47
流体中に置かれた回転円柱の運動 T07M007 員  概   ナックルボール サッカー シュート されている.こ よう ボールが きを するかを によって らかにするこ して した. したソフト ェア から および から から,ボールを円 った.また,レ イノルズ 400 えた.これ 1 cm 3 cm/sec する. させるこ きる し,FreeFEM++ し,さらに,円 する FreeFEM++ た. お, つため, した. した ステップ した.円 する 、円 されたままにして めた ある.こ ,円 れるカルマン渦によって するこ された.さらに, によらず ほぼ一 あるが, いほうが が大きく るこ かった. による円 を第2 ステップ した.円 れる する きに移 きる して めた ある( による運 い).円 した をし らく れが る.こ ように ってから円 けるようにした. する円 がよく がる いう あった. ボール きを するか する円 タイミング かし めて じ運 をする 対して, かし めるタ イミングによって運 大きく異 るこ された.す わち, から りに する円 から がるが, かし めるタイミングに依 して, がったり,右に がったりする. による運 れて ボール きを 確に するよう られ あろう する.ボー ルを円 えるこ あろうから,意 ちた ボール きを するために レイノルズ ある う.

流体中に置かれた回転円柱の運動 - Ryukoku Universitytsutomu/graduate/2008/08...流体中に置かれた回転円柱の運動 理工学研究科 数理情報学専攻

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流体中に置かれた回転円柱の運動

理工学研究科 数理情報学専攻T07M007 野地 誠指導教員  池田 勉

概  要

 近年,野球のナックルボールやサッカーの無回転シュートなどの無回転系の変化球が注目されている.このような無回転ボールがなぜ予測不可能な動きをするかを数値計算によって明らかにすることを目標として本研究を開始した.流体計算に利用したソフトウェアの機能面からの制約および計算時間からの制約から,ボールを円柱で置き換え空間2次元で数値計算を行った.また,レイノルズ数は 400 程度に抑えた.これは,直径 1 cm の円柱が水中を 3 cm/sec

程度で進む場合に相当する.円柱は任意の速さで回転させることができるものとし,FreeFEM++ で流速と圧力を計算し,さらに,円柱に作用する揚力と抗力も FreeFEM++ で計算し円柱の運動を調べた.なお,計算精度を保つため,揚力と抗力は領域積分の形で計算した.円柱の中心を固定した数値計算を最初のステップとした.円柱には揚力や抗力が作用するものの、円柱の中心は固定されたままにして計算を進めたものである.この結果,円柱の後方に現れるカルマン渦によって揚力は時間とともに振動することが示された.さらに,揚力の周期と振幅は円柱の回転数によらずほぼ一定であるが,回転数が高いほうが揚力の絶対値の平均が大きくなることが分かった.揚力による円柱の運動の数値計算を第2のステップとした.円柱の中心は流体が流れる方向と直交する向きに移動できるとして計算を進めたものである(抗力による運動は考慮しない).円柱の中心を固定した流体計算をしばらく行うと流れが周期的になる.このようになってから円柱の中心が動けるようにした.数値計算の結果は,速く回転する円柱の方がよく曲がるという自然なものであった.無回転ボールの予測不可能な動きを示唆するかも知れない数値計算結果としては,速く回転する円柱は周期的な流れのどのタイミングで動かし始めてもほぼ同じ運動をするの対して,無回転や遅い回転の場合は円柱を動かし始めるタイミングによって運動は大きく異なることが示された.すなわち,上から見て時計回りに速く回転する円柱は,上流側から見ると必ず左に曲がるが,無回転の円柱は円柱を動かし始めるタイミングに依存して,左に曲がったり,右に曲がったりする.抗力による運動を取り入れても,無回転ボールの不思議な動きを明確に示唆するような結果は得られないであろうと現時点では予測する.ボールを円柱に置き換えることは妥当であろうから,意外性に満ちた無回転ボールの動きを再現するためには,現実的なレイノルズ数の下での流体計算が必要であると思う.

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Dynamics of rotating column put in fluid

T07M007 Makoto NOJI

Advisor Tutomu IKEDA

Graduate Course of Applied Mathematics and Informatics

Graduate School of Science and Technology

Ryukoku University

Abstract

In recent years, breaking pitches in a family of non-rotating balls attract marked

attention of people such as a knuckleball of baseball and a non-rotating shot of

football. The purpose of the present paper is to clarity why such a non-rotating

ball moves unpredictably by numerical computation.

Because of the restricted ability of a software utilized for calculation of fluid

dynamics and the restriction from computation time, the ball is replaced with a

column and a two-dimensional numerical computation is performed. Moreover,

a value of 400 was assumed for the Reynolds number, which corresponds to the

column 1cm diameter moving in the water at about 3cm/sec.

We assume that the column can rotate with an arbitrary speed, and we adopt

the FreeFEM++ for calculating the velocity and presure fields of moving fluid.

Moreover, the lift and drag acting on the column are computated also by using

the FreeFEM++. We note that the lift and drag are decided by corresponding

area integration in order to keep the accuracy of numerical calculation.

Our numerical computations consist of two parts. In the first part, although

the lift and drag act on the column, we fix the center of the column and calculate

the lift. We find that the lift oscillates by the effect of the Karman vortex

appearing behind the column. Moreover, the period and amplitude of oscillation

of the lift is independent of the rotation speed of the column while the average

of the absolute value of lift increases with the rotation number.

In the second part, the dynamics of the column by the lift are numerically

computed in the situation where the center of the column can move only in the

direction perpendicular to the stream line. We note that the effects of drag are

not taken into account still. In our numeral simulation the column is released

after the flow field becomes periodic in time. The result is as follows :

1. the column moves more rapidly as the rotation speed becomes higher.

2. the dynamics depends on the timing of release for the slowly rotating

column, while it dose not for the rapidly rotating column.

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流体中に置かれた回転円柱の運動

龍谷大学大学院理工学研究科数理情報学専攻

T07M007 野地 誠

指導教授 池田 勉平成 21 年 1 月 28 日

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目 次

1 はじめに 1

2 研究を進める際の前提 1

2.1 研究ステップ . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 2

3 流れ場の解析 2

3.1 解析領域 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 2

3.2 弱形式 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 4

3.3 有限要素近似 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 6

4 揚力と抗力 7

4.1 表面積分による表示 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 8

4.2 領域積分による表示 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 8

5 有限要素分割 10

6 流体計算のパラメータ 10

7 円柱の中心を固定した数値計算 12

8 揚力による円柱の運動の数値計算 22

8.1 運動方程式 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 22

8.2 初期条件 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 24

8.3 動く円柱の取り扱い方法について . . . . . . . . . . . . . . 25

8.4 円柱の運動の結果とその評価 . . . . . . . . . . . . . . . . 27

9 質量のパラメータを変えた揚力による円柱の運動の数値計算 34

10 定常流中を移動し始めた円柱の動き 39

11 謝辞 42

12 参考文献 43

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1 はじめに著者はバレーボールチームに所属し, サーブの時などにバレーボールが揺れる現象に興味があった. こうして流体力学を勉強することを決め, バレーボールの変化球の原因を知り, それが今後のチームでうまく活用したいと考えた.

 野球でいうカーブシュートといった変化球はその回転方向に曲がる. ([9])

この変化球はボールに回転を与えボールを変化させる変化球である. これはマグナス力によりボールは曲がるのである. ([7])マグナス力とは球の動く方向と回転が決まると力の働く方向が決まり, また決まった方向にしか働かない力である. ([7])しかしそのような原理とは全く逆で回転を与えずにボールを変化させるボールがある. これをナックルボール, または無回転ボールという. ([7])この無回転ボールの動きはなかなか予測できない. 流体中を動く物体が流体から受ける力には揚力と抗力がある. ([5])

この2つの力によってボールの運動が定まる. よってまず無回転の場合やボールが回転している場合の揚力と抗力を調べることにした.

2 研究を進める際の前提 本研究では簡単なトイ・モデルを考えるため, いくつかの前提を決めた. 1つ目は空間 2次元流を扱うこととする. またボールを真上からみた場合を考えるため, 重力の影響はないものとする. 2つ目はボールを円柱で置き換える. これは空間 2次元流を扱うことで, 円柱を考えていることとなる. 3つ目は円柱は任意の速さで回転させることができることとする.

回転を与える変化球は抵抗から回転数は徐所に落ちる. しかしこのようなモデルを作ることは困難と考えたため, 円柱の内部にモーターのようなものを仕込ませた場合を考える. 4つ目に水中での円柱の動きを考える. 以上の条件の元, 有限要素法を用い計算を行うものとする. ([4])数値計算における有限要素法の大きな特徴の一つは任意形状物体が容易に扱えることである. ([3])有限要素法では, 領域を格子ではなく, 要素に分割するからである. ([3])有限要素法を用い, 揚力と抗力を求める方法は九州大学の田端正久先生がの資料「流体問題の有限要素解析」を参考にした. ([3])

1

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2.1 研究ステップ

 本研究は2つのステップに分けて研究を行った. 1つ目のステップは円柱の中心を固定した数値計算である. ([3])円柱は抗力や揚力を受けるものの, 円柱の中心は空気中を一定の速度で進むものとする. 円柱の中心を固定した座標系で, 流体に作用する揚力た抗力を計算する. 詳細は7章で説明する. 2つ目のステップは, 揚力による円柱の運動の数値計算である. 円柱の中心は進行方向と直交する向きにのみ移動できるような状況で, 流体の運動と円柱の運動を計算する. 流体の初期条件は, 円柱の中心を固定した際に得られる規則的な流れとする. このステップでは抗力による運動は考えないものとする. 詳細は8章で説明する.

3 流れ場の解析

3.1 解析領域

流れ場を解析するにあたり, 領域を用意する. 円柱 G を置きその周りの人工境界を作る. 人工境界で作られた領域を Ωとする. この人工境界の横幅を円柱直径の 10倍, 縦幅を円柱直径の 25倍とった. ∂Gを円柱境界とする. ∂Gは ∂Ωの一部である. 境界 ∂Ωを次のように分ける.

∂Ω = ∂G ∪ ∂γi ∪ ∂γo ∪ ∂γw (1)

流入部を γi, 流出部を γo, 側壁部を γwとする. 図 1のような長方形状の領域を作り流入部から流体を流入する時内部にできる流れを解析する.

([3])流体の運動を表す方程式はナビエ・ストークス方程式と質量保存を表す連続の式である. ([9])(3)は粘性をもつ流体の運動を表すナビエ・ストークス方程式である. 粘性流体とは粘りのある流体である. ([9])全く粘性のない流体のことを完全流体, または理想流体という. ([9])(2)は質量保存則を表す式である. 微小な領域中の流体を考えたとき, 領域に流れこむ流体の質量と流れだす流体の質量の差は, 領域中の流体の質量の増加に等しいことから導かれる. ([9]) 二つの式をベクトル表記で書くと,

∇ · u = 0 (2)

∂u

∂t+ (u · ∇)u+

1

ρ∇p− 1

ν∆u = f (3)

2

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図 1: 解析領域

となる. ここでの, u は流体の速度, ρは流体の密度, p は圧力, νは動粘性係数, f は外力を表す. 左辺第2項は慣性運動を表しているため, 慣性項と呼ばれている. ([9])左辺第3項は圧力項, 左辺第4項は粘性項と呼ばれている. ([9])(3)は有次元の式なので無次元化を行う必要がある.

∂u

∂t+ (u · ∇)u+ ∇p− 1

Re∆u = f (4)

(3)を無次元化した式である. チルダは無次元化した量を表す. 無次元化したナビエ・ストークス方程式にはレイノルズ数という無次元数があるが, これは流体の慣性力と粘性力の比を表す量である. ([9])レイノルズ数が小さいことは粘性力が大きいことと同じである. ([9]) 粘性が全くない完全流体を考える場合, 左辺第4項の粘性項がない式になる. これはオイラーの運動方程式である. ([9])

 座標は抗力のかかる方向に x1, 揚力のかかる方向に x2, 代表速度を U ,

σ = [σij], i, j = 1, 2を応力テンソル, n = (n1, n2)をGの表面 ∂Gへの外向き単位法線ベクトルとする.

境界条件は次のように与える.

u = (U, 0)(x ∈ γi) (5)

3

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σ(u, p)n = 0(x ∈ γo) (6)

tTσ(u, p)n = 0, u · n(x ∈ γw) (7)

tは境界 γwで独立な2方向の接線ベクトルとする. 応力テンソル σは

σij(u, p) = −pδij +2

ReDij(u) (8)

と表せる. Dijは変形速度テンソル

Dij(u) =1

2(∂ui

∂xj

+∂uj

∂xi

) (9)

である. なお境界 ∂G では円柱に回転を与えるため, 以下のような境界条件を与える.

u = (−(2πε)x2, (2πε)x1) (10)

と表し, ε回転する, 粘着境界条件を適用する.

3.2 弱形式

ナビエ・ストークス方程式と連続の式の弱形式の導出を行う. ([3])(4)

左辺第3項に重み関数 v をかけ, Ωで積分する.∫Ω

(∂p

∂x1

+∂p

∂x2

)

(v1

v2

)dx =

∫pv1dx2 −

∫Ω

p∂v1

∂x1

dx−∫

Ω

p∂v2

∂x2

dx(11)

(11)の右辺第1項は流出部での値なので境界 γoより∫pv1dx2 −

∫Ω

p∂v1

∂x1

dx −∫

Ω

p∂v2

∂x2

dx

=2

Re

∫∂u1

∂x1

v1dx2 −∫

Ω

pdiv(v)dx (12)

となる. (4)の左辺第1項, 第2項も同様 v をかけ, Ωで積分する. (4)第4項は難しいため

a(u, v) =2

Re

∫Ω

2∑i,j=1

Di,j(u)Di,j(v)dx (13)

4

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を (4)第4項に戻す作業をした.

1

Re2

∫Ω

∂u1

∂x1

∂v1

∂x1

dx+

∫Ω

(∂u1

∂x2

+∂u2

∂x1

)(∂v1

∂x2

∂v2

∂x1

) + 2

∫Ω

∂u2

∂x2

∂v2

∂x2

dx

=1

Re(

∫x2

2∂u1

∂x1

v1dx2 −∫

Ω

∂2u1

∂x21

v1dx) − 2

∫Ω

∂2u2

∂x22

v2dx

+

∫x1

(∂u1

∂x2

v1 +∂u1

∂x2

v1)dx1 −∫

Ω

∂2u1

∂x22

v1dx+

∫x2

∂u2

∂x1

v2dx2

−∫

Ω

∂2u2

∂x21

v2dx+

∫x2

∂u1

∂x2

v2dx2 −∫

Ω

∂2u1

∂x1∂x2

v2dx

+

∫x1

(∂u2

∂x1

v1 +∂u2

∂x1

v1)dx1 −∫

Ω

∂2u2

∂x1∂x2

v1dx (14)

(14)右辺第1項, 第7項, 第9項は流出部での値, 第4項, 第5項, 第11項, 第12項は側壁部での値である. 境界条件 ∂u1

∂x2= −∂u2

∂x1より

1

Re2

∫Ω

∂u1

∂x1

∂v1

∂x1

dx+

∫Ω

(∂u1

∂x2

+∂u2

∂x1

)(∂v1

∂x2

∂v2

∂x1

) + 2

∫Ω

∂u2

∂x2

∂v2

∂x2

dx

=1

Re2

∫x2

∂u1

∂x1

v1dx2 − 2

∫Ω

∂2u1

∂x21

v1dx− 2

∫Ω

∂2u2

∂x22

v2dx

−∫

Ω

∂2u1

∂x22

v1dx−∫

Ω

∂2u2

∂x21

v2dx

−∫

Ω

∂2u1

∂x1∂x2

v2dx−∫

Ω

∂2u2

∂x1∂x2

v1dx (15)

となる. さらに (15)の右辺第2項, 第7項は− ∂∂x1

(∂u1

∂x1+ ∂u2

∂x2)v1 = 0, 右辺

第3項, 第6項は− ∂∂x2

(∂u1

∂x1+ ∂u2

∂x2)v2 = 0より,

2

Re

∫Ω

2∑i,j=1

Di,j(u)Di,j(v)dx = 2Re

∫x2

∂u1

∂x1v1dx2 − 1

Re

∫Ω

∆u · vdx (16)

となる. 右辺第1項は (12)の右辺第1項から 0になる.

関数空間 V,Q を次のように定義する. ([3])

V (g, ε) = v ∈ (H1(Ω))2; v = (−(2πε)x2, (2πε)x1)(x ∈ ∂G), v = g(x ∈ γi)

v · n = 0(x ∈ γ)V = V (0, 0), Q = L2(Ω)(17)

関数空間 V,Q にはそれぞれ (H1(Ω))2, L2(Ω)のノルムをいれる.

関数 (u, p) : (0, T ) → V (g, ε) ×Qで

(∂u

∂t, v) + a1(u, u, v) + a(u, v) + b(v, p) = (f, v)(∀v ∈ V )

b(u, q) = 0(∀q ∈ Q) (18)

5

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を満たすものを求める. ただし

a1(u, u, v) =

∫Ω

2∑i=1

(u · grad)uividx

b(v, p) = −∫

Ω

pdiv · vdx

である. なお重力は考えないものとしているため, 外力 f は 0とする.

3.3 有限要素近似

閉領域 Ωを三角形からなる要素に分割し節点を配置する. ([3])要素はつぶれないものとし, 分割の最大要素長を h とする. 各要素上で区分的多項式からなる有限要素空間を作成する. ([3])流速に関しては Ω で連続になるようにする. Vh(g, ε)を流速を近似する有限要素空間の元 Vhで,

vh(P ) = (−(2πε)x2, (2πε)x1)(P ∈ ∂G),

vh(P ) = g(P )(P ∈ γi), (vh · n)(P ) = 0(P ∈ γw) (19)

を満たしているものの全体とする. ここに P は節点を示している. Vh =

Vh(0, 0) とする. またQh を圧力の有限要素空間とする. Vh ⊂ V , Qh ⊂ Q

である有限要素空間とし, Nu = dimVh, Np = dimQh とおく. ϕ, i =

1, ..., Nuを Vhの基底関数, ψ, i = 1, ..., NpをQhの基底関数とする. Nu次元ベクトルの全体を Vhと表す. このとき Vhの中の任意のベクトルが線形独立なベクトル ϕ1, ϕ2, ..., ϕNu の線形結合で表されるとき, ϕ1, ϕ2, ..., ϕNu

を Vhの基底という.

vh(x1, x2) =Nu∑i=1

Ciϕi(x1, x2), qh(x1, x2) =Nu∑i=1

Diψi(x1, x2) (20)

とする. Ci, Diは定数である. 弱形式 (18)の有限要素近似は関数 (uh, ph) :

(0, T ) → Vh(g, ε) ×Qhで

(∂uh

∂t, vh) + a1(uh, uh, vh) + a(uh, vh) + b(vh, ph) = (f, vh)(∀vh ∈ Vh)

b(uh, qh) = 0(∀qh ∈ Qh) (21)

6

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なるものを求める. この2式は混合型有限要素近似といわれ, 鞍点型変分問題である. ([3])鞍点型有限要素近似では, 流速, 圧力の近似空間は独立にとることはできない. ([3])

uh =Nu∑j=1

ujϕj +Nu+Mu∑j=Nu+1

u(pj)ϕj, ph =Nu∑j=1

pjψj (22)

とする. ただしMuは流入部と円柱境界の頂点の数である. (20), (22)より (21)は,

d

dt

Nu∑j=1

uj(ϕj, ϕi) +Nu∑

j,k=1

a1(ϕk, ϕj, ϕi)ukuj +Nu∑j=1

a(ϕj, ϕi)uj +Np∑j=1

b(ϕi, ψj)pj

= (f, ϕi) −d

dt

Nu+Mu∑j=Nu+1

(ϕj, ϕi)u(pj) −Nu+Mu∑

j,k=Nu+1

a1(ϕk, ϕj, ϕi)u(pk)u(pj)

−Nu+Mu∑j=Nu+1

a(ϕj, ψi)u(pj)(i = 1, ..., Nu) (23)

となる.

4 揚力と抗力本章では精度良く, 揚力と抗力を求める方法を説明する. 一般的に知られている揚力と抗力の求め方は,

D =1

2CDρU

2A (24)

L =1

2CLρU

2A (25)

である. ([3])ここに, ρ は流体の密度, U は流体の代表速度, A は物体 G

の流体方向の断面積である. CD, CL は無次元量であり, それぞれ抗力係数, 揚力係数である. ([3])これらは, 絶対的な定数ではなく, レイノルズ数に依存している. ([3])次章で抗力係数と揚力係数の求め方を説明する.

7

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4.1 表面積分による表示

流れに置かれた物体 G の抗力係数と揚力係数を求める. まず抗力, 揚力は

D = −∫

∂G

2∑j=1

σ1,jnjds (26)

L = −∫

∂G

2∑j=1

σ2,jnjds (27)

で定義されている. ([3])(24), (25)から抗力係数, 揚力係数は

CD =−2

ρU2A

∫∂G

2∑j=1

σ1,j(u, p)njds (28)

CL =−2

ρU2A

∫∂G

2∑j=1

σ2,j(u, p)njds (29)

となる. ([3])この式より抗力係数, 揚力係数を求めることができる. 物体G にかかる力は表面積分で求めるが, この方法は精度が悪い. ([3])よって次章でより良い精度の抗力係数, 揚力係数の方法を説明する.

4.2 領域積分による表示

関数空間 L2(Ω), Hm(Ω) を用意する.

L2(Ω) = v : Ω → R; ∥v∥0 < +∞

∥v∥0 = ∫

Ω

|v|2dx1/2

Hm(Ω) = v ∈ L2(Ω); ∥v∥m < +∞

∥v∥m = ∑

α≤m

∥Dαv∥201/2

を用意する. ここに, α = (α1, α2) は非負の整数からなる多重指数で,

8

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|α| =2∑

i=1

αi,

Dα = Π2i=1(

∂xi

)αi

である.

命題(u, p) を (H1(Ω))2 × H1(Ω) の任意の元, v を (H1(Ω))2 の任意の元とする. ([3])このとき,

(∂u

∂t, v) + a1(u, u, v) + a(u, v) + b(v, p)

=

∫Ω

∂u∂t

+ (u · grad)u− 1

Re∆u+ gradp− 1

Regrad(divu)vdx

+

∫∂Ω

[σ(u, p)]n · vdS (30)

が成立する. ([3])この命題の式を用いて領域積分を行う. ここで, (u, p)

は (18)を満たしているとする. w を Ω で十分滑らかな関数で,w = 1(x ∈ ∂G)

w = 0(x ∈ ∂Ω \ ∂G)(31)

とする. vD = (w, 0), vL = (0, w)と置く. (30)右辺第 1項から第 4項は (3)

を満たし, 右辺第 5項は (2)を満たしているため, 0 となる. よって (30)のv を vD または vL に置き換えることで, 以下の式に書き換えることができる. ([3])∫

∂Ω

[σ(u, p)]n · vDdS = (∂u

∂t, vD) + a1(u, u, v

D) + a(u, vD) + b(vD, p) (32)

∫∂Ω

[σ(u, p)]n · vLdS = (∂u

∂t, vL) + a1(u, u, v

L) + a(u, vL) + b(vL, p) (33)

上記の 2式と (28), (29)から

CD =−2

ρU2A(∂u

∂t, vD) + a1(u, u, v

D) + a(u, vD) + b(vD, p) (34)

9

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CL =−2

ρU2A(∂u

∂t, vL) + a1(u, u, v

L) + a(u, vL) + b(vL, p) (35)

が得られる. これらは (28), (29)と同等な抗力係数, 揚力係数の別の表現式であり, 関数wに依存しない. ([3])これらの各項はすべて領域積分で表現されている. CD, CL を (26), (27)に代入することで,

D = (∂u

∂t, vD) + a1(u, u, v

D) + a(u, vD) + b(vD, p) (36)

L = (∂u

∂t, vL) + a1(u, u, v

L) + a(u, vL) + b(vL, p) (37)

が得られる. ([3])この上記の 2式を用いて計算を行っていった.

5 有限要素分割領域 Ωを図 2のように三角形分割を行った. この三角形分割は境界 γi

は境界を 45等分, γoは境界を 30等分, γwは境界を 105等分, ∂Gは境界を 45等分した際, Free FEM++の自動分割で作られたものである. 要素の数は 14860個, 頂点の数は 7595個である. 円柱付近のメッシュを細かくとってあるのは, 揚力, 抗力を精度よく求めるためである. なおこの要素分割は, ステップ1, ステップ2とも同様である. ([2])

6 流体計算のパラメータ時間刻み幅の決め方は以下の式を用い, ∆tを決める.

min∆t =κ√

u21 + u2

2

(38)

κとは各々の三角形の最小の垂線のことである. 右辺の分母は流速の大きさを表しているが, 各々の三角形の最大の速度を表している. この (38)を用い, 全ての要素でmin∆tを求め, 全てのmin∆tから最も小さいmin∆t

を∆tを決める基準とした. 本研究では以上の決め方から∆t = 0.01とし数値計算を行った. なおステップ1, ステップ2同様である.

Reを決める際, Free FEM++がどこまで耐えれるか実験を行った. この実験は九州大学, 鈴木先生のサンプルプログラムで実験を行った. ([2])長

10

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図 2: 三角形分割

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方形領域から原点を中心とする半径 0.25の円を取り除いた領域で Navier-

Stokes 方程式を Free FEM++ で解くプログラムである. このプログラムでは Re = 400となっていたが, Re = 500から 100刻みに増やしていき, Re = 2000まで計算を行った. 結果, 高レイノルズ数だと計算が破綻した. またRe = 800までは, 計算は破綻せず最もらしい結果が得られたが, ∆tを小さくしていくと, 計算が破綻するという, 奇妙なことが起きた.

このようなことが起きた原因は不明であるが, 数値計算で現れたカルマン渦をゴースト解(数値計算では現れるが, 実際には存在しない解)と解釈することにした. また, 参考文献 [3]にある, 田端先生は計算例を挙げているが, Re ≤ 250の範囲に止めていることにも注意した. 結果本研究では,

信頼性から Re ≤ 400 の範囲で数値計算を行うことにした.  Re ≤ 400

とは実際の現象ではどのような流れであるかを, Re = 400で考えてみる.

Re =UL

ν(39)

レイノルズ数は (39)で定義されており, 分子が慣性, 分母が粘性を表している. ([9])U は代表速度, Lは代表長さ, νは動粘性係数である. U は流入速度, Lを円柱の直径とした. Re ≤ 400でも無数のとり方があるが, ここに一例を挙げる. 例えばL = 0.01[m], ν = 0.893 × 10−6[m2/s] (25度での水中の動粘性係数)とすると, U = 0.036[m/s] と非常にゆっくりした流れを考えていることとなる. ([6])

7 円柱の中心を固定した数値計算本章では円柱の中心を固定した揚力と抗力の数値計算結果を表示する.

なおレイノルズ数は 300の場合と 400の場合を計算した.

図 3はRe = 400での反時計回りに円柱を回転させた時の揚力の変動を表している. 横軸が揚力, 縦軸が時間を表している. 左のグラフから無回転, 回転数= 0.3(実時間で毎秒約 1回転), 回転数= 0.5(実時間で毎秒約 1.8回転), 回転数= 0.7(実時間で毎秒約 2.5回転), 回転数= 0.9(実時間で毎秒約 3.2回転)である. t = 0は流体を流入した時である. 無回転, また回転を与えた場合ともに一定の時間が経過すると, 周期的な流れになる. またどのような初期条件を与えても, 周期的な流れになることは確認した. このグラフから言えることは, 揚力は振動することである. ただし高速な回転を与えた円柱の揚力は振動しない. また回転数が多いほ

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0

20

40

60

80

100-4-3-2-1 0 1

図 3: 反時計回りに円柱を回転させた時の揚力の変動 (Re=400)

ど, 揚力の平均値の絶対値が大きいということである.

図 4はRe = 400での時計回りに円柱を回転させた時の揚力の変動を表している. 横軸が揚力, 縦軸が時間を表している. 左のグラフから無回転,

回転数= −0.3, 回転数= −0.5, 回転数= −0.7, 回転数= −0.9である. 反対に回転を与えて, 先ほどの図 3と比べて対称性があるか調べた. グラフからはほぼ対称性がある. 詳しくは表 (a)を見る.

図 5はRe = 400での反時計回りに円柱を回転させた時の抗力の変動を表している. 横軸が抗力, 縦軸が時間を表している. 左のグラフから無回転, 回転数= 0.3, 回転数= 0.5, 回転数= 0.7である. 回転数を多くするにつれ抗力の平均は 0に近づいている. 振動は回転数= 0.3が最も大きく周期的な軌道になるのも速い. 高い回転数を与えると振動はなくなる.

図 6は Re = 300での反時計回りに円柱を回転させた時の揚力の変動を表している. 横軸が揚力, 縦軸が時間を表している. 左のグラフから無回転, 回転数= 0.3, 回転数= 0.5, 回転数= 0.7, 回転数= 0.9である.

Re = 400の場合と同様な結果が得られたが,振幅,揚力の平均はRe = 400

に比べると小さい.

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0

20

40

60

80

100-1 0 1 2 3 4

図 4: 時計回りに円柱を回転させた時の揚力の変動 (Re=400)

0

20

40

60

80

100 0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8

図 5: 時計回りに円柱を回転させた時の抗力の変動 (Re=400)

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40

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80

100-4-3-2-1 0 1

図 6: 反時計回りに円柱を回転させた時の揚力の変動 (Re=300)

図 7は Re = 300での時計回りに円柱を回転させた時の揚力の変動を表している. 横軸が揚力, 縦軸が時間を表している. 左のグラフから無回転, 回転数= −0.3, 回転数= −0.5, 回転数= −0.7, 回転数= −0.9である.

Re = 400と同様, 図 6と比べるとはぼ対称な結果が得られた.

図 8は無回転の円柱後方の流速場を示している. なお t = 50の時で周期的な流れになった時である. 流速ベクトルの色は黄色, 緑, 青, 赤につれて流速が速くなっている. 円柱後方にカルマン渦と呼ばれる左右交互に発生する渦が現われている. ([9])双子渦と呼ばれる左右対称の渦の対称性が崩れることによりカルマン渦が現われる. ([9])このカルマン渦の影響で揚力は振動していることが分かる. また無回転の特徴として左右対称にカルマン渦が現われていることが分かる.

図 9は回転数 = 0.5の円柱後方の流速場を示している. 無回転と同様t = 50の時で周期的な流れになった時である. このように遅い回転を与えた場合もカルマン渦は発生する. 無回転を与えた場合と違い, 反時計周りに回転を与えているためカルマン渦は左に流れているのが分かる. この影響により揚力は負の方向に振動しながらかかる.

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100-1 0 1 2 3 4

図 7: 時計回りに円柱を回転させた時の揚力の変動 (Re=300)

図 10は回転数= 1.0の円柱後方の流速場を示している. 無回転と同様t = 50の時で流れが一定になった時である. このように速い回転を与えると, カルマン渦は発生しない. このことから揚力が振動しないのも説明がつく. 流体流入部の境界条件は常に一定の速さの流速を流入していることから, 時間経過しても常に同じ流速場になっている. なおこのような円柱に速い回転を与えた場合は流入部の速度に比べると, かなり速いため正しい計算が行われているかは分からない. よって信頼性は低い.

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図 8: 無回転での流速場 (Re=400)

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図 9: 回転数 = 0.5 での流速場 (Re=400)

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図 10: 回転数 = 1.0 での流速場 (Re=400)

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円柱回転数 振幅 極小の平均値 極大の平均値 揚力絶対値の平均無回転 1.072242 -0.536827 0.535415 -0.001172

0.1 1.080804 -0.965341 0.115463 -0.428033

0.2 1.077580 -1.381227 -0.303647 -0.848186

0.3 1.022736 -1.752542 -0.729806 -1.247294

0.4 0.910691 -2.071047 -1.160356 -1.619747

0.5 0.733660 -2.340959 -1.607299 -1.976936

0.6 0.376478 -2.462960 -2.086482 -2.276547

0.7 0.013612 -2.591496 -2.577885 -2.584648

0.8 0.000180 -2.956110 -2.955930 -2.956000

0.9 -3.270530 -3.270530 -3.270530

1.0 -3.523100 -3.523100 -3.523100

-0.1 1.084902 -0.118742 0.966160 0.426268

-0.2 1.079486 0.299981 1.379467 0.845045

-0.3 1.022503 0.725464 1.747966 1.242787

-0.4 0.908002 1.156187 2.064189 1.614452

-0.5 0.724632 1.605750 2.330382 1.971005

-0.6 0.355431 2.090846 2.446277 2.270252

-0.7 0.013221 2.580354 2.593575 2.586924

-0.8 0.000150 2.959770 2.959920 2.959830

-0.9 3.274530 3.274540 3.274531

-1.0 3.525640 3.525640 3.525640

(a) 回転数を変えた揚力の変動(Re=400)

表 (a)はRe = 400での回転数を変えた揚力の変動を表にしたものである. 回転数は無回転から回転数 = 1.0, 回転数 = −1.0を表示した. この表は流れが周期的になった時のデータをまとめたものであり t = 40からt = 100までをまとめた. 振幅は揚力が振動している時に限り表示した.

この振幅の値は極小の平均値と極大の平均値から求めたものである. なお高い回転を与えら場合は揚力は振動しないため表示していない. 極小の平均値とは t = 40からそれぞれの 1周期での最小値の平均をとったものである. 極大の平均値も同様 t = 40からそれぞれの 1周期での最大値の平均をとったものである. 振幅をみると無回転は回転数= 0.1, 回転数= 0.2よりわずかに小さく, 回転数= 0.3から回転数= 0.8は連続的に小さくなっている. なお時計周りに回転を与えた場合も同様の結果になっ

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た. この結果で一番注目したのは微小の回転数を与えた場合, 無回転より振幅が大きいということである. 著者の予想では無回転が最も大きいと考えていた. したがってこの結果の信頼性があるかどうかは現在調査中である. 極小の平均値は無回転から, 回転数= 1.0 にかけて連続的に小さくなっており, 無回転から, 回転数= −1.0 にかけて連続的に大きくなっている. 極大の平均値, 揚力絶対値の平均も同様の結果が得られた.

円柱回転数 振幅 極小の平均値 極大の平均値 揚力絶対値の平均無回転 0.955132 -0.476942 0.478190 0.000419

0.1 0.960788 -0.887396 0.073393 -0.409060

0.2 0.954617 -1.288587 -0.333970 -0.816092

0.3 0.914953 -1.666716 -0.751763 -1.215126

0.4 0.836795 -2.016565 -1.179770 -1.602726

0.5 0.705320 -2.331642 -1.626322 -1.981856

0.6 0.422670 -2.527773 -2.105103 -2.318191

0.7 0.022780 -2.657670 -2.634890 -2.645197

0.8 0.000680 -3.044770 -3.044090 -3.044357

0.9 -3.389280 -3.389280 -3.389280

1.0 -3.672800 -3.672800 -3.672800

-0.1 0.961390 -0.073384 0.888006 0.409226

-0.2 0.955999 0.332346 1.288345 0.814895

-0.3 0.914171 0.749582 1.663753 1.212406

-0.4 0.832087 1.178571 2.010658 1.599277

-0.5 0.697987 1.626949 2.324936 1.978916

-0.6 0.417896 2.106598 2.524495 2.317582

-0.7 0.024990 2.635420 2.660410 2.646562

-0.8 3.045740 3.046540 3.046048

-0.9 3.390770 3.390780 3.390771

(b) 回転数を変えた揚力の変動(Re=300)

表 (b)はRe = 300での回転数を変えた揚力の変動を表にしたものである. この表も表 (a)と同様, 流れが周期的になった時のデータをまとめたものであり t = 40から t = 100までをまとめた. Re = 400 と比べると,

無回転から回転数= 0.5 まで振幅は小さくなっている. レイノルズ数が小さいということは粘性が強いため相応な結果が得られたと考える. 極小

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の平均値, 極大の平均値, 揚力絶対値の平均もRe = 400での同回転数と比べると全て小さくなっている.

図 11: 揚力の振動(円柱を固定した場合)

図 11は円柱を固定した場合でさらに遅い回転を与えた時の揚力の振動を表している. 縦軸は時間で 0から 35までを表している. これは実時間で表すと約 10秒間である. 左のグラフから無回転, 回転数= 0.1, 回転数= 0.2, 回転数= 0.3を表している. この表は流れが周期的になった時を表している. 高い回転を与えると, 流入速度に比べると非常に速いため信頼性があまりない. したがってこの図は信頼性のある計算結果を表示している.

8 揚力による円柱の運動の数値計算

8.1 運動方程式

本章では円柱の中心は進行方向と直交する向きにのみ移動可能な場合について説明する. 円柱を動かすわけだが, 一番の問題は円柱の運動方程

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式である. いいかえれば流体と円柱の相互作用が重要である. しかし著者はこの相互作用がよく分からない. したがって簡単な運動方程式, (40)で計算してみることにした.

md2y

dt2+ k|dy

dt|dydt

= L (40)

なお式 (40)は有次元の式を無次元化したものである. m は円柱の質量, k

は抵抗係数, Lは揚力である. m, kは以下の通りである.

m =m

ρL3(41)

k =k

ρL2(42)

式 (40)の左辺第2項は抵抗を表している. 抵抗には一般的に2つ抵抗が知られている. ([1])形状が小さい球形で物体の後方に渦ができない場合の抵抗力をストークスの抵抗という. ([1])高速で運動し形状が球形で物体の後方に渦ができる場合の抵抗力をニュートンの抵抗という. ([1])今回は渦ができる場合を考えているのでニュートンの抵抗を採用した. ニュートンの抵抗とは速度の2乗に比例する抵抗を受ける. ([1])この場合の比例係数は以下のように表す.

k =1

2CρS (43)

Cは物体の形による無次元の実測値で, 高速で運動し形が球である場合 C

はほぼ一定値をとる. ([1])今回は球の係数で一般的なC = 0.5を採用した.

Sは球の断面積を表す. ρは気温25での水の密度ρ = 0.997×106とするとk = 2.50×103[g/m]となる. よって (42)より k = 25.0となる. (40)を解くわけだが,非線形なので解くのは難しい. 条件は y(0), ˙y(0) → y(∆t), y(∆t)

である. したがって条件より |y| ∼= |y(0)|で近似した.

md2y

dt2+ k|dy(0)

dt|dydt

= L (44)

(44)は条件より (40)を近似した式である. y(t) = Z(t)と置く. この時一般解は

Z(t) = Ae−km|y(0)|t +

L

k|y(0)|(45)

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y(t) = − m

k|y(0)|Ae−

km|y(0)|t +

L

k|y(0)|t+B (46)

となる. なおA, Bは以下の通りである.

A = y(0) − L

k|y(0)|(47)

B = y(0) +m

k|y(0)|(y(0) − L

k|y(0)|) (48)

この2式から, 円柱の運動を調べていった.

図 12: 円柱を動かすタイミング

8.2 初期条件

この章では円柱を動かすタイミングについて説明する. 動かすタイミングは固定した時に得られた周期的に流れの時から動かし始める. しかしこの条件下でもいろいろなタイミングがある. したがって代表例として図 12の4点を選び円柱の運動の様子を比較した. 図 12は固定した際に得られた周期的な流れになった時の揚力を表している. 左のグラフから

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無回転, 回転数= 0.1, 回転数= 0.2, 回転数= 0.3を表している. 4点の選び方について説明する. 水色の流速場は揚力の絶対値の平均値を通り,

揚力の値が下から上を経過する際の流速場である. 橙色の流速場は揚力の絶対値の平均値を通り, 揚力の値が上から下を経過する際の流速場である. 茶色の流速場は極大の平均値を通る流速場である. 黒色の流速場は極小の平均値を通る流速場である. なおポイントは無回転しかつけていないが, 回転を与えた場合も同様の選び方をした. 円柱を動かすタイミングによって円柱の運動がどのように異なるか検証した.

8.3 動く円柱の取り扱い方法について

円柱を動かすにおいてどのような移動方法をとるか説明する. 本研究ではメッシュの再分割は行わず, いくつかの制限を決め円柱を動かす. 1つ目は有限要素メッシュは円柱とともに移動させることである. 有限要素メッシュをそのまま移動させることで, メッシュの再分割をしなくてすむためである. 2つ目は要素の頂点や辺の中点が, 移動後もそれを含む要素内に留まるように, 時間刻み幅を設定する. ここからは図 13粗く有限要素メッシュをとった領域をを用いて説明する. 例えば, 赤い円柱が少し右に移動したとする. この時, 流速, 圧力をどのように決めるか4つポイントを代表点に取り説明する. ピンク色の2点は領域内部にある三角形の頂点と中点, 青色の点は人工境界上の頂点や中点, 黄緑色の点は円柱境界上の頂点や中点からそれぞれ代表としてとった点である. まずピンク色の点, 領域の内部にある頂点と中点は新しい頂点における流速や圧力の値は現在の有限要素メッシュ上での分布から補間して決める. 要素は連続でかつ xと yの2次式となっているため, 補間は可能である. 次に青色のポイントについて説明する. このように, 新しい頂点や中点が現在の有限要素メッシュを飛び出した場合には, 移動前の頂点や中点における値をそのまま使うこととする. この方法はあまりいい考え方ではないが, 時間刻み幅を細かくとってあるため, 流速計算にさほど影響はないと考えた. また, 揚力に影響するカルマン渦が人工境界に接しない程度に領域を大きくとってあるためとりあえずこのような処置をする. 最後に黄緑色のポイントは流速については補間は行わず, 粘着境界条件による値を与える. 圧力に関しては人工境界上の頂点や中点と同じように処置する. 著者は円柱内部にモーターを仕込んでいるような状況を考えているため, 円柱の移動

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図 13: 円柱を動かす際の粗いメッシュ

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に回転数は依存しない. よってこのような処置をした.

図 14: 円柱の運動

8.4 円柱の運動の結果とその評価

図 14は揚力による円柱の運動を表している. 縦軸は時間で 0から 35までを表している. 左のグラフから無回転, 回転数= 0.1, 回転数= 0.2, 回転数= 0.3を表している. 円柱の位置は1を有次元量に戻すと 1cm である. グラフの色は図 13での円柱を動かすタイミングのポイントの色に対応している. 円柱の位置 = 0 付近にある4本のグラフが無回転, 右にいき回転数= 0.1, 回転数= 0.2, 回転数= 0.3を表している. 円柱の質量は100とした. この数字に特に意味はなくそこそこ円柱が動くであろうと予想した数値である. 有次元に直すと約 99.7gである. 速く回転する円柱の運動は, 円柱を動かし始めるタイミングにあまり依存しない. しかし無回転や遅い回転の場合, 円柱を動かし始めるタイミングによって円柱の運動は大きく異なることがある. また回転数= 0.1では 10秒に対して約 2cm

運動しているためそこそこ運動していることが分かる.

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図 15: 円柱の運動(無回転)

図 15は図 14の無回転だけを抜き出してスケールを縮めたものである.

このように無回転は円柱を動かすタイミングによって円柱の運動は大きく異なる. また無回転の場合は揺れながら移動しているのが分かる. 水色のポイントと橙色のポイントの初期流速の結果はほぼ対称に円柱は運動している. 一方, 茶色と黒色はほぼ直線に揺れながら移動している.

図 16は無回転での固定円柱と可動円柱を比較したものである. 赤色のグラフは固定円柱, 水色は可動円柱を表している. なお固定円柱は周期的になった時である. 縦軸は時間, 横軸は揚力を表している. 2つのグラフを見ると, ほぼ周期も振幅も変化がないことが分かる.

図 17は回転数= 0.3での固定円柱と可動円柱を比較したものである. ピンク色のグラフは固定円柱, 水色は可動円柱を表している. なお固定円柱は周期的になった時である. 縦軸は時間, 横軸は揚力を表している. 2つのグラフを見ると移動直後は無回転と同様, 周期も振幅もさほど変わらない. しかし時間経過につれ可動円柱のほうが周期が長く, 振幅が小さくなる. このように無回転円柱と速く回転する円柱では固定円柱と可動円柱を比べた結果は異なった.

図 18は長時間計算した際の揚力をグラフにしたものである. 実時間で

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図 16: 揚力の比較(無回転)

図 17: 揚力の比較(高速な回転の場合)

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0

50

100

150

200

250

300-0.6-0.4-0.2 0 0.2 0.4 0.6

図 18: 長時間計算した揚力

いうと約 85秒である. 揚力の振動は長時間計算してもほぼ周期的に振動しているのが分かる. また円柱の中心を固定した際の結果と同様, 揚力の平均はわずかに負になっている. これは誤差の影響と考えている.

図 19は長時間計算した際の円柱の運動をグラフにしたものである. 実時間でいうと約 400秒である. 初めは正の方向に運動している. これは円柱を動かすタイミングを水色のポイントでの初期分布にしているからである. しかし時間経過につれ負の方向に運動している. これは揚力の平均が負にあるためである. またグラフでは分かりにくいが振動しながら運動している. この結果から長時間計算してもそこそこな結果が得られることが分かった. 人工境界の側壁部では新しい頂点や中点が現在の有限要素メッシュを飛び出した場合には, 移動前の頂点や中点における値をそのまま使うこととした. この方法はあまり小細工はしていない. しかし長時間計算できるという結果が得られた.

図 20は長時間計算した際の円柱の速度をグラフにしたものである. 実時間でいうと約 400秒である. 初めは円柱の運動と同様, 正の位置で振動しているが, 時間経過につれ負の位置で振動し始める. ある程度たつと終端速度にたどり着く.

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0

200

400

600

800

1000

1200

1400-4-3.5-3-2.5-2-1.5-1-0.5 0 0.5

図 19: 長時間計算した円柱の運動

0

200

400

600

800

1000

1200

1400-0.01-0.008-0.006-0.004-0.002 0 0.002 0.004 0.006 0.008

図 20: 長時間計算した円柱の速度

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20

40

60

80

100-40-35-30-25-20-15-10-5 0 5

図 21: 円柱の運動(回転数 = 1.0まで計算)

図 21は回転数 = 1.0まで計算した円柱の運動である. 左のグラフから無回転, 回転数 = 0.2, 回転数 = 0.4, 回転数 = 0.6, 回転数 = 0.8, 回転数= 1.0となっている. このように円柱の回転数を多くするにつれ連続的に大きく曲がっている. しかし固定した際と同様, 回転数 = 1.0などは流入速度に比べ非常に回転速度が速いため信頼性はない.

図 22は回転数 = 1.0まで計算した揚力である. 左のグラフから無回転,

回転数 = 0.2, 回転数 = 0.4, 回転数 = 0.6, 回転数 = 0.8, 回転数 = 1.0となっている. このように円柱の回転数を多くするにつれ揚力の平均は連続的に大きくなっている. 遅い回転では振動するが, 速い回転では振動はしない. 回転数 = 0.6は不規則な振動になっている. これは長時間計算しても周期的になることはなかった. この結果については回転数が速すぎてこのような現象が起きたのか分からない.

図 23は回転数 = 1.0まで計算した円柱の速度である. 左のグラフから無回転, 回転数 = 0.2, 回転数 = 0.4, 回転数 = 0.6, 回転数 = 0.8, 回転数= 1.0となっている. このように円柱の回転数を多くするにつれ連続的に大きくなっている. 遅い回転では振動するが, 速い回転では振動はしない.

回転数 = 0.6は揚力が不規則な振動なので円柱の速度も不規則になって

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0

20

40

60

80

100-4-3-2-1 0 1

図 22: 揚力(回転数 = 1.0まで計算)

0

20

40

60

80

100-0.4-0.35-0.3-0.25-0.2-0.15-0.1-0.05 0 0.05

図 23: 円柱の速度(回転数 = 1.0まで計算)

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いる. どの回転数も終端速度になっているのが分かる.

9 質量のパラメータを変えた揚力による円柱の運動の数値計算

これまではm = 100と固定して計算をしてきた. 本章では円柱の質量を軽くすると円柱はどのような運動をするか検証した.

0

5

10

15

20-0.05 0 0.05 0.1 0.15 0.2 0.25 0.3

図 24: 質量の異なる無回転での円柱の運動の比較

図24は質量の異なる無回転での円柱の運動の比較を表している. 赤色はm = 100実際の重さでは 99.7g, 黄緑色はm = 50実際の重さでは 49.85g,

青色はm = 10実際の重さでは 9.97g, ピンク色はm = 1実際の重さでは0.997gである. m = 100, m = 50を比べるとm = 50の方が軽い分大きく運動し振動も同じくらいである. m = 10ではm = 100に比べると大きく運動しているが振動も大きくなっている. m = 10ではさらに大きく運動しているが振動も大きくなっている. この計算は正しい計算であるとは言い難い. 原因は分からないが質量が軽すぎて計算に影響がでているのだと考えている.

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図 25は質量の異なる回転数 = 0.1 での円柱の運動の比較を表している.

0

20

40

60

80

100-14-12-10-8-6-4-2 0

図 25: 質量の異なる回転数 = 0.1 での円柱の運動の比較

赤色はm = 100, 黄緑色はm = 50, 青色はm = 10, ピンク色はm = 1である. m = 1を除けば円柱を軽くするにつれ連続的に大きく運動している. m = 1は t = 100の時点でほぼm = 100と同じ位置にいる. この結果は揚力の平均が他に比べると高いことが原因だと考えており, 揚力の奇妙な振動は直接影響はしていない.

図 26は質量の異なる回転数 = 0.3での円柱の運動の比較を表している.

赤色はm = 100, 黄緑色はm = 50, 青色はm = 10, ピンク色はm = 1である. 円柱を軽くするにつれ連続的に大きく運動している. 遅い回転数に比べると最もらしい結果だがm = 1はm = 10のグラフとさほど変わらないため正しい計算とは言い難い.

図 27は質量の異なる無回転での揚力の比較を表している. 赤色はm =

100, 黄緑色はm = 50, 青色はm = 10, ピンク色はm = 1である. m = 1

を除けば, 円柱の質量を軽くするにつれ揚力の振幅は大きくなっており,

また周期も短くなっている. m = 1は周期的な軌道ではあるが, 奇妙な振動である. この振動が本当に正しい計算で無回転ボールの予測不可能な動きを示唆する結果と捉えるか, または正しい計算ではないのかは分から

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20

40

60

80

100-25 -20 -15 -10 -5 0

図 26: 質量の異なる回転数 = 0.3 での円柱の運動の比較

0

5

10

15

20-0.8-0.6-0.4-0.2 0 0.2 0.4 0.6 0.8

図 27: 質量の異なる無回転での揚力の比較

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ない.

0

5

10

15

20

25

30

35

40-1.2-1-0.8-0.6-0.4-0.2 0 0.2 0.4

図 28: 質量の異なる回転数 = 0.1 での揚力の比較

図 28は質量の異なる回転数 = 0.1での円柱の運動の比較を表している.

赤色はm = 100, 黄緑色はm = 50, 青色はm = 10, ピンク色はm = 1である. m = 1を除けばほぼ同じ軌道である. m = 1は無回転の場合と比べても周期的ではあるがまた違う軌道が現れた. また揚力の平均も質量の重い円柱に比べると高くなっている.

図 29は質量の異なる回転数 = 0.3 での円柱の運動の比較を表している.

赤色はm = 100, 黄緑色はm = 50, 青色はm = 10, ピンク色はm = 1

である. 無回転, 回転数 = 0.1と比べるとm = 1は奇妙な振動はせず,

m = 100と同じような軌道である. 振幅はm = 10が最も大きい. また長時間計算しても同様な結果が得られた.

図 30は質量の異なる無回転での円柱の速度の比較を表している. 赤色はm = 100, 黄緑色はm = 50, 青色はm = 10, ピンク色はm = 1である.

振動は円柱の質量を軽くするにつれ大きくなっており, 周期は短くなっている.

図 31は質量の異なる回転数 = 0.1での円柱の速度の比較を表している.

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20

40

60

80

100-2-1.8-1.6-1.4-1.2-1-0.8-0.6

図 29: 質量の異なる回転数 = 0.3 での揚力の比較

0

5

10

15

20-0.15-0.1-0.05 0 0.05 0.1 0.15

図 30: 質量の異なる無回転での円柱の速度の比較

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40

60

80

100-0.2-0.15-0.1-0.05 0 0.05 0.1

図 31: 質量の異なる回転数 = 0.1 での円柱の速度の比較

赤色はm = 100, 黄緑色はm = 50, 青色はm = 10, ピンク色はm = 1である. m = 100とm = 50は小さい振動で徐々に終端速度に向かっているの対し, m = 10, m = 1は円柱を離してすぐに周期的になっている. またm = 1は揚力が奇妙な軌道でさらに揚力に平均が高いので振動が正まできている.

図 32は質量の異なる回転数 = 0.1での円柱の速度の比較を表している.

赤色はm = 100, 黄緑色はm = 50, 青色はm = 10, ピンク色はm = 1である. m = 100とm = 50は小さい振動で徐々に終端速度に向かっているの対し, m = 10, m = 1は円柱を離してすぐに周期的になっている.

10 定常流中を移動し始めた円柱の動き本章ではピッチャーが投げる瞬間を流体の初期分布とした時の円柱の運動を検証していく. 具体的には, x1方向の全ての流速を u1 = 1とし,

u2 = 0とした. なお境界条件はそのままである.

図 33はピッチャーが投げる瞬間の初期分布での揚力の比較をしたもの

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60

80

100-0.3 -0.25 -0.2 -0.15 -0.1 -0.05 0

図 32: 質量の異なる回転数 = 0.3 での円柱の速度の比較

0

20

40

60

80

100-1.5-1-0.5 0 0.5

図 33: ピッチャーが投げる瞬間の初期分布での揚力の比較

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である. 赤色は無回転, 黄緑色は回転数= 0.1, 青色は回転数= 0.2, ピンク色は回転数= 0.3である. 回転数を多くするにつれ揚力の平均は大きくなっている. 無回転の場合と回転を与えた場合の一番の違いは, 無回転の場合は始めは振動しないが, 回転を与えた場合は計算直後に振動しているという点である. 無回転の場合は左右対称の双子渦ができ, 双子渦が崩れ始めでからカルマン渦がでるのに対し, 速い回転を与えた場合は双子渦は現われない. このことが原因である. 無回転の場合カルマン渦がどちらの渦が先に崩れるかで振動が変わる. つまり, 誤差の影響でこのような結果が出たとすると, 少しの摂動を与えることで正反対の振動が生まれる可能性がある.

0

20

40

60

80

100-20-15-10-5 0 5

図 34: ピッチャーが投げる瞬間の初期分布での円柱の運動の比較

図 34はピッチャーが投げる瞬間の初期分布での円柱の運動の比較をしたものである. 赤色は無回転, 黄緑色は回転数= 0.1, 青色は回転数= 0.2,

ピンク色は回転数= 0.3である. 円柱の回転数を多くするにつれ円柱の運動は大きくなっている. これは考えている現象は大きく違うが, 野球の変化球であるように回転数の多いボールの方が大きく曲がるのを考えれば当然の結果である.

図 35はピッチャーが投げる瞬間の初期分布での円柱の運動の比較をし

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60

80

100-0.25-0.2-0.15-0.1-0.05 0 0.05

図 35: ピッチャーが投げる瞬間の初期分布での円柱の速度の比較

たものである. 赤色は無回転, 黄緑色は回転数= 0.1, 青色は回転数= 0.2,

ピンク色は回転数= 0.3である. 円柱の回転数を多くするにつれ円柱の速度は速くなっておりまたいずれも振動しながら終端速度に向かっている.

ピッチャーが投げる瞬間を流体の初期分布とした時の円柱の運動は無回転の場合と回転を与えた場合ではおもしろい結果は得られなかった. 高レイノルズ数でないとナックルボールのような現象は計算できないのではないかと考えている.

11 謝辞最後になりましたが今回の研究にあたり, 流体の計算やLATEXの使い方など, 丁寧に指導していただいた龍谷大学理工学部数理情報学科二宮広和先生, Linux導入のご指導をいただいた金沢大学理工研究域長山雅晴先生には厚くお礼申し上げます.

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12 参考文献[1]宇佐美 誠二, 貴島 準一, 西村 鷹明, 鳥塚 潔, 理工系のための力学の基礎, 講談社サイエンティフィク 

[2] 鈴木 厚, FreeFEM + +演習 数値解析チュートリアル 2007, 九州大学 21世紀 COEプログラム 機能数理学の構築と展開, MARCH 2007,

pp. 71-78

[3] 田端 正久, 流体問題の有限要素解析, 数理科学 No. 417, MARCH

1998, pp. 13-19

[4]田端 正久, 藤間 昌一, 有限要素法による流れ問題の数値解析, 数学,

Vol.48, pp.22-36, 1996.

 

[5]Masahisa TABATA and Daisuke TAGAMI, Error Estimates for Finite

Element Approximations of Drag and Lift in Nonstationary Navier-Stokes

Flows, Reprinted from the JAPAN JOURNAL OF INDUSTRIAL AND

APPLIED MATHEMATICS Vol. 17. No. 3, pp.371-389, October 2000

 

[6] 樋口 亜里沙, 山の風下に見られるカルマン渦の研究(成層および三次元効果の影響http : //www.gaia.h.kyoto−u.ac.jp/publichtml/theses/pdf/higuchi2004.pdf

[7]姫野 龍太郎, 魔球をつくる 究極の変化球を求めて, 岩波 科学ライブラリー 75

[8]門田 和雅, 長谷川 大和, はじめての流体工学, 技術評論社 

[9] 山口 浩樹, 道具としての流体力学, 2005年, 日本実業出版社