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三菱重工技報 Vol.46 No.1 (2009) 新製品・新技術特集/サービス特集
特 集 論 文 24
米国・マイアミ国際空港向け APM システム
“クリスタルムーバー” Automated People Mover “Crystal Mover” for Miami International Airport
平 澤 俊 雄 加 守 田 昌 史 Toshio Hirasawa Masafumi Kamoda
清 水 一 隆 光 井 滋 教 Kazutaka Shimizu Yoshinori Mitsui
山 本 新 城 山 美 帆 子 Arata Yamamoto Mihoko Shiroyama
|1. はじめに
当社は,マイアミデイド郡航空局よりマイアミ国際空港北ターミナルのターミナル間を結ぶ旅客
輸送システムとして APM(Automated People Mover)システムを受注した.受注に当たっては,香
港,シンガポールでの当社 APM システムの実績が高く評価された.この新しく導入される APM シ
ステム“クリスタルムーバー”は,従来にない斬新なデザインの車両で安全かつ快適な乗り心地を
提供するものである.本報では,システムの概要と導入された APM 車両について紹介する.
|2. APM システムの概要
APM システムは,ゴムタイヤ式車両・信号設備・電力設備・通信設備・駅/ホームドア・専用軌
道・メンテナンス設備のサブシステムから構成される全自動無人運転の中量旅客輸送システムで
ある.一般にバスと鉄道の中間に位置付けられており,輸送量として 1000~15000pphpd
(passenger per hour per direction) の範囲に適している.鉄道車両とは異なり,ゴムタイヤ方式で
あることから,静粛性や乗り心地,登坂能力に優れるシステムである.
|3. マイアミ空港のシステム
本システムは,北ターミナルのターミナル A~D を結ぶ複線 1.12km であり,4駅が設けられてい
る.輸送能力は,9000pphpd となっている.システムは搭乗検査後/入国審査前の搭乗者が入る
ことのできるエリア内(Air Side)にあり,4両/編成×4編成(+予備1編成)計 20 両の車両がターミ
ナル間の旅客輸送に供されている.駅には,プラットホームドアを設置し乗客の安全を確保してい
る.運行は全自動無人運転で,1日 19 時間連続で運行する(図1,表1).
表1 車両の主要諸元
図1 マイアミ空港北ターミナル
項 目 諸 元 編 成 2両固定編成
定 員 (人) 93(内座席 8)/両×2両
自 重 (t) 16.8/両 車両寸法 (mm) 長さ 11 750×幅 2 690×高さ 3 725 案内方式 側方案内2軸4輪ステアリング方式
電気方式 直流 750 V
軌 間 (mm) 1 850
車両性能
最高速度 80 km/h
加 速 度 0.97 m/s2
減 速 度 常用最大 0.97 m/s2
非常 1.33 m/s2
制御方式 VVVF インバータベクトル制御
(応荷重制御、回生ブレーキ付)
ブレーキ方式 回生ブレーキ併用電気指令式空気ブレ
ーキ (保安ブレーキ、駐車ブレーキ付)
三菱重工技報 Vol.46 No.1 (2009)
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|4. マイアミ空港向けクリスタルムーバー車両
クリスタルムーバー車両は,海外市場向けに開発された APM 車両である.基本仕様及び性能
について標準化・共通化した上で,外部のカラースキームやインテリアデザインなどについては
個々のお客さまの要求仕様に対応するようにしている.
APM 車両の基本モデルは単車(1両で運転可能)であるが,マイアミ空港向けでは輸送量を増
加させるために2両固定編成を採用し,さらに2両同士を連結させることにより1編成4両で運行す
る.この1編成のうち,2両を出発(国内線・国際線)用,2両を到着(国際線)用として運用することで
セキュリティを確保したまま輸送できるようにした.
表1に車両の主要諸元,図2に形式図,図3に車両の外観を示す.
図2 車両形式図
図3 車両の外観
空港内の輸送システムであるため,駅間距離が短く乗車時間も1分以下であり,かつ大型航空
機の到着時には一時的に輸送需要が高くなることもあることから,座席は8席のみとし大部分を立
席スペースとする室内レイアウトとしている.また,ADA(American with Disabilities Act)に適合す
るように,車椅子スペースを2箇所設け,車椅子を利用する人が車内を行き来するためのルートを
考慮した手摺の配置としている.室内レイアウトを図4に示す.
図4 車内レイアウト
今回は,初めての米国向け車両であり,前述の ADA ほか米国規格・基準への適合を行った.
車両の基本構造及び性能については ASCE21-98 (American Society of Civil Engineers) の規
定,耐火性能及び電気火災予防についてはそれぞれ NFPA130 (National Fire Protection
Association, Inc.),NFPA70 の規定に適合している.
三菱重工技報 Vol.46 No.1 (2009)
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さらに,車両衝突安全についても要求され,連結器のショックアブソーバーとバンパーの2段階
で衝突エネルギーを吸収し,衝突時においても車体本体への損傷を防止するメカニズムとしてい
る.バンパーは,自動車技術を応用しアルミニウム製のものを独自に開発した.
このように,マイアミ空港向け車両は,クリスタルムーバーの基本仕様をベースとした上で,お客
様固有の要求仕様に対応するとともに米国の規格・基準への適合を行った新シリーズである.
|5. まとめ
本システムの受注を契機に,米国内において,ワシントン・ダレス空港,アトランタ空港の APM
システムを受注し.さらに,マイアミにて2番目の APM システムを受注できたことは,当社の APM
システムが米国において評価されつつあるものといえる.今後,米国のみならず世界各地へ当社
APM システムが導入され,お客さまに安全で快適な輸送を提供していく.
最後に本 APM システムの完成にあたり,ご指導ご協力いただいた関係各位に感謝します.
執筆者紹介
平澤 俊雄
米国三菱重工業(株)
交通システム事業部
マイアミ APM プロジェクト
プロジェクトマネージャー
加守田 昌史
米国三菱重工業(株)
交通システム事業部
マイアミ APM プロジェクト
フィールドプロジェクトマネー
ジャー
清水 一隆
米国三菱重工業(株)
交通システム事業部
アトランタ CONRAC
APM プロジェクト
プロジェクトマネージャー
光井 滋教
プラント・交通シス
テム事業センター
交通システム・
機械技術部
車両・機械設計課
山本 新
プラント・交通シス
テム事業センター
交通システム・
機械技術部
信号設計課
城山 美帆子
プラント・交通シス
テム事業センター
交通システム・
機械技術部
車両・機械設計課