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COPDの定義
1.COPDとは、タバコ煙を主とする有害物質
を長期に吸入曝露することで生じた肺の
炎症性疾患である。
2.呼吸機能検査で正常に復すことのない
気流閉塞を示す。
3.気流閉塞は進行性である。
4.臨床的には徐々に生じる体動時の
呼吸困難や慢性の咳、痰を特徴とする。
日本におけるCOPDの動向(日本人におけるCOPD死亡順位)
死因 人数
• 1位 悪性新生物 336,290人
• 2位 心疾患 175,396人
• 3位 脳血管疾患 126,940人
• 4位 肺炎 110,080人
• 5位 不慮の事故 37,874人
• 6位 自殺 30,777人
• 7位 老衰 30,712人
• 8位 腎不全 21,606人
• 9位 肝疾患 16,164人• 10位 COPD 14,890人
出典:厚生労働省 人口動態統計2009年)
COPDの危険因子最重要因子 重要因子 可能性の指摘
されている因子
外因性因子 タバコ煙
・大気汚染・受動喫煙・粉塵、化学物質への暴露
・呼吸器感染・社会経済的要因
内因性因子 α1‐アンチトリプシン欠損症
・遺伝子変異・気道過敏性・自己免疫・老化
COPDの病態生理1.COPD の体動時呼吸困難の原因となる
基本的病態は、気流閉塞と動的肺過膨張である。
2.気道粘液の過分泌は慢性の咳や喀痰の原因になるが、すべてCOPD 患者に認められるわけではない。
3.換気血流比不均等分布は低酸素血症の原因になる。重症例では、肺胞低換気により高二酸化炭素血症も認められる。
4.重症例では肺高血圧症が認められ、進行すると肺性心になる。肺高血圧症の主な原因は低酸素性肺血管収縮反応である。
5.可逆性の乏しい難治性喘息ではCOPDとの鑑別が困難なことがある。
6.COPDでは全身併存症がみられる。COPD
は全身性疾患と捉えて、包括的な重症度の評価や治療を行う必要がある。また肺癌、気胸などの肺合併症にも注意する。
COPDの診断と検査
1.慢性に咳、喀痰、労作時の息切れが認められ
る成人喫煙者はCOPDの可能性がある。
2.気管支拡張薬吸入後のスパイロメトリーで1秒
率(FEV1/FVC)が70%未満。
3.X線画像やCT検査、呼吸機能検査、心電図に
より気流閉塞を来す他の疾患を除外すること。
COPDの臨床所見
・労作時呼吸困難、咳、喀痰
・喘鳴
・体重減尐、食欲不振
・抑鬱、不安などの精
神症状
質問票(MRC、CCQ、病
院独自のものなど)を用いての聴取が有用。また、他疾患鑑別のためにも喫煙歴、職業歴、アレルギー疾患などの既往歴、家族歴の聴取が非常に重要。
症状と問診・呼吸器回数の増加、口すぼ
め呼吸
・胸鎖乳突筋や斜角筋の肥厚
・チアノーゼやばち状指
・頸動脈怒張、肝腫大、下腿
浮腫
・聴診ではcoarse crackles、
wheezerhonchusが聴取される
ことがある。
バイタルサイン、呼吸補
助筋の形状や活動性、聴診が
重要
身体所見
COPDの病気分類COPDの病期分類
病期 特徴
I期:軽症COPD(Mild COPD)軽度の気流障害
FEV1/FVC < 70%FEV1≧80%predicted
II期:中等症COPD(Moderate COPD)中等度の気流障害
FEV1/FVC < 70%50%≦FEV1 < 80%predicted
III期:重症症COPD(Severe COPD)高度の気流障害
FEV1/FVC < 70%30%≦FEV1 < 50%predicted
IV期:最重症症COPD(Very Sever COPD)極めて高度な気流障害
FEV1/FVC < 70%FEV1 < 30%predictedあるいはFEV1 < 50%predictedかつ慢性呼吸不全合併
鑑別を要する疾患
1.気管支喘息2.びまん性汎細気管支炎3.先天性副鼻腔症候群4.閉塞性細気管支炎5.気管支拡張症6.肺結核7.塵肺症8.肺リンパ脈管筋腫症9.うっ血性心不全10.間質性肺疾患11.肺癌
COPDの治療と管理管理目標
・症状および運動
耐容能の改善
・QOLの改善
・増悪の予防と治療
・疾患の進行抑制
・全身併存症およ
び肺合併症の予
防と治療
・生命予後の改善
管理計画
①禁煙:すべての喫煙者
に禁煙指導→ 最も効果
的で経済的に呼吸機能
低下抑制、死亡率、急
性増悪の減尐
②病態の評価と経過観察
③危険因子の回避(喫煙
含む)
④安定期の管理法
⑤増悪期の管理法
COPDの治療と管理③安定期の管理(ワクチン)
1)インフルエンザワクチン
・COPDの増悪による死亡率を50%低下させ、
すべてのCOPD患者に接種が勧められる
2)肺炎球菌ワクチン
・65歳以上のCOPD患者および65歳未満
で%FEV1が40%未満のCOPD患者の接種が
勧められる
COPDの治療と管理③安定期の管理(薬物療法)
1)薬物療法は症状の軽減、増悪の予防、QOL
や運動耐容能の改善に有用である。
2)薬物療法の中心は気管支拡張薬である。
抗コリン薬、β2刺激薬、メチルキサンチンがあ
る。投与経路では吸入が最も勧められる。
3)その他、吸入用ステロイド、長時間作用性β2
刺激薬/吸入ステロイド配合剤、喀痰調整薬
(ムコダイン、ムコソルバン)などがある。
COPDの治療と管理③安定期の管理(非薬物療法)
1)呼吸・運動リハビリテーション
・身体機能の改善、呼吸困難感の軽減、社会的参加、抑鬱の予防。薬物療法や栄養管
理と上乗せすることでより大きな効果が期待できる。
2)栄養管理
・我が国では約70%のCOPDの患者に体重減尐が認められる。このような患者は呼吸不
全の進行や死亡のリスクが高い。
・高エネルギー、高タンパク食摂取を勧める。
・栄養管理表作成が望ましく、栄養士、医師、看護師などによるチーム医療が重要。
3)酸素療法
・我が国では長期酸素療法の48%がCOPD患者。
・高度慢性呼吸不全を伴うCOPD患者の生命予後の改善(肺高血圧の改善など)、QOLの
向上、運動耐容能の改善、入院回数と期間の減尐が期待できる。
・酸素装置の利用方法、保守管理、災害・緊急時の対応、福祉制度などの説明や指導が
必要
4)喚起補助療法
・高炭酸ガス血症を伴う患者に対する非侵襲的陽圧換気療法(NIPPV)を第一選択とする。
・呼吸筋疲労と睡眠障害の改善をはかる。
・
・COPDの全身併存病および肺合併症は疾患の重症度、QOL、生命予後に影響を及ぼすことからその予防と治療が必要である。
COPDの治療と管理③安定期の管理(全身併存症と肺合併症)
<全身併存病>
1)骨粗鬆症
2)心・血管系
3)消化器疾患
4)抑鬱
<肺合併症>
1)肺高血圧
2)肺炎
3)気胸
4)肺がん
1)身体障害者手帳の申請と取得
2)介護保険
COPDの治療と管理③安定期の管理(社会的資源)
1級 呼吸器の機能の障害により自己の身辺の日常生活活動が極度に制限されるもの
3級 呼吸器の機能の障害により家庭内での日常生活活動が著しく制限されるもの
4級 呼吸器の機能の障害により社会での日常生活活動が著しく制限されるもの
すべての医療費が助成対象
一部医療費が助成対象
COPDの治療と管理④増悪期の管理
1)定義・呼吸困難、咳、喀痰などの症状が日常の生理的な変動を超えて急激に悪化し、安定期の治療内容の変更を要する状態をいう。ただし他疾患の合併による増悪を除く。
2)頻度・病気が進行しているほど増悪の可能性高く死亡率も高い。(Ⅱ期:2.68回/年、Ⅲ期:3.43回/年)・高炭酸ガス血症を伴う急性増悪患者では院内死亡率は約10%、換気補助療法を導入した急性増悪患者では1年間の死亡率は40パーセントで、3年後には約半数が死亡したと報告されている。
3)原因・増悪の原因として最も多いのは呼吸器感染症と大気汚染である。・しかし約30%の症例では増悪の原因は特定できず。
COPDの治療と管理④増悪期の管理(薬物療法)
1)増悪時の薬物療法の基本は気管支拡張薬、ステロイド、抗菌
薬である。
2)気管支拡張薬は増悪時呼吸困難に対して最初に使用される。
Β2刺激薬が第一選択であり、スペーサーやネブライザーを用
いる。
3)ステロイドの全身投与は呼吸機能と低酸素血症を改善し、回
復までの期間を短縮し、早期再発や治療の失敗を減らす。安
定期の病期Ⅲ期以上、入院を要する症例に投与する。
4)抗菌薬は喀痰の膿性化が認められる症例や換気補助療法が
必要な症例に勧められる。
COPDの治療と管理④増悪期の管理(非薬物療法)
1)酸素療法・PaO2≧60Torr、SpO2≧90Torr以上が目標
・ PaO2が高すぎるとCO2ナルコーシスのリスクが高まる。低濃度の酸素
から開始する。
・ただしCO2ナルコーシスを恐れて低酸素状態を放置してはならない。
2)補助換気療法・非侵襲的陽圧換気療法(NIPPV)が第一選択である。
・高度の呼吸困難を認める。
・ 薬物療法や酸素療法に反応不良である。
・ 吸気補助筋の著しい活動性,奇異性呼吸を認める。
・呼吸性アシドーシス(pH≦7.35),高二酸化炭素血(PaCO2≧45mmHg)。
・ 胸部X 線検査で自然気胸を除外していること。
3)気道分泌物の除去
COPDの治療と管理④増悪期の管理(増悪の予防)
1)禁煙
・喫煙者は非喫煙者に比べ増悪頻度が高いが、
禁煙すると約1/3に減尐する。
2)ワクチン
・特にインフルエンザ、肺炎球菌ワクチン接種に
より入院率、死亡率を有意に減尐させる。
3)薬物療法
・安定期薬物療法の指針に従うことで増悪頻度
を約20~30%減尐させる。
COPDの治療と管理⑤予後
1)年齢、性差、喫煙歴、FEV1、全身併存病や肺合併症
などが予後に影響する。
2)COPD患者の死亡率(対非COPD患者。欧米調査)
・Ⅰ期:1.2倍
・Ⅱ期:1.6倍
・Ⅲ期:2.7倍
・低酸素血症のない患者では3年間の死亡率は23%と報
告されている。
・我が国での長期酸素療法患者の5年生存率は約40%
と報告されている。