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1 ふるさと創生・人口減少調査特別委員会会議記録 ふるさと創生・人口減少調査特別委員会委員長 佐々木 朋和 1 日時 平成 28 年8月3日(水曜日) 午前 10 時1分開会、午後 0 時1分散会 2 場所 第1委員会室 3 出席委員 佐々木朋和委員長、川村伸浩副委員長、髙橋元委員、阿部盛重委員、工藤勝子委員、 岩崎友一委員、福井せいじ委員、飯澤匡委員、工藤大輔委員、五日市王委員、 斉藤信委員、小西和子委員 4 欠席委員 なし 5 事務局職員 大山担当書記、中村担当書記 6 説明のため出席した者 岩手大学長特別補佐・特任教授 小野寺純治氏 7 一般傍聴者 2名 8 会議に付した事件 (1) 調査 学卒者の地元定着と雇用創出について (2) その他 次回の委員会運営について 9 議事の内容 ○佐々木朋和委員長 おはようございます。ただいまからふるさと創生・人口減少調査特 別委員会を開会いたします。 本日は、滝澤担当書記にかわり中村担当書記が出席しておりますので、御紹介いたしま す。 これより本日の会議を開きます。 本日は、お手元に配付いたしております日程のとおり、学卒者の地元定着と雇用創出に ついて調査を行いたいと思います。 本日は、講師として岩手大学長特別補佐・特任教授の小野寺純治様をお招きいたしてお りますので、御紹介いたします。

ふるさと創生・人口減少調査特別委員会会議記録hp0731/iinkaikaigikiroku/2808... · 3 出席委員 佐々木朋和委員長、川村伸浩副委員長、髙橋元委員、阿部盛重委員、工藤勝子委員、

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ふるさと創生・人口減少調査特別委員会会議記録

ふるさと創生・人口減少調査特別委員会委員長 佐々木 朋和

1 日時

平成 28年8月3日(水曜日)

午前 10時1分開会、午後 0時1分散会

2 場所

第1委員会室

3 出席委員

佐々木朋和委員長、川村伸浩副委員長、髙橋元委員、阿部盛重委員、工藤勝子委員、

岩崎友一委員、福井せいじ委員、飯澤匡委員、工藤大輔委員、五日市王委員、

斉藤信委員、小西和子委員

4 欠席委員

なし

5 事務局職員

大山担当書記、中村担当書記

6 説明のため出席した者

岩手大学長特別補佐・特任教授 小野寺純治氏

7 一般傍聴者

2名

8 会議に付した事件

(1) 調査

学卒者の地元定着と雇用創出について

(2) その他

次回の委員会運営について

9 議事の内容

○佐々木朋和委員長 おはようございます。ただいまからふるさと創生・人口減少調査特

別委員会を開会いたします。

本日は、滝澤担当書記にかわり中村担当書記が出席しておりますので、御紹介いたしま

す。

これより本日の会議を開きます。

本日は、お手元に配付いたしております日程のとおり、学卒者の地元定着と雇用創出に

ついて調査を行いたいと思います。

本日は、講師として岩手大学長特別補佐・特任教授の小野寺純治様をお招きいたしてお

りますので、御紹介いたします。

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2

○小野寺純治講師 小野寺でございます。このような場を頂戴いたしまして、ありがとう

ございます。よろしくお願いいたします。

○佐々木朋和委員長 小野寺様の御略歴については、お手元に配付してある資料のとおり

でございます。

本日は、学卒者の地元定着と雇用創出についてと題しまして、若年層の地元定着を図る

取り組みとして、岩手大学で行われている知の拠点大学による地方創生推進事業や学生の

就職の状況等についてお話しいただくこととなっております。

小野寺様におかれましては、御多忙のところ、このたびの御講演をお引き受けいただき

まして、改めて感謝を申し上げたいと思います。ありがとうございます。

これから講師のお話をしていただくことといたしますが、後ほど小野寺様を交えての質

疑、意見交換の時間を設けておりますので、御了承願いたいと思います。

それでは、小野寺様、よろしくお願いいたします。

○小野寺純治講師 改めまして、岩手大学長特別補佐・特任教授の小野寺と申します。よ

ろしくお願いいたします。

実は私、25年ほど岩手県庁に勤めておりまして、2003年から岩手大学に移り、十数年ほ

ど産学官連携による地域振興を担当してまいりましたところ、昨年の 12月にふるさといわ

て創造プロジェクトという文部科学省のCOC+事業の採択を受け、コーディネーターと

して着任しました。よろしくお願いいたします。それでは、座って説明をさせていただき

ます。

まず最初に、きょうは昨今の大学生がどのような思いで就職を捉えているかというお話

をいたしまして、学生がどのような形で地元に定着しようとし、それからそれを受けるた

めにどのような取り組みをしていったらいいだろうか。これは、大学の公式見解プラス私

の個人的な見解も入っているということで御了承いただきたいと思います。

まず最初に、岩手大学生の就職に関する意識調査というものを用意させていただきまし

た。これは昨年6月に調査したものです。有効回答数が 421で、岩手大学は大学生、大学

院生が合わせて 5,700名ほどおりますから、七、八%の回答率ということで、これが高い

かどうかというところについてはまた議論いただけたらと思います。

調査の中身、内訳につきましては、スライドにありますとおり各学部構成、学年、大学

院生、出身地域という形で、やはり大学3年生がかなりの割合を占めています。それは今

就職に動こうとしている年代が大学3年生ですから、そういう関心の高さを示していると

いうことだと思います。

その中で、一つは魅力を感じる業種割合というふうにとっております。公務員になりた

いという学生が 19%、もう一つは教育機関、つまり小中学校の教員になりたい学生が8%、

合わせて 27%が、大きく言えば公務関係を希望している在学の大学生ということで、これ

がどのように変化していくかというのが後で見ていただければというふうに思います。

スライドのこちらのほうは魅力を感じる仕事割合で、事務職であったり技術専門職とい

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うのが結構な割合であります。それは理工学部、それから農学部の学生も当然入っており

ますので、こういう割合になっているものであります。

魅力を感じる従業員の規模割合ですが、私もちょっとびっくりしたのですけれども、規

模は余りこだわっていないのです。寄らば大企業という、私が大学生のころのイメージが

ちょっとありましたけれども、今はそうではなくて、100 名以上の規模を希望している学

生は 13%しかいないというような状況になっています。

魅力を感じる事業所の社風という質問項目があります。チームで協働して成果を上げる

事業所とか、安定し確実な事業成長を目指している事業所の割合が高く、どちらかという

とベンチャーとかそういう意識ではなくて、小さくてもいいけれど、安定して地域の中で

貢献しているという事業所を希望しているように感じます。

それから、魅力を感じる仕事と報酬の関係です。私も結果を見るまでは、昨今の学生は

お金がどちらかというとかなりの意向の割合を占めているのかなと思ったらそうではなく

て、採用直後の給与は低いが、長く働き続けることで後々高い給料をもらえるという、あ

る面では1世代、2世代前ぐらいまでの、いわゆる高度成長期の会社員とか、そんなイメ

ージをほうふつさせるような意向を持っている。それからもう一つは、個人の生活をサポ

ートする制度を充実させているかわりに給与は低い。ですから、給与の直接的な額ではな

くて、安定的であり、なおかつ間接的ないろんな条件が整っている、そういうところに学

生は興味を持っている。それからもう一つは、仕事の評価のよしあしによって給料が余り

変化せずという、もっと昔のイメージをほうふつさせるような学生になっているというこ

とであります。

それから、コミュニケーションスタイルも質問しておりまして、見ていただければコミ

ュニケーションが密で一体感を求められるというところ、それはウエットな人間関係とい

うところが出ております。

それから、魅力を感じるワークスタイル、これは地域の異動が少なく特定の地域で働く

とか、定年まで同じ事業所で働きたいという、今の学生は余り変わっていないということ

が言えるわけです。

魅力を感じるワークライフスタイルも、自分で仕事と私生活のバランスをコントロール

できる環境、ですからワークライフバランス、それは昔とは違い、しっかりと経営者側も

意識をしないといけないよということでありますし、もう一つは子育て、介護、それは学

生にとっても非常に大きな問題として今は認識しているということだと思います。

先ほど申し上げました公務を希望している学生、つまり公務員、教員を希望している学

生が現実的に4年生になって就職したときにどうなっているかという割合を示したもので、

いろいろと出ておりますけれども、私が特に着目しているのは、県内就職者の 56%、これ

は男性も女性もくしくも同じ割合で、公務員と教員に結果としてなっている。ですから、

先ほど見ていただいたとおり 27%しかある面では明確に希望していなかった学生が、いろ

んな就職活動をするに当たって周辺の外部環境、いわゆる親御さんとか先生の影響もある

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かもしれません、いろんな話もあるのだろうと思います。そういう中で、最終的には公務

を希望する学生が過半になっているということを一つ着目をしていただきたいと思います。

これらを踏まえて、岩手大学の学生が求める就職先というのはどんなものかということ

でありますけれども、一つは大企業にこだわっていなくて、中小企業で安定さがあり、給

与制度は年功序列、転勤がないということがまさに言えると思いますし、二つ目はワーク

ライフバランスを大事にし、育児休暇や介護休暇をとりやすい環境、それから三つ目は、

会社の風通しが良く、従業員関係は公私ともにコミュニケーションが豊かで、ドライでは

なくて、どちらかというとウエットな関係を望んでいるというふうに学生アンケートから

見えてくるということであります。

ただ、これは質問調書の問題もあると思いますので、もっとしっかりと分析していかな

ければならないということもあります。大きな流れとしてはこういう方向に今学生はある

のだということを御理解いただきたいと。昨今の学生はスマホしかやっていなくて、コミ

ュニケーションもとっていなくて、ドライで人づき合いもなくて、高い給料をもらえれば

いいと、しかも大企業志向であるという考え方はもう脱ぎ去っていただいて、こういう中

で学生が地域にどう定着したらいいかということをお考えになっていただくことが必要に

なるだろうと思います。

その一方で、岩手大学に就職先として企業から求人が来るわけですけれども、求人申し

込みを一覧表といいますか、割合にしたものであります。北海道、東北地域ではわずか 14%

しかない、そのうち岩手県はわずか3%しかないというわけです。ですから、その3%の

就職を岩手県の学生はどちらかというと入りたい、86%ある東北、北海道以外のほとんど

がいわゆる首都圏になるわけですけれども、そこを蹴飛ばしてまで岩手県に入りたいとい

う学生をどうつかまえていくかということが課題となるわけです。

岩手大学の学生の学部就職、ちょっとグラフが小さくて恐縮ですけれども、学部別に出

しておりますし、こちらのほうが全体を出しております。平成 23 年度に 34%、これが高

いか低いかという議論がありますけれども、34%であったものが今 38%まで、4%、これ

が大きいかどうかという議論はあるかと思いますけれども、ふえてきている。ですから、

わずか3%しか就職口がない、それが 34%、ただこの中には当然において過半が公務員と、

または教職というものも入っているわけでありますけれども、そういう状況になっている

ということなわけです。

これは、岩手労働局の岩手県の資料をいただいてきているわけでありますけれども、平

成 23年3月の東日本大震災以降、学生の意識が変わったというふうに私どもは見ておりま

す。それまでは平成 22年3月卒業、グラフに出ていますけれども、ちょっと赤っぽいのが

県内就職者数、これは岩手大学だけではなくて学卒者の県内就職者数でありますけれども、

これがふえてきております。ただ、その後、首都圏の青田買いみたいな、要するに強力な

学生採用活動がありまして、ちょっと下がっておりますけれども、こんな状況であるとい

うことであります。

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その一方で、今申し上げましたとおり学生がああいう形で規模にもとらわれず、人間関

係が良好で、賃金もそれほど高くなくていいから、ワークライフバランスがすぐれた会社

をというふうに思って、県内企業に入って、その結果として3年離職者、つまり入って3

年間でやめた割合が 43.7%という数値になっております。これは、全国の同じ年の離職者

率が 32%ぐらいですから、10ポイントも高い。それは学生側の淡い期待と企業側の厳しい

環境、また企業経営者の意識との差異の問題かもしれませんけれども、これをしっかりと

解決していかなければ、これから学生が、後輩が入りたいと思うかどうか、せっかく入っ

た会社に対して先輩がやめてしまう、そういう会社に入っていくかどうかということもす

ごく大きな問題だと考えております。

全国の数字が先ほど申し上げたように、大卒者は 32.3%ですけれども、全国の平均で高

卒者は 40%、短大卒者 41.5%で、恐らく企業の規模とかそういうものも少し影響してきて

いる部分があるのかなと推測をしております。このグラフも厚生労働省の資料になってい

るわけですけれども、これが全国ベースでは主な離職理由であるということで、労働時間、

休日、休暇の条件がよくなかった、つまりワークライフバランスが思うようにできないと

いうようなところが一番出ている。二つ目がこちらですかね、仕事が自分に合わない、三

つ目が人間関係がよくなかった。給与がここにありますね、賃金の条件がよくなかった。

ですから、そういうものを踏まえて、必ずしも入った若者は賃金で格差があってやめると

いうことではなくて、やはりワークライフバランスであったり人間関係、仕事の中身、そ

れが会社側と一致せずにやめざるを得なかったということかなと思います。

あとは、これは先生方も御承知だと思いますけれども、人口移動、2006年から出してお

りまして、2007年にこの人口移動に興味を持って、それからデータをとり始めたわけです

けれども、岩手県の人口移動はこのようになっている。特に 2007 年、2008 年には 7,000

人前後の流出が続いていたということです。昨今は二、三千人におさまっているというこ

とであります。この中で私がいつも着目していたのは、ここにある滋賀県です。滋賀県、

三重県と当時は着目しておりまして、三重県はシャープが亀山市に工場をつくったりして、

2007年ぐらいは非常に元気な時期でありました。その後ちょっと三重県は少し厳しい状況

になっています。滋賀県は相変わらず人口が安定的にふえております。

今度は岩手県内の中で盛岡広域圏の人口移動、このスライドはみちのく盛岡広域連携都

市圏ビジョンということで、私座長をさせていただいておりましたものですから、そこの

資料を拝借してまいりました。これは平成 22 年ですから、2010 年の国勢調査のデータを

もとに分析したものでありますけれども、盛岡広域圏で青森県、秋田県から 2,000人入っ

てきます。それから、その他の圏外から 5,000人弱入ってきます。これが盛岡広域圏にと

どまらずに、それ以上に首都圏に 4,000人、宮城県に 1,400人、他県に 1,600人という形

で出てしまう。ですから、私からいけば、この都市圏ビジョンでは盛岡広域圏が人口のダ

ム機能ということで、これをどう押しとどめていくか。そういうことを大きな課題として

議論させていただきましたけれども、ここが今どちらかというと中継ポンプになってしま

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っている。地域から吸い上げて、それを送り込んでいるという状況も見える、これを何と

かしなければならないだろうと感じております。

それから、このスライドは 2008年、少し古いデータでありますけれども、河北新報の1

月 29日の記事でこのようなものが出ておりました。首都圏の学生を対象に、あなたは将来

地元に戻りたいですかという質問をしたところ、断トツで北東北の学生は戻りたくないと

言っている、当時です。今は少し意識が変わったかもしれませんけれども、そういうデー

タであります。ここにいろいろと理由が書いてあります、いい仕事がないとか。ですから、

内閣府からふるさと創生型インターンシップという形で今度施策が出るようにも聞いてい

ますけれども、そういうものをどう捉えて、また若年の時代、中学生、高校生の時代から

地域の魅力をしっかりと若者に伝えていかなければ学生は戻ってこないということが言え

るのだろうと思います。これは、先生方は余りにも御承知なので省略をさせていただきま

す。

ここから私の個人的な意見になりますけれども、私がいつも申し上げるのは、今の時代

こそ多様性が失われているのではないか。もともと日本というのは多様性があった国家で

はなかったかというふうに思っております。世界的に見ればそれでもまだ中央集権だと言

われていますけれども、例えば江戸時代の人口を比較しても、江戸の人口は 30分の1しか

なかった。現代はどうかというと東京都だけで 1,350万で、10分の1を超えているわけで

す。それを漏れてしまって、首都圏全体に行って 3,300万人も結局東京都市圏といいます

か、そこで飯を食っている。ということは、30%近くの人間が東京都市圏に集まってしま

っている。経済、そうするとGDPは、これは東京都だけ挙げていますけれども、これだ

けで2割弱ですかね、東京都に集まっている。その割には出生率はこの状況である。三大

都市圏の人口移動ということはもうなくなって、東京都一極集中、この 12万人の人口移動

といいますか、転入増が多いか少ないかという議論はあるかと思います。高度成長期前半

の昭和 35年から昭和 45年の間に、10年間で 500万人東京都に集まったと言われておりま

すけれども、それから考えればまだ低いと言えますが、ただ、今地方の問題は若者がいな

い中で、若者が東京に吸い上げられているということを決して見逃してはいけないのだろ

うと思います。

この多様さが失われると、私自身のこれはまさに独断になりますけれども、価値観は不

変なものとして、一つの考え方のみが要するに世の中の常識になっていく、つまり覆って

しまう。その価値観は、しかしながら時代とともに変わるわけですよね。ですから、逆に

言えば地方こそ首都圏とは違う価値観を持って、いろんなことに取り組まなければ、東京

都がこければ地方もこけるという状況になるのではないかと危惧しています。

余り正しくない事例かもしれませんけれども、私がよく申し上げるのは、戦後日本の山

は終戦ではげ山になりました、そこで当時は杉の木を植えれば 50年後にはもうかるという

話があって、植えました。ほとんどのはげ山に木を植えましたけれども、杉がどうなった

か。そのときに岩手県では一部の方が、いや、カラマツがいいんじゃないかというふうに、

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うちのおやじも植えました。ところが、当時カラマツというのは乾燥させるとねじれてし

まって柱には使えない、二束三文でありました。でも、今は構造材としてカラマツのほう

が杉よりも圧倒的に高い。ですから、時代の価値観というのはどんどん変遷していくわけ

ですね。それは今の時点で読めるかどうかということが非常に大きな問題になるわけでし

て、それを考えねばならない。

スライドに米作のことを書いていますけれども、私は 1978年に大学を卒業して、企業を

やめて、先祖代々百姓の出なものですから、うちで農業をやろうかというふうに思ったこ

とがあります。そのときに1俵2万円でした、60キロ。その2万円で、私のうちは周辺に

貸している土地も入れれば約4町歩から5町歩あって、それで5町歩で、80俵とれれば 400

俵、ですから 800万円の収入かなと、それで生計が立てられるかどうか考えましたけれど

も、今はそうではなくて、2015年の時点で、これは生産者の価格になりますけれども、恐

らく 8,000円から1万 2,000円ぐらいで、お米をやらなくてよかったねと思うわけです。

ですから、そういうようなことがあってはいけないのではないかということをまず申し

上げたい。あとは下のほうにいろいろ書いていますけれども、これは先生方御承知のとお

りということであります。

多様性の維持・尊重が大切というのは、これは日本のもともとの気候風土も多様な状況

になっているということだと思います。もともと農作業も食生活も文化も、スライドに書

いていますが、これが世界的に多様かどうかという議論はあるかもしれませんけれども、

少なくとも気候風土については世界でも冠たる多様性を持っているというのは日本の特徴

だろうと思います。そうすると、産業経済も当然多様性があってしかるべきであると私自

身は考えます。

このスライドは、マイケル・オズボーンというオックスフォード大学の先生が発表され

たデータで、先生方も御承知の方が多いと思いますけれども、人工知能、AIに代表され

るIoT、そういうものに約半分の多くの職業がここ 10年から 20年後に置きかえられま

すというようなデータが出ております。株式会社野村総合研究所が 2015年からオックスフ

ォード大学と連携して、分析をしておりまして、このスライドが日本で置きかえられるで

あろう可能性の高い業種、業態であると言っております。ですから、こういう中で今から

どのような 20 年後の将来になるのかということを見通すということが極めて難しい時代

に入っていると言えるわけです。

ここで一つだけ御紹介申し上げたい。私も一応教員の端くれにいるものですから、お話

をさせていただくと、ヨーゼフ・アロイス・シュンペーターという方が 1910年代の後半に

イノベーションということを出しております。イノベーションというのは、私は高校時代

にこう習いました、技術革新だと。でも、彼が言っているイノベーションというのはそう

ではなくて、新結合という言葉を言っておりますけれども、イノベーションとは新しい技

術の発明でなくて、新しいアイデアから社会的意義のある新しい価値を創造し、社会に大

きな変化をもたらす自発的な人、組織の幅広い変革である。それまでの物、仕組みに対し

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て全く新しい技術や考え方を取り入れて新たな価値を見出し、社会的に大きな変化を及ぼ

すということで、彼が言っているのは先端科学技術だけがイノベーションではないと。で

すから、地域に入っていないものをどう入れ込んで、概念を変えていくか、それがイノベ

ーションであるというふうに言っていると私は理解をしております。創造的破壊は、これ

は読んで字のごとしであります。

ここで、雇用創出に入るわけですけれども、その前段として日本における開業率と廃業

率という議論があります。開業率というのは、ある一定期間、1年間にどれだけの企業が

新たに店を開いた、創業したかどうか、それからその間に店を閉じたか、倒産したかどう

かという割合を示すものであります。ちょうど昭和 60年ごろに開業率と廃業率は日本では

転換をしまして、廃業率が高どまっている。ただ、開業率が 5.1%、廃業率が 6.2%に平成

16 年~平成 18 年ぐらいの古いデータではなっていますけれども、世界的に見れば開業率

も廃業率もかなり低い割合で、世界のスタンダードは大体 10%前後と言われております。

これを都道府県別に見た数字がこのスライドでありまして、ここに開業率、廃業率の3%

のイコールラインを引いておりまして、みんなラインの左側にあるということは、では企

業がふえたらふえないのという議論を学生にはしますけれども、みんな減っているわけで

す、等しく。

この間経済産業省の資料を入手しましたので、平成 26年というピンポイントですけれど

も、落とし込んだのがスライドのこの数字になりまして、3%のラインをここに引いてお

りまして、ラインの右側に来ているということは、開業率よりも廃業率が、近年では変わ

りつつあるということが言えるだろうと思うのです。ただ、岩手県は3%台で、確かに開

業率が少し上回っておりますけれども、これでいいのかどうか。

一番すごいのが、ここにあります沖縄県であります。この時点で私は当時、一つ前のス

ライドの資料しかありませんが、沖縄県ってここにあるよね、今は確かに廃業率が若干上

回っているけれども、経済環境がちょっと変わればラインの右側へ行く可能性は極めて高

いというお話を申し上げておりました。それは結果としてここに出てきているということ

なわけです。ですから、沖縄県の中で今どのような産業革新が出てきているか、特区の問

題もあるし、いろんな議論があるかと思いますけれども、それもしっかりと把握すること

が必要だろうと思います。

岩手県内の製造業事業所数、これは昔から使っている古い資料で、途中から統計をとる

のが嫌になりましたけれども、平成 26 年度を調べてみたら、最盛期、平成4年に 4,070

社あった製造業が 2,100社に落ち込んでおり、従業員も 12万人あったのが8万 2,000人ま

でということで、学生諸君にはあなた方の就職口はどんどん減っているんだよ、だから企

業に勤めるというよりも開業という議論もひとつ視野に入れなければならないよという話

をしております。

もう一つ、私が今着目しておりますのが地方創生のモデルとなっている元気な地域、こ

れは先生方も御承知で、多分視察をされた箇所も入っていると思います。これは石破大臣

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がまち・ひと・しごと創生本部を 10月に立ち上げて、それで元気な地域を呼んでヒアリン

グをしていた中の幾つかの自治体をここに挙げたものであります。これ以外にも当然入っ

ております。例えば北海道ニセコ町とか入っております。

ただ、私が着目しているのは、今言ったここの高知県の檮原町、島根県の邑南町、島根

県の海士町、それから徳島県の神山町というところでありまして、先生の資料には入れて

おりませんけれども、檮原町は何がすごいかというと、環境と観光をあわせて飯を食って

いこうとやっておりまして、しっかりと経済効果を出しているということです。こちらが

2013年かな、2015年かな、こちらが。しっかりと9億 3,000万円から 18億円、町全体で

は 24億円から 46億円で、これだけの雇用が出ているということをしっかりと経済に落と

し込んでいるということであります。

私、盛岡広域の都市圏ビジョンの中でも、観光を考えたときに人数ではないのだと、ど

れだけお金を落としてくれたかどうかと、できれば1人当たりの客単価が高いほうがいい

のだと、だからそれをどうはかるかということを申し上げるわけですけれども、そこはな

かなか今岩手県では出てこないという課題があります。

それから、この資料は島根県の邑南町のワンペーパーだけを持ってまいりました。これ

は何を言っているかというと、特殊出生率がこちらにありまして、こちらは女性の社会参

加の割合を示しています。邑南町は社会参加と特殊出生率は比例する、ですから外に女性

が働いたほうが子供もつくる環境ができますよということを言っているのだろうと思いま

す。ここに島根県があって、邑南町は 2.65ということで、たしか週刊女性自身か何かに日

本一子育てに優しい村かなにかで取り上げられた町でありますので、このような状況をち

ゃんとつくっているというところはすばらしい考え方だなと思います。

それから、これも島根県の海士町、私はまだ海士町には残念ながら行っておりませんけ

れども、船着き場におりて最初の交流拠点に行くとこの看板があるそうです、「ないものは

ない」と書いている。ですが何かというと、つまり全てがあるのかというとそうではなく

て、ないものねだりをするのではないと、あるものの中から考えていくということが町長

さんのポリシーだというふうに伺っております。

それから、徳島県の神山町です。これは余りにも有名で、大南信也さんという方が中心

にグリーンバレーというものをつくって引っ張っているということであります。大南さん

の御講演を聞いて、その後ちょっと質問させていただいたことがありますけれども、大南

さん一人で頑張っているのではなくて、私は夜酒が飲めないと、夜の大南がいるし、昼の

大南がいるし、いろんな大南がいるんだと、その中でチームでやっていると。もう一つ印

象的だったのは、グリーンバレーというのは要するに何も地域から尊敬されるNPOでな

くていいんだ、地域の中にないよりはあったほうがいいねというくらいのつもりでやって

いますと。ですから、難しいことを考えないで、おもしろいことがあったらまずやってみ

ようやということをキーワードとしてやっておりますということが非常に印象に残ってお

ります。

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これは藻谷さんが使っていいよということで、資料をいただいておりまして、これは先

生方も御承知だと思いますけれども、こういう高品質の商品化で外貨獲得しなさいとか、

それから地域内でぐるっと回す、それからエネルギーを地域で地産地消していくというよ

うな考え方が示されておりまして、これは大きな意味では私も賛同しますし、多分先生方

のかなりの方も賛同していただけるのではないかと思います。特に大事なのがここですよ

ね、お金を地域で回していくということはすごく必要なことだろうと思います。

それから、ふるさと納税についてもあえて踏み込みたいと思います。岩手県でもいろん

な議論があると聞いております。これは、毎日新聞と岩手日報の電子版、6月 14日のもの

と 15 日のものを挙げておりまして、岩手日報が右側にありまして、ふえましたと、23 億

円ですという話がありましたけれども、いや、全国ベースではそんなものじゃありません

よということで、宮崎県都城市では 42億円も1市で稼いでいるのですよと。これが本当に

いいのかどうかということは、当然やり方によって議論があると思います。

こういう形でランクを示しておりますけれども、私が昔から着目している宮崎県綾町と

いう町があります。綾町というのは、宮崎県と熊本県の山の中の町でありまして、森しか

ない。昔照葉樹林の町、環境都市だということを言っていまして、そこで綾町が今どうい

うことをやっているかというと、ソラシドエアで行く綾町ツアーの旅ということをやって

いる。つまり綾町は綾町の中で育った豚、それからいろんな農産物をテストマーケティン

グを兼ねてふるさと納税の中で出していき、ファンをつかまえ、そのファンの中の高額納

税者についてはこういう形でクーポン券といいますか、飛行機代も出して綾町に来ていた

だく、綾町に来るコアなファンをつくっているという戦略がここでは見えるだろうと思い

ます。

何を申し上げたいかというと、岩手県も大規模ではなくて小さな地域で地場産品を扱っ

ている企業が多くございます。そういうような地域の企業の産品を自治体が連携して、テ

ストマーケティングを兼ねてふるさと納税に出して、コアなファンをつかまえる、そうい

うことはぜひ大事なことではないかと考えておりまして、そういう意味でふるさと納税も

考えるべきものになっているのではないかと思います。綾町は 2015 年度、13 億 8,000 万

円稼いでいるというようなデータが出ておりました。

最近では、ちょうどけさ毎日新聞の電子版を見ていましたら、企業版のふるさと納税を

行うと出ていまして、岩手日報をその後見ていたら遠野市がこの中に入って実施するとい

うようなことが出ておりました。

ここから、先ほど委員長先生からお話をいただいた地方創生とCOC+ということに入

りたいと思います。このスライドは文部科学省の資料で、平成 24年に大学改革プランとい

うのが出ておりまして、そのときに文部科学省がこういう現況を分析して、目指すべき大

学像というのを挙げております。これは端的に申し上げると、赤が地域で頑張る大学、黒

が世界に打って出る大学ということで、文部科学省も大学を差別化していきましょうとい

うことで出てきた最初のペーパーだというふうに思います。大学改革プランというもので

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あります。

これを受けまして、この中で一つは地域再生の核となる大学というものを国は期待をし

ているというところが位置づけられておりまして、これがCOC事業という形で展開をし

ていきます。翌年にCOC事業として公募がありまして、岩手大学もいわて協創人材育成

+地元定着プロジェクト、これを岩手県盛岡市と連携をいたしまして提案をさせていただ

き、採択をいただきました。このときの考え方は何かというと、戻りますけれども、地域

再生の核となる大学ではありますけれども、学生がしっかり学び、みずからの人生と社会

の未来を主体的に切り開く能力を持つ大学ということで、地域と連携して、地域で頑張り

抜く学生をつくりなさいという教育プログラムの改編がメーンでありました。ですから、

スライドで見ていただくとおり、岩手大学は震災地域の大学として震災復興に対する学習

を行い、地域に関する入門的な科目を行い、地域をテーマとする学び、それからインター

ンシップというようなことを展開していくということで提案をさせていただきました。

具体的には、大学のカリキュラムの中では1年次、2年次、3年次、4年次という形で、

多段階的にこのような形で学生を育成していくということを進めてまいりました。これは

5年間のプロジェクトで、今はちょうど4年目に入ったところであります。最初の地域に

入り、地域を理解するという中で、被災地域学修というものを平成 26年度から本格的に実

施しております。

この写真のような形で実施しておりまして、学生の声というものがスライドに出ており

ます。読み上げますと、「昨日までの私は甘い考えでした。どこか他人事のように思ってし

まいました。私が知ろうとしなかっただけで、現地の方々は毎日さまざまな決断や選択を

迫られながら多くの課題と向き合っていらっしゃいます。大槌町の課題のほんの一部を自

分のこととして考えたことで、復興の難しさを知るとともに、私ができることがあるのな

らば力になりたいと心の底から思いました」ということで、今どきの学生はしっかりした

文章を書くと思っていただきたいと思います。このような気づきが今の 18 歳、19 歳の学

生の青い感性の中に訴えられるということだと思います。もう一人の学生もこのようなこ

とを書いています。

これが平成 25年度、平成 26年度に実施してきましたところ、平成 27年度になりまして

国全体がまち・ひと・しごとと、地方創生という形で大きく舵を切り、文部科学省のCO

Cもまち・ひと・しごと創生戦略の中に入れ込まれ、地元学生の定着促進というものをC

OCから発展させる形でやりなさいということを提案されてきたということでありまして、

地域の大学を標榜する岩手大学としてはぜひ手を挙げたいということで進めてきたという

ものであります。

地方大学を活用した雇用創出・若者定着については、大学だけではやはりなかなか限界

があるということで、内閣府のほうでは総務省と文部科学省が連携をいたしまして、受け

皿となる自治体側、地域側にもそれのメニューを用意をして、いろんな形で支援をします

という制度をつくっていただいております。

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それから、奨学金を活用した大学生の地方定着の促進というものもこのようなモデルプ

ランというものを国は示しています。

これが具体的な地方公共団体と地方大学の連携による雇用創出・若者定着の促進であり

ますけれども、特に私どもが今着目しているのが取り組み2、取り組み3のところであり

まして、地元企業と学生のマッチングにより、地元企業とのかかわりの強化ということで、

多様なインターンシップをこの中で展開していきたいというふうに考えております。当然

岩手大学も岩手県立大学も盛岡大学、富士大学も一関工業高等専門学校も、後から申し上

げますけれども、プロジェクトに入っておりますが、ほとんどが北上川沿線でありまして、

これが例えば久慈市だとか二戸市だとか、それから大船渡市だとか、学生に行けと言って

も学生が行く交通手段の問題、それから行ったときに、では1日で帰ってくればいいのか、

そうではないでしょうと、1週間ぐらい行ったほうがいいよねと、そうしたときに宿泊先

の問題、そういう問題があります。

一方で、岩手大学の学生のおおむね半分は、今日本育英会とは言いませんけれども、奨

学金を借りておりまして、それが無利子か有利子かということだけで借金には変わりない

わけで、学生も借金をこれ以上ふやしたくないという意向があります。そうすると、興味

のある主体が例えば久慈市にあったとすると、なかなか行きづらいという問題があります。

そういうものも久慈市と連携をして、我々や久慈市が受け皿となっていけるような方策が

できないかということをこれから考えていこうと思います。

実際に岩泉町というところは、岩泉町がしっかりと受けて、地域の企業を巻き込んで、

岩泉地域型のインターンシップの受け皿をつくってくれております。来た学生の宿泊費と

かは全部町が補助しますという形をやっていただいております。こういうものを先導モデ

ルとして地域が受け皿をしっかりとつくっていくことが必要だろうと思います。

それから、取り組み3のところで地方大学、地方公共団体及び地元企業の共同研究によ

る産業振興ということも非常に大事でありまして、大学との共同研究はどうしても産業振

興につながらないという非常に厳しい御指摘もありますけれども、やはりもう一歩進んで、

実用化というものも視野に入れたような研究を一緒にやっていくということが必要になっ

てくるだろうと思います。

このスライドが地(知)の拠点大学による地方創生推進事業の全体のフローでありまし

て、ここに書いておりますのは文部科学省の補助金交付要綱から引っ張ってきたものであ

ります。狙いは、あくまでも私の理解は、地方創生の中心となる人の地方への、つまり岩

手県への集積を図りなさい、COCの成果をもとに発展してやっていきなさいということ

で、事業規模がスライドのこのような数字です。これが高いか低いかはありますけれども、

ちょっとけしからんなと思ったのは4年目から減らしていきますよということで、これは

つまり地域がしっかりと自立化していきなさい、国の補助事業にずっと頼り切るのではな

くて、地域と連携してやりなさいと、そのために総務省が交付税措置をしたりいろんな支

援をしていますよと、そういうものを活用しなさいということだというふうに理解してお

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ります。

COCからCOC+ということで、1大学が自治体と連携して、このときには岩手大学

が岩手県、盛岡市と連携して提案をさせていただきました。しかし今はそうではなくて、

岩手大学が岩手県立大学や盛岡大学、富士大学、一関高専、さらには資料の一番最後のペ

ージに全体のプロジェクトの絵がついておりますけれども、首都圏の杏林大学という大学

も入れ込みまして、岩手県立大学の二つの短期大学は一つの高等教育機関で分けますので、

8高等教育機関が地域の産学官と連携をしてやっていくということで、文部科学省の絵か

らいえば、こういう変なおじさんが私の立場であるというふうに私は勝手に理解しており

ます。

このスライドは同じようなことを言っておりますので、省略させていただきます。これ

が今入っているメンバーになります。

私どもは、ことしの3月7日にキックオフフォーラムを行いました。ほかの地域を見て

いますと、大半が偉い方といいますか、岩手県知事さんであったり首長さんであったり、

経済界のドンであったり大学の学長が登壇をいたしまして、学生を地域に就職すべきであ

るというような話をしますけれども、岩手県の場合には、特に若いスタッフの提案で、こ

れは学生が主役ですよねと、学長も経済産業界のドンも、それから知事も主役ではなくて、

学生が地域にどうしたら入っていく、どう悩みを越えて地域に入っていっているのかとい

うことをテーマとして議論すべきであるということで、10名の学生に登壇をいただきまし

た。首都圏の学生も来ていただいて、議論をさせていただいたということであります。

最後に残り 10分ほどになりましたので、そろそろまとめになります。学生の地元定着と

雇用創出という二つの大きな命題を解決していくためには、まず一つは学生が地方に、地

域に飛び込んでいく、その飛び込む学生も寄らば大樹の企業ではなくて、でき得ればやは

り小さな企業で、一緒になって会社を大きくしていく、または新しいビジネスに取り組ん

でいく、そういう会社に学生が入っていったり、場合によっては学生が一緒になって起業

するということもあり得るかもしれませんけれども、そういうことだと思うのです。その

ために、地域を理解し行動する学生を育成する必要があるということで、私はキーワード

はインターンシップとPBLというふうに挙げております。

ただ、インターンシップというのもいろんな誤解がありまして、インターンシップは企

業からいけば学生を囲い込む手段であるというふうに誤解がありますけれども、決してそ

ういうことではありません。インターンシップとは、学生が一定期間企業などの中で研修

生として働き、自分の将来に関連する就業体験をする、それは自分が将来地域でこのよう

な業種でやっていけるかどうかを自分でトライ・アンド・エラーの中で調べていくという

ことなわけですので、当然1回ではなくて、できれば複数回あったほうがいいわけです。

最初は浅くやって、それで次に深く入っていって、本当にやっていけるかどうか、そうす

ることによって恐らく学生と企業経営者、企業との折り合いがついて、一番最初に見てい

ただいた雇用で一番やめるところのミスマッチということが多分防げるのだろうと思いま

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す。

私どもとしては、この事業の中で短期から長期までと言っていますけれども、今学生は

3年生のそろそろ就職活動しなければいけないというときに箔をつけるといいますか、イ

ンターンシップをやったらどうか聞かれますので、そのためにちょいと受けるというパタ

ーンになっているわけです。それを変えていかなければならない。地域にこんなおもしろ

い仕事がある、企業があるということを学生の中に訴えかけていって、学生がそれを自分

のものとして考えて入っていくということでありますので、短期から長期までいろんな形

で、地域をちょいとのぞくものから、のぞいたら意外とおもしろいよね、じゃあもうちょ

っと入ってみようかというような動きをしていかなければならない。それで、当然見学型

から参加型、実践型まで多様なインターンシップがあることが望ましいわけで、残念なが

ら見学型から参加の参ぐらいまでで今とどまっている状況なわけです。それを実践型まで

持っていくということがこれから非常に重要な活動になって来るであろうと思います。

バスツアー、ジョブシャドウと書きましたけれども、これは何をやっているかというと、

ちょい見学のちょいのところを私どもはバスツアーでやっております。自治体と連携して、

自治体からバス出していただいて、そこに学生を詰め込んで、自治体がアレンジメントし

た地域のおもしろいと思われる企業を経験したり、公務員志望の学生も多いものですから、

最後に市役所の中の仕事も体験してもらい、そこで大学OBで市役所に入っているメンバ

ーと意見交換をしたりということをやっております。

ジョブシャドウは2日から3日で、御承知のとおり経営者の後ろにくっついて、この人

何やっているのと確かめるものです。それはどちらかというと短期で見学的に近いところ

でありまして、これからやらなければいけないのは参加型、実践型ということになるわけ

です。今インターンシップでやられるのは企業がやるべきだよねという議論があるのです

けれども、残念ながら例えば岩手県の学生もそうですが、首都圏の学生は、岩手県の企業

が長野県とか、熊本県とか宮崎県とか首都圏の近郊の企業に比べてよほど魅力がなければ、

わざわざ地方創生型インターンシップには来ません。でも、岩手県の魅力って何かと、そ

の企業が地域の中で支えられて頑張っているということなわけです。先ほど岩泉町の先導

モデルと申し上げましたが、岩泉町はそれを地域で頑張っている企業を集めて、そこでイ

ンターンシップのカリキュラムをつくっています。例えば林業が好きな学生であれば、森

林組合から製材所から木材加工業者まで見てもらう、そうすることによって岩泉町の地域

の強み、弱みがわかって、自分は強みを伸ばすところに入るのか、弱みを上げるところに

入るのかという判断をしてもらう、そういうことをやっていくのが、岩手県が目指すべき

インターンシップの一つのあり方ではないかというふうに思っております。

それから、これからもう一つ出てくるのがコープ教育に代表される有償型のインターン

シップで、ここも日本では議論があります。インターンシップというのはこういうことな

ので、お金はそこに絡むべきではないという議論があります。ただ、先ほど申し上げまし

たとおり、学生が乏しい経費の中で久慈市とか大船渡市に行って、1週間、2週間泊まっ

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てやりますといったときに宿泊費がかかります、交通費がかかります、それを誰が面倒見

るのかということを学生に全て負わせては、それはやはり地域として余りにもむごいので

はないかということはぜひ考えていただきたいなと思います。

それからもう一つがPBLということで、これはプロジェクト・ベースト・ラーニング

とか、プログラム・ベースト・ラーニングというふうに訳されますけれども、日本語で言

えば課題発見・課題解決型学習ということでありまして、インターンシップで見てきたこ

との例えば実践型インターンシップであり、課題解決型インターンシップというのはまさ

にこのPBLにつながってくるような話になります。地域で見ていただきながら、少数の

グループがディスカッションして、いろんなことを考えて気づきをするということで、岩

手大学としても地域課題解決プログラム、Let’s Beginプロジェクトという形

で、成果、成果外のところで学生を支援しております。これをもう少し充実しなければな

らないと思います。

実際に岩手大学が協定を結んで、私のところに来ていた八幡平市の共同研究員がコーデ

ィネートしてやってくれた八幡平市における既存運動施設の有効活用の検討ということで、

このスライドは教育学研究科の坂下さんという学生が発表した資料をちょっとだけ持って

きました。ここの中で、彼女は八幡平市というのは観光、スポーツということがキーワー

ドだということで、いこいの村岩手の活用ということに入っていって、最終的には高齢者

に注目するような活動をしていくべきではないかということを提案しているわけです。こ

の坂下さんが今どうなったか、私は情報を持っていないので、本当は彼女がこれで八幡平

市周辺に入っていただいて、この活動をさらに発展していただければいいわけであります

けれども、残念ながら往々にしてまだそうなっていないというような状況であります。で

も、こういうことをトライ・アンド・エラーで続けていく必要があるだろうと思います。

私は、学生に対してはこのようなことを申し上げています。若者がやはり地域を元気に

するんだよねと。岩手県では資源がいっぱいと言っていいのか、私は多様なという言葉が

すごく大事で、多様性という言葉をさっき言いました。岩手県は多様な資源があると。例

えば第1次産業の農林畜産をとっても、これほどバランスがとれた地域はありません。よ

く言うのは、新潟県はお米で有名だけれども、あそこは米しかとれないのだよ。あの巨大

な平野を見たら、お米をとったほうがいいよねといって米しかつくらない。でも、岩手県

はお米から畜産から林業から、畜産も牛、鶏、豚、全てそろっておりまして、多様な資源

があります。

それから、三陸の水産もあります。三陸の水産の問題は、大きな湾がなくて、一定の魚

種が一定の割合でとれないという課題があるわけです。では、量を追うのではなくて質を

追うというのが岩手県の本来の産業にならねばいけないだろうと思います。

それをやるためには、なりわいという、私はこの言葉が好きでありまして、いっぱいお

金を稼ぐということではなくて、ほどほどのお金を稼ぎつつ、地域の中でワークライフバ

ランスを保ちつつやっていくという産業ビジネスというのが地域の中でできないかという

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ふうに思っております。そのためにはやはり誠心誠意その資源を磨かなければならない、

ダイヤモンドの原石も磨かなければ単なる石ころである。磨くということは、当然におい

て他との違いを見きわめて、そこの価値を見出す。ですから、岩手県の中にずっといれば

原石がダイヤモンドか石ころかわからないわけで、その違いを見出す作業というものをど

こかでさせなければならないということになるわけです。それは、首都圏に行ったり海外

に行ったりということになるかもしれません。他との差別化をするということになります。

私は、そのためのプレーヤーが圧倒的に岩手県は不足しているのではないかというふう

に思っています。ただ、岩手大学の学生全てにこのプレーヤーになれとはとても言えるわ

けではありません。だから、いつも言うのは、マスコミ業界用語で、広告業界ですけれど

も、スキームの3%というような言葉がありまして、絶えず先導的にやるのは3%の人た

ちで、そこの人たちに着目して、その行動がどう変わっていくかを見れば、残る 97%がど

う動いていくかが見えてくるというような議論があります。ですから、この3%という若

者に着目して動いていく必要があるだろうと。

もう一つ、学生諸君に対しては膨大な情報を分析して地域の資源と結びつける力を持つ

若者、それは大学で学ぶべきであって、大学はただ単に覚えるということではなく、知識

を体系化した、それを学問といいますけれども、学問というものと人間力とが合わせて動

くと、それが私は知識ではなくて知恵ということに変わっていくのだろうというふうに思

っております。

私どもは今こういう事業をしております。これは岩手県から委託をいただきまして、起

業化人材育成道場。ただ、これはすぐ学生でベンチャーが起こるというものではありませ

んので、新しい分野に飛び込んでいく学生をつくっていくということであります。これは、

お手元にパンフレットをつけておりますので、そちらのほうを後で見ていただければと思

います。あくまでも主体になって、正課外として、先ほど言ったスキームの3%をどう鍛

えるかということに今注力をして、いろんな取り組みをしております。これと同じパンフ

レットがそちらにありますけれども、そのために赤木というちょっと変わった、首都圏で

農林水産のベンチャーをやっていたスタッフを特任教員として来ていただいて、彼に道場

主になっていただいて、このような方々、少し地域で頑張っている若者ですけれども、そ

ういう方々と学生をまじり合わせることによって新たな発想が出てこないかということを

期待して、そういう取り組みをしていこうと思います。

それからもう一つ、つまり地域にずっといると石ころからダイヤモンドの原石がわから

ないと言いましたけれども、今岩手大学としてはグローカル人材の育成に取り組みたいと

考えています。まだ取り組むというところまでいっていませんが、取り組みたいというの

で、学長自身も必死になって動こうとしております。これは何かというと、先ほど言った

岩手県のよさというものを外から俯瞰をしてみるということが必要なわけで、そのために

学生時代に外に出て行く学生をつくって、岩手県のよさと外との比較をしながら検証して、

岩手県の中で頑張る、または岩手県の資源を外へ売ると、そういう人材をつくっていく必

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要があるだろうというふうに思って、活動しようと思っています。

ですから、ここにあるように人材育成というのはスライドにいろいろ書いていまして、

農林水産・環境、ことしも夏休みに1人学生が行きますけれども、それは将来農業協同組

合関係の仕事をしたいと、そのためにはTPPが問題であるということはわかっていると、

本当にTPPが、どこが問題なのかよくわからんと、大学などで勉強するけれども、リア

ルの中でわからない。それで、彼はこのプロジェクトを使って中国と台湾に行って、1カ

月半ほどですけれども、どのような動きをしているのか見てまいりました。それを自分が

将来就職するであろう農協か農協関連のところに生かしていきたいと。そのような学生が

これから出てくることを我々は期待しています。

同じことは当然観光でも言えるわけで、我々が岩手県の中にいて、岩手県の常識で外国

人に来てほしいといってもなかなか多分来てくれない。それは、外国人がどのような文化

であり、どのような背景になって、来るかどうかということを見ないと、やはり理解しな

いと、岩手県の尺度でもって来てほしいといっても来ない。例えばそれは昨年度、岩手経

済同友会が経済戦略会議をしまして、そこに日本航空の大西会長が来ておっしゃっていま

したけれども、外国人といっても多種多様である、中国人を狙うのか、台湾人なのか、東

南アジア、ビルマ、タイなのか、欧米、しかもオーストラリアなのかヨーロッパなのかア

メリカなのか、それで求めるものが違う。食を求めるものもあれば、買い物を求めるもの

もある、文化を求めるものもある。期間も違う、例えばオーストラリア人は最低でも2週

間ぐらいいる、そこの間にどれだけのプログラムをちゃんと用意して提供できるか、それ

は地域力ですよと問われている。そういうことを用意する人材をつくるためにも、若者が

そういうところを実践して、文化の違いを肌で感じてそれを生かしていくということがこ

れから必要ではないかと考えております。

これはお手元の資料には入れておりませんけれども、私自身の決意表明も踏まえてこの

ようなものをいつも出しております。これは、COC+というのは文部科学省からいけば

ここです。参加大学、つまり地元大学の学生の地元定着だけなわけです。今おわかりのと

おり、地元で育った学生が地元に入って地元に就職する、それは本当の意味で原石をうま

く見分けられるかどうかわからないと。本当に必要なのは、COC+アルファというふう

にいっていますけれども、一遍外へ行った人間が戻ってくる仕組みをつくる、また外の人

間が岩手県に入って活躍する場をつくると、それがなければなかなか難しいだろうと思い

ます。

これが最後になりますけれども、フォアキャスティング・シンキングとバックキャステ

ィング・シンキングという言葉があるというふうに聞いておりまして、多分先生方も多く

の方は御存じだと思います。というのは、フォアキャスティング・シンキングというのは、

これまでの延長線上から将来を見きわめていく施策、計画づくりなわけです。ところが、

バックキャスティング・シンキングというのはそうではなくて、私が 2000年にちょうどス

ウェーデン行ったときに、スウェーデン政府が今私どもはバックキャスティング・シンキ

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ングで考えています、それは何かというと環境問題ですと。将来これだけのCO2を減ら

さなければいけない、今のフォアキャスティングでいけば絶対出てこない。それは、バッ

クキャスティングでこれだけ減らさなければいけない、そこから分析をしていきますと。

フォアキャストとバックキャストの交わるところをどのようにつくっていくかということ

で、そのためには例えば今まであっているエネルギーというものを石油から木材とか木質

エネルギーに変えていきますと、どれだけ変えればいいかというのは計算すれば出てきま

す。それを落とし込んでいきます。それがこのような線になるのか、真っすぐ伸びていく

のか、なだらかになっていくのか、それは計算していけば出てきますので、その他の施策

をそういう形で打っていきますというようなお話でありました。

ですから、政治家の先生方にぜひお願いしたいのは、私も行政に長いこといますけれど

も、基本的には行政はフォアキャスティング・シンキングが得意なわけです。これまでの

知見から伸ばしていくことができる。でも、今の時代はそうではなくて、先ほど見ていた

だいたとおり多様性の中で、どこに落としどころがあるのかわからない。そうすると、岩

手県の 20年後、30年後、50年後はこうあるべきだという議論からスタートしてもいいの

ではないかと。

例えば神山町の大南さんはこう言っていました。いろいろやっていくと自分たちの町で

子供の数がわかってくるんだと。そうすると、今は1学年2クラス確保できているけれど

も、20年後、30年後には1学年1クラスも確保できなくて、複式学級しなければいけない

かもしれないと。でも、それは計算すると出てくるんだよと。そうすると、今から何世帯

を神山町に誘致すれば複式学級にしなくて済むかどうかわかると、そうしたらその施策を

打てばいいんだと。だからそこに特化して、若い子供を持っている、仕事を持っていると

ころに着目して引っ張り込むという政策を打っています。それは町と連携しているという

ことが見えてくるというふうにおっしゃっていました。多分それがバックキャスティング

の手法だと思います。

ただ、先ほど出ていました元気な地域というのは、見ていただいたとおりほとんどが平

成の大合併で合併しなかった。合併しても1万四、五千人というまちで、ある面では小回

りがきく地域だと思います。それが例えば市町村では小回りのきく地域もありますけれど

も、では岩手県全体できくのかどうかというのは非常に難しい問題もあると思います。で

すから、それはやはり県が引っ張るという考え方もあるのかもしれませんけれども、私と

しては地域の多様性を県が支援をしていくという政策もあっていいのではないかというふ

うに個人的には思っております。私としては、あくまでも若者が活躍する動きには。

ふるさといわても、岩手県で活躍するだけではなくて、岩手県を遠くに思いながら岩手

県のために頑張る、外国で頑張る学生も当然入っているわけであります。それは本学の大

先輩であります宮澤賢治のまさに思想につづるものだというふうに我々は思って、このC

OC+事業に取り組んでいるところであります。

ちょっと長くなりましたが、以上で私の発表を終わらせていただきます。どうも御清聴

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いただきましてありがとうございました。

〔拍手〕

○佐々木朋和委員長 大変貴重なお話、ありがとうございました。

これより質疑、意見交換を行いたいと思います。ただいまお話がありましたことに関し

まして、質疑、御意見がありましたらお願いいたします。

〇福井せいじ委員 ありがとうございました。自分の話もすると、僕も実は大学は東京都

で、ずっと東京都の企業に入って、親からは帰ってこなくてもいいと言われましたが、あ

る日突然帰ってこいと言われて帰ってきて、自分の商売を継いだのですけれども、帰って

きてよかったなと思うのは、実は地場企業に非常に多くのことを学ばせていただける先輩

経営者がいたということが僕は自分が今ここに存在している根拠だと思っているのです。

今先生の側から学生の育成についてはさまざまなお話を伺いました。その中で起業を目

指していくことも必要だと言ったのですけれども、私は地場にとどまる一つのキーポイン

トとしては、地場企業の経営者の育成というのも非常に大切ではないかなと思うのです。

先ほど職種を選ぶよりは、自分の人生のワークライフバランスとか、あるいは地場で生き

ていく、地域で生きていくためには自分を受け入れてくれるような社風であるとか、そう

いったものが私は必要なのかなと思っているのですけれども、そういった点からのアプロ

ーチ、つまり地場の企業の経営者の育成とか、あるいは受け入れるための受け入れる企業

の育成についてはどのように取り組むべきかということで、僕らとしてはそっちもやって

いかなければいけないなと思うのですけれども、何かアドバイスがあればお聞かせいただ

きたいのですけれども。

○小野寺純治講師 ありがとうございます。非常に大きな問題で、先ほどミスマッチとい

うのは学生の意識の問題と経営者側の意識の問題、それがうまく合わないと育たないし、

学生が地域の有為な経営者を知らないという問題もありますし、名前だけ出ている企業は

必ずしもいい経営をしているかどうかというのはよくわからないという問題がある、そこ

にミスマッチがあるだろうと思っていました。

今このCOC+では経済団体も入っていただいて、そこはこれから取り組むことになる

のだろうと思いますが、一つだけ。実は岩手県中小企業家同友会という組織がありまして、

ここから相談がありまして、やはり中小企業家同友会というのは今入っていらっしゃる会

員の方々は革新的な企業もありますけれども、結構昔からの職種、業態をやっている企業

があって、将来どうやっていくかというふうに悩んで勉強されております。その中で、エ

ネルギーというものをキーワードにやっていこうかという議論が出ております。そうなっ

てきたときに、大変失礼な言い方をしますけれども、その企業を見たときに必ずしも専門

の人材がいるとは見えない。経営者が今勉強しているわけですけれども、そうするとそこ

に例えばそれに近い学生が入っていって、経営者の方と意見を戦わす。

今中小企業家同友会はドイツとかオーストリアに行って、先進地域で勉強されているの

です。先ほど言った、例えばグローカル人材育成などに積極的に支援をしていただいて、

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そういうことを思う学生がそっちへ行って、経営者は忙しいので1週間ぐらいで戻ってき

ますけれども、1カ月半とか2カ月とか、そこでしっかり勉強して戻ってきて、それで経

営者の方に情報提供し、場合によっては両方がうまく理解し合えば一緒になって新しいビ

ジネスをやっていくということもあり得るのだろうと、そういう夢を描いて、そこからや

っていこうと。それが一つできれば、中小企業家同友会だけではなくて多くのところにお

話ができるだろうと思います。

いずれ商工会議所ともこの事業を提案するときにお話をさせていただいて、私は例えば

なかなか厳しい産業としては、サービス業の中の昔からある呉服店であったり洋品店であ

ったり、和風の旅館であったりといいますか、ホテル、旅館であったり、そういうところ

はやはり今のグローバリゼーションの中でなかなか厳しい経営になっている。ですから、

そういう経営者の方がもし意識があれば、学生とディスカッションすることで新しい経営

形態が見えてくる、そういうことでインターンシップとしてそういうことが活用できない

か。ただ、そこには当然経営者の方が、例えば若い経営者の方であればお父さん、お母さ

ん、先代の経営者の方の御理解をいただかなければいけないわけですけれども、そういう

ことが地域の中でしっかりと担保できるかどうかというのがこれからの課題になってくる

だろうと思います。

私としては、今申し上げたとおり、まず一つでも二つでも実例を見せて、そこから経営

者の方の意識改革を図っていくということが必要ではないかなと思って、大学側からそう

いうアプローチをしていこうと思っておりました。

〇福井せいじ委員 ありがとうございました。実は僕も中小企業団体中央会と同友会のほ

うには入って、つくる会とか、経営計画つくるああいうところの経験したのですけれども、

経営者としてやっぱりそういったところに行って勉強もしたいと思いますし、さまざま学

びたい、そしてまたさらに学生と交流したいという、そういう機会がなかなかないという

のは残念だなと思いますし、あと経営者として勉強したいときに勉強するための制度がな

かなかない。行政がつくった勉強会に行くのはいいのですけれども、いっぱいありますよ

ね、同友会もそうですし、あるいはさまざまな勉強会があるのですけれども、そこに参加

するための補助金というのはなかなか出てこないというのも一つですし、さらに学生との

接点というのは私たちが提出する会社の要覧くらいしかないのですけれども、何か具体的

にインターンシップのほかにそういった出会いの場というのはあるのですか。

○小野寺純治講師 まず、その前に学生がどういう意識か先ほど見ていただきましたけれ

ども、あれは一つの意識でありまして、もう一つは例えば福井先生のお子様も含めていろ

いろと多分お考えだと思うのですけれども、岩手大学に入ったときに、では中小企業に入

れたいかと思うと、多分 100人の親御さんがいれば、100人の親御さんのうち 90人以上は

まず公務員か、大企業かというふうな発想になっているのだろうというふうに思います。

そこの意識で、それで学生もそれを引きずったまま入ってきますので、先ほど見ていただ

いたような概念的な動きにはなっていますけれども、必ずしもあれが本当の意味で行動に

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つながっているかというとつながらないのです。ですから、今学生は何かというと単位に

なれば出てくるけれども、単位にならなければ出てこない。でも、そこの中でちょっとだ

け思いを持っている先導的な学生からまず変えていかなければ、大半の学生の意識は変わ

らないと思っていました。私も地域連携の部門におりまして、学生をその中に入れようと

いろんなことをやってきましたけれども、なかなか学生は入ってきません。それはいろん

な忙しさがありまして、サークルの忙しさであったり、ですからそこの学生のサークルと

かいろんなものを踏まえて、プラスアルファの行動を起こす、そのためには一つは大学と

しての単位という議論があるわけですけれども、でもそれだけで縛りつけるような議論を

していいのかどうかという議論があって、今申し上げましたとおり、その中の少ない学生

かもしれませんが、その学生をまず集めて、コアとして変えていくという作戦で今考えて

いるというところです。

〇福井せいじ委員 今ちょっと保護者という言葉が出てきたのですけれども、保護者に問

題もあると、ある意味で寄らば大樹の陰は一番保護者にあるのかもしれませんけれども、

わかりました、ありがとうございました。

○小野寺純治講師 学生が就職相談するときに誰に相談するかというと、保護者というの

が結構な割合あるのですよね。親御さんに相談されると。

〇福井せいじ委員 そう今変わってきているということなのですね。

○小野寺純治講師 ええ、変わりつつあります。変わりつつありますけれども、例えばそ

れは首都圏のほうの意識の高い学生であったり意識のある保護者だといいのですけれども、

盛岡市だったら多分意識は高いと思いますけれども、それが例えば私の出身の金ケ崎町の

田舎の農家の子供で大学へ行ったらば、まあとりあえず県庁に入ったらどうか、市役所に

入ったらどうかというのは親御さんがまず言いますよね。

〇福井せいじ委員 いいですか、最後に一つ。娘が今実は大学4年生で、僕は余り言わな

いのですけれども、ただ僕思うのは自己実現という考え、概念というのもあると思うので

す、学生というのは。そういった中で、やっぱり自己実現が可能かどうかという環境が岩

手県にあるかというと、私は必ずしもそこはないので、余り僕は帰ってこいとも、外に行

けとも言わないのですけれども、そういう教育というのは難しいですよね。済みませんで

した、ありがとうございました。やっぱり家庭にも入っていきたいですよね。

○小野寺純治講師 そうですね、教育というものは大学だったり学校だけでやるものでは

なくて、地域全体が取り組んでいくということが多分必要なのだろうと私は感じておりま

す。いろんなところがいろんな形で、こういうのおもしろいよというふうに言わないと学

生は飛び込めないし、そういうところに飛び込んだって失敗がいっぱいあるじゃないかと、

だからやめとけ、お前は人生一度きりなのだから、それよりは安定した公務員がいいよね

というふうに流れないような、そういうもっとおもしろいというような文化をつくらない

と地域は変わっていかないのだろうと思います。

〇福井せいじ委員 壮大ですね。ありがとうございました。

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○斉藤信委員 ありがとうございました。今の学生が求める就職先というのが基本的には

安定性。今の社会を反映しているのだと思うのです。やっぱり不安定で将来見えないから

安定性を求める。だから、公務員志向というのもそこなのですよね。いつリストラされる

かわからないと思えば、それはやっぱり公務員を求めるというのはある意味でいけば必然

的な、一つの今の社会の反映ではないかと思っているのですけれども、そこで資料の 13

ページのところで就職先の不足というので、岩手県はわずか3%というので、衝撃を受け

たのだけれども、これはミスマッチがあるのではないかと思うのです。地元の中小企業は

人材を求めているのだけれども、そもそも大企業と人材確保の競争にならないのですね。

求人を求める時期も違う、規模も違う、賃金も違うからね。だから、本当に中小企業のよ

さがわかれば私は県内も選択肢になると思うのだけれども、今大体3年生から就職活動す

るわけでしょう。今すぐ卒業するのではなく、その前のところから求人を出していかない

と対応できないのだけれども、では中小企業は1年後に何人採用できるかって見通しもま

だ立ちにくいというのも事実ですよね。だからもっと県内中小企業の人材確保の戦略とい

うのが今の学生の就職のスケジュールとどうかみ合うのか、かみ合わせるのか、これが一

つ。

もう一つは、地元の中小企業の、これは全部ではないのですけれども、一部は本当に工

夫して努力して、その企業の特性を発揮して頑張っている、そういう中小企業は少なくな

いと思うのですけれども、私らの年代だからそういうふうに見えるので、若い世代にそれ

が見えるかといったらほとんどみえない。ましてやキャリア教育、インターンシップも本

当に限られますよね。いろんな選択肢があればいろんなところを見られるのだろうけれど

も、ある意味せっかく岩手大学が中心になってこういう取り組みしているのであれば、自

治体も巻き込んで、一定の県内中小企業の魅力も状況も見ることができる、体験すること

ができるというような、そういう仕組みづくりがもう一つ必要なのではないかと。結論的

には岩手県の魅力、企業の魅力、これをどれだけ発信できるか、そしてそれを市町村や県

がどれだけ支援できるかということだと思うのですけれども。だから、前にこの特別委員

会だったと思うのですけれども、広田先生から人材確保するためには岩手県から卒業した

名簿で全てにダイレクトメールを出して案内するぐらいの、専門的な人材を自治体が持た

ないとできないよと、そのぐらいの課題なのだよという話をしたことも大変私は印象的だ

ったのですけれども、これは自治体にとっても企業にとってもそういう人材確保という意

味で、これは本当に連携した力の結集が必要なのだと思うのですけれども、その点につい

て先生の御意見を。

○小野寺純治講師 ありがとうございます。

まず、中小企業と大企業の求人スケジュール、これは明確にやはり違います。ことしの

4年生で申し上げますと、3月1日から企業との面談解禁になっています。一応6月1日

からの就職活動解禁ということになっていますけれども、御承知のとおり6月1日でふた

をあけるともう半分の学生は決まっています。6月 15日で、たしか全国レベルで六十何%

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かになっているというふうに聞いておりましたけれども。ということは、要するに大企業

と中小企業のスタートが違う。もう一つは、中小企業の社員は魅力的だなといっても、大

企業の魅力に対してあらがえるほどの魅力が中小企業にあるかどうかという問題もあるわ

けです。とすると、どうするかというと、やはり新1年生、2年生の、まだ就職の前の時

点で仕事を考えるだったり地域を考えるだったり、そういうときに中小企業のおもしろさ

に触れるということを多分教育の中に入れていかなければならないと思います。

その一方で、岩手大学も例えばほかの参加大学も高等教育機関としての使命がありまし

て、御承知のとおり、例えば高度人材をつくっていく、専門人材をつくっていくというこ

とになりますと、大学の教育はある一定分野の深掘りをしていくという教育になりまして、

それが中小企業の求める人材と合うかどうかというのは、まだまだ難しさがあるだろうと

思います。そこを少しでもいいので、すぐにというのはなかなか、教育というのは国家百

年の大計につながるような話でありますので、じっくりと考えていかなければいけない。

これが先ほど申し上げたのは、3年、5年でがらっと変わるような話ではありませんと。

例えば私ども、学部の改組がことし終わりまして、来年大学院の改組をやっているわけで

す。学部の改組をやるときに、要するに4年間の学生に対するカリキュラムを全部で提示

しなければいけない、これを変えてはいけない。ですから、もう去年おととしの時点でそ

のカリキュラムつくっているわけです。それで4年間保障するわけです。そうしないと教

育の保障ができない。その一方で、これはどんどんカリキュラムを変えて、地域にある人

材をつくっていきなさいと、それはちょっと矛盾ですよね。ですから、カリキュラムの外

でもやらなければいけない、いろんなところでやらねばいけない。だから、大学だけの話

ではなくて、地域全体がやっていかなければならないということになるだろうと思います。

広田先生には、斉藤先生がおっしゃったようなところを前にちらっと聞いたことがあり

まして、確かに例えば中小企業が難しければ、中小企業が多くの専門人材を雇うというと

ころにはならないと、そうすると専門人材を教育するような新しい組織体が必要ではない

かというような議論もしております。ただ、岩手県の中でそれができるかどうかというの

は、これは大学だけではなくていろんなところを巻き込みながら議論していく必要がある

だろうと。

私も、例えばデザイナーだとかクリエーターだとか、そういう専門人材、マーケターだ

とか、それは1社で抱えられる話ではなくて、多分地域全体で抱えないと地域の底上げに

はならない。デザイナーとかクリエーターとか、プランナーとかマーケターとか、そうい

う方々はやっぱり二流とか三流ではなくて、できれば一流の方が岩手県で活躍できていく、

それが世界に伍して地域のいいものを売っていくということになるのだろうと思います。

済みません、お答えになっていないかもしれませんが。

○斉藤信委員 ありがとうございました。

それでもう一つ教えてほしいのは、今の岩手大学の場合に県内出身者がどのぐらい、多

分5割ぐらいではないかと思うのだけれども、それが一つあると思うのですけれども。

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先ほど先生、奨学金を受けているのが約5割、大体全国もそうなのですね。学生の話を

聞いて本当にびっくりしているのは、バイト漬けなのですよ。だから、勉強する暇もない

というか、それで就職活動でしょう、3年生は。我々の世代は4年生になって就職活動で

したよ。それでも卒業研究とか卒業論文とぶつかるので、問題だという議論をしていた。

今3年生からでしょう。バイトで忙しくて勉強もできなくて就職活動もやらなくてはとい

う、ここは本当に解決されないと、いろんなことをやっても学生にそういう余裕が我々の

時代と比べると全然なくなっているのではないかというふうに大変私危惧しているのです

が、そういう学生の状況をどう打開して、そして自分のサイクルで本当は就職を決めれれ

ば一番いいのでしょうけれども、今もう企業のサイクルで、大企業のサイクルというか、

そこで余り余裕もなく決めざるを得ないというこの仕組みを、これは全国の仕組みですか

ら岩手県だけで何ともならないのでしょうけれども、できれば岩手県型の地元雇用創出の

仕組みみたいなものをね。

先ほど先生は2年生、3年生のときに県内中小企業の魅力に触れるというか、知るとい

う、それはすごく大変大事なポイントだと思うけれども、学生の今の生活サイクル、生活

実態、私以上に先生は詳しいと思うので、そこに触れながら、そことかみ合って、本当に

自分でやりたい仕事、就職につける、それも岩手県で就職に結びつけるという点でもう一

つだけお聞きします。

○小野寺純治講師 ありがとうございます。

まず、岩手大学における岩手県出身者の割合ですけれども、斉藤先生がおっしゃるとお

りおおむね5割前後で、正式には 45%ぐらいになりますかね。一番低いのが農学部で 25%

いきますかね、20%ちょっとぐらい、工学部で 40%ぐらい、それから人社、教育が少し高

くて、人社で 50%強、教育で6割強ぐらいというような状況になっております。これまで

問題視したのは、4割から5割の間の学生が2割から3割しか岩手県に定着しない、半分

しか定着しないというところをどう上げていくかということでやってきたわけであります。

それから、確かに例えば仕送りなども、この間の新聞記事に出ておりましたけれども、

やはり往時に比べまして大分減っているということで、学生がバイトで忙しい、それはそ

のとおりであります。岩手大学の中ではものづくりEF、ものづくりエンジニアリングフ

ァクトリーというような会社を、これは疑似ベンチャー、学生ベンチャーなのですけれど

も、つくって、一部の学生グループに対しては大学時代に習った技術でお金を稼ぐと言え

ば失礼な言い方ですが、バイトみたいなことをするということで、それは工学部、理工学

部の機械システム工学科の学生を中心につくっているわけですけれども、そこで3次元C

ADというCADシステムがあるわけで、そこのCADの基本的、初心者的なところを企

業の中で一部受けてやっていく。ですから、学生時代から専門の知識を生かしてお金を得

るということもこれから視野に入れなければいけない。

先ほどインターンシップの中で有償インターンシップというふうに申し上げたのは、ま

さにそういうことをこれから視野に入れた活動もしていく。その中で地域経営者と触れ合

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うことによって、お金だけではなくて経営というものも知り、経営者というものの魅力を

知り、それでその企業に就職後も入っていくというようなストーリー、これが多くは生ま

れないのかもしれません。それが一つでも二つでも生まれていくことがこれから望まれる

のではないかなというふうに思っています。ただ、非常にハードルは高いかなと思います。

○工藤勝子委員 先生、大変ありがとうございました。

私は遠野市の中山間地域で農業をやっています。先生が米2万円の時代に農業をやめて、

今の先生になってよかったというような話・・・。

○小野寺純治講師 よかったかどうかはわかりません。

○工藤勝子委員 選択は間違っていなかったのだろうと思います。例えば今岩手県、この

ぐらい広い農地、第1次産業、そして多種多様な作物がとれる中で、農業で頑張っている

人たちも結構いるわけです。今Iターン、Uターンを含めまして新規就農者は、岩手県に

200 人も超えるようなわけであります。そういう中において、今は個人経営からそれぞれ

集落営農なり、それをさらに法人化して経営感覚を身につけて、そしてマーケットを開い

て、そして販売力を高めていくという方向に移ってきているわけであります。今までみた

いな私たちが農業をやったように、どんぶり勘定というのですけれども、そろばんもはじ

かない、農協に系統出荷して、とにかく売り上げが出てきた分で、ああもうけたもうけた

と、ことしはよかったねと、だけれどもいろんな部分を差し引きしていくと、自分たちの

働いた労力というものが全然ゼロに近い、そういう状況なわけで農業をやってきたのです

けれども、その中で先生が岩手県の農業の関係で量から質という話をされました。私は、

岩手県はお米にしても果物にしても、畜産にしてもおいしいいいものがとれる、そういう

土壌がいっぱいある。その中で量から質、その質というものを先生がどう求めてお話しさ

れたのかお聞きしたいと思います。

○小野寺純治講師 ありがとうございます。

先ほどダイヤモンドの原石というのはもともと質はいいのだと、ただそれが本当に名実

ともに質として、昔私の姉が東京都に学生時代におったときに、江刺産のふじが三越かな、

伊勢丹かな、ガラスケースに入って売られていたそうです。それは生食としてのふじです

けれども、でもこれからは恐らく農水省の言葉で6次産業化、それからあとは経済産業省

の農商工連携、つまりそれを付加価値にするためには加工すると。いいものは当然に一番

高く売れる、生食で売る方法もありますけれども、加工していく。

例えば私何人かの教員とつき合いがあって、その中で東京海洋大学の女性教員をインタ

ビューしたときにこう言われました。彼女は水産の研究者でして、小野寺先生知っていま

すか、岩手県ではサバは1キロ 250円ぐらいですよね、でも静岡県とか宮崎県は、彼女が

指導している鹿児島県だったかのほうでは 2,500円で売っているんですよと、そこをよく

考えていただくような、つまり第1次産業の高度化というものが必要ではないでしょうか

というふうに言われました。その一方で、例えば久慈市の市場に行ったらば、マサバもゴ

マサバもあわせて1箱幾らで売っているわけです。

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ですから、そういう農業、漁業から脱皮をして、やはりいいものはいいものとして売っ

ていく。私はブランドというものの考え方は、品質がいいものが希少性があるからブラン

ドが保たれるものだと思うのです。希少性の質のいいものがどこでも手に入るのであれば、

それはブランドというものではなくて、良質なものが手に入るというふうに思っておりま

す。ですから、岩手県が目指さなければいけないのは、これからブランドというものを本

当の意味でつくっていく必要があるだろうと思います。

でも、そのブランドというのは一つのブランドで多くの金を稼げるものではなくて、付

加価値を求めていくものであると。ですから、そうすると岩手県全体として多様な資源と

言いましたのは、私がよく言うのはコレクションという言葉を使います。宝石箱ですね。

例えばサファイアもあるしルビーもある、それがみんな輝いている、だからここに来れば

ルビーもあるしサファイアもあるしダイヤモンドもある。巨大なダイヤモンドが1個あっ

て、どうだという時代ではもうないだろうと。そういうものを地域の産出力といいますか、

地域の賦存量といいますかね。それに応じた形でやっていく時代にもう入っているのでは

ないかというふうに思っております。お答えになったかどうかわかりませんけれども。

○工藤勝子委員 ありがとうございました。

大分県で一村一品運動というのをやりましたよね。ですから、岩手県でも 33市町村ある

わけで、それぞれの市町村がやはり我がまちはこれというようなものをブランド化してい

くということではないかなと思ったのですけれども、でも岩手県って割とおしとやかで、

全体的に情報発信が下手であるということになれば、私たちは岩手大学を卒業された学生

が年間1人でも2人でも農業に、結構 200人の新規就農者の中で法人化しているところに

入る人たちが多いのですけれども、入ってそういうブランドをつくるような力になってほ

しいなと願っているわけです。今のところ農学部を卒業された方で岩手県の農業に入る人

がどのくらいいるのか私もよくわかりませんけれども、情報発信の仕方だとか、今後海外

戦略というのが出てきました。結構他県のほうでは秋田県のあきたこまち等もかなり出て

いますし、青森県のリンゴとか、そういう部分で海外戦略のほうは先生はどう考えていら

っしゃるか。

○小野寺純治講師 ありがとうございます。

その前に、まず学生が一つの町に 10人も 20人も一挙にというのはやはり難しくて、久

慈市長さんともお話をしたときに1人でいいんだと、1人来てくれれば多分地域は変わる

よというふうに言われておりました。そういうちょっとおもしろい学生というか、若者を

地域がどうみんなで盛り上げていくか、みこしの上に載せていくかという取り組みが多分

必要だろうというふうに思っておりました。

それから、海外戦略ですけれども、私も大学に来たときに中国の大連市との窓口をやっ

ておりまして、2006年でしたか、大連市に行ったときに、ちょうど旧正月のときでしたけ

れども、まさに今から 40年ほど前にうちの姉が東京の銀座で見たような光景がありました。

五つ星ホテルの真ん前にふじが売っておりました。かなり高い記憶がありました。その当

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時から青森県はそういう形で、どこかの何とかという農場が出してありましたけれども、

そういうふうに動いておりまして、岩手県はそのときに、じゃあお米を出そうかという議

論をしていたというふうに記憶をしております。

私からいけば、海外戦略は量ではなく、やっぱり質で、いつも申し上げるのですけれど

も、例えば遠野市でいえば今の人口は2万 8,000人ぐらいですか。岩手県で 128万人ぐら

い、日本では1億 2,800 万人。でも、海外も合わせると 66 億人いるわけで、その海外の

66億人、遠野市の2万 8,000人、岩手県の 128万人、日本の1億 2,800万人の人口をマー

ケットに、ターゲットにするのではなくて、先ほどスキームの3%と、もっと少ないかも

しれません。そこにどうやってピンポイントで必要な情報を届けていくのか、それは多分

今議論になっているITというか、IoTという議論があって、たけた人間もやはり地域

には必要になってくるだろうと思います。

それが日本ではなかなかできておらず、話が変わりますけれども、昔ドイツ、オースト

リア、フランスを回ったことがありまして、そのときにスイスのジュラ山脈の麓の人口

2,000 人ぐらいのまちで 200 人ぐらいの会社にお邪魔したらば、まさに中山間地にあるわ

けですね、日本でいけば。そこの会社は、135人がジュラ山脈の麓にいて、残り 75人から

80人は世界 16カ国に営業拠点を置いて、つっているわけです。ジュラ山脈に置くことで、

社長は彼のオンシーズンにはビッグラビットとかノブタとかなんか、そういうものをとっ

てきて、レストランで調理してもらって振る舞っている。多分それがこれからのグローバ

ル企業の一つのあり方なのだろうというふうに思っております。

よく言われるのはGの経済、Lの経済という議論があるのです。グローバル経済、ロー

カルの経済。もう一つ、グローカルな経済というのが私はあると思うのです。それは何を

言うかというと、やはり必要とされるところにピンポイントでどう届けていくか、そのシ

ステムをどうつくるかだと思うのです。ですから、それは大量に出すということだけでは

ないはずでありまして、今南部美人の久慈浩介社長がそういう面でグローカルな取り組み

に頑張っているというふうに私は見ております。

○工藤勝子委員 ありがとうございました。

それでは、農家の人たちを今何とか支えている、私よくわからないのですけれども、農

協という組織があります。国でも農協改革をやろうとしている部分もありますけれども、

今の農業をリードしていく、それとあとやはり農家のための農協であってほしいなと願っ

ているわけでありまして、そういう海外戦略を含めてピンポイントで売るにしても、農協

のある程度指導力というのでしょうか、そういうのが非常に求められる時代になってくる

のではないかと思っていますけれども、そういう農協の今の姿を見ていて、先生のちょっ

と所感を。

○小野寺純治講師 ありがとうございます。

農業経済とかそういうものの専門家ではないので、素人的な意見になりますけれども、

先ほど申し上げました、ことしトビタテ留学JAPANというグローカル戦略の中で、農

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協関係に勤めたいという本学の農学部の学生がTPPについてどうあったらいいのかとい

うことで、大学の教員の結構多くは反対ということになるわけですけれども、それも踏ま

え、本当に論的にどうなのかということで確かめていく。そういう人材が出てきて、それ

が農協に入って変えていく。

私からいくと、いつも申し上げますけれども、大変失礼な言い方になるかもしれません

が、上意下達的なものはもうこれからはないのだろうと思うのです。大事なのは、個々の

農家が取り切れない情報をどう取ってきて伝えるかどうか、農家がどう判断するか、その

判断材料をどう与えるかという時代に変わらなければならないのだろうと思います。それ

は農協かもしれませんし、そうではなくて民間の流通業者かもしれません。それからもっ

と言うと、我々が新しくつくろうとしている地域の中でそういうコンサルティングみたい

な形で動く若者かもしれません。そういう学生、そういう若者が新しい情報を持ってきて、

そこと連携する農業経営者がうまくタイアップして一緒になってやっていく、そのときは

農業経営者も当然リスクが出てくるわけですね。リスクを取るだけの覚悟が今度は農家に

求められてくる、そういう新しい時代を迎えなければならないのだろうと思います。

農協そのものは、その中でしかるべくイノベーションの理論でいけば、旧態依然とした

物の考え方のままであれば当然滅んでいくわけですし、その中で新しい価値観を持ってく

ればまた変わっていくのだろうというふうに思っています。その価値観とは何かというと、

個々の農家が持ち得ない情報をどう提供するかというのと、もう一つはセーフティーネッ

トをどうつくるか、その二つかなというふうに思っております。

済みません、以上です。

○飯澤匡委員 きょうもちょっと常任委員会で触れたのですけれども、最近経産省の方々

のお話を聞く機会がありまして、特に強調されたのは人工知能のお話なのですよね。最近

ちらほら新聞報道とか出てきて、この間たまたま高校の先輩に当たる方が事務次官になら

れて、そのお話も聞いたのですけれども、非常に衝撃的なお話でした。ここに先生が御用

意した人工知能の代替される職業、業務というのがありますけれども、もう既に 10年、20

年後にはないのだと、5年先には、例えば私商業をやっていますけれども、無人運転の実

証実験を局地的には始まっているし、これはどんどん、どんどん社会の中に組み込まれて

いくと。実際に今までソニーが開発したロボットなども、人間と同じような形で人工知能

の技術というのは爆発的に高まっていると、もう既に実社会に入る段階には来ているのだ

と。もっと言えば、既にもう折れ線グラフの折れの時点に入っていると、あとはずっと伸

びていくということです。

ここに紹介いただいた生き残る仕事、これはまさに 20世紀の終わりにガルブレイスの言

った、ネクスト・ソサエティーに書いてあるような、本当に高技術で、それがどんどん分

化していくという仕事なのです。資料のこの部分を見ていくと、まさに管理部門なのです。

要するに人工知能をいかにして管理していくかという部分は確かに残っていく。それを考

えていった場合に、では地方の大学はどこの部類に入って、どういう人材をつくるのかと

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いうのは非常に難しい時代に入ってきたのではないかと。資料の左の部分、要は大企業で

も営業マンであったり、ある程度人数が必要なところは地方の大学でも必要とされて、そ

こにアプライする人も多かった。ところが、管理部門というのはある程度の高い技術力が

求められていて、その中に生き残っていくかどうか。これは一握りかもしれませんけれど

も、非常に岩手県の学生が入り込む余地というのは、生き残るというところにいくと間口

はそんなに広くないのだろうと。ただし、きょう先生がお話しした、いわゆる多様性の中

で岩手県の資源をどのようにして生かしながら起業、業を起こしてやっていくかという可

能性は十分にあるというふうにも思います。ですから、そこの導入部分を間違えないで学

生たちにも伝えていかないと、ある程度ミスマッチして行って、あれあれといってしまわ

ないかなという思いをしたのが、それが1点、そのことについて感想を求めたいと思いま

す。

二つ目は、これは大学生に限らず、どうも学校の社会と我々が実際に企業経営もしなが

らの実社会、非常に格差が激しいです、考え方が。いきなり競争社会に放り込まれるもの

だから、そこでもって戸惑いやらいろいろな部分があって、まだただウエットな関係を望

んでいるというのは非常に望みがあると思うのですけれども、これはもういかんとしがた

い、私たちが学生時代を過ごした時代とは全く違っている状況にあると、これも大きな課

題だと思っているのですけれども、それはインターンシップだけでは埋められないような

気がします。何か御意見がありましたらお聞きします。

○小野寺純治講師 ありがとうございます。

まず、1点目のAIの中で、コンピューターに置きかえられる仕事はどんどん人間から

コンピューターのほうに変わっていきますという話があります。それを私も出しました。

その前に大事なのが、日本は結局 2040年までを見たときに、労働人口という捉え方をした

場合に現在の3分の2になってしまう、だから第1次産業、第2次産業、第3次産業とい

うのは3分の1ずつ人口があれば一つが消えてしまうというぐらいの急速な労働人口の減

少になってしまう。その中で、今も大学の教育がいいかどうか、私一人では申し上げられ

ないので、それは省きますけれども、先ほど工藤先生がおっしゃったとおり、農業とか第

1次産業というのは非常に可能性がある。つまりこういうAIでは置きかわれない、逆に

言えばAIを活用して生きていくべき産業であるというふうに、私はフロンティアだと、

それはブルーオーシャンといいますけれども、そういう社会があるのだろうというふうに

思っております。

そういう中で、今の学生に対していろんなところで、大学だけではなくて、新しく価値

が変わっていく、多様性の社会になっていくのだということをどのように我々自身が訴え

かけていくかということだというふうに1点目は思っております。

ネクスト・ソサエティー、ドラッカーも確かにそのとおりですし、知識社会ということ

を話していて、そういう時代が来るということですが、その中で必ずしもAIに支配され

るということではなくて、我々のツールとしてAIがあるのだという、仕事を考えていく

Page 30: ふるさと創生・人口減少調査特別委員会会議記録hp0731/iinkaikaigikiroku/2808... · 3 出席委員 佐々木朋和委員長、川村伸浩副委員長、髙橋元委員、阿部盛重委員、工藤勝子委員、

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ことがこれから大事であって、私が幾つか持っている講義の中では学生に対しては、当然

学問ですから知識を覚えるのではなくて体系化、もう今はAIで調べれますので、いろん

なものをコンピューターで調べていますが、それをどれだけ自分の言葉としてどういうふ

うに落とし込むか。それはビッグデータの解析能力といいますか、それをまとめ上げる能

力、それが今大学生に求められているのだろうと思います。多かれ少なかれ、私が希望的

な価値観を持ちながら、多くの教員がそういう意識を持って講義をしてくれているのでは

ないかというふうに思っておりまして、まずそこまでで1点目は押さえたいと思います。

二つ目の学校社会と実社会との差異ですけれども、それは今申し上げたように大学の中

でも、当時私が学生のときには理学部というところにおりまして、280 人おって、ある教

員が僕の簡単なケミストリーというのか、物理化学というか、量子化学といいますか、そ

ういうものはこの中で 10 人わかればいいんだというふうにおっしゃっていた学生時代を

過ごしてまいりました。それが今はそうではなくて、学生にかなり手取り足取りに近い状

況で今はサポートするような時代になってきている。それが私からいえば学問から少し離

れてきて、いわゆる高校とどう違うのかという気になるのですけれども、いずれそういう

ような状況に今大学もかなり変わりつつあるということで。でも、それでも大学としては

やはり学問の場というような矜持だけは持ちつつ進めておりますので、実社会との関係に

ついては私としては学生にいろんな機会を提供して触れてもらう。

例えば今、理工学部のある教員ともこういう話をしています。学生が工学部の理論を勉

強する前にやはり企業を見たほうがいいと、これは理工学部の教員の多くも賛同してもら

っています。1年生のうちに岩手県内の企業でどういう技術でやっているかを見ていただ

く、それを踏まえて理論というもの、学問というものを学んでいただいて、次に専門に入

るときに、その企業をイメージして就職するかどうかわかりませんけれども、そういう企

業に就職するのだよと、そういう分野でその分野を極めたほうがというような動きをこれ

から大学の中で取り組んでいく必要があるだろうということで、そういうような議論を少

しだけし始めているところです。

何かなかなか答えになっていませんが、申しわけありませんけれども、そんなところで

よろしいでしょうか。御容赦いただきたいと思います。

○佐々木朋和委員長 ありがとうございます。

そろそろ時間となりましたが、ほかに質問はございませんか。

○阿部盛重委員 学部の就職率の状況なのですが、ここ5年間、先生方の努力とか行政の

努力でパーセントは上がっているようですが、学部によっては大学の各先生方でいろんな

ネットワークがあるので、本来地元に就職させたいけれども、そういう今までの勉強を生

かせられないということで、大体関東エリア等にどうしても紹介していくという例も事実

あるかと思います。

それはそれとしてよしにしても、今後地元を活性化するためにも、どうしてもそういう

能力がある人は地元にということですから、その先生方のお考えが今後どのような変化を

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もたらしていくのかというのと、あと行政に対してどうしても要望しておきたいなという

2点と。

それから、離職率なのですけれども、これは大学生だけでなく高校生もそうなのでしょ

うけれども、福利厚生面は十分に承知の上で入られるのでしょうけれども、でも現実は入

ってみたら結構違うというところで、先生方、わかっている企業との会合等もあると思う

のですけれども、こういうふうな離職率の話も出るかと思うのです。それに対して企業の

経営者側として、それはそうなんだけれども、実はこうなんだよと、でもそれは学生なり

行政側にもちゃんとそういうのは話してほしいとか、そういうふうなミスマッチ的な部分

があるかと思うのですが、そのあたりの実態はどのようになっているのか、ちょっと教え

ていただきたい。

○小野寺純治講師 ありがとうございます。

要するにこれまで学問の府として大学があって、高度専門人材をつくるという従前の流

れがあったわけですけれども、今岩手大学をまず例にしてお話をしますと、来年度から大

学院の中に地域創生専攻というものを立ち上げます。これは、つまり大学院というところ

は、普通は高度専門に、さらに高度専門人材みたいなイメージですけれども、そうではな

くて地域産業をマネジメントできる、少し横の広がりを持った人材をつくっていこうとい

うような動きをしております。私どもの学長はそういう人材こそ、やっぱり1度は長期で

海外へ行って見てこないとだめだよねということで、そのお金をどうするかというのが非

常に大きな問題としてあるわけですけれども、そのような取り組みをしております。専門

の変化ということは、そういう面ではかなり岩手県立大学も今回はいわて創造学習という

タイトルで、岩手県を勉強するというようなカリキュラムを体系的に1年生から入れてく

れるようになっておりまして、そういう動きになってきていると。

その一方で実は、県立大学で言えばソフトウエア情報学部、岩手大学で言えば理工学部、

それから農学部に共通の専門人材が、今おっしゃったように地域を志向してもなかなか公

務員ぐらいしかないと、例えば土木だとか電気だという専門職で。それ以外はなかなか入

れなくて、また合う職種がなくて、結果的に首都圏に行ってしまうと。

ある教員とこの間話をしましたらば、普通はここの企業に入れないんだけれども、こと

しは非常に求職が活発で、大企業が通常はこういうレベルでなくてもとっていくと。その

ような状況がありまして、県立大学のソフトウエア学部の教員とも話をしたらば、私は地

元にぜひ残したいんだけれども、5人決まったが、5人は5人とも首都圏ですと。うちの

ある教員も、2人に大学院にぜひ行って、地域のために役立つようにもっと勉強しろと言

ったらば、残念ながら通常入れないような大手企業から採用通知をいただいたので有頂天

になって、そこに行かざるを得ない、行くというような話になってしまっているというよ

うな問題がまだまだこれから出てきておりまして、それが各論でそういうものを踏まえつ

つどう変えていくかというところが非常に大きな問題として残っているというところであ

ります。

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それからあと、行政への要望は非常に多岐にわたるので、いつも申し上げているのは、

大学で私が産学官というのを長年やっていまして、初めから行政に期待をするとか、産業

界に期待をするということではなく、大学がまず走れるものは走ります。それは先導モデ

ルと、平易な言葉で言えばやせ馬の先走り論と言っていますけれども、走れるだけ走りま

すから、それを見ていただいて、行政が本当にそういう施策が必要であれば体系化してほ

しい。けれども、走っているから行政はそこに甘んじて、そこはずっと走っていくんだと

いうことではなくて、やはり2番手、3番手として一緒に支えるという枠組みをつくらな

いと、当然先導して走っている者はいつかは倒れてしまって、前と同じものにはならない

ということになるかなと思います。

先ほど幾つか申し上げました中で、各論で言えば、やはり学生の奨学金をどうするかと

いうのが当面の課題でありまして、これから大事なのは、地域で輝く人材を考えたときに、

自治体の中で、市町村の中で必要な学生が市町村に入ったときに、県はそういうものを支

援をしていくという方策があってもいいのではないか。県が全体の中でこういう人材をと

るという方策もあるのかもしれませんけれども、例えば沿岸部の市町村であれば新たな高

度水産人材が欲しいかもしれませんし、それからあとは中山間地域、遠野市も含めですけ

れども、農業系、林業系の人材が欲しいということになるかもしれないし、北上川流域で

あればものづくり系、それから盛岡市であればIT系の人材ということになるかもしれま

せん。そのような形で多種多様な人材が欲しいわけで、一つの職種が岩手県内全体に欲し

いかというと、それは違うのではないかというふうに思っておりまして、そういうものを

下からバックアップするという施策があってもいいのかなと思います。

あとは、最後に行政の関係では、やはり一度は学生は外へ飛び出していく。その外へ飛

び出していくときに無条件に東京都ではなくて、岩手県から出たときに、東京都もニュー

ヨークも、ロンドンもパリも、北京も上海もカイロだって同じ位置に置いて、そこに飛び

出していくという人材をつくることを産学官でやっていく必要があるだろうと。そうする

ことによって、世界の情報が岩手県にいながらにして入ってくるということをやっていく

時代にもう入ってきているのではないかというふうに思っております。

離職率の問題がありまして、これは非常に根深い問題で、まだ厚生労働省の資料しか私

の手元になくて、先ほどそれを出しておりますけれども、これをもう少し岩手県の中でど

ういうことが起きているのかということをもっと深掘りしなければならないというふうに

思っておりました。大学側としては、当然卒業生の意識の問題がありまして、今卒業生の

意識調査をしたところがありますので、そこをもう少し分析しなければいけない。

問題はもう一つ、企業側、経営者側、先ほど出ていました。企業側の問題で、ここがな

かなか入り切れないところだというふうに思っています。恐らく厚生労働省であったりい

ろんなところが同じような情報を持っている部分があると思いますので、そういうのをま

ずかき集めながら、それをもとに経営者側とCOC+の枠組みの中で議論をしていくとい

うことになってくると思っております。

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最後に、先ほど申し上げたCOC+αで、地方創生型インターンシップにつながります

けれども、COC+では岩手県の学生、若者、子供たちが岩手県の大学に入って岩手県に

就職すると、それだけではやはりどうしても足らないわけで、産業界からも多様な考えを

持った人材をぜひ岩手県に引っ張り込むようにしてほしい、それはUターンであったりI

ターンであったりということになると思います。

実際に例えばある鋳造企業、これは名前を出していいのかどうかはばかられますけれど

も、一応出しますと、及源鋳造株式会社にお邪魔したときに、及源鋳造のショールームが

きれいになっていて、非常にセンスのいいショールームになっていました。社長の及川久

仁子さんと話をしていたらば、首都圏から若い学生が、一橋大学と聞きましたけれども、

入りたいといって入ったのだということで、そういう人材が入ってくると変わってくる。

でも、その前に及川久仁子さんのところは及源ブランドというものを、ちゃんと海外に売

るための戦略を練ってやっていらっしゃる。そういうところであれば小さな企業だって、

今申し上げました首都圏のかなり有名な大学の学生が来る時代になってきているというこ

とだと思います。それをどうやって地域が磨いて、そういう情報を地域から出していくか

ということがすごく大事だというふうに思っております。ちょっと離職率の答えにはなっ

ておりませんけれども、そういうことで御勘弁いただきたいと思います。

○佐々木朋和委員長 お時間となりましたので、申しわけございませんが、これで議論を

終結をさせていただきたいと思います。

本日の調査はこれをもって終了いたします。

小野寺様、本日はお忙しいところ貴重なお話ありがとうございました。

〔拍手〕

○佐々木朋和委員長 委員の皆様には、次回の委員会運営等について御相談がありますの

で、しばしお残り願います。

では次に、9月に予定されております当委員会の調査事項についてでありますが、御意

見等はありますか。

〔「なし」と呼ぶ者あり〕

○佐々木朋和委員長 特に御意見がなければ当職に御一任願いたいと思いますが、これに

御異議はございませんか。

〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○佐々木朋和委員長 異議なしと認め、さよう決定いたしました。

以上をもって本日の日程は全部終了いたしました。本日はこれをもって散会いたします。

ありがとうございました。