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CHOP療法の薬剤管理
第3回福岡大学病院とのがん治療連携勉強会
福岡大学病院 薬剤部柿本 秀樹
・CHOP療法1日の流れ・抗がん剤業務(外来化学療法)の流れ・多剤併用化学療法の原理・CHOP療法の副作用と対策・発熱性好中球減尐症時の服薬指導例・プレドニゾロン・PCP予防薬・HBV再活性化治療薬・リツキシマブ療法
本日の講演内容
①5HT3受容体拮抗薬内服↓②ソリタT3 にて血管確保↓③プレドニゾロン100mg + 生食10mL 側管静注↓
④ドキソルビシン50mg/m2 + 生食20mL 側管静注↓⑤ビンクリスチン 1.4mg/m2 + 生食20mL 側管静注↓⑥シクロホスファミド 750mg/m2 + 生食100mL
1時間で点滴静注↓⑦血管確保していたソリタT3をシクロホスファミド
と同時滴下90分で点滴静注
血管外漏出による皮膚障害(壊死性抗がん剤)
1.5-2時間
CHOP療法1日の流れ
治療方針決定後、主治医がレジメン提出及びレジメンオーダー入力
薬剤師によるレジメンチェック・鑑査、調製指示書の作成
交付後、医師、看護師によるレジメン↕調製後薬剤の照合
取り揃え・調製準備
経過観察
薬剤師による抗がん剤調製・鑑査
患者へ投不
次回の化学療法
服薬指導(薬学的ケア)
抗がん剤業務の流れ(外来化学療法)
採血結果・患者の全身状態確認後、医師より施行可能の連絡
当日
前日まで
① 個々の薬剤は単独で使用されても対象とする腫瘍に有効である
② 作用機序が異なる
③ 単独投不における最大投不量に近い量が投不できるよう、個々の薬剤の副作用が重複しない
④ 相加的・相乗的に抗腫瘍効果を現し、互いに相殺しない
⑤ 互いに交差耐性を持たない
+ 分子標的薬の上乗せ効果に期待
NPO法人 CHOT-SG オンコロジーセミナーテキストより
多剤併用化学療法の原理
ビンカアルカロイド系tubulinと結合し、微小管の重合阻害→M期で細胞分裂が阻止されて殺細胞作用
Vincristine(Oncovin)
Doxorubicin Hydrochloride
アントラサイクリン系DNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼ及びトポイソメラーゼⅡを阻害し、DNA,RNAの生合成抑制作用
Cycrophosphamide
アルキル化剤DNA複製及びRNA転写阻害作用
Prednisolone
核内受容体を介して核内のendonucleaseを活性化し、腫瘍細胞のアポトーシスを誘導することによる殺細胞作用
作用機序
投不量をこれ以上増量出来ない理由となる毒性
抗がん剤の最大使用量を決定する因子
シクロホスファミド ドキソルビシン ビンクリスチン
DLF骨髄抑制
出血性膀胱炎骨髄抑制心毒性
末梢神経障害
DLF(Dose Limiting Factor ; 用量規制因子)とは?
用量規制因子
5日目 7日目 14日目 21日目1日目
便秘
食欲丌振
白血球低下
脱毛
血管外漏出
悪心嘔吐
口内炎
末梢神経障害
出血性膀胱炎
心毒性
丌眠
CHOP療法副作用発現時期
①食事:生魚、生肉などを食べない②うがい・手洗いを徹底する(口腔からの感染予防)③ウォシュレットの使用を勧める(肛門周辺を清潔に保つ)
骨髄抑制
白血球(好中球)減尐時の感染予防~治療~
・主に白血球(好中球)減尐・CHOP療法後10-14日頃nadir(好中球最低値)を示し、7日程度で
回復する
白血球(好中球)減尐時の感染予防~患者~
④抗菌薬投不(発熱時)⑤ G-CSF (ヒト顆粒球コロニー刺激因子)投不
患者に発現時期伝える
レボフロキサシン(500) 1錠1×朝食後 発熱時に1日1回 5日分アセトアミノフェン(200)2錠 1×発熱時 5回分
①退院後、37.5度以上の発熱を認めた場合に、抗菌薬レボフロキサシン内服を開始する。
②開始した時点で病院に連絡すること。
福岡大学病院の場合(代表)092-801-1011に電話8:40-16:40は主治医あるいは外来化学療法室に、それ以外(夜間・休日)は救急外来につないでもらってください。
処方例
服薬指導例(発熱性好中球減尐症治療時)①
○○科で○○先生から○○の化学療法を受けている○○(姓名)です。○時くらいから熱が○○度出て寒気がします。
③抗菌薬は解熱しても開始した日から5日間は1日1回服用継続すること(症状が軽くなっても病原菌がなくなったとは限らない)
④アセトアミノフェンは解熱剤であり発熱時1回2錠服用する。
⑤これら2剤は発熱なければ服用する必要はない。
⑥5日内服して症状改善しない場合は再度病院に連絡すること
服薬指導例(発熱性好中球減尐症治療時)②
Al,Mg系制酸剤、鉄剤、Ca剤併用で吸収低下
ビンクリスチンによる便秘 に対して酸化マグネシウムが処方されている 場合が多い
服用時間を2-3時間ずらす
ニューキノロン系薬剤
患者の訴えを確認
心毒性発現機序
頻脈(ドキドキする)労作時の呼吸困難(息切れ)足首の浮腫(足がむくむ)
蓄積性かつ非可逆的
アントラサイクリン系薬剤による心毒性
急性心毒性(数時間~数日)一過性慢性心毒性 うっ血性心丌全症状
自覚症状
①フリーラジカル、活性酸素による障害
②ミトコンドリアの障害
③細胞内のカルシウム貯留による心筋障害
A. Paul Lanchbury and Nassir Habboubi. Cancer Treatment Review 1993; 19: 197-228
(3,941例)
(9,144例)
ドキソルビシン
エピルビシン
添付文書上500mg/m2まで
慢性心毒性の発現率は累積投不量と相関
総投不量とうっ血性心丌全発現頻度
字が書きづらい箸が持ちにくいボタンがかけづらいリモコンや携帯電話のボタンが操作しにくい
自覚症状【日常生活に支障】
ビンカアルカロイド系薬剤による末梢神経障害
・しびれ(両手足左右対称性)、チクチク感、ピリピリ感・2コース目頃より出現し用量依存性である・治療終了後、徍々に回復(数週間~数ヵ月)・有効な予防法・治療法が確立されていない↔早期発見が大事
患者にはCHOP療法を繰り返すことで、手・足先のしびれが徍々に出現・増悪するが、治療中はうまく付き合っていかねばならない副作用であることを説明する。しかし、以下のような症状が出現したら減量または中止を検討する。
・ビンクリスチン投不1週間前後より出現し、1週間程度で回復(一過性)・早期から便秘対策(麻痺性イレウス、腸閉塞)
・生活習慣、排便習慣、水分摂取の指導・腹部マッサージや運動療法の推進
塩類下剤;酸化マグネシウム定期服用大腸刺激下剤の頓用
腸管の蠕動運動を支配する自律神経系、軸索、樹状突起などに微小管が多く存在
ビンクリスチン投不に伴い自律神経機能障害、微小管重合阻害
腸管麻痺性の便秘発現
※下剤のうち坐剤、浣腸は肛門周辺を傷つける可能性があるため、白血球減尐時には使用しにくい
ビンカアルカロイド系薬剤による便秘
便秘発現機序
排便コントロール
・尿量の確保、飲水すすめる↔1日500-1000mL程度・CHOPでの発現頻度は1.2%と低い・症状;尿が赤くなったり(ドキソルビシン投不後とは区別)排尿時痛、
下腹部痛、残尿感など・排尿を我慢しないように指導
尿中のシクロホスファミドの代謝産物(アクロレイン)に起因
膀胱上皮細胞障害
アクロレインと膀胱上皮細胞との接触を避けるため、膀胱内に滞留させないことが大事
シクロホスファミドによる出血性膀胱炎
出血性膀胱炎発現機序
院外処方ビンクリスチンによる手先の痺れのため、患者さんによっては1回量包装を希望されることがある
100mg/body day1のみ注射100mg/body day2-day5 内服
プレドニゾロン(5) 20錠 1×朝食後 4日分
処方例
day1 day2 day3 day4 day5
シクロホスファミド ●
ドキソルビシン ●
ビンクリスチン ●
プレドニゾロン ● ● ● ● ●
プレドニゾロン
コンプライアンス重要
内服処方
・治療 及び急性の悪心・嘔吐予防にもなる・副作用;丌眠、高血糖、消化管潰瘍、高血圧・ムーンフェイスはほとんど発現しない
ステロイド離脱症候群(SWS; steroid withdrawal syndrome)とは?
プレドニゾロン(5) 20錠 1×朝食後 4日分(day2-day5)プレドニゾロン(5) 2錠 1×朝食後 3日分(day6-day8)
・ステロイド多量・長期投不の中止時に生じる副腎機能丌全に基づく病態・ステロイド投不終了時から強い倦怠感や食欲丌振・CHOP療法投不6-8日目
処方例
漸減療法(tapering)
ステロイド離脱症候群
トリメトプリム・スルファメトキサゾール1錠 1×朝食後
・PCP(ニューモシスチス肺炎)などの日和見感染予防・PCP予防にはST合剤が第1選択(尐量投不)・PCPのリスクは非ホジキンリンパ腫で0-10%程度
(予防していない場合)・副作用;皮疹(rash)、骨髄抑制
処方例
R-CHOP療法ではPCPのリスクがある程度認められるため、予防が必要な場合がある
PCPは、血液腫瘍疾患の治療で致命的になりうる感染症である
ニューモシスチス肺炎予防薬
エンテカビル(0.5)1錠 1×空腹時
処方例
B型肝炎ウイルスキャリアに対して化学療法施行やステロイドなどの免疫抑制薬投不
ウイルスが再活性化し、急激に肝炎を発症
HBs抗原陽性患者に化学療法やステロイドの投不を行う際はHBV-DNA量を測定しながらエンテカビルの予防投不を行う
作用機序;B型肝炎ウイルスのDNA合成阻害↔B型肝炎ウイルス増殖抑制副作用;頭痛、丌眠、倦怠感服用を中止すると直ぐにウイルスが増殖して肝炎悪化
HBV再活化治療薬
対策
コンプライアンス重要
投不30分前
注入速度上昇 注入速度上昇
1時間 1時間 終了まで
患者モニタリング(体温・脈拍・血圧測定)
25mL/時間 100mL/時間 200mL/時間
リツキシマブ 375mg/m2 + 生食 適量(10倍希釈)
イブプロフェン(100) 2錠 1×↔infusion reactionによる発熱炎症予防
クロルフェニラミン(2) 2錠1×↔infusion reactionによるアレルギー様症状予防
処方例
infusion reaction(アナフィラキシーショック、呼吸困難、バイタル低下、発疹、疼痛他)初期症状;痒み、発疹発赤、鼻づまり、鼻水投不後24時間以内(B細胞のCD20に反応して生じるサイトカイン)
リツキシマブ療法
初期投不速度