Upload
others
View
0
Download
0
Embed Size (px)
Citation preview
[email protected] March 2011
生きた要求を捕まえる
生きた要求を捕まえる ~HTV(こうのとり)の開発を通じて学んだこと~
慶応義塾大学大学院
システムデザイン•マネジメント研究科
白坂成功
第5回要求シンポジウム
[email protected] March 2011
生きた要求を捕まえる
Contents
1.
はじめに–
自己紹介
–
今日伝えたいこと
–
SDM紹介
2.
HTV(こうのとり)の経験
3.
最近のシステムエンジニアリングでの話題
4.
まとめ
3
©NASA
[email protected] March 2011
生きた要求を捕まえる 4
1.はじめに:自己紹介
•
1994年
大学院修士課程修了(航空宇宙工学専攻)
•
1994年
大手電機メーカ入社
人工衛星開発に従事(15年間)
•
おりひめひこぼし(技術試験衛星VII型)の運用設備の開発、運用メンバー
•
ランデブードッキング試験設備の開発
•
宇宙ステーション輸送機(HTV:H-II Transfer Vehicle)のシステム設計、運
用システムの設計、運用メンバー
•
ドイツAstrium社に駐在(ESAの衛星システムシミュレータ開発)
•
準天頂衛星システム、総合システム開発のプロジェクト管理、システム設計
•
2004年より慶応義塾大学非常勤講師、2010年4月より慶応大学専任准教授
[email protected] March 2011
生きた要求を捕まえる
1.はじめに:今日伝えたいこと
•
表面上にとらわれず、本質・根本を考える必要がある–
表面を追いかけるから逃げられる。根本を抑えると逃げられない。
•
Holistic(全体的に)考える必要がある–
一部をみるから、影響を受ける。全体をみておけば、変化は小さい。
–
それでもContext(取り巻く環境)の変化は常にある・・・・
5
[email protected] March 2011
生きた要求を捕まえる
1.はじめに:慶応SDM
•
新しく大きな構想を描き、世 界をリードしていける人材の 育成
•
Vモデルを活用
•
多様な視点からの問題解決–
木を見て、森も見る
•
http://www.sdm.keio.ac.jp/
6
[email protected] March 2011
生きた要求を捕まえる
1.はじめに:慶応SDM
•
多様な学生のメルティングポット
7
平均年齢32歳就業経験:34%
修士
平均年齢42歳就業経験:89%
博士
Manufacturing, 19.6
Communications, 11.2
Consulting, 10.3
Informaton Technology,
9.3
Aerospace, 6.5
Finance, 4.7
Real Estate, 3.7
Government, 3.7
Construction, 3.7
Enegy, 3.7
System, 2.8
Medical, 1.9 Publishing/Med
ia, 1.9
Legal, 1.9 Logistics, 1.9
Teacher, 1.9
Education, 1.9 Material, 1.9
Design, 1.9 Civil
Servant, 1.9
Sports, 0.9 Translation, 0.9 Food, 0.9 Pharmaceutical, 0.9
(%)
多様なバックグラウンド
留学生20%、年々増加中
1.はじめに:慶応SDM
[email protected] March 2011
生きた要求を捕まえる
1.
はじめに
2.
HTV(こうのとり)の経験–
HTVについて
–
フライトセグメント開発より
–
グランドセグメント開発より
3.
最近のシステムエンジニアリングでの話題
4.
まとめ
8
©NASA
[email protected] March 2011
生きた要求を捕まえる
Seiko Shirasaka
2.HTV(こうのとり)の経験:HTVについて
9
© JAXA (HTV1Press Kitより)
全長:約9.8m直径:約4.4m総質量:最大16.5ton補給能力:最大6ton
[email protected] March 2011
生きた要求を捕まえる 10
2.HTV(こうのとり)の経験:フライトセグメント開発より
①コンピュータ安全性設計
• 通常の衛星:宇宙には人がいないため、射場での安全 性のみ考慮
• スペースシャトル時代:最後は宇宙飛行士が操作可能• 宇宙ステーション時代:巨大な宇宙ステーションを数
名の宇宙飛行士ですべて切り盛りするのは困難。コン ピュータに頼らざるを得ない
• HTVの場合、常に人が監視できるわけではない。→人には頼れない
背景
[email protected] March 2011
生きた要求を捕まえる 11
2.HTV(こうのとり)の経験:フライトセグメント開発より
①コンピュータ安全
NASAの新要求• コンピュータ安全要求
コンピュータを安全管理に使う場合の要求
文字をそのまま追っているだけでは何 をやればいいのかわからない・・・
「哲学書」
[email protected] March 2011
生きた要求を捕まえる 12
2.HTV(こうのとり)の経験:フライトセグメント開発より
①コンピュータ安全
• 経験者(「きぼう」の開発者)に教えを請う。• 表面的には納得して、NASAと交渉
コンピュータシステムが安全になるにはどうすればい いのか?それを実現するために作られた要求である!
「これなら安全になるはず」と考えたものをベースに、 要求の解釈・設計方針をNASAに説明し、合意を得る
[email protected] March 2011
生きた要求を捕まえる 13
2.HTV(こうのとり)の経験:フライトセグメント開発より
①コンピュータ安全
どこにも書かれてない要求を後から指摘される(Common
Mode
Failure)
「安全」に対する本質的要求は変わっていない。しかし、何が良くて、何が悪いかという評価クライテリア
が変化した。(明確になった?)
NASAもシャトル開発、ソユーズの運用経験に加え、ATV
(欧州版HTV)の開発を通じて知見を得たのでは?つまり、要求を出す側のContextが変化してしまった。
(「
HTVの安全設計と安全審査の実際」、WOCS2009 中村、白坂より)
[email protected] March 2011
生きた要求を捕まえる 14
2.HTV(こうのとり)の経験:グランドセグメント開発より
②分散シミュレーションシステム
背景• どれほど難しい運用になるか、やってみないとわから
ない。(NASAもやったことがない、まして・・・)→こういう運用でいいだろうという想定で開発
• なるべく実際に近い形で運用訓練をやりたい
高精度なHTVシ
ミュレータ
高精度なHTVシ
ミュレータ高精度なISS
シミュレータ
高精度なISS
シミュレータ
データ交換による協調動作
分散シミュレーションシステムの構築
(「三菱電機における宇宙用クリティカルソフトウェア開発への取り組み」WOCS2002 白坂より)
[email protected] March 2011
生きた要求を捕まえる 15
2.HTV(こうのとり)の経験:グランドセグメント開発より
②分散シミュレーションシステム
高精度なHTVシ
ミュレータ
高精度なHTVシ
ミュレータ高 精 度 な ISS
シミュレータ
高 精 度 な ISS
シミュレータ
データ交換による協調動作
NASAミッション
コントロールセンタ(「三菱電機における宇宙用クリティカルソフトウェア開発への取り組み」WOCS2002 白坂より)
©JAXA
©NASA
[email protected] March 2011
生きた要求を捕まえる 16
2.HTV(こうのとり)の経験:グランドセグメント開発より
②分散シミュレーションシステム
Step2-1Step2-1A
Step2-2 Pre-Step3 RiskMitigation
Step1Step0
FeasibilityStudy
Step3
SystemIntegration
• 何ができるかわからない- Feasibility
Studyを通じたEvolutional
Model
• その後はRisk
Mitigation:Incremental
Model
実際に訓練を行ってみると、運用
が難しいところが発見され、搭載
ソフトウェアの要求を変更して改
修を実施
HTVフライトセグメントだけでなく、
運用、NASAまで含めた要求の検討
が必要
[email protected] March 2011
生きた要求を捕まえる
Seiko Shirasaka
2.HTV(こうのとり)の経験の経験を通じて感じたこと・・
•
表面上にとらわれず、本質・根本を考える必要がある–
表面を追いかけるから逃げられる。根本を抑えると逃げられない。
•
Holistic(全体的に)考える必要がある–
一部をみるから、影響を受ける。全体をみておけば、変化は小さい。
–
それでもContext(取り巻く環境)の変化は常にある・・・・
17
表面的な安全要求に適合することより、本当に安全 とはどういうことかを考えることが大切だった
自分の担当範囲外の変化が間接的に自分に影響され る。NASA自身の開発経験・運用経験の変化が、HTV
のフライトセグメントの要求変化となる
[email protected] March 2011
生きた要求を捕まえる
1.
はじめに
2.
HTV(こうのとり)の経験
3.
最近のシステムエンジニアリングでの話題–
視点
–
シリーズとファミリー
–
"7人の侍"
4.
まとめ
19
©NASA
[email protected] March 2011
生きた要求を捕まえる
3.最近のシステムエンジニアリングでの話題:視点
•
システムは視点によって違って見えるので、多視点から見る 必要がある。(IEEE1471)
20
日経ものづくり2010年10月号より
•
視点だけでなく、範囲(Scope)と分解能(Resolution)に よって見え方が変わる。
[email protected] March 2011
生きた要求を捕まえる
3.最近のシステムエンジニアリングでの話題:視点
•
既存の視点:アーキテクチャフレームワークとして、存在
21
•
DoD
Architecture Framework (DoDAF)
•
C4ISR Architecture Framework (C4ISRAF)
•
Federal Enterprise Architecture Framework (FEAF)
•
Air Force Enterprise Architecture Framework (AF-EAF)
•
Zachman
Architecture Framework (ZAF)
•
The Open Group Architecture Framework (TOGAF)
•
経産省Enterprise Architecture
適用範囲を限ることで、その適応ドメインにあった視点を用意システム開発を助ける。但し、適用範囲から外れると使えない。
[email protected] March 2011
生きた要求を捕まえる
•
Zachman
Architecture Framework
DATA FUNCTION NETWORK PEOPLE TIME MOTIVATION
SCOPE
ENTERPRISE MODEL
SYSTEM MODEL
TECHNOLOGY MODEL
COMPONENTS
What How Where Who When Why
22
5つの視点
3.最近のシステムエンジニアリングでの話題:視点
[email protected] March 2011
生きた要求を捕まえる
3.最近のシステムエンジニアリングでの話題:視点経産省
Enterprise Architecture Framework
政策・業務体系(Business Architecture)
データ体系(Data Architecture)
適用処理体系(Applications Architecture)
技術体系(Technology Architecture)
Standards(データモデル、セキュリティ要件などの標準を策定)
As Is
BusinessArchitecture
DataArchitecture
ApplicationsArchitecture
TechnologyArchitecture
To Be
BusinessArchitecture
DataArchitecture
ApplicationsArchitecture
TechnologyArchitecture
Transitional Processes(業務、システムなどの移行管理計画を策定)
現状(AsIs)モデル
理想(ToBe)モデル
次期モデル
政策・業務体系(Business Architecture)
データ体系(Data Architecture)
適用処理体系(Applications Architecture)
技術体系(Technology Architecture)
Standards(データモデル、セキュリティ要件などの標準を策定)
As Is
BusinessArchitecture
DataArchitecture
ApplicationsArchitecture
TechnologyArchitecture
To Be
BusinessArchitecture
DataArchitecture
ApplicationsArchitecture
TechnologyArchitecture
Transitional Processes(業務、システムなどの移行管理計画を策定)
現状(AsIs)モデル
理想(ToBe)モデル
次期モデル
23
4つの視点
[email protected] March 2011
生きた要求を捕まえる
3.最近のシステムエンジニアリングでの話題:視点
Capability Viewpoint
Operational Viewpoint
Services Viewpoint
Systems Viewpoint
Projects V
iewpoint
Standards V
iewpoint
Data &
Information
View
point
All V
iewpoint
4 “Views” 8 “Viewpoints”
26 “Products” 52 “Models”Added Project & Capability Viewpoints (from MODAF)Added Service Viewpoints (from NATO)
24
DoDAF2.0
[email protected] March 2011
生きた要求を捕まえる
3.最近のシステムエンジニアリングでの話題:視点
25
IEEE1471-2000 Recommended practice for architectural description of software-intensive systems
[email protected] March 2011
生きた要求を捕まえる
3.最近のシステムエンジニアリングでの話題:視点
•
要求はどのような視点で見るのか?
•
上流?
•
超上流?
26
保険金の支払い漏れが発生しないための情報システムの要求は?
[email protected] March 2011
生きた要求を捕まえる
3.最近のシステムエンジニアリングでの話題:視点 システムの目的
(主目的)
•
顧客が保険金を正しく受け取る
(副目的)
•
査定不服時の請求
•
経営陣による内部管理
•
苦情のくみ上げ
•
内部監査の実施
27
[email protected] March 2011
生きた要求を捕まえる
3.最近のシステムエンジニアリングでの話題:視点
視点の構成
行動促進
目的
行動
モチベーション規則
EnablerUtilize
Utilize Enabler
契約者が正しく保険金を
受け取る
「モチベーション」は人々
が自発的に行動すること
を促す
「規則」は人々が行動を起
こすことを強要する。
行動確認
行動/行動確認支援
Utilize行動
28
[email protected] March 2011
生きた要求を捕まえる
行動促進の視点
規則の視点 モチベーションの視点
行動確認の視点
目的の視点
行動の視点
行動・行動確認支援の視点
“行動”は目的からブ
レークダウンされる(縦
の関係)
“行動確認”は“行動”に対応し、
目的からブレークダウンされて
いるわけではない(横の関係)
“強制”と“自発”は行動からブレークダ
ウンされる。(縦の関係)相互に関連
している。(横の関係)
“行動行動確認支援”は“行動”と
“行動確認”からブレークダウンさ
れる。(縦の関係)
29
3.最近のシステムエンジニアリングでの話題:視点
[email protected] March 2011
生きた要求を捕まえる
3.最近のシステムエンジニアリングでの話題: "7人の侍"
32
“The Seven Samurai of Systems Engineering Dealing with the Complexity of 7 Interrelated Systems”By James Martin
[email protected] March 2011
生きた要求を捕まえる
4.まとめ
•
表面上にとらわれず、本質・根本を考える必要がある–
表面を追いかけるから逃げられる。根本を抑えると逃げられない。
•
Holistic(全体的に)考える必要がある–
一部をみるから、影響を受ける。全体をみておけば、変化は小さい。
–
それでもContext(取り巻く環境)の変化は常にある・・・・
33
表面的な要求を追いかけるのではなく、本当に必要な のことは何かを考える。(視点)
全体的に見る(シリーズ、ファミリー)。それでもわからな いこともあると想定して対処する。(”7人の侍”)
Lenovo、JAXA、NASA、その他記載されている会社名、団体名、
商品名、サービス名等は、各社、各団体の商標または登録商標です。