10
とりこぼしのない薬杯(折り紙シート)の作成 多摩総合医療センター - 131 -

とりこぼしのない薬杯 折り紙シート の作成...多摩総合医療センター テーマ名 とりこぼしのない薬杯(折り紙シート)の作成 サークル名

  • Upload
    others

  • View
    45

  • Download
    0

Embed Size (px)

Citation preview

Page 1: とりこぼしのない薬杯 折り紙シート の作成...多摩総合医療センター テーマ名 とりこぼしのない薬杯(折り紙シート)の作成 サークル名

とりこぼしのない薬杯(折り紙シート)の作成

多摩総合医療センター

- 131 -

Page 2: とりこぼしのない薬杯 折り紙シート の作成...多摩総合医療センター テーマ名 とりこぼしのない薬杯(折り紙シート)の作成 サークル名
Page 3: とりこぼしのない薬杯 折り紙シート の作成...多摩総合医療センター テーマ名 とりこぼしのない薬杯(折り紙シート)の作成 サークル名

多摩総合医療センター テーマ名

とりこぼしのない薬杯(折り紙シート)の作成 サークル名 シュークリーム

メンバー名 4S ◎○峯岸 洋子 濱中 あづさ 早川 浩美

トーカイ 若林 朋子

1.テーマ選定理由 多摩総合医療センターは 29 床の結核病棟を有する。結核の治療は、6 ヶ月以上に及ぶ内

服が主となる。看護師は患者の入院中にDOTS(directly observed treatment, short-course : 直接観察下短期化学療法)と呼ばれる内服管理指導を行い、患者の服薬自己管理能力をあ

げることが重要な業務となる。一回に内服する抗結核薬の種類と数は多く、多くの患者は

一度に 10個以上内服することになる。また、高齢者や合併症のある患者がほとんどであり、

さらに多くの薬を内服している。患者は一錠ずつ PTP シートから薬を取りだすが、こぼれ

落ちたり、転がったり、散らばったりする。当病棟では水薬用のカップ型の薬杯を使用し

ているが、口が小さいため、PTP シートからとり出す時にこぼれ落ちることがある。また

薬を薬杯の中に入れると数や種類を確認しにくいなどの問題もある。そこで、とりこぼし

のない薬杯を開発し、作成することにした。 2.現状と問題点 (1)薬を PTP シートからテーブルの上に取り出しているため、薬が転がったり散らばっ

たりする。小さいお皿や、プリンやゼリーのカップを使用している患者もいる。 (2)水薬用のカップ型薬杯も使用しているが、口が小さいためこぼれやすい。 (3)薬杯が小さいため、薬の色や数を数えにくい。中に残っていても気づきにくい。 3.薬杯の作成:0.2 ㎜の厚さの黒のクラフトシートを使用して作成した。 4.結果:どこにも売っていない新製品「折り紙シート」を作成した。 特徴:①簡単に組み立てられる②四角い箱型で底面が広いので薬を取り出しやすい③黒い

色なので薬の確認がしやすい④開くと一枚のシートになるので持ち運びに便利⑤プラスチ

ック素材の為、簡単に汚れが落ち、拭いたり洗ったりすることができる⑥口元に運びやす

いよう、手のひらサイズにした⑦結核の服薬ノートにはさんでおくことができる。 使用後の感想:患者から「すごいね、これいいよ。」「これを使えばこぼれないよね、便利

だね。」「洗えるからいい。」「100 円均一で売れば売れるよ。」等良い評価であった。スタッ

フから「薬品業者に売ったらいいんじゃない。」「おまけになるよね。」等の意見があった。 5.今後の課題

私達は毎日、患者の内服動作を見て指導を行っている。薬を内服するにも患者それぞれ

内服の仕方が違う。その様子を見て今回内服に役立つものはないかと考え、製品として完

成させることができた。誰もが一度は薬を床などに落としたことがあると思う。確実に薬

を内服するための道具として、今回の取組が役に立つのであれば嬉しい。今後も改良を加

えて、多くの方が使えるシートを作っていきたい。

- 133 -

Page 4: とりこぼしのない薬杯 折り紙シート の作成...多摩総合医療センター テーマ名 とりこぼしのない薬杯(折り紙シート)の作成 サークル名

多摩総合医療センター テーマ名

とりこぼしのない薬杯(折り紙シート)の作成 サークル名 シュークリーム メンバー名 4S ◎○峯岸 洋子 濱中 あづさ 早川 浩美

トーカイ 若林 朋子 1.テーマ選定理由

多摩総合医療センターは病床数 756 床を有する多摩地域において総合診療基盤をもつ唯

一の都立病院である。その中で結核病棟は 29 床を有し、年間約 150 名の結核患者を受け入

れ治療を行っている。結核の治療は、6 ヶ月から 2 年間に及ぶ抗結核薬の内服が主となる。

退院後も内服を継続することが必要であり、看護師は患者の入院中に DOTS(directly observed treatment, short-course :直接観察下短期化学療法)と呼ばれる内服管理指導を行

い、患者の服薬自己管理能力をあげることが重要な業務となる。一回に内服する抗結核薬

は多剤併用が原則であり、数種類の抗結核薬を一度に 10 個以上内服することになる写真1)。

また、65 歳以上の高齢者の入院患者が 8 割以上を占め、更に合併症のある患者も多い。

そのため降圧剤や代謝薬剤等を内服しており、内服する薬の数は多い写真2)。

写真1 一回に内服する抗結核薬の例 写真2 現在入院している患者の一日分の薬の例

2010年 1月1日から2012年 12月 31日までに当結核病棟を退院した患者329名を調査(院

内調査)した結果では、退院時の内服薬(屯用薬を除く)の 1日の数量は 10 個以上内服し

ている患者が 85%以上で、最大 44錠服用している患者があった図 1)。

図 1 当結核病棟退院時の1日の内服薬数

- 134 -

Page 5: とりこぼしのない薬杯 折り紙シート の作成...多摩総合医療センター テーマ名 とりこぼしのない薬杯(折り紙シート)の作成 サークル名

抗結核薬を内服する時は、まず PTP シートのまま、服薬表に沿って種類と数を確認する

写真3)。その際に、自分の内服する薬品名や用量を覚えるよう指導している。次にPTPシ

ートから取りだして内服する。患者は一錠ずつ PTP シートから薬を取り出すが、ベッドや

床にこぼれ落ちたり、転がったり、散らばったりすることが度々ある写真4)。床に落ちるた

びに、医療作業員と床に這いつくばって探している。落ちた薬を確認し、再処方が必要と

なるためコストも時間もかかる。多くの患者は、コップのふたやプリンやゼリーのカップ、

小さなお皿を使用して薬を取りだしている。広告の紙で箱を作って利用している患者もい

た。

写真3 表に沿って並べ、種類と用量を確認する 写真4 テーブルの上に取りだしているところ

当病棟では水薬用のカップ型の薬杯写真5)も使用しているが、口が小さいため、PTP シー

トからとり出す時にこぼれ落ちることがある。また薬を小さい薬杯の中に入れると数や種

類を確認しにくいなどの問題もある。そして、いろいろ調べてみると、薬を飲むグッズは

とても少ないことがわかった。こんなに薬を飲む人が世の中に大勢いるのに、薬杯は開発

されていない。そこで、今回とりこぼしのない薬杯を独自に開発し、作成することにした。 写真5 当院で使用している薬杯

- 135 -

Page 6: とりこぼしのない薬杯 折り紙シート の作成...多摩総合医療センター テーマ名 とりこぼしのない薬杯(折り紙シート)の作成 サークル名

2.現状と問題点 (1)薬を PTP シートからテーブルの上に取り出すと、薬が転がったり散らばったりする。

小さいお皿や、プリンやゼリーのカップを使用している患者もいる。 (2)水薬用のカップ型の薬杯も使用しているが、口が小さいため、PTP シートから取り

だす時にこぼれやすい。 (3)薬杯が小さいため、薬の色や数を数えにくい。白い薬がカップに残っていても気が

付かないことがある。 3.改善策・・・薬杯の作成 0.2 ㎜の厚さのクラフトシートを使用して作成した。 (1)材料の検討

クラフトシートが厚いと折る際に割れてしまい、0.2 ㎜の厚さの物がよいと判断した。 薬は白い物が多いためクラフトシートは黒にした。(綿棒や歯ブラシなど黒の力が評価され

ている。) (2)薬杯の形

2種類の形を検討した。出来るだけシンプルにし、抗結核薬を内服することを前提に、

開くと 1 枚のシートになり、服薬ノートにはさむことができるようにした。 タイプA箱型写真6) タイプBシャベル型写真7) を検討。

写真6 タイプA 箱型 写真7 タイプB シャベル型

最終的に薬杯を持ち上げる際に、シャベル型であると縁のない部分からこぼれる可能性

があるため、タイプAのようにし、一片の先端をシャベル型にした。 (3)作成方法 ①大きさはA4サイズを 4 等分したシート(10×14 ㎝)を使用。手のひらから内服するこ

とも考え、手のひらサイズとした。 ②3辺に約 2.5 ㎝、1 辺は 4.5 ㎝ 内側にそれぞれラインを引く写真8)。 ③箱型になるように、カッターでシートを切らない程度に、山折り線、谷折り線を入れる。

- 136 -

Page 7: とりこぼしのない薬杯 折り紙シート の作成...多摩総合医療センター テーマ名 とりこぼしのない薬杯(折り紙シート)の作成 サークル名

④4.5 ㎝のまち部分は楕円状にカットし、シャベル状になるように谷折り線を入れる。 ⑤山折り線、谷折り線をしっかりと折りまげ、箱状にする。 ⑥箱型の三角の部分を止めるため 4ヵ所に切り込みを入れる写真9)。

写真8 作成図 写真9 三角部分を止める切り込み線

(4)使用方法 ①一枚のシートになっている。 ②折線にそって箱型に折り曲げる。 ③三角になった角を切り込みに入れる写真9 ①)。 ④シャベル状に折った下の三角部分を切り込みに差し込む。軽く折り曲げ押すようにして

入れる写真9 ②)。 ⑤箱状になった薬杯の中に PTP シートから薬をとり出す写真10)。 ⑥シャベル部分の切り込みを外すと口元や手のひらにスムーズに運ぶことができる 写真11、12)。

写真10 写真11 写真12

写真 10 薬を PTP シートから取り出している様子

写真 11 切り込み部分を外しシャベル状にして手に取り出している様子

写真 12 切り込み部分を外しダイレクトに薬を口の中に入れる様子

- 137 -

Page 8: とりこぼしのない薬杯 折り紙シート の作成...多摩総合医療センター テーマ名 とりこぼしのない薬杯(折り紙シート)の作成 サークル名

4.結果 どこにも売っていない新製品、折り紙シートを作成した写真13―1・2)。

(1)薬杯の特徴 ①簡単に組み立てられる。②四角い箱型で底面を広くしたので薬を取り出しやすい。

③黒い色なので薬の確認がしやすく見やすい。④開くと一枚のシートになるので持ち

運びにも便利。⑤簡単に汚れが落ち、拭いたり洗ったりすることができるようプラス

チック素材とした。⑥口元に運びやすいよう、手のひらサイズにした。⑥結核の「服

薬ノート」にはさんでおくこともできる写真14)。

写真13-1 完成品に抗結核薬を入れたところ

写真14 服薬ノートに挟むことができる

写真13-2 水薬用の薬杯と完成品

- 138 -

Page 9: とりこぼしのない薬杯 折り紙シート の作成...多摩総合医療センター テーマ名 とりこぼしのない薬杯(折り紙シート)の作成 サークル名

(2)使用後の感想 「すごいね。これいいよ。」「これを使えばこぼれないよね。便利だね。」「薬をシートから

出す時に飛び跳ねない。」「落としたことあるの。良く考えたね。」「洗えるからいい。」「100

円均一で売れば売れるよ。」「俺が退院したら特許とっちゃおう。」等、良い評価であった。

スタッフからは、「薬品業者に売ったらいいじゃない。後ろに名前が入ればいい宣伝になる

よ。」「おまけになるよね。」などの意見があった。 5.今後の課題

私たち看護師は毎日、患者の内服動作を見て指導を行っている。薬を内服するにも、患

者それぞれ内服の仕方が違っているため、その様子を見て内服に役立つものはないかと考

え、それを製品として完成させることができた。誰もが一度は薬を床などに落としたこと

があると思うが、確実に薬を内服するための道具として、今回の取り組みが役に立つので

あれば、こんなにうれしいことはない。今後も改良を加えて、多くの方が使えるシートを

作っていきたい。

資料 1 折り紙シート実物大の作成図 型紙としてご利用下さい。

点線:谷折り線 実線:山折り線 :切り込み線

- 139 -

Page 10: とりこぼしのない薬杯 折り紙シート の作成...多摩総合医療センター テーマ名 とりこぼしのない薬杯(折り紙シート)の作成 サークル名