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Copyright Red Cross Nuclear Disaster Resource Center 原子力災害における救護活動ガイドライン 補足説明資料編

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原子力災害における救護活動ガイドライン

補足説明資料編

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I. ガイドライン策定の背景・問題意識

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I. ガイドライン策定の背景・問題意識 補足資料一覧

I.- ① 東日本大震災(2011年3月11日 14時46分) I.- ② 東京電力福島第一原子力発電所事故

I.- ③ 福島第一原発事故による放射性物質の拡散状況

I.- ④ オフサイトセンター (緊急事態応急対策拠点施設) I.- ⑤ 緊急被ばく医療体制

I.- ⑥ 福島第一原子力発電所事故で生じた広域避難

I.‐ ⑦ 日赤救護班の派遣から一時撤退までの経緯(2011年3月11日~3月14日) I.- ⑧ 日赤の福島県への救護班派遣に関する方針(2011年3月13日~3月22日) I.- ⑨ 県外避難者への対応について

I.- ⑩ 2011年11月 国際赤十字社・赤新月社連盟 (IFRC) 総会での決議

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I.- ① 東日本大震災(2011年3月11日 14時46分)

1. 地震の概要

震度分布図

出典:気象庁ホームページより抜粋

地震発生時刻: 2011年3月11日(金) 14時46分 震源地: 三陸沖 (北緯38度6分、東経142度52分) 深さ 24Km 地震規模: マグニチュード 9.0

2011年3月11日、三陸沖を震源とする地震が発生しました。地震の規模を示すマグニチュードは9.0で、関東大震災(1923年)のM7.9や昭和三陸地震(1933年)のM8.4をはるかに上回る、日本周辺における観測史上最大の巨大地震でした。 気象庁は、この地震を「平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震」と名付けました。その後4月1日の閣議決定により、「東北地方太平洋沖地震」による災害及びこれに伴う原子力発電所事故による災害は、「東日本大震災」と呼ばれることになりました。 福島県内で観測された震度は以下の通りです。

震度6強 白河市、須賀川市、国見町、天栄村、富岡町、大熊町、浪江町、鏡石町、楢葉町、双葉町、新地町

震度6弱 福島市、二本松市、本宮市、郡山市、桑折町、川俣町、西郷村、矢吹町、 中島村、玉川村、小野町、棚倉町、伊達市、広野町、浅川町、田村市、 いわき市、川内村、飯舘村、相馬市、南相馬市、猪苗代町

震度5強 大玉村、泉崎村、矢祭町、平田村、石川町、三春町、葛尾村、古殿町、 会津若松市、会津坂下町、喜多方市、湯川村、会津美里町、磐梯町

2. 津波の概要

今回の震災では、地震に引き続いて押し寄せた津波が更に被害を深刻化させました。東北から関東北部の太平洋沿岸を中心に、北海道から沖縄にかけての広範囲で津波が確認されました。福島県でも相馬市の津波観測施設では9.3m以上を観測しました。この津波による浸水面積は112Km2 にも達し、甚大な被害が発生しました。 福島県内の津波観測施設で観測された津波の観測値は以下の通りです。

出典:福島県発表

第一波 最大波

地 域 日付 時刻 種類 高さ 日付 時刻 高さ

相馬市 *1 *2 *3 *4

3月11日 14:-- 引き 1.2m 3月11日 15:51 9.3m以上

いわき市小名浜 *3

3月11日 15:08 押し 2.6m 3月11日 15:39 3.3m

出典:気象庁発表(2011年3月)

※観測地点が津波により被害を受けたためデータを入手できない期間があり後続の波でさらに高くなった可能性がある * 1 データを入手できない時期があったことを示す * 2 巨大津波観測計により観測(観測単位は0.1m) * 3 地盤沈下の影響で、第1波の読取値が不正確である可能性がある。 * 4 地震の揺れにより生じた潮位の変動等のため、潮位データからは津波の第1波の始まりが特定できなかったもの。一方、 今回の地震の発生後、沿岸で沈降があったことが推定されており(国土地理院地殻変動調査)、沿岸付近は波源域に含ま れていたことが推定される。

平成23年 (2011年) 東北地方太平洋沖地震 (気象庁): http://www.data.jma.go.jp/svd/eqev/data/2011_03_11_tohoku/

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I.- ② 東京電力福島第一原子力発電所事故 (1/2)

事故発生直後の状況

強い地震の発生により、運転中の東京電力福島第一原子力発電所は、点検・検査中の4~6号機を除く、1号機から3号機が自動的に緊急停止しました。

福島第一原発では地震のため外部電源を全て失ったため、非常用ディーゼル発電機が自動的に起動し、原子炉および使用済燃料プールの冷却機能を維持していましたが、その後来襲した津波により、非常用発電機が動作停止し、1号機から4号機は全ての交流電源を失いました。東京電力は、政府とも協力して電源の復旧などの措置を講じましたが、作業が難航しました。 1号機については、隔離時復水器(IC)が動作不能となり、また2号機および3号機も直流電源 (バッテリー) の枯渇や冷却水の供給が停止したことから、いずれの原子炉も炉心冷却が行われなくなりました。その結果、原子炉の水位が低下して、炉心が露出したことにより損傷しはじめ、やがて溶融に至りました。その後、1号機と3号機では、格納容器から漏えいした水素が原因と思われる爆発が原子炉建屋上部で発生し、それぞれの原子炉建屋のオペレーションフロアが破壊されました。これらによって環境に大量の放射性物質が放出されました。なお、3号機の建屋の破壊に続いて、定期検査のために炉心燃料がすべて使用済燃料プールに移動されていた4号機においても原子炉建屋で水素が原因とみられる爆発があり、原子炉建屋の上部が破壊されました。この間、2号機では格納容器のサプレッションチェンバー室付近と推定される場所に大規模な破損が生じたとみられています。 政府は2011年3月11日19時3分、「原子力緊急事態宣言(東電福島第一原発で起きた事象について)」を発令し、東電福島第一原発の半径3キロ以内の住民に避難指示が出されました。翌日の12日早朝5時44分には、1号機中央制御室で放射線量が上昇したことに伴い、避難指示区域が半径3キロから10キロに拡大されました。同日15時36分に1号機で水素爆発が起こったため、同日18時25分には、更に避難指示の範囲が拡大され、半径20キロとなりました。14日11時1分には、同3号機で水素爆発が確認されました。15日の朝6時10分には、4号機で爆発音が確認され、11時には半径20キロから30キロの住民ら14万人に対し屋内退避が指示されました。

(2011年3月11日現在)

福島第一原発

避難指示 3Km→10Km

避難指示 20Km 避難指示 20Km

屋内退避指示 30Km

(2011年3月12日現在) (2011年3月15日現在)

福島第一原発

福島第一原発

避難指示区域の推移

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I.- ② 東京電力福島第一原子力発電所事故 (2/2)

事故発生直後の推移 (2011年)

国会事故調報告書 (国立国会図書館アーカイブ) : http://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/3856371/naiic.go.jp/

政府事故調 報告書 (内閣官房内閣総務官室) : http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/icanps/

(出典:国会事故調報告、政府事故調報告、首相官邸ホームページ、内閣府ホームページ、 経済産業省ホームページ、気象庁ホームページ、福島県「東日本大震災の記録と復興への歩み」から抜粋)

14:46  東北地方太平洋沖地震発生 M9 震度6弱 (福島市内) 最大震度7 (宮城県北部)

 東京電力福島第一原発1~3号機・福島第二原発1~4号機スクラム(原子炉緊急停止)

 福島第一原発4~6号機は定期点検中 県が災害対策本部、県警が災害警備本部を設置 (県内49市町村でも災害対策本部を設置)

14:49  気象庁が青森、岩手、宮城、福島の各県太平洋側などに大津波警報を発令

14:50  政府が官邸対策室を設置→15:14 緊急災害対策本部設置

15:37  東京電力福島第一原発で津波により電源喪失 →15:42原子力災害対策特別措置法 にもとづき東京電力より政府に通報

19:03  政府が東京電力福島第一原発「原子力緊急事態宣言」を発令

20:50  福島県災害対策本部が東京電力福島第一原子力発電所1号機から半径2Kmに「避難要請」

21:23  政府が東京電力福島第一原発から半径3Km以内の住民に避難指示 (5,862人)

         〃                3~10Km以内は屋内退避指示

5:44  政府が東京電力福島第一原発から半径10Km圏内の住民に避難指示 (51,207人)

5:46  東京電力福島第一原発 (以下「第一原発」という。) 1号機原子炉への注水開始

7:45  政府が東京電力福島第二原発に原子力緊急事態宣言発令

7:45  政府が東京電力福島第二原発から半径3Km圏内避難指示 (8,049人)

        〃                 3~10Km圏内住民に屋内退避指示

15:36  東京電力福島第一原発1号機水素爆発

17:39  政府が東京電力福島第二原発から半径10Km圏内の住民へ避難指示 (32,426人)

18:25  政府が東京電力福島第一原発から半径20Km圏内の住民に避難指示 (約8万人)

19:04  第一原発1号機原子炉への海水注入を開始

11:01  第一原発3号機、原子炉建屋水素爆発

18:22  第一原発2号機の冷却水が不足し、燃料棒が全露出

6:00ころ  第一原発2号機で圧力抑制室付近が破損したとみられる衝撃音を確認

 第一原発4号機で大きな衝撃音発生、原子炉建屋5階屋根付近損傷

11:00  第一原発から半径20Km 以上30Km 圏内の住民に対し屋内退避指示

5:45  第一原発4号機建屋3階北西付近より火災発生確認

8:34  第一原発3号機より白煙が大きく噴出

3月17日  警察、自衛隊による3号機使用済みプールへの放水実施

 自衛隊や米軍高圧放水車を使用した3号機使用済みプールへの放水

 原子力保安院がINES暫定評価をレベル5 (広範囲な影響を伴う事故1~3号機) と発表

3月19日  緊急消防援助隊による3号機使用済み燃料プールへの放水

 第一原発5号機、冷温停止状態

 第一原発6号機、冷温停止状態

3月23日  SPEEDIによる放射能影響予測を発表

3月25日  政府は屋内退避指示の対象となっている区域 (第一原発から半径20~30Km) の市町村長に対し

 当該住民への自主避難を積極的に促進するとともに、避難指示を想定した諸準備を要請4月1日  政府、災害名称を「東日本大震災」に変更

4月4日  低レベル放射能汚染水を海へ放出

4月12日  INES暫定評価結果、レベル7 (深刻な事故1~3号機) に引上げ

4月17日  東京電力が「福島第一原子力発電所・事故の収束に向けた道筋」をとりまとめる

3月18日

3月20日

東京電力福島第一原子力発電所事故の時系列推移

3月11日

3月12日

3月14日

3月15日

3月16日

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I.- ③ 福島第一原発事故による放射性物質の拡散状況

福島第一原発事故により、比較的半減期の長いセシウム134、137などの放射性物質が広い範囲に拡散されました。このため、事故からおよそ56か月経過した2015年11月においても、高い空間線量率が続いている地域は広範囲におよんでいます。

出典:原子力規制委員会 航空機モニタリングによる空間線量率の測定結果より抜粋

http://radioactivity.nsr.go.jp/ja/list/362/list-1.html

文部科学省による航空機モニタリングの結果 (福島第一原子力発電所から80Km圏内のセシウム134,

137の地表面への蓄積量の合計) (2011年7月2日時点)

空間線量率マップ(地表面から1m高さの空間線量率) (2012年12月28日時点)

(第6次航空機モニタリングの結果に福島第一原子力発電所から80km圏外のモニタリングの結果を追加)

福島県及びその近隣県における空間線量率の分布マップ (2015 年11 月4 日時点(事故から約56 か月後))

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I.- ④ オフサイトセンター (緊急事態応急対策拠点施設)

オフサイトセンター(緊急事態応急対策拠点施設)とは、原子力施設の緊急事態時において、事故が発生した敷地(オンサイト)から離れた外部(オフサイト)で現地の応急対策をとるための拠点施設のことである。この設置は、平成12年(2000年)6月に施行された「原子力災害対策特別措置法(法律156号)」で規定され、原

子力施設で緊急事態が発生した際には、国、都道府県、市町村及び事業者の防災対策関係者が集合して、「原子力災害合同対策協議会」を組織し、連携の取れた応急対策を講じていく拠点となるものである。 しかしながら、東北地方太平洋沖地震(2011年3月11日)に伴う福島第一原発事故においては、その本来の機能を十分に発揮できたとは言えず、その反省と教訓を反映する形で各種の検討が進められ、平成24年(2012年)9月19日に発足した新たな規制行政組織である原子力規制委員会の下で具体的な見直しが進められているところである。

オフサイトセンターの概要

出典:一般財団法人 高度情報科学技術研究機構 原子力百科事典‘ATOMICA’より

http://www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php?Title_No=10-06-01-09

名称 住所 対象事業所

北海道原子力防災センター 北海道岩内郡共和町宮丘261-1 北海道電力(株)泊発電所

東通村防災センター 青森県下北郡東通村大字砂子又 字沢内5番地35

東北電力東通原子力発電所

六ヶ所オフサイトセンター 青森県上北郡六ヶ所村大字尾鮫 字野附1-67

日本原燃(株)再処理事業所

日本原燃(株)濃縮・埋設事業所

宮城県原子力防災対策 センター (暫定)

宮城県仙台市宮城野区若竹4-2-1 (産総研東北センター)

東北電力(株)女川原子力発電所

福島県原子力災害対策 センター (暫定)

福島県福島市中町8-2 (福島県自治会館内)

東京電力(株)福島第1原子力発電所

東京電力(株)福島第2原子力発電所

茨城県原子力オフサイト センター

茨城県ひたちなか市西十三奉行11601-12

日本原子力研究開発機構東海研究開発 センター原子力科学研究所

日本原子力研究開発機構大洗研究開発 センター

日本原子力研究開発機構東海研究開発 センター核燃料サイクル工学研究所

日本原子力発電(株)東海発電所

日本原子力発電(株)東海第二発電所

三菱原子燃料(株)

原子燃料工業(株)東海事業所

新潟県柏崎刈羽原子力防災 センター

新潟県柏崎市三和町5-48 東京電力(株)柏崎刈羽原子力発電所

神奈川県横須賀オフサイト センター

神奈川県横須賀市日の出町1-4-7 (株)グローバル・ニュークリア・フュエル・ ジャパン

静岡県浜岡原子力防災 センター

静岡県御前崎市池新田5215-1 中部電力(株)浜岡原子力発電所

名称 住所 対象事業所

石川県志賀オフサイト センター

石川県羽咋郡志賀町字安部屋亥34-1

北陸電力(株)志賀原子力発電所

福井県敦賀原子力防災 センター

福井県敦賀市金山99-11-47

日本原子力研究開発機構高速増殖炉 研究開発センター高速増殖原型炉もんじゅ

核燃料サイクル開発機構新型転換炉 ふげん発電所

日本原子力発電(株)敦賀発電所

福井県美浜原子力防災 センター

福井県三方郡美浜町佐田64号 毛ノ鼻1-6

関西電力(株)美浜発電所

福井県大飯原子力防災 センター

福井県大飯郡おおい町成和1-1-1 関西電力(株)大飯発電所

福井県高浜原子力防災 センター

福井県大飯郡高浜町薗部35-14 関西電力(株)高浜発電所

大阪府熊取オフサイト センター

大阪府泉南郡熊取町朝代西2-1010-1

原子燃料工業(株)熊取事業所

上齋原村オフサイト センター

岡山県苫田郡鏡野町上齋原514-1 日本原子力研究開発機構人形峠 環境技術センター

島根県原子力防災 センター

島根県松江市内中原町52 中国電力(株)島根原子力発電所

愛媛県オフサイト センター

愛媛県西宇和郡伊方町湊浦1993-1 四国電力(株)伊方発電所

佐賀県オフサイト センター

佐賀県唐津市西浜町2-5 九州電力(株)玄海原子力発電所

鹿児島県原子力防災 センター

鹿児島県薩摩川内市神田町1-3 九州電力(株)川内原子力発電所

出典:一般財団法人 高度情報科学技術研究機構 原子力百科事典‘ATOMICA’よりhttp://www.rist.or.jp/atomica/data/pict/10/10060109/01.gif

オフサイトセンターの所在地

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I.-⑤緊急被ばく医療体制

緊急被ばく医療とは

放射線事故・災害により被ばくした方に対する医療のことです。通常の救急医療対応に加え、どういう放射線による被ばくなのか、体内や体外に放射線を発する物質が残存している(汚染している)のか、被ばく線量はどのくらいなのかを明確にし、どういう症状がいつ頃出るのか等を明らかにすることが必要です。そのため、

放射線測定や放射線核種分析の専門家の協力を得て、測定機器と計算から提供されるデータと血液や染色体検査に基づいて診断し、治療が行われます。汚染がある場合は除染、放射線管理、防護の専門家の協力も必要です。このように様々な分野の専門家と医師・看護師・技師など医療関係者との協力で成り立つ放射線被ばく時の医療が緊急被ばく医療です。また被ばくしたのかどうかわかりにくいため、様々な不安に対して健康への影響の説明、心のケアも緊急被ばく医療には重要な要素となります。

出典:国立研究開発法人放射線医学総合研究所緊急被ばくQ&Aよりhttp://www.nirs.qst.go.jp/rd/rem/remat/manual/qa/01_02.html

各自治体により原子力施設に近い医療施設が指定され、主に応急処置や周辺住民への初期対応を担います。

初期被ばく医療機関:

地域の基幹病院などが指定され、相当程度の被ばくをしたと推定される患者が転送され、全身除染、汚染創傷の治療、汚染状況及び被ばく線量の測定、血液・尿などの検査・分析が行われます。

二次被ばく医療機関:

さらに放射線被ばく障害の専門的診療が必要とされる高線量被ばく患者の対応を行います。東日本は「放射線総合医学研究所」が、西日本は「広島大学」が指定されており、さらに「放射線総合医学研究所」は、緊急被ばく医療の中心的機関としての機能を担います。

三次被ばく医療機関:

被ばくの程度に応じて

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I.-⑥福島第一原子力発電所事故で生じた広域避難

2011年3月11日に発生した大地震と津波、それに続く原発事故という未曽有の大規模複合災害により避難指示区域が徐々に拡大されました。最終的には広範

囲にわたって避難指示が出され、多くの住民が避難を余儀なくされました。また、放射線への不安から、特に子供を持つ家庭など多くの住民が県外へも避難しています。

避難指示地域の拡大経緯

2011年3月11日 (最初は3Km) 2011年4月21日 (20Kmに拡大) 2011年4月22日(避難地域の見直し:30Km以外でも避難へ)

(経済産業省ホームページに掲載の概念図に一部追記等して作成)

2017年3月現在、県内避難者は37,670人、県外避難者は39,218人

おり、他県に比べて突出しています。(出典:復興庁ホームページ

のデータより作成)

福島県の避難者の推移 宮城県の避難者の推移 岩手県の避難者の推移

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I.‐ ⑦ 日赤救護班の派遣から一時撤退までの経緯(2011年3月11日~3月14日)

3月11日 3月12日 3月13日 3月14日

三陸沖を震源とするM9.0の巨大地震発生

14:46

半径3Km 圏内住民に 「避難指示」

21:23

半径10Km 圏内住民に 「避難指示」

5:44

1号機が 水素爆発

15:36

半径20Km 圏内住民に 「避難指示」

18:25

3号機が 水素爆発

18:01

日赤DMAT・ 救護班が各地 から出動開始

16:30~

新地町の救護班を宮城県白石市に転進を決定

16:40

福島県支部が 救護班への

帰還命令を発行

10:00

相馬市の救護班を川俣町まで撤退を

決定

16:50

スクリーニングを受けるため二本松市へ移動開始⇒福島市に帰還

12:00

救護活動対策 会議を福島県 支部で開催

17:45

福島県支部が 他県支部からの 救護班要請を解除

19:00

3/12日中 3/12夜間 3/13夕方 3/14日中

日赤のDMAT・ 救護班12チームが 福島県に展開

~16:00 他県からの救護班が全て一時撤退し、

福島赤十字病院のみが救護活動を

展開

原発事故および避難の状況

日赤救護班の派遣状況

避難指示が拡大する混乱の中での住民避難

日赤救護班の展開図

参考:赤十字原子力災害情報センター デジタルアーカイブより

宮城県へ

・福島第一原発事故 日赤支援活動の軌跡: http://ndrc.jrc.or.jp/timeline-jrcsupact01/ ・救援者たちの証言 -福島赤十字病院-: http://ndrc.jrc.or.jp/special/relief1/ ・救援者たちの証言 -福島県外からの救援-: http://ndrc.jrc.or.jp/special/relief2/

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I.- ⑧ 日赤の福島県への救護班派遣に関する方針(2011年3月13日~3月22日)

本社災害対策本部よりブロック代表支部あてに、以下のような方針が伝えられました。

当面は被害の大きい岩手県・宮城県を中心に活動を行うこと、福島県は現地のニーズに応じて実施するように指示をした。

3/13

政府の対応に準じて、福島第一原子力発電所から半径30km以内での活動については、行わないとの方針を通知した。

3/15

福島県への救護班の派遣方針として、「福島市内には第2ブロック支部から2個班、会津市内には第1と第4ブロック支部から各1個班の派遣を行うこと」を通知した。 また、福島県での救護班の活動基準として

「被ばく医療チームガイダンスの概要」を通知した。

3/19

福島県への救護班の派遣については、次の条件の下に全ブロックから救護班を派遣すると通知した。 可能な限り診療放射線技師を帯同させること

救護要員の安全対策のため現地に広島・長崎の両原爆病院から専門家を派遣し、安全対策の情報やアドバイスを受けられる体制を確保する

線量計や防護服及などの防護資機材を常備すること

3/22

関連する事項

福島県に展開していた救護班が福島県支部に集まって、「放射線下における救護活動対策会議」が開催され、現段階では安全対策が確保できないため、派遣元の支部や病院の指示を受けることを決定した。

3/13:福島県支部における対策会議

赤十字国際委員会の専門家が日赤本社を来訪し、原子力災害対応への助言を行った。 (1) ICRPの勧告に基づき1任務につき1ミリシーベルトを上限とすること (2) 救護要員は個人線量計を携帯して任務にあたること (3) 滞在時間を短くするため夜は安全な場所に退避して休むこと (4) 専門家が常にアドバイスできる体制を確保すること (5) 各要員の現地での滞在時間や場所、被ばく量などを記録しておくこと

3/19:赤十字国際委員会からアドバイスを受ける

・福島第一原発から30km圏内での活動は行わない。 ・空間線量計率20μSv/h以上で本部に連絡し指示を仰ぐ(100μSv/hで退避) ・個人線量計の携帯:積算線量1mSvで退避 ・内部汚染対策:タイベックススーツの着用 ・40歳以下の職員へのヨウ素剤の保持 ・N95呼吸防護の保持

被ばく医療チームガイダンスの概要

広島・長崎の原爆病院から派遣された放射線アドバイザーによる、県支部職員、血液センター職員に対して放射線の基礎知識に関するレクチャーが行われた。以降、救護班に対するレクチャーが継続された。

3/26:放射線の基礎知識

他県からの救護班は全て一時撤退したため、この間福島県では、「県外」からの継続的な派遣が途絶えた。

参考:赤十字原子力災害情報センター デジタルアーカイブより 福島原発事故 救援者への認識調査から: http://ndrc.jrc.or.jp/relief/

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I.- ⑨ 県外避難者への対応について

福島第一原発事故による影響で広域避難の実施が避けられなくなったため、2011年3月15日に福島県知事から全国知事会に対して、以下

のような「緊急要請」がありました。この要請を受けて全国知事会では、山形県、茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県及び新潟県に対し、体育館、ホール、文化会館、研修所などを一次避難所として確保することを、さらに全都道府県に対し、都道府県、市町村が保有する公営住宅及び賃貸住宅など民間住宅を避難者の生活拠点(仮住まい)として提供されたい旨依頼文書を出しました。

緊急要請 全国知事会長 麻生 渡 様

福島県知事 佐藤 雄平

平成23年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震は、本県に未曾有の被害を与え、原子力発電所の事故とも相まって、10万人を超える県民が避難を余儀なくされております。

想定をはるかに超える広範な被災と避難者の発生により、隣接県等への自主避難が予想されます。

本県県民の生命、生活を守るため、各都道府県への避難者の受け入れについて、特段のご理解をお願いします。

平成23年3月15日

これを受けて、福島県以外の各県においても避難所などが開設され、避難者の受入れが始まりました。県外避難者への対応は、全てが日赤の全社的な対応として行われたものではなく、避難先の救護所での救護活動や、被災者に対するこころのケアの対応などは、各都道府県支部により自発的に可能な範囲で行われました。

ここでは、福島第一原発事故の際に、各支部により実際に行われた避難者支援の活動例について紹介します。

① グランドプリンスホテル赤坂に福島県からの避難してきた方に対して、日赤医療センターの臨床心理士が、ホテルに設けられた健康相談室で週に2回「こころのケア」活動を行いました。 デジタルアーカイブで紹介するコンテンツ:

http://ndrc.jrc.or.jp/infolib/cont/01/G0000001nrcarchive/000/071/000071800.pdf

② 君津市内に福島県から避難してきた方に対して、食事会、演奏会、旅行会などを行いました。(千葉県支部・君津市赤十字奉仕団)

③ 秩父市の秩父ミューズパークにいわき市や南相馬市から避難してきた方に対して、炊き出しなどを行いました。(埼玉県支部・秩父市赤十字奉仕団)

④ 厚木市の七沢自然ふれあいセンターに浪江町などから避難者してきた方に対して、避難所生活の支援を行いました。(神奈川県支部・厚木市赤十字奉仕団)

⑤ 小山市の栃木県県南体育館に福島県から避難してきた家族の子どもたちに、紙芝居やゲーム等の遊びを通して交流を行いました。 (栃木県支部・小山城南高校JRC (青少年赤十字) 部)

(全国知事会資料より抜粋)

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I.- ⑩ 2011年11月 国際赤十字社・赤新月社連盟 (IFRC) 総会での決議

国際赤十字・赤新月社連盟 (IFRC) [会長:近衞忠煇日本赤十字社社長] は、2011年11月23日~25日にジュネーブで開催された第18回総会で、IFRCや各国赤十字社が原子力災害の被災者救援に役

割を果たすことなどを盛り込んだ、「原子力事故がもたらす人道的影響に関する決議」を採択しました。

連盟総会で発言する近衞忠煇IFRC会長 (日本赤十字社社長)

• 2011年の福島第一原子力発電所の事故が日本の被災者の健康や安全、持続可能な生活、社会経済的状況に与えた危険、およびこれまでに明らかになったリスクを深く憂慮する。

• 日本赤十字社が直面する持続的な課題と福島での人道的影響に対応する同社のたゆまぬ努力、および、姉妹社や連盟事務局、赤十字国際委員会(ICRC)の示した驚くべき団結力に感謝する。

• 25年前のチェルノブイリの事故がもたらした広範囲にわたる被害と今日にまで及ぶ東欧諸国の個人や地域社会への長期的影響を想起する。

• ベラルーシ、ロシア、ウクライナの各赤十字社がアイルランド政府と日本赤十字社、アイスランド赤十字社の継続的支援を受け、「チェルノブイリ人道支援・復興支援プログラム」の枠組みで実施した救命医療スクリーニングや社会的・心理社会的支援の取り組みを称賛する。

• 原子力発電所などの核施設の存在する場所であればどこででも事故は起こりうるという重大な事実の象徴として福島とチェルノブイリの悲劇を受け止め、最も厳格な予防手段だけでなく災害対応への万全の備えも要求する。

• 1986年の第25回赤十字国際会議で採択された技術災害などの災害対応における赤十字・赤新月運動の役割に関する決議21、および1995年の第26回赤十字・赤新月国際会議で採択された「技術災害対応における赤十字・赤新月社の役割に関するガイドライン(Guidelines on the role of the Red Cross and Red Crescent Societies in response to technological disasters)」に関する決議4を想起する。

• 連盟メンバー各社の被災者支援計画について、原子力事故発生時とその後の人道的影響への対応策とスタッフやボランティアの保護策を継続的に構築・改善することを再確認する。

• 原子力災害への対応は、2009年の総会で採択された「2020年に向けての戦略」に由来するIFRCの包括的災害管理の重要な一環であることを確認する。

• 核物質・放射線・生物由来物質・化学物質の関与する現場での対応力と活動能力を構築するためのICRCの取り組みを歓迎し、そしてその取組内容を各国赤十字・赤新月社や連盟事務局に提

供する用意があることを感謝する。こうしたノウハウは、各国赤十字・赤新月社による原子力事故への初期対応において、重要な要素となる。

• 更なる国際的な連携が原子力有事の対応に必要とされていることを受け止め、そのためにICRCや他の人道組織、国際原子力機関(IAEA)、他の国連組織と協力して原子力有事への準備と対応に当たる決意を表明する。

• 原子力事故の潜在的な人道的影響に関する知識を蓄え、緊急対応計画策定における各国赤十字・赤新月社や連盟事務局、ICRCの役割と責任をさらに明確化し、核施設に近接する地域社会と

協力し、予測される事故に対する住民の認識や事前の備えを確認し、他の(赤十字・赤新月運動以外の)関係者と連携して原子力事故発生時に犠牲者へのアクセスを確保できるよう取り組む。

• 事務総長に対し、原子力有事への準備をより適切に計画するため、内外の知識や証拠に基づいたデータ・情報の共有を促進し、これらの知識を各国赤十字・赤新月社のために一元管理する適切な手段を(各国の社やICRCとの協議の上で)確立するよう要求する。

• 連盟事務局に対し、国際災害対応法(IDRL)についての同事務局の研究・支援・政策提言を、特に赤十字・赤新月社の原子力事故への対応に関する国際法問題にまで拡大するよう依頼する。

• 各国政府が安全措置を講じ、地域社会レベルを含めた災害対策のための資源確保と災害対策の促進に取り組むため、いかに人道外交活動を最も効果的に展開していくかについて、各国赤十字・赤新月社と協議するよう事務総長に依頼する。

• この決議の履行について、次の2013年の総会で進捗状況を報告するよう事務総長に依頼する。

「原子力事故がもたらす人道的影響に関する決議」の内容 ‘Preparedness to Respond to the Humanitarian Consequences of Nuclear Accidents’

参考:赤十字原子力災害情報センター デジタルアーカイブより http://ndrc.jrc.or.jp/archive/item/?id=M2013091919392484046

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II. 目的・対象範囲等

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II. 目的・対象範囲等 補足資料一覧

II.- ① 日本の主な原子力施設

II.- ② 世界の原子力施設

II.- ③ 過去に起こった主な原子力事故

II.- ④ 赤十字の使命

II.- ⑤ 原子力災害時の日赤の活動の法的根拠

II.- ⑥ 日本赤十字社の緊急被ばく医療指定機関と関連医療機関

II.- ⑦ 放射線防護資機材

II.- ⑧ 急性放射線症と低線量被ばく

II.- ⑨ 放射性物質による環境汚染

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II.- ① 日本の主な原子力施設

泊発電所

東通原子力発電所

女川原子力発電所

福島第一原子力発電所

福島第二原子力発電所

東海第二発電所

浜岡原子力発電所

伊方発電所

川内原子力発電所

玄海原子力発電所

島根原子力発電所

高浜発電所

大飯発電所

美浜発電所

敦賀発電所

志賀原子力発電所

柏崎刈羽原子力発電所

研究炉

研究炉

研究炉

加工施設

加工施設

再処理施設

加工施設

ウラン濃縮工場

再処理工場

低レベル放射性廃棄物埋設センター

高レベル放射性廃棄物貯蓄管理センター

日本の主な原子力施設の位置

原子力発電所

研究炉

燃料加工施設他

日本国内には、17カ所の原子力発電所に、運転可能な原子炉が50基、廃炉措置中の原子炉が6基存在しています。 その他に、日本原子力研究開発機構の所有する研究炉が3カ所に8基、また燃料加工・再処理施設および廃棄物埋設施設などがあります。

(原子力規制委員会Webページから、2016年4月現在) https://www.nsr.go.jp/jimusho/

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II.-②世界の原子力施設

出典:IAEA REFERENCE DATA SERIES No.1 (2006, 2011, 2016 Edition)

米国

世界の原子力発電の見込みこれは、国際原子力機関 (International Atomic Energy Agency:

IAEA) による、世界の原子力発電の見通しを示したものです。IAEAは2030年までに、低めに見積もって約1.9%、高めに見積もって約56%

の増加を予測しています。これは、100万kw級の発電用原子炉が、7-

215基増えるとの予測です。特に、東アジアでの大きな伸びが予測されています。

西欧 東欧 東アジア

東南アジア・太平洋地域中東・南アジアアフリカ

北米

中南米

単位:Gw(e)

(100万kw)

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II.- ③ 過去に起こった主な原子力事故 (1/4)

1. 発生時期: 1979年3月28日 2. 発生場所・施設: 米国ペンシルベニア州 スリーマイル島原子力発電所 2号炉 3. 事故のタイプ: 原子炉冷却材喪失による炉心溶融事故 (INES レベル5の事故) 4. 事故の概要 事故を起こした2号炉は加圧水型原子炉 (PWR)で、保守の際のインシデント (事故になり得る事件) に「機器の故障」と「人為的ミス」が重なったことが原因とされています。

事故当日は、復水器のフィルタ樹脂を洗浄のために移送する作業が行われており、この時空気作動弁が閉じるという異常が発生しました。これがきっかけとなって、2次冷却水系の主給水ポンプとタービンが停止してしまい、2次冷却水の供給が行われないことで1次冷却系を含む炉心の圧力が上昇しました。このため、自動的に安全弁が開き、原子炉は緊急停止 (制御棒を挿入し核反応を停止) 、非常用炉心冷却装置 (ECCS) が起動しました(インシデント)。 この時、圧力が下がっても安全弁が開いたまま (機器の故障) となって原子炉冷却材が蒸気となって失われるとともに、運転員が非常用炉心冷却装置を手動停止してしまった (人為的ミス) ため、冷却材が喪失し炉心溶融に至りました。 5. 事故による被害 事故により放出された放射性物質は、放射性希ガスのヘリウム、アルゴン、キセノンなどが約9万3,000テラベクレル (テラは1012)で、周辺住民の被ばくは最大でも1mSv程度とされています。

スリーマイル島原発事故

スリーマイル島原発事故の場所

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II.- ③ 過去に起こった主な原子力事故 (2/4)

1. 発生時期: 1986年4月26日 2. 発生場所・施設: 旧ソビエト連邦ウクライナ共和国 チェルノブイリ原子力発電所 4号炉 3. 事故のタイプ: 原子炉暴走による炉心溶融と爆発事故 (INES レベル7の事故) 4. 事故の概要 事故を起こした原子炉は、ソ連が独自に開発した黒鉛減速沸騰軽水圧管型原子炉 (RBMK) で、試験運転中に行った実験中に、計画変更や規則違反が何度も行われ、さらにこの原子炉の特性が加わって原子炉の温度が短時間に上昇、水蒸気や水素が急激に発生し爆発・火災が起こりました。

ソ連政府は事故のことを内外に公表せず、また事故直後の周辺住民の避難措置も取りませんでした。このことにより、住民は高線量の放射性物質による被ばくを受けることになってしまいました。 5. 事故による被害 この事故では、運転員や事故対応にあたった消防の隊員などで、事故の発生した1986年中に急性放射線障害で死亡したのは28人と記録されています。 現在のウクライナ、ベラルーシ、ロシアの3か国には大量の放射性物質が広範囲に放出されました。主な放射性物質は、ヨウ素131 (176万テラベクレル)、セシウム137 (8万5,000テラベクレル)、ストロンチウム90 (1万テラベクレル) などです。これらの国では、放射性ヨウ素による内部被ばくの影響で、子どもの甲状腺が

んの発生が増えていることが判明しています。また、被災者のストレスなどによる影響が健康被害につながることから、その対策の必要性について強調されてきました。

チェルノブイリ原発事故

チェルノブイリ事故によるセシウム137の地表への蓄積量 (出典:UNSCEAR) チェルノブイリ原発事故の場所

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II.- ③ 過去に起こった主な原子力事故 (3/4)

東海村JCO臨界事故の概要

1. 発生時期: 1999年9月30日 2. 発生場所・施設: 茨城県那珂郡東海村 ㈱ジェー・シー・オー (JCO) 東海事業所 3. 事故のタイプ: 核燃料加工中に発生した臨界事故 (INES レベル4の事故) 4. 事故の概要 核燃料加工施設内で核燃料を加工中にウラン溶液が臨界状態に達し、作業をしていた3名の作業員が至近距離で中性子線を浴びました。臨界状態に至らないように国が規定したマニュアルに違反した作業手順が行われていたことが原因となりました。 5. 事故による被害 3名の作業員の内、致死量を超える被ばくをした2名が、専門治療チームの懸命な治療にも関わらず、日本国内で初めての事故被ばくによる死亡者となりました。亡くなった作業者はそれぞれ16-20シーベルト (Sv)、6-10 Sv の被ばくをしたと推定されます。回復した1名の作業員は1-4.5 Svの 被ばくをしたと推定されます。また、事業所内で600名を超える方が被ばくしました。 事故現場から半径350m以内の住民への避難要請、半径500m以内の住民への避難勧告、半径10Km以内の住民への屋内退避勧告がなされました。 6. その他 この事故を受けて「原子力災害特別措置法」が同年12月に制定されるなど、その後の原子力安全対策に影響を与えました。

東海村JCO臨界事故の場所

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II.- ③ 過去に起こった主な原子力事故 (4/4)

出典:電気事業連合会 原子力・エネルギー図面集2012

INES (International Nuclear Event Scale: 国際原子力事象評価尺度) とは、国際原子力機関 (IAEA) と経済協力開発機構原子力機関 (OECD/NEA) が策定した原子力事故・故障の評価の尺度で、原子力事故・事象の程度を7段階で表しています。

国際原子力・放射線事象評価尺度 (INES)

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II.- ④ 赤十字の使命

日本赤十字社のミッションステートメントは、3つの要素から構成されます。

日本赤十字社の使命

日本赤十字社の使命は、活動にかかわる全ての人(社員、ボランティア、職員等)が共有するものです。赤十字の普遍的な使命である人道的任務の達成を「人間のいのちと健康、尊厳を守ります。」と明解に表現し、あわせて「苦しんでいる人を救いたいという思いを結集し」により、多くの人びとの温かい思いを結集して赤十字運動を推進して行くことを強調しました。

わたしたちの基本原則

わたしたちが、日本赤十字社の使命を達成するために、世界中の赤十字が共有している7つの基本原則(赤十字の基本理念と行動規範)に従って行動することを明確に宣言しました。1965年にウィーンで開催された第20回赤十字国際会議で宣言され、1986年にジュネーブで開催された第25回

赤十字国際会議で一部改訂採択された「赤十字の基本原則宣言」の原文から趣旨を汲み取り、簡明に表現しました。 日本赤十字社ホームページ: http://www.jrc.or.jp/about/principle/

わたしたちの決意

日本赤十字社の使命、すなわち「人道の実現」を達成するために、職員やボランティアなどのわたしたち一人ひとりが心しなければならないこと、具体的に行動していかなければならないことを決意として表明しました。

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II.- ⑤ 原子力災害時の日赤の活動の法的根拠

日本赤十字社が原子力災害時に活動を行うことを位置付けている法律などについて説明します。 日本赤十字社法 日本赤十字社は、1877年5月1日に設立された「博愛社」が前身です。その後、1886年に日本政府がジュネーブ条約に加盟したのを機に、1887年に社名を「日本赤十字社」とし、同年赤十字国際委員会から国際赤十字の一員として正式に承認されました。 1901年に、「日本赤十字社条例」(勅令)が発布されていましたが、第ニ次世界大戦後勅令が廃止されたため、政府は、日本赤十字社に新たな法的根拠を与え、国際的、中立的な人道機関として発展させるため、1952年に日本赤十字社法が制定されました。同法では、日本赤十字社を、中立性をもった人道的な活動を行う認可法人として定義されています。 日本赤十字社法において、「非常災害時又は伝染病流行時において、傷病その他の災やくを受けた者の救護を行うこと。(第27条2項)」、「国は、赤十字に関する諸条約に基く国の業務及び非常災害時における国の行う救護に関する業務を日本赤十字社に委託することができる。(第33条)」と、日赤の災害時の役割が規定されています。 災害対策基本法と指定公共機関 災害対策基本法は、1959年の伊勢湾台風による被害を契機として、「国民の生命、身体及び財産を災害から保護し、もって社会秩序の維持と公共の福祉の確保に資するべくことを目的とする」ため、 1961年に制定されました。防災対策に関して、「災害予防」、「災害応急対策」、「災害復旧」という各段階ごとに、各機関の果たすべき役割や権限を規定している法律です。

日赤は災害対策基本法の規定に基づいて「指定公共機関」に指定されており、日赤としての防災計画を作成することや、計画に基づき国や自治体などと協力して災害発生時の対応や、被害最小化の対応を行う責務があります。 災害救助法

災害救助法は、「災害に際して、国が地方公共団体、日本赤十字社その他の団体及び国民の協力の下に、応急的に、必要な救助を行い、災害にかかった者の保護と社会の秩序の保全を図ること。(第1条)」を目的に、1947年に制定されました。同法の中では、日赤は国や都道府県の要請に基づき、救助に当たることが義務付けられています(第15条、第16条)。また、救助に際して発生した費用については、原則として都道府県が負担することが規定されています。 原子力災害特別措置法 原子力災害特別措置法は、1999年の東海村JCO臨界事故を契機として、「原子力災害の特殊性にかんがみ、原子力災害に関する事項について特別の措置を定めることにより、原子力災害に対する対策の強化を図り、もって原子力災害から国民の生命、身体及び財産を保護することを目的とする。(第1条の要約)」ために、同年に制定されました。その後、福島第一原発事故の反省にたち、2012年9月に改訂されました。

指定公共機関である日赤は、「国、地方公共団体、原子力事業者並びに指定公共機関及び指定地方公共機関は、原子力災害予防対策、緊急事態応急対策及び原子力災害事後対策が円滑に実施されるよう、相互に連携を図りながら協力しなければならない。(第6条)」に基づき、原子力災害に対して関係機関と協力して対応にあたることが規定されています。

出典:日赤ホームページ、内閣府防災情報のページ、一般財団法人 高度情報科学技術研究機構 原子力百科事典‘ATOMICA’より

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泊発電所

女川原子力発電所

福島第一原子力発電所

福島第二原子力発電所

東海第二発電所

浜岡原子力発電所

伊方発電所

川内原子力発電所

玄海原子力発電所

島根原子力発電所

高浜発電所

大飯発電所

美浜発電所

敦賀発電所

志賀原子力発電所

柏崎刈羽原子力発電所

研究炉

研究炉

加工施設・再処理施設

石巻赤十字病院

福島赤十字病院

水戸赤十字病院

福井赤十字病院

長浜赤十字病院

舞鶴赤十字病院

松江赤十字病院

松山赤十字病院

唐津赤十字病院 広島赤十字・原爆病院

長崎原爆病院

II.- ⑥ 日本赤十字社の緊急被ばく医療指定機関と関連医療機関

日赤の緊急被ばく医療に関する施設

主な原子力発電所・原子力施設

日赤の緊急被ばく医療指定機関

関連医療機関

二次被ばく医療機関

長浜赤十字病院

松山赤十字病院

唐津赤十字病院

初期被ばく医療機関

伊達赤十字病院

石巻赤十字病院

水戸赤十字病院

福井赤十字病院

大津赤十字病院

舞鶴赤十字病院

鳥取赤十字病院

松江赤十字病院

関連医療機関

福島赤十字病院

広島赤十字・原爆病院

日本赤十字社長崎原爆病院

日本における緊急被ばく医療体制のもと、日赤には10の病院が緊急被ばく医療機関に指定されています。(2016年4月現在) (8つの初期被ばく医療機関と3つの二次被ばく医療機関) これら11の病院に加えて、広島・長崎の両原爆病院、福島第

一原発事故による原子力災害の対応を経験した福島赤十字病院が連携することにより、日赤の原子力災害に対する備えを強化しているところです。

伊達赤十字病院

大津赤十字病院

鳥取赤十字病院

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II.- ⑦ 放射線防護資機材

活動従事者の安全を守るための放射線防護資機材としては、放射線量や放射線被ばく量などを測定するための測定機器と、放射性物質や放射線が存在する場所で作業する際に、被ばくによる人体への影響をやわらげるための防護服などがあります。 1. 放射線測定機器 放射線の測定機器には、(1)空間線量率の測定、(2)人体や衣服、地表などへの放射性物質による汚染の測定、(3)被ばく線量を測定するものがあり、それぞれの目的に応じて適した測定機器が使用されます。 (1) 空間線量率の測定には、シンチレーション現象と呼ばれる放射線による物質内の電子の高エネルギー

化現象を利用した「シンチレーションサーベイメータ」や、電極内に満たされた不活性ガスが電離放射線によって電離することを利用した「電離箱式サーベイメータ」が使われます。 (2) 表面の汚染の測定には、高電圧をかけたガイガーミュラー管に放射線が侵入すると放電が発生することを利用した「ガイガーミュラー管式サーベイメータ」が使われます。 (3) 個人の被ばく線量の測定には、半導体を用いて作られた線量計や、特殊なガラスに放射線を照射した

のち紫外線を当てると発光することを利用した線量計など様々な「個人線量計」が、被ばく線量や長期間の積算線量の測定に使われます。 2. 放射線防護服

防護服の目的は、放射性物質が体に付着したり体内に侵入したりすることを防ぐことです。このため、体の一部でも外部に露出することを防止し、隙間を遮蔽して放射性物質の侵入を防ぎます。放射線に対しては、透過性の弱いアルファ線の遮蔽効果はありますが、ベータ線・ガンマ線・中性子線などの遮蔽効果は期待できませんので、放射線量の測定と合わせて安全に考慮することが重要となります。

放射線防護服の例 • フード付き防護服 • フィルタ付き防塵マスク • 密閉型ゴーグル • 手袋 (綿手袋+汚染防護ゴム手袋) • シューズカバー • ケミカルテープ (隙間防止用)

シンチレーションサーベイメータ (空間線量率の測定に使用)

電離箱式サーベイメータ (空間線量率の測定に使用)

ガイガーミュラー管式サーベイメータ (表面の汚染の測定に使用)

個人線量計 (個人の被ばく線量の測定に使用)

放射線測定機器の例

出典:環境省による放射線による健康影響等に関する統一的な基礎資料 平成25年度版より

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II.- ⑧ 急性放射線症と低線量被ばく

急性放射線症とは

急性放射線症(急性放射線症候群 ARS: Acute Radiation Syndrome とも言う)は、高線量(おおよそ全身に1Gr以上)の被ばくを短時間に受けた際に発生

する身体障害のうち、被ばく直後から数か月以内に現れる障害を言います。急性障害は、組織や臓器を構成している細胞の細胞死によって起こります。一般的に、細胞分裂が盛んな組織ほど細胞死が起きやすいと言われており、造血臓器、消化管、生殖腺、皮膚等に影響が現れます。そのため、症状としては、造血障害や出血、嘔吐や下痢、皮膚障害や脱毛、頭痛や発熱などが現れ、多量の放射線を浴びている場合には死に至ることもあります。

チェルノブイリ原発で事故直後の現場での事故対応にあたってその後死亡した犠牲者の多くや、東海村JCO臨界事故で死亡した作業者は、急性放射線症が原因です。急性放射線症は、高い線量を短時間に受けるので、原子力施設内などの線源に近いところで起こることがほとんどです。

急性放射線症の治療には、高度の専門的診療が必要であり、日本の緊急被ばく医療体制のもとでは、三次被ばく医療機関である「放射線医学総合研究所」や「広島大学」が対応に当たります。

低線量被ばくとは

急性放射線症が発症するような高線量被ばくに対して、低線量被ばくという言葉が使われます。(低線量について、国際的に合意された明確な定義はありません。) 広島・長崎の原爆被害者に対する半世紀以上にわたる疫学的調査の結果からは、被ばく線量が100mSvを超えるあたりから、被ばく線量に応じて発がんのリスクが高まる結果が確認されると言われています。一方、100mSv以下では、明確な相関関係を証明できていません。他の要因 (生活習慣、食事、環境汚染、喫煙・飲酒、遺伝など) のため、明確なリスクの増加を証明することは難しいと言われています。

確定的影響と確率的影響

放射線被ばくによる影響は、「確定的影響」と「確率的影響」の二つに分類されます。

「確定的影響」とは、被ばく量がある「しきい値」を超えると、急激に急性放射線症が発生する確率が高まったり、重篤化の程度も増加する影響を言います。確定的影響は、被ばくによる細胞死により発生し、死亡する細胞の数があるレベルに達するまでは他の細胞が機能を補うため症状が現れませんが、それを超えると症状が現れます。このため、しきい値が存在します。

しきい値:一般的にある値以上で効果が現れ、それ以下では効果がない境界の値を「しきい値」という。

放射線影響の分野では、皮膚の紅斑、脱毛、不妊などの確定的影響には、それらの症状が発生する最小の線量が存在する。これを「しきい値」という。

「確率的影響」は、被ばくによる細胞の突然変異による発がんや遺伝的影響を言います。動物を使った研

究では、被ばく線量が高くなるほど発がんの確率が高くなるので、確率的影響と呼ばれます。国際放射線防護委員会 (ICRP) の推定では、年間100mSvの被ばくを超えると、生涯発がんリスクが0.5%上昇し、さらに100mSvごとに0.5%程度上昇する比例関係が見られるとされています。一方100mSv以下では、他の要因による影響との区別がつきにくく、被ばく線量との関係を明確にすることが困難と言われています。

放射線防護の考え方

放射線防護の観点では、安全を重視し被ばくによるリスクを減らすため、100mSv以下でも影響が比例するという仮定にもとづいた措置を採用しています。ICRPの勧告では、「通常の生活に支障のでない範囲で合理的に実現可能な範囲までに抑えること」と言われています。

影響なし

しきい値

被ばく線量

影響の現れる確率

仮定

被ばく線量 影響の現れる確率

確定的影響

確率的影響

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II.- ⑨ 放射性物質による環境汚染

長期化する放射性物質による環境汚染

原子力事故が発生すると、放射性物質を含んだ放射性雲 (プルーム) が大気中を流れて行きます。この放射性物質は、大気中を拡散中に少しずつ落ちてくる

ほか、雨・雪と一緒に落ちて体の表面や植物の葉や枝に付着したり、地表、河川・湖沼などに蓄積します。さらに、植物に付着した放射性物質は、雨により流され、地表の窪地や河川などに流れ込み、やがては海に流れて行くものもあります。

この間、呼吸と一緒に放射性物質を体内に吸い込むと、体内の放射性物質からの放射線により「内部被ばく」を受けるリスクがあります。また、空気中、体の表面、地表などの放射性物質からの放射線により「外部被ばく」を受けるリスクがあります。さらに、放射性物質に汚染した水道水、汚染した土壌で育った穀物・野菜、汚染した牧草などを食べた畜産品、汚染した海洋で育った水産物などの食品を摂取することで「内部被ばく」を受けるリスクもあります。

原子力事故では、セシウムやストロンチウムなどの半減期の長い放射性物質が放出されるため、これらの被ばくリスクが長時間続きますので、被災者や活動従事者に対しては、被ばくの影響をできるだけ少なくする配慮が必要になります。

福島第一原発事故後には、福島県内各地にて空間線量率の測定が常時行われて公表されています。食品については、一時被災地からの出荷停止措置がとられましたが、その後食品に含まれる放射性物質の基準値をさらに厳しくし、検査する体制が作られました。

主な放射性物質の半減期

出典:環境省ホームページの放射線による健康影響等に関する統一的な基礎資料より一部修正

元素記号 物質名 半減期

133Xe キセノン133 5.2日

131I ヨウ素131 8日

134Sc セシウム134 2.1年

90Sr ストロンチウム90 29年

137Cs セシウム137 30年

239Pu プルトニウム239 24,000年

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III. 活動時の留意事項

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III. 活動時の留意事項 補足資料一覧

III.- ① 要配慮者への対応について

III.- ② 日赤のこころのケア活動

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III.-①要配慮者への対応について

1.要配慮者とは災害対策基本法では、要配慮者とは、「高齢者、障害者、乳幼児その他の特に配慮を要する者」と定義されています。(第8条2項15号)

ガイドライン研究会の中では、高齢者、障害者、乳幼児に加え、妊産婦、疾患を持った人、外国人なども対象として、どのような対応が必要になるかについて検討してきました。

出典:東京電力福島第一原子力発電所事故に対するDMAT 活動と課題国立保健医療科学院年報 2011 Vol.60 No.6よりhttp://www.niph.go.jp/journal/data/60-6/j60-6.html

大熊町双葉病院からの患者避難の状況2.原子力災害時の要配慮者の持つ支障

要配慮者は、自然災害時においても「情報の認知」、「移動(避難)に関すること」、「生活を維持する行動」、「環境への適応に関すること」などについての支障が現れやすいものです。

例えば、視聴覚障害者や外国人においては、視聴覚や言語の問題で緊急時の情報伝達手段では災害に関する情報を認知しにくく、高齢者や身体障害者においては、単独では避難ができないなど避難行動上の制限があります。人工呼吸器などの医療機器を装着している場合は、電源の喪失などにより生命の危機にさらされることもあります。また、障害者の持つ障害特性によっては、不特定多数の人が集まる避難所や不慣れな環境に適応できない場合があります。 これらの支障は、災害全般で生じ得ること

ですが、原子力災害の特異性である、「災害の影響が広域化する」、「災害の影響が長期化する」、「放射線を五感では把握できない」ことなどにより、より増幅することが考えられます。

福島第一原発事故では、要看護・介護の高齢者や障害者が避難のための長距離移動により命を落としたり、長引く避難所生活による心身のストレスで高齢者が体調を崩し死亡したりするケース(震災関連死)が多くありました。

福島県では震災を直接的な被害による直接死よりも、その後の避難生活での体調悪化や過労など間接的な原因で死亡する震災関連死が上回っています。

長期避難生活による震災関連死者数

3.今後の検討課題

要配慮者への対応については、日赤単独では解決できない課題です。要配慮者の属性別の専門の支援団体との連携や、自治体などとへの働きかけを行いながら、検討を進めて行きます。

(人)

(出典:復興庁ホームページのデータより作成 2017年3月現在)(出典:警察庁ホームページのデータより作成 2016年12月現在)

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III.- ② 日赤のこころのケア活動

1. こころのケアとは

大規模な災害などにより、家族や友人を失ったり、また避難所での不自由な生活を強いられたりすると、心に大きなダメージを受け、時に体調の変化など身体的な症状となって表れることがあります。日本で「こころ」の問題が一般に注目されるようになったのは、1995年の阪神・淡路大震災でした。

国連の人道機関間常任委員会が提唱しているガイドラインのなかでは、災害などの非常事態時の「こころのケア」として、二つの言葉を使っています。 ひとつは、精神科医師などの専門家が行う精神科医療や心理療法による「精神保健 (Mental Health)」で、もう一つは特別な訓練を受けた非専門家が行う「心理社会的支援 (Psychosocial Support)」です。日赤のこころのケア活動は、この心理社会的支援にあたります。 2. 日赤のこころのケア活動 国際赤十字・赤新月社連盟 (IFRC) は、1994年にデンマーク赤十字社と協力してコペンハーゲンに、心理的支援センター (Reference Centre for Psychological Support) を設立し、心理的支援プログラム (Psychological Support Program: PSP) のガイドラインの作成とその普及を行っています。日赤は、阪神淡路大震災での教訓をもとに、IFRCが作成した心理社会的支援のプログラムにもとづいた「こころのケア」を災害時の救護活動の一つとして2003年より取り入れました。そして全国92の赤十字病院の看護師を中心に、こころのケア活動の指導者とスタッフを養成してきました。

日赤のこころのケアは、被災者一人一人に対するこころのケアである「心理的支援」と、避難所や仮設住宅、地域などにおいて、被災者とその家族や友人などとの人間関係や、被災者の属する地域社会との関係を支援する「社会的支援」からなっています。心理的支援は、精神保健の専門家でないボランティアでも、訓練を受ければ行うことのできるケアであり、「支持」、「傾聴」、「共感」、「具体的な支援」の4つの要素からなる、「こころの救急法」がその基本となっています。

日赤のこころのケア活動は、特別に訓練を受けた「こころのケア要員」が避難所や仮設住宅、地域などを巡回しながら、被災者の悩みなどを聞いてその力になれるよう支援するとともに、ストレスやその対処方法を説明して安心感・安全感を築きます。また、医師などの専門家の介入が必要となった場合は、連携して支援にあたります。

心理的支援と社会的支援 日赤のこころのケア活動

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IV. 事前対策

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IV. 事前対策 補足資料一覧

IV.- ① 日赤の活動従事者向けの放射線防護資機材の整備

IV.- ② 救護班要員への教育訓練について

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IV.- ① 日赤の活動従事者向けの放射線防護資機材の整備

ブロック代表支部

デジタル個人線量計 310個

電離箱式サーベイメータ 7個

GMサーベイメータ 2個

放射線防護服 310セット

日赤は、将来起こるかもしれない原子力災害に適切な対処ができるように、活動従事者の放射線防護のための資機材を本社および全国の各ブロック・各支部に配置しました。配置したのは、放射線計測機器である(1)デジタル個人線量計、(2)電離箱式空間線量測定用サーベイメータ、(3)身体汚染スクリーニング用GM

サーベイメータと、放射線防護服です。個人線量計は各支部および各施設、電離箱式サーベイメータは各支部、GMサーベイメータは各ブロック代表支部に配置しました。

デジタル個人線量計 476個

電離箱式サーベイメータ 9個

GMサーベイメータ 1個

放射線防護服 476セット

デジタル個人線量計 385個

電離箱式サーベイメータ 8個

GMサーベイメータ 1個

放射線防護服 385セット

デジタル個人線量計 273個

電離箱式サーベイメータ 6個

GMサーベイメータ 1個

放射線防護服 273セット

デジタル個人線量計 203個

電離箱式サーベイメータ 8個

GMサーベイメータ 1個

放射線防護服 203セット

デジタル個人線量計 322個

電離箱式サーベイメータ 9個

GMサーベイメータ 1個

放射線防護服 322セット

デジタル個人線量計 66個

電離箱式サーベイメータ 3個

GMサーベイメータ 3個

放射線防護服 531セット

本社・日赤医療センター

第1ブロック支部

第3ブロック支部

第6ブロック支部

第5ブロック支部

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IV.- ② 救護班要員への教育訓練について

救護班要員などの活動従事者が、適切な放射線防護の知識を持つことにより活動時の安全を確保できるよう、「原子力災害対応基礎研修会」を2014年11月よ

り始めました。この研修会は、東日本大震災の教訓を踏まえた原子力災害対策強化の取り組みの一つです。「緊急被ばく医療指定機関意見交換会(今後は緊急被ばく医療アドバイザー会議と名称が変わります)」での検討内容を踏まえ、全国の支部や赤十字病院の医師、診療放射線技師、看護師、事務職を対象として、①放射線の基礎知識、②原子力災害に関する講演、③放射線防護資機材の使い方の実習、④実際の活動を想定した上でのケーススタディなど、原子力災害下において、救護班が安心・安全に行動できる知識・技術を学ぶことを目的としています。 2014年度と2015年度は各2回本社で実施し、その後は各ブロックでの開催に移行して行く予定です。

項目 タイトル 概要

講義1 日本赤十字社の原子力災害への取り組み

2011年の福島第一原発事故の対応の経験を踏まえ、日赤が取り組んできた原子力災害への対応、ガイドラインの概要などを解説する。

講義2 災害救護活動における 放射線防護の基礎知識

放射線の人体への影響の基礎知識、過去の原子力事故における被ばくの状況について解説する。

講義3 原子力災害時の救護活動と 緊急被ばく医療アドバイザーとの協働

原子力災害時に救護班が行う活動の内容と、活動中の放射線防護についての基礎知識、原子力災害時の緊急被ばく医療アドバイザーの役割などについて解説する。

講義4 原子力災害時の救護活動における 安全確保のために

活動中の安全確保のために診療放射線技師が担うべき役割や、救護班の行動について解説する。

実習1 放射線防護資機材について (参加者全員を対象)

個人線量計の使用方法、放射線防護服の着脱方法などについて解説する。

実習2 サーベイメータ・個人被ばく線量計の保守管理と使用方法 (診療放射線技師を対象)

原子力災害時における活動時の診療放射線技師の役割、放射線計測機の使用方法、救護班員の線量の管理方法などについて解説する。

グループワーク ケーススタディー 原子力災害時の活動を想定した状況設定下における行動や課題について、グループワークと全体討議を通して理解する。

基礎研修会のカリキュラム例

参考:赤十字原子力災害情報センター デジタルアーカイブより

・原子力災害対応基礎研修会について: http://ndrc.jrc.or.jp/measures-basic-seminars/

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V. 応急対応

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V. 応急対応 補足資料一覧

V.- ① 日赤の災害救護活動

V.- ② 救援物資

V.- ③ 生活家電セットの寄贈

V.- ④ 集会所への備品寄贈

V.- ⑤ 原子力災害時の指揮命令系統

V.- ⑥ 国の定める行動基準について

V.- ⑦ 活動従事者の安全基準の根拠について

V.- ⑧ 緊急被ばく医療アドバイザーの役割

V.- ⑨ 救護班要員に対する事前周知、教育

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V.- ① 日赤の災害救護活動

日赤の国内での災害救護活動

日本赤十字社の日本国内での災害救護活動には、赤十字の人道的任務として自主的判断に基づいて行う場合と、災害対策基本法における指定公共機関として、国や地方公共団体の行う業務に協力する場合とがあります。これらの災害救護活動を円滑に行うため、法律に基づき日本赤十字社防災業務計画を作成し、準備を行っています。災害時に行う活動としては、「医療救護」「救援物資の配分」「血液製剤の供給」「義援金の受付および配分」などがあります。 (注.武力攻撃事態等における国民の保護のための「国民保護法」や、新型インフルエンザ等の未知の新感染症が発生した場合のための「新型インフルエンザ等対策特別措置法」の下での指定公共機関としても必要な対策を実施します。)

医療救護活動

日赤は、災害時に備えて全国の赤十字病院の医師、看護師などを中心に編成される救護班を全国で約500班(約7000人)を編成しています。災害が発生すると、ただちに救護班(通常1班あたり医師・看護師ら6人で構成)やdERU(国内型緊急対応ユニット)を派遣し、救護所の設置、被災現場や避難所での診療、こころのケア活動などを行います。 東日本大震災の発生時には、55の日赤の救護班がその日のうちに被災地各地に向け出動しました。2011年9月末までに、全国で894班が、内、福島県では136班の救護班が活動しました。

(出典:日本赤十字社発行「東日本大震災」記録誌。事業局 救護・福祉部による集計。)

救援物資の配分

日赤は、被災者に配分するため、日ごろから毛布や日用品セット、安眠セット、緊急セットを備蓄しています。 血液製剤の供給

日赤は、災害時にも血液製剤を円滑に確保・供給するため、各血液センターで必要な血液製剤を備蓄するとともに、全国的に血液需給を調整する体制をとっています。 義援金の受付および配分

日赤は、被災された方々への見舞金である災害義援金の受付を行っています。東日本大震災の際には、3,350億円を超える義援金 (2015年6月12日現在) が日赤に寄せられました。

受け付けた義援金は、第三者機関である義援金配分委員会(被災自治体、日本赤十字社、報道機関等で構成)に拠出され被災者に配分されます。

避難所内に設営された救護所の様子

救援物資の配付の様子

ボランティアによる募金活動

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V.- ② 救援物資

救援物資 日赤では、大規模な災害などに備えて、被災者に配分するための救援物資を全国に備蓄しています。

毛布:

避難した人が避難所などで使用するためのパック加工された毛布です。

安眠セット:

避難所などでの睡眠時に役立つ、キャンピングマット、枕、アイマスク、耳栓、スリッパ、靴下などがセットになっています。

緊急セット:

避難時に必要となる、携帯ラジオ、懐中電灯、風呂敷、ブックレット(災害時に気をつけたい症状が記載されています)などがセットになっています。

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V.- ③ 生活家電セットの寄贈 (1/2)

事業の概要

対象地域および対象者

実施時期 実施実績

震災に伴う東京電力福島第一原発事故の放射線による影響により、着の身着のままで避難した住民は、各地の体育館などの避難所で一時過ごした後、自治体が建設した応急仮設住宅や民間の賃貸住宅(みなし仮設住宅)に入居しました。しかし家電の提供は災害救助法 による支援の対象範囲外であったため、仮設住宅内には日常生活に必要な最低限の物も揃っていませんでした。そこで、当面必要な生活家電セットを提供して、仮設住宅等での生活再開につながる支援を行いました。

寄贈した家電は、①洗濯機、②冷蔵庫、③テレビ、④炊飯器、⑤電子レンジ、⑥電気ポットの6点です。

福島県支部職員のほか、本社からの応援、現地でのスタッフ(業者委託や派遣スタッフ)が、その対応にあたりました。

• 福島県内

応急仮設住宅および公営住宅、民営賃貸住宅等(みなし仮設住宅)に入居する被災者。県外に避難した世帯も含まれました。

2011年4月~2012年12月 合計で 約63,617世帯へ寄贈

日赤が被災者に寄贈した生活家電セット

この他に、テレビと電気ポットが含まれます。

生活再建

桑折町応急仮設住宅に搬入される生活家電セット

生活家電セット 福島県で初 いわき市で被災者に寄贈(日赤ホームページ) http://www.jrc.or.jp/press/l3/Vcms3_00002170.html

より早く、より多くの被災者の方々へお届けするために(日赤ホームページ) http://www.jrc.or.jp/l2/Vcms2_00002402.html

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V.- ③ 生活家電セットの寄贈 (2/2)

生活再建

福島県の仮設住宅に搬入された生活家電セット

福島県いわき市の方からのお手紙

「原発の20キロ圏内から

避難しています。家電品をいただけて大変助かりました。被災者を代表して、お礼を言わせてもらいます!」

福島県の避難者の声

感謝のお手紙(日赤ホームページ) http://www.jrc.or.jp/l2/l3/Vcms3_00002408.html

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V.- ④ 集会所への備品寄贈

事業の概要

対象地域および対象者

実施時期 実施実績

生活再建

応急仮設住宅に設置される集会所や談話室に人々が集まりやすい環境を作り、住民同士の助け合いや自治組織の円滑な運営、高齢者をはじめとする住民の健康安全を促進するため、集会所・談話室に①テレビ、②冷蔵庫、③電気ポット、④掃除機、⑤長机、⑥座布団、⑦長座卓、⑧折畳長机、⑨折畳長椅子、⑩本棚、⑪ホワイトボード、⑫AED、⑬CDラジカセを寄贈しました。

• 福島県内

県を通じて要望のあった応急仮設住宅に入居する被災者

2011年7月~2013年3月 応急仮設住宅:231カ所に、11,189点の備品を寄贈

集会所「にこにこ健康教室でも利用されています」

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V.- ⑤ 原子力災害時の指揮命令系統

原子力災害時に、活動従事者の安全性を考慮しながら、被災地に対して迅速かつ適切に救護支援を行うためには、原子力災害時における指揮命令系統を定める必要があります。原子力災害時には、緊急被ばく医療アドバイザーが重要な役割を担うことになります。 (緊急被ばく医療アドバイザーについての詳細は別項を参照して下さい。) 原子力災害が発生した場合、本社と被災地支部の両災害対策本部下に緊急被ばく医療アドバイザーを配置します。

原子力災害時と、他の自然災害発生時との指揮命令系統における大きな違いは、被災地支部から本社に対して救援要請があった場合、本社は、救護班の派遣に先立って、まずあらかじめ任命されていた「緊急被ばく医療アドバイザー」を本社および被災地支部の災対本部に配置することです。

本社および被災地支部に配置された緊急被ばく医療アドバイザーは、支部や行政の災対本部などを通して得た原子力事故の状況や活動予定地域の環境などの情報をもとに、活動従事者が安全に活動できるかの判断に努めます。そしてこれを本社および被災地支部の災害対策本部に助言として伝えます。

本社は、被災地支部からの救援要請と緊急被ばく医療アドバイザーからの助言にもとづき、救護班の派遣方針を決定します。

さらに、緊急被ばく医療アドバイザーは、救護班や支部や行政の災対本部などを通して得た情報をもとに、活動地域の状況を常時把握し、活動従事者の安全確保に努めます。活動地域が危険となる恐れがある場合は、防護服の着用や避難指示を出します。

注.救援要請や救護班の派遣指示は、原則としてブロック代表支部を通して行われます。

緊急被ばく医療アドバイザー 救護班 支部(災対本部)

被災地でのフロー本社(災対本部)でのフロー

原子力災害発生

(発生の恐れ)

災害対策本部設置

(災害警戒本部設置)

災害対策本部設置

(災害警戒本部設置)

救援が不足の場合は

本社へ支援要請

支部に緊急被ばく医療

アドバイザーを派遣

支部に緊急被ばく医療

アドバイザー着任

本社に緊急被ばく医療

アドバイザーを配置以降緊密に連携

被災地支援ニーズの把握

と展開地域のアセスメント

活動地域の環境把握

とアセスメント

活動地域についての

助言

救護班派遣方針決定

ブロック代表支部・関係支部

へ救護班の派遣指示

救護班に対する指揮

救護班による

救護活動

活動地域の状況把握

救護班の線量把握

(継続)

被災地支援ニーズの把握

と展開地域のアセスメント

(継続)

活動継続中は被災地支部災対本部・支部緊急被ばく医療アドバイザー・

救護班間で常時連携を行う

本社災対本部

本社緊急被ばく医療

アドバイザー

緊密に連携を継続

救護班の活動につい

ての助言

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V.- ⑥ 国の定める行動基準について (1/2)

出典:原子力規制委員会ホームページ、原子力災害対策指針

日本の原子力防災対策

原子力防災対策では、一般防災対策と共通のものに加えて原子力災害に特有なものがあることから、防災基本計画の中に原子力発電所の事故を想定した防災指針を定めてきました。その後1999年のJCO臨界事故を踏まえて原子力災害対策特別措置法が制定され、防災指針も見直されました。 しかし、2011年に発生した福島第一原子力発電所事故での被害は、それまでの原子力防災対策に不備があることを明確にしました。そこで、原子力防災に関する組織と法令の抜本的見直が行われ、これに基づき新しい原子力災害対策指針が、2012年10月に作成され、その後も更新がなされています。 1. 基本的な考え方 国際原子力機関 (IAEA) が推奨する考え方に基づき、原子力事故が発生した際の緊急事態の区分を判断する施設内 (オンサイト) の状況を「緊急時活動レベル(EAL)」として定義し、放射性物質が放出された場合の住民の防護措置の実施を判断する基準となる施設外の状況 (オフサイト) を「運用上の介入レベル(OIL)」と

して定義されました。さらにオフサイトにおいては、平時から必要な原子力防災対策を行う重点区域として、原子力施設からの地理的条件などを考慮して、「予防的防護措置を準備する区域(PAZ)」と、緊急防護措置を準備する区域(UPZ)」が、原子力施設ごとに定義されます。

緊急事態区分 判断基準の概要 必要な防護措置の概要

EAL1 警戒事態

• 震度6弱以上の地震 • 大津波警報 • 東海地震注意情報

• PAZ住民防護の準備 • PAZ要援護者の避難準備 • 体制構築・情報収集 • 緊急時モニタリング準備

EAL2 施設敷地 緊急事態

• 原子炉冷却材の漏えい • 全ての交流電源喪失(5分以上継続) • 原子炉停止中にすべての原子炉冷却機能喪失

• PAZ住民の避難準備 • PAZ要援護者の避難 • 緊急時モニタリング実施

EAL3 全面緊急事態

• 全ての非常用直流電源喪失(5分以上継続) • 非常停止必要時に全ての原子炉停止機能喪失 • 敷地境界の空間線量率5μSv/h以上(10分以上継続)

• PAZ住民避難 • PAZ安定ヨウ素剤服用 • 緊急時モニタリング • UPZ以遠の住民の避難準備

基準 基準の概要 初期設定値 必要な防護措置の概要

緊急防護措置

OIL1 避難の基準 500μSv/h以上(地上1m) 数時間内に区域を特定し避難する

OIL4 除染の基準 皮膚汚染:β線 120Bq/cm2

以上(緊急時) 避難者をスクリーニングし、基準以上で除染を行う

早期防護措置 OIL2 一時移転の基準 20μSv/h以上(地上1m) 1日以内に区域を特定し1週間以内に一時移転する

緊急時活動レベル (EAL: Emergency Action Level) <BWR (沸騰水型原子炉) の場合>

運用上の介入レベル (OIL: Operational Intervention Level)

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V.- ⑥ 国の定める行動基準について (2/2)

2. 避難指示区域の定義 原子力防災対策にもとづく国の指定する避難指示区域は、以下のようになります。 【放射性物質放出前】

• PAZの範囲内は、EALが3 (全面緊急事態) と判断された時点で住民避難を実施する。 注. 避難に支援が必要な要援護者については、EAL2 (施設敷地緊急事態) と判断された時点で避難を実施する。

【放射性物質放出後】 • UPZの範囲内においては、OIL (運用上の介入レベル) にもとづき避難指示区域が特定される。

空間線量率が500μSv/h以上 (OIL1) では、数時間以内に避難すべき区域が特定し、避難を実施する。 空間線量率が20μSv/h以上 (OIL2) では、1日以内に一時移転(日常生活での無用の被ばくを避けるため一定期間のうちに離れること)すべき区域が特定し、避難や一時移転を実施する。

UPZ外は、OIL1、OIL2を超える地域では避難や一時移転を実施するが、災害時要援護者への慎重な配慮が求められる。

原子力防災対策を行う重点区域の設定

PAZ

UPZ

概ね5Km (めやす)

概ね30Km (めやす)

PAZ: Precautionary Action Zone

(予防的防護措置を準備する区域)

緊急に進展する事故を考慮し、重篤な確定的影響などを回避するため、EALにもとづき直ちに避難するなど、放射性物質放出前における予防的措置を準備する区域

UPZ: Urgent Protective action Planning Zone

(緊急防護措置を準備する区域)

国政基準に従って、確率的影響を可能な限り回避するため、環境モニタリングなどの結果を踏まえた運用上の介入レベル(OIL)、緊急時活動レベル(EAL)にもとづき避難、屋内退避、安定ヨウ素剤の予防服用などを準備する区域

出典:原子力規制委員会ホームページ、原子力災害対策指針

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V.- ⑦ 活動従事者の安全基準の根拠について

1. 活動従事者の安全確保の基本的な考え方 日赤の活動従事者(職員やボランティア)の安全を確保するための基本的な考え方は以下の通りです。 • 活動従事者は、放射線防護に対する事前のレクチャーを受けて、放射線防護の資機材を備えた上で派遣される。 • 個々の活動従事者の活動は期間を限定して行われるものとし、被災者のニーズに対応するため、活動従事者を順次交替させながら活動を継続する。 • 活動従事者は、放射線についての専門的知識を持つ医療スタッフだけで構成されるわけではないため、一般市民と同レベルの基準を適用する。 2. 活動従事者の安全基準 上記の基本的な考え方をもとに、安全基準を以下のように定めています。 • 国の定める避難区域では、一般の活動従事者は活動を行わない。 • 活動従事者の累積被ばく線量は、活動期間中1mSv(ミリシーベルト)とする。 • 累積被ばく線量が基準を超える恐れがある場合は、活動を終了し、他の従事者(救護班など)と交替することで、活動を継続する。 上記基準を、1週間以内を活動期間としている日赤救護班に当てはめて検証してみます。下記からは、日赤の安全基準に沿えば避難指示区域外では十分活動が可能であることがわかります。 ① 福島県で帰還困難区域に設定されているのは、年間50mSv以上または空間線量率9.5μSv/h以上の地域となります。仮に、空間線量率10μSv/hの地域(帰還困難区域に相当)において、1日24時間で3日間を屋外で休みなしに活動したとすると、累積被ばく線量は720μSvとなり (10μSv/h x 24時間 x 3日 =

720μSv)、このような条件でも活動可能となります。実際には24時間連続で3日間活動することはあり得ませんし、屋外で活動し続けることもあり得ませんので(一般に屋内では線量が低くなります)、これはかなり厳しめの仮定となります。

② 1週間1mSv以内を単純に1年間に換算すると、50mSvに相当します。年間50mSv以上が帰還困難区域に設定されますので、日赤の活動基準に沿えば、避難指示区域を除く地域であれば基準値以下におさえられ、活動が可能であることになります。

累積被ばく線量限度 (年間1mSv) の根拠 日赤は、線量限度 (年間1mSv) を決定するにあたって、国際放射線防護委員会 (ICRP: International Commission on Radiological Protection) の勧告を尊重しました。 ICRPは、放射線防護に関する勧告を行う非営利の国際学術組織で、原子放射線の影響に関する国連科学委員会 (UNSCEAR) の

報告などを参考にし、専門家による科学的知見と、放射線防護上の勧告を出しています。これらは各国の法令策定や放射線防護の基準作成に活用されています。 ICRPが1990年に発行した勧告 (ICPR Publication 60) のなかでは、線量限度を設定する際の関する考え方として、「確定的影響」を

防止するとともに、「確率的影響」を合理的に達成できる限り小さくするという考えに沿って設定されるべきであると述べています。そして公衆(一般市民)に対する線量限度として、自然放射線による被ばく(自然界にある放射線源や宇宙線からの放射線による被ばく)や医療被ばく(X線検査・CT検査や放射線治療などによる被ばく)を除いて、年間1mSvと勧告しています。

ICPR Publication 60 (1990)

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V.- ⑧ 緊急被ばく医療アドバイザーの役割

1. 緊急被ばく医療アドバイザー配置の背景

東日本大震災の際の日赤の救護活動では、福島第一原発事故発生直後に救護活動の安全について保障が出来ず、福島県において一時期継続的な救護班の派遣が出来ない状況が生じました。このため、将来発生するかもしれない原子力災害に備えるため、放射線防護のために資機材の準備や、原子力災害時の救護活動の安全基準の策定に加えて、放射線下での救護活動を安全に適切に行えるようにするため、緊急被ばく医療アドバイザーを配置することを決定しました。 2. 緊急被ばく医療アドバイザーの任命と配置 (1) 緊急被ばく医療アドバイザーは、放射線対応専門要員である医師と、放射線対応支援要員である診療放射線技師で構成されます。 (2) 緊急被ばく医療アドバイザーは、事前対策フェーズ時にあらかじめ任命しておき、原子力災害発生時に被災地に派遣することを、事前に所属支部を通して所属施設長に了解を取っておくことにしています。 (3) 原子力災害が発生または発生する恐れがある場合に被災地支部から救援の要請があった場合には、本社と被災地支部にすみやかに緊急被ばく医療アドバイザーを配置することにしています。 3. 緊急被ばく医療アドバイザーの役割 (1) 放射線対応専門要員 (医師) の役割

事前対策フェーズ時においては、救護班要員に対する安全対策に関する事前教育として、放射線に関する知識、防護服の着脱方法、個人線量計の使用方法などを指導する役割を担います。

原子力災害時の活動中においては、活動場所の決定や活動中の緊急避難に関する判断を行うこと、救護班要員に防護服の着用指示や避難指示を出すことなどがあります。 活動終了後には、救護班要員に対する安全対策事後教育として、線量計数値にもとづく健康管理や、生活上の留意点などをアドバイスします。

(2) 放射線対応支援要員 (診療放射線技師) の役割

原子力災害時の活動中において、空間線量の把握、個人線量計の使用方法の説明、救護班要員の被ばく線量の記録管理、線量計や防護服の管理などを、放射線専門要員の指示のもと行います。

4. 緊急被ばく医療アドバイザー会議について

日赤には、これまで原爆被爆者の対応と、現在も続く原爆被爆者の健康管理と疾病の診断及び治療に従事にあたった経験のある原爆病院が、広島と長崎にあります。また、原発立地県を中心に10の赤十字病院が緊急被ばく医療指定機関に指定されています(2015年7月現在)。これに加えて、福島赤十字病院は、福島第一原発事故に対応した経験をし、今後も継続して対応していきます。 これらの病院の関係者を集めた「日本赤十字社緊急被ばく医療指定機関等担当者による意見交換会」が、2014年8月に初めての試みとして開催されました。こ

の中では、日赤の原子力災害対応における緊急被ばく医療指定機関の役割や協力のあり方、今後開催していく「原子力災害対応基礎研修会」の内容などが議論されました。

その後、緊急被ばく医療指定機関の医師・診療放射線技師の中から日赤の緊急被ばくアドバイザーが選任されましたので、今後は「緊急被ばく医療アドバイザー会議」と名称を変えて、引き続き日赤の原子力災害への備えを高めるための議論を行って行くことにしています。

参考:赤十字原子力災害情報センター デジタルアーカイブより

・緊急被ばく医療アドバイザー会議について

http://ndrc.jrc.or.jp/measures-remc-advisors/

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V.- ⑨ 救護班要員に対する事前周知、教育

救護班要員などの活動従事者に対しては、以下の3つの機会を使って、放射線による健康被害へのリスクの周知と、放射線から身を守るための教育を行います。 ① 事前対策フェーズにおける研修会:「原子力災害対応基礎研修会」 ② 救護班の出動前に各施設においてブリーフィング:個人線量計の使用方法など ③ 現地対策本部にて活動現場への出動前のブリーフィング:個人線量計の使用方法、活動地域の状況など

原子力災害対応基礎研修会の中では、放射線の健康被害へのリスク、放射線から身を守るための基礎知識について、以下のような内容を説明しています。 1. 放射線による健康被害へのリスク

① 放射線の基礎知識 ② チェルノブイリ原発事故による被ばく ③ 福島第一原発事故による被ばく

2. 放射線から身を守るための基礎知識

① 原子力災害における救護班の活動:避難指示区域外での一般の災害救護活動、対象者は汚染がないもしくは除染済の被災者

② 原子力災害に備えた必要な装備を行うこと:放射線計測機(個人線量計など)、放射線防護服など

③ 個人の被ばく線量の管理:1mSv以下 ④ 緊急被ばく医療アドバイザーとの協働

避難所での救護活動

個人線量計

放射線防護服

出典:国立研究開発法人 放射線医学総合研究所ホームページより

参考:赤十字原子力災害情報センター デジタルアーカイブより

・平成26年度 第1回原子力災害対応基礎研修会開催報告: http://ndrc.jrc.or.jp/notice/20141202-02/

・平成26年度 第2回原子力災害対応基礎研修会開催報告: http://ndrc.jrc.or.jp/notice/20150325/

・平成27年度 第1回原子力災害対応基礎研修会開催報告: http://ndrc.jrc.or.jp/notice/20151002/

・平成27年度 第2回原子力災害対応基礎研修会開催報告: http://ndrc.jrc.or.jp/notice/20151125/

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VI. 復旧・復興対応

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VI. 復旧・復興対応 補足資料一覧

VI.- ① にこにこ健康教室

VI.- ② 奉仕団による仮設住宅訪問

VI.- ③ 浪江町民健康調査

VI.- ④ 食品放射線量測定器の寄贈

VI.- ⑤ ホールボディカウンター等の寄贈

VI.- ⑥ 福島県立医大附属病院への医療機器寄贈

VI.- ⑦ 避難地域住民交流会

VI.- ⑧ 奉仕団による炊き出し

VI.- ⑨ 学校給食備品の寄贈

VI.- ⑩ スクールバスの運行支援

VI.- ⑪ コミュニティ・バスの運行支援

VI.- ⑫ 介護用ベッドの寄贈

VI.- ⑬ 福祉車両等の寄贈

VI.- ⑭ 復興イベントの開催

VI.- ⑮ 屋内遊び場(すまいるぱーく)の設置

VI.- ⑯ サマーキャンプの実施

VI.- ⑰ 被災学校支援

VI.- ⑱ 警戒区域への一時立入り支援

VI.- ⑲ 屋内遊び場の設置支援

VI.- ⑳ 情報教育用資材の寄贈

VI.- ㉑ 漁船建造支援

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VI.- ① にこにこ健康教室(1/3)

事業の概要

対象地域および対象者

実施時期

実施実績

東日本大震災および福島第一原発事故で被災された高齢者の方々は、長引く避難生活や仮設住宅などでの不自由な生活により、身体やこころの健康に大きな不安を抱えています。このため、生活不活発病の予防や介護予防、環境の変化やコミュニティの崩壊による孤立・孤独を和らげるための健康教室を開催しています。赤十字奉仕団員などと共に開催することにより、地域のボランティア活動のさらなる活性化も期待しています。

• 福島県内

仮設住宅などに避難している概ね65歳以上の高齢者の方

2011年9月~継続中

2011年度:計 8回開催

2012年度:計23回開催

2013年度:計26回開催

2014年度:計23回開催

2015年度:計26回開催

2016年度:継続中

にこにこ健康教室開催のチラシ 日赤福島県支部復興支援事業 赤十字にこにこ健康教室 (赤十字原子力災害情報センター デジタルアーカイブ) http://ndrc.jrc.or.jp/special/fukushima-reconstruction-healthclass/

健康増進

① 健康チェック(血圧測定、体脂肪率測定) ② 健康生活支援講習・健康に暮らすために役立つ技術

(毛布を使ったガウン、ホットタオル、足湯、心肺蘇生、AEDの使い方、ストレッチ体操など) ③ 昼 食

④ お楽しみ会(ゲーム、民謡、ダンス、フラワーアレンジメント、リラクゼーションなど)

プログラム内容

ストレッチ体操

フラワーアレンジメント

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VI.- ① にこにこ健康教室(2/3) 開催事例(会津若松市長原仮設住宅)

にこにこ健康教室では、いつものボランティア活動とは少し違うメニューを行いました。フラワーアレンジメントや、奉仕団委員長の伴奏でみんなが知っている童謡を歌い、参加者は「頭もきっと活性化しているはず」とのことでした。

会津若松市 一箕町長原仮設住宅 2014年3月18日(火)

大熊町民

一箕町長原仮設住宅は、会津若松市の北部に設置された200戸からなる応急仮設住

宅で、大熊町の住民の方が入居しています。喜多方市赤十字奉仕団が定期的にボランティアに訪れていて、「にこにこお楽しみ会」、「語り部」、「起き上がり小法師作り」などを開催してきました。

2014年3月18日に、喜多方市赤十字奉仕団の協力で、「赤十字にこにこ健康教室」が開催されました。

血圧・体脂肪測定、生活習慣病予防の話のあと、ストレッチ体操などで体を動かします。「もしも、倒れた時」の心肺蘇生とAEDの使い方についても関心が高いです。

最後は、みんなで「エイ・エイ・オー」と気合いを入れて終了します!

健康増進

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三春町 貝山仮設住宅

2014年6月24日(火) 葛尾村民

貝山仮設住宅は、三春町の貝山多目的運動広場に設置された132戸からなる応急仮

設住宅で、葛尾村の住民の方が入居しています。葛尾村三春出張所もここに設置されています。2014年6月24日に、三春町赤十字奉仕団の協力で、「赤十字にこにこ健康教室」が開催されました。

会場となった貝山仮設住宅

VI.- ① にこにこ健康教室(3/3) 開催事例(三春町貝山仮設住宅)

参加者の中には、避難中の葛尾村赤十字奉仕団の方もいて、赤十字奉仕団のバッジをつけて参加していました。お楽しみ会では、葛尾村社会福祉協議会と三春町赤十字奉仕団がゲームを行って、盛りあがりました。

災害時に高齢者を支援するために役立つ技術である、「毛布を使ったガウンの作り方」、「ホットタオルの作り方」、「足湯」などを体験しました。

いざという時のため、AEDの使い方も体験しました。

健康増進

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事業の概要

対象地域および対象者

実施時期

実施実績

被災者が心身ともに健康で明るい生活を少しでも取り戻せるよう、赤十字奉仕団員が仮設住宅などを訪問し、自分たちでできる住民参加型の活動を行い、被災者やコミュニティの活性化を支援しています。

本事業は、2011年度から開始され、現在も継続されています。奉仕団単位で、パッチワーク教室・手芸教室・健康教室・料理教室・炊き出しなどのイベントの実施や、花いっぱい運動など自分たちでできる活動を展開しています。

• 福島県内

仮設住宅などのへ入居者

2011年4月~継続中

日赤福島県支部復興支援事業 地区・分区および赤十字奉仕団による復興支援活動

(赤十字原子力災害情報センター デジタルアーカイブ) http://ndrc.jrc.or.jp/special/fukushima-reconstruction-volunteers/

仮設住宅での花いっぱい運動

仮設住宅入居者の交流会

生活再建

VI.- ② 奉仕団による仮設住宅訪問(1/5)

仮設住宅入居者と作ったパッチワーク

各年度ごとの活動回数

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VI.- ② 奉仕団による仮設住宅訪問(2/5) 活動実績の集計

パッチワーク教室

生活再建 受益者別の支援活動回数と支援している奉仕団

活動種別

奉仕団ごとの活動回数と主な活動内容

国見町赤十字奉仕団(29)

福島市平野赤十字奉仕団(57)

いわき市内の赤十字奉仕団(9)

喜多方市赤十字奉仕団(30)

いわき市内の赤十字奉仕団(16)

会津地区の他の赤十字奉仕団(13)

国見町赤十字奉仕団(39)

飯舘村赤十字奉仕団(32) 福島市内の赤十字奉仕団(12)

福島市内の赤十字奉仕団(50)

本宮市内の赤十字奉仕団(38) 日赤福島ボランティア会(19) 二本松市内の赤十字奉仕団(14)

被災者の実情を勘案しながら、被災者の興味を集めるイベントや、被災者に役立つ支援を、創意工夫しながら実施しています。

つるし雛作り(41)

( )は活動回数

( )は活動回数

パッチワーク教室(51)

お茶会(30)

お茶会(28)

にこにこお楽しみ会(14)

パッチワーク教室(26)

花いっぱい運動(10)

花いっぱい運動(10)

プランターに花いっぱい運動

パッチワーク教室

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VI.- ② 奉仕団による仮設住宅訪問(3/5) 活動事例:国見町赤十字奉仕団

国見町の紹介 国見町は、福島県の最北端に位置し、北は宮城県白石市と接していて、東は阿武隈川を挟んで梁川町、南は桑折町と隣接し、信達盆地の肥沃な土地に恵まれた町です。

(国見町Webページより抜粋 http://www.town.kunimi.fukushima.jp/index.html )

国見町の被害 市街地など広範囲にわたり建物が倒壊し、地震動と液状化により役場庁舎が使用不能になったり、町内各地区で道路陥没が発生するなど大きな被害となりました。

町内には、国見町の被災者と、福島第一原発事故による放射線の影響で飯舘村から避難している住民のための仮設住宅が、4ヶ所に設置されています。(2015年9月末現在)

国見町赤十字奉仕団の活動

国見町赤十字奉仕団は、東日本大震災および福島第一原発事故の被災者に対して、福島県内において最も活発に活動している奉仕団の一つです。活動の内容は多岐にわたっていますが、最も多いのは「つるし雛作り」です。他にも、ちまき作り、柏餅作り、人形作りなどを行っています。

【つるし雛作り】 (活動報告からの抜粋) 2013年4月に飯舘村からの避難者の方が入居する上野台仮設住宅において、招き猫のつるし雛作りを行いました。招き猫は作成に時間を要するため2回に

分けて行うことにしました。作成に取り掛かると皆さん楽しくどんどん縫い始め、途中お茶を飲みながら楽しくお話をし、一層のコミュニケーションを図ることができました。5月に続きを行い完成することができました。皆さん自分で作り上げた招き猫に満足した様子でした。

完成した招き猫を手に。

上野台仮設住宅の入居者の皆さんと、国見町赤十字奉仕団の皆さん。

2012年6月、ちまき作りを行う、飯舘村の避難者の皆さんと、国見町赤十字奉仕団の皆さん。

(国見町観月台文化センター)

出典:国見町Webページより

生活再建

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【編物教室】 (活動報告からの抜粋) 2014年1月に編物教室でタワシ編みを行いました。編物が苦手な

方もいましたが、一生懸命取り組んでいました。同時に、今年初めてのお茶会も開催しましたが、皆さんとてもお元気でした。

【お手玉作りと遊び】 (活動報告からの抜粋) 2014年6月に、奉仕団員が日赤の研修会で教わったレクリエーションである、おか

あさんの曲に合わせた踊りを実施しました。また、お手玉作りも昔を懐かしみながら作成し、でき上がったお手玉を使った遊びもしました。

VI.- ② 奉仕団による仮設住宅訪問(4/5) 活動事例:福島市北信赤十字奉仕団

福島市北信赤十字奉仕団の活動

福島市には、多くの仮設住宅が設置されています。現在福島市の仮設住宅に避難しているのは、浪江町、双葉町、飯舘村の住民の方々です。

福島市内の赤十字奉仕団は、避難者を支援するため活発な活動を行っています。福島市北信赤十字奉仕団もその一つです。浪江町からの避難者が入居している宮代第一、第二仮設住宅や南矢野目仮設住宅を中心に活動を行っています。活動内容は、被災者間の交流を図るための「お茶会」や、編物などの手芸、ヨガ教室やレクリエーションなどの健康増進のための活動を行っています。

編物を行う宮代仮設住宅の入居者の皆さんと、福島市北信赤十字奉仕団の皆さん。

お手玉で遊ぶ宮代仮設住宅の入居者の皆さんと、福島市北信赤十字奉仕団の皆さん。

生活再建

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VI.- ② 奉仕団による仮設住宅訪問(5/5) 活動事例:花いっぱい運動

花いっぱい運動の推進

花は人の心を和ませ安らぎを与えます。また季節により様々な花が咲くことで四季の流れを感じることができます。花いっぱい運動は、仮設住宅やその周辺の地域(駅前や商店街)、そして学校などに、プランターを設置したり花壇を作って様々な花を植える運動です。さらに、花を植える作業を通して、被災者や地域の人、学校の生徒や児童、先生などとの交流も生まれます。多くの赤十字奉仕団が花いっぱい運動に取り組んできました。

【2013年6月本宮市本宮赤十字奉仕団による花いっぱい運動】

浪江町からの避難者が入居する本宮市の高木仮設住宅において、本宮市本宮赤十字奉仕団が入居者と一緒に、夏秋咲きの花苗の植え付け作業を行いました。終わったあと、茶話会により交流を図りました。

【2014年5月 広野町赤十字奉仕団による花いっぱい運動】

広野町赤十字奉仕団が、広野町の福祉施設や小学校、幼稚園、保育園の花壇やプランターに花を植えました。皆さん大変喜んでおり、奉仕団への期待も感じました。幼稚園では園児も一緒に水やりなどを楽しく行いました。

花植えを終わったあとの茶話会も大切な目的の一つです。 あいにくの雨模様の天気でしたが皆さん協力して植えました。

(活動報告からの抜粋)

(活動報告からの抜粋)

生活再建

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VI.- ③ 浪江町民健康調査

事業の概要

対象地域および対象者

実施時期 実施実績

生活再建

原発事故に伴う放射線の影響で、浪江町は役場の移転先である二本松市内および周辺に応急仮設住宅を設置したが、気候が近いいわき市に移り生活する町民も多くなっています。いわき市内の各地域の借り上げ住宅に住んでいる浪江町民は、住民同士が集まる場所も少なく孤立化しやすい状況にありました。加えて、行政の保健衛生サービスが滞り、住民の不安感を助長させていました。

全国の赤十字病院の看護師、日本赤十字看護大学の看護教員がリレー方式で、いわき市の避難者世帯を戸別訪問し、健康状態の実態把握だけでなく、慣れない土地で暮らしている方々の健康相談や、こころのケアを行いました。

• 浪江町

いわき市の借り上げ住宅に住む被災者

2012年10月~継続中 計29班の訪問(2014年3月現在)

「浪江にいた頃は…」 「帰りたいけど帰れない」 といった話がよく出されます。

孤立した状況にある町民と親身になって会話する事によってストレスの軽減につとめました。

慣れない土地での苦労も明かしてくれました。

日赤なみえ保健室がオープン。

サロンで「楽しい健康体操」 に取り組む町民の皆さん。

浪江町民健康調査 活動のリスト(赤十字原子力災害情報センター デジタルアーカイブ) http://ndrc.jrc.or.jp/archive/item/?id=M2014053015490684718

東日本大震災から3年「避難生活の支え」(YouTube日赤公式チャンネル) http://ndrc.jrc.or.jp/archive/item/?id=M2014040310165984638

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VI.- ④ 食品放射線量測定器の寄贈

事業の概要

対象地域および対象者

実施時期 実施実績

医療支援

原発事故により福島県内には広範囲に放射性物質が拡散したと思われ、福島県民は地元で生産される農作物等の食品に大きな不安を抱えることとなりました。このため、学校や保育所の給食材料および地元産農作物・加工食品等の放射線量測定の実施体制を整備し不安を解消するため、食品放射能測定システムの寄贈を行いました。

県内各市町村に配備する食品放射能測定システムのうち、消費者庁からの貸与と、2011年度の県補正予算による整備で補えない台数分の計106台を寄贈しました。なお、宮城県教育委員会にも寄贈しました。

• 福島県の市町村、宮城県の一部

各市町村住民

2012年2月~2012年5月

福島市: 77台 二本松市: 23台 川内村: 6台 合計 106台 (他に宮城県教育委員会に3台)

食品放射線量測定機器

(ベクレルモニター)

(c) Nobuyuki Kobayashi

福島市などに食品放射能測定器109台寄贈 市民が自主検査できる環境を整備(日赤ホームページ) http://www.jrc.or.jp/shinsai2011/genpatsu/l4/Vcms4_00004309.html

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VI.- ⑤ ホールボディカウンター等の寄贈

事業の概要

対象地域および対象者

実施時期 実施実績

医療支援

原発事故に伴う放射線の健康におよぼす影響が大きな課題となっており福島全県民を対象とする「県民健康調査」が実施されることとなりました。2012年に福島赤十字病院に、ホールボディカウンターを1台、甲状腺モニターを2台整備しました。

さらに、内部被ばく検査を求める声が数多く寄せられているとの福島県の要望を受け、2013年にはホールボディカウンターを福島県、福島市、郡山市、双葉町、楢葉町、白河市、広野町へ各1台寄贈しました。

• 福島県内

福島県民

2012年12月~2013年8月

据置型:福島赤十字病院、郡山市、双葉町、楢葉町、白河市、広野町 車載型:福島県、福島市(搭載する車両については市が購入)

福島赤十字病院のホールボディ

カウンター

ホールボディカウンター車

(c) Nobuyuki Kobayashi

ホールボディカウンターによる検査を開始(福島赤十字病院)(日赤ホームページ) http://www.jrc.or.jp/press/l3/Vcms3_00002909.html

福島県及び県内自治体へホールボディカウンター7台を支援(日赤ホームページ) http://www.jrc.or.jp/press/l3/Vcms3_00003824.html

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VI.- ⑥ 福島県立医大附属病院への医療機器寄贈

事業の概要

対象地域および対象者

実施時期 実施実績

医療支援

福島県では、原発事故に伴う影響により将来にわたる福島県民の健康管理を目的として、全県民約200万人の県民健康管理調査を

実施しています。福島県立医科大学附属病院では、浜通り地区の医療機関が大きな打撃を受けたことから、浜通り地区からの避難者を含む多くの県民の健診および当該調査も実施しています。

このため、既存の医療機器だけで県民健康管理調査を実施することが困難となっており、日本赤十字社に支援依頼がありました。将来にわたる福島県民の健康管理を目的として、県立医大の医療機器の整備にかかる費用を助成しました。

2012年2月~2012年8月

• 一次検査機器:血液等検査機器、超音波診断機器など

• 二次検査機器:病理検査機器、内視鏡検査機器、画像診断検査機器、生理検査機器など

• 福島県内

福島県民

日赤本社の見澤泉復興支援推進本部長から

棟方充病院長に目録が手渡されました。

県立医大附属病院に医療機器を寄贈(日赤ホームページ) http://www.jrc.or.jp/shinsai2011/iryou/l4/Vcms4_00004349.html

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VI.- ⑦ 避難地域住民交流会

事業の概要

対象地域および対象者

実施時期

実施実績

避難者の多くは、県内外の仮設住宅や借り上げ住宅など各地に分散して避難している状況で、新たな地において近所付き合いや地域でのコミュニケーションも少なく、将来に不安を抱えています。また、かつて同じ地域に住んでいた旧知の仲間や知人とは突然の避難によって別れ、会う機会もなくなってしまいました。そこで、被災者が地域ごとに再会できる場を提供して、震災前のつながりを蘇らせる機会として、各町村の協力を得て交流会を開催しています。

• 原発事故の影響により全町村避難をしている相双地区9町村

避難している住民

2012年8月~継続中

2012年度:計4回開催

2013年度:計8回開催

2014年度:計8回開催

2015年度:計8回開催

2016年度:継続中 昼食はバイキング形式で提供されました

日赤福島県支部復興支援事業 避難地域住民交流会 (赤十字原子力災害情報センター デジタルアーカイブ) http://ndrc.jrc.or.jp/special/fukushima-reconstruction-community/

健康増進

交流会に参加した住民の皆さん

再開を喜び合う参加者

・ 交流会:広間で旧知の仲間や知人と再会、近況報告や想い出話などをしました。

・ 昼食:バイキング形式で思い思いに召し上がっていただきました。

・ アトラクション:各町村で喜んでいただける踊り・歌・ショー・講演などを開催しました。

・ 記念撮影:全体写真や近所の方、お友だちとの写真撮影を行い提供しました。

プログラム内容

アトラクションを楽しむ参加者

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事業の概要

対象地域および対象者

実施時期

被災者が避難先生活により分散してしまった地域コミュニティを維持できるよう、赤十字奉仕団員が仮設住宅などを訪問し、芋煮会を行ったり地元の郷土料理を作ったりして、避難者どうしや避難先の住民との交流を支援しました。

• 福島県内

仮設住宅などへの入居者

2011年10月~継続中

日赤福島県支部復興支援事業 地区・分区および赤十字奉仕団による復興支援活動 (赤十字原子力災害情報センター デジタルアーカイブ) http://ndrc.jrc.or.jp/special/fukushima-reconstruction-volunteers/

生活再建

VI.- ⑧ 奉仕団による炊き出し

喜多方市内の河川敷に、喜多方の借上げ住宅と、会津若松市内の仮設住宅の入居者を集めて、炊き出し訓練と交流を兼ねた芋煮会を開催しました。引きこもり予防にもなり、音楽に合わせて歌ったり遊ぶことによってリラックスもでき、秋晴れの空の下でストレス発散することができました。

二本松市杉内多目的運動広場仮設住宅での入居者と地域住民による炊き出し交流会

炊き出しを行う南相馬市原町赤十字奉仕団の皆さん

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VI.- ⑨ 学校給食備品の寄贈

事業の概要

対象地域および対象者

実施時期

実施実績

教育支援

原発事故に伴う放射線の影響により避難区域内の学校も他地域に移転しましたが、受け入れ地域での学校給食センターの備品・食器の不足が生じました。給食センターの備品および食器等を整備し、通常の給食と食育が行えるよう支援しました。

• 南相馬市、大熊町(会津若松に避難) 避難した児童・幼児

2011年9月、2012年1月

• 南相馬市

鹿島区給食センター

南相馬市立原町第二小学校

南相馬市立石神第二小学校

• 大熊町(会津若松に避難) 永和地区給食センター

河東地区給食センター

大熊町立幼稚園

運搬車贈呈の様子 (会津若松市に避難している大熊町)

「いただきます」を待つ子どもたち。給食の時間では、食事のマナーや当番の役割も覚えます。

おいしい給食に食欲もアップ!

おいしい給食、いただきまーす!福島の幼稚園で給食が復活(日赤ホームページ) http://www.jrc.or.jp/shinsai2011/kyouiku/l4/Vcms4_00004376.html

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VI.- ⑩ スクールバスの運行支援

事業の概要

対象地域および対象者

実施時期

実施実績

教育支援

津波で学校や住居が被災したり、原発事故に伴う放射線の影響によって避難移転を余儀なくされた子どもたちは、仮設住宅から学校までの通学に長時間を要するなど苦労していました。仮設住宅と避難先の学校との通学手段を確保するため、スクールバスの寄贈や、運行の業者委託を行いました。

• 大熊町、楢葉町(いわき市に避難) • 葛尾村(三春町に避難) • いわき市

避難先の園児・児童・生徒

2011年10月~2013年3月

大熊町:運行業務委託2台、車両寄贈2台

楢葉町:車両寄贈2台

葛尾村:車両寄贈2台

いわき市:運行業務委託1台、車両寄贈1台

楢葉町に寄贈した大型バス

プール遠足へ出かけた子どもたち(葛尾村)

子どもたちの笑顔と安全を乗せたい 福島・岩手にスクールバス10台寄贈(日赤ホームページ)http://www.jrc.or.jp/shinsai2011/kyouiku/l4/Vcms4_00004360.html

福島県内にスクールバス5台寄贈~8月9・10日に贈呈式を開催します~(日赤ホームページ) http://www.jrc.or.jp/press/l3/Vcms3_00003115.html

「大変ありがたいです。子どもたちにとって、夏休みの最高の思い出になります。これからも子どもたちのために大切に使います」

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VI.- ⑪ コミュニティ・バスの運行支援

事業の概要

対象地域および対象者

実施時期

実施実績

生活再建

原発事故に伴う放射線による影響のため、大熊町は役場機能を会津若松市に移転し、多くの町民が市内の仮設住宅や借上げ住宅に暮らしています。子どもやお年寄りなど車を運転できない住民の生活のために、応急仮設住宅と学校、役場、病院、買い物施設等を結ぶコミュニティ・バスの運行支援を行いました。

バス1台で2コースを曜日を決めて、4回/日の運行。

• 大熊町(役場機能を会津若松市に移転) 大熊町から会津若松市に避難している応急仮設住宅等入居者

2012年6月~2013年3月

コース:会津若松市内

・ 河東・松長コース(月・水・金 1日4便運行) ・ 真宮コース(火・木 1日4便運行)

役場の前に到着したコミュニティー・バス

河東・松長コース

河東学園仮設

金道仮設

松長近隣公園仮設

松長5号公園仮設

長原仮設

会津中央病院

扇町5号公園仮設

扇町1号公園仮設

東部公園仮設

会津若松駅

城北仮設

第二中学校仮設

大熊町会津若松出張所

竹田病院

ヨークベニマル(スーパー)

アピタ(複合商業施設)

真宮コース

みどり公園仮設

亀公園仮設

アピタ(複合商業施設)

ヨークベニマル(スーパー)

竹田病院

大熊町会津若松出張所

第二中学校仮設

城北仮設

会津若松駅

東部公園仮設

扇町1号公園仮設

扇町5号公園仮設

会津中央病院

会津若松市に機能

移転した大熊町役場

日赤バスが仮設入居者の足に 会津若松で無料運行中

(日赤ホームページ) http://www.jrc.or.jp/shinsai2011/saiken/l4/Vcms4_00004328.html

「日赤バスは町に出る際によく利用しています。避難生活は大変ですが、支援に感謝しています」

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VI.- ⑫ 介護用ベッドの寄贈

事業の概要

対象地域および対象者

実施時期

実施実績

福祉サービス

原発事故に伴う放射線の影響で避難区域の社会福祉施設は閉鎖を余儀なくされ、入所者は内陸部の施設に移動する必要がありました。しかし、予備のベッドを備えている施設はほとんどなく、床に直接マットを敷いて受け入れた要介護者の介護が行われていました。そのため、要介護の被災者を受け入れた施設に対して介護ベッドを寄贈し、被災者が適切な介護を受けられるよう支援しました。

• 福島県内

内陸部の福祉施設に避難した要介護の被災者

2011年5月~2011年11月

23カ所の施設に対して96台の介護ベッドを寄贈

介護用ベッドの贈呈式。入居者の皆さんが快適に過ごせるようになり、介護するスタッフにとってもうれしい支援となりました。

市町村名 福祉施設名 数量

西郷村 救護施設 福島県からまつ荘 2

西郷村 障害者支援施設 福島県けやき荘 3

西郷村 障害者支援施設 福島県ひばり寮 4

西郷村 知的障害者入所施設 福島県かえで荘 1

西郷村 福島県やまぶき荘 2

矢吹町 救護施設 矢吹緑風園 1

矢吹町 寿光園 5

矢祭町 ユーハイム矢祭 5

桑折町 介護老人保健施設 桑折「聖・オリーブの郷」 7

川俣町 南東北シルクロード館 5

会津若松市 会津みどりホーム 3

鏡石町 鏡石ホーム 4

須賀川市 エルピス 2

須賀川市 長沼ホーム 3

石川町 さくら荘 5

平田村 よもぎ荘 3

三春町 あぶくま荘 5

田村市 船引こぶし荘 4

福島市 養護老人ホーム 緑光園 7

福島市 あづまの郷 10

福島市 介護老人保健施設 聖・オリーブの郷 10

福島市 さわやかアイリス 4

福島市 信夫の里 1

介護用ベッド1000台を高齢者施設へ 「利用者の不便とストレスが解消」と喜びの声

(日赤ホームページ) http://www.jrc.or.jp/shinsai2011/fukushi/l4/Vcms4_00004343.html

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VI.- ⑬ 福祉車両等の寄贈

事業の概要

対象地域および対象者

実施時期 実施実績

福祉サービス

震災で社会福祉施設等の福祉車両が消失しました。さらには原発事故に伴う放射線の影響で沿岸地区の福祉施設は閉鎖を余儀なくされ、入所者や利用者は内陸部の施設・避難所に移動しました。消失した車両の補助や内陸部の福祉施設において利用者増への対応ができるよう、市町村や社会福祉施設などに福祉車両を寄贈しました。

• 福島県内

内陸部の福祉施設に避難した被災者、施設の利用者

2012年3月~2012年4月

119カ所の福祉施設等に、153台の車両を寄贈

車いすの人にとって、福祉車両は生活に欠かせない「足」です。

(写真は宮城県の福祉施設で利用される福祉車両)

郡山市内 23台 福島市内 18台 いわき市内 14台 会津若松市内 10台 南相馬市内 8台 須賀川市、浪江町内 各6台 会津美里町、西郷村内 各5台 喜多方市、白河市、平田村、三春町内 各4台 大熊町、小野町、伊達市、富岡町、楢葉町 二本松市、桑折町内

各3台

猪苗代町、金山町、川俣町、相馬市 双葉町、矢吹町内

各2台

石川町、川内村、新地町、只見町、田村市 西会津町、古殿町、本宮市、矢祭町内

各1台

社会福祉施設に車両331台寄贈 訪問介護や送迎などのサービス再開へ(日赤ホームページ) http://www.jrc.or.jp/shinsai2011/fukushi/l4/Vcms4_00004341.html

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VI.- ⑭ 復興イベントの開催

事業の概要

対象地域および対象者 実施時期 実施実績

福島第一原発事故の影響や、慣れない仮設住宅の生活で、心身の健康や将来に不安を抱えている方が多くいます。その様な状況の方々に、生の音楽を聴いて感動したり、映画を鑑賞して涙を流したり、笑ったりして心を動かしてもらうことが、心身の健康を保ち、元気を出してもらう上で大切であると考え、2012年度から2014年度までの間、述べ20回開催しました。

• 福島県内

福島県民 2012年9月~2015年3月 2012年度:計5回開催

2013年度:計8回開催

2014年度:計7回開催

元気あっぷライブ

日赤福島県支部復興支援事業 復興イベントの開催 (赤十字原子力災害情報センター デジタルアーカイブ) http://ndrc.jrc.or.jp/special/fukushima-reconstruction-events/

プログラム内容

生活再建

・元気あっぷライブ

多くの著名人なアーティストの方に賛同いただき、クラッシック、アコースティック、和楽器などのライブを開催することができました。出演者からは、被災者の方々にそれぞれの言葉で励ましをいただきました。

・映画上映会

「わが母の記」、「はやぶさ」、「マダガスカル3」(アニメ)、「あなたへ」、「しあわせのパン」、「おおかみこどもの雨と雪」(アニメ)、「舟を編む」、「超高速!参勤交代」を上映しました。「はやぶさ」上映に際しては、会津大学の寺薗助教からのミニ講座も行われました。

・「倉本總」講演会

東日本大震災および福島第一原発事故により大きな被害を受けた福島県に共感を寄せ、福島県南相馬市を舞台とした新作劇を上演している脚本家倉本總さんの講演会を開催しました。

映画上映会 「倉本總」講演会

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VI.- ⑮ 屋内遊び場(すまいるぱーく)の設置

事業の概要

対象地域および対象者 実施実績

教育支援

原発事故に伴う放射線による影響のため、屋外に出られず運動不足、精神的ストレスを抱えている未就学児童に対し、思い切り体を動かして遊べる場を提供しました。プレイグランドには、巨大エア遊具、ボールプールやサイバーホイールなど、安全に配慮した遊具を常設設置し、ステージでは体操教室、読み聞かせ・手遊び歌、団体向けの体操教室など楽しいプログラムを開催しました。

• 福島県内

未就学児 開催期間 開催場所 来場者数

2012年2月8日~2月17日 福島県青少年会館体育館(福島市) 5,340人

2012年7月3日~7月13日 福島市南体育館 6,487人

2012年7月22日~8月3日 相馬市総合福祉センターはまなす館 5,297人

2012年9月30日~10月10日 いわき市南の森スポーツパーク南部アリーナ 7,607人

2012年10月16日~10月25日 白河市国体記念体育館 4,775人

2012年11月14日~11月26日 スポーツアリーナそうま(相馬市) 5,618人

2012年12月18日~12月27日 パルセいいざか(福島市) 5,766人

2013年7月2日~7月12日 福島市南体育館 7,508人

2013年9月2日~9月12日 いわせ地域トレーニングセンター(須賀川市) 5,052人

2013年10月16日~10月25日 白河市国体記念体育館 6,682人

2013年11月6日~11月13日 スポーツアリーナそうま(相馬市) 5,371人

2013年11月21日~12月3日 郡山総合体育館 12,346人

2013年12月8日~12月19日 いわき新舞子ハイツ体育館(いわき市) 8,735人

「子どもたちが安心して遊べる場所がほしい」。放射線の影響を心配する福島市内の親たちの声を受け、日本赤十字社は屋内型の遊び場、

「すまいるぱーく in FUKUSHIMA」 をオープンした。

(c) Patrick Wack

福島に夢のプレイランド オープン!「すまいるぱーく in FUKUSHIMA」(日赤ホームページ) http://www.jrc.or.jp/shinsai2011/kyouiku/l4/Vcms4_00004374.html

福島に夢のプレイランド、再び!「すまいるぱーく」が7月から県内6カ所を巡業(日赤ホームページ) http://www.jrc.or.jp/shinsai2011/kyouiku/l4/Vcms4_00004369.html

元気全開!スマイル満開! 今年もスタート「赤十字すまいるぱーく」(日赤ホームページ) http://www.jrc.or.jp/shinsai2011/kyouiku/l4/Vcms4_00004348.html

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時間 第1日 第2日 第3日 第4日

朝の集い 朝の集い

写真撮影 退村式

グループミーティング

入浴・自由時間

夕食

朝食

昼食・休憩

ワークショップ「うどん作り」

アクティビティプログラム

フェアウェルパーティ

グループミーティング

点呼・消灯

朝食

アンケート記入

入村式

スタディプログラム「救急法」

アクティビティプログラム

入浴・自由時間

点呼・消灯

夕食

朝食

昼食・休憩

グループミーティング

19:00

20:00

21:00

22:00

夕食

入浴・自由時間

点呼・消灯

13:00

14:00

15:00

16:00

17:00

18:00

7:00

8:00

9:00

10:00

11:00

12:00

札幌

新千歳空港 ルスツリゾート

2日目

VI.- ⑯ サマーキャンプの実施 (1/3)

事業の概要

対象地域および対象者 実施実績

教育支援

被災した小学生(5-6年)、中学生(1-3年)を対象に、青少年赤十字が有している様々なプログラムを用い、北海道ルスツリゾートにて3泊4日のキャンプを行いました。参加者は14~15人のグループに分かれ、ボランティアの付き添いのもと、オリエンテーリングや乗馬、農作物の収穫体験などを行い楽しいひと時を過ごしました。

• 福島県内

小学5-6年、中学生 2012年7月~2012年8月 合計11回開催、参加者合計 1,549名(3県合計で3,451名)

2013年7月~2013年8月 合計 9回開催、参加者合計 1,032名(3県合計で2,337名)

1日目

全体スケジュール(例)

「キッズクロスヴィレッジ」の入村式

グループの

目標を話し合う

疑似体験セットを装着し、高齢者の気持ちを学びます

救急法を学びました

ラフティング(上)や乗馬(右)を体験

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VI.- ⑯ サマーキャンプの実施 (2/3)

3日目

うどん作りを体験

自然の山野でオリエンテーリング 留寿都村内の農場でジャガイモの収穫を体験

10年後の自分に

向けて、各自手紙をしたためた

最終部のお楽しみ、交流会とキャンプファイヤー。あっという間の3日間でした。

教育支援

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退村式の写真

4日目

このキャンプに参加しなかったら出会えなかった仲間たち

“みんなありがとう” ボランティアの皆さんの協力なしには、キャンプは成功しませんでした

【2013年 子どもたちへのアンケートから】 今回参加した理由は: ・普段と違う環境で過ごしたかった(26.5%) ・初めて会う友達と交流したかった(26.1%) 振り返ってどのように感じました: ・大変良かった(78.2%)

・良かった(19.3%)

キャンプ参加中、普段と違ったことは: ・気持ちがリフレッシュされた(52.2%)

・体をたくさん動かした(63.7%) ・仲間と助け合うことができた(62.5%)

【2013年 保護者へのアンケートから】 お子様の参加を通じて何を期待していましたか: ・協調性や助け合いを身に着ける(32.6%) ・気持ちのリフレッシュ(23.1%) キャンプ参加前と比べて気持ちがリフレッシュされた?

・とてもリフレッシュされた(63.5%) ・リフレッシュされた(29.8%) キャンプ前と比べて体を動かすことが増えた?

・とても増えた(6.4%) ・あまり変わらない(43.3%)

VI.- ⑯ サマーキャンプの実施 (3/3)

教育支援

サマーキャンプ2012 in クロスヴィレッジ始まる!大自然の中で輝く子どもたちの笑顔(日赤ホームページ) http://www.jrc.or.jp/shinsai2011/kyouiku/l4/Vcms4_00004361.html

新しい友達、いっぱいできたよ!「サマーキャンプ2012」に被災3県の子どもたち3451人が参加(日赤ホームページ) http://www.jrc.or.jp/shinsai2011/kyouiku/l4/Vcms4_00004359.html

大自然の中でリフレッシュ~サマーキャンプ2013(日赤ホームページ) http://www.jrc.or.jp/shinsai2011/kyouiku/l4/Vcms4_00004346.html

サマーキャンプの報告書はこちら

http://www.jrc.or.jp/vcms_lf/131009_summercamp_report.pdf

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VI.- ⑰ 被災学校支援

事業の概要

対象地域および対象者

実施時期

実施実績

東日本大震災や福島第一原発事故のために校舎が被災したり、学校の所在地が避難指示区域内のため避難先の仮設校舎などで授業を続けている学校があります。また、学校そのものは被災を受けていなくても、自宅が被災したり避難指示区域のため避難先から学校に通っている生徒・児童たちもいます。そのような生徒・児童たちの学校生活をより豊かなものにし、ストレスや不安を軽減することを目的に始めたのが学校支援事業です。学校側の要望を取り入れながら、対象となる生徒・児童に適した内容の音楽や演劇、映画などの鑑賞や、ワークショップによる体験学習などの場を提供しています。

• 福島県内

仮設校舎に避難している学校、

避難先から通う児童・生徒のいる学校など

2012年10月~継続中

日赤福島県支部復興支援事業 被災学校支援事業 (赤十字原子力災害情報センター デジタルアーカイブ) http://ndrc.jrc.or.jp/special/fukushima-reconstruction-school/

県内外4カ所に分散している富岡高校の生徒が集まったスキー教室

教育支援

2012年度 2013年度 2014年度 2015年度 小学校 1回 11回 16回 14回 中学校 - 9回 12回 9回 高校 4回 8回 7回 9回

特別養護学校 - 2回 2回 2回 その他 3回 2回 1回 1回

伊達市立梁川小学校で行われた音楽ライブ イベントを楽しむ生徒・児童たち

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VI.- ⑱ 警戒区域への一時立入り支援 (1/2)

出典:経済産業省ホームページ、原子力規制委員会ホームページ

1. 警戒区域への一時立入り支援の背景 福島第一原子力発電所から20Km圏内は、避難指示区域に指定され住民の立入り禁止が要請されていました。2011年4月21日、原子力災害対策本部長(内閣総理大臣)は、避難指示の対象となっている市町村長宛に「福島第一原子力発電所から半径20キロメートル圏内を警戒区域に設定し、警察・消防・自衛隊など

の緊急事態応急対策に従事する者以外の者に対して、市町村長の許可なく当該区域への立入りを禁止し、又は当該区域からの退去を命ずること」との指示を出しました。 20Km圏内の被災者の方は、原発事故発生時に緊急に避難したため、必要なものを持ち出すことが出来なかった方がほとんどであり、自宅への一時立入りへ

の強い要望がありました。そこで、経済産業省が中心となって、住民の一時立入りのためのプロジェクトがスタートしました。一時立入りする住民の健康チェックや帰還後の体調不調者への対応などのため中継基地における、医療救護班の支援が必要でした。 一時立入りは、第四巡目まで行われました。

2. 住民の一時立入りの概要 (1) 立入り対象区域 福島第一原子力発電所から20Km圏内の区域とするが、半径3Km

以内の区域、空間線量率が高い区域、津波の被害を受け危険を及ぼすと考えられる区域を除きます。対象となった市町村は、田村市・南相馬市・楢葉町・富岡町・大熊町・双葉町・浪江町・葛尾村です。 (2) 安全確保策 安全に万全を期すため、一時立入りは以下のように行われました。 • 一世帯当たり1名で、バスを利用して集団で行動する。(二巡

目からはマイカーでの立ち入りが認められるようになり、同乗者の立ち入りが可能となりました)

• 警戒区域への入域に際しては、防護服を着用し、個人線量計や無線機を携帯する。

• 帰還した際には、スクリーニングを確実に実施する。 • 持ち出し品は財布・通帳など必要最小限のもの(ビニール袋1枚程度)とし、在宅時間は最大2時間程度。(一巡目の中では自動車持ち出しのための一時立入りも実施されました。)

(3) 中継基地 中継基地は、20Km-30Km圏内の以下の4カ所に設置されました。 • 南相馬市馬事公苑 • 田村市古道体育館 • 川内村体育センター • 広野町中央体育館(第三巡目からは「道の駅ならは」に変更)

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VI.- ⑱ 警戒区域への一時立入り支援 (2/2)

出典:経済産業省ホームページ、 原子力規制委員会ホームページ 日本赤十字社福島県支部 「東日本大震災 福島の記録」

(4) 実施状況 一時立入りは、第一巡目~第四巡目まで行われました。 • 第一巡目 実施時期:2011年5月10日~9月7日(自動車持ち出しのための一時立入り:6月1日~9月9日) 立入り可能な人:一世帯1人まで。15歳未満の子どもや、高齢や病気などで徒歩での移動に支障がある方は参加できない。 持ち出し可能な品:最低限必要なもので、70cmX70cm程度のビニール袋1枚に入る程度。ペット・家畜・食品は不可。

移動方法:①市町村ごとに定められた中継基地に集合する。②中継基地からは専用バスで地区ごとに移動する。③警戒区域内の集合場所からは各自徒歩で自宅まで移動する。④2時間たったら元の集合場所まで戻る。⑤専用バスで中継基地まで戻る。

• 第二巡目 実施時期:2011年9月19日~12月24日

立入り方法:専用バスに加え、マイカーでの立入りも可能となった。

マイカーでの立入り人数・時間:安全のために二人以上、車の定員までとする。中継地点を出てから中継地点に戻るまで4時間以内とする。(双葉町・大熊町は5時間以内)

マイカー立入りでの持ち出し品:車の積載可能な範囲まで可能。ペット・家畜・食品は不可。(犬・猫の保護については別途行政で対応)

バスでの立入りの持ち出し量:マイクロバスに持ち込めて個人で持てる範囲まで可能。

• 第三巡目 実施時期:2012年1月29日~4月22日 第二巡目からの変更点

中継基地では受付時にドライブスルー方式とする。事前に市町村から通行許可証を送付。中継基地では降車することなく、本人確認のみ行う。

引っ越し業者や家屋の修繕業者の帯同も可とする。 • 第四巡目 実施時期:2013年5月19日~7月15日

(5) 日赤救護班の対応 日赤は、第1ブロック(北海道・東北)と第2ブロック(関東・甲信越)から、合計87の救護班を第一巡目~三巡目まで派遣し、医療救護の対応にあたりました。第四巡目については対応しませんでした。

① 南相馬市馬事公苑 ② 田村市古道体育館 ③ 川内村体育センター ④ 広野町中央体育館(第二巡目まで) ⑤ 道の駅ならは(第三巡目から)

日赤救護班の対応 中継基地の位置

参考:赤十字原子力災害情報センター デジタルアーカイブより フォトギャラリー: 一時立ち入りに対する救護活動 http://ndrc.jrc.or.jp/gallery/

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VI.- ⑲ 屋内遊び場の設置支援

事業の概要

対象地域および対象者

実施時期

教育支援

国見町では、原発事故に伴う放射線の影響により、子供たちを安心して屋外で遊ばせられない状況が続いていたことから、子供の身体能力の向上及び精神的ストレスの解消を図るため、町内の既存体育館内に子供たちがのびのびと身体を動かし遊ぶことができる遊具を設置しました。

屋内遊び場「くにみももたん広場」設置事業にかかる遊具等購入費用の一部を助成しました。

• 国見町および周辺地域

幼児、児童

2013年7月~2013年9月

国見町にオープンした「くにみももたん広場」

「くにみももたん広場」 2013年9月5日

グランドオープン

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VI.- ⑳ 情報教育用資材の寄贈

事業の概要

対象地域および対象者

実施時期 実施実績

教育支援

放射線の影響により野外学習活動が制限されている学校に対し屋内学習活動用としてのパソコンおよびネットワーク機器の整備を行いました。また、原発事故の影響により、他地域に移転した学校再建のための整備も行いました。

• 二本松市、本宮市(屋内学習活動用) • 浪江町、富岡町、飯舘村(避難先での学校再建) 小・中学校の生徒

2011年8月

仮設コンピューター室は、日赤からのノートパソコンでびっしり!

パソコンで手作りアルバムを作成する福島県双葉郡富岡町立富岡第二中学校3年生教室の昼休みの様子

本宮市立本宮第二中学校の仮設校舎

市町村 学校名 寄贈機器

二本松市 安達太良小学校 パソコン8台

本宮市 本宮第二中学校 パソコン40台

浪江町 浪江小学校・中学校 パソコン48台

富岡町 富岡小学校・中学校 ネットワーク一式

飯舘村 飯舘中学校 パソコンおよびネットワーク一式

福島・岩手の8小中学校にパソコン166台寄贈 ネット環境の整備も(日赤ホームページ) http://www.jrc.or.jp/shinsai2011/kyouiku/l4/Vcms4_00004367.html

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VI.- ㉑ 漁船建造支援

事業の概要

対象地域および対象者

建造時期

漁船概要

生活再建

震災により水産業関係でも漁船を始め、壊滅的な被害が生じました。さらに福島県においては、原発事故に伴う放射性物質による被害を受け福島県海域での漁業の自粛を余儀なくされるとともに、沖合漁業での水揚物についても他県と較べて価格の低下がみられるなど、漁業を取り巻く環境は非常に厳しい状況にあります。このため、被災した漁業者の生活の再建に必要な漁船の早急な復旧を支援しました。中之作漁業組合の要請に応じて、クウェート政府から日赤に寄せられた海外救援金をもとに、漁船の建造費の一部を助成しました。

• いわき市中之作漁業協同組合

2012年11月~2013年7月

・船名 第二十一権栄丸

・漁業 さんま棒受網漁業、まぐろはえなわ漁業

・総トン数 199トン

建造費用の一部を支援

クウェートの支援であることが表示された集魚灯

進水式でお披露目となった第二十一権栄丸

「みなさんの支援があっていい船ができた。うちらは漁しかできないけど、頑張ってたくさんのサンマをとって、被災した三陸各地に貢献していきたい」と吉田漁労長。

クウェートからの救援金で漁船建造を支援(福島)(日赤ホームページ) http://www.jrc.or.jp/shinsai2011/saiken/l4/Vcms4_00004322.html

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VII. 国外での活動

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VII. 国外での活動 補足資料一覧

VII.- ①連盟の取り組み

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VII.- ① 連盟の取り組み(1/2)

福島第一原子力発電所事故(福島第一原発事故)は、国際赤十字・赤新月社連盟(IFRC)や赤十字各社に、改めて原子力災害の影響の大きさを再認識させました。2011年11月に震災後初めて開催された赤十字全体の国際会議である第18回連盟総会において、IFRCや赤十字各社が原子力災害の被災者救援に役割を果たすことなどを盛り込んだ、「原子力事故がもたらす人道的影響に関する決議」(11/46)を採択しました。

日本赤十字社とIFRCは、連盟決議をどのように具現化するかについて話し合いを行いました。その後「原子力・放射線緊急事態に関係する赤十字・赤新月各社による関係国会議」(関係国会議)を発足させ、2013年8月にウィーンにて(第1回)、2014年1月にジュネーブにて(第2回)、そして2014年10月には被災地である福島での開催(第3回)を経て、2015年9月にはベルリンにて(第4回)会議を開催しました。関係国会議の中では、原子力・放射線緊急事態に備えるためのガイドライン

の策定や、緊急事態に対する対応能力学習のためのツールの開発、各社の対応能力の調査、関係する国際機関などとの連携のあり方などについて議論を重ねてきました。

ドイツ赤十字社のLogistics Centerにて

説明を受ける第4回関係国会議の参加者

国際赤十字・赤新月社連盟の原子力災害への取り組み (赤十字原子力災害情報センター デジタルアーカイブ) http://ndrc.jrc.or.jp/special/ifrc-preparedness-top/

第3回原子力災害対策関係国赤十字社会議 (赤十字原子力災害情報センター デジタルアーカイブ) http://ndrc.jrc.or.jp/3rgm/

第4回原子力災害対策関係国赤十字社会議 (赤十字原子力災害情報センター デジタルアーカイブ) http://ndrc.jrc.or.jp/special/4rgm/

決議11/46を採択した第18回連盟総会の様子 福島第一原発事故の被災地で

開催された第3回関係国会議の様子

ベルリンで開催された第4回関係国会議の様子。

原子力対策に関する多くの事項が議論された。

2012年5月に福島を訪問し、除染の現状につ

いて説明を受ける「原子力災害対策にかかる赤十字会議」(連絡調整会議)の参加者。

第3回関係国会議で被災地である浪江町を訪れたIFRCの担当者

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VII.- ① 連盟の取り組み(2/2)

2011年の連盟総会での決議から4年が経過した2015年12月、ジュネーブで開催された第20回国際赤十字・赤新月社連盟総会に合わせて、原子力緊急事態への備えに関するサイドイベントが開催され、これまでの取り組みや成果などが参加各国に紹介されました。

サイドイベントの目的は、①チェルノブイリ・福島の原子力災害や最近の主な危機から学んだことを振り返る、②これらの危機に対するグローバル・地域・各国での新たな備えについて紹介する、③連盟決議11/46から達成してきた成果を紹介することです。福島と東京から参加した「わかりやすいプロジェクト」の高校生と大学生によるプレゼンテーションのあと、ベラルーシ赤十字社、日赤、IFRC事務局、OCHA (Office for the Coordination of Humanitarian Affair:国連人道問題調整事務所)の代表者らのパネリストによるプレゼンテーションに続いて、参加者を交えたディスカッションが行われました。

連盟総会に向けて作成された事務総長報告書の中では、原子力緊急事態に対する備えについての取り組みと成果について触れられています。これに関して日本赤十字社は連盟総会の中で、これらの取り組みについて、以下の発言を行いました。

・ IFRC・ICRC・関係国社・関係団体が協力してガイドラインを完成させたことを歓迎します。

・ 放射能災害下において救援活動を行うために十分な準備をしている赤十字・赤新月社は日本赤十字社を含めてほとんどありません。

・ チェルノブイリ原発事故、福第一島原発事故での教訓を次の原子力災害の際に適切に活かせるよう、不測の事態に備えることが赤十字・赤新月運動として求められています。

・ 日本赤十字社は、私たちの知見や経験を必要とする他国での知識普及や準備のために活用したいと考えます。

プレゼンテーションを行ったパネリストたち

サイドイベントで議論を行った参加者たち

国際赤十字・赤新月社連盟の原子力災害への取り組み (赤十字原子力災害情報センター デジタルアーカイブ) http://ndrc.jrc.or.jp/special/ifrc-preparedness-top/

第3回原子力災害対策関係国赤十字社会議 (赤十字原子力災害情報センター デジタルアーカイブ) http://ndrc.jrc.or.jp/3rgm/

第4回原子力災害対策関係国赤十字社会議 (赤十字原子力災害情報センター デジタルアーカイブ) http://ndrc.jrc.or.jp/special/4rgm/

第20回連盟総会の様子