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リコーグループ中長期環境負荷削減目標 バックキャスティングによる目標設定 環境経営 環境保全と事業成長を同時実現する 「環境経営」 社会のサステナビリティ向上を実現するために、長期的な視点をもってビジネスモデルの変革を 進めています。 詳しくはWEB 1 Three Ps Balance jp.ricoh.com/ecology/management/earth.html 2 長期環境ビジョン jp.ricoh.com/ecology/management/vision.html 3 中長期環境負荷削減目標 jp.ricoh.com/ecology/strategy/target.html 4 環境保全活動の3ステップ jp.ricoh.com/ecology/vision/3steps.html 目指す姿と実現に向けたプロセス リコーグループの環境経営 リコーグループは、サステナビリティ向上に向け た活動のスローガンを「Driving Sustainability for Our Future.」と定めています。この言葉には、 ビジネスを通じて生み出す新しい価値の提供により 社会課題を解決し、持続可能な社会の実現に貢献し ていく、という強い意志を込めています。 リコーグループが目指す持続可能な社会とは、 Planet(環境)、People(社会)、Profit(経済)の3 つのバランスが保たれ(Three Ps Balance 1 )、 「人間社会が環境に与える負荷が地球の再生能力の 範囲内に抑えられている状態」です。 けて、環境保全活動と利益創出を同時に実現する「環 境経営」を打ち出しました 。「環境経営」の下、継続 的な環境保全活動を行うことで高い環境保全効果 が得られると考えています。 3年ごとの 環境行動計画 地球環境 2020年 中期環境負荷削減目標 2050年 長期環境ビジョン バランスを 取り戻した地球 大きな方向 目指す姿 Three Ps Balance 2050年長期 環境負荷削減目標 からの目標設定 2050年長期 環境ビジョンを 踏まえた目標設定 2050年 長期環境負荷削減目標 省エネルギー/ 温暖化防止 CO2 排出総量を2050年までに87.5% 、 2020年までに30%削減 (リコーグル ープライフサイクル、2000 年比) 省資源/ リサイクル 1. 新規投入資源量を2050年までに 87.5% 、2020年までに25%削減 (2007年比) 2. 製品を構成する主要材料のうち、 枯渇リスクの高い原 油 、銅 、クロムなどに 対し、2050年をめどに削減および代替 を完了する 汚染予防 国際合意であるSAICMに基づき、2020年 までにライフサイクル全体での化学物質に よるリスク最小化を実現する *2012年3月改定 汚染予防は2020年目標のみ この目指す姿を実現するためには、長期的な視点 で目標を掲げ、その実現に向けて継続的に活動を行 う必要があります。環境目標設定にあたっては、最 終的な目指す姿からその実現に向けた通過点とし て目標を設定していく「バックキャスティング方式」 を採用しています。具体的には、目指す姿である Three Ps Balanceから「2050年長期環境ビジョ ン」 2 (2006年公表)を描き、その通過点として 「中長期環境負荷削減目標」 3 、3カ年の「 環境行動 計画」を設定するという取り組みを、継続して行っ ています。 リコーグループは、環境への取り組みを「環境対 応」「環 境 保 全」「環 境 経 営」という3つのステップ 4 で整理しています。外部要求に対応する受け身 の活動である「環境対応」、自主的な目標を掲げて 行う「環境保全」を経て、1998年に世の中に先駆 41 Ricoh Group Sustainability Report 2016

環境保全と事業成長を同時実現する 「環境経営」 · の活動である「環境対応」、自主的な目標を掲げて 行う「環境保全」を経て、1998年に世の中に先駆

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リコーグループ中長期環境負荷削減目標 バックキャスティングによる目標設定

環境経営

環境保全と事業成長を同時実現する 「 環境経営」

社会のサステナビリティ向上を実現するために、長期的な視点をもってビジネスモデルの変革を進めています。

詳しくはWEB

1 ThreePsBalancejp.ricoh.com/ecology/management/earth.html2 長期環境ビジョンjp.ricoh.com/ecology/management/vision.html3 中長期環境負荷削減目標jp.ricoh.com/ecology/strategy/target.html4 環境保全活動の3ステップjp.ricoh.com/ecology/vision/3steps.html

目指す姿と実現に向けたプロセス

リコーグループの環境経営

 リコーグループは、サステナビリティ向上に向け

た活動のスローガンを「Driving Sustainability

for Our Future.」と定めています。この言葉には、

ビジネスを通じて生み出す新しい価値の提供により

社会課題を解決し、持続可能な社会の実現に貢献し

ていく、という強い意志を込めています。

 リコーグループが目指す持続可能な社会とは、

Planet(環境)、People(社会)、Profit(経済)の3

つのバランスが保たれ(Three Ps Balance 1 )、

「人間社会が環境に与える負荷が地球の再生能力の

範囲内に抑えられている状態」です。

けて、環境保全活動と利益創出を同時に実現する「環

境経営」を打ち出しました。「環境経営」の下、継続

的な環境保全活動を行うことで高い環境保全効果

が得られると考えています。

3年ごとの環境行動計画

地球環境

2020年中期環境負荷削減目標

2050年長期環境ビジョン

バランスを取り戻した地球大きな方向

目指す姿Three Ps Balance

2050年長期環境負荷削減目標からの目標設定

2050年長期環境ビジョンを踏まえた目標設定

2050年長期環境負荷削減目標

省エネルギー/温暖化防止

CO2 排出総量を2050 年までに87.5% 、2020 年までに30%削減

(リコーグループライフサイクル、2000年比)

省資源/リサイクル

1. 新規投入資源量を2050 年までに87.5% 、2020 年までに25%削減

(2007年比)2. 製品を構成する主要材料のうち、

枯渇リスクの高い原油、銅、クロムなどに対し、2050 年をめどに削減および代替を完了する

汚染予防 国際合意であるSAICMに基づき、2020年までにライフサイクル全体での化学物質に よるリスク最小化を実現する*2012 年3月改定 汚染予防は2020 年目標のみ

 この目指す姿を実現するためには、長期的な視点

で目標を掲げ、その実現に向けて継続的に活動を行

う必要があります。環境目標設定にあたっては、最

終的な目指す姿からその実現に向けた通過点とし

て目標を設定していく「バックキャスティング方式」

を採用しています。具体的には、目指す姿である

Three Ps Balanceから「2050年長期環境ビジョ

ン」 2(2006年公表)を描き、その通過点として

「中長期環境負荷削減目標」 3 、3カ年の「環境行動

計画」を設定するという取り組みを、継続して行っ

ています。

 リコーグループは、環境への取り組みを「環境対

応」「環境保全」「環境経営」という3つのステップ

4 で整理しています。外部要求に対応する受け身

の活動である「環境対応」、自主的な目標を掲げて

行う「環境保全」を経て、1998年に世の中に先駆

41 Ricoh Group Sustainability Report 2016

気候変動問題に対する取り組み

 リコーグループでは、気候変動問題への取り組

みを重要な経営課題のひとつと認識し、製品のラ

イフサイクルCO2削減に取り組んでいます。調達

ステージでは製品の3R活動(リデュース、リユー

ス、リサイクル)により新規投入資源を削減し、材料

の採掘や加工に伴う温室効果ガスを削減。製造ス

テージでは生産プロセス革新、販売・物流ステージ

ではエコドライブ・物流の効率化などを実施。そし

て、使用ステージでは、省エネ性能の高い製品や、

ペーパーレス会議など新しい働き方提案と環境負

荷削減につながるソリューションを開発・提供して

います。

 先進国・途上国を含む196カ国・地域による歴史

的な合意が採択された2015年12月の国連気候

変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)でも、

オフィシャルパートナーとして、環境やセキュリティ

に配慮した統合文書管理ソリューションを提供しまし

た。リコーグループが採用されたのは、長年の環境

保全活動が高く評価されたことによるものです。

 また、外部のイニシアティブにも積極的に賛同し

ています。2014年9月には、「気候サミット」にあ

わせて表明された「世界銀行グループ・カーボンプ

ライシング支援イニシアティブ」、および英国の企業

グループであるCLG 1 などが提案する「1兆トン共

同声明」に賛同しました。

中期環境負荷削減目標 [省エネ・温暖化防止]

 「ライフサイクルCO2排出総量を2000年比で

2020年までに30%削減する」ことを目標に活動

しています。2016年3月期の排出量は、省エネ

製品の開発による使用ステージでの排出削減によ

り、前期比で6.0%減、2000年比で39.7%減と

なりました。中期目標達成に向け、順調に推移して

います。今後も、事業成長しながら目標値以下の

排出量を維持できるよう活動を継続していきます。

*1 2001年3月期の実績値*2 2021年3月期の実績値に相当

ライフサイクルCO2排出総量の推移

(千t)

1 CLGCorporate Leaders’ Group on Climate Change気候変動問題に積極的に取り組む英国の企業グループ

環境保全活動の3ステップ(環境対応から環境保全、そして環境経営へ)

■ 使用 ■ 調達 ■ 製造 ■ 販売・物流

1,556

(FY)2000 基準年 

2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2020 目標値 

1,6971,499

1,434 1,413 1,4451,316 1,401

2015

1,427

2016

1,341

2,223

*1 *2

狙い(コンセプト)

活動内容

環境対応 環境保全 環境経営

外部要求への対応・法規制 ・競合 ・お客様

地球市民としての使命・自主責任 ・自主計画 ・自主活動

①高い目標を掲げた積極的な 地球環境負荷低減活動 ・省エネルギー ・省資源リサイクル ・汚染予防②社員一人ひとりの意識改革

環境保全と利益創出の同時実現

法規制、競合、お客様に追随した消極的な活動

①環境保全活動≒QCD活動*

  例) ・部品点数削減 ・工程数削減   ・歩留り、稼働率向上②環境技術開発* 品質(Quality)、コスト(Cost)、納期(Delivery)の 管理改善活動

06 VALUE CREATION 20 BUSINESS STRATEGY 32 VALUE DRIVERS 45 GOVERNANCE 53 DATA & PROFILE

42Ricoh Group Sustainability Report 2016

環境行動計画

 18次環境行動計画 1(2015年3月期–2017

年3月期)では、環境負荷を低減する「省エネ・温暖

化防止」「省資源・リサイクル」「汚染予防」、地球の

再生能力を高める「生物多様性保全」の4本の柱に、

各々の活動を効率的かつ効果的に行うためのイン

フラである「環境経営の基盤」を加えた5つのカテ

ゴリで施策と目標を定め、活動しています。

 18次環境行動計画で重視したのは、「お客様の

環境負荷削減」「ステークホルダーとの協働の強化」

「環境ビジネスの拡大」です。2016年3月期の主

な進捗は次のとおりです。

 「リコー環境事業開発センター」は、創立80周年記念事業

のひとつとして、2016年4月に静岡県御殿場市に開所しまし

た。このセンターを通じて 「環境経営」の考え方をより進化さ

せ、これまでの事業領域にとらわれないより広い分野での環境

事業の創出・拡大を目指します。「御殿場市エコシティ化構想」

や森林保全事業「モデルフォレスト事業」にも参加しており、地

元地域との環境事業開発の取り組みも始まっています。

環境ビジネスの拡大の事例

環境を基軸とした新規事業の創出を目指す「リコー環境事業開発センター 」 2

リコー環境事業開発センター外観

詳しくはWEB

1 18次環境行動計画jp.ricoh.com/ecology/plan/plan18th.html2 リコー環境事業開発センター jp.ricoh.com/ecology/eco_business_center/

1 EcoVadis社フランスのサプライヤーCSR調査会社。110カ国、150業種のサプライヤー企業のCSR経営における方針、施策、実績を調査し、調査結果を顧客に提供しています。

環境経営

リコー環境事業開発センターの3つの機能

お客様の環境負荷削減 • 優れた省エネ性能が高く評価され、カラーMFPで省エネ大賞を2014年から2年連続で受賞しました。

• テレビ会議システムやペーパーレスソリューションの提供などによる削減貢献量は45.3万トンCO2

となりました。この削減効果は全世界のリコーグループの工場から排出されるCO2の約1.4倍に相当します。

ステークホルダーとの協働の強化

• COP21の公式スポンサーとして再生機とソリューション(個人認証、オンデマンド印刷、機器管理)を提供しました。

• Japan-CLPメンバーとしてパリCOP21で各種会合に参加、企業、行政、政策決定者と積極的な意見交換を実施しました。

• 500社以上のグローバル企業などが参加する企業ネットワーク、We Mean Businessに参加し、政策立案者への積極的な政策導入を働きかけました。

環境ビジネスの拡大 • カーボンオフセットプリンティングやペーパーレス会議ソリューションなど、環境を切り口とした価値提案を実践しました。

• EcoVadis社 1 のサプライヤー評価においてゴールド評価を獲得し、お客様のサステナビリティ要求に対応しました。

• リユース・リサイクル事業のグローバル最適化に向けた取り組みで、再生機によるリユース量は 6,398トンになりました。

18次環境行動計画で特に重視する活動の進捗

● 環境技術の実証実験の場 産官学連携のオープンイノベーションの手法を用いて、パートナーとともに進めることで、環境事業の創出を加速します。廃プラスチックや間伐材などの未利用資源からエネルギーを取り出す技術や、小さな水流から発電する技術など、省資源・創エネルギーに貢献するさまざまな実証実験を順次行います。

● リユース・リサイクルセンター 年間約2万台の複合機を再生するリコーのリユース・リサイクル拠点の中心的な拠点です。拠点の集約により、より効率的なリユース・リサイクルの推進が可能になりました。

(2015年5月稼働開始)

● 環境活動に関する情報発信基地 リコーグループの環境活動や環境配慮製品・サービス、新しい環境技術などに関する情報発信を行い、環境教育などを通じて地域社会に貢献していきます。

43 Ricoh Group Sustainability Report 2016

 リコーでは、独自の厳しい基準で製品を評価する「リコーサステナブルプロダクツプログラム」の運用を

2016年4月から開始しました。 「地球にやさしい」の側面では省エネルギー、省資源、汚染防止の3つ、「人に

やさしい」の側面では快適性、使いやすさ、CSRの3つ、合計6つの評価軸を用い、一定の基準を満たした製品

を「サステナブルプロダクツ」、中でも業界トップの性能をもつ製品を「サステナブルプロダクツPremium」とし

て認証します。

 リコーはこれまでも、環境性能に関する世界各国の認証ラベル制度を積極的に取得してきました。同時に、

高齢者や障がいをもつ方などを含め、オフィスで働くすべての人の使いやすさと快適性を製品性能に織り込

む努力もつづけてきました。しかし、「環境性能」と「使いやすさ・快適性」を統合的にチェックできる外部の

評価制度は今までありませんでした。そこで自社で本プログラムを開発、認証することで、環境性能と使い

やすさ・快適性を兼ね備えたサステナブルな製品として、お客様

に分かりやすくご提示できるようになりました。これによりお客

様の生活の質の向上と持続可能な社会づくりに貢献する製品の

普及を目指します。

 また、本プログラムは、完成品に対してだけでなく、製品の開

発プロセスや将来的な製品ロードマップの策定においても活用

していきます。2016年5月現在、複写機を中心に84点、全製

品の70%超が認証を取得していますが、2020年には、取得率

100%達成を目指します。

お客様の環境負荷削減の事例

市販回収材から再生したプラスチックを複合機に搭載

お客様の環境負荷削減の事例

「地球にやさしい」かつ「人にやさしい」製品を独自評価する、リコーサステナブルプロダクツプログラム 3

再生材を使用した給紙トレイ

詳しくはWEB

3 リコーサステナブルプロダクツプログラム(RSPP) jp.ricoh.com/ecology/product/sustainable/

省エネ

汚染予防省資源

使いやすさ

CSR快適性

繰り返し利用しても品質の低下が少ない再生材

評価結果の例

業界トップランナー項目を含む評価軸 当該製品の評価結果 サステナブルプロダクツ認定基準値

市販回収材家電製品のプラスチック(家電リサイクル法)

リサイクル材料評価

改質(新日鉄住金化学)

 「新規投入資源量を2007年比で2050年までに87.5%、2020年までに25%削減する」。この省資源・

リサイクル分野の中長期環境負荷削減目標達成に向け、リコーグループはバイオマス材料の活用や、使用

済み複合機から回収したプラスチックの含有比率を高めた再生プラスチック材料の開発などに積極的に取り

組んできました。

 こうした資源循環の取り組みをさらに拡大させるべく、リコーグループでは市販回収材から繰り返し利用し

ても品質の低下が少ない再生材を開発、2016年に発売する複合機から搭載を始めました。

 複合機には、難燃性や強度の高い高品位プラスチックが求められるため、市場で回収されたプラスチック

を再生材として利用するのは困難でした。新たな再生材は、スーパーマーケット等で回収されたプラスチッ

ク製容器包装と、家電リサイクル法によって回収された家電製

品のプラスチックによる市販回収材を原料に、新日鉄住金化学

株式会社の改質技術と、リコーが保有するリサイクル材料評価

技術により開発されました。

 この再生材を利用することで、地球から新たに採取する石油

由来の資源量の削減が見込まれます。まずは給紙トレイなどか

ら導入を進め、さらに他用途での活用も目指していきます。

プラスチック製容器包装

06 VALUE CREATION 20 BUSINESS STRATEGY 32 VALUE DRIVERS 45 GOVERNANCE 53 DATA & PROFILE

44Ricoh Group Sustainability Report 2016