例
8
P社
S社を計8,000億円超で買収
その後6,000億円以上の減損損失・・・
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本講義の内容
9
Q: では失敗するとどうなってしまうのか?
A: 大きく3類型
① 役員に対する損害賠償請求事件② 虚偽記載による損害賠償請求事件③ M&Aに関わる株式価格決定申立事件
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取締役って大変
10
Q: 取締役は会社にとってどういう立場?
を理解する前に
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取締役って大変
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Q: 会社は誰のもの?
選択肢① 経営者② 従業員③ 株主④ 顧客⑤ 社会
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取締役って大変
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Q: 会社は誰のもの?
A: 法律上は、明確に株主のもの
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取締役って大変
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Q: 取締役は会社にとってどういう立場?
A: 株主から経営の委任を受けた人
株主から財産を預かって、「じゃあ任せたんで増やしといてね」
って言われた人
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取締役の義務
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Q: 財産を預かる人に対して
法律はなにを規制する?
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取締役の義務
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善管注意義務
会社法 第330条株式会社と役員及び会計監査人との関係は、委任に関する規定に従う。
民法 第644条受任者は、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する
義務を負う。
忠実義務
会社法 第355条取締役は、法令及び定款並びに株主総会の決議を遵守し、株式会社のため忠実にそ
の職務を行わなければならない。
具体例 競業避止義務・利益相反取引の制限(会社法356条1項1号2号)
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取締役の責任
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会社に対する責任
会社法 第423条取締役、会計参与、監査役、執行役又は会計監査人は、その任務を怠ったときは、
株式会社に対し、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
第三者に対する責任
会社法 第429条役員等がその職務を行うについて悪意又は重大な過失があったときは、当該役員等
は、これによって第三者に生じた損害を賠償する責任を負う。
会社法 第847条(株主による責任追及等の訴え)
六箇月前から引き続き株式を有する株主は、株式会社に対し、(中略)役員等(中略)の責任を追及する訴え(中略)の提起を請求することができる。
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役員に対する損害賠償請求事件
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・アパマンショップ株主代表訴訟事件
・アートネイチャー株主代表訴訟事件
・シャルレMBO株主代表訴訟事件
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アパマンショップ株主代表訴訟事件
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訴えの内容アパマンショップHDの株主らが、平成18年にアパマンショップHDがアパ
マンショップマンスリーを完全子会社化するに際して同社株式を1株当たり5万円で買い取ったことについて、取締役3名に善管注意義務違反が認められるとして、代表訴訟を提起した。原告らは、アパマンショップマンスリーの株式の適正価格は約8千円であっ
たとし、不当に高額で買い取ったことによってアパマンショップHDに生じた損害約1億3,000万円を賠償するよう求めた。
他の株主
アパマンショップマンスリー
アパマンショップHD
66.7%
買取り(一株5万円)
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アパマンショップ株主代表訴訟事件
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株価 備考
株式交換直前の
1株当たり買取価格
50,000円 代金総額は1億5,800万円
アパマンショップHDが直後に行った株式交換の際に、算定を依頼した監査法人等2社による算定結果
9,709円
6,561円~19,090円 類似会社比較法
アパマンショップマンスリーの株価
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アパマンショップ株主代表訴訟事件
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■ 東京高等裁判所
アパマンショップHDの取締役らの責任を認め、連帯して、アパマンショップHDに対し、株式の評価額1株当たり1万円と取得価額1株当たり5万円の差額である1億2,640万円の支払いを命じた。
①5万円よりも低い買取価格で買取りが円滑に進むか否かの検討がなされていない
②費用対効果の検討が十分に行われていない③アパマンショップマンスリーの一株当たりの価額である1万円の
5倍もの金額を買取価格とする合理的な根拠が見出せない
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アパマンショップ株主代表訴訟事件
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■ 最高裁判所善管注意義務違反は無いとして、取締役の責任を否定
①株式取得を円滑に行うため必要であったこと②アパマンショップマンスリーが設立時1株あたり5万円で設立され、設立後5年しか経過しておらず、かつ、非上場であること
③アパマンショップマンスリーの株主には、アパマンショップHDの事業の遂
行上重要であると考えていた加盟店等が含まれており、友好関係を維持する必要があったこと④事業再編の効果によるアパマンショップマンスリーの
企業価値評価向上が期待できること⑤弁護士の意見も聴取して判断したこと
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経営責任の原則
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会社に対する責任
会社法 第423条取締役、会計参与、監査役、執行役又は会計監査人は、その任務を怠ったときは、
株式会社に対し、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
取締役の業務執行は不確実な状況で迅速な決断を迫られる場合や、時にリスクを取って挑戦すべき場合もある。
判断が結果として間違っていたときに、善管注意義務に違反したとして損害賠償責任を負わせることにすると、なにもできなくなってしまう。
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経営責任の原則
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(1)経営判断の前提となった事実の認識に不注意な誤りがないこと
(2)経営判断の過程・内容が著しく不合理でないこと
会社に対する責任
経営判断の原則に従えば、結果的に会社に損害が生じたとしても、基本的には取締役は損害賠償責任を負わない
「経営判断の原則」の内容
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アートネイチャー株主代表訴訟事件
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訴えの内容
2004 年3 月、当時非上場会社であった株式会社アートネイチャーの役
員等に対する第三者割当てによる新株発行及び自己株式の処分における発行価額が「特ニ有利ナル発行価額」に該当するにもかかわらず、取締役が株主総会において有利発行を必要とする理由の開示を怠った結果、会社に損害を与えたとして、取締役に対し任務懈怠を理由に公正価額と発行価額の差額として約22億円の損害賠償を求めた株主代表訴訟
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アートネイチャー株主代表訴訟事件
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時期 出来事
2000年5月 権利行使価額1株10,000円とする新株引受権付社債を発行。
2001年頃 役職員の退職が相次ぎ、その保有する株式の買取りを求められたため、代表者らが1株1,500円で買い取る。なおその後、同社は、当該株式の一部を代表者より同額で自己株式取得。
2003年11月 取引銀行の要請等により、自己株式を代表者に対して1株1,500円で売却。この際、公認会計士に株価算定を依頼し、1株1,500円とする算定結果を得た。
2004年3月 役員らに対する第三者割当を実施、株主総会の特別決議を経て1株1,500円で新株を発行。
2006年3月 1株9,000円で新株を発行。
2007年2月 JASDAQ上場
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アートネイチャー株主代表訴訟事件
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■ 東京地方裁判所、東京高等裁判所
・自己株式処分:1株1,500円が妥当・新株発行:著しく不公正な発行価額に当たる裁判所は公正な価額と発行価額との差額にあたる2億円相当の支払いを命じた。
①自己株式処分→役員らが1株1,500円で買取りに応じてきたこと、実質的には代表者による買戻しである点などを考慮して1株1,500円が相当。
②新株発行→2000年5月時点で1株10,000円、2006年3月時点で1株9,000円③DCF法によれば2004年3月時点の株式価値は、少なくとも1株7,000円④株価算定において採用されていた配当還元法は、主として少数株主の株式評価において、安定した配当が継続的に行われる場合に用いられる評価方法であり、本件においては相当性を欠く。
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アートネイチャー株主代表訴訟事件
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■ 最高裁判所「特ニ有利ナル発行価額」には当たらないとして、取締役の責任を否定
・裁判所が、事後的に他の評価手法を用いたり、異なる予測値等を採用するなどして、改めて株価算定を行った上、その算定結果と現実の発行価額とを比較して「特ニ有利ナル発行価額」に当たるか否かを判断するのは、取締役らの予測可能性を害することともなり、相当ではない。
・非上場会社が株主以外の者に新株を発行するに際し、客観的資料に基づく一応合理的な算定方法によって発行価額が決定されていたといえる場合には、その発行価額は特別の事情のない限り、「特ニ有利ナル発行価額」には当たらないと解するのが相当である。
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シャルレMBO株主代表訴訟事件
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事案
・シャルレ(神戸市、大証二部。女性用下着メーカー)・平成20年9月19日 買付価格800円でのMBOを発表
会社はMBOに賛同する意見を表明・10月16日以降 大阪証券取引所などに創業家取締役の
利益相反行為について内部通報が相次ぐ。・10月29日 第三者調査委員会設置・10月31日 第三者委員会による調査報告書提出・11月7日 会社による賛同意見の撤回・12月2日 不賛同意見提出→MBOは頓挫
→平成22年1月 株主代表訴訟提起 取締役5名に5億円の賠償請求
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シャルレMBO株主代表訴訟事件
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MBOとは?
経営陣・ファンド 少数株主
対象会社
買取り
Management Buyout会社経営陣が株主から自社株式を譲り受けたり、事業部門統括者が当該事業部門を事業譲渡されたりすることで、オーナー経営者として独立する行為
【問題点】・経営者は、株主から委任を受けて株価を高める立場・MBOでは、経営者自身が株主から株を買う立場が併存する
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シャルレMBO株主代表訴訟事件
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MBO公表までの経緯・7月30日 7月22日付利益計画に基づく算定結果報告・8月14日~ 創業者によるメール指示
創業者側のアドバイザーも関与して事業計画を再作成し複数の計画で算定するよう指示↓算定結果は創業者の満足する水準にならなかった↓創業者は、DCF法を採用しないことや類似会社の変更、受け入れなければ他の算定機関への変更検討などを指示担当役員は、上記指示を算定機関にも伝達
・8月27日~ 事業計画の見直し 2通りの計画を作成・9月17日 両計画に基づき算定結果が報告・9月19日 MBOに対する賛同意見表明
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シャルレMBO株主代表訴訟事件
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事業計画(営業利益)
平成21年度 平成22年度 平成23年度 平成24年度
7月22日付利益計画
21億2,000万円
25億7,800万円
24億2,400万円
22億6,200万円
8月31日付利益計画
9億8,700万円10億3,700万
円5億9,100万円 8,900万円
9月13日付アップケース
13億9,100万円
15億3,700万円
11億4,800万円
6億8,300万円
実績 7億7,600万円19億9,300万
円17億1,500万
円8億9,000万円
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シャルレMBO株主代表訴訟事件
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算定結果
DCF法 市場株価法類似会社比準法
修正純資産法
7月算定結果 1,104~1,300円 528~544円 897~1,129円
9月算定結果 681~1,010円 518~535円 976~1,259円 929円
買い手の算定結果 646~908円 498~600円 599~855円
TOB価格
800円
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シャルレMBO株主代表訴訟事件
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■ 裁判所の判断取締役の善管注意義務違反を認定
■ ポイント① MBOにおける善管注意義務の内容として下記5点を挙げた・ MBOの実施に係る判断の合理性に関する義務・ 公正な企業価値の移転を図る義務・ 企業価値の移転に係る手続の公正を害する行為をしない義務・ 情報開示義務・ 他の取締役の監視義務
② 文書提出命令
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MBO等に関連するルール
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MBO指針2007年9月 経済産業省主導で公表した手続的指針
企業行動規範(MBO等の開示に係る遵守事項)2007年8月 各取引所が開示ルールの強化、算定書提出の義務付け
第三者委員会2010年6月 各取引所が支配株主との取引に関するルール創設
開示ルールの強化2013年7月 各取引所がMBO等の開示強化、算定書の項目を明確化
事前相談補完するものとして取引所・財務局への2-3週前の事前相談
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小括
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役員に対する損害賠償請求事件から学ぶこと
経営判断の原則と限界
利益相反取引の際に守るべきこと
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虚偽記載による損害賠償請求事件
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オリンパス事件
企業価値評価が損失隠しに使われた DCF法の悪用
非現実的な事業計画を基に評価見せかけの善管注意義務履行
公認会計士協会を巻き込んだ評価プロセスの見直し
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オリンパス事件
• 2005年10月頃まで休眠状態• 売上高合計は約3億円で利益は赤字• 2006年3月及び2008年2月に投資実行(734億円)• 投資金額は、公認会計士の株価算定を参考に決定
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■事案の概要
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オリンパス事件
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■事案の概要
① 簿外ファンドの連結外しによる含み損・負債の簿外処理
90年代の有価証券投資等の失敗による多額の含み損の計上を先送りするため、平成10年頃から、海外の複数のファンドに含み損を抱える運用資産等を移転。
② 簿外処理を発覚させないための隠蔽工作
平成19年3月期までの約10年間、外資系金融機関等の外部協力者の協力を得て、簿外処理が発覚しないように隠蔽工作。
③ 資産性のないのれんを計上したのれんの過大計上
平成20年3月期以降、企業買収に伴う買収資金・アドバイザーへの報酬等として支出した資金を簿外ファンドに還流して損失を処理。一方、過大な買収資金・報酬等は、連結財務諸表上のれんとして計上。
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オリンパス事件
2011年9月から12月の株価チャート
約2,500円だった株価が急落、約500円に
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オリンパス事件
有価証券報告書に虚偽記載をした者の損害賠償責任
金融商品取引法 第21条の2虚偽記載等の事実の公表がされた日(以下この項において「公表日」という。)前
一年以内に当該有価証券を取得し、当該公表日において引き続き当該有価証券を所有する者は、当該公表日前一月間の当該有価証券の市場価額(市場価額がないときは、処分推定価額。以下この項において同じ。)の平均額から当該公表日後一月間の当該有価証券の市場価額の平均額を控除した額を、当該書類の虚偽記載等により生じた損害の額とすることができる。
(虚偽記載が公表された日以前1ヶ月の市場価格の平均額)-(公表日後1ヶ月間の当該有価証券の市場価格の平均額)
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オリンパス事件
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第三者委員会の調査報告書(2011年12月6日)92頁、93頁
●●公認会計士事務所は、オリンパスから、価値算定について、事業計画の数字は動かさないで欲しいという強い依頼を受けたため、マネジメントへのインタビューを実施せず、オリンパスから提示された事業計画の数値を、一部の修正を除いてほぼそのまま価値算定をした。
ベンチャー企業の場合には、将来の不確実性が高いため、将来の市場規模等の変化について複数のシナリオを用意し、各シナリオの発生確率を予測し加重した上で企業価値を算定することも検討する必要がある。
■第三者委員会による企業価値評価の問題意識
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オリンパス事件■金融庁の問題意識
「企業価値評価ガイドライン」日本公認会計士協会経営調査会研究報告32号(抄)
Ⅲ.企業価値評価における価値形成要因3.基礎資料の信頼性及び有用性の検討(3) 評価対象会社から入手する資料の有用性
評価は、依頼人との一定の契約関係や双方の合意を前提に実施される。そのため会社から入手する資料に関して、真実性・正確性・網羅性を検証するための手
続を別途行うことは稀である。
Ⅴ. 取引目的の価値算定業務5.公認会計士の行う取引目的における価値評価業務の性質及び内容(2)評価における基礎資料の検討分析の意義
予想された結果と実際の結果が相違することは頻繁に起こり得る。また、このような相違が重大である可能性もあり、評価対象会社の経営陣が予想した結果が達成されるかについて公認会計士が到底責任を負えるものではなく、当該将来情報について公認会計士が検討を行う場合、その達成可能性に関しては何ら責任を負うものではない。
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オリンパス事件■金融庁の問題意識
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オリンパス事件■金融庁の問題意識
ヘッジ文言を記載することで、算定者は責任を一切負わないのか?
そもそも企業価値評価は、保証業務なのか?合意された手続なのか?
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【論点】
◆ 専門家による企業価値評価は、どのような責任を負うか
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オリンパス事件
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■日本公認会計士協会による対応
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オリンパス事件
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■日本公認会計士協会による対応
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オリンパス事件
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■日本公認会計士協会による対応
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小括
48
オリンパス事件から学ぶこと
算定の性質の正しい理解と限界
セカンドオピニオンフェアネスオピニオン取得の検討
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価格決定申立て
49
会社 株主
①対価
①株式強制買取
②不満があったら裁判所へ
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価格決定申立て
50
著名弁護士のブログ
「2008年3月16日 (日) 株式の価格決定の裁判」から抜粋
株式買取請求権の行使に伴う価格決定の申立は、株式の価格をめぐって申立人(株主)と相手方(会社)が主張と立証を尽くし合う点では訴訟的ですが、「公正ナル価格」がいくらなのかは、要件事実の立証によって法律的に機械的に決まるようなものではありません。
価格決定の申立の裁判は、「非訟事件」であり、その価格は、裁判所が、その裁量で適当に決めます(「いい加減に」という意味ではありません)
今回の決定の理由の中でも、一番最初に「価格は、俺が、自由に決めるんだぞ。」という趣旨のことを難しい言葉で述べられていますが、そう書いてあっても無くても、そもそも、価格決定は、裁判所が「これだ!」と決めれば、その価格になります。とはいえ、裁判所は、決定に際して、理由を述べなければならないので「ボクの結婚記念日が3月6日だから、360円にしました。」などということはできません。一般的には、申立人と会社が、自分に有利な株価の算定方式を主張し合い、その算定方式をもとに株価を評価した鑑定書を裁判所に提出します。
そして、裁判所はどの算定方式にするか算定方式に当てはめる前提事実としてどのようなものを選択するか等を決めて、最後に、微調整して判断するのです。
裁判所の役割
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価格決定申立て
51
鑑定とは?
専門的な知識を持つ者が、科学的、統計学的、感覚的な分析に基づいて行う、評価・判断
しかし・・・
DNA鑑定 袴田事件、足利事件美術品鑑定 曜変天目茶碗
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価格決定申立て
「経営承継法における非上場株式等評価ガイドライン」が示す評価方式
① 収益方式
評価対象会社に期待される利益等を基にして評価する方式である。
概念的には、将来に亘る収益の総額の現在価値を示していると言える。
② 純資産方式
評価対象会社の保有する純資産価額を基にして評価する方式である。
概念的には、評価時点で、事業を新たに開始する際に同じ資産を取得す
るとした場合、又は、会社の資産全部を売却するとした場合に獲得できる
金額を示していると言える。
③ 比準方式
評価対象会社と類似する上場会社(類似会社又は類似業種)の株式の
市場価額や、評価対象会社の株式の過去の取引における価額を参考と
して評価する方式である。52
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価格決定申立て
「経営承継法における非上場株式等評価ガイドライン」が示す評価方式
④ 国税庁方式
ア)相続税法上の株価
財産評価基本通達に基づく評価(類似業種比準価額、純資産価額、併用方式)
イ)所得税法及び法人税法上の株価
ⅰ)売買実例のある場合
最近において売買の行われたもののうち適正と認められる価額
ⅱ)公開途上にある株式の場合
金融商品取引所又は日本証券業協会の内規によって行われる入札により決定される入札後の公募等の
価格等を参酌して通常取引されると認められる価額
ⅲ)売買実例のないもので類似会社の株式の価額のある場合
類似会社の株式の価額に比準して推定した価額
ⅳ)上記ⅰからⅲまでに該当しない場合
株式の発行法人の 1 株当たりの純資産価額等を参酌して通常取引されると認められる価額
ⅴ)上記の方法で評価が困難な場合
原則として一定の条件の下に、財産評価基本通達 178 から189-7 までの「取引相場のない株式の評
価」 によって評価することが認められている。
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価格決定申立て
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会社法以前の株価鑑定事例(中小企業庁ガイドラインより)
① 譲渡制限株式の売買価格決定申立事件
番号 決定日対象株式
評価方式
備考純資産
収益還元
配当還元
その他
1京都地決昭62.5.18
11%40%
(簿価)20% 20%
20%(類似業種)
指定買受人は、対象株式の取得により、22.1%の株式を保有。
2青森地決昭62.6.3
16%100%
(時価)- - -
3福岡高決昭63.1.21
3.3% - - ○ ○配当還元価額を類似会社の配当
性向との比較により修正。
4東京高決昭63.12.12
30%70%
(時価)30% -
▲30%(市場性欠如)
資産保有目的の色彩の濃い会社。
5大阪高決平1.3.28
0.06%~0.26%
- - 100% -支配的持株数を有する大株主が存在しない。
6東京高決平1.5.23
2.85%3.3%
20%(簿価)
20% 60% -代表者一族が80%以上の株式を保有する同族会社。
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価格決定申立て
併用方式(折衷法)の考え方
折衷割合のロジックは?
日本公認会計士協会経営研究調査会研究報告第32号
「企業価値評価ガイドライン」52頁
折衷割合を決定する定まった方法は確立されていない、評価人の判断に依存することになる。折衷割合は、企業価値等の形成要因との関係で検討することになる。
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価格決定申立て
会社法以前の株価鑑定事例(中小企業庁ガイドラインより)
① 譲渡制限株式の売買価格決定申立事件
番号 決定日対象株式
評価方式
備考純資産
収益還元
配当還元
その他
7東京高決平2.6.15
0.16%30%
(時価)- 70% -
代表者家族の持株比率は約20%。
8千葉地決平3.9.26
10%50%
(時価)- 50% -
役員報酬を配当金の変形とみなしたうえで、配当還元方式により算定。
9札幌地決平16.4.12
6.56%25%
(時価)50% 25% -
10東京地決平20.3.14
4% -100%(DCF)
- -営業譲渡の反対株主による株式買取請求
11東京高決平20.4.4
40% - 100% - - ベンチャー企業
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価格決定申立て
会社法以前の株価鑑定事例(中小企業庁ガイドラインより)
② 損害賠償請求事件(株主代表訴訟を含む。)
番号
判決日発行又は取得株式
評価方式
備考純資産
収益還元
配当還元
その他
1東京地判平4.9.1
62.5%(※)
100%(時価)
- -▲70%
(市場性欠如)
不公正な価額による新株発行で損害を被った既存株主が取締役を被告として提起した損害賠償請求事件
2大阪高判平11.6.17
20%(※)
33%(時価)
- -66%
(類似業種)
違法な新株発行によって損害を被った既存株主が取締役を被告として提起した損害賠償請求事件
3大阪地判平15.3.5
3%66%
(時価)33% - -
違法な自己株式の取得により会社に生じた損害に関する代表訴訟
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価格決定申立て
会社法以前の株価鑑定事例(中小企業庁ガイドラインより)
③ 不公正な価額による新株発行に係る差止仮処分申立事件
番号
決定日発行株式
評価方式
備考純資産
収益還元
配当還元
その他
1東京地決平6.3.28
16.6%(※)
- -100%
(ゴードンモデル)
-
不公正な価額による新株発行であることを理由とする差止仮処分申立事件
※割合は、新株発行後の発行済株式総数に対する発行株式数の割合
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カネボウ事件
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裁判所の考える株価
カネボウの営業譲渡に反対した株主の株式買取請求について買取価格決定
DCF法による鑑定評価に基づいた決定が注目される。
非上場株式の評価が問題となった下級審裁判例には、古くは国税庁の『相続税財産評価に関する基本通達』の影響を受けた者が多くみられたが、学説による批判を受け、近年は純資産方式、類似業種比準方式、配当還元方式、収益還元方式等の全部または一部を独自の算式で併用するものが中心となっていた。
このような併用方式に理解を示す論者も存在するが、複数の方式を寄せ集めても信頼できる数値が算出できる者ではないとして、継続企業の株式の価値は、理論的にDCF方式によるべきであるとする見解が有力となってきているように思われる。
継続企業における少数株主の保有株式の価値の算定について、併用方式を採らずにDCF法のみによるべきであるとする本決定は、このような学説の傾向に合致するものであり、妥当であるといえよう。
旬刊商事法務No.1837「カネボウ株式買取価格決定申立事件の検討[上] 後藤元学習院大学准教授
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レックスHD事件
事案の概要
上場会社の非公開化手続(MBO)において、TOB価格に不満を持つ株主が裁判所においてTOB価格の妥当性を争った事案。
訴えの内容
株式会社レックスHDの株主であった者が、全部取得条項付種類株式の取得決議に反対して、会社法172条1項に基づき裁判所に取得価格の決定を求めた。
【MBO後】
経営陣・ファンド 少数株主
レックスHDレックスHD
経営陣・ファンド
【MBO前】
少数株主
買取り
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レックスHD事件
算定価格 備考
当初買付価格 230,000円 公開買付公表日(H18.11.10)前一ヶ月の市場平均株価202,000円に13.9%のプレミアムを加えた額
高裁決定 336,966円 本公開買付公表日(H18.11.10)以前6ヶ月間の市場株価単純平均に20%のプレミアムを加えた額
レックス株価 304,000円 平成18年8月21日終値
144,000円 平成18年9月26日終値
業績の下方修正発表により株価下落
219,000円 平成18年11月10日(公開買付公表日)終値
レックスHDの株価
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レックスHD事件
公正価格=①「客観的価値」+②「期待権の評価額」
裁判所の考える市場株価方式
② 期待権の評価額
強制的取得により失われる今後の株価の上昇に対する期待を評価した価額を考慮するのが相当である。
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レックスHD事件
■ 高裁判決と論拠
(6ヶ月間の市場株価単純平均を用いる論拠)①公開買付公表後の市場株価を株式価値算定の基礎とすることは不合理②業績下方修正後の過剰に下落した市場株価は、
他の期間を通じて市場株価を平均化しその影響を排除すれば足りる③平成18年8月21日以前の市場株価は当時のターゲット会社の
企業価値を繁栄しており、基礎とできる。
本件公開買付けの公表日からさかのぼって6ヶ月間の市場株価の単純平均を旧レックス株式の取得日における客観的価値とした。(東京高裁H20.9.12)
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レックスHD事件
(プレミアムを20%とした論拠)
① 近接した時期の例をみてみると、公開買付けの公表前の3ヶ月又は6ヶ月の間の市場株価の単純平均値に約16.7%~27.4%のプレミアムを加算した価格をもって買付価格としていること。
② 平成12年~17年までの間に日本企業を対象とした公開買付けの事例のうち市場価格を上回る買付価格を設定した85例についてプレミアムの平均値を取ると、公開買付公表日直前の株価の終値の27.05%に達することが認められること。
高裁判決と論拠
客観的価値に20%を加算した額を取得価格とすべき(東京高裁H20.9.12)
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レックスHD事件
公正価格=①「客観的価値」+②「期待権の評価額」
裁判所の考える市場株価方式
② 期待権の評価額
強制的取得により失われる今後の株価の上昇に対する期待を評価した価額を考慮するのが相当である。
しかしながら、期待権を評価するロジックは存在しない。
評価ロジックから整理すると
公正価格=DCF法等による評価額=①「客観的価値」+②「期待権の評価額」
∴ ②「期待権の評価額」= DCF法等による評価額- ①「客観的価値」
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レックスHD事件
レックスHD裁判の背景とされた事項
独立委員会の不設置
MBO直前の業績下方修正
キャッシュ・アウト価格が公開買付価格と異なる可能性がある旨の開示
株式価値算定書を裁判所に提出しなかった
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その後のMBOを巡る裁判例
2009年 サンスター高裁 2010年 サイバード高裁
公正価格=①「客観的価値」+②「期待権の評価額」20%
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MBO件数推移
68
0
2
4
6
8
10
12
14
16
18
20
日本のMBO市場(非公開化型)
件数
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その後のMBOを巡る裁判例
2012年 カルチュア・コンビニエンス・クラブ 2013年 コージツ
DCF法で判断
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ジュピターテレコム事件
非上場化公表後、日経平均が上がってしまったケース
ピンクが会社の株価、青が日経平均
株価チャート
95
100
105
110
115
120
125
130
2013
/4/1
2013
/4/8
2013
/4/1
5
2013
/4/2
2
2013
/4/2
9
2013
/5/6
2013
/5/1
3
2013
/5/2
0
2013
/5/2
7
2013
/6/3
2013
/6/1
0
2013
/6/1
7
2013
/6/2
4
2013
/7/1
2013
/7/8
2013
/7/1
5
2013
/7/2
2
(%)
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ジュピターテレコム事件
事案
ジュピターテレコムがJASDAQスタンダードに上場していたところ、住友商事及びKDDIがJCOM株式の公開買付けを実施した後、全部取得
条項付種類株式の取得価格について、当該取得に反対した株主が会社法172条1項1号に基づいて裁判所に取得価格の決定の申立てを行った。
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ジュピターテレコム事件
地裁、高裁決定
公正価格=①「客観的価値」+②「期待権の評価額」
①「客観的価値」=9か月以上も前のものであり、その間に本件株式にも影響
を与えるものと推認されるような事情により市場全体の株価の動向を示す指標が大きく変動(ジャスダック指数は74.9%、日経平均株価は60.7%上昇)したのであるから、
本件においては、市場株価そのものをもって本件株式の客観的価値と認めることは好ましいといえず、同日から本件取得日までの市場全体の株価の動向を踏まえた補正を行う
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ジュピターテレコム事件
補正の方法
tmtit uRR ++= βα
Ri 企業iの株価変動率Rm 日経平均株価、TOPIXなどの市場を代表する株価指数の変動率α 定数項β 回帰係数U 確率的に変動する誤差項
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ジュピターテレコム事件
地裁、高裁決定
公正価格=①「客観的価値」+②「期待権の評価額」
②「期待権の評価額」 =25%
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ジュピターテレコム事件
■ 最高裁判所
取引が公正であり、当該取引の基礎となった事情に予期しない変動が生じたと認める特段の事情かない場合には、公開買付価格と同額の価格決定をすることが相当であることを判示
・原則として,公正な手続を通じて形成された取引条件である買付け等の価格を尊重し,取引の基礎とした事情に予期しない変動が生じたと認めるに足りる特段の事情のない限り,当該買付け等の価格をもって取得価格とすべきものであると解するのが相当
・公正な手続等を通じて買付け等の価格が定められたとは認められない場合には、裁判所が取得価格を決定することになるが、その算定方法は市場株価分析 によら
ざるを得ないこともあろう。ただし、裁判所が裁量権の行使に当たり、関係当事者等の経済取引的な判断を尊重してこれに委ねるべきか否かを判断するに当たっては、この方法が株式価格に関する多元的な要因を広く捉えるものとはいい難いという点も考慮する必要がある。
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セイコーフレッシュフーズ事件
■ 新聞の見出し「将来の収益性で計算なら…非上場株の減額認めず 最高裁、株主訴え認める M&A、算定法統一へ」
■ 最高裁決定
・吸収合併等に反対する株主に公正な価格での株式買取請求権が付与された趣旨が、(中略)反対する株主に会社からの退出の機会を与えるとともに、退出を選択した株主には企業価値を適切に分配するもの
・非流動性ディスカウントは、非上場会社の株式には市場性がなく、上場株式に比べて流動性が低いことを理由として減価をするものであるところ、収益還元法は、当該会社において将来期待される純利益を一定の資本還元率で還元することにより株式の現在の価格を算定するものであって、同評価手法には、類似会社比準法等とは異なり、市場における取引価格との比較という要素は含まれていない。
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まとめ
77
価格決定申立事件から学ぶこと
手続の公正性(ベスト・プラクティスの理解)
最後はインプットの合理性・キャッシュフロー・割引率
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以上
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