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環境経済学入門 10環境保全のために市場を利用する 48430307 山田知央

環境経済学入門 第10章 環境保全のために市場を利用する...環境経済学入門 第10章 環境保全のために市場を利用する 48430307 山田知央 1.はじめに

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  • 環境経済学入門第10章 環境保全のために市場を利用する

    48430307 山田知央

  • 1.はじめに

    市場消費者に製品の生産に関わる費用生産者に製品に対する消費者の適切な評価を知らせる

    消費者生産者

  • 1.はじめに

    自由な価格メカニズム市場を持たない(価格ゼロの)環境財やサービスを過剰に利用してしまう

    消費者が汚染排出が少ない製品を好むようになれば市場は最終財・サービスの「汚染含有量」に変化を強いるはず・・・

    産業界が環境に敏感になったり、生産過程を変更させると費用が減ることが分かれば、変更が行われる

  • 1.はじめに

    環境サービスがより効率的に市場システムに加わるよう市場を再構築する

    1. 無料であったサービスに市場を作る資源のサービスに自由にアクセスすることに対して、入場料を徴収したり、所有権を変化させることで制限を加える→詳しくは15章、23章で考察

    2. 環境サービスの価値を集約的に評価し、この価値を財やサービスの価格に組み入れることで、市場を修正する(市場に基づくインセンティブアプローチ) ⇔ 直接規制(「指令と統制」)アプローチ

  • 1.はじめに

    直接規制アプローチ 法律で環境基準を設定し、汚染等を基準以下に抑制することを義務付ける方法

    2つの非効率性

    1. 規制者は、汚染者がすでに持っている情報を得るために、コストをかける必要がある

    2. 各汚染ごとの削減する容易さが汚染者によって異なる最も安く汚染削減ができる排出者に汚染抑制が集約されない

  • 1.はじめに

    課徴金・課税アプローチ 市場に基づくインセンティブアプローチの一つ

    汚染削減費が高い業者 汚染削減費が低い業者

    課徴金を選択 削減設備を設置することを選択

    汚染者は環境基準に対する適合方法を選択することが可能となる

    課徴金は、基準を遵守する総費用を減らすことが出来る

  • 1.はじめに

    工業国の経済において、汚染がますます深刻かつ広域的に・・・

    汚染者支払い原則(Polluter Pays Principle : PPP)

    1972年 OECDにより環境政策の一つの基本的な経済的原則として作成・採択された

    〈基本的な考え〉

    「財やサービスの価格には、生産の際に使用されたすべての資源の費用を含んだ総費用が完全に反映されなければならない」

  • 1.はじめに

    多くの環境資源

    適切な価格がない 自由にアクセスできる

    過剰利用により、将来完全に破壊されてしまうという重大な危険性(市場の失敗)

    〈PPPの目的〉汚染税、課徴金や許可証取引制度といった経済的手法と価格シグナルを用いることで、環境を利用することを、経済的領域に統合すること

  • 1.はじめに

    PPPを国際的に効果的に用いる

    1972年のOECD会議・この原則は加盟国において基本的な汚染抑制の原則とならなければならない・汚染者には補助金を与えない

    ある国では汚染抑制のための民間投資に補助金を与えているのに、別の国では与えていない

    環境規制は貿易の歪みとなってしまう

    各国の協調が必要

  • しかし・・・複数の加盟国がPPPの指示よりも早く排出削減手段に関する国家計画を進めた

    PPPはいくつかの例外が認められた

    • 汚染を排出する産業部門がすでに甚大な経済的困難を被っている場合は、その部門に経済的援助を行うことが認められた。

    • ただしその援助は、明確に計画された、あるきまった期間の間だけなされるべきで、国際貿易の歪みが生じないようにしなければならない

    1.はじめに

  • 1.はじめに

    汚染削減の限界費用が、汚染によって生じた被害の限界費用に少なくとも等しくなるところまで被害を減らすインセンティブが生まれる

    経済効率性の理論汚染者(企業、個人、または政府)は、その活動がもたらした環境被害の総費用を支払わなければならない

  • 1.はじめに

    環境被害の影響や、その貨幣的評価に関する経験的な推計は決して正確なものではない・・・

    汚染制御政策外生的に決定された「社会的に許容可能な」汚染水準(または環境水準)に基づく

    原則的には、全ての汚染者に対し、彼らが排出する追加的な1単位に同じ価格を課すことで排出抑制費用の費用効率的な配分が実現できる

    全ての企業から排出される目標排出総量が可能な限り最も低い排出総費用で実現される

  • →汚染者に対し、許容量を無料で排出する権利を事実上認めている

    →インセンティブ負担が認められるインセンティブ負担の利点:汚染者の適切な行動を長期にわたって動機づける

    PPPの標準的解釈汚染者は、許容量まで排出量を抑制するのにお金を支払わなくてはならないが、許容量の排出によって生じた環境に対する被害に関しては支払わなくてもよい

    1.はじめに

    PPPの広範な解釈 汚染者は抑制費用と同様に被害費用も支払わなくてはならない

  • 現実と経済原則の乖離

    汚染課徴金主に税収源として確立されている

    特定の環境基準を達成するために定められたわけではない

    1.はじめに

    環境制御政策

    倫理的意味

    政治的意味

    経済的効率性

    環境制御政策

    • 倫理的意味、政治的意味、経済的効率性という相反するものを本質的に含意する

    • 科学的不確実性の下では、これらの区別は曖昧になる(L. B. Lave and E. H. Males, 1989)

  • 1.はじめに

    物質的な便益を得ようとすると、汚染に基づく環境リスクが必然的に伴う

    費用(あるいはリスク、または両者)と便益のバランスをとる手段が必要リスク水準と汚染削減費用の許容されるトレード・オフを突き止めなければならない

    ⇒採択される政策手段に依存

    汚染による外部費用を内部化するための政策手法

    費用便益アプローチ

    予防的アプローチ

  • 1.はじめに

    • エンド・オブ・パイプ処理のみによるのではなく使用する資源を減らす方策を通じて汚染を防ぐことが重要

    • 特に分解されない汚染物質が環境に蓄積する状況では、浄化能力自体が被害を受けていたり、破壊されているかもしれない危険性がある

    予防原則 排出基準を設定する際には不確実性があるため、注意が必要

  • 汚染物質のこの重大な長期的被害の危険性を緩和すること予防原則の目的

    1.はじめに

    経済的に最適な汚染水準がゼロではなく、ある物質が環境に蓄積することの長期にわたる正確な影響に関して不確実性があるとすると、動学的外部性の問題が生じる可能性がある

    予防原則は直接規制メカニズムで機能する→14章で検証

  • 2.所有権アプローチ

    コースの考え方

    • 汚染の社会的最適水準を達成するための政府による介入(課税、補助金、基準設定などを通じた)に反対し、最適な所有権を基にした市場の交渉」を支持した

    • (法の力によって資源の所有権が保証されている)最適な所有権システムが存在し、他の幾つかの過程が満たされているとき、汚染者と汚染被害者に対する規制を行ってはならない。なぜなら自動的に交渉のプロセスに発展するから(所有権を持っている方に金銭が渡される)

  • 2.所有権アプローチ

    コースの定理の主張 誰が所有権を持っていようと、交渉を通じて自動的に社会的最適が達成される傾向がある

    もしこの分析が正しければ

    外部性に対する政府の規制は余計なものとなり、一つの効率的プロセスを意味する交渉によって、市場はこの問題をそれ自身で解決するはず・・・

    コースの定理には、数多くの批判と厄介な問題がその後の文献で展開された

    交渉が行われない、もしくは不可能である理由は多い

    不完全競争、高い取引費用、汚染者と被害者の区別の困難さ、脅し等

  • 2.所有権アプローチ

    効率性の根拠からは「誰に所有権が属そうと違いがないのなら、所有権を変えることの利益はほとんどない」という主張は正しいのだろうか?

    実際は誰に所有権があるかは大きな違いを生み、公共政策(環境政策が含まれる)は、誰が国家を味方にできるかという争いになる

    ブロムリー=ホッジ(D. Bromley and I. Hodge, 1990)「工業国での今日の農業政策は、土地の私的所有権システムと明確に結びついている」

  • 2.所有権アプローチ

    汚染、景観やアメニティの破壊、レクリエーションが損なわれるなど

    工業国全域にわたる農業の集約化は、広範な負の環境外部性を引き起こした

    外部費用を低下させようとする国家の介入は、規制か、或いは農家に与えられる金銭的インセンティブによって行われてきた

    ブロムリー=ホッジ(1990, p.199)農家の現状の生産領域に手を加えようとすると、国家が農家に対し、賄賂や補助金、或いは政策の中のどこかで利権を与えることにより、その変更を買い取ることになってしまうのは避けられない

  • 田園共同体特性の水準は、地方や国の水準での集団的決定により設

    定される

    田園の中にある特性を決定する所有権は社会に帰属することとなる

    2.所有権アプローチ

    田園共同体特性(環境財やサービス)と、さらにある程度の品質を持つ食品や繊維なども農家に生産させるような所有権制度はなぜ確立しないのか?

    現在

    食品・繊維>田園共同体特性

    田園共同体特性は偶発的な副産物として生じてしまう

    代わるべき制度

  • 2.所有権アプローチ

    所有権アプローチに対する2つの立場

    完全な土地の所有権は土地所有者のもの

    全ての権利は国家(我々や将来世代のための代理人として行動する)のものである

    実際には、田園共同体特性の水準は、他の広範な所有権―国家が保有する所有権もあれば土地所有者が保有するものもある―に基づく行動によって

    定められる

  • 3.結論

    • 環境保護政策「経済的インセンティブ・アプローチ」「直接規制アプローチ」「資源の所有権システム」を用いて操作できる

    それぞれの方法には利点も欠点もある兼ね合わせた手段が有効

    • 環境を自由市場(もしくは、高い補助金が与えられた市場)に一般には任せておくべきではない

    • ほとんどの経済的インセンティブや所有権システムを補強するためには規制が必要である