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行 列 の 魅 力群の作用と表現
山下 博
年 月 日
講義プラン
第 時間目《ベクトル,行列,そして群》
ベクトル空間と一次変換平面の一次変換と行列群の概念と例
第 時間目《群の作用と表現》
群の作用と等質空間群の表現
の既約表現の 構成・分類
記号
整数全体の集合実数全体の集合複素数全体の集合
虚数単位
集合 から集合 への写像
が単射 一対一対応
について
が全射 上への写像
任意の に対し
なる が存在
全単射 全射かつ単射
写像
に対して,
を と の合成写像という. を
単に ともかく.
列ベクトル
を自然数とする.次の列ベクトルとは,
ベクトル空間
列ベクトルの和:
列ベクトルのスカラー倍:
には,和とスカラー倍
の算法がある. についても同様
ただし
【和・スカラー倍の性質】
ただし, では
零ベクトル
【ベクトル空間の定義】
ベクトル空間とは,前項の諸性
質 をもつ
和
スカラー倍
の算法を備えた集合 のこと.
の要素をベクトルという.
スカラー倍の定義域により,
実ベクトル空間 のとき
複素ベクトル空間 のとき
と区別する.
【ベクトル空間の例】数ベクトル空間 は実ベクト
ル空間 は複素ベクトル空間.
集合 上の実数値関数全体の集合
は実ベクトル空間になる.関数 と の和は,
関数 の 倍 は,
同様に, は複素ベクトル空間になる.
ベクトル空間とは,和とスカラー倍
の定義された集合のこと
「ベクトル=矢印」の
矢印捨てて一般化
【一次変換の定義】
実 複素 ベクトル空間.
写像 が一次変換
上の一次変換 .
一次変換 が正則
は全単射
上の一次変換とは,
一次関数
が正則 傾き
一次変換とは,和とスカラー倍を保
存する写像.
正比例の関数の一般化.
線形代数学とは,ベクトル空間と
一次変換を扱う学問.
現代数学の礎.
平面上の一次変換と行列
座標平面の点
により,同一視 平面このとき,
基本ベクトル
が平面 上の一次変換のとき,
とおき,
を考える 次 実 正方行列 .
【命題】写像
は全単射. と
するとき,
つまり,
平面の一次変換 次行列
【行列と列ベクトルの積の定義】
この定義をもとに,前項の命題は,
となる.
一次変換とは行列をベクトルの左
から掛けること.
【一次変換の例】原点 を中心とする
角 の回転移動
とくに,
恒等変換
に対応する行列は
単位行列
【一次変換の例】原点 をとおる直線
に関する対称移動
【一次変換の例】 軸への射影
【一次変換の例】零写像
一次変換の合成と行列の積
.
合成写像 も 上の一
次変換になる.
【行列の積の定義】行列 の積
を, により定める.つ
まり,
一次変換の合成 行列の積
【行列の積の明示公式】
【積演算の性質】
結合法則
注意 一般には,
正則一次変換・行列式
【命題】
一次変換 が正則
と
が をとおる同一直線上にない
の行列式
は零でない.
※ の図参照
【正則行列の定義】
行列 が正則
が正則な一次変換
【命題】 が正則行列
を の逆行列という.
正則 も正則で
【逆行列の明示公式】
【行列式の性質】
が正則のとき,
は,平行四辺形
の面積に等しい.ただし,
※ の図参照
群の概念ベクトル空間 例えば平面
は正則
【積演算 の性質】
結合法則
ただし, 恒等変換 逆写像
【群の定義】一般に,ある集合 上に
演算 が定義
されていて,条件 を満た
しているとき, は群であるという.
の を群 の単位元, の
を の逆元とよび, で表す.
群の公理:
結合法則
単位元 の存在
逆元 の存在.
群 が可換
【群の例】
は正則
ベクトル空間 上の一般線形群.
集合 上の全単射写像全体
写像の合成により群 上の置換群
空間の運動全体のなす運動群
空間の運動とは,回転移動と平行移動
を繰り返して得られる変換.
.数の加法により可換群
数の乗法により可換群.
部分群
【部分群の定義】 群
が の部分群
ならばならば
【部分群の例】
は の部分群 トーラス群 .
は部分群.
空間内の図形 をそれ自身に移
す運動全体 は運動群 の部分
群.図形 の対称性を記述する.
群の同型
写像
は全単射で,
これより,
は行列の積により群.
上の 次一般線形群という.
同型
【同型の定義】
群 と が同型
全単射
同型 算法を保つ全単射がある
本質的に同じ
種々の代数系で同型の概念がある.
いろいろな一次変換群
【特殊線形群】
は の部分群.
【直交群】回転移動と対称移動全体
は の部分群.
は,同型
をとおして,行列
たちのつくる群
と同型.
【回転群】
は の可換な部分群.対応する行
列群
同型
【放物型部分群】
軸を 軸に移す正則一次変換全体
は の部分群.同型な行列群は,
【モジュラ群】
行列
たち全体 は の「離
散」部分群をなす.
群の作用【作用の定義】 群, 集合.が に作用する が 集合 「 に対し を対応させる算法があり,次を満たす. 」
「 上に変換 があり,
を満たす.」
は全単射.逆変換は
【作用の例 】
ベクトル空間 上の一般線形群
は に自然に作用.
は に共役変換
として作用
【作用の例 】図形 の運動群
は に自然に作用.
【作用の例 旗多様体】
平面
原点 をとおる直線
旗多様体
群 は集合 に自然に作用.
単位円周上での実現
の二点 と を同一
視して得られる集合.
は全単射.これを通し, の作
用を に移すことができる.
実数直線上での実現原点をとおる傾き の
直線軸 傾き無限大 の直線
このとき,写像 は全単射.この全単射をとおして,集合 に群 を作用させる.
とす
ると, の 上への作用は分数一次変換である
※ 講義資料 を上に訂正
旗多様体
推移的な作用
群 が集合 に作用するとき,
【推移的な作用の定義】 の 上への
作用が推移的 あるいは が 等質
空間
任意の 点が 作用で移りあう
【例】 旗多様体 上への
の作用は推移的. をとおる直線は
回転 で移りあう.
の への自然な作用は推
移的でない.
【固定部分群の定義】 とする.
は の部分群になる 点 の にお
ける固定部分群 .
に対し,
を の による剰余類.
【命題】 とおく.このとき,
を に移す の要素の集合
【証明】 のとき,
より,積 は を に移す.
逆に, なる任意の
に対して,
から, が分かる.
ゆえに,
の剰余類による分割
に対して,
【剰余類空間の定義】 による剰余類
の集合
のこと.
群 は に,
により推移的に作用.
【定理】 が 上に推移的に作用する
とき,対応
は の作用を保存する全単射.
等質空間 剰余類空間
【例】 旗多様体 軸.
の における固定部分群は,
放物型部分群 と一致. ゆえに,
【応用例】立方体をそれ自身に移す回
転全体の個数は,
群の表現
【表現の定義】 を 集合とし,
が定める 上の変換を とする.
このとき,
が群 の 上への表現である
が の表現である
はベクトル空間,かつ,
が 上の一次変換
表現 = 一次変換による群の作用
注 は正則な一次変換になる.
【表現の例 】前出の例につき,の への自然な作用,の への共役作
用は,ともに表現である.の旗多様体への作用は表現
でない 零でない表現は推移的な作用ではあり得ない【表現の例 】 .
は 上に,表現 を定める.この表現を とかく.
回転群 は 上に,表現 を定める.この表現を と書く.
【部分表現の定義】
群 の実 複素 ベクトル空間
上への表現.
の部分集合
が の 不変部分空間
を満たす
不変部分空間 上には,自然
に の表現
が生じる. を の部分表現という.
および は自明な不変部分空間.
【既約表現の定義】 と 以外に不変部分空間が存在しないとき,
の表現 は既約であるという.
既約表現=表現の基本単位
【例】 の 上への自然表現は既約.
の への共役表現は既約でない
は非自明な不変部分空間
上の任意の表現は既約.とくに, は既約.
表現論の基本問題
群 の既約表現を構成・分類せよ
【アプローチ】
興味深い表現を沢山作ること.
作った表現が既約かどうかを調
べること.既約でなければ,既約な部
分表現をうまく取り出すこと.
得られた既約表現たちのうち,本
当に相異なるもの 同型でないもの は
どれほどあるか,また,既約表現は完
全に尽くされているかを調べること.
以下では,複素ベクトル空間上の表現
を扱う.
表現の構成
を群, を 集合とする.
【定義】 に対し,
が定まっていて
を満たすとき, を 上の コサイク
ルという.
上の複素数値
関数全体のなすベクトル空間
【定理】 が 上の コサイクルのと
き, に対して,
とおけば, は群 の表現
になる.
実は, コサイクルの定義とは,上
の式で定めた が の 上への
作用を与えるために の満たすべき必
要十分条件を述べたもの.
は
常に コサイクル.
作用 コサイクル 表現
の既約表現の構成・分類
次の特殊線形群平面 の旗多様体
より,は に自然に作用作用は推移的 回転 .
既出の全単射 を思い起こそう.
に対し,
を対応させる写像は, と
の間の全単射を与える.
上の の作用を 上に移したものは
次のようになる.
【命題】 に対して,
複素数 を,
で定める.このとき,
であり, の への作用は,分数
一次変換
で与えられる.
【例】 回転
移動 のとき, であ
り,
【命題】 に対して,
は 上の コサイクルを定める.
よって, 上に の表現の族
ができる.
【表現 の明示公式】
に対して,
ただし,
上の関数空間.
とする.
上のローラン多項式とは,
ただし, なる は有限個.
に注意 の公式 .
ローラン多項式の全体
上の連続関数全体の空間
に関する周期 の連
続な関数全体といっても同じ.
には,連続関数 の内
積 と それを用いた距離 が,
により定まる.この距離に関して
を完備化して得られるヒルベルト空間
を と書く.
【喩え】
骨格 人体 洋服をきた紳士
【球主系列表現の定義】
ヒルベルト空間 は,表現 に
関して, の 不変部分空間とな
る.ヒルベルト空間 上に の
連続な表現が得られる.これを,
と書き, の球主系列表現とよぶ.
【定理】
表現 が既約
のとき,
のとき,
は の唯一の非自明な 不変 閉 部
分空間である.商表現 は,
ふたつの既約表現 の
和に分解する.
既約な
で, の連続な既約 許容
表現たちのうち半分が得られる.
残りの半分も, コサイクル の
取り方を少し変更することで得られる.
【証明の方針】
群 の表現 を微分して得られ
る リー代数の 上の表現 を
考察する.
の表現の構造が,リー代数の
表現 の構造ときちんと対応してい
ることを示す.
具体的な計算により, の既約
分解を与え,表現の構造を明らかにす
ること.
任意の既約 許容 表現は,主系
列の部分表現に実現できることを示す
こと.