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水平的ライン拡張における ブランドネームの構造と既存ブランドへの影響 双子ブランドネームと兄弟ブランドネーム―――はじめに ―――既存研究レビュー 1. ライン拡張 2. ブランドネーム 3. 既存研究の知見 4. 既存研究の問題点 ―――仮説の提唱 1. 拡張ブランドの失敗の影響 2. 対立プロモーションの既存ブランドへの 影響 ―――Study1 1. プレテスト 2. 実験概要 3. 実験尺度、および分析手法の検討 4. マニピュレーション・チェック 5. 分析結果 6. Study1 の考察 ―――Study2 1. 実験概要 2. 実験尺度、および分析手法の検討 3. マニピュレーション・チェック 4. 分析結果 5. Study2 の考察 ―――知見 1. Study1 の知見 2. Study2 の知見 ―――インプリケーション 1. ターゲットに応じたブランドネームの使 い分け 2. シェルフスペースの確保 3. 先制のカニバリゼーション 4. プロモーションへの応用 5. 新ブランド立ち上げ時の留意点 ―――おわりに 1. 学術的意義 2. 実務的意義 3. 本研究の課題 ―――謝辞 参考文献 付録―――アンケート調査票 江藤かな 川村匡史 崔ヒョンジョン 坂田拓朗 中央大学久保知一研究室坂田班

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水平的ライン拡張における

ブランドネームの構造と既存ブランドへの影響

―双子ブランドネームと兄弟ブランドネーム―

Ⅰ―――はじめに

Ⅱ―――既存研究レビュー

1. ライン拡張

2. ブランドネーム

3. 既存研究の知見

4. 既存研究の問題点

Ⅲ―――仮説の提唱

1. 拡張ブランドの失敗の影響

2. 対立プロモーションの既存ブランドへの

影響

Ⅳ―――Study1

1. プレテスト

2. 実験概要

3. 実験尺度、および分析手法の検討

4. マニピュレーション・チェック

5. 分析結果

6. Study1 の考察

Ⅴ―――Study2

1. 実験概要

2. 実験尺度、および分析手法の検討

3. マニピュレーション・チェック

4. 分析結果

5. Study2 の考察

Ⅵ―――知見

1. Study1 の知見

2. Study2 の知見

Ⅶ―――インプリケーション

1. ターゲットに応じたブランドネームの使

い分け

2. シェルフスペースの確保

3. 先制のカニバリゼーション

4. プロモーションへの応用

5. 新ブランド立ち上げ時の留意点

Ⅷ―――おわりに

1. 学術的意義

2. 実務的意義

3. 本研究の課題

Ⅸ―――謝辞

参考文献

付録―――アンケート調査票

江藤かな 川村匡史

崔ヒョンジョン 坂田拓朗

中央大学久保知一研究室坂田班

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2

Ⅰ―はじめに

企業が製品に効果的なブランドネームを設定す

ることはブランド戦略の重要な課題である。しか

し、日本では新規商標登録件数が毎年 15 万件も

のペースで増えており(特許庁 [2016])、消費者

の記憶に残るブランドネームを作ることは非常に

難しく、コスト上の負担も大きいのが現状であ

る。

しかし、企業はブランド拡張を行うことで、新

しいブランドネームを考案する苦労や費用を回避

することもできる(Kotler and Keller [2008])。ブ

ランド拡張とは、企業が確立されたブランドを利

用して新製品を市場に導入することであり、(1)

既存ブランドの製品カテゴリーの中で新しい市場

セグメントを狙うライン拡張と、(2)既存ブラン

ドとは異なる製品カテゴリーに参入するカテゴリ

ー拡張に大別される(Kotler and Keller [2008])。1

Kotler and Keller [2008] によると、1 年間に

市場に投入された新製品のほとんどは、カテゴリ

ー拡張や新ブランドの立ち上げではなくライン拡

張である。数値で表すと、新製品の 18%が新ブ

ランドの立ち上げ、17%がカテゴリー拡張であ

る。一方、ライン拡張によるものは新製品のうち

65%にも上る(Kotler and Keller [2008]; Riley, Pina

and Bravo [2013])。しかし、先行研究ではカテゴ

リー拡張に重点が置かれ、ライン拡張に関する研

究はこれまであまり行われてこなかった。

ブランド拡張の正の効果として、消費者に新製

品の受け入れを容易にすることと、既存ブランド

と企業に肯定的なフィードバックをもたらすこと

が挙げられる(Kotler and Keller [2008])。ブラン

ド拡張において、消費者は既存ブランドについて

の知識と新製品との関連性をもとに、新製品の構

1 「既存ブランド」のことを「親ブランド」と表記す

る場合もあるが、本研究では混乱を避けるために「既 存ブランド」で統一する。

成や性能を推測し予期する。

一方で、ブランド拡張による負の効果も存在す

る。Kotler and Keller [2008] によると、ブラン

ド拡張を行うことで消費者がブランドの統一性に

疑問を抱く「ブランドの希薄化」を引き起こす可

能性がある。拡張品が既存ブランドと非常に似て

いると消費者に見なされた場合、既存ブランドを

傷つけることさえある。

では、既存ブランドを傷つけないためには新製

品にどのようなブランドネームをつけるべきであ

ろうか。ブランド拡張の代表的な例として、株式

会社明治が発売している「きのこの山」と「たけ

のこの里」が挙げられる。前者は 1975 年に発売

され、後者は 1979 年に「きのこの山」のライン

拡張として発売された。また、東洋水産株式会社

が 1980 年に発売した「緑のたぬき」も、1978

年に発売された「赤いきつね」のライン拡張とし

て発売された製品である。

これらの製品はブランド拡張であるにもかかわ

らず、既存のブランドネームを使用していない。

厳密にいえば、既存ブランドと同カテゴリーに拡

張するライン拡張であるが、価格や品質に優劣は

なく、既存ブランドネームを間接的に借りる形で

新たなブランドネームがつけられている。本研究

はこのようなブランドネームを「双子ブランドネ

ーム」と命名した。「双子ブランドネーム」の定

義は以下の通りである。

1. 既存ブランドネームを含まず、同価格帯

のライン拡張につけられるブランドネー

ムである。

2. 新製品のブランドネームに既存ブランド

ネームと同一ではないが、類似もしくは

対照となる言葉が入っている。

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3

また、我々は「双子ブランドネーム」と対にな

る概念として「兄弟ブランドネーム」を定義し

た。兄弟ブランドネームは双子ブランドネームと

同様に、既存ブランドと拡張ブランドの間に価格

や品質の優劣がないライン拡張で使用されるネー

ミングである。しかし、双子ブランドネームとは

異なり、既存ブランドネームを継承しつつ新たな

言葉を追加したネーミングである。代表的な例と

して、株式会社伊藤園が発売した「お~いお茶」

と「お~いお茶 濃い茶」が挙げられる。前者は

1989 年に発売され、後者は 2014 年に発売され

たライン拡張による製品である。「兄弟ブランド

ネーム」の定義は以下の通りである。

1. 既存ブランドネームを含みつつ、それに

何らかの言葉を追加した上で、同価格帯

のライン拡張につけられるブランドネー

ムである。

定義をまとめると図表 1 のようになる。

■図表−−−1

ブランドネーム(BN)の分類図

既存 BN を

含む

既存 BN を含

まない

対照的な言葉

がある

双子ブランド

ネーム

対照的な言葉

がない

兄弟ブランド

ネーム

個別ブランド

ネーム

「双子ブランドネーム」は、「兄弟ブランドネ

ーム」と比べて、既存ブランドの知識や関連性か

2 本研究では、既存ブランドの失敗をネガティブなク

チコミが多く寄せられた場合とする。

ら拡張ブランドの性能を類推することが困難であ

ると考えられる。しかし、拡張ブランドが失敗し

た場合、「双子ブランドネーム」は既存ブランド

との関連性が低いため、拡張ブランドへのネガテ

ィブな評価から既存ブランドを切り離し、既存ブ

ランドの評価を傷つけない効果があるものと考え

られる。2 その他にも「双子ブランドネーム」

には、既存ブランドに何らかの影響を及ぼすこと

があるのではないか。本研究は「双子ブランドネ

ーム」と「兄弟ブランドネーム」というネーミン

グの違いが既存ブランドに対して及ぼす影響につ

いて吟味する。

以上を踏まえ、本研究が取り組むリサーチ・ク

エスチョンは以下の通りである。

1. ライン拡張に際し、拡張ブランドが失敗

した場合、既存ブランドを傷つけないた

めには双子ブランドネームと兄弟ブラン

ドネームのどちらをつけるべきか。

2. ライン拡張に際し、既存ブランドと拡張

ブランドを対立させたプロモーションや

広告を行う場合、既存ブランドへの態度

を向上させるためには、双子ブランドネ

ームと兄弟ブランドネームのどちらのブ

ランドネームをつけるべきか。

Ⅱ―既存研究レビュー

前章で述べたリサーチ・クエスチョンをライン

拡張とブランドネームの 2 つの側面から検討する。

1.ライン拡張

ライン拡張は、既存ブランドの味や形、色、材

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料、包装サイズなどを新しくすることにより、新

しい市場セグメントを標的とする拡張ブランドを

作ることができる。Keller [1998] によると、ライ

ン拡張の利点は、新製品の受容を容易にすること

と、既存ブランドへベネフィットをもたらすこと

であると述べている。1つ目の新製品の受容を容

易にするということは、ライン拡張をすることに

より、新製品を販売するよりも消費者の知覚リス

クの低減やバラエティ・シーキング機会の提供を

行うことが可能となるということである。3 2 つ

目の既存ブランドへベネフィットをもたらすとい

うことは、消費者に対してブランドの意味を明確

にし、既存ブランドのイメージを強化することが

できるということである。その他にも、Kotler and

Armstrong [1997] はライン拡張の利点として消

費者ニーズの多様性への要求に応えたり、余剰生

産能力を活用したり、小売業者に多くのシェルフ

スペースを確保することができることを挙げてい

る。

ライン拡張の負の効果はブランドネームと製品

との結びつきを弱める原因になることである

(Quelch and Kenny [1994])。ライン拡張によって

多くの製品を販売することで、消費者はどの製品

が自分にとって好ましい製品であるかを判断する

ことが困難となり、馴染みのある製品や万能な製

品を選び、新しい拡張品を拒む可能性が高くなる。

これを「ブランドの希薄化」という(Loken and John

[1993])。

また、ライン拡張をすることにより自社の別製

品が犠牲になる可能性がある。ライン拡張が成功

したといえるのは、それが競合他社のブランドの

売上を奪ってこそであって、自社の製品を「共食

い(カニバリゼーション)」してしまう可能性が存在

3 バラエティ・シーキングとは、消費者が製品への不

満ではなく、多様性を求める気持ちからブランド・ス

イッチを行うことである(Kotler and Keller [2006])。 4 ブランド・エクイティとは、ブランド、その名前や

する(Keller and Aaker[1992])。

ライン拡張で考えられる も悪い結果は、拡張

ブランドが失敗するだけでなく、その過程で既存

ブランドのイメージを傷つけてしまうことである。

したがって、いかに既存ブランドのブランド・エ

クイティを新製品に効果的に活用するかが問題と

なる(Loken and John [1993])。4

次に、ライン拡張の具体的な内容について触れ

る。ライン拡張と呼ばれる、同一カテゴリー内へ

のブランド拡張は水平にも垂直にも拡張すること

ができる(Allman [2013])。水平拡張は単純に新し

い機能を提供することを指す一方、垂直拡張は価

格やポジションを変えることによって上方または

下方への新しい市場セグメントに参入することを

指す(Riley, Pina, and Bravo[2013])。

垂直拡張は水平拡張とは異なり、既存ブランド

と同カテゴリーの中で、価格や垂直的属性である

品質に差をつけて拡張する。よって、カニバリゼ

ーションが起こりにくい反面、拡張によって既存

ブランドのイメージや価値を変えてしまう可能性

もある。また、価格との関係について、高価格帯

への拡張は価格プレミアムへの影響力をもつ一方、

下方への垂直拡張では消費者が抱くブランドイメ

ージが希薄化されることで、低品質と低価格を関

連付けてしまうという効果がある(Riley, Pina and

Bravo [2013])。垂直拡張の例としては、カルピス株

式会社の「カルピスウォーター」を既存ブランド

とする拡張ブランド「ザ・プレミアム カルピス」

が挙げられる。

一方、水平拡張は同カテゴリー内で拡張を行う

が、価格や品質に優劣はなく、味やサイズ、香り、

色などの価格や品質以外の水平的属性において既

シンボルと結びついたブランドの資産と負債の集合で

ある(Aaker [1994])。

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5

存ブランドと拡張ブランドの差をつける。水平拡

張の例としては、「きのこの山」を既存ブランドと

する拡張ブランド「たけのこの里」や日本コカ・

コーラ株式会社の「コカ・コーラ」を既存ブラン

ドとする拡張ブランド「コカ・コーラ ゼロ」が挙

げられる。これらの拡張をまとめると図表 2 のよ

うになる。

しかし、拡張ブランドと既存ブランドが強い代

替関係にある場合、拡張ブランドの売上を追及す

ればするほど、既存ブランドが大きなダメージを

うけることがある(Kapferer [2000])。したがって、

企業は積極的に水平拡張を行おうとしない。この

ことが、水平方向のライン拡張に関する先行研究

が少ない理由であると考えられる。

■図表−−−2

垂直拡張・水平拡張の例

2.ブランドネーム

ブランド構築の重要性の高まりに伴い、ブラン

ド拡張における拡張ブランドのネーム構造は、重

要な研究テーマになっている(Sood and Keller

[2012])。「ブランドネームは、製品の中心的なテー

マや鍵となる連想をきわめて簡潔かつ経済的に表

現するので、非常に重要な選択肢である」(Keller

[2000])とあるように、ブランドネームは消費者と

製品を結びつける重要な役割を担う。5 そのため

5 Keller [2000], p.178 を参考のこと。

ブランド・エクイティ構築や、その戦略と密接に

結びついている。ブランドネームとそれが表わし

ているブランド・アイデンティティはブランド戦

略上、非常に重要である。しかし、様々な製品に

同じブランドネームを使用することや市場の拡大

によって、意図しない販売チャネルに顧客が流入

すると、ブランド・エクイティは破壊される(Aaker

[1994])。

Kotler and Keller [2008]によると、企業がブラ

ンドネームを決定する際の一般的戦略には、(1)

個別の名称をつける、(2)1 つのファミリー・ネー

ムをつける、(3)いくつかの異なるファミリー・ネ

ームを使う、(4)個別の製品名と社名を組み合わ

せる、の 4 つがある。

ブランド拡張において、新しいブランドを既存

のブランドと組み合わせる場合、そのブランド拡

張はサブブランドとも呼ばれ、ハーシーのキスチ

ョコ、アメリカン・エキスプレスのブルーカード

などがその例である。また、既存ブランドがブラ

ンド拡張によって複数の製品と結びついている場

合をファミリーブランドと呼ぶ(Kotler and Keller

[2008])。既存研究と本研究の違いは、既存研究は

カテゴリー拡張にも用いられるが、本研究はライ

ン拡張のみに用いられるという点である。

Sood and Keller [2012]は、ブランド拡張の際、

ブランドネームが既存ブランドへ影響を及ぼすと

述べている。サブブランドネームとは、既存ブラ

ンドを「Tropicana」としたとき、その拡張ブラン

ドネームを「Quencher by Tropicana」のように、

独立したブランドネームに既存ブランドを結合さ

せたようなブランドネームを指す。一方、ファミ

リーブランドネームとは、「Tropicana Cola」のよ

うに、既存ブランドネームにカテゴリー名だけを

付け加えたり、入れ替えたりすることで生成され

たブランドネームを指す。

水平拡張

高価ブランド

既存ブランド

廉価ブランド

新フレーバー 新サイズ

垂直拡張

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6

ブランド拡張時にサブブランドネームを採用し

た場合、消費者が既存ブランドと拡張ブランドの

関連性を認知する際に時間がかかり、既存ブラン

ドの希薄化が起こる。その一方で、ファミリーブ

ランドネームを採用した場合、消費者は既存ブラ

ンドとの関連性を認知する際に時間がかからず、

希薄化も起こりにくい。また、Sood and Keller

[2012]によると、消費者が拡張したブランドでネ

ガティブな経験をした際、ブランドネーム構造の

違いと製品類似度(Product Similarity)によって、

既存ブランドへの評価は大きく異なるという。製

品類似度とは、消費者から見たときの既存ブラン

ドと拡張ブランドの製品の似通った程度のことで

ある。例えばミックスジュースの「Tropicana」 を

既存ブランドとし、拡張ブランドとして

「 Tropicana cola 」( フ レ ー バ ー コ ー ラ ) と

「Tropicana orange」(オレンジジュース)が存在す

るとすれば、ジュースである「Tropicana orange」

は、炭酸飲料である「Tropicana cola」より、ジュ

ースである「Tropicana」との製品類似度が比較的

高い。6 既存ブランドと拡張ブランドの製品類似

度が高いと、拡張ブランドのネガティブな購買経

験は、ファミリーブランドネームである場合より

もサブブランドネームである場合に、既存ブラン

ドへの評価に強い負の影響をもつ。しかし、既存

ブランドと拡張ブランドの製品類似度が低いと、

拡張ブランドにおけるネガティブな購買経験はサ

ブブランドネームである場合よりも、ファミリー

ブランドネームである場合に、既存ブランドへの

評価に強い負の影響をもつ。このことから、Sood

and Keller [2012]は、ブランドネームの構造と製

品類似度のフィットは、既存ブランドへの評価に

影響を及ぼすことを明らかにした。

また、ブランドネームがブランドへの評価に影

6 「Tropicana cola」(フレーバーコーラ)と「Tropicana orange」(オレンジジュース)は、どちらもファミリーブ

ランドネームである。

響を及ぼす要素の一つに「発音」があり、ブラン

ドネームにどのような母音や子音が含まれるかに

よって、ブランドネームから連想される製品属性

が異なってくることや、ブランドネームの発音は、

消費者のブランド評価に影響をおよぼすことが確

認されている(朴 [2009])。また、越川 [2009] は、

既存研究をもとに 50音における音象徴をまとめ、

ロングセラー商品を用いて検証した。その結果、

語頭に「カ行」もしくは「マ行」および特殊拍で

ある擾音・促音・長音のいずれかを用いることが

効果的であることが明らかになった。7

3.既存研究の知見

本研究のリサーチ・クエスチョンに関連する既

存研究からの知見は以下の通りである。

ライン拡張は水平にも垂直にも展開することが

できる(Allman [2013])。垂直拡張はカニバリゼー

ションを起こしにくいが、既存ブランドのイメー

ジを変質させる可能性がある。一方、水平拡張は

価格や品質が同程度のポジションに拡張するため、

既存ブランドのイメージを維持・強化することが

できるものの、カニバリゼーションを起こす可能

性が高い。

拡張ブランドが既存ブランドネームを含む場合、

サブブランドネームとファミリーブランドネーム

に分類することができる。サブブランドネームは

既存ブランドの希薄化を招く一方、ファミリーブ

ランドネームは既存ブランドの希薄化が起こりに

くい(Sood and Keller [2012])。さらに、ブランドネ

ームの構造と製品類似度の違いによって既存ブラ

ンドの評価は変化する(Sood and Keller [2012])。

4.既存研究の問題点

7 音象徴とは、母音・子音毎のイメージがブランドネ

ームに及ぼす印象・効果を指す(越川[2009])。

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7

レビューされた既存研究の問題点は、ライン拡

張とブランドネームが同時に研究されていないこ

とである。特に次の 2 点に関して、課題が残って

いる。

第一に、既存研究が提唱するサブブランドネー

ムは、水平方向のライン拡張を考慮していない。

サブブランドネームは、ブランド拡張において既

に確立されたブランドを利用して市場に投入され

た拡張ブランドに付けられるネームであり、既存

ブランドと同カテゴリーか否か、同価格帯か否か

ということに関しては限定していない。一方、本

研究が提唱する兄弟ブランドネームと兄弟ブラン

ドネームは、既存研究のサブブランドネームとフ

ァミリーブランドネームに類似している点はある

が、既存ブランドと同カテゴリー・同価格帯・同

品質の水平方向にライン拡張した場合に付けられ

るネームであることが大きな違いである。

このように、既存研究はブランド拡張には触れ

ているものの、本研究がとりあげるライン拡張、

とりわけ水平方向のライン拡張については論じら

れていない。

第二に、拡張ブランドネームに既存ブランドネ

ームを含まない場合を想定していない。既存研究

では、ブランド拡張によって誕生した製品に対し

て、ファミリーブランドネームやサブブランドネ

ームのように既存ブランドネームをそのまま拡張

ブランドネームに組み込まれるとされている。

しかし、既存ブランドに類似してはいるが、既

存ブランドネームをそのまま含まない個別のブラ

ンドネームをつけることは想定されていない。ま

た、これらはライン拡張によるものではなく、新

しく立ち上げられたブランドとして認識されてき

た。この問題点の例として、サントリーフーズ株

式会社から2012年に発売された「オランジーナ」

と、そのライン拡張として 2015 年に発売された

「レモンジーナ」が挙げられる。拡張ブランドで

ある「レモンジーナ」は既存ブランドの「オラン

ジーナ」というブランドネームをそのまま使用し

ておらず、個別のブランドネームがつけられてい

る。しかし、個別ブランドとしてではなく既存ブ

ランドの「オランジーナ」の拡張ブランドとして

戦略がなされており、店頭では既存ブランドの隣

に陳列され、ホームページでは並べて紹介されて

いる。このように、拡張ブランドに個別ブランド

ネームをつけることは現実で頻繁に観察されるも

のの、既存研究では検討されてこなかったのであ

る。

Ⅲ―仮説の提唱

本章では、水平的ライン拡張に対する消費者の

既存ブランドへの態度がブランドネームによって

異なることを示す仮説を提唱する。

1.拡張ブランドの失敗の影響

本研究の第一のリサーチ・クエスチョンは、ラ

イン拡張によって投入された拡張ブランドが失敗

した場合、既存ブランドを傷つけないのは、双子

ブランドネームと兄弟ブランドネームのどちらで

あるか、という問いであった。本節では、この問

いに答えるべく、以下の仮説を提唱する。

市場に導入した新製品が消費者に受け入れられ

ず、市場から姿を消すことは頻繁に観察される。

拡張ブランドにおいて、このような製品の失敗が

起きた場合、既存ブランドに対して負の影響を及

ぼす可能性がある。例えば、豊かな風味と爽やか

な後味で人気を博していた炭酸飲料が拡張ブラン

ドとして野菜のフレーバーを発売し、その風味や

後味が消費者に受け入れられなかった場合、拡張

ブランドだけでなく既存ブランドにも「味が悪い」

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8

というマイナスイメージがついてしまう、といっ

たことが考えられる。

しかし、その悪影響の程度はブランドネームに

よって異なると考えられる。具体的には、双子ブ

ランドネームは拡張ブランドと既存ブランドの間

で共通したブランドネームをもたないため、影響

の程度は小さいと考えられる。逆に、兄弟ブラン

ドネームは拡張ブランドと既存ブランドで共通の

ブランドネームを有しているため、拡張ブランド

から既存ブランドを連想しやすいと考えられる。

消費者の記憶の中ではブランドに対するイメー

ジやそのブランドのベネフィットが互いにリンク

し、ネットワーク状に蓄積されているとする連想

ネットワーク型記憶モデルに基づくと、次のよう

に考えられる(Aaker [1996])。兄弟ブランドネーム

は既存ブランドと拡張ブランドに共通したブラン

ドネームを有しているため、拡張ブランドが失敗

すると消費者の記憶の中でマイナスイメージと拡

張ブランドがリンクしてしまう。それがやがて、

既存ブランドとマイナスイメージのリンクをもた

らしてしまう。このようにして、拡張ブランドの

失敗の影響が既存ブランドにも及ぶと考えられる。

したがって、以下の仮説を提唱する。

仮説 1:双子ブランドネームは兄弟ブランドネ

ームに比べ、その既存ブランドが拡張

ブランドの失敗から受ける影響が小さ

い。

2.対立プロモーションの既存ブランドへの影響

本研究の第二のリサーチ・クエスチョンは、ラ

イン拡張の際に既存ブランドと拡張ブランドを対

立させたプロモーションや広告を行う場合、既存

ブランドへの態度を上昇させるのは双子ブランド

8八巻 [1994]、p. 272 を参考のこと。

ネームと兄弟ブランドネームのどちらか、という

問いであった。本節ではこの問いに答えるべく仮

説を提唱する。

ある製品をライン拡張した際や、拡張して相当

の期間を経た際、企業は既存ブランドと拡張ブラ

ンドを対比・対立させたプロモーションを行うこ

とがある。例えば、日本コカ・コーラ株式会社は

2010 年に、缶コーヒーのブランドである「エメ

ラルドマウンテン」で「エメマンバトル」キャン

ペーンを行い、株式会社明治は 2015 年にチョコ

レートのブランドである「アーモンドチョコレー

ト」と拡張ブランドである「マカダミアチョコレ

ート」で「アーモンド・マカダミア あなたはど

っち派?国民調査」キャンペーンを行った。これ

らのプロモーションは自社製品間の対立構造を企

業が意図して創出し、消費者の関心をひいたり、

購買意欲を高めたりする。このタイプのプロモー

ションは、自社製品間で対立させている点や、一

方の製品の優位性ではなく双方の優位性を訴求し

ている点で、比較広告とは異なっている。これは

比較広告とは「広告主が企業・製品・サービスな

どの比較対象を明示するか、または明らかにそれ

とわかる手法で明示し、客観的な評価に訴え得る

事実やデータなどに基づいて、自己の優位性また

は特徴を表現する広告という」とあり(八巻

[1994])、双方の優位性を訴求している広告は比

較広告ではないからである。8 本研究では、こ

のようなプロモーションを「対立プロモーショ

ン」と命名し、対立プロモーションとブランドネ

ームの関係について仮説を提唱する。

双子ブランドネームを用いる製品間で対立プロ

モーションを行った場合、同じブランドネームを

含まないため、消費者は異なるブランドが対立し

ていると考えるのではないだろうか。対立プロモ

ーションでは、消費者が複数のブランドを対比さ

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9

せることになるため、製品間の相違を直感的に把

握することができ、どちらか一方に対する態度が

上昇すると考えられる。反対に、兄弟ブランドネ

ームを用いる製品間で対立プロモーションを行っ

た場合、同じブランドネームを含んでいるため消

費者は 2 つの製品を同じブランドと認知すると

考えられる。消費者がブランド間の相違を把握す

ることは難しく、結果としてどちらか一方に対す

る態度が上昇することは起こりにくいであろう。

したがって、以下の仮説を提唱する。

仮説 2:双子ブランドネームのほうが兄弟ブラ

ンドネームよりも、対立プロモーシ

ョンが既存ブランドへの態度を高め

る効果は高い。

以上の 2 つの仮説を簡略化したものが図表 3

である。

■図表―――3

仮説の概念図

Ⅳ―Study1

9 Google Form とは Google が提供している、ウェブ

上で実施することのできる無料アンケートサービスで

ある。簡単にカスタマイズを行うことができ、紙媒体

のアンケートよりも欠損値を少なくすることができ

1.プレテスト

実験に先立ちプレテストを実施した。プレテス

トでは、実験で使用する架空のブランドネームを

選定する作業を行った。架空の「既存ブランドネ

ーム」、「双子ブランドネーム」、「兄弟ブランドネ

ーム」のセットを複数用意して、被験者にブラン

ドネームが本研究の定義に当てはまっているかを

回答してもらった。質問内容は「拡張ブランドネ

ームは既存ブランドネームの名前をそのまま使用

し、さらに言葉を付け足した名前だと思いますか」

と「拡張ブランドネームは既存ブランドネームに

関連する、または対照的な言葉が入っていると思

いますか」の 2 つで、7 点リカート尺度で測定し

た。分析手法には t 検定を用いた。複数の架空の

ブランドのセットについて実験した結果、「天使の

ミルクバー」、「悪魔のチョコバー」、「天使のミル

クバー チョコレート」という架空のブランドのセ

ットが選択された。これらのセットは、1 つ目の

質問が 1%水準で有意であり(双子ブランドネーム:

M=2.20, 兄弟ブランドネーム: M=4.76, t=-3.67, p<

0.01)、2 つ目の質問も 1%水準で有意であった(双

子ブランドネーム: M=6.00, 兄弟ブランドネーム: M=

3.35, t=3.05, p<0.01)。

2.実験概要

前節で提唱した仮説 1 の経験的妥当性を吟味す

るために、Google Form を用いたウェブ実験を実

施した。9

Study1 は、被験者をランダムに、4 つのグルー

プに分けた 2×2 の被験者間計画である。1 つ目の

独立変数はブランドネームであり、それは双子ブ

る。またグループの振り分けや、集計が容易であり、

本実験で採用するに至った。

ブランドネーム

拡張ブランドの

成否

既存ブランドへの

態度

対立プロモーションの

有無

仮説 1

仮説 2

Page 10: 水平的ライン拡張における ブランドネームの構造と既存 ...c-faculty.chuo-u.ac.jp/~tomokazu/6_CEKS_paper.pdfイッチを行うことである(Kotler and Keller

10

ランドネーム/兄弟ブランドネームの 2 つのカテ

ゴリーを含んでいる。2 つ目の独立変数はクチコ

ミの内容であり、ポジティブなクチコミ/ネガテ

ィブなクチコミの 2 つのカテゴリーを含んでいる。

クチコミを拡張ブランドの成功/失敗の代理変

数として採用した理由は、製品の成否は一概に決

定することはできないが、好意的、否定的なクチ

コミのいずれの場合においても消費者の「態度」

に影響があることが明らかになっており(Bone

[1995])、好意的、否定的なクチコミのいずれの場

合でも、実際の売上に影響があることが明らかに

なっているからである(Chevalier and Mayzlin

[2006])。

グループの振り分けには誕生月を使用した。誕

生月は性別や年齢などの影響を受けないため、被

験者のランダム割当に適切な変数であると考えら

れるためである。

本実験の流れは以下の通りである。はじめに既

存ブランドである「天使のミルクバー」を被験者

に提示した後で、双子ブランドネームと兄弟ブラ

ンドネームとして、「悪魔のチョコバー」と「天使

のミルクバー チョコレート」のどちらかをライン

拡張した新製品として提示した。その際、新製品

への評判としてポジティブなクチコミとネガティ

ブなクチコミのどちらかを各グループに見せ、

後に既存ブランドへの「態度」を被験者に回答し

てもらった。ウェブ実験は 2016年 10月 17日に、

10 代から 20 代の都内大学生を対象に実施した。

被験者数は 116 名であるが、一部欠損値のある回

答者がいたため有効回答数は 115 であった。実験

の概要は図表 4 に示される通りである。

■図表―――4

Study1 の実験概要

3.実験尺度、および分析手法の検討

分析に用いられる構成概念に関する質問項目は、

先行研究をもとに設定した。「態度」の質問項目に

は Mitchell and Olson [1981] の測定尺度を用い、

7 点リカート尺度で測定された。質問内容は以下

に示される通りである。

1.「あなたは天使ミルクバーが好きですか」

2.「あなたは天使のミルクバーからポジティブな

印象を受けますか」

3.「あなたは天使のミルクバーが魅力的だと思い

ますか」

本アンケートの内容は付録を参照されたい。統

計技法には二元配置分散分析を採用し、統計ソフ

トとして Stata SE/13.1 を使用した。

4.マニピュレーション・チェック

クチコミのマニピュレーション・チェック ⑤

ネームのマニピュレーション・チェック ⑦

⑥ 既存ブランドへの態度

① アイスクリームに対する関与

② 既存ブランドへの態度

③ 誕生月による振り分け

双子 BN/ポジティブなクチコミ ④-1

④-2 双子 BN/ネガティブなクチコミ

兄弟 BN/ポジティブなクチコミ ④-3

兄弟 BN/ネガティブなクチコミ ④-4

Page 11: 水平的ライン拡張における ブランドネームの構造と既存 ...c-faculty.chuo-u.ac.jp/~tomokazu/6_CEKS_paper.pdfイッチを行うことである(Kotler and Keller

11

本実験を行うにあたり、被験者にマニピュレー

ションが利いているのかを確かめるため、マニピ

ュレーション・チェックを実施した。10 ブラン

ドネームのマニピュレーション・チェックは前述

したプレテストと同内容で、6 点リカート尺度を

用いている。t 検定を実施した結果、「拡張ブラ

ンドネームは天使のミルクバーの名前をそのまま

使用し、さらに言葉を付け足した名前だと思いま

すか」は 1%水準で有意であり(双子ブランドネー

ム: M=4.01, 兄弟ブランドネーム: M=4.90, t=3.21, p

<0.01)、「拡張ブランドネームは既存ブランドネ

ームに関連する、または対照的な言葉が入ってい

ると思いますか」も 1%水準で有意だった(双子

ブランドネーム: M=5.46, 兄弟ブランドネーム: M=

3.48, t=-7.34, p<0.01)。

またクチコミのマニピュレーションは、t 検定

の結果、「新製品は人気が出たと思いますか」が

1%水準で有意(ポジティブなクチコミ: M=4.75, ネ

ガティブなクチコミ: M=2.31, t=-10.49, p<0.01)、

「新製品は人気が出なかったと思いますか」も

1%水準で有意だった(ポジティブなクチコミ: M=

2.56, ネガティブなクチコミ: M=4.64, t=-7.99, p<

0.01)。

これらの結果により、マニピュレーションによ

って平均値に差があることが確認された。したが

って、マニピュレーションは成功した。

5.分析結果

仮説 1 では、ブランドネームとクチコミの交互

効果と、兄弟ブランドネームにおけるクチコミの

単純主効果が有意であること、また、兄弟ブラン

ドネームにおいて、ポジティブなクチコミがネガ

10 マニピュレーションとは被験者に与える心理的操作

のことである。また被験者グループが心理的操作によ

ティブなクチコミよりも既存ブランドへの態度を

高めることが示されれば、仮説が支持されたとみ

なされる。

分析の結果、有意な交互効果と単純主効果が確

認された。「あなたは天使のミルクバーからポジテ

ィブな印象を受けますか」に対するブランドネー

ムとクチコミの交互効果が 5%水準で有意であっ

た(F=6.18, p<0.05)。また兄弟ブランドネームに

おけるクチコミの単純主効果は 1%水準で有意で

あった(ポジティブなクチコミ: M=5.51, ネガティブ

なクチコミ: M=4.40, t=-2.97, p<0.01)。グラフは図

表 5 に示される通りである。

■図表―――5

分析結果 Study1-1 既存ブランドへの態度

また、「あなたは天使のミルクバーが魅力的だと

思いますか」に対するブランドネームとクチコミ

の交互効果が 5%水準で有意(F=4.09, p<0.05)、兄

弟ブランドネームにおけるクチコミの単純主効果

が 5%水準で有意であった(ポジティブなクチコミ、:

M=5.08, ネガティブなクチコミ: M=3.96, t=-2.59, p

<0.05)。グラフは図表 6 に示される通りである。

■図表―――6

り、実験の狙い通りに分かれているのかを確認するこ

とをマニピュレーション・チェックという。

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12

分析結果 Study1-2 既存ブランドへの態度

以上の実験結果から、拡張ブランドがネガティ

ブなクチコミを受けた場合、双子ブランドネーム

は兄弟ブランドネームより、既存ブランドの態度

を下げにくいことがわかった。また拡張ブランド

がポジティブなクチコミを受けた場合、兄弟ブラ

ンドネームは双子ブランドネームより、既存ブラ

ンドの態度を上昇させることがわかった。

6.Study1 の考察

分析結果より、「態度」の従属変数のうち 2 項目

において仮説の通り、有意な交互効果と単純主効

果が確認された。したがって仮説 1 は一部支持さ

れた。すなわち双子ブランドネームは兄弟ブラン

ドネームより、新製品が失敗した際に既存ブラン

ドを傷つけにくいことが明らかとなった。これは

仮説で述べた通り、双子ブランドネームは既存ブ

ランドネームを含まないことから、既存ブランド

ネームを含む兄弟ブランドネームより受ける影響

が小さくなったと考えられる。

また、仮説 1 では、拡張ブランドの失敗による

既存ブランドの影響に着目していた。しかし、分

析結果からわかることは、兄弟ブランドネームは

ポジティブなクチコミとネガティブなクチコミの

両方の影響を強く受けるということである。既存

ブランドネームを含む兄弟ブランドネームは、拡

張ブランドから既存ブランドを連想しやすく、失

敗の影響のみならず成功の影響も強く受けるので

あろう。

Ⅴ―Study2

1.実験概要

Study2 においても、仮説 2 の経験的妥当性を

吟味するために、Google Form を用いたウェブ実

験を実施した。

Study2 は、被験者をランダムに、4 つのグルー

プに分けた 2×2 の被験者間計画である。1 つ目の

独立変数はブランドネームであり、それは双子ブ

ランドネーム/兄弟ブランドネームの 2 つのカテ

ゴリーを含んでいる。2 つ目の独立変数はプロモ

ーションの内容であり、対立プロモーション有/

対立プロモーション無の 2 つのカテゴリーを含ん

でいる。グループの振り分けには Study1 と同様

に誕生月を使用した。

実験の流れは以下の通りである。Study1 と同じ

く、既存ブランドである「天使のミルクバー」を

被験者に提示した後で、双子ブランドネーム、兄

弟ブランドネームとして「悪魔のチョコバー」と

「天使のミルクバー チョコレート」のどちらかを

ライン拡張した新製品として提示した。続けて、

既存ブランドと拡張ブランドを同時に登場させ、

2 つのブランドを対立させたプロモーションを見

せるグループと、拡張ブランドのみを登場させる

プロモーションを見せるグループに分け、それぞ

れのプロモーションを提示した。 後に既存ブラ

ンドへの「態度」を回答してもらった。ウェブ実

験は 2016 年 10 月 23 日に、10 代から 20 代の都

内大学生を対象に実施した。被験者数は 108 名で

あり、有効回答数は 108 であった。実験の概要は

図表 7 に示される通りである。

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13

■図表―――7

Study2 の実験概要

1.実験尺度、および分析手法の検討

分析に用いられる構成概念に関する尺度は、

Study1 と同様である。質問内容は以下に示される

通りである。

1.「あなたは天使ミルクバーが好きですか」

2.「あなたは天使のミルクバーからポジティブな

印象を受けますか」

3.「あなたは天使のミルクバーが魅力的だと思い

ますか」

アンケートの内容は付録を参照されたい。統計

技法には二元配置分散分析を採用し、統計ソフト

は Stata SE/13.1 を使用した。

2.マニピュレーション・チェック

まず、マニピュレーション・チェックを実施し

た。ブランドネームのマニピュレーション・チェ

ックは Study1 と同内容であり、6 点リカート尺

度である。t 検定を実施した結果、「拡張ブラン

ドネームは天使のミルクバーの名前をそのまま使

用し、さらに言葉を付け足した名前だと思います

か」は 1%水準で有意であり(双子ブランドネーム:

M=3.30, 兄弟ブランドネーム: M=4.82, t=5.37, p<

0.01)、「拡張ブランドネームは既存ブランドネー

ムに関連する、または対照的な言葉が入っている

と思いますか」も 1%水準で有意だった(双子ブ

ランドネーム: M=5.13, 兄弟ブランドネーム: M=

3.16, t=-7.47, p<0.01)。

対立プロモーションのマニピュレーションは t

検定の結果、「この CM は、1 つの商品のみを宣

伝しているものだと思いますか」が 1%水準で有

意(対立プロモーション有: M=1.81, 対立プロモーシ

ョン無: M=3.45, t=6.18, p<0.01)、「この CM は、

2 つの商品を対立させたものだと思いますか」も

1%水準で有意だった(対立プロモーション有: M=

4.58, 対立プロモーション無: M=3.23, t=-4.43, p<

0.01)。これらの結果より、マニピュレーション

によって平均値に差があることが確認された。し

たがって、マニピュレーションは成功した。

3.分析結果

仮説 2 では、ブランドネームとプロモーション

の交互効果と、双子ブランドネームにおけるプロ

モーションの単純主効果が有意であること、また、

双子ブランドネームにおいて、対立プロモーショ

ン有が対立プロモーション無よりも既存ブランド

への態度を高めることが示されれば、仮説が支持

兄弟 BN/対立プロモーション有

双子 BN/対立プロモーション無

対立 PR のマニピュレーション・チェック ⑤

⑥ 新規ブランドへの態度

既存ブランドへの態度 ⑦

ネームのマニピュレーション・チェック

既存ブランドへの態度

アイスクリームに対する関与

④-1

誕生月による振り分け

④-2

④-3

④-4

双子 BN/対立プロモーション有

兄弟 BN/対立プロモーション無

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されたとみなされる。

分析の結果、有意な交互効果と単純主効果が確

認された。「あなたは天使のミルクバーが魅力的だ

と思いますか」に対するブランドネームと対立プ

ロモーションの交互効果は 5%水準で有意であっ

た(F=4.40, p<0.05)。また、双子ブランドネーム

におけるプロモーションの単純主効果は 15%水

準で有意であった(対立プロモーションあり: M=4.90,

対立プロモーションなし: M=4.19, p<0.15)。グラフは

図表 8 に示される通りである。

■図表―――8

分析結果 Study2 既存ブランドへの態度

分析結果より、双子ブランドネームにおいて、

対立プロモーションを行うことにより、対立プロ

モーションを行わない場合よりも既存ブランドの

態度が上昇することが判明した。

4.Study2 の考察

Study2 では分析の結果、「あなたは天使のミル

クバーが魅力的だと思いますか」の質問項目で有

意な単純主効果と交互効果が確認された。すなわ

ち、「双子ブランドネーム」は「兄弟ブランドネー

ム」より、対立プロモーションによって既存ブラ

ンドへの態度を高めるといえる。よって仮説は一

部支持された。双子ブランドネームは対照的な単

語(本実験では「天使」と「悪魔」)を含んでおり、

ネームのみで対立構造を把握できることが対立プ

ロモーションにフィットしていたことが理由と考

えられる。

Ⅵ―知見

本研究は、「双子ブランドネーム」と「兄弟ブ

ランドネーム」というブランドネームの効果を検

証し、Study1 を通して双子ブランドネームは兄

弟ブランドネームより、拡張ブランドの失敗の影

響を既存ブランドが受けにくいことが判明した。

得られた知見は以下の通りである。

1.新製品が成功した際、「兄弟ブランドネーム」

は「双子ブランドネーム」より、既存ブランド

への「態度」を上昇させる。

2.新製品が失敗した際、「双子ブランドネーム」

は「兄弟ブランドネーム」より、既存ブランド

への「態度」を減少させにくい。

本研究では、「双子ブランドネーム」は「兄弟ブ

ランドネーム」に比べ、拡張ブランドへの成功と

失敗の両方の影響を受けにくいことが明らかにな

った。

このことから、拡張ブランドのネガティブな評

価から、既存ブランドのイメージや価値を守るた

めには「双子ブランドネーム」のほうが適してい

るといえるだろう。

また、本研究は Study2 を通して双子ブランド

ネームは兄弟ブランドネームより対立プロモーシ

ョンによって既存ブランドへの態度を上昇させや

すいことが判明した。得られた知見は以下の通り

である。

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15

3.「双子ブランドネーム」は「兄弟ブランドネ

ーム」に比べ、対立プロモーションを提示し

た際、既存ブランドへの「態度」を上昇させ

やすい。

このことから、新製品の発売時に「双子ブラン

ドネーム」は対立プロモーションを行うほうが適

しているといえるだろう。

Ⅶ―インプリケーション

1.ターゲットに応じたブランドネームの使い分け

拡張ブランドのターゲットが既存ブランドのタ

ーゲットと同じである場合、「兄弟ブランドネーム」

を用いると、拡張ブランドも既存ブランドのブラ

ンド・エクイティを享受することができる。

一方、拡張ブランドのターゲットが既存ブラン

ドのターゲットと異なる場合、「双子ブランドネー

ム」を用いると既存ブランドのイメージを故意的

に消すことができる上、既存ブランドのターゲッ

トがブランドイメージの異なる拡張ブランドを発

売したとしても、既存ブランドへの態度が減少し

ないであろう。

例えば、ポッカサッポロフード&ビバレッジ株

式会社が発売する、健康と美容に関心の高い女性

をメインターゲットとする清涼飲料水「キレート

レモン」を既存ブランドとし、新たに拡張ブラン

ドを発売すると仮定する。既存ブランドのターゲ

ットと同じく、健康と美容に関心の高い、働く女

性をメインターゲットとする拡張ブランドは、「キ

レートレモン」と同程度にビタミン C を摂取でき

るが、カロリーをカットした製品だとする。この

場合、兄弟ブランドネームである「キレートレモ

ン for Diet」のほうが、双子ブランドネームであ

る「スリムトレモン」より、既存ブランドへの態

度を高めるといえる。

一方、ビタミン C の摂取には高い興味をもって

いるが、「キレートレモン」というブランドは女性

向けだという意識から購買意欲の薄い男性をター

ゲットに、「キレートレモン」にビタミン A やビ

タミンEを加えた拡張ブランドを発売すると仮定

する。この場合、双子ブランドネームである「チ

ャージトレモン」のほうが、兄弟ブランドネーム

である「キレートレモン for Men」よりも新規タ

ーゲットが既存ブランドに対してもつイメージか

ら引き離すことができる。さらに、拡張ブランド

のほうが、既存ターゲットが既存ブランドに対し

てもっていたイメージも守られ、既存ブランドへ

の態度も低くならないと考えられる。

2.シェルフスペースの確保

プロダクト・ミックス全体において、兄弟ブラ

ンドネームと双子ブランドネームは組み合わせる

ことができる。そのメリットの一つとしては、ま

とまったシェルフスペースを確保できることが挙

げられる。また、このようにしてシェルフスペー

スを確保することによって、拡張ブランドの包装

パッケージングやラベリングを、類似しているか、

実質上同一にすることによって、割り当てられた

シェルフスペースを目立たせることができるだろ

う(Kotler and Keller [2008])。

例えば、株式会社明治が発売している「きのこ

の山」と「たけのこの里」は双子ブランドネーム

であるが、「大人のきのこの山」と「大人のたけの

この里」はそれぞれ兄弟ブランドネームである。

これらの製品は類似したパッケージであり、小

売店でのシェルフスペースも比較的広いといえる。

このように双子ブランドネームと兄弟ブランド

ネームを組み合わせることによって、シェルフス

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ペースの確保が見込めるであろう。

3.先制のカニバリゼーション

水平的ライン拡張はカニバリゼーションを起こ

しやすいが、なかでも双子ブランドネームはその

ネーム構造からカニバリゼーションを起こしやす

い。カニバリゼーションとは、拡張ブランドが既

存ブランドの需要を吸い上げ、既存ブランドの売

上を低下させることを指す。しかし、これは必ず

しも悪いことではなく、拡張ブランドが導入され

ていなければ、消費者は拡張ブランドの代わりに

競合ブランドにスイッチしていたかもしれないた

め、その予防になったといえる。

このように意図的にカニバリゼーションを引き

起こすことを先制のカニバリゼーションというが、

1 つの製品カテゴリー内でブランド・バリアント

のポートフォリオを提供すれば、消費者が飽き、

変化を求めて違う製品に乗り換えても、そのブラ

ンド・ファミリーから離れることはないというメ

リットがある(Kotler and Keller [2008])。11

したがって、ライン拡張を行う際に、双子ブラ

ンドネームにすることによって、先制のカニバリ

ゼーションを意図的に起こし、競合ブランドへの

流入を防ぐことが可能になると考えられる。

4.プロモーションへの応用

「双子ブランドネーム」は「兄弟ブランドネー

ム」より、対立プロモーションの効果を受けやす

いという Study1 の結果を受け、対立プロモーシ

ョンを行う際、プロモーション上で対立構造に置

かれている製品や事象に「双子ブランドネーム」

11ブランド・バリアントとは、水平的に差別化された

ブランドの在庫構成を指す(Chen and Cui [2013])。

を設定する。これによって、対立プロモーション

の効果は高まると考えられる。

例えば、味の素から発売されている「クノール

カップスープ」のプロモーションとして 2010 年

から行われていた「つけパン・ひたパン キャン

ペーン」は、広告対象となっている製品は 1 つ

であるが、食べ方を対立させたプロモーションで

ある。ここで、「つけパン」と「ひたパン」は双

子ブランドネームと見なすことができるだろう。

このように、実際の製品名は「双子ブランドネー

ム」でないとしても、対立構造にある製品や事象

に、「双子ブランドネーム」となるプロモーショ

ン上での呼び名を設定することによって、対立プ

ロモーションの効果を享受しやすくなると考えら

れる。

5.新ブランド立ち上げ時の留意点

本研究の定義より、双子ブランドネームは類似

または対照となる言葉を含むブランドネームであ

るため、類義語や対義語をもたない既存ブランド

ネームは双子ブランドネームによる拡張が困難で

ある。

したがって、双子ブランドネームによる拡張も、

兄弟ブランドネームによる拡張も可能にするため

には、新ブランド立ち上げの段階において、双子

ブランドネームのライン拡張を想定したブランド

ネームを設定する必要がある。

例えば、日本コカ・コーラ株式会社が発売して

いる「スプライト」のように、類義語や対義語を

もたないブランドネームは、兄弟ブランドネーム

による拡張は容易であるが、双子ブランドネーム

による拡張は難しいと考えられる。一方、東洋水

産株式会社が発売している「赤いきつね」は、類

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義語や対義語をもつため、「緑のたぬき」のよう

に双子ブランドネームによる拡張が容易であると

考えられる。

Ⅷ―おわりに

1.学術的意義

本研究には 2 つの学術的意義がある。第一の

意義は、日本語におけるブランドネームの構造を

取り上げたことである。既存研究では、発音や音

節に関する研究が多く、またそれらの多くは海外

の言語を研究対象としていた。本研究は日本語の

ブランドネームの構造の違いが既存ブランドに与

える影響を吟味している。この点は大きな学術的

貢献といえるであろう。

第二の意義は、ブランドネームとライン拡張を

組み合わせて研究した点である。既存研究ではブ

ランドネームとライン拡張は別の文脈で研究され

ており、ブランドネームとライン拡張の双方を考

慮した研究は存在しない。本研究がライン拡張と

ブランドネームを関連づけたことによって、実務

的にも重要な研究領域を新たに拓くことに成功し

た。

2.実務的意義

本研究で「双子ブランドネーム」、「兄弟ブラ

ンドネーム」という新たな概念を定義したことに

より、企業はブランド拡張において新たなブラン

ド戦略を立案することができるであろう。

また、本研究はブランドネームのもつ効果につ

いて、経験的にしか理解されていなかった概念を

「双子ブランドネーム」、「兄弟ブランドネー

ム」と定義し、その効果を実証したことにより、

製品名を論理的に設定することができるようにな

った。これも実務的に大きな貢献といえるであろ

う。

3.本研究の課題

本研究では、既存ブランドと拡張ブランドの両

製品について、架空のブランドを用いて実験を行

なった。しかし、実在するブランドでは、消費者

のもつブランドイメージが、製品への態度に大き

く影響する。したがって、本研究の結果が実在す

るブランドに当てはまるかについて、更なる研究

が必要である。

また、本研究では被験者がイメージをしやすい

アイスという 寄品を使用して実験を行なった

が、これからの研究では、非 寄品におけるライ

ン拡張とブランドネームの関係について研究する

必要がある。

本研究では、「双子ブランドネーム」と「兄弟

ブランドネーム」が、既存ブランドに与える影響

ついて調べたが、既存ブランドから拡張ブランド

への態度については、本研究のリサーチ・クエス

チョンにそぐわなかったため調査しなかった。し

かし、これらのブランドネームは拡張ブランドに

対しても影響を与える可能性がある。この点に関

しては今後の研究課題にしたい。

Ⅸ―謝辞

本研究を進めるにあたって、ご指導していただ

いた指導教授をはじめ、協力してくださった同

輩、実験にご協していただいた被験者の皆さまに

厚く御礼申し上げます。(18904 字)

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20

付録

新商品企画アンケート

質問

以下の質問について、

「非常に嫌いである:1」から「非常に好きである:7」の 7

つのうち、必ず 1 つの数字のみを〇で囲んでください。

非常に好きである

好きである

やや好きである

どちらでもない

やや嫌いである

嫌いである

非常に嫌いである

あなたはアイスクリームが好きですか。 1 2 3 4 5 6 7

あなたはミルク味のアイスクリームが好きですか。 1 2 3 4 5 6 7

あなたはチョコレート味のアイスクリームが好きですか。 1 2 3 4 5 6 7

「天使のミルクバー」

天使のような優しい甘み。なめらかなくちどけが 後の一口までおいしい。

以下の質問について、

「非常に嫌いである:1」から「非常に好きである:7」の 7

つのうち、必ず 1 つの数字のみを〇で囲んでください。

非常にそう思う

そう思う

ややそう思う

どちらでもない

ややそう思う

そう思わない

全くそう思わない

あなたはこの商品が好きですか。 1 2 3 4 5 6 7

あなたはこの商品からポジティブな印象を受けますか。 1 2 3 4 5 6 7

あなたはこの商品が魅力的だと思いますか。 1 2 3 4 5 6 7

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※誕生月ごとに次の A、B、C、D の4つのグループへ分類をした。

質問 A

「悪魔のチョコバー」

「天使のミルクバー」に濃厚なチョコの味が新登場!

そして、以下のような CM を放送しています。

以下の質問について、

「非常に嫌いである:1」から「非常に好きである:7」の 7

つのうち、必ず 1 つの数字のみを〇で囲んでください。

非常にそう思う

そう思う

ややそう思う

どちらでもない

ややそう思う

そう思わない

全くそう思わない

この CM は、1 つの商品のみを宣伝しているものだと思います

か?

1 2 3 4 5 6 7

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この CM は、2 つの商品を対立させたものだと思いますか? 1 2 3 4 5 6 7

あなたはこの商品が好きですか。 1 2 3 4 5 6 7

あなたはこの商品からポジティブな印象を受けますか。 1 2 3 4 5 6 7

あなたはこの商品が魅力的だと思いますか。 1 2 3 4 5 6 7

CM を参考にもう一度「天使のミルクバー」についてお聞きします。

「天使のミルクバー」

天使のような優しい甘み。なめらかなくちどけが 後の一口までおいしい。

以下の質問について、

「非常に嫌いである:1」から「非常に好きである:7」の 7

つのうち、必ず 1 つの数字のみを〇で囲んでください。

非常にそう思う

そう思う

ややそう思う

どちらでもない

ややそう思う

そう思わない

全くそう思わない

あなたは「天使のミルクバー」が好きですか。 1 2 3 4 5 6 7

あなたは「天使のミルクバー」からポジティブな印象を受けます

か。

1 2 3 4 5 6 7

あなたは「天使のミルクバー」が魅力的だと思いますか。 1 2 3 4 5 6 7

質問 B

「悪魔のチョコバー」

「天使のミルクバー」に濃厚なチョコの味が新登場!

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そして、以下のような CM を放送しています。

以下の質問について、

「非常に嫌いである:1」から「非常に好きである:7」の 7

つのうち、必ず 1 つの数字のみを〇で囲んでください。

非常にそう思う

そう思う

ややそう思う

どちらでもない

ややそう思う

そう思わない

全くそう思わない

この CM は、1 つの商品のみを宣伝しているものだと思います

か?

1 2 3 4 5 6 7

この CM は、2 つの商品を対立させたものだと思いますか? 1 2 3 4 5 6 7

あなたはこの商品が好きですか。 1 2 3 4 5 6 7

あなたはこの商品からポジティブな印象を受けますか。 1 2 3 4 5 6 7

あなたはこの商品が魅力的だと思いますか。 1 2 3 4 5 6 7

CM を参考にもう一度「天使のミルクバー」についてお聞きします。

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24

「天使のミルクバー」

天使のような優しい甘み。なめらかなくちどけが 後の一口までおいしい。

以下の質問について、

「非常に嫌いである:1」から「非常に好きである:7」の 7

つのうち、必ず 1 つの数字のみを〇で囲んでください。

非常にそう思う

そう思う

ややそう思う

どちらでもない

ややそう思う

そう思わない

全くそう思わない

あなたは「天使のミルクバー」が好きですか。 1 2 3 4 5 6 7

あなたは「天使のミルクバー」からポジティブな印象を受けます

か。

1 2 3 4 5 6 7

あなたは「天使のミルクバー」が魅力的だと思いますか。 1 2 3 4 5 6 7

質問 C

「天使のミルクバーチョコレート」

「天使のミルクバー」に濃厚なチョコの味が新登場!

そして、以下のような CM を放送しています。

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以下の質問について、

「非常に嫌いである:1」から「非常に好きである:7」の 7

つのうち、必ず 1 つの数字のみを〇で囲んでください。

非常にそう思う

そう思う

ややそう思う

どちらでもない

ややそう思う

そう思わない

全くそう思わない

この CM は、1 つの商品のみを宣伝しているものだと思います

か?

1 2 3 4 5 6 7

この CM は、2 つの商品を対立させたものだと思いますか? 1 2 3 4 5 6 7

あなたはこの商品が好きですか。 1 2 3 4 5 6 7

あなたはこの商品からポジティブな印象を受けますか。 1 2 3 4 5 6 7

あなたはこの商品が魅力的だと思いますか。 1 2 3 4 5 6 7

CM を参考にもう一度「天使のミルクバー」についてお聞きします。

「天使のミルクバー」

天使のような優しい甘み。なめらかなくちどけが 後の一口までおいしい。

以下の質問について、

「非常に嫌いである:1」から「非常に好きである:7」の 7

つのうち、必ず 1 つの数字のみを〇で囲んでください。

非常にそう思う

そう思う

ややそう思う

どちらでもない

ややそう思う

そう思わない

全くそう思わない

あなたは「天使のミルクバー」が好きですか。 1 2 3 4 5 6 7

あなたは「天使のミルクバー」からポジティブな印象を受けます

か。

1 2 3 4 5 6 7

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あなたは「天使のミルクバー」が魅力的だと思いますか。 1 2 3 4 5 6 7

質問 D

「天使のミルクバーチョコレート」

「天使のミルクバー」に濃厚なチョコの味が新登場!

そして、以下のような CM を放送しています。

以下の質問について、

「非常に嫌いである:1」から「非常に好きである:7」の 7

つのうち、必ず 1 つの数字のみを〇で囲んでください。

非常にそう思う

そう思う

ややそう思う

どちらでもない

ややそう思う

そう思わない

全くそう思わない

この CM は、1 つの商品のみを宣伝しているものだと思います 1 2 3 4 5 6 7

Page 27: 水平的ライン拡張における ブランドネームの構造と既存 ...c-faculty.chuo-u.ac.jp/~tomokazu/6_CEKS_paper.pdfイッチを行うことである(Kotler and Keller

27

か?

この CM は、2 つの商品を対立させたものだと思いますか? 1 2 3 4 5 6 7

あなたはこの商品が好きですか。 1 2 3 4 5 6 7

あなたはこの商品からポジティブな印象を受けますか。 1 2 3 4 5 6 7

あなたはこの商品が魅力的だと思いますか。 1 2 3 4 5 6 7

CM を参考にもう一度「天使のミルクバー」についてお聞きします。

「天使のミルクバー」

天使のような優しい甘み。なめらかなくちどけが 後の一口までおいしい。

以下の質問について、

「非常に嫌いである:1」から「非常に好きである:7」の 7

つのうち、必ず 1 つの数字のみを〇で囲んでください。

非常にそう思う

そう思う

ややそう思う

どちらでもない

ややそう思う

そう思わない

全くそう思わな

あなたは「天使のミルクバー」が好きですか。 1 2 3 4 5 6 7

あなたは「天使のミルクバー」からポジティブな印象を受けます

か。

1 2 3 4 5 6 7

あなたは「天使のミルクバー」が魅力的だと思いますか。 1 2 3 4 5 6 7

ネームのマニピュレーション・チェック

ネームについて以下の質問に答えてください

以下の質問について、

「非常に嫌いである:1」から「非常に好きである:7」の 7 つ

のうち、必ず 1 つの数字のみを〇で囲んでください。

非常にそう思う

そう思う

ややそう思う

ややそう思う

そう思わない

全くそう思わな

「天使のミルクバーチョコレート」は「天使のミルクバー」という

名前をそのまま使用し、さらに言葉を付け足した名前だと思います

か。(例)「コカコーラゼロ」は「コカコーラ」という名前をそのま

ま利用し、それに言葉を付け足しています。

1 2 3 4 5 6

「天使のミルクバーチョコレート」は「天使のミルクバー」に関連

するまたは対照的な言葉が入っていると思いますか。(例)「きのこ

の山」と「たけのこの里」はお互いに関連する言葉が入っています。

1 2 3 4 5 6