13
57 a) 北陸製薬株式会社(〒911 8555 勝山市猪野口 37 1 1b) 日東電工株式会社(〒567 8680 茨木市下穂積 1 1 2 本総説は,平成 13 年度日本薬学会創薬科学賞の受賞 を記念して記述したものである. 57 YAKUGAKU ZASSHI 122(1) 5769 (2002) 2002 The Pharmaceutical Society of Japan Reviews気管支喘息治療薬ツロブテロールの経皮吸収型製剤の開発 加藤日出男, ,a 永田 治, a 山﨑昌弘, a 鈴木利広, a 仲野善久 b Development of Transdermal Formulation of Tulobuterol for the Treatment of Bronchial Asthma Hideo KATO, , a Osamu NAGATA, a Masahiro YAMAZAKI, a Toshihiro SUZUKI, a and Yoshihisa NAKANO b Hokuriku Seiyaku Co., Ltd., 37 1 1, Inokuchi, Katsuyama, Fukui 911 8555, Japan and NITTO DENKO CORPORATION, 1 1 2, Shimohozumi, Ibaraki, Osaka 567 8680, Japan (Received September 10, 2001) b 2 Adrenergic agonists have been widely used to treat patients with asthma. Usually, oral dosage forms of b 2 agonists have been used, but side eŠects such as palpitation and tremor have been reported because of excessive serum levels around Tmax. It is said that circadian variations exist in the manifestation of asthma with maximum incidence of asthma attacks in early morning at around 4 a.m., the so-called morning dip. Chronotherapy for asthma based on circa- dian rhythm should be more e‹cient and have a lower frequency of side eŠects. Accordingly we developed a transdermal delivery system of the b 2 agonist tulobuterol adapted to the circadian rhythm. The system is designed to administer the appropriate dose of the drug at an optimal time using the so-called Crystal Reservoir System. The superiority of the transdermal formulation of tulobuterol over the current therapy using oral formulations of b 2 stimulants was indicated by its excellent pharmacokinetic proˆle, and conˆrmed by the results of clinical trials. This formulation is the ˆrst trans- dermal chrono-delivery system reported anywhere in the world, and is expected to provide more eŠective and safe treat- ment of asthma and related diseases not only in adults, but also especially in children. Key wordstulobuterol; chronotherapy; transdermal delivery system; b 2 adrenergic agonists; asthma 1. はじめに 高度成長と引き換えに大気汚染,気密化された建 物,食生活の変化などアレルギーの要因となる環境 の激変に伴い,喘息患者数は増加の一途をたどって いる.厚生労働省の調査 1) によれば,1987 年の喘息 患者数は 76 万人であったが,1996 年には 115 万人 50 %の増加を示し,さらに今後も増え続け, 2002 年には 150 万人,2008 年には 200 万人にも達 するとさえ言われている. 2) 一方,わが国の人口 10 万人あたりの喘息死亡率は,1950 年から 1980 年ま でに大幅に減少した. 3) これは,その当時の喘息治 療薬の開発が大きく貢献すると共に,医療体制の充 実により,医師による管理が十分に行われるように なった結果と考えられる. 死亡率の減少に貢献した喘息治療薬として,主に 抗炎症作用を示すステロイド剤,気管支拡張作用を 示すテオフィリン製剤や b 刺激剤,そして種々の ケミカルメディエーター遊離抑制作用や拮抗作用を 示す抗アレルギー剤があげられる.まず,ステロイ ド剤では,それまでの経口剤から,副作用の軽減を 目的とした局所投与の吸入剤が開発された.近年, 気管支喘息が気の炎症による慢性疾患であること 解明され,強力な抗炎症作用をするステロイド 剤が喘息治療の中心となりつつある.キサン製 剤では,長時にわたって安定した血中濃度を維持 できる経口 徐放 製剤の開発がなされ, RTC Round the Clock )療として用されている. 抗アレルギー剤では,ケミカルメディエーター遊離 抑制薬である吸入剤モグク酸ナトウムまり,プライアンスにれた経口投与がトラニラ,さらにケトチンをはじめする抗スタミン剤などが開発され,近では脂質

Development of Transdermal Formulation of Tulobuterol for …Treatment of Bronchial Asthma Hideo KATO, ,a Osamu NAGATA,a Masahiro YAMAZAKI,a Toshihiro SUZUKI,a and Yoshihisa NAKANOb

  • Upload
    others

  • View
    3

  • Download
    0

Embed Size (px)

Citation preview

Page 1: Development of Transdermal Formulation of Tulobuterol for …Treatment of Bronchial Asthma Hideo KATO, ,a Osamu NAGATA,a Masahiro YAMAZAKI,a Toshihiro SUZUKI,a and Yoshihisa NAKANOb

hon p.1 [100%]

57

a)北陸製薬株式会社(〒9118555 勝山市猪野口 3711)

b)日東電工株式会社(〒5678680 茨木市下穂積 112)本総説は,平成 13年度日本薬学会創薬科学賞の受賞を記念して記述したものである.

57YAKUGAKU ZASSHI 122(1) 57―69 (2002) 2002 The Pharmaceutical Society of Japan

―Reviews―

気管支喘息治療薬ツロブテロールの経皮吸収型製剤の開発

加藤日出男,,a 永田 治,a 山﨑昌弘,a 鈴木利広,a 仲野善久b

Development of Transdermal Formulation of Tulobuterol for theTreatment of Bronchial Asthma

Hideo KATO,,a Osamu NAGATA,a Masahiro YAMAZAKI,a

Toshihiro SUZUKI,a and Yoshihisa NAKANOb

Hokuriku Seiyaku Co., Ltd., 3711, Inokuchi, Katsuyama, Fukui 9118555,Japan and NITTO DENKO CORPORATION, 112, Shimohozumi,

Ibaraki, Osaka 5678680, Japan

(Received September 10, 2001)

b2Adrenergic agonists have been widely used to treat patients with asthma. Usually, oral dosage forms of b2

agonists have been used, but side eŠects such as palpitation and tremor have been reported because of excessive serumlevels around Tmax. It is said that circadian variations exist in the manifestation of asthma with maximum incidence ofasthma attacks in early morning at around 4 a.m., the so-called morning dip. Chronotherapy for asthma based on circa-dian rhythm should be more e‹cient and have a lower frequency of side eŠects. Accordingly we developed a transdermaldelivery system of the b2agonist tulobuterol adapted to the circadian rhythm. The system is designed to administer theappropriate dose of the drug at an optimal time using the so-called Crystal Reservoir System. The superiority of thetransdermal formulation of tulobuterol over the current therapy using oral formulations of b2stimulants was indicatedby its excellent pharmacokinetic proˆle, and conˆrmed by the results of clinical trials. This formulation is the ˆrst trans-dermal chrono-delivery system reported anywhere in the world, and is expected to provide more eŠective and safe treat-ment of asthma and related diseases not only in adults, but also especially in children.

Key words―tulobuterol; chronotherapy; transdermal delivery system; b2adrenergic agonists; asthma

1. はじめに

高度成長と引き換えに大気汚染,気密化された建

物,食生活の変化などアレルギーの要因となる環境

の激変に伴い,喘息患者数は増加の一途をたどって

いる.厚生労働省の調査1)によれば,1987年の喘息

患者数は 76万人であったが,1996年には 115万人

と 50%の増加を示し,さらに今後も増え続け,

2002年には 150万人,2008年には 200万人にも達

するとさえ言われている.2)一方,わが国の人口 10

万人あたりの喘息死亡率は,1950年から 1980年ま

でに大幅に減少した.3)これは,その当時の喘息治

療薬の開発が大きく貢献すると共に,医療体制の充

実により,医師による管理が十分に行われるように

なった結果と考えられる.

死亡率の減少に貢献した喘息治療薬として,主に

抗炎症作用を示すステロイド剤,気管支拡張作用を

示すテオフィリン製剤や b刺激剤,そして種々の

ケミカルメディエーター遊離抑制作用や拮抗作用を

示す抗アレルギー剤があげられる.まず,ステロイ

ド剤では,それまでの経口剤から,副作用の軽減を

目的とした局所投与の吸入剤が開発された.近年,

気管支喘息が気道の炎症による慢性疾患であること

が解明され,強力な抗炎症作用を有するステロイド

剤が喘息治療の中心となりつつある.キサンチン製

剤では,長時間にわたって安定した血中濃度を維持

できる経口徐放製剤の開発がなされ, RTC

(Round the Clock)療法として繁用されている.

抗アレルギー剤では,ケミカルメディエーター遊離

抑制薬である吸入剤クロモグリク酸ナトリウムに始

まり,服薬コンプライアンスに優れた経口投与が可

能なトラニラスト,さらにケトチフェンをはじめと

する抗ヒスタミン剤などが開発され,最近では脂質

Page 2: Development of Transdermal Formulation of Tulobuterol for …Treatment of Bronchial Asthma Hideo KATO, ,a Osamu NAGATA,a Masahiro YAMAZAKI,a Toshihiro SUZUKI,a and Yoshihisa NAKANOb

hon p.2 [100%]

5858 Vol. 122 (2002)

メディエーター抑制剤も上市されている.また,次

世代の抗アレルギー剤といわれる抗サイトカイン薬

も開発されつつある.一方,b刺激剤は,アドレナ

リンに始まり,a作用と b作用の分離がなされた第

一世代のイソプロテレノール,b1作用と b2作用の

分離がなされたサルブタモールなどの第二世代,さ

らに作用の持続性が図られた第三世代へと発展し

た.しかしながら,いまだ過度の血中濃度上昇によ

り発現する副作用の改善は不十分であった.また,

吸入剤は,持続性に乏しく,さらに過量投与による

喘息死の問題及びエアゾール剤の媒体として使用さ

れているフロンが大きな社会問題になっていた.実

際,我々が本剤の開発を始めた 1988年当時におけ

る喘息治療薬の開発は,多くの製薬企業が抗アレル

ギー剤に集中して開発競争を繰り広げていた.一

方,ステロイド剤,キサンチン製剤及び b 刺激剤

については顧みられることがなく,低薬価というこ

と,さらに b 刺激剤に至っては,吸入剤による突

然死の問題がニュージーランドを中心として取り上

げられていた.そのような状況下で,我々はあえて

b 刺激剤を用いた DDS による経皮吸収型製剤

(Transdermal Delivery System)の開発を選択した.

2. 開発コンセプト

開発にあたって,まず,当時の喘息治療上の問題

点を調査した.喘息治療において改善すべきことは

何か,すなわち,それは「喘息患者の QOL(Qual-

ity of Life)の改善」が最も重要であると考えた.

東北大学の田村ら4)が行った喘息治療の満足度につ

いてのアンケートによると,喘息患者のわずか 30

%程度が現在の治療に満足しているのみであり,多

くの喘息患者が QOLの改善を必要としていること

がわかる.さらに日常生活上どの時間帯に満足して

いないかを調査した結果,「仕事・学校」及び「普段

の生活」に比べて,「朝起きた時」の調子が最も悪

く,これが喘息患者の大きな不満となっているもの

と考えられた.

スモレンスキーら5)が未治療の喘息患者 3,000名

に対して喘息発作がいつ起こるかを調査した結果,

喘息発作の発生は,早朝 4時頃に集中しており,こ

れを抑制することができれば,患者の QOL改善に

つながり,介護者の負担も軽減されるものと思われ

た.喘息発作が早朝に起こりやすい原因としては,

ヒトの呼吸機能には,サーカディアンリズム(日内

リズム)があり,1日の内,夕方 4時ごろピークを

迎え,朝方の 4時頃に最も低下することが知られて

いる.6)喘息患者では,健常人に比べてこの呼吸機

能の日内変動が大きく,いわゆる「モーニングディ

ップ」と呼ばれる呼吸機能低下となって現れ,7,8)多

くの喘息発作は,このモーニングディップが引き金

となって起きるものと考えられている.そこで,早

朝の喘息発作を抑えるためには,このモーニングデ

ィップを予防することが重要であると考えた.

これらのことから喘息患者の QOL改善のために

は以下のことが重要と考え,開発のコンセプトとし

た.◯1モーニングディップ(早朝の呼吸機能の低下)

の予防◯2作用の持続(血中濃度の維持)◯3副作用の

軽減

北陸製薬株が 1987年に開発した第三世代の b刺

激剤である塩酸ツロブテロール経口剤 1 mgを 1日

2 回投与した場合の血中濃度推移より,ツロブテ

ロールの有効血中濃度は 1 ng/ml程度と考えられて

いることから,目標血中濃度を 1 ng/ml以上に設定

し,安定した血中濃度推移を維持する製剤を企画し

た.また,副作用の発現に関わると考えられる過度

の血中濃度上昇を防ぐこと,すなわち,血中濃度の

ピークカットを行うことにより,副作用の軽減を目

指した.Figure 1に我々が理想と考えた血中濃度推

移を示す.前述のとおり,呼吸機能には 1日を周期

としたサーカディアンリズムがあるため,このリズ

ムに併せて,呼吸機能が最も低下する朝方に,血中

濃度を最も高くすることで,モーニングディップを

最も効果的に予防することができると考えた.さら

に,治療域濃度内に血中濃度を維持することで,作

用の持続と副作用の軽減が図れるものと考えた.血

中濃度推移をコントロールするためには,薬物の量

的,時間的制御が必要である.すなわち,必要な量

を,必要な時に作用させることで,モーニングディ

ップを抑制し,十分な有効性を発揮させるととも

に,動悸・振戦などの副作用を軽減させることが可

能となる.これがまさに DDSの目指すところであ

る.

DDSには種々の方法が考えられるが,我々は以

下に示す理由から,Transdermal Delivery System

を選択した.経皮吸収型製剤の利点の第 1は,放出

速度の制御が容易なことである.すなわち,血中濃

度がコントロールしやすいため,最高血中濃度到達

Page 3: Development of Transdermal Formulation of Tulobuterol for …Treatment of Bronchial Asthma Hideo KATO, ,a Osamu NAGATA,a Masahiro YAMAZAKI,a Toshihiro SUZUKI,a and Yoshihisa NAKANOb

hon p.3 [100%]

59

Fig. 1. Ideal Time Proˆles of Serum Concentration

Fig. 2. Chemical Structures of b2Agonists

59No. 1

時間 Tmax の設定や,効果の持続が可能になり,血

中濃度のピークカットも可能である.第 2は,コン

プライアンスの改善が図れることである.すなわ

ち,経口・吸入投与が困難な患者にも投与が可能で

あり,投薬の確認も容易になり,小児から高齢者ま

での適用が可能となる.全身作用を目的とした経皮

吸収型製剤の開発は,これまで多くの研究者によ

り,多大な努力が重ねられてきた.しかしながら,

わが国においては,1983 年発売の硝酸イソソルビ

ド(狭心症),1989年発売のニトログリセリン(狭

心症),1995年発売のエストラジオール(更年期障

害)があるのみでその成功例は少なく,開発上何ら

かの大きな障壁があるものと考えられた.一般に経

皮吸収型製剤の開発上の障壁と考えられるものとし

て,適用薬物がその脂溶性,融点,安定性等の物理

的化学的性質により限定されるということがある.

また,貼付剤特有の皮膚刺激性の問題,吸収量の個

体差,貼付部位差の問題などに加え,特殊な製剤化

技術が必要である.製剤開発には,これらの多くの

課題を乗り越えなければならない.

3. ツロブテロールの経皮吸収型製剤への適性

b2 刺激薬の経皮吸収型製剤への適性について調

査する目的で,喘息治療薬として汎用されている

b2 刺激薬の中から,北陸製薬株の自社開発品であ

るツロブテロールを含め,4種の構造の異なる薬物

(Fig. 2)について,分配係数,化学的安定性及び

融点の比較検討を行った.試験結果を Table 1に示

す.ツロブテロールは他の薬剤に比べ,分配係数が

Page 4: Development of Transdermal Formulation of Tulobuterol for …Treatment of Bronchial Asthma Hideo KATO, ,a Osamu NAGATA,a Masahiro YAMAZAKI,a Toshihiro SUZUKI,a and Yoshihisa NAKANOb

hon p.4 [100%]

60

Fig. 3. Types of Transdermal Delivery Devices

Table 1. Physicochemical Properties of b2-Agonists

Compound Partition1coe‹cient

Stability2(%)

Melting point3(°C)

Tulobuterol 1.03 99.04 91.6Salbutamol 0.018 82.4 157.9

Procaterol 0.201 47.05 137.9

Fenoterol 0.646 86.3 102.3

1: 1-octanol/water, 32°C,2: 1 mg/ml solution, 50°C, 7 days,3: DSC,4: not detected of degradation product, 5: in suspension.

60 Vol. 122 (2002)

最も高く,脂溶性であり,良好な経皮吸収性を示す

と考えられた.また,ツロブテロールは化学的に非

常に安定であったが,他の b2刺激薬は明らかな分

解が認められた.これは,他の b2 刺激薬がフェ

ノール性水酸基を有することに起因しているものと

考えられた.さらに融点については,ツロブテロー

ルが最も低いという結果が得られた.Bakerら9)の

薬物の融点とヒト皮膚透過速度の関係についての報

告によると,薬物の融点と皮膚透過速度には,良好

な相関が認められ,低融点の薬物ほど大きな皮膚透

過速度を示し,経皮吸収型製剤に適している.した

がって,融点が最も低いツロブテロールは,良好な

経皮吸収性を示すと考えられた.

以上より,ツロブテロールは b2 刺激薬のなか

で,経皮吸収型製剤に適した薬物であることが推察

された.

4. 製剤設計

経皮吸収型製剤の構造には大きく分けて,マトリ

ックスタイプとリザーバータイプがあり,さらにマ

トリックスタイプには溶解型と懸濁型がある(Fig.

3).本剤の基本構造としては,製剤構造が単純で,

薬物の過量放出の可能性が低く,面積による用量調

整が容易で,比較的厚みを薄くすることができ,皮

膚への追従性が良いことからマトリックスタイプを

選択し,さらに持続放出が可能で,結晶量を制御す

ることにより,時間制御型の放出制御が可能な懸濁

型を採用した.

マトリックスタイプの製剤は,薬物と粘着剤から

成る膏体層,膏体を保持する支持体,さらに貼付す

るまで膏体を保護するライナーの 3層から成り立っ

ている.そこで,それぞれの素材,組成,厚み等に

ついて処方検討を行った.処方検討の一例を以下に

記述する.

まず,基本成分である粘着剤について,医療用と

して実績のある基剤であるゴム系,シリコーン系,

アクリル系粘着剤を用いて製剤を調製し,安定性及

び皮膚移行性について評価した.安定性について

は,いずれの粘着剤においても含量の変化は認めら

れず,極めて安定であった.これはツロブテロール

原薬が化学的に安定であることに起因しているもの

と考えられた.次に,ウサギを用いた皮膚移行性試

験を実施した.その結果,アクリル系粘着剤では,

Page 5: Development of Transdermal Formulation of Tulobuterol for …Treatment of Bronchial Asthma Hideo KATO, ,a Osamu NAGATA,a Masahiro YAMAZAKI,a Toshihiro SUZUKI,a and Yoshihisa NAKANOb

hon p.5 [100%]

61

Table 2. Percent Adsorption of Tulobuterol from AdhesiveLayer to Backing Layer at 50°C, 1 Month

Material % adsorbed

Polyester N.D.

Polyethylene 66.8±8.8

Ethylenevinyl acetate copolymer 84.3±4.6

Average±SD

Fig. 4. In Vivo Drug Release in Various Formulations after24 hrs Application in Rabbit

Fig. 5. Serum Concentration-Time Curves in Human●: Prototype tape (2 mg), ○: Tablet (1 mg).

61No. 1

ほとんど皮膚移行が認められなかったのに対し,ゴ

ム系粘着剤は良好な皮膚移行性を示した(Fig. 4).

以上の結果より,ゴム系粘着剤を選択し,粘着剤組

成の最適化を行った.経皮吸収型製剤は,粘着特性

と放出特性のバランスの取れた組成とする必要があ

る.ゴム系粘着剤は,主成分であるポリイソブチレ

ンと粘着物性調整成分から構成される.ポリイソブ

チレンの分子量及び粘着物性調整成分の配合比を種

々調整することで,粘着特性と放出特性のバランス

のとれた最適な処方を選択した.

つぎに,支持体としては,医療用として実績のあ

る素材について検討した.支持体には,理化学的側

面と官能的側面の両方の特性が求められる.まず,

ポリエステル,ポリエチレン,エチレン酢酸ビニル

共重合体の 3種の支持体について,薬剤の支持体へ

の移行性を評価した.その結果,ポリエチレン及び

エチレン酢酸ビニル共重合体では,明らかな薬剤の

移行が認められた.一方,ポリエステルでは,薬剤

の支持体への移行が全く認められなかった(Table

2).このことから,支持体素材として薬剤移行性が

ないポリエステルを選択した.しかしながら,ポリ

エステルには,伸縮性,柔軟性に欠け,皮膚追従性

が乏しいという問題を有している.そこで,ポリエ

ステルフィルムとポリエステル不織布を貼り合わせ

た複合フィルムを採用することによりこれらの問題

を解決した.初期製剤の構成は,まず膏体層はゴム

系粘着剤にツロブテロールを 10%の濃度で含有さ

せ,厚みを 40 mm,すなわち 5 cm2 あたり 2 mg の

ツロブテロールを含有する製剤とし,支持体はポリ

エステル複合フィルムを,また,ライナー素材も支

持体と同様,薬剤移行性の点からポリエステルフィ

ルムを採用した.

この初期製剤を用い,健常成人男性を対象とし

て,錠剤との血中濃度推移の比較を行った.その結

果,初期製剤は錠剤に比べ,持続性は認められたも

のの,錠剤の一日投与量と同じにもかかわらず,目

標血中濃度の 1 ng/mlには到達できなかったことか

ら(Fig. 5),更なる製剤の改良が必要であると判

断された.製剤改良を行うにあたり,まず,初期製

剤の水中放出性と血中濃度推移の相関性について,

コンボリューション/デコンボリューション法で解

析を行った(Fig. 6).その結果,予測値と実測値

はよく一致し,水中放出性から血中濃度が予測でき

ることが確認された.そこで,目標血中濃度に到達

するカーブから,望ましい水中放出パターンを予測

すると,初期製剤の 2倍の放出性を示す製剤,すな

わち 24時間の放出率が約 80%となる製剤が適切と

考えられた.

製剤の放出性を改善する方法として,我々は,懸

濁型マトリックスタイプの特性を生かしながら,そ

の膏体の厚みと面積を変化させることにより放出性

が改善できないか検討した.膏体の厚みを初期製剤

Page 6: Development of Transdermal Formulation of Tulobuterol for …Treatment of Bronchial Asthma Hideo KATO, ,a Osamu NAGATA,a Masahiro YAMAZAKI,a Toshihiro SUZUKI,a and Yoshihisa NAKANOb

hon p.6 [100%]

62

Fig. 6. Convolution and Deconvolution Method for In Vitro/In Vivo Correlation of Tulobuterol Transdermal Formulation●: Observed value of prototype tape, ……: Simulation curve of prototype tape, : Simulation curve of ideal pattern.

Fig. 7. Release Properties in Three Formulations of DiŠerentThickness■: 10 mm, ●: 20 mm, ▲: 40 mm.

62 Vol. 122 (2002)

の 40 mm から,20 mm, 10 mm とした場合の水中放

出試験結果を Fig. 7 に示す.膏体の厚みを薄くす

ることにより,放出性は上昇し,膏体厚みを初期製

剤の 1/2,すなわち 20 mmとした製剤で,目標とす

る放出性を示す改良製剤を得ることができた.

Figure 8に最終的に得られたツロブテロールテープ

の構成を示す.膏体厚みを 20 mm としたことで,

ツロブテロール 2 mg 製剤の面積は 10 cm2 となっ

た.この製剤を用いて,再度ヒトでの血中濃度推移

を検討した.10)その結果,改良製剤は,目標血中濃

度に到達し,さらに Tmaxは約 12時間となり,夜貼

付することで,早朝に最高血中濃度に到達するとい

う,我々の開発コンセプトを十分に満足する理想的

な結果が得られた(Fig. 9).

テープ剤 2 mg の 1 日 1 回貼付と錠剤 1 mg の 1

日 2回経口投与の血中濃度推移のシミュレーション

カーブを Fig. 10に示す.錠剤では,最高血中濃度

と最低血中濃度の差が大きく,血中濃度は大きく変

動した.一方,テープ剤では,最低血中濃度は錠剤

と同程度であったが,最高血中濃度は錠剤の約半分

であり,安定した血中濃度が得られた.次に,貼付

部位の検討を行った.貼付剤は少なからず,皮膚刺

激性による発赤,かゆみなどの副作用が発生する可

能性がある.しかしながら,広い貼付部位を確保

し,毎日場所を変えることができれば,皮膚への影

響は最小限に抑えることが可能である.そこで,

胸,背中,上腕部と貼付部位を変えて体内動態を比

較した結果,血中濃度推移に差は認められず,胸,

背中,上腕部いずれにも貼付できる製剤であること

が確認された.

5. 放出機構

ツロブテロールテープは既に記載したとおり,懸

濁型のマトリックスタイプを採用している.我々は

これを「結晶レジボアシステム」と呼んでおり,そ

の放出性を模式的に表わすと Fig. 11のとおりであ

る.すなわち,膏体中に,溶解したツロブテロール

分子と均一に分散したツロブテロール結晶が共存し

ている.テープ剤を皮膚に貼付すると,膏体中に溶

解しているツロブテロール分子が皮膚へ移行する.

減少した膏体中のツロブテロール分子を補うため

に,結晶から薬物の溶解拡散が起こり,いわば結晶

Page 7: Development of Transdermal Formulation of Tulobuterol for …Treatment of Bronchial Asthma Hideo KATO, ,a Osamu NAGATA,a Masahiro YAMAZAKI,a Toshihiro SUZUKI,a and Yoshihisa NAKANOb

hon p.7 [100%]

63

Fig. 8. Schematic Diagram of Tulobuterol Tape

Fig. 9. Serum Concentration-Time Curves in Human2 mg tape; ●: tulobuterol tape, ▲: prototype tape.

Fig. 10. Simulation Curves of Serum Concentrations Obtained from Tulobuterol Tape Compared with Tablet in Human

63No. 1

Page 8: Development of Transdermal Formulation of Tulobuterol for …Treatment of Bronchial Asthma Hideo KATO, ,a Osamu NAGATA,a Masahiro YAMAZAKI,a Toshihiro SUZUKI,a and Yoshihisa NAKANOb

hon p.8 [100%]

64

Fig. 11. Schematic Diagram of Crystal Reservoir System

Fig. 12. Photomicrographs during In Vitro Release Test

64 Vol. 122 (2002)

が薬物貯留槽となることで,膏体中の溶解した薬物

濃度が一定に長時間保持される.したがって,膏体

から皮膚への持続的な放出がなされる.この結晶レ

ジボアシステムの採用で,長時間の持続的な放出を

膏体厚み 20 mm という極めて薄い厚さの中で可能

とした.水中放出試験時の顕微鏡写真を Fig. 12に

示す.先の模式図に示したように,放出に伴い結晶

から薬物が供給され,経時的に製剤中の結晶が減少

していることがわかる.

6. 工業化

本製剤の開発を成功させるためには,従来の貼付

剤にはない膏体厚み 20 mm というごく薄い製剤を

工業的に生産できるかが大きなポイントとなった.

厚みの変動は含量均一性等製剤特性に大きく影響す

る.ツロブテロールテープは,主薬及び粘着剤をヘ

キサンに溶解・調合し,塗工・乾燥した後,所定の

幅に切断し,背切りを入れ,打抜,包装される.塗

工・乾燥工程の模式図を Fig. 13に示す.まず,ラ

イナーに所定の厚さになるよう調合液を塗布する.

膏体の厚さ 20 mmの実現には,1 mm以下の精度で

厚さを制御する必要がある.このため,この塗工

ロールの真円度を高め,回転中の機械的振れ幅を極

限まで小さくした.つぎに,調合液の塗布後,オー

ブンでヘキサンを揮散させ,オーブンを出たところ

Page 9: Development of Transdermal Formulation of Tulobuterol for …Treatment of Bronchial Asthma Hideo KATO, ,a Osamu NAGATA,a Masahiro YAMAZAKI,a Toshihiro SUZUKI,a and Yoshihisa NAKANOb

hon p.9 [100%]

65

Fig. 13. Manufacturing Process of Tulobuterol Tape (1)

Fig. 14. Manufacturing Process of Tulobuterol Tape (2)

65No. 1

で支持体を貼り合わせ,巻き取り原反とする.オー

ブンでは,溶剤を揮散させるために熱風を噴射す

る.ツロブテロールは揮散性が高く,含量均一性を

保証するためには,オーブン中の温度や風速の分布

が均一になるよう精密にコントロールする必要があ

る.このため,膏体の厚さの制御とともに,オーブ

ン中の温度と風速の分布が均一になるようにオーブ

ンの構造に工夫をした.

次に,貼付時にライナーを剥がし易いように,波

型の刃を用いてライナーに切れ目(背切り)を入れ

る.この時,切断刃は膏体層までわずかに侵入させ

るが,膏体厚みが 20 mm であるため,最小限の侵

入にとどめる必要があり,切断刃にも高い精度が要

求された(Fig. 14).切断刃の中心軸から刃先まで

の距離は,1 mm 以下の精度でコントロールされて

いる.

以上のような各工程の精度向上により,ツロブテ

ロールテープの工業化が図られた.

7. 臨床薬理試験並びにその臨床効果

まず,臨床薬理試験としてはモーニングディップ

Page 10: Development of Transdermal Formulation of Tulobuterol for …Treatment of Bronchial Asthma Hideo KATO, ,a Osamu NAGATA,a Masahiro YAMAZAKI,a Toshihiro SUZUKI,a and Yoshihisa NAKANOb

hon p.10 [100%]

66

Fig. 15. Changes in Respiratory Function●: tulobuterol tape, ○: placebo tape.

Fig. 16. Control of Morning Dip (Repeated Applications)Age: 27, Sex: M, Morbidity: 18 years

In the case of steroid resistant asthma patient who had morning dip on PEF everyday, tulobuterol tape 2 mg/day was administrated. Next day PEF started to in-crease, morning dip disappeared completely, maximal PEF was stable in 600640 L/min.

66 Vol. 122 (2002)

を示す喘息患者にツロブテロールテープを貼付し,

肺機能の改善効果を検討した.11)夜 8時に試験薬剤

を貼付し,スパイログラフィーを用いて肺機能を投

与直前並びに翌朝 6時及び 8時に測定した.プラセ

ボテープ貼付時の努力性肺活量(FVC),1 秒量

(FEV1.0)は,朝 6時及び 8時ともに大きく低下し

たが,ツロブテロールテープ貼付時の朝 6時及び 8

時の呼吸機能は,プラセボ貼付時に比べ有意に改善

し,貼付後 12時間においても持続的な効果が認め

られた(Fig. 15).

モーニングディップを有する重症患者にツロブテ

ロールテープを連続貼付したときの一例12)を Fig.

16に示す.この患者は,ステロイド吸入剤,徐放

性テオフィリン製剤,抗アレルギー剤が連続して投

与されていたにもかかわらず,症状のコントロール

がなされておらず,朝方のピークフローは大きく低

下しているが,昼や夜は正常値に近い値を示し,日

内変動が大きかった.このような患者は,大発作を

引き起こす可能性が高いと言われており,この変動

をなくす治療が必要であった.この患者に,ツロブ

テロールテープを貼付すると,ピークフロー値の改

善が認められ,2日目以降はモーニングディップが

完全に消失し,安定した呼吸機能を維持することが

できた.

次に,成人を対象としたツロブテロールのテープ

剤と錠剤との比較試験結果を示す.13) 2週間の観察

Page 11: Development of Transdermal Formulation of Tulobuterol for …Treatment of Bronchial Asthma Hideo KATO, ,a Osamu NAGATA,a Masahiro YAMAZAKI,a Toshihiro SUZUKI,a and Yoshihisa NAKANOb

hon p.11 [100%]

67

Fig. 17. Changes of PEF after Application of Tulobuterol Tape Compared with That of Tablet●: tulobuterol tape (2 mg×1/day), ○: tulobuterol tablet (1 mg×2/day), : p<0.05, : p<0.01, ( ): n.

Fig. 18. Changes of PEF in Long-Term Study●: Early in the morning,○: At bedtime, dose: 1~6 mg/day,: p<0.05,: p<0.01, (compared with values before administration) n: 34~44, mean±S.E.

67No. 1

期間の後,テープ剤を就寝前に胸部に 1 日 1 回 2

mg を貼付した.一方,錠剤は 1 回 1 mg を 1 日 2

回,起床時及び就寝前に投与した.ピークフロー値

の推移の結果を Fig. 17に示す.テープ剤では,起

床時及び夜のいずれにおいても投与前値に比べ有意

な増加が認められた.一方,錠剤でも,投与前値と

比べて増加が認められているものの,すべての時点

でテープ剤の方が高い値を示した.全般改善度は,

テープ剤 55.1%,錠剤 33.3%であり,テープ剤の

方が優れていた.一方,動悸や振戦などの全身性副

作用の発現率は,テープ剤 8.1%,錠剤 19.7%であ

り,テープ剤では錠剤の半分以下に抑えることがで

きた.なお,ツロブテロールテープの小児患者に対

する有用性も確認されている.14,15)

次に,長期投与試験結果を Fig. 18に示す.一般

に,受容体を刺激して作用を発現する薬剤は,高濃

度を連続して頻回に投与した場合,タキフィラキ

シーが起こることが知られており,b2 刺激薬も連

続して使用すると,効果が減弱するという報告があ

る.そこで,ツロブテロールテープの長期投与試験

を実施した.投与期間は 12週間以上で,投与量は

患者の重症度に応じて 1 mg から 6 mg を一日一回

就寝前に貼付した.有効性の評価は,ピークフロー

を中心に行った.ピークフローは投与前値に比べて

起床時,就寝前ともに有意に増加し,特に,起床時

にピークフロー値の大きな改善が認められた.4週

以降も一定の効果が持続し,4週から 16週に渡っ

て長期間投与しても,効果の減弱は見られなかっ

た.なお,これらの患者のうち,10数名は 3年以

上にわたって継続使用してきたが,効果の減弱や遅

Page 12: Development of Transdermal Formulation of Tulobuterol for …Treatment of Bronchial Asthma Hideo KATO, ,a Osamu NAGATA,a Masahiro YAMAZAKI,a Toshihiro SUZUKI,a and Yoshihisa NAKANOb

hon p.12 [100%]

68

Fig. 19. Frequency of Systemic Adverse Reaction of b2 Stimulants (at the Approval Stage)

Fig. 20. Frequency of Adverse Reaction at Application Site of Commercially Available Tape Pharmaceuticals (at the ApprovalStage)

68 Vol. 122 (2002)

発性の副作用は認められず,ほとんどが入院治療か

ら通院治療でのコントロールが可能となり,患者の

QOLを大きく改善させた.

次に,本剤並びに現在市販されている経口剤の承

認時における全身性副作用の発現率を Fig. 19に示

す.市販の経口剤では,その発現率がいずれも 10

%以上であるが,ツロブテロールテープはその約

1/2と少ない発現率であった.これは,血中濃度の

ピークカットが図られた結果であると思われる.ま

た,貼付剤特有の貼付部位における発赤,かゆみな

どの副作用について,他剤との比較を Fig. 20に示

す.ツロブテロールテープの副作用発現率は 7.2%

であり,他のテープ剤と比べて遜色はなかった.ま

た,副作用として重篤なものは認められなかった.

このことからも,ツロブテロールテープは臨床的に

有用な薬剤であると考えられた.

8. 喘息治療における位置付け

喘息予防・管理ガイドライン3)では,喘息治療の

最終目標は,

1. 健常人と変わらない日常生活が送れること.

Page 13: Development of Transdermal Formulation of Tulobuterol for …Treatment of Bronchial Asthma Hideo KATO, ,a Osamu NAGATA,a Masahiro YAMAZAKI,a Toshihiro SUZUKI,a and Yoshihisa NAKANOb

hon p.13 [100%]

6969No. 1

2. 正常に近い肺機能を維持すること.

3. 夜間や早朝の咳や呼吸困難がなく夜間睡眠が

十分可能なこと

4. 喘息発作が起こらないこと

5. 喘息死の回避

6. 治療薬による副作用がないこと

とされている.これらを満足するためには,発作が

起きていないときの管理,すなわち,長期管理が重

要であると言われている.またガイドラインでは,

発作時と長期管理時に使用する薬剤が区別されてお

り,長期管理薬としては,抗炎症薬と長時間作用型

気管支拡張薬があり,ツロブテロールテープは,長

時間作用型気管支拡張薬に分類されている.ガイド

ラインでは患者の症状の程度によって軽症間欠型の

ステップ 1から重症持続型のステップ 4まで分類し

ている.ツロブテロールテープは,軽症持続型のス

テップ 2から重症持続型のステップ 4で使用する薬

剤として組み入れられている.なお,本剤は気管支

喘息のみならず,肺気腫や慢性気管支炎のような慢

性閉塞性肺疾患(COPD)や急性気管支炎にも効能

を取得しており,成人から小児まで幅広く使用可能

である.

9. 市場への寄与

ツロブテロールテープは 1998 年 12 月の発売以

来,市場より大きな反響を得ている.その売上枚数

は,発売後 1年で 3,000万枚,発売後 2年では 1億

枚を突破し,さらに現在も売上枚数の上昇を続けて

いる.なお,ツロブテロールテープは北陸製薬とマ

ルホ株式会社の 1ブランド 2チャンネルで並行販売

されている.

10. おわりに

ツロブテロールテープは世界初の経皮吸収型気管

支拡張剤であり,時間治療(Chronotherapy)によ

り,モーニングディップの抑制,副作用の軽減とい

う喘息治療の 2つの課題を克服した.また,結晶レ

ジボアシステムにより,持続的な薬物放出を可能に

し,作用の持続が図れた.さらに,1日 1回投与の

小型の製剤で,小児から高齢者まで幅広い患者層に

使用でき,コンプライアンスの向上が期待される.

ツロブテロールテープの誕生により,喘息治療に

おける Chronotherapy の有用性が実証され,喘息

患者の QOL向上に大きな貢献が期待される.

謝辞 本研究は北陸製薬株及び日東電工株の多

くの研究者の努力の賜物であり,本研究に関与した

両社の研究者に感謝致します.また,多大なご支

援,ご協力を賜わりました多くの先生方に深謝致し

ます.

REFERENCES

1) Patient Survey, Statistics and InformationDepartment, Minister's Secretariat, Ministryof Health and Welfare.

2) Nakamura K., Kousei-no-Shihyo, 44, 1014(1997).

3) Asthma Prevention and Management Guide-lines 1998 revised edition, KYOWA KIKAKULTD., Japan, 2000.

4) The 5th minutes, Kikanshizensoku TaisakuKyougikai, 1998.

5) Smolensky M. H., Am. J. Med., 85, 3446(1985).

6) Takahashi K., Takahashi Y., ``CircadianRhythm,'' Chugai-igakusha, Tokyo, 1980,pp.8384.

7) Turner-Warwick M., Br. J. Dis. Chest, 71, 7386 (1977).

8) Barnes P. J., The Practitioner, 231, 479481(1987).

9) Baker R., ``Controlled Release of BiologicallyAction Agents,'' John Wiley & Sons, NewYork, Chap. 8, 1987.

10) Uematsu T., Nakano M., Kosuge K.,Kanamaru M., Nakashima M., Eur. J. Clin.Pharmacol., 44, 361364 (1993).

11) Sukou M., J. Clinical Therapeutic Medicines,11, 809818 (1995).

12) Tamura G., The Allergy in Practice, 18, 10561057 (1998).

13) Miyamoto T., Takishima T., Takahashi T.,Nakajima S., Yamakido M., Nakashima M.,J. Clinical Therapeutic Medicines, 11, 761782(1995).

14) Baba M., Mikawa H., J. Pediatric Practice,58, 11411156 (1995).

15) Baba M., Mikawa H., Nakashima M., J.Pediatric Practice, 58, 13161333 (1995).