1
【はじめに】 学齢期は生涯の健康な生活を自分で守る保健知識を身につけ、その習慣を確立するために最も重要な時期である。また、学校関係者には、児 童生徒の健康増進のため、環境整備や社会資源の活用が求められている。今回、むし歯予防を目的に誰もがフッ化物を利用できる環境づくりの 一環として松江市立の小中学校、幼稚園、保育所全施設を対象としたフッ化物洗口事業を、関連する機関・職種との効率的な連携によって実施し ている現状報告を行う。 【事業概要】 1事 業 名 フッ化物洗口事業(洗口に関わる費用は全て公費によるため保護者の一部負担はない。) 2事業主体 松江市立幼稚園・保育所  (担当課 松江市健康福祉部子育て課) 松江市立小中学校    (担当課 松江市教育委員会) 3協力機関 松江市歯科医師会、松江市薬剤師会、学童の歯を守る会。 【施設・洗口の概要】 平成 26 年 4 月現在。 【実施の要点】 フッ化物洗口を施設で実施するにあたっては、平成15 年の厚生労働省通知「フッ化物洗口ガイドライン」ならびに島根県・島根県歯科医師会 作成の「フッ化物応用の手引書 改訂版」に則っている。フッ化物洗口事業の対象者は保護者への希望調査を実施したうえで参加の同意を得た児 童生徒。なお希望されない場合は、この活動を行う際の過ごし方について意向を確認する(水道水を用いた洗口、計時等の係活動への協力を依 頼)。実施の曜日・時間については各施設で決定し、年間計画を健康福祉部子育て課、教育委員会に提出する。なお大規模実施により小中学校 におけるフッ化ナトリウム試薬の費用は、生徒一人あたり年間10~20 円程度であった。 洗口方法は、未就学児にはミラノール(フッ化物イオン濃度 250ppm)にて週 5 回法により実施。小中学校生徒は 0.2%フッ化ナトリウム水溶液 (フッ化物イオン濃度900ppm)にて毎週一回実施する。各自、洗口液5~10mlを自分のカップに取り、約1分間うがい後吐き出す。その後 30 分間は飲食しない。 【小中学校での対応】 【フッ化物洗口液の配送システムと各関係機関(職種)との連携】 従来、学校におけるフッ化物洗口液は、養護教諭自身で自校において作成していたが、松江市では、大規模学校の実情や要望に合わせ、 薬剤師会との連携のもとで、薬局における調剤日を統一し複数学校(1薬局8~10 校程度)の洗口液を学校に配送することとした。これに より、実施における安全性と利便性の確立、大規模校での実施が可能となった。 *参考 自治体における洗口に利用するフッ化ナトリウム(試薬)の費用計算方法 洗口に使用するフッ化ナトリウム試薬一年分の費用は、以下の経験式にて求められる。 自治体の人口数≒自治体の小学校・中学校全員の洗口に利用する試薬費用(円) 例 人口20万人の自治体では、約20万円の試薬代にてその自治体の小中学校全員の洗口が可能となる。(但し、配送費や調剤費は除く) 【松江市立小中学校フッ化物洗口事業実施フロー】 洗口液 学校歯科医 学校長、薬剤師への 指示書作成 薬剤師会(薬局) 担当薬局が0.2%NaF洗口液作成、各学校の 必要量に応じて1又は2リットル容器に入れる 洗口の実施 保護者への説明等 歯科保健計画策定 市立学校 年間計画、質問等 松江市教育委員会 保護者 申込書 配送業者 委託契約書 洗口液 空容器 空容器 洗口液作成指示 洗口液によるうがいの指示 松江市歯科医師会 ・関係機関、学校歯科医 への指導・助言 ・啓発活動 ・薬剤師会(薬局) 調剤委託、調剤手当等 ・配送業者 配送手順、委託費用等 指導・助言 指示書 指示書 毎週火曜日に、薬局より洗口液 を受け取り、指定された各学校 に配送&空容器の回収 ・事業予算確保 (委託料の支払い、試薬・備品の購入&整備) ・関係機関との連絡調整 (事業の評価・指導助言・委託契約等) 御意見、御質問等の問い合わせ先メール  [email protected] 第21回日本口腔衛生学会近畿中四国地方会総会,松江,2010/6/20 発表ポスターより転載 4 養護教諭による分注作業 (各クラスのディスペンサーボトルに入れる) 3 児童生徒全員の洗口液を保管庫(専用冷蔵庫)へ収納 5 保健室から教室まで運ぶ ディスペンサーボトルからコップに分注する。 1 委託業者からの配送・受取&空容器の返却 2 受取票にサイン 6 洗口活動(一分程度口中全体のぶくぶくうがい) 7 用具・器具の洗浄、乾燥、保管、整備 洗口液を入れる容器については、洗口人数に応じて1ℓと 2ℓ瓶を組み合わせて用意することで、委託薬局での調剤 が簡便となる。また瓶の受取は、学校職員だれでも可能で ある。 施設名 市立保育所 市立幼稚園(幼保園) 市立小学校 市立中学校 施設数 11 29 35 17 人 数 開始年度 洗口液 ミラノール液 ミラノール液 フッ化ナトリウム水溶液(薬局より配送) フッ化ナトリウム水溶液(薬局より配送) 洗口回数等 週 5 回(年長組のみ) 週 5 回(年長組のみ) 週1回(年間約 40 回) 週1回(年間約 40 回) 185 537 10,700 5,381 H23 ~ H23 ~ H20 ~ 22 H20 ~ 22 松江市全小中学校・幼稚園・保育所におけるフッ化物洗口事業の取組み 松江市歯科医師会 ○尼ヶ崎知也、野坂 裕、三原理功、深田孝宏、三原和彦、影山直樹、青戸弘陽、清水 潤、蒲池悟郎、山内 順、内藤晋一 松江市 松江市教育委員会

学会用ポスター B タイトル有 - NPOnitiFnponitif.jp/2015tukubafukadasiryou3.pdf · 学会用ポスター_B_タイトル有.indd Author: seisaku Created Date: 11/18/2014

  • Upload
    others

  • View
    4

  • Download
    0

Embed Size (px)

Citation preview

Page 1: 学会用ポスター B タイトル有 - NPOnitiFnponitif.jp/2015tukubafukadasiryou3.pdf · 学会用ポスター_B_タイトル有.indd Author: seisaku Created Date: 11/18/2014

【はじめに】 学齢期は生涯の健康な生活を自分で守る保健知識を身につけ、その習慣を確立するために最も重要な時期である。また、学校関係者には、児童生徒の健康増進のため、環境整備や社会資源の活用が求められている。今回、むし歯予防を目的に誰もがフッ化物を利用できる環境づくりの一環として松江市立の小中学校、幼稚園、保育所全施設を対象としたフッ化物洗口事業を、関連する機関・職種との効率的な連携によって実施している現状報告を行う。

【事業概要】1 事 業 名 フッ化物洗口事業(洗口に関わる費用は全て公費によるため保護者の一部負担はない。)2 事業主体 松江市立幼稚園・保育所  (担当課 松江市健康福祉部子育て課)      松江市立小中学校    (担当課 松江市教育委員会)3協力機関 松江市歯科医師会、松江市薬剤師会、学童の歯を守る会。

【施設・洗口の概要】 平成26年4月現在。

【実施の要点】 フッ化物洗口を施設で実施するにあたっては、平成15年の厚生労働省通知「フッ化物洗口ガイドライン」ならびに島根県・島根県歯科医師会作成の「フッ化物応用の手引書 改訂版」に則っている。フッ化物洗口事業の対象者は保護者への希望調査を実施したうえで参加の同意を得た児童生徒。なお希望されない場合は、この活動を行う際の過ごし方について意向を確認する(水道水を用いた洗口、計時等の係活動への協力を依頼)。実施の曜日・時間については各施設で決定し、年間計画を健康福祉部子育て課、教育委員会に提出する。なお大規模実施により小中学校におけるフッ化ナトリウム試薬の費用は、生徒一人あたり年間10~20円程度であった。 洗口方法は、未就学児にはミラノール(フッ化物イオン濃度250ppm)にて週5回法により実施。小中学校生徒は0.2%フッ化ナトリウム水溶液(フッ化物イオン濃度900ppm)にて毎週一回実施する。各自、洗口液5~10mlを自分のカップに取り、約1分間うがい後吐き出す。その後30分間は飲食しない。

【小中学校での対応】

【フッ化物洗口液の配送システムと各関係機関(職種)との連携】 従来、学校におけるフッ化物洗口液は、養護教諭自身で自校において作成していたが、松江市では、大規模学校の実情や要望に合わせ、薬剤師会との連携のもとで、薬局における調剤日を統一し複数学校(1薬局8~10校程度)の洗口液を学校に配送することとした。これにより、実施における安全性と利便性の確立、大規模校での実施が可能となった。

*参考 自治体における洗口に利用するフッ化ナトリウム(試薬)の費用計算方法    洗口に使用するフッ化ナトリウム試薬一年分の費用は、以下の経験式にて求められる。

    自治体の人口数≒自治体の小学校・中学校全員の洗口に利用する試薬費用(円)     例 人口20万人の自治体では、約20万円の試薬代にてその自治体の小中学校全員の洗口が可能となる。(但し、配送費や調剤費は除く)

【松江市立小中学校フッ化物洗口事業実施フロー】

洗口液

学校歯科医学校長、薬剤師への

指示書作成

薬剤師会(薬局)担当薬局が0.2%NaF洗口液作成、各学校の必要量に応じて1又は2リットル容器に入れる

洗口の実施保護者への説明等歯科保健計画策定

市立学校

年間計画、質問等

松江市教育委員会

保護者

申込書

配送業者

委託契約書

洗口液

空容器

空容器

洗口液作成指示

洗口液によるうがいの指示

松江市歯科医師会・関係機関、学校歯科医 への指導・助言

・啓発活動

・薬剤師会(薬局) 調剤委託、調剤手当等・配送業者 配送手順、委託費用等

指導・助言

指示書

指示書

毎週火曜日に、薬局より洗口液を受け取り、指定された各学校に配送&空容器の回収

・事業予算確保 (委託料の支払い、試薬・備品の購入&整備)

・関係機関との連絡調整 (事業の評価・指導助言・委託契約等)

御意見、御質問等の問い合わせ先メール [email protected]

第21回日本口腔衛生学会近畿中四国地方会総会,松江,2010/6/20 発表ポスターより転載

4 養護教諭による分注作業 (各クラスのディスペンサーボトルに入れる)

3 児童生徒全員の洗口液を保管庫(専用冷蔵庫)へ収納

5 保健室から教室まで運ぶ  ディスペンサーボトルからコップに分注する。

1 委託業者からの配送・受取&空容器の返却 2 受取票にサイン

6 洗口活動(一分程度口中全体のぶくぶくうがい) 7 用具・器具の洗浄、乾燥、保管、整備

 洗口液を入れる容器については、洗口人数に応じて1ℓと2ℓ瓶を組み合わせて用意することで、委託薬局での調剤が簡便となる。また瓶の受取は、学校職員だれでも可能である。

施設名

市立保育所

市立幼稚園(幼保園)

市立小学校

市立中学校

施設数

11

29

35

17

人 数 開始年度 洗口液

ミラノール液

ミラノール液

フッ化ナトリウム水溶液(薬局より配送)

フッ化ナトリウム水溶液(薬局より配送)

洗口回数等

週5回(年長組のみ)

週5回(年長組のみ)

週1回(年間約40回)

週1回(年間約40回)

185

537

10,700

5,381

H23~

H23~

H20~ 22

H20~ 22

松江市全小中学校・幼稚園・保育所におけるフッ化物洗口事業の取組み松江市歯科医師会○尼ヶ崎知也、野坂 裕、三原理功、深田孝宏、三原和彦、影山直樹、青戸弘陽、清水 潤、蒲池悟郎、山内 順、内藤晋一松江市松江市教育委員会