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企業統治制度の在り方に関する考察と提言 ---法務省会社法制部会の会社法見直しに関する審議をベースとして--- 201159DF監査役部会小研究会Bグループ (メンター)上原利夫、山本正 (メンバー)藍原昌義、小林基昭、馬場一徳、若山忠、和角清

企業統治制度の在り方に関する考察と提言 · 企業統治制度の在り方に関する考察と提言 ---法務省会社法制部会の会社法見直しに関する審議をベースとして---

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企業統治制度の在り方に関する考察と提言

---法務省会社法制部会の会社法見直しに関する審議をベースとして---

2011年5月9日 DF監査役部会小研究会Bグループ            

(メンター)上原利夫、山本正

(メンバー)藍原昌義、小林基昭、馬場一徳、若山忠、和角清

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本日の報告内容

第1章 法務省審議会会社法制部会の議論の内容

第2章 日本の企業統治制度の変遷

第3章 主要国の企業統治制度

第4章 企業統治制度に関する見解と提言

Page 3: 企業統治制度の在り方に関する考察と提言 · 企業統治制度の在り方に関する考察と提言 ---法務省会社法制部会の会社法見直しに関する審議をベースとして---

本日の報告内容

第1章 法務省審議会会社法制部会の議論の内容

第2章 日本の企業統治制度の変遷

第3章 主要国の企業統治制度

第4章 企業統治制度に関する見解と提言

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会社法制見直しの背景(1)

●2010.02.24 法務大臣諮問91号                    「会社法について、-------、会社を取り巻く幅広い利害関係者からの一    層の信頼を確保する観点から、企業統治の在り方や親子会社に関す

   る規定を見直す必要がある -----」

●諮問の背景 (企業統治の在り方についてのいくつかの指摘)   ●上場企業のコーポレートガバナンスについて内外の投資家から強い懸

    念が示されている

  ●監査役制度に関し業務執行者の任免権限の無い者が業務執行者の

    監督を行うという制度の欠陥

  ●監査役制度については累次の制度見直しにも拘わらず充分機能を果

    たしていないケースも少なくない

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会社法制度の見直しの背景(2)

 現行会社法における企業統治形態の問題点

 ●監査役設置会社制度  

   ✔適法性監査はやっているが、妥当性に関しての監査・監督の実質

     的機能は無い

 ●委員会設置会社制度       ✔導入されてから8年経過するが本制度採用企業は少ない

    ✔社外取締役の独立性に関する疑問

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会社法制見直しの論点

●見直しの観点   ✔会社を取り巻く幅広い利害関係者からの一層の信頼を確保する観点

●論点   ✔現行の会社法制における企業統治の在り方に関する指摘の背景と問

    題点の原因を探り、改善の為の会社法制の見直しについての提言

  ✔親子会社に関する規律(企業結合)

  ✔その他検討すべき事項

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会社法制見直しに関する各界の意見(1)---審議入口での意見(第1回~第3回会議議事録より)--- ●産業界   ✔基本的には規制強化に反対    ✔会社法は企業の成長戦略、競争力向上に資すべきで阻害要因となっ    てはならない。特に、ベンチャー企業の企業意欲を削いではならない

●投資家   ✔会社法のガバナンスの役割は健全性と効率性を規定する仕組みだが     現行制度は効率性監視機能に弱点あり   ✔この弱点に依り日本企業の低収益が続いており、特に、海外投資家    が日本企業に魅力を失っている

●行政府(法務省、経産省)   ✔変化・危機、市場参入・撤退に対する柔軟性あるガバナンスが可能な    法令整備が必要   ✔会社グループのグルローバル化に対応した検討が必要

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会社法制見直しに関する各界の意見(2)---審議入口での意見(第1回~第3回会議議事録より)--- ●学会   ✔会社法は基本法であり政策や政治に依って歪められてはならない

  ✔会社法は経営者とステークホルダーの私的権利義務を調停する法律

   であり国家権力が特定の利害関係者を保護するものではない

  ✔ガバナンス規定は色々なやり方があり、会社法、金商法、ソフトローな

   ど夫々得手不得手がある

●公認会計士・監査役協会・弁護士   ✔会社法は上場会社だけでなくあらゆる会社に適用されることを前提に

   議論すべき

  ✔①監査役に会計監査人の選・解任議案提出権と報酬決定権付与、②

   内部統制の実施内容と評価の事業報告書、監査役報告書への記載

   義務、③不適切な第3者割当の監査報告書での開示が必要

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会社法制部会の議論の中間取り纏め----企業統治の在り方に関して----

●監査役設置会社における監査・監督機能の充実   (取締役会の監督機能に関する検討)

●監査役の監査機能の強化

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監査役設置会社における監査・監督機能の充実(1)

監査役に経営者の 選任・解任議決権付与

業務執行から分離された   監査役制度の本質に反する

取締役会の監査・監督 機能の強化

社外取締役設置義務

監査・監督委員会構想

社外取締役の定義

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監査役設置会社における監査・監督機能の充実(2)--- 社外取締役の設置義務について ---

●社外取締役の機能

 ①経営助言機能、②経営監督・評価機能、③利益相反監督機能

●社外取締役は経営の妥当性の監査・監督に有効か?

  ✔有効。社外取締役導入と経営効率性向上の因果関係は不明だが

    少なくとも相関関係あり

●下記については、現時点での意見の集約はない   ✔社外取締役設置の法的義務付けの必要性

  ✔法的義務付けを是とした場合、①社外取締役の人数、②法的義務付

   け対象会社の範囲

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監査役設置会社における監査・監督機能の充実(3)--- 監査・監督委員会設置会社 ---

●監査役を廃止し、取締役会の中に監査・監督委員会を設置

  ✔監査役の適法性監査機能と取締役会の妥当性監督機能を包含する   ✔指名委員会、報酬委員会は必須とせず、任意に設置するか又は監査・     監督委員会の機能にこれらの委員会の機能も持たせる

●監査・監督委員会の構成等

  ✔委員会の機能は監査権限と経営監督評価権限   ✔委員会構成は社外取締役が過半数   ✔委員の任期は取締役と同様1年   ✔業務執行者に対する業務執行決定権の委任範囲の拡大

  *委員の選任方法(株主総会選任又は取締役会選任)については意見      の一致に至っていない

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監査役の監査機能の強化

●社外監査役の要件   ✔監査役の独立性重視

  ✔親会社関係者、重要取引先を「社外」から排除することの是非

  ✔過去経歴要件の緩和

●監査役に会計監査人の選任・解任権、報酬決定権の付与

  ✔会計監査人は取締役会からの独立性必要

  ✔監査役の会計監査人に関する意志決定は業務執行行為と看做される

●監査役に取締役解任の訴えの提訴権付与

  ✔取締役解任権は株主総会にある

●その他   ✔内部統制の運用状況の事業報告書、監査役報告書への記載

  ✔従業員選出監査役候補については否定的

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本日の報告内容

第1章 法務省審議会会社法制部会の議論の纏め

第2章 日本の企業統治制度の変遷

第3章 主要国の企業統治制度

第4章 企業統治制度に関する見解と提言

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昭和25年商法改正前の制度---取締役制と監査役制---

 業務執行機関:3人以上の複数取締役代表制

 業務監督機関:監査役独任制  妥当性監査を含む業務監査  会計監査

 執行機関と監査・監督機関は分離

 機関相互の役割分担は明確

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昭和25年改正商法の制度---取締役会制と代表取締役制---

 業務執行機関:代表取締役制

 業務決定機関と業務監督機関:取締役会制

 監査機関:会計監査に限定された監査役制

 取締役会が業務執行に対する監督機能を保有  →監査役は不要  ただし、公認会計士制度が軌道に乗っていなかったため、監査役制は公認会計士が育つまでの間の暫定機関として位置付けられて存続

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 今日の観点  取締役会の構成員の一定数又は一定割合 は業務執行から離れた立場にある者

  =社外取締役とすることが合理的  社外取締役の導入要件は未設定

  →取締役会の構成員は社内取締役で占有  執行と監督の重層構造

 代表取締役は業務執行者と同時に監督機関代表者  監査・監督機関と被監査・監督機関は制度的には分離はしても実質的には非独立。

  →取締役会は監督機関としての役割の未発揮の体制   →取締役会の監督機能の形骸化

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昭和49年改正商法の制度---監査役の業務監査権復活------二つの監督機関の存置---

 昭和40年に倒産した山陽特殊鋼や山一証券等の一連の   事件で取締役会の監督機能の無力化が露呈  昭和42年業務執行の監督の在り方に関する法務省試案が提示

 A案:取締役会が業務執行の監督を実施することを前提に、取締役の資格として社長等の業務担当役員及び使用人は取締役となることはできない

 B案:監査役が業務監査を実施し、監査機能を強化する

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 B案の採択   独立性の観点から監督者としては取締役より監査役の方が優っているとの理由 

  監査役の業務監査の復権   →監査役制度の強化を通して企業統治の向上を企図

 A案の未採択  取締役会の監督機能強化に関して

 社外取締役制度を中心とする米国流の機関設計の道は閉ざされた

 平成14年の商法改正における委員会等設置会社制度の設置まで待たなければならなかった。

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 監査・監督機関の併存  監査役を取締役の業務執行の監査機関として  復活  取締役会に取締役の業務執行の監督機関

    として存置  監査役の適法性監査の定着

 監査・監督機関の併存が監査役の監査を適法性監査とし、取締役会の監督を妥当性監査とする概念的な整理

 実務的には、取締役のガバナンス不足の    補完的な役割

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監査役制度の強化

 昭和56年改正   複数監査役制度及び常勤監査役制度の導入           平成5年改正 1人以上の社外監査役制度及び監査役会制度の導入 •  3名以上の監査役 •  任期は3年 •  社外監査役の社外性要件の設定

 平成13年改正 監査役制度の実効性確保の強化 •  監査役の任期:4年 •  3名以上の監査役のうち社外監査役は半数以上 •  社外監査役の社外性の要件の強化

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平成14年改正商法の制度---委員会等設置会社制度---

 導入の背景  企業統治の向上策に関し、社外監査役制度の導入、強化だけではその効果を疑問視

 取締役会の形骸化の問題との関連で社外取締役制度による経営の監視が必要であるとの見解

 一方グローバル競争時代において、一層の効率的な経営が必要との認識

 米国流の機関・制度のように業務執行担当役員による迅速・果敢な業務執行を可能とならしめるシステムの導入

 形骸化した監督機能が十分発揮できていない取締役会の監督機能を強化する制度の導入

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 取締役会の機能の強化策

 代表取締役に権限が集中していた人事と報酬に係る

権限を指名委員会と報酬委員会に委任

 企業価値の実現の程度まで含めた効率性の監査や業

務執行の監査・監督の権限を監査委員会に委任  執行機関と監督機関は分離されているが・・・

 委員会等設置会社制度は、取締役会の過半数を社外取  締役とすることを断念するところから出発した制度設計

 社外取締役以外の取締役は執行役との兼務が    可能⇒執行・監督の分離不十分

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平成17年会社法制定---監査役設置会社制度と委員会設置会社制度---

 委員会設置会社制度に移行しない・不人気な理由  必置の指名・報酬・監査の三委員会の決定は先決的決定権を保有

 取締役会の決議でも覆すことは不可能  指名委員会の必置に対して経営者の抵抗感が強い

 監査役設置会社体制においても取締役会の決議で配当が可能

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 監査・監督機能の併存  ガバナンスの仕組みとして取締役会による監督機能と監査委員会による監査・監督機能は併存

 監査役と監査委員会との相違  監査役

 独自の監査に従事(独任制)  適法性監査+不当性チェック             代表取締役の選任・解任権はなし

 監査委員会  組織体としての監査  適法性+妥当性・効率性監査  取締役会の構成員として執行役の選任・解任権を  保有

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我が国の統治制度の特性

①平成14年の商法改正における委員会等設置会社制度導入までの企業統治向上は、昭和25年の商法改正における代表取締役制と取締役会制の導入を除いて、主として監査役制度の強化を通じて実施

②我が国の企業統治の特異性として、執行機関としての代表取締役制度と監督機関としての監査役制度の存在

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③代表取締役は最高経営責任者(CEO)であると同時に経営の監督義務を負っている取締役会の最高位の君臨者。

 経営のチェック機能の効果が殆んど期待できない執行と監督の不分離の統治システム

④監査役と取締役会の両者で最高経営責任者兼取締役会の最高位君臨者である代表取締役の職務の執行を監査・監督するという二つの統治機関が監督する非効率的で不明朗な監督責任の統治システム

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本日の報告内容

第1章 法務省審議会会社法制部会の議論の纏め

第2章 日本の企業統治制度の変遷

第3章 主要国の企業統治制度

第4章 企業統治制度に関する見解と提言

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主要国の企業ガバナンス構造

[I]欧米の基本的企業ガバナンス構造  1)基本的に経営の業務執行機関と監督・監視機関        が独立している。構造形態として欧の二層構造(監   督機関たる監査役会が業務執行機関たる取締役会   の上部機関)と米英の単層構造(取締役会が業務執   行機関兼監督機関として、CEOへ業務執行を委任し   監査委員会、指名委員会、報酬委員会等を駆使して   業務執行機関たる経営委員会等を監督・監視する)  の2つがある

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欧米のガバナンス構造(ドイツ) ・二層構造 監査役会 半数 選任 株 主

監査役会長 監査役 総 会

監督機関 半数 選任

任命 従業員

報告 取締役会

従業員2000人超の会社 業務執行機関

・業務執行機関と監督機関を完全分離

・株主総会が選任するのは、監査役 ・監査役の任期は、4年以内。 ・解任はそれぞれ株主および従業員の3/4以上 ・監査役会長は2/3の多数決で通常株主が選任 ・監査役会が取締役を選任 ・取締役の任期は5年 ・取締役の解任は監査役会 ・定款変更は、株主総会で3/4以上の賛成 ・株式会社(AG)より有限会社(GmbH)圧倒的多数 30

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欧米のガバナンス構造(フランス) ・ドイツ方式の二層構造と単層構造の併用 監査役会 株 

選任 監査役会長  従業員代表も 主 監督機関 任命 総 

報告 業務執行委員会 会

業務執行機関 ・二層構造の会社は監査役は全て株主総会で選任 ・従業員代表は、監査役会の議決権はなし ・監査役任期は、6年以内で定款で定める ・業務執行委員任期は4年 ・業務執行委員の解任は、監査役会の提案で株主総会が決定 ・定款変更は株主総会で2/3の特別決議 ・圧倒的に単層構造の会社が多い

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欧米のガバナンス構造(アメリカ・イギリス) ・単層構造

取締役(会) 株  取締役会長 選任 社外取締役 主

経営監督機関

監査委員会 総 

指名・報酬委員会

監督 会

人事権 報告

経営委員会

CEO兼取締役会長 OFFICER

業務執行 ・業務執行は取締役会の指示により行われる

・州法で委員会設置を認め、一般的な意思決定権限を委員会に委任可とする

 (配当や基本定款の修正等基本的な事項は委任不可) ・委員会は、取締役会の決議または定款に定められる限度で、業務執行について  取締役会の全ての権能および権限を有し、行使することが出来る ・OFFICERは、定款の定めまたは取締役会もしくはその他の管理機関により選任

・広範な定款自治が認められている

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欧米のガバナンス構造(アメリカ・イギリス) 「取締役会の機能」 監督機能に特化 ①CEOの選任、評価および解任。報酬決定                   ②主要戦略ならびに財務その他の目的および計画の審査、承認 ③重要問題へアドバイス ④内部統制およびコンプライアンスの適正を評価する手順の監督、手順の適正化

⑤取締役の指名、健全なコーポレートガバナンスが出来る取締役会の活動を確保

・社外取締役が過半数。監査委員会は、独立取締役で構成   ・監査委員会が、CEO以下の業務執行を監督 ・取締役の任期 米、英 1~3年 

・経営判断の原則(Business Judgement Rule)を認め取締役会の裁量権広い

・取締役の解任は株主総会で過半数賛成 ・定款変更 英~株主総会で3/4以上の賛成 ・取締役会の頻度 年4~12回程度  経営委員会を随時開催し決議

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欧米のガバナンス構造(アメリカ・イギリス)

「監査委員会の機能」  ①外部監査人の推薦および解任提案の審査  ②財務諸表およびそれに関する外部監査人    の証明、報告、意見等の審査ならびに   経営陣と外部監査人との間の財務諸表作   成に関する意見相違の審査  ③CEOの選任、評価、解任および報酬の審査  ④内部管理の適正さの検討  ⑤外部監査人の報酬、条件および独立性の    審査

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日欧米のガバナンス構造(日本) ・重層構造(監査役会設置会社) 取締役(会) 株  代表取締役 選任

業務執行機関 主 経営監督機関

人事権 総  監査

監査役(会) 選任 会

業務監督機関 ・業務執行機関と監督機関が非分離 ・業務執行機関が監督機関の機能も持ち自己監督 ・監査役も株主総会が選任 ・監査役任期は4年。取締役は2年以内 ・取締役の解任は株主総会特別決議2/3以上賛成 ・3人以上で1/2以上は社外監査役(会社法335条) ・監査役は取締役の職務の執行を監査(会社法381条) ・監査報告書の作成

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日欧米のガバナンス構造(日本) 委員会設置会社は米国型 取締役(会) 株 

取締役会長 選任

社外取締役 主 監査委員会 指名委員会 総 

報酬委員会 監督 会 人事権 報告

経営委員会 代表執行役

執行役 業務執行

・1~2人の執行役をおかねばならない ・執行役は取締役との兼任可。任期1年 ・執行役の選任・解任は取締役会決議 ・委員会は3人以上の取締役で組織 ・委員の過半数は社外取締役 ・業務執行機関と監督機関は分離

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日欧米のガバナンス構造(日本) 「監査委員会の権限」(404条②)

①執行役等の職務執行の監督および監査報告の作成

②会計監査人の選任および解任ならびに再任しない議案の決定

執行役等の個人別の報酬等の内容の決定

「指名委員会の権限」(404条①)

・株主総会へ提出する取締役の選任・解任議案の決定

・業務執行の決定   ①経営基本方針 ②内部統制体制の整備

③執行役の職務執行の監督

「執行役の権限」(418条)

・取締役会から委任を受けた業務の執行の決定

・業務執行

「取締役会の機能」(会社法362条)

・業務執行の決定

・取締役の職務の執行の監督

・代表取締役の選任・解任

・重要事項(重要な財産処分、多額の借財、支配人選任

 重要な組織の設置、内部統制体制の整備他)委任不可

・取締役の業務執行権限(会社法363条)

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本日の報告内容

第1章 法務省審議会会社法制部会の議論の纏め

第2章 日本の企業統治制度の変遷

第3章 主要国の企業統治制度

第4章 企業統治制度に関する見解と提言

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現行企業統治制度に関する見解

●現行会社法下の企業統治制度の見直し必要   ✔業務執行と監査・監督機能の分離が不完全 

●監査役設置会社制度   ✔適法性監査機能はあるが妥当性監査・監督機能が実質上欠如

  ✔監査役の経営者からの独立性低く、特にトップが絡む企業不祥事へ

   の対応が不十分

  ✔企業がグローバルしているにも拘わらず本制度は内外投資家からの

   充分な信頼を得ていない

●委員会設置会社   ✔制度導入後8年を経過したが本制度採用企業数は50社程度   ✔執行役と取締役の兼務による執行・監督の分離不十分

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企業統治制度の在るべき姿

●「監査・監督される者」と「監査・監督する者」の明確な分離

●監査・監督対象は「適法性」、「妥当性」、「利害相反」を一括

●監査・監督する者の資質は「独立性」と「専門性(経験、知見など)」

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企業統治制度の提言

     取締役会と執行役会の分離

株主総会 取締役会 執行役会

法律・定款で規定された事項の決議を行う会社の最高意思決定

機関

過半数の社外取締役で構成される会社の業務執行決定と監査・業務

執行は行わない監督機関。

純粋な業務執行機関

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株主総会

●株主総会の権限

  ✔会社法で規定された事項の決議

    (取締役の選任・解任、取締役の報酬の決定、定款の変更、重要な

     営業譲渡・譲受、株式併合、会社の合併、資本の減少など)

  ✔報告を受ける事項

    (決算財務諸表、会社業績、株式配当政策など)

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取締役会(1)

●取締役会の権限と義務   ✔株主総会に付議する議案の決定など株主総会に関する事項

  ✔執行役(会)の業務執行に関する監査・監督

  ✔代表執行役(CEO)の選任・解任

  ✔代表執行役(CEO)の報酬の決定

  ✔監査・監督委員の選任・解任

  ✔監査・監督委員会以外の任意設置委員会設置の決定

  ✔その他重要事項

●取締役会の構成員   ✔社外独立取締役(過半数)

  ✔代表執行役兼任取締役

  ✔非業務執行取締役(社内、社外)

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取締役会(2)

●取締役の任期   ✔社外独立取締役の任期は執行役の任期に1年を加算したものとする   ✔その他の取締役の任期は執行役と同等とする

  ✔社外独立取締役は1年ごとにその半数を改選する。再任は可

●取締役会の機関   ✔監査・監督委員会設置は必須

  ✔監査・監督委員会以外の委員会の設置は取締役会決議に依る

  ✔監査・監督委員会は全員社外独立取締役で構成

  ✔監査・監督委員の選任・解任は取締役会の決定による

  ✔監査・監督委員会は業務執行の監査・監督・評価を実施し、代表執行

    役(CEO)の選任・解任提案権を持つ   ✔監査・監督委員会決議は取締役会の2/3の反対で否決可   ✔監査・監督委員会は事務局を持つ。内部統制部門の扱いについては      要検討 

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社外独立取締役の定義

●社外独立取締役のミッション   ✔独立性と専門性(能力、経験、知見等)を有し、取締役会の重要な意

    思決定に独立した視点を提供することに依り企業価値向上に寄与す

    ると共に、多様な利害関係者の利益に配慮すること

●社外独立取締役と看做されない者   ✔当該企業の親会社関係者

  ✔特定の利害団体関係者

  ✔当該企業の執行役又は幹部社員の近親者

  ✔重要取引先

  ✔当該企業のアドバイザー(公認会計士、弁護士、顧問等)

  ✔過去に当該企業の執行役、従業員であった者で、当該企業との関係

   がなくなって以来5年を経過しない者

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本企業統治制度についての注釈

●本制度の適用範囲   ✔東証第1部、第2部上場会社は本制度又は委員会設置会社の選択制   ✔上記以外の会社は本制度、委員会設置会社、監査役設置会社の3制     度からの選択制    *対象会社を更に絞り、東証一部上場で且つ総資産が一定以上の会社      に限定する案もある    *各制度の強制選択制ではなく自主的選択制とし「comply or explain」制と      する案もある    *本制度は会社法ではなくソフトローでの規定が適切との意見がある

●取締役会の社外取締役過半数設置義務   ✔5年程度の移行期を設け、社外取締役数を段階的に増加させ、最終     的に過半数とする

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監査・監督委員会に関する会社法制部会提案とBグループ提言(1)

機関 機能、構成員等 会社法制部会提案 Bグループ提言

取締役会 執行と監督の分離 ●原則、現行枠組み ●社外取締役導入により監査・

 監督機能強化

●完全ではないが高度の分離 ●取締役(会)は監査・監督に専念

●執行役(会)は業務執行に専念

機能 ●原則、現行枠組みだが、業務  執行決定権を限定し、出来る

 だけ執行部門に委譲

●業務執行決定権を限定し、下記  以外は執行部門に委譲

 ✔株主総会付議事項の決定

 ✔執行役(会)の監査・監督

 ✔代表執行役(CEO)の選任・解任  ✔代表執行役(CEO)の報酬決定  ✔監査・監督委員の選任・解任

 ✔任意設置委員会の設置決定

 ✔その他重要事項

 ✔委員会決議を2/3の反対で否決 構成員 ●現行枠組み+社外取締役 ●社外独立取締役(過半数)

●代表執行役(CEO)兼取締役 ●社内/社外非業務執行役

任期 ●1年 ●社外独立取締役は執行役任期+  1年、その他は執行役任期と同等

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監査・監督委員会に関する会社法制部会提案とBグループ提言(2)

機関 機能、構成員等 会社法制部会提案 Bグループ提言

監査・監督委

 員会

機能 ●業務執行の監査・監督 ●執行役(会)の業務執行の監査・監督 ●代表執行役(CEO)の選任・解任提案

構成員 ●社外取締役(過半数) ●全員社外独立取締役 ●事務局設置可

●内部統制組織を傘下に置くことは要    検討

委員の選出方法 ●株主総会又は取締役会 ●取締役会

任期 ●1年 ●執行役任期+1年

その他の機関 ●任意 ●任意

本制度の適用

 範囲

●原則、東証一部、二部上場企業で本制度と委員会設置会社の選択

●その他の企業は本制度、委員会設置会社、監査役設置会社からの選択

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文献・資料名               著 者             出版社等

・企業ガバナンスの国際比較  深尾光洋・森田泰子       日本経済新聞社 ・コーポレートガバナンス入門  深尾光洋              日本経済新聞社 ・コーポレートガバナンス――経営者の交代と報酬はどうあるべきか                        久保克行              日本経済新聞社 ・企業統治の論点         久保克行    日本経済新聞2011.3.31経済教室 ・コーポレートガバナンス(米国のコーポレートガバナンスの紹介と日本でのあり方についての試論)          川村真文              はてなブックマーク ・委員会設置会社の機関設計柔軟化と「監査・監督委員会」設置会社                      太田 洋               商事法務NO1914 ・金融危機が変えたコーポレート・ガバナンス変革が進むアメリカどうする日本                             佐藤 剛               商事法務 ・上場会社法入門         森田 章               有斐閣 ・ガバナンス・監督・監査の関係からみた日本の会社法監査の機能                      李 湘平            北海道大学経済学研究 ・月刊 監査役 No.564,578,579                    日本監査役協会 ・監査役                                    ウイキペディア   法務省審議会会社法制部会 第1回~第10回議事録および配付資料