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Classic Furniture Collection

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Classic Furniture Collection/カタログデザイン

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武蔵野美術大学 名誉教授 島崎 信

~ クラシックファニチャーコレクション 10周年によせて ~

CLASSIC FURNITURE COLLECTION _ 5

 デンマークの家具、とりわけ 1950 年代の後半から 60年代の終わり頃までに造られたものには、50年近く半世紀

を経た今日でも若々しく輝いた家具が多く見受けられます。

時代は北欧デザインの黄金期といわれ、歴史に残る素晴らしいデザイナーが競い合った時代でした。

秀れた建築家であり、プリミティブアートに強く惹かれたフィン・ユール。シェーカー家具に強い影響をうけ、共同

組合員のための堅実なデザインを求めたボーエ・モーエンセン。 北欧モダニズム建築のパイオニアとして、新しい建

築の設計と同時に新しい技術による量産家具を生み出したアルネ・ヤコブセン。マイスター職人としての造る技術を

習得のあと、中国・明代の家具に範を求めて 300 脚を越す秀作のデザインをしたハンス・ウェグナー。

いずれも互いを識り、尊敬し合いながら刺激をうけて秀作を世に問うた、幸福な緊張した時代でした。

 良い家具は、秀れたデザイナーの良いデザインがあれば生まれるものではありません。 見落としてはいけないのは、

当時のデンマークには勉強熱心で優れた技術をもったマイスター職人が多くいたことです。互いの専門分野に尊敬と

理解を持って、真の意味での協力作業をする。デザイナーとマイスターの素晴らしい関係が、この時代の輝ける家具

の多くを作って来たと云えるでしょう。

王立芸術アカデミーの研究員仲間の一人に、デンマークの若いマイスター職人のウオルフがいました。彼の父親は当

時のマイスターの中でも際立った存在だった、ヨーゲン・ウオルフでした。工房や自宅で私に話した忘れられない言

葉がいくつもありました。「毎日使う家具は、年月が経てば汚れて痛むのは当たり前のこと。」「年月を経ると、その

家具は相応の風格と美しさと使い慣れた愛着が生まれる。」そして「デンマークの家具は、汚れをとって新品と違う

年月が創った新しい美しさを生み出せる。 更に痛んだ処は何処でも直して、子供や孫と世代を越えて愛し続け、使っ

てもらうのだ」と自信に満ちた笑顔で言っていました。

 この 10 年あまり、当時の秀れた家具類が日本で尊重され、多くの関心を集めて来たことは大変嬉しいことです。

価格の安さに価値観を求める風潮の対極にある、良いデザインと品質を認める価値観に未来があると思います。

「クラシックファニチャー」、「ヴィンテージ家具」などと呼ばれていますが、私は「クラシック家具」という呼び名

が好きです。 クラシックという言葉は「古典」という意味もありますが、その第一の意味は「最高の」「第一級の」

ということですから。

                                             (2010 年 1月)

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CLASSIC FURNITURE COLLECTION _ 7

Easy chair No.45Sofa No.45

Easy chair NV53Lounge chair No.152-BWANA

Arm chair No.133Sofa BO64

Sofa table No.635

Writing bureau Easy chairSofa

Finn Juhl Hans J.Wegner

Børge Mogensen Ole Wansher

p.8-19 p.20-22

p.23 p.24-25

Easy chair GE270Easy chair GE375

Cabinet

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Easy chair No.45

MAKER : Niels Roth Andersen MATERIAL : Rosewood / Fabric SIZE : w690 d780 h825

8 _ Finn Juhl

Finn Juhl - 1945

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 フィン・ユールのNO.45。この椅子は、世界の椅子トップ 10のひとつに位置づけられる名作中の名作。正に見事な造形という他はない。 恐らく、フィン・ユール自身にとっても、もっとも思い入れが深く、製作を担当した名匠ニールス・ヴォッダーともども渾身の力を注いだ「一脚の椅子」だったであろう。 8年余り勤めていたヴィルヘルム・ラオリッツエン建築事務所を 33才、1945年退社、独立のスタートというべきコペンハーゲン家具職人ギルド展に出品したのが、このNO.45 だった。 このNO.45 に対する世の評価は高く、それからの椅子デザイナー、フィン・ユールの道がこの一作によって拓けていった記念碑的デザインといえるだろう。 この椅子自身は、現在家具職人ギルドの会長で、家具職人として現役の名匠といわれる、ニールス・ロス・アナセンの手で造られている。 ニールス・ロス・アナセンは、ニールス・ヴォッダーの直系の弟子であり、協力者であるソーレン・ホーンの下で腕を磨いた、正にフィン・ユールのデザインを製作する、その心を伝える匠といえるだろう。 張り替えられた布地は、フィン・ユール存命の時から使用されていた、ハンナ・ヴェダル自らの工房で織られているウールの生地。 デンマーク、ユトランドの南の美しい街、オーベンロウに大きな工房をかまえる、小柄なハンナは、家具、プラスティック、木製玩具などのデザインで有名なクリスティアン・ヴェダルの妹で、彼女の作品はデンマークの多くの城や、美術館、教会で使われ、飾られている。 フィン・ユールのデザイン、ニールス・ロス・アナセンの匠、ハンナ・ヴェダルの織物、そして今では入手の難しいローズウッドの美しい木目と、一流の役者の揃い踏みのような、貴重な、見事な椅子の逸品といえるだろう。

Finn Juhl _ 9

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10 _ Finn Juhl

Sofa No.45Finn Juhl - 1945

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MAKER : Niels Roth Andersen MATERIAL : Rosewood / Fabric SIZE : w1200 d780 h840

Finn Juhl _ 11

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12 _ Finn Juhl

MAKER : Niels Vodder MATERIAL : Rosewood / Leather SIZE : w725 d780 h740

Easy chair NV53Finn Juhl - 1953

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Finn Juhl _ 13

MAKER : Niels Vodder MATERIAL : Teak / Leather SIZE : w725 d780 h740

 「同じ台本の芝居でも、演じる役者によって観客の心を打つもの、打たぬものがある。演技の上手い下手だけでなく、本当に心に響くのは、役者の人柄、心根の善し悪しだ。」といった人がいる。同じデザイン、同じ図面によって造られる椅子でも上手く出来ているが、それ以上でもなく以下でもないというものに出逢う事は多い。 この椅子は、フィン・ユールのNV53。フィン・ユールの椅子造りの盟友であり、長い間、心の通じあった名匠ニールス・ヴォッダーの手によるものだ。“よくぞ、50年余りを経て残っていてくれた” と思わずつぶやきたくなるような逸品である。一つはチーク材、他は、ローズウッド材。その木理と木どりのうまさ、その仕上げの隅々まで行き届いた心遣い。 月日の重ねと共に、再び出逢う機会が少なくなる、時間と共に輝きを増すデンマークの椅子の名作である。

Page 14: Classic Furniture Collection

14 _ Finn Juhl

MAKER : France & Søn MATERIAL : Rosewood / Leather SIZE : w850 d915 h910

Lounge chair No.152-BWANAFinn Juhl - 1962

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Finn Juhl _ 15

MAKER : France & Søn MATERIAL : Teak / Leather SIZE : w850 d915 h910

アフリカ・北ローデシアの地名からとったこの名(ブワナ)のとおり、フィン・ユールの造形はいつもアフリカのプリミティブアートの影を引いている。ローズウッドの木目とその風合い、黒革との調和、左右から張り出した背の笠木、前脚上端の円形の握りなど、ネイティブな力強い美しさを見せた秀作といえよう。

Page 16: Classic Furniture Collection

16 _ Finn Juhl

MAKER : France & Søn MATERIAL : Teak / Fabric (stripe) SIZE : w740 d780 h780

アームの緩やかなカーブとボビンのような前後の納まりは、機智に富んだフィン・ユールらしいデザインといえよう。定説ではないが、「スペードチェア」とも呼ばれる。背と座に France & Søn 社得意のクッションを置き、なかなかの座り心地をみせている。リング状に留めた細長いコイルスプリングのループをフレームに取り付けた上にクッションを乗せることで軽快なフィーリングを生み出している。

Finn Juhl

Arm chair No.133- 1954

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Finn Juhl _ 17

MAKER : France & Søn MATERIAL : Teak / Fabric (plain) SIZE : w740 d780 h780

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18 _ Finn Juhl

MAKER : BOVIRKE MATERIAL : Teak / Fabric  SIZE : w1280 d740 h800

Sofa BO64

アームから背にかけての緩やかなウェーブと座面前のラインに窪みのカーブをつけたフォルムは、当時の家具デザイン界に新鮮なフォルムとして多くの人々に共感を得た。張り地にボタン留めの並び方が、背の上部のカーブに沿って美しい流れを生み出している。

Finn Juhl - 1946

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Finn Juhl _ 19

MAKER : France & Søn MATERIAL : Teak  SIZE : w840 d790 h460

Sofa table No.635

チークの味をいかしたテーブルデザインに、フィン・ユールがひとつの答えを出している。チークの無垢材をはぎ合わせた天板の前後に、板厚の上下に出る反りのあるエッジを付けて立体感を出している。天板とエッジ材のはぎ合わせ部分の狂いを目立ちにくくするためにV目地を切っているのも、長短いろいろなサイズがあるこのテーブルシリーズの中に見ることが出来る心配りであろう。

Finn Juhl - 1960's

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MAKER : GETAMA MATERIAL : Teak / Cane / Fabric  SIZE : w685 d755 h720

ハンス J.ウェグナーが、ポピュラーマーケットの需要に対応する呼びかけに応えてGETAMA社とのコラボレーションで生み出した秀作。一見、何の変哲もないようなこの椅子は、各部材の巧みなジョイント部分の処理と全体のプロポーションの美しさ、取り分け前後に大きく伸びるようなアームの削りのフォルムが秀逸といえよう。

20 _ Hans J.Wegner

Hans J.WegnerEasy chair GE270

- 1950

Page 21: Classic Furniture Collection

MAKER : GETAMA MATERIAL : Teak / Fabric  SIZE : w640 d920 h945

簡素に組み合わせたチークのフレームにクッションを置いたハイバックチェアは、インテリアの中に無理なくとけ込み、生活デザインの一部として受け止められる。十分な働きをしてくれるヘッドレストはさり気なく、大まかな量感が愉しい。

Hans J.Wegner _ 21

Hans J.WegnerEasy chair GE375

- 1969

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Hans J.Wegner

MAKER : RY Møbler MATERIAL : Teak / Cane  SIZE : w1800 d490 h1340

Cabinet

食器の収納棚として箱物家具の製作を得意とする RY Møbler 社製。内部の左側はオーク材の棚板で高さを上下に調整し、右側は上下の間隔をトレーの棚で自由に替えることができる。生活の需要に応じてキメ細かく対応できる心配りが愉しい。チークのキャビネットに扉の籐張りは飾りの表現として豪華さとエキゾチズムを表している。

22 _ Hans J.Wegner

- 1950's

Page 23: Classic Furniture Collection

MAKER : Soborg Møbler MATERIAL : Teak / Oak  SIZE : w1000 d460 h1210

Børge MogensenWriting bureau

1950 年代、当時の家庭で軽い事務作業用に用いられたフラットテーブルのライティングビューロは、多くの需要をもっていた。このライティングビューロはチーク材の使い方が見事でビューロ内部の構造をみても実直な仕事ぶりが窺え、好感がもてる家具といえよう。フラップテーブルと本体が当たる箇所に4つの突起を備えているのは、ユーモアがあると共に造形のアクセントになって愉しい。

Borge Mogensen _ 23

- 1950's

Page 24: Classic Furniture Collection

MAKER : P. Jeppesen MATERIAL : Rosewood / Fabric  SIZE : w670 d800 h750

Ole Wansher

Easy chair

オーレ・ヴァンシャーは、家具の歴史学者であると同時に格調高い椅子のデザインを数多く残した秀れたデザイナーでもあった。学識に裏打ちされた美しいデザインと、当時の最高家具職人といわれるポール・イエパセンの巧みな技術の組み合わせは、今日も尚、輝きを失わぬ美しさと品質をみせている。このコラボレーションが最も得意とするローズウッドの逸品である。

24 _ Ole Wansher

- 1960's

Page 25: Classic Furniture Collection

MAKER : P. Jeppesen MATERIAL : Rosewood / Fabric  SIZE : w1250 d800 h750

Ole Wansher _ 25

Ole Wansher

Sofa- 1960's

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文/島崎 信(武蔵野美術大学 名誉教授)

〒163-1062 東京都新宿区西新宿 3-7-1 新宿パークタワーリビングデザインセンターOZONE 5FTEL 03-5322-6565 / FAX 03-5322-6566Open 10:30 - 19:00 水曜休館(但し、祝日の場合は開館)http://www.ozone.co.jp/nordicform

ノルディックフォルムでは、北欧の名作家具をはじめ、1950 年から 60年代に製作されたヴィンテージ家具・

照明・テキスタイル・インテリア小物など、北欧スタイルをトータルにご提案いたします。単にモノを紹介す

るだけでなく、素材やデザイナー、職人たちの物語すなわち商品背景やエコロジー、ユニバーサルの視点など、

北欧の息吹を伝える情報発信の場を目指しています。

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