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シールド 立川断層を含む複合地盤の4kmを超える長距離泥土圧式シールドの施工実績 Mud Pressure Shield Tunneling Traversing More Than 4 km Through Composite Soil, Including a Portion of the TACHIKAWA Fault 藤田 敏治 ※1 岩城 正佳 ※1 小笠原 ※1 岡田 晃典 ※1 佐藤 琢磨 ※2 Toshiharu Fujita Masayoshi Iwaki Tsuyoshi Ogasawara Akinori Okada Takuma Satou 1. 首都圏土木支店 東大和シールド( ) 2. 本社 土木事業本部 土木統括部 機電G キーワード 長距離シールド ビット摩耗 摩耗検知器 断層 軌条複線 本工事は,東京都水道局が進める送水管の二重化・ネットワーク化事業の一環のシールドトンネル工事である.掘 削外径φ3,080mm の泥土圧式シールドで,施工延長は L=4,447m と長距離である.掘削地盤は,玉石を含む礫層や, N 50 以上の非常に硬い砂層および粘性土層と多岐にわたり,掘進途中には立川断層の出現が予想された.路線は 交通量の激しい都道直下にあり地上を占用するビット交換作業は困難であった.また,長距離施工に伴う掘進サイク ルのタイムロスは約定工程を順守する上で抑制する必要があった.本稿では,その施工実績について報告する. 摩耗検知器データーにより,掘進中のビット摩耗状況が把握されたとともに,各土質におけるビット摩耗係数が 把握できるなど様々な知見を得ることができた. ビットの強化と段差ビットの配置,最外周ビットの増設と余掘り量の増大による掘進速度の増加などの対策を取 ることで,ビット交換なしで到達させることができた.先行ビットは許容摩耗量を超えたものの,「低」側のティ ースビットにいたってはほとんど健全な状態であった.また、最外周ビットの摩耗低減方策を提言した。 予測された立川断層はほぼ推定どおりの範囲に存在し,無水状態が確認された.またビットの摩耗にあたっては, 無水状態は水がある地盤に比べて約 5 倍程度の摩耗進行が早いことがわかった. バッテリーを 2 編成にし坑内に 2 か所の離合箇所を設けることでサイクルタイムロスを排除し,当初工程よりも 2 ケ月の短縮が図られ,トータル 18 ケ月の掘進となった. 図-2 バッテリー2編成でのダイヤグラム 図-1 ビット摩耗グラフ(先行ビット) , , ,0 , , . v とびしま技報 № 66(2018)

立川断層を含む複合地盤の4kmを超える長距離泥土圧式シールド ... · 2020. 3. 11. · Tsuyoshi Ogasawara Akinori Okada Takuma Satou 1.首都圏土木支店

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Page 1: 立川断層を含む複合地盤の4kmを超える長距離泥土圧式シールド ... · 2020. 3. 11. · Tsuyoshi Ogasawara Akinori Okada Takuma Satou 1.首都圏土木支店

シールド

とびしま技報

立川断層を含む複合地盤の4kmを超える長距離泥土圧式シールドの施工実績

Mud Pressure Shield Tunneling Traversing More Than 4 km Through Composite Soil, Including a Portion of the TACHIKAWA Fault

藤田 敏治※1 岩城 正佳※1 小笠原 剛※1 岡田 晃典※1 佐藤 琢磨※2 Toshiharu Fujita Masayoshi Iwaki Tsuyoshi Ogasawara Akinori Okada Takuma Satou

1.首都圏土木支店 東大和シールド(作) 2. 本社 土木事業本部 土木統括部 機電G

キーワード 長距離シールド ビット摩耗 摩耗検知器 断層 軌条複線

概 要

本工事は,東京都水道局が進める送水管の二重化・ネットワーク化事業の一環のシールドトンネル工事である.掘

削外径φ3,080mmの泥土圧式シールドで,施工延長はL=4,447mと長距離である.掘削地盤は,玉石を含む礫層や,

N 値 50 以上の非常に硬い砂層および粘性土層と多岐にわたり,掘進途中には立川断層の出現が予想された.路線は

交通量の激しい都道直下にあり地上を占用するビット交換作業は困難であった.また,長距離施工に伴う掘進サイク

ルのタイムロスは約定工程を順守する上で抑制する必要があった.本稿では,その施工実績について報告する. 成 果

摩耗検知器データーにより,掘進中のビット摩耗状況が把握されたとともに,各土質におけるビット摩耗係数が

把握できるなど様々な知見を得ることができた. ビットの強化と段差ビットの配置,最外周ビットの増設と余掘り量の増大による掘進速度の増加などの対策を取

ることで,ビット交換なしで到達させることができた.先行ビットは許容摩耗量を超えたものの,「低」側のティ

ースビットにいたってはほとんど健全な状態であった.また、最外周ビットの摩耗低減方策を提言した。 予測された立川断層はほぼ推定どおりの範囲に存在し,無水状態が確認された.またビットの摩耗にあたっては,

無水状態は水がある地盤に比べて約5倍程度の摩耗進行が早いことがわかった. バッテリーを2編成にし坑内に2か所の離合箇所を設けることでサイクルタイムロスを排除し,当初工程よりも2

ケ月の短縮が図られ,トータル18ケ月の掘進となった.

図-2 バッテリー2編成でのダイヤグラム

図-1 ビット摩耗グラフ(先行ビット)

機関車運行ダイヤグラム ※ 但し 各々に 2分程度のロスが発生するものとする。

300

200

100

P0

900

800

700

600

500

400

1,500

P1,4001,300

1,200

1,100

1,000

2,100

2,000

1,900

1,800

1,700

1,600

2,700

P2,6002,500

2,400

2,300

2,200

3,300

3,200

3,100

3,000

2,900

2,800

530

切羽距離

(m

4,100

4,000

3,900

3,800

3,700

3,600

3,5003,400

470 480 490 500 510 520410 420 430 440 450 460350 360 370 380 390 400290 300 310 320 330 340260 270 280170 180 190 200 210 220分(min) 0 10 20 30 40

8110 120 130 140 150 16050 60 70 80 90 100 230 240 250

5 6 714 15 16

時間(h) 0 1 2 3 4

min 坑内分岐箇所 坑口 ・ 1400m ・ 1600m

8 9 10 11 12 13

6 R

掘削延長 1,200 ㎜/リング ズリ鋼車 3 ㎥/台 4 台

諸条件 掘削 6 R

掘進距離 3,500 m

掘進速度

列車編成 2 編成 組立

Km/h

掘進時間 24 min. 立坑作業時間 30 min.

50 mm/min 坑内平均運行速度 120 m/min 7.2

セグメント組立時間 25

No1編成

朝礼・準備

組立

鋼車交換

掘進 組立掘進

鋼車交換

組立掘進

鋼車交換

組立掘進

鋼車交換

組立掘進 組立掘進

鋼車交換 鋼車整理

No2編成

片付

4Ring 6Ring5Ring3Ring2Ring1Ring

6Ring/方

離合 離合離合

離合 離合離合

v vとびしま技報 № 66(2018)