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東京都市大学 環境学部 教授 小堀洋美 平成271103回懇話会 「下水道を核とした市民科学育成プロジェト」 教育 社会貢献 研究 市民科学 市民科学とは: 市民が科学的なプロジェクトに関わること しかし、それだけではありません。 課題解決、環境保全 地域の活性化、政策提言 持続可能な社会形成 自然、社会への関心を高め、 知識、調査方法や技術の習得 価値観、態度、参加意欲に 変化ももたらす生涯教育 市民参画による多様なアプローチ Webによる広域的・長期的な研究調査 自然科学と社会科学の統合アプローチ 科学的な 問いや課題 の発見 科学的な 関心 市民や社会 の関心 プロジェクト のインフラの 整備と プロジェクト の実施・管理 観察・実験 調査 科学科学的 な知見、公表 社会 - 生態学 的システム行動、政策 連携 教育技能 知識 アイデンティティ 地域と地球規 模の課題解決 ・環境保全 ・持続型・循環 型社会の形成 政策提言 災害軽減 市民からみた市民科学へのアプローチ 依頼型 (Contact) 市民が科学者へ調査を依頼し、その報告を受ける 貢献型 (Contribute) 科学者や組織が研究テーマを設定、企画し、市民 がモニタリングし、データや資料を収集 協働型 (Co-laborate) 共同の目標を達成するために、研究開発を支援し、 データの収集と分析を行う。 共同創生型 (Co-create 市民が疑問や関心のある研究テーマを提案し、科 学者とともに多くの研究プロセスに参加し、研究を 発展させる。 独立型 (Colleagues) 市民自らが研究プロジェクト全てに関与する(市民 科学者)( Shirk et.a ., 2012) 資料2

市民科学とは: 市民が科学的なプロジェクトに関わること · 4.市民科学の成果を共有するための方策や多様名セ クターの連携 新たな市民科学のアプローチの導入

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Page 1: 市民科学とは: 市民が科学的なプロジェクトに関わること · 4.市民科学の成果を共有するための方策や多様名セ クターの連携 新たな市民科学のアプローチの導入

東京都市大学 環境学部 教授 小堀洋美

平成27年1月10日 第3回懇話会

「下水道を核とした市民科学育成プロジェト」

教育 社会貢献

研究

市民科学

市民科学とは:市民が科学的なプロジェクトに関わることしかし、それだけではありません。

• 課題解決、環境保全

• 地域の活性化、政策提言

持続可能な社会形成

• 自然、社会への関心を高め、知識、調査方法や技術の習得

• 価値観、態度、参加意欲に変化ももたらす生涯教育

• 市民参画による多様なアプローチ• Webによる広域的・長期的な研究調査• 自然科学と社会科学の統合アプローチ

科学的な問いや課題

の発見

科学的な関心

市民や社会の関心

プロジェクトのインフラの

整備とプロジェクト

の実施・管理

観察・実験調査

科学:科学的な知見、公表

社 会 - 生 態 学的システム:行動、政策連携

教育:技能知識

アイデンティティ

・地域と地球規模の課題解決・環境保全

・持続型・循環型社会の形成• 政策提言• 災害軽減

市民からみた市民科学へのアプローチ

依頼型(Contact) 市民が科学者へ調査を依頼し、その報告を受ける

貢献型(Contribute)

科学者や組織が研究テーマを設定、企画し、市民がモニタリングし、データや資料を収集

協働型(Co-laborate)

共同の目標を達成するために、研究開発を支援し、データの収集と分析を行う。

共同創生型(Co-create)

市民が疑問や関心のある研究テーマを提案し、科学者とともに多くの研究プロセスに参加し、研究を発展させる。

独立型(Colleagues)

市民自らが研究プロジェクト全てに関与する(市民科学者)(Shirk et.al., 2012)

資料2

Page 2: 市民科学とは: 市民が科学的なプロジェクトに関わること · 4.市民科学の成果を共有するための方策や多様名セ クターの連携 新たな市民科学のアプローチの導入

日本の市民科学の活性化に必要なことは?

1.市民の関心を高める方策

2.市民科学の成果の集積、情報共有を可能にするシステムの構築

3.参加者の増加と維持する方策

4.市民科学の成果を共有するための方策や多様名セクターの連携

新たな市民科学のアプローチの導入

“市民権”を得たインターネットを用いた市民科学

市民科学のプロジェクトを定量評価(Theobald et al. 2015).

対象プロジェクト数:生物多様性に関する388プロジェクト参加者の合計:毎年1300万人調査範囲:研究者の対象地より広い地理的範囲をカバー(67%のプロジェクトは100–10,000 km以上)プロジェクトの継続期間:平均7年間(研究者よりも長い)価値(市民がプロジェクトに費やした時間をお金に換算)

:700~2500億円に相当この値は米国のNSF(全米科学財団) の研究助成額の11–42% に相当

市民によるデータは適切なプロトコール、トレーニング、専門化による管理が行われれば、専門化と同じレベルの精度が得られることは明らかにされている。(Danielsen et al.,2014)

ビッグデータの科学的価値 eBird

(Cornell Lab of Ornithology)

・世界で500万人/年の市民(Birder)がプロジェクトに参加・寄せられたデータから90編の学術論文が作成

文字が読めないコンゴ共和国の女性は森林での密猟や不法伐採のマップ作成プロジェクトに参加し、データ収集のトレーニングを受けているUniversity College Londonthe Extreme Citizen Science (ExCiteS) Intelligent Maps project.(Rick Bonney, 2014) Nature

科学を超えた価値の創造:教育的側面

Page 3: 市民科学とは: 市民が科学的なプロジェクトに関わること · 4.市民科学の成果を共有するための方策や多様名セ クターの連携 新たな市民科学のアプローチの導入

調査・観測

インターネットを利用してデータの入力

フィルタリングシステムによるデータの審査

確認メッセージ

専門家による判断

データベース

有効なデータとして記録

有効でないデータとして記録 参加者への

情報の依頼

有効なデータ有効でない

データ

参加者に確認

確認がとれたら

有効でないと判断

Webを用いた市民との双方向の情報交換によるデータ精度の管理システム

科学を超えた価値の創造:社会的側面

“Cerebrate Urban Birds”

実施期間: 6年間参加団体数: 9,000以上参加人数: 250,000人以上参加年齢: 就学前の子供

や幼稚園児からお年寄りまで

貧困層など十分なサービス教育(社会的サービス)を受けていない参加者が88%いる。75%以上の参加者が鳥

に関する知識や経験がほとんど無い。

http://celebrateurbanbirds.org/

ラテンアメリカ出身の貧困層の参加者が水と大気のモニタリングを行い、地域改善や交流のためのイベント

下水道を核とした市民科学育成の芽出し

1. 横浜市で流域レベルでの市民科学プロジェクトの開発と実施(学生発表Ⅰ)

2. 市民の利点を活かしたプロジェクトの提案3. 貢献型モデルの手法を実施4. 市民科学のデータの精度の向上

5. インターネットを活用した汎用性のあるシステムの開発と提案(学生発表Ⅱ)

6. 下水道の課題解決、市民と下水道界を元気にするプロジェクト提案(学生発表Ⅲと

本日のグループ討議)

境川の行政による管理神奈川県、東京都、横浜市

いたち川の行政による管理:横浜市

2. 市民の利点を活かしたプロジェクトの提案~境川流域での調査~

Page 4: 市民科学とは: 市民が科学的なプロジェクトに関わること · 4.市民科学の成果を共有するための方策や多様名セ クターの連携 新たな市民科学のアプローチの導入

いたち川愛護会の活動範囲と水質調査の範囲

●水辺愛護会の活動範囲:天神橋~新橋●今回の調査範囲:城山橋~新橋●行政の調査範囲:いたち川橋

新橋

下流

いたち川橋

上流

海里橋放流口

城山橋

天神橋

貢献型 協働型 共同創生型

研究テーマの設定 ○

情報収集 ○

仮説の提案 ○ ○

方法の検討 ○ ○

現場のデータの収集 ○ ○ ○

現場のデータの分析 ○ ○ ○

全データの分析・解析 ○ ○

結果 ○

成果の発表(学会) ○

成果を専門雑誌などに公表 ○

CAISE(Center for Advancement for Informal Science Education)

3. 貢献型モデルの手法を実施

4. 市民科学のデータの精度の向上

市民ができるパックテストの精度の改善

セル

10月25日のいたち川の調査の様子

02

46

810

1214

セル有り セル無し

セルの有無による精度の検証

COD 平均 標準偏差

セル有り 3.98 3.60セル無し 7.69 3.86

COD

COD

Page 5: 市民科学とは: 市民が科学的なプロジェクトに関わること · 4.市民科学の成果を共有するための方策や多様名セ クターの連携 新たな市民科学のアプローチの導入

硝酸態窒素

02

46

810

12

セル無しセル有り

硝酸

態窒

硝酸態窒素 平均 標準偏差

セル有り 4.60 4.62セル無し 4.21 3.67

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

セル有り セル無し

アン

モニ

ア態

窒素

アンモニア態窒素

平均 標準偏差

セル有り 0.43 0.13セル無し 0.41 0.43

アンモニア態窒素

3.9

13

19.7

29.2

50

22.5

17.5

20.3

25.7

29.8

26.8

24.2

37.9

41.3

32

26.8

18.3

32.3

39.8

24.7

21.6

14.3

4.3

20.4

1

0.7

0.9

0

0.6

0.7

0% 20% 40% 60% 80% 100%

20 29歳

30 39歳

40 49歳

50 59歳

60歳以上

全体

知っている(具体的な

河川や湖の名などまで

知っている)

ある程度知っている

(河川や湖などである

ことは知っている)

あまり知らない(漠然と

しか知らない)

知らない

その他・無回答

国土交通行政インターネットモニター・2009年

設問:あなたが使った水は、下水道や浄化槽を通じて、どこに排水しているかご存知ですか?

46%のみが行き先を知っていた46%のみが行き先を知っていた

4%のみが行き先を知っていた4%のみが行き先を知っていた

50%が行き先を知っていた50%が行き先を知っていた

6. 下水道の課題解決と市民と下水道界を元気にするプロジェクトの提案

17.5

27.3

42.9

50.6

70.1

41.5

41.7

39.7

33.5

30.4

20.7

33.6

25.2

19

16.6

10.1

6.7

15.6

14.6

13.7

6.3

7.7

1.2

8.6

1

0.3

0.6

1.2

1.2

0.8

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

20 29歳

30 39歳

40 49歳

50 59歳

60歳以上

全体

知っている(具体的

な河川や湖の名など

まで知っている)

ある程度知っている

(河川や湖などであ

ることは知っている)

あまり知らない(漠然

としか知らない)

知らない

その他・無回答

国土交通行政インターネットモニター・2009年

設問:あなたの使っている水道の水の水源は何かご存知ですか。

駅からマンホール(http://ekikaramanhole.whitebeach.org/)

渋谷道玄坂のマンホール

6. 下水道の課題解決と市民と下水道界を元気にするプロジェクトの提案

Page 6: 市民科学とは: 市民が科学的なプロジェクトに関わること · 4.市民科学の成果を共有するための方策や多様名セ クターの連携 新たな市民科学のアプローチの導入

高松市サンポート周辺におけるQRコード付きデザインマンホール

デザイン製作:,高松工芸高等学校デザイン科 学生

JR高松駅やことでん高松築港駅から,シンボルタワーや桟橋乗り場に向かう歩道上本市が管理しているマンホール8か所存在する。

皆で下を向いて歩きましょう!