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「農研機構」は国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構のコミュニケーションネームです。 世界のカンキツを守れ! カンキツグリーニング病を世界で 一番高感度に検査する方法~ 2019226JST東京本部別館 農研機構 果樹茶業研究部門 生産・流通研究領域 病害ユニット 上級研究員 藤川 貴史

世界のカンキツを守れ! - JST「農研機構」は国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構のコミュニケーションネームです。世界のカンキツを守れ!~カンキツグリーニング病を世界で

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  • 「農研機構」は国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構のコミュニケーションネームです。

    世界のカンキツを守れ!

    ~カンキツグリーニング病を世界で一番高感度に検査する方法~

    2019年2月26日JST東京本部別館

    農研機構 果樹茶業研究部門生産・流通研究領域 病害ユニット

    上級研究員 藤川 貴史

  • はじめに

    新技術を説明する場なので、実り多そうな最新技術の「たね」を紹介します。

    技術の苗木=何が出来上がるか予想済み量や質を向上させるために、どういうふうに育てる?

    技術の果実=もう出来上がっている技術あとは流通させて消費するのみ

    技術の種子=まだ何が出来上がるかわからない育て方もこれからわかる

    基礎研究で連携が必要

    実用開発で連携が必要

  • はじめに

    新技術を説明する場なので、実り多そうな最新技術の「たね」を紹介します。

    技術の苗木=何が出来上がるか予想済み量や質を向上させるために、どういうふうに育てる?

    技術の果実=もう出来上がっている技術あとは流通させて消費するのみ

    技術の種子=まだ何が出来上がるかわからない育て方もこれからわかる

    基礎研究で連携が必要

    実用開発で連携が必要

  • はじめに

    その「たね」の名前は……

  • はじめに

    その「たね」の名前は……

  • はじめに

    病原細菌を選択的に培養して遺伝子診断を併用することで、カンキツグリーニング病を世界で一番高感度に検査する方法です。

  • はじめに

    そもそもカンキツグリーニング病って何なの?

    なぜ培養するの? 培養したら何かいいことあるの?

    高感度に検査って?

    検査は誰がするの?

    6次産業化と何か関係あるの?

  • 背景

    健全 罹病

    収穫量減少果実肥大悪化

    果実・果汁の食味悪化

    ・カンキツグリーニング病原細菌の感染によって、カンキツの樹が異常になる病害で、果実の生産量が落ちる・果実品質が悪くなる・樹が枯れる等の障害が問題!

    ・感染するとその樹は治癒できないので二次伝染を防ぐために伐採するしかない

    ・カンキツグリーニング病は世界中のカンキツ産地で発生(58ヵ国 〔フランス海外県含む〕)

    ・アメリカ・フロリダ州(オレンジの大産地)では年間10億USドルの損失が毎年!

    ・日本では沖縄県と鹿児島県奄美群島の一部の島(徳之島、沖永良部島、与論島)で発生(根絶化やフリーエリアの拡大が行政によって実施されている)

    枯死

  • 背景

    ・赤道を中心にカンキツ栽培地域は世界中にある。・世界のカンキツ栽培地域の多くで発生している。

    ・カンキツグリーニング病の発生地のカンキツ類やミカン科の植物(ワンピ、ゾウノリンゴ等)の生植物(果実を除く)は輸入できない。

    EPPOより

  • 背景

    みかん 栽培面積 (平成29年) 40,600 haその他かんきつ 栽培面積 (平成27年) 21,748 ha

    みかん 生産量 (平成29年) 741,300 tその他かんきつ 生産量 (平成27年) 318,626 t

    みかん 卸売価額 (平成29年) 1,432億円その他かんきつ 卸売価額 (平成29年) 832億円

    国内のみかん及びかんきつ類は、青果だけで2000億円規模の産業

    農林水産省統計より

    カンキツグリーニング病の餌食にならないようにする

  • 背景

    木部(早)木部(晩) 形成層

    篩部

    コルク層

    皮層

    グリーニング病原細菌は

    宿主植物の篩部(師部)に局在・偏在する。培養困難。

    篩部=養分の通り道

    人間で言えば、血液の中に菌がいるようなもの

    防除が難しい

    枝の断面

    ミカンキジラミ

  • 背景

    グリーニング病+媒介虫まん延

    罹病樹の果実収量減少、品質低下

    罹病樹の枯死

    グリーニング病原菌感染樹の検査・診断

    感染樹の除去

    殺虫剤による媒介虫の駆除

    健全苗木の生産・確保

    健全樹への改植及び生育非収穫時期中の収量低下

    コストがかかるが、やるしかない!

    どうしたらいいのか?

  • 背景

    グリーニング病+媒介虫まん延

    罹病樹の果実収量減少、品質低下

    罹病樹の枯死

    グリーニング病原菌感染樹の検査・診断

    感染樹の除去

    殺虫剤による媒介虫の駆除

    健全苗木の生産・確保

    健全樹への改植及び生育非収穫時期中の収量低下

    コストがかかるが、やるしかない!

    どうしたらいいのか?このステップの成否が全てに関わる

  • 従来の検査・診断

    1.DNA検定

    (1) PCR法 ・・・ 最も普及している (機械と試薬が必要)(2) リアルタイムPCR法 ・・・ 正確性が高い (高額機械と高額試薬が必要)(3) LAMP法 ・・・ 簡便、キットとして市販されている(4) ICAN法 ・・・ 簡便、キットとして市販されている

    2.物質検定

    (1) ヨウ素デンプン反応 ・・・ 罹病樹はデンプンが蓄積されることを利用 (誤差が大きい)(2) 鉄・マンガン含有量 ・・・ 罹病樹は内在する鉄イオンやマンガンイオンが減少することを利用

    (誤差が大きい)(3) 近赤外線波長 ・・・ 罹病樹と健全樹で近赤外線波長の吸収量が異なる

    (他の病害と区別できていない)

    3.免疫検定 ・・・ 菌体を含む罹病樹液成分を抗原としてELISA法による検定(失敗に終わっている)

    4.接ぎ木検定 ・・・ 罹病樹の疑いのある木から穂木をとり、健全樹に接ぎ木して病徴が健全樹体に現れるかをみる (熟練者でないと成功しない)

    5.見取り検定 ・・・ 目視で病徴を確認する (熟練者であっても正確に判断するのは難しい)

    カンキツグリーニング病原細菌及び感染樹の診断方法

  • 1.DNA検定

    (1) PCR法 ・・・ 最も普及している (機械と試薬が必要)(2) リアルタイムPCR法 ・・・ 正確性が高い (高額機械と高額試薬が必要)(3) LAMP法 ・・・ 簡便、キットとして市販されている(4) ICAN法 ・・・ 簡便、キットとして市販されている

    2.物質検定

    (1) ヨウ素デンプン反応 ・・・ 罹病樹はデンプンが蓄積されることを利用 (誤差が大きい)(2) 鉄・マンガン含有量 ・・・ 罹病樹は内在する鉄イオンやマンガンイオンが減少することを利用

    (誤差が大きい)(3) 近赤外線波長 ・・・ 罹病樹と健全樹で近赤外線波長の吸収量が異なる

    (他の病害と区別できていない)

    3.免疫検定 ・・・ 菌体を含む罹病樹液成分を抗原としてELISA法による検定(失敗に終わっている)

    4.接ぎ木検定 ・・・ 罹病樹の疑いのある木から穂木をとり、健全樹に接ぎ木して病徴が健全樹体に現れるかをみる (熟練者でないと成功しない)

    5.見取り検定 ・・・ 目視で病徴を確認する (熟練者であっても正確に判断するのは難しい)

    カンキツグリーニング病原細菌及び感染樹の診断方法

    従来の検査・診断

  • 1.DNA検定

    (1) PCR法 ・・・ 最も普及している (機械と試薬が必要)(2) リアルタイムPCR法 ・・・ 正確性が高い (高額機械と高額試薬が必要)(3) LAMP法 ・・・ 簡便、キットとして市販されている(4) ICAN法 ・・・ 簡便、キットとして市販されている

    2.物質検定

    (1) ヨウ素デンプン反応 ・・・ 罹病樹はデンプンが蓄積されることを利用 (誤差が大きい)(2) 鉄・マンガン含有量 ・・・ 罹病樹は内在する鉄イオンやマンガンイオンが減少することを利用

    (誤差が大きい)(3) 近赤外線波長 ・・・ 罹病樹と健全樹で近赤外線波長の吸収量が異なる

    (他の病害と区別できていない)

    3.免疫検定 ・・・ 菌体を含む罹病樹液成分を抗原としてELISA法による検定(失敗に終わっている)

    4.接ぎ木検定 ・・・ 罹病樹の疑いのある木から穂木をとり、健全樹に接ぎ木して病徴が健全樹体に現れるかをみる (熟練者でないと成功しない)

    5.見取り検定 ・・・ 目視で病徴を確認する (熟練者であっても正確に判断するのは難しい)

    カンキツグリーニング病原細菌及び感染樹の診断方法

    罹病樹のサンプル中の菌が少ないと、擬陰性になる検出条件を間違えると擬陽性になる死んで無害(病原性無し、感染力無し)の菌も検出されるお金がかかる

    従来の方法ではうまくいかない→ 新しい方法で可能性はある

    従来の方法では誰でもできる技術ではない→ 新しい方法で可能性はある

    従来の検査・診断

  • 1.DNA検定

    (1) PCR法 ・・・ 最も普及している (機械と試薬が必要)(2) リアルタイムPCR法 ・・・ 正確性が高い (高額機械と高額試薬が必要)(3) LAMP法 ・・・ 簡便、キットとして市販されている(4) ICAN法 ・・・ 簡便、キットとして市販されている

    2.物質検定

    (1) ヨウ素デンプン反応 ・・・ 罹病樹はデンプンが蓄積されることを利用 (誤差が大きい)(2) 鉄・マンガン含有量 ・・・ 罹病樹は内在する鉄イオンやマンガンイオンが減少することを利用

    (誤差が大きい)(3) 近赤外線波長 ・・・ 罹病樹と健全樹で近赤外線波長の吸収量が異なる

    (他の病害と区別できていない)

    3.免疫検定 ・・・ 菌体を含む罹病樹液成分を抗原としてELISA法による検定(失敗に終わっている)

    4.接ぎ木検定 ・・・ 罹病樹の疑いのある木から穂木をとり、健全樹に接ぎ木して病徴が健全樹体に現れるかをみる (熟練者でないと成功しない)

    5.見取り検定 ・・・ 目視で病徴を確認する (熟練者であっても正確に判断するのは難しい)

    カンキツグリーニング病原細菌及び感染樹の診断方法

    感染樹のサンプル中の菌が少ないと、偽陰性になる検出条件を間違えると偽陽性になる死んで無害(病原性無し、感染力無し)の菌も検出されるお金がかかる

    従来の方法ではうまくいかない→ 新しい方法で可能性はある

    従来の方法では誰でもできる技術ではない→ 新しい方法で可能性はある

    従来の検査・診断

    従来技術には問題や課題は多い

  • カンキツグリーニング病原細菌及び感染樹の診断方法

    従来の検査・診断

    従来技術には問題や課題は多い

    ・偽陰性を避けるために、感染している病原菌を増殖させる・決まったステップで検査工程を単純にして偽陽性を抑える・生きた病原菌だけを検出する・今までにない検査方法の開発につなげる

    病原細菌を培養→遺伝子診断

  • 新技術

    ・これまで病原細菌を効率的に培養できなかった・培養後に検出されれば生きている病原細菌・培養された病原細菌には様々な検査方法に利用できる

    ・生きたグリーニング病原細菌を感染樹から抽出する方法を開発

    ・グリーニング病原細菌用の培地を開発

    ・培養から遺伝子診断までを単純化

    新技術の特徴

  • 新技術

    罹病葉の中肋を回収

    中肋を破砕し、滅菌水に懸濁

    スピンカラムで裁断し沈殿物を、滅菌水に懸濁

    5μmフィルターで懸濁液を濾過

    Las選択培地で培養

    罹病葉を回収

    生きた病原菌を回収することに成功

    病原細菌の抽出法

    Fujikawa et al. (2013) PLoS One

  • 新技術

    病原細菌の培養特願2017-025496Fujiwara et al. (2018) Frontiers in Microbiology

    一般的な細菌のエネルギー合成とアミノ酸合成=培養が容易

    グリーニング病原細菌のエネルギー合成とアミノ酸合成=培養が困難

    特定の栄養成分からなる人工培地の開発に成功

  • 新技術

    カンキツ葉をサンプリング ②主脈を細断する ③ Biomasher IIIを使用し、すり潰す

    ④遠心分離し、ペレット

    を滅菌水で再懸濁する(接種源として用いる)

    滅菌水を添加 磨り潰す 師管液を回収Biomasher III (Nippi)

    師管液の抽出工程

    培養・検出培養前の準備

    カンキツグリーニング病の培養工程

    cPCR

    A B C D

    Real-time PCR

    グリーニング病菌の培養

    グリーニング病菌を検出

    DNA抽出

    接種源

  • 新技術

    感染樹からグリーニング病原細菌を抽出し、培養し、検出する

  • 新技術

    培養工程の簡易化・操作性の向上

    ドロップ法

    タイタープレート法

    マイクロチューブ法

  • 新技術

    ドロップ法

    タイタープレート法

    マイクロチューブ法

    特徴 培地作製 培養実験 DNA抽出

    接種源の量を調節できる

    複数サンプルを1枚で培養可能

    シャーレに培地を充填

    作成が簡単

    接種源を10μLをドロップ

    培養作業が簡単

    培地断片をマイクロチューブに移す

    少量のサンプルで培養が可能

    サンプルごとに培養

    マイクロチューブに培地を充填

    接種源を10μLをドロップ

    マイクロチューブのままDNA抽出に利用可能

    作業が非常に効率的!!

    少量のサンプルで培養が可能

    サンプルごとに培養

    96穴プレートに培地を充填

    接種源を10μLをドロップ

    培地をマイクロチューブに移す

  • 実証

    カンキツグリーニング病確定診断の現地実証

    サンプリングした葉

  • 実証

  • 用途

    ・生きたグリーニング病原細菌を感染樹から抽出する方法を開発

    ・グリーニング病原細菌用の培地を開発

    ・培養から遺伝子診断までを単純化

    新技術の特徴

    ・農作物や植物から生きた微生物を抽出できる

    ・培養が難しい細菌の培地を開発することができる

    ・検査現場のニーズに合わせた診断系をつくることができる

    われわれのもつノウハウ

  • 用途

    想定される用途

    (基礎研究面)

    ・未同定の細菌や新規化合物をもつ細菌を培養

    ・植物組織のマイクロバイオームの研究

    (実用面)

    ・国内外のカンキツグリーニング病検査

    ・グリーニング病同様に培養困難な病原体の検査

    (事業・産業)

    ・グリーニング病原細菌の培養キットと検査キット

    ・農産物や苗木・種子の輸出入に関わる診断事業

  • 想定される用途

    (基礎研究面)

    ・未同定の細菌や新規化合物をもつ細菌を培養

    ・植物組織のマイクロバイオームの研究

    (実用面)

    ・国内外のカンキツグリーニング病検査

    ・グリーニング病同様に培養困難な病原体の検査

    (事業・産業)

    ・グリーニング病原細菌の培養キットと検査キット

    ・農産物や苗木・種子の輸出入に関わる診断事業

    マッチングに向けて

    企業への期待

    共同研究

    資金提供

    コンサルテーション依頼

    資金提供

    製品化・事業化

    資金提供

  • マッチングに向けて

    本技術に関する知的財産権

    • 発明の名称:リベリバクター属細菌を培養および検出するための培地、キットおよび検出方法

    • 出願番号 :特願2017-025496• 出願人 :農研機構• 発明者 :藤川貴史、藤原和樹

    関連する知的財産権と資格

    ・発明の名称:核酸、プライマーセットおよびこれを用いたカンジダタス・リベリバクター・ソラナセアルムの検出方法出願番号:特願2015-159251発明者 :藤川貴史

    ・発明の名称:植物の病原体による感染を診断する方法出願番号:特願2016-045274発明者 :藤原和樹、藤川貴史

    ・藤川貴史 博士(農学)、技術士(農業部門・植物保護)、植物医師、樹木医、環境カウンセラー

  • マッチングに向けて

    本技術に関するお問い合わせ先

    農研機構知的財産部 知的財産課 特許ライセンスチーム

    TEL:029-838-6465FAX:029-838-8905E-mail: [email protected]

    技術相談窓口http://www.naro.affrc.go.jp/inquiry/index.html