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卒業研究論文 [キーワード] フェアトレード、発展途上国、ベジタリアン、ヴィーガン、貧困問題、時間軸 東京都市大学 環境学部 環境マネジメント学科 枝廣淳子研究室 学籍番号 1362128 八鍬杏美 発展途上国におけるフェアトレードの推進

発展途上国におけるフェアトレードの推進...卒業研究論文 [キーワード] フェアトレード、発展途上国、ベジタリアン、ヴィーガン、貧困問題、時間軸

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Page 1: 発展途上国におけるフェアトレードの推進...卒業研究論文 [キーワード] フェアトレード、発展途上国、ベジタリアン、ヴィーガン、貧困問題、時間軸

卒業研究論文

[キーワード]

フェアトレード、発展途上国、ベジタリアン、ヴィーガン、貧困問題、時間軸

東京都市大学

環境学部 環境マネジメント学科 枝廣淳子研究室

学籍番号 1362128 八鍬杏美

発展途上国におけるフェアトレードの推進

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目次

謝辞 ................................................................................................................................... 2

第1章 問題提起 .............................................................................................................. 3

1.1 研究背景 ................................................................................................................ 3

1.2 研究目的 ................................................................................................................ 3

第2章 カンボジアについて ............................................................................................. 4

2.1 カンボジア 貧困の歴史 .......................................................................................... 4

2.2 カンボジアの現状 .................................................................................................... 5

第3章 フェアトレードの概要 ......................................................................................... 5

3.1 フェアトレードの定義 .............................................................................................. 5

3.2 日本での取り組み .................................................................................................. 7

3.3 日本企業の取組み .................................................................................................. 9

3.4 海外市場 世界のフェアトレード認証製品市場の推移 .........................................10

3.5 フェアトレード 認知度 ....................................................................................... 11

3.6 消費者意識 ............................................................................................................13

第 4 章 研究アプローチと研究方法 .................................................................................17

4.1 研究目的 ...............................................................................................................17

4.2 アンケート 内容 ....................................................................................................18

4.3 研究結果 ..................................................................................................................20

第 5 章 考察 ....................................................................................................................22

第6章 総括 ....................................................................................................................23

参考文献 ...........................................................................................................................24

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・謝辞

本研究論文を行うにあたって多くの方に支えられ書き上げることができました。この場

をお借りして深く御礼申し上げます。

今回、この卒業研究を卒業論文として形にすることが出来たのは、指導教授であります枝

廣淳子先生には、研究テーマの選定段階から卒業研究計画書の作成,卒業論文の執筆に至る

まで大変お世話になりました。また、たくさんの方が貴重な時間を割いてアンケート調査に

ご協力していただきました。協力していただいた皆様へ心から、感謝の気持ちと御礼を申し

上げます。この場をお借りして再度皆様にお礼申し上げます。ありがとうございました。

八鍬杏美

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第1章 問題提起

1.1 研究背景

現在、発展途上国では貧困、飢餓、HIVやウイルス感染などの医療の技術や人材の不

足、環境の悪化などの問題がたくさんある。筆者は、カンボジアへのボランティア活動を通

して、発展途上国の問題に興味を持ち始めた。小さい子供が、お金を稼ぐために学校にも通

わず、普段学校に行く時間に、ゴミ山にお金になるものを拾い集めに行ったり、街へ出稼ぎ

に行ったりする。その為、読み書きが出来ない子供が増えていく。途上国が抱えているこの

ような問題の多くは、途上国の経済や社会の問題が多く絡んでおり、その解決方法の一つの

アプローチとして、寄付や援助ではない「フェアトレード」という貿易形態がある。日本で

は途上国で生産された日用品や食料品が、安い価格で販売されていることがある。一方生産

国では、その安さを生み出すため、正当な対価が生産者に支払われなかったりする。この問

題を解決するのが、「フェアトレード」である。

「フェアトレードとは直訳すると「公平な貿易」。発展途上国の原料や製品を適正な価格

で継続的に購入することにより、立場の弱い発展途上国の生産者や労働者の生活改善と自

立を目指す「貿易のしくみ」のことである。」(FAIRTRADE JAPAN HP)

フェアトレード認証製品を購入することは、発展途上国の生産者をサポートすること、ま

た、きちんとした収入を得て、教育も受けれるようになり、生活の改善に繋がるのである。

1

1.2 研究目的

現在、日本では、フェアトレードに関してヨーロッパよりあまり知られていないのが現状

である。なので、フェアトレードを日本でも広めたい。フェアトレードを進めると、現地の

人達の生活改善に繋がる。つまり、先進国にフェアトレード商品の購入者がいないと進まな

い。フェアトレードを推進するためには、少なくとも先進国日本で、フェアトレード商品を

買う人を増やしたい。

また、日本でフェアトレードの意識を広げる為には、「その元になにがあるのだろう」や

「どういう人がフェアトレードに興味を持っているのか」、「フェアトレードに関心がある

人は、他にどういう所に意識があるのか」という疑問から今回の研究を行った。

そのため本論文の第2章では、先進国に資源を輸出している発展途上国の代表としてカ

ンボジアの歴史と貧困の現状について論じる。

第3章では、発展途上国の貧困を解決するための取り組みであるフェアトレードについ

て、その定義や取り組みを紹介する。

そして第4章では、フェアトレードの認知をさらに人びとに広めるための方法を考える

ために、アンケート調査を行った。また、アンケート調査のために私は、2つの仮説をたて

た。

1 FAIRTRADE JAPAN http://www.fairtrade-jp.org/about_fairtrade/

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1つ目は、日本で、フェアトレード商品を買う人を増やすには、「全く興味ない人に勧め

るよりも、‘食べ物’に意識が高いヴィ―ガンとベジタリアンの人達にアプローチすること

が有効なのである」という仮説。これは、[フェアトレードの意識や取組みは、菜食主義者

=ベジタリアンやヴィ―ガンの方が高い]と考えたためである。その理由として、「ベジタリ

アンやヴィ―ガンの人達は、お肉を食べないという想いとフェアトレードを支持する同じ

想いがあるのではないだろうか」と考えたからである。

この論文での定義

・ベジタリアン・・・ 菜食主義者

「健康・道徳・宗教等の理由から肉を排する食生活および主義・思想のことである」(日

本ベジタリアン協会)

・ヴィ―ガン・・・絶対菜食主義者

動物に苦みを与えることへの嫌悪から、動物の肉(鳥肉・魚肉・その他の魚介類)と卵・

乳製品を食べず、また動物製品(皮製品・シルク・ウール・羊毛油・ゼラチンなど)を身に

つけたりしない人たち。」2(日本ベジタリアン協会)

2つ目は、「食べ物以外にも、環境問題や社会問題に関心がある人たちは、フェアトレー

ドについてより知っており、買う率が高い」という仮説である。

これらの仮説を検証するために今回の研究を行った。また、フェアトレードへの関心と、

「フェアトレードに高い関心を持つ人は、現在のことよりも、未来のことに関心を持ってい

るのではないか」と考え、前述のような時間軸や世界の問題への関心との関係性を分析し、

少しでも発展途上国の貧困問題を解決することを目的としている。

第2章 カンボジアについて

ここでは、カンボジアの歴史と貧困の現状について論ずる。理由としては、2つある。1

つ目は、先進国に資源を輸出している発展途上国の代表として、である。2つ目に、冒頭に

も記述したが、私がカンボジアを訪れたことで、貧困問題に興味を持ち、今回の論文を書こ

うと決めたきっかけの国ということから、カンボジアの概要をここでは論ずることにする。

2.1カンボジア 貧困の歴史

「カンボジアがクメール王朝として栄えたのは9世紀から13世紀。しかし、安定した世

襲制が続いたわけではなく、王位を巡る勢力争いや隣国との戦争が続いていた。12世紀に

はアンコール・トムに王都が置かれ、インドシナ半島全域を支配し、最盛期を迎えて、多く

の寺院などの石造建造物が造られた。その後、13世紀に入ると、元の侵攻だったシャム(ア

ユタヤ王朝)の侵攻が始まり、しだいに国力が衰え、17世紀から19世紀にはタイやベト

2日本ベジタリアン協会 http://www.jpvs.org/menu-info/

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ナムの侵略や干渉が続き、19世紀にはフランスの植民地となった。

1953年、シハヌーク殿下のもとフランスから独立を果たす。1970年3月アメリカの

支援を得たロン・ノル将軍がクーデターにより政権を握ると、カンボジアの長期にわたる内

戦の歴史が始まるのであった。」(シャンティ国際ボランティア会)30年近く続いた内戦が

終わり、近年、経済発展を遂げている一方で広がる経済格差、伸び悩む教育の質、貧困、高

い非識字など、課題は山積みのままである。3

2.2 カンボジアの現状

ここ数年、毎年約7%の経済成長を続けるカンボジア。プノンペン中心部ではホテルなど

も建設ラッシュを迎えている。しかし、発展するプノンペンには違った一面も存在する。都

市と農村部の格差が極端なまでに広がっている。都市部は、水道設備や下水処理、電気など、

生活に必要な社会インフラが整備されてきていますが、農村部ではインフラの整備はほぼ

皆無で、未だに溜め池の水を使用し、衛生面も最悪な状態にさらされている。プノンペン中

心部近くの町ではゴミが回収されることなくあふれている。現在も、捨てられるゴミの中か

ら売れるものを拾うなどして暮らし、1日約150円以下で暮らしている貧困層も存在し

ている。衛生状況が悪く、病気になる人がたくさん存在するが、治療費が高く、満足に治療

を受けられないのである。

このように、途上国の問題は、貧困問題をはじめ解決していない問題が沢山ある。この状

況を少しでも改善に導く方法として、本研究の話題でもある「フェアトレード」がある。そ

こで、次の章では、フェアトレードの仕組みについて論ずる。

第3章 フェアトレードの概要

3.1フェアトレードの定義

現在のグローバルな国際貿易の仕組みは、経済的にも社会的にも弱い立場の発展途上国

の人々にとって、「アンフェア」で貧困を拡大させるものだという問題意識がある。したが

って、南北の経済格差を解消するもう一つの貿易の形としてフェアトレード運動が始まっ

た。

「フェアトレード」、直訳すれば「公平な貿易」。「開発途上国の原料や製品を適正な価格

で継続的に購入することにより、立場の弱い開発途上国の生産者や労働者の生活改善と自

立を目指す「貿易のしくみ」4をいう。」(フェアトレードラベルジャパン)

3 シャンティ国際ボランティア会

http://sva.or.jp/activity/oversea/cambodia/background.html 4 フェアトレードラベルジャパンHP「フェアトレードの定義」より

http://www.fairtrade-jp.org/about_fairtrade/000012.html

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フェアトレード商品を購入するということは、途上国の生産者をサポートすることにな

る。よって、カンボジアのような社会を手助けする取り組みになるのである。

フェアトレードの世界で特に影響を与えているヨーロッパの4団体( FLO International、

IFAT1、NEWS!、EFTA)が 2001 年 12 月に合意した共通定義が最も一般的なものとな

っている。日本においてもこの定義が一般的とされ、フェアトレード・ラベル・ジャパン

(FLJ)はこの共通定義を次のように訳している。

フェアトレードの共通定義

Fair Trade is a trading partnership, based on dialogue, transparency and respect, that

seeks greater equity in international trade. It contributes to sustainable development by

offering better trading conditions to, and securing their rights of, disadvantaged

producers and workers - especially in the South. Fair Trade organizations (backed by

consumers) are actively engaged in supporting producers, in awareness raising and in

campaigning for changes in the rules and practices of conventional international trade.5

出典:フェアトレード・ラベル・ジャパン

5 フェアトレード・ラベル・ジャパン http://www.fairtrade -

jp.org/about_fairtrade/000012.html

フェアトレードは、対話、透明性、敬意を基盤とし、より公平な条件下で国際貿易を行

うことを目指す貿易パートナーシップである。特に「南」の弱い立場にある生産者や労働

者に対し、より良い貿易条件を提供し、かつ彼らの権利を守ることにより、フェアトレー

ドは持続可能な発展に貢献する。フェアトレード団体は(消費者に支持されることによっ

て)、生産者の支援、啓発活動、および従来の国際貿易のルールと慣行を変える運動に積

極的に取り組む事を約束する。5

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フェアトレードの10の基準 ~世界フェアトレード機関(WFTO)~6

1. 生産者に仕事の機会を提供する。

2. 事業の透明性を保つ。

3. 生産者の資質の向上を目指す。

4. フェアトレードを推進する。

5. 生産者に公正な対価を支払う。

6. 性別に関わりなく平等な機会を提供する。

7. 子どもの権利を守る。

8. 環境に配慮する。

9. 信頼と敬意に基づいた貿易を行う。

10. 安全で健康的な労働条件を守る。

(出典:ピープル・ツリー)

3.2 日本での取り組み

日本において、フェアトレードの取り組みが開始されたのは、1970年代と言われてい

る。2002年以降には、コーヒーショップやスーパーなどでもフェアトレード認証製品の

取り扱いが始まり、各大学の生協にフェアトレード商品が導入されるなど、日本においても

フェアトレードへの取り組みが広まってきている。2010年以降、チョコレート、バナナ

などの食料品に加え、コットン製品にもフェアトレード認証製品が広がりつつある。

当初、フェアトレード認証製品は主に小売製品であった。現在では、業務用製品でも外食

市場や CSR 活動へ熱心に注力する企業での来客用コーヒーや紅茶など、企業内消費に採用

され始めている。また、ここ数年、フェアトレードを知る・学ぶ機会として、中学校や高等

学校の学習題材へ取り上げられている。若い人達を中心にフェアトレードへの認知度が高

まり、大学生は全国的なサークル活動として広がっている。(FLJの HPより)

FLJによると、フェアトレード認証製品の年間市場規模が約100億円(対2014年比:

106.6%)と推測され、原料の輸入や製造・販売に携わる企業・団体数 が 178(対20

14年比:107%)としている。(図1)

また、図2から分かるように、2010~2013年まではコットンが全く認証されてい

なかったのに対して、近年2015年には、着々と増え、衣料品におけるフェアトレードの

取組みが健闘していることが分かる。(図2)

6 ピープル・ツリー http://www.peopletree.co.jp/fairtrade/standard.html

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図1

※金額は、小売と外食市場とを区分した新算出方法による

図2

※コーヒーは焙煎豆ベース、カカオはカカオ豆ベースの販売数量

現在、日本でもたくさんフェアトレード商品を扱っている企業は沢山ある。

3,750

6,208

7,288

8,9239,404

10,026

0

2,000

4,000

6,000

8,000

10,000

12,000

2010 2011 2012 2013 2014 2015

単位(百万円)

国内フェアトレード認証製品推定市場規模推移

450

613 631741

832 869

17 21115 113 78 97

24 31 27 28 23 270 0 0 16 17 47

0

200

400

600

800

1000

2010 2011 2012 2013 2014 2015

フェアトレード認証産品 国内販売数量推移

(単位:トン)

コーヒー カカオ 茶 コットン

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3.3 日本企業の取組み

・イオングループ

2002年に消費者から「日常生活を国際貢献と結びつけるパイプ役になって欲しい」との

要望をいただき、そこからイオンだからこそできる国際貢献の形として取り組んだものが

「フェアトレード」の始まりである。7(イオン HP)

イオングループでは、トップバリュで商品を開発しているほか、ミニストップ(株)やザ・ボ

ディショップ((株)イオンフォレスト)、(株)イオンイーハートもフェアトレードの商品を

展開している。また、イオンオリジナル商品以外にも、フェアトレード商品を店頭で展開し

ている。

商品例:まろやかチョコレート・コロンビアブレンド ドリップコーヒーetc

・ミニストップは 2006 年よりフェアトレード商品を販売し続けながら、2010 年 4 月には

フェアトレードの応援を 宣言、フェアトレードに関わる団体や企業の人達とともにフェア

トレードの普及・啓発に取り組んでいる。そこで、ミニストップ・フェアトレード研究所を

立ち上げ、海外の生産者との絆をどのように深めたらよいかを多くの人と一緒に考えてい

る。8(ニストップのフェアトレード)

ミニストップで現在発売中の商品:フェアトレードホットコーヒー/アイスコーヒー

・無印良品

フェアトレード商品:バラ

「無印良品はこのフェアトレード商品を扱うことで、フェアトレード商品に興味を持つ

人の集客だけでなく、低価格志向の低い優良顧客を獲得できると考える。」9(無印良品)

・スターバックスジャパン

「スターバックスジャパンはフェアトレード認証コーヒーやコンサベーションコーヒー10

を積極的に購買することで、生産地の環境保全や生産者の経済的支援を推進している。

スターバックスとフェアトレード認証団体の関係は、トランスフェア USAと合意をした 2000

年 4 月に始まった。この合意によってスターバックスジャパンは国際フェアトレード認証

コーヒーを購入、焙煎、販売できるようになった。今でもスターバックスジャパンはトラン

スフェア USA、及び国際フェアトレードラベル機構と積極的に関わっている。スターバック

7 イオングループ HP https://www.aeon.info/environment/social/fair_trade/ 8 ミニストップのフェアトレード

http://www.ministop.co.jp/corporate/fair_trade/activities/pdf/20110929.pdf 9 無印良品 https://www.muji.net/store/cmdty/section/S400030406 10 コンサベーションコーヒー (シェイドグロウン/日陰栽培) は、生態学的に敏感なコー

ヒー生産地域において、生物多様性の保護に寄与している。これらのコーヒーは独立した

外部機関によって、自然環境の保全に貢献し、社会的な責任を果たしながら、生産、販売

されているコーヒーとして認証、もしくは評価を受けたものである。(※シェイド グロウ

ンは、生物多様性に配慮し、実践する日陰栽培の農法を意味する。)

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スジャパンは世界の 24ヵ国において、国際フェアトレード認証ラベル推進組織と提携して

いる。」(スターバックスジャパン)

スターバックスジャパン HPでは以下のように述べている。

「フェアトレードの認証は、民主的に運営され、かつフェアトレード登録リストに登録され

た小規模のコーヒー生産者の組合や協会に属する生産者のコーヒーだけが取得することが

できる。社会及び環境基準を満たしながら通常の国際市場価格よりも高めに設定した価格

で取引が行われている。スターバックスとフェアトレードの活動は同じ目標を掲げている。

それは、生産者が、彼らのコーヒーに見合った公正な対価を受け取ること、また国際市場へ

のアクセスを改善することである。」11(スターバックスジャパン)

店舗での取り組み

「スターバックスジャパンでは、毎月20日を「Ethically Connecting Day ~エシカル

なコーヒーの日~」とし、消費者に生産地とのつながりを感じながらコーヒーをお楽しみい

ただく機会としている。また、一部店舗では、コーヒーの栽培や生産地での取り組みを、「コ

ーヒーを知ろう」、「C.A.F.E.プラクティス」、「フェアトレード」、「気候変動とコミュニティ

支援」の4つのテーマのクイズを通して楽しく知ることができる「エシカルパーティー」を

開催している。」(スターバックスジャパン)

このように、日本でもフェアトレードを少しでも広げようと、沢山の企業が商品を売り、

広げる為の取組みをしているのである。

3.4 海外市場 世界のフェアトレード認証製品市場の推移

「Fairtrade Internationalより2014-2015年次のレポートによると、国際フェ

アトレード認証に参加する生産者・労働者は、世界74ヶ国、150万人以上になった。2

013年に引き続き、世界中でフェアトレードの取引量が増加したことにより、開発途上国

の生産者・労働者の 方々の収入や生活環境、および地域社会の改善が図られていることが

報告されている12。」(FAIRTRADE JAPAN)

また、2014年、国際フェアトレード認証ラベル製品の販売金額は約59億ユーロ(8,

300億円以上)に 達した。また、現在、世界125か国で流通している。特に、コット

ン(対前年比28%増)と カカオ(対前年比24%増)の販売量が増加している。これは

2014年にスタートした新しい認証の枠組み 「国際フェアトレード認証調達プログラム」

により、企業単位でフェアトレード認証原材料の 調達量をコミットする企業が増えている

11 スターバックスジャパン

http://www.starbucks.co.jp/responsibility/ethicalsourcing/support.html 12FAIRTRADE JAPAN http://www.fairtrade-jp.org/about_fairtrade/000018.html

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ことが主な要因である。

このように取り組みが広がっていることで、貧困に苦しむ発展途上国を助ける機会も広

がっている。また、同時に人々の認知度も高くすることが不可欠である。

3.5 フェアトレード 認知度

フェアトレードの認知度に関して、一般社団法人日本フェアトレード・フォーラム(FTFJ)

が、全国のフェアトレードの研究者および推進団体とともに、2015年6月末~7月初め

に、フェアトレードに関する全国意識調査を行っている。(対象:15 歳~69 歳の 1076 人)

A.フェアトレードの知名度

「この調査では、調査対象者全員(1076 人)を対象に、フェアトレードという言葉を見

聞きしたことがあるかどうかを尋ねた。フェアトレードが何を意味するか、その内容まで知

っているか否かに関わらず、「フェアトレードという言葉を見聞きしたことがある人の割合

=フェアトレードの知名度」を調べた。」(日本フェアトレード・フォーラム

フェアトレードと倫理的消費に関する全国意識調査 2015)

図 1 フェアトレードの知名度

この表から分かるように、フェアトレードという言葉の知名度は 54.2%で、3年前の調

査では、50.3%だったので、3.9%上がった。(図1)

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12

B.フェアトレードの認知率

図2 フェアトレード認知率

「フェアトレードという言葉を見聞きしたことがある人(583 人)の中で、フェアトレー

ドが貧困や環境に取り組む活動であると答えられた人の割合(正答率)は 54.2%で、3 年

前の調査(51.0%)から 3.2%改善した。調査対象者全体(1076 人)に占める正答者の割

合=フェアトレー ドの認知率は 29.3%となり、3年前の 25.7%から 3.6%上がった。

※ここでの「認知率」とは、言葉の意味を漠然と知っているだけでなく、「正しく理解し

ていることを満たす人の割合とされている。」(図2)(日本フェアトレード・フォーラム

フェアトレードと倫理的消費に関する全国意識調査 2015)

以上のことから、フェアトレードの知名度・認知度は各数値が年々増加傾向にあることが

分かった。しかし、この結果から今後もさらに、認知度が上がるというのは保証できない。

なぜならば、時間が経てば、フェアトレードの認知度が広まっていくということはできない

からである。13

図1,2 出所:日本フェアトレード・フォーラム

フェアトレードと倫理的消費に関する全国意識調査 2015より

13日本フェアトレード・フォーラム

フェアトレードと倫理的消費に関する全国意識調査 2015 P3,4,5

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13

3.6 消費者意識

消費者のフェアトレードに対する意識に関しては、NTT コムリサーチが 2013 年に詳細な

データを発表している。20歳以上の「gooリサーチ」消費者モニターを対象にフェアトレー

ド商品に関する調査を実施した。有効回答者数は 2350名である。

図3 フェアトレード商品の購入経験の有無

性別で見ると、女性の購入経験率は 65.2%となり男性の 46.2%と比較して 19%高い。

図4 フェアトレードの購入場所

フェアトレード商品の内容を認知し、かつ購入経験がある回答者を対象にフェアトレ

ード商品の購入場所を尋ねると、「コーヒー専門店、カフェ(29.6%)」「自然食品の店

(25.7%)」と「インターネット(24.8%)」がともに約3割を超えた。

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図5 フェアトレード商品の購入理由

図6 フェアトレード商品を購入しない理由

「フェアトレードの内容を認知していて、フェアトレード商品の購入未経験者を対象に、

購入したことがない理由を尋ねたところ、48.8%が「フェアトレード商品を扱う店が近

くにないから」を挙げ、「自分の欲しい商品でフェアトレード商品がないから(33.1%)」

と続いた。」(NTTコムリサーチ)

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図7 フェアトレード商品の購入意向

図8フェアトレード商品の受容価格(一般商品との価格)

図3~8 出所:NTTコムリサーチ14

14 NTT コムリサーチ http://research.nttcoms.com/database/data/001541/

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図3~8 考察

この NTTコムリサーチの調査から、以下のことが考えられる。

まず、図5のフェアトレード商品の購入経験がある人(230人)の商品の購入理由とし

て最も多かったのが、「商品そのものを気に入ったから」70.9%、次に「途上国の経済発展

に貢献できるから」57.0%と続いているものの、「商品そのものが気に入ったから」の 70.9%

と比べると13ポイント差と大きな差がある。これは、その後の「社会的にいいことだから」

37.4%、「国際協力ができるから」33.5%、「環境保全になるから」17.8%といった「フェア

トレードを知っているから」という社会的意識の理由も、割合が少ない。そのことから、購

入者はフェアトレード製品の購入を決める際、「フェアトレードを知っているから」という

理由で決めるよりも、商品そのものが欲しいと思い、買っている可能性があると考える。

また、フェアトレードを認知していながら商品の購入経験がない人達(172人)は、フ

ェアトレード製品の購入への妨げになると思われた価格の高さよりも「フェアトレード商

品を扱う店が近くにないから」48.8%、「自分の欲しい商品でフェアトレード商品がないから」

33.1%、「どこでフェアトレード商品を購入できるか分からないから」25.0%という理由が上

位となった 。「この理由として、フェアトレード商品のアイテムバリエーションの少なさ、

どこに商品が売っているのかが分からないという情報不足、そもそものフェアトレード商

品の知識不足の可能性として考えられる。」(NTTコムリサーチ)

「また、全員が対象(2350人)の質問、図7のフェアトレード商品の購入意向の回答

においては、「フェアトレード商品を購入したい」、「やや購入したい」合わせて53.6%

と半数以上が回答した。その半数の購入意向者を対象にコーヒー、衣料品、アクセサリーを

例に一般商品と比べてどの程度の価格差までなら購入したいかを尋ねたところ、コーヒー

が68.5%、衣料品が62%、アクセサリーが56.1%と半数の割合を超える人達が、

一般商品より、1割~2割以上高くても購入したいと回答した。」(企業とフェアトレード~

日本国内での普及に向けて~)ここから、フェアトレードの認知や購入意欲があれば、価格

は必ずしも消費者にとっての最重要事項ではないということが考えられる。15

この調査結果の提案としては、フェアトレード商品を購入できる場所を拡大し、また、フ

ェアトレード商品のアイテムバリエーションを増やすことが考えられる。そうすることで、

さらにフェアトレード商品の購入率が上がると考えられる。

また、図4の「フェアトレード商品の内容を認知し、かつ購入経験がある回答者を対象に

フェアトレード商品の購入場所を尋ねたところ、「コーヒー専門店、カフェ(29.6%)」

「自然食品の店(25.7%)」と「インターネット(24.8%)」がともに約3割を超え

た」という結果から、コーヒー専門店、自然食品の店などの専門店とカフェでフェアトレー

ド商品を購入する人が一定数いることを考えると、ベジタリアン用のメニューを置いてい

るレストランなどにターゲットを絞りフェアトレード商品を置く方が、フェアトレードも

広まり、フェアトレード商品の購入率が上がる可能性がある。

15 企業とフェアトレード~日本国内での普及に向けて~樋口祥子 P45、46、47

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第 4章 研究アプローチと研究方法

4.1 研究目的

本研究では、アンケート調査を行った。このアンケートでは、「どういう人がフェアトレ

ードに関心が高いのか」、「フェアトレードに関心が高い人たちは、他に何に関心が高いの

か」、「フェアトレードの認知度、関心度」、「フェアトレード商品を購入したことがあるか」

などをテーマに行い、分析することを目的とした。また、上記にも述べたように2つの仮説

を検証するためにアンケートを行った。

①:日本で、フェアトレード商品を買う人を増やすには、「全く興味ない人に勧めるより

も、‘食べ物’に意識が高いヴィ―ガンとベジタリアンの人達にアプローチすることが有効

なのである」

②:「食べ物以外にも、環境問題や社会問題に関心がある人たちは、フェアトレードにつ

いてより知っており、買う率が高い」

なぜ、ヴィ―ガンやベジタリアンや環境問題や社会問題に関心が高い人たちにアンケー

トをとったのか。それは、先進国日本で、「フェアトレード商品を買う人を増やしたい。買

う人を増やすにはどうしたらいいのか」と考えた結果、「フェアトレードを全く知らない人

に勧めるよりも、フェアトレードに高い人たちにアプローチすることが重要である」と仮説

を立てたからだ。フェアトレードに関心が高い人たちはどういう人たちだろうと考えた結

果、様々な可能性があったが、‘食べ物’に意識が高いヴィ―ガンやベジタリアンだったら、

途上国の人たちを助けるという意識はしていないかもしれないが、関心の高さから、フェア

トレードに関心を持ってもらえ、フェアトレード商品を購入してくれるのではないだろう

か。元々意識が高い人たちに勧めることで最初の広がりのきっかけとなるのではないかと

考えたからである。ベジタリアンやヴィ―ガンの人達、食べ物以外にも、環境問題や社会問

題に関心がある人たちを対象に、フェアトレードについて他の人達よりも知っているのか、

また行動に移しているのかなどを検証するために今回の研究を行った。

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4.2アンケート 内容

大学生 31人、ベジタリアン・ヴィ―ガンの人達や環境問題や社会問題に対して高い関心

を持つ人達 31人、合計で 62人にアンケートを行った。

<質問内容>

1.あなたの性別を教えてください。

1男性 2女性

2.あなたの年齢を教えてください。

1. 10代 2. 20代前半 3. 20代後半

4. 30代 5. 40代 6. 50代以上

3.あなたは、世界の政治のニュースに興味がありますか。

1 興味がない 2 あまり興味がない

3 どちらかというと興味がある 4 興味ある

4.あなたは将来、世界がどうなるか気になりますか。

1 全く興味ない 2 あまり興味ない

3 どちらかというと興味ある 4 かなり興味ある

5.あなたは、物を長く使うようにしていますか。

1している 2どちらかというとしている

3どちらかというとしていない 4していない

6.あなたは、自分の食生活に気を遣っていますか

1気を遣っている 2どちらかというと気を遣っている

3どちらかというと気を遣っていない 4気を遣っていない

7.あなたは、運動をしていますか。

1している 2どちらかというとしている

3どちらかというとしていない 4していない

8.あなたは、‘フェアトレード’という言葉をご存知ですか。

1. 知らない 2. 見聞きしたことはあるが内容までは知らない。

3. 内容をある程度知っている 4. 内容までよく知っている

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質問8で3・4と回答した方に質問です。実際に、フェアトレード商品を買ったことは

ありますか。

1よく購入する 2時々購入する

3あまり購入しない 4購入したことはない

9.あなたは‘ベジタリアン’という言葉をご存知ですか。該当する選択肢に1つ○をつけてく

ださい。

1.知らない 2.聞いたことがあるが内容までは知らない。 3.内容も知っている

問 9 で「内容も知っている」と答えた方に伺います。あなたはベジタリアンですか?

1. ベジタリアンである

2. ベジタリアンだったことがある

3. ベジタリアンになることを検討している

4. ベジタリアンになることを検討したことがある

5. ベジタリアンではない(1〜4に当てはまらない)

6. その他( )

10.あなたは‘ヴィーガン’という言葉を聞いたことがありますか。

1知らない 2. 聞いたことがあるが、内容までは知らない。 3. 内容も知っている

問 10 で「内容も知っている」と答えた方に伺います。あなたは、ヴィーガンですか?

1. ヴィーガンである

2. ヴィーガンだったことがある

3. ヴィーガンになることを検討している

4. ヴィーガンになることを検討したことがある

5. ヴィーガンではない(1〜4に当てはまらない)

6. その他( )

11.ベジタリアン・ヴィーガンの人に質問です。 生活面・食事面で気を付けていることはあ

りますか。具体的にご記入下さい。(ベジタリアン、ヴィーガンだったことがある方もお答え下

さい)。

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4.3研究結果

今回の調査で分かったことは、主に3つある。

Ⅰ.‘環境問題・社会問題に高い関心を持つ人達’又は‘ベジタリアンやヴィ―ガンの人

達’のうち、フェアトレードを知らない人は0%であり、内容までよく知っている人は5

1%であった。(図9)それに対し、学生は、フェアトレードを「知らない人」は16%で

あり、「見聞きしたことはあるが内容までは知らない人」が36%(図 10)と、ベジタリア

ンや環境・社会問題に対して関心が高い人たちよりも低かった。

問8:‘フェアトレード’という言葉をご存じですか。

図9ベジタリアン・ヴィ―ガン・環境・社会問題に関心が高い人達の回答

図 10 学生の回答

0%

10%

39%51%

しらない

見聞きをしたこと

はあるが内容まで

はしらない

内容をある程度

知っている

内容までよくしっ

ている

16%

36%32%

16%

しらない

見聞きをしたこと

はあるが内容まで

はしらない内容をある程度

知っている

内容までよくしっ

ている

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Ⅱ.ベジタリアンや環境・社会問題に高い関心を持つ人達のうち、「フェアトレード商品を

時々買う」と答えた人は57%と、半数を超えていた。(図11)

それに対して、大学生は、「購入したことがない」と答えた人は54%だった。事前の予

想とは違って、意外にも、「時々購入する」と答えた人が21%と少し割合が高かった。(図

12)

問8-1:フェアトレード商品を買ったことはありますか。

図11ベジタリアン・ヴィ―ガン・環境・ 図12学生の回答

社会問題に関心が高い人達の回答

Ⅲ.食べ物や環境・社会問題に対して高い関心を持つ人達は、「あなたは将来、世界がどう

なるか気になりますか」・「あなたは、物を長く使うようにしていますか」という2つの質問

に対して、「全く興味がない」、「物を長く使うようにしていない」と答える人は誰一人いな

かった。(図13、14)

図13将来、世界がどうなるか気になるか。 図14物を長く使うようにしているか。

7%

57%27&

10%

よく購入する 時々購入する

あまり購入しない 購入したことない

0%21%

25%54%

よく購入する 時々購入する

あまり購入しない 購入したことない

0% 0%

35%

65%

興味がない

あまり興味がない

どちらかというと興味がある

興味ある

61%

39%

0% 0%

している

どちらかというとしている

どちらかというとしていない

していない

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第 5章 考察

今回の研究から以下のことが考えられる。

まず、1つ目は、「ベジタリアンやヴィ―ガンの人達・環境問題や社会問題に高い関心を

持つ人達は、フェアトレードに関心を持っているのではないか」という筆者の仮説が、サン

プル数は少ないものの、今回の研究で立証された。その理由として、学生に比べフェアトレ

ードへの関心が高いベジタリアンやヴィ―ガンの人達は、動物の育てられ方や‘食べ物’に

関心が高いため、「お肉を食べない=動物の命を大切にしたい」という熱い想いを大事にして

いる。また、フェアトレードに関心を持つ人は、社会問題に対して関心を持つ人が多いため、

フェアトレードを理解しやすい可能性を挙げることができる。そこから、学生よりもフェア

トレードに関心があり、商品を買うという行動に繋がるのではないかと考える。よって、全

くフェアトレードに関心がない人にフェアトレードを勧めるより、ベジタリアンなど、環境

問題や社会問題に関心が高い人達に勧めることが大事なのではと考えることができる。

2つ目は、上記の調査結果のⅢから分かるように、フェアトレードに関心を持っている人

は現在のことだけでなく、未来のこと(世界がどうなるかなど)にも関心がある可能性があ

る。また、フェアトレードについて伝える際は、単に「フェアトレードの商品を買うことは

途上国の貧困問題を解決することにつながる」と推奨するだけではなく、加えて環境問題や、

世界の社会問題について伝えることも必要なのではないだろうか。そうすることで、未来の

ことを見るという“時間軸”を伸ばすトレーニングになり、フェアトレードも今より広がり

やすくなるのではないかと考える。

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第6章 総括

日本では、2011年に日本初のフェアトレードタウン16となった熊本以外にも、名古屋、

札幌、逗子、宇都宮、一宮などでフェアトレードタウンを目指す市民活動が展開され、日本

国内におけるフェアトレードは、世界と比べれば規模は小さいものの、市場や認知度、社会

からの関心、この論文の{第3章 3.5フェアトレード認知度}からも分かるように、どの点

から見ても確実に広がってきている。これからは、消費者にさらに広めていくために、フェ

アトレード自体への関心を引き、また、フェアトレードについて広く認知してもらい、消費

者が継続的に関わる姿勢を持つことが重要だと考える。

また、上記の第3章の NTTコムリサーチの「フェアトレード商品に関する調査結果」でも

述べたように、フェアトレード商品のアイテムバリエーションを増やすことや、フェアトレ

ード商品に関する情報を開示したりすることなどの消費者に対しての活動に力を入れるこ

とが今後さらに必要になってくると考える。

また、第3章の NTTコムリサーチの「フェアトレード商品に関する調査」の結果と今回の

研究から、「ターゲットを絞ってアプローチした方が効果的」と言える可能性がある。NTTコ

ムリサーチのフェアトレード商品に関する調査結果の図4の「フェアトレード商品の内容

を認知し、かつ購入経験がある回答者を対象にフェアトレード商品の購入場所を尋ねたと

ころ、「コーヒー専門店、カフェ(29.6%)」「自然食品の店(25.7%)」と「インタ

ーネット(24.8%)」がともに約3割を超えた」という結果と、今回の調査結果で立証

された「ベジタリアンやヴィ―ガンの人達・環境問題や社会問題に高い関心を持つ人達は、

フェアトレードに関心を持っている」という結果を重ねてみる。すると、コーヒー専門店、

自然食品の店などの専門店とカフェでフェアトレード商品を購入する人が一定数いること

が分かる。そこから、「ベジタリアン用のメニューを置いているレストランなどにターゲッ

トを絞り、フェアトレード商品を置く方が、購入率が上がる可能性がある」という提案がで

きる。つまり、全くフェアトレードに関心がない人たちに勧めるよりも、「ターゲットを絞

ってアプローチした方が効果的」と言える可能性がある。

今回の研究結果から、前述したように、全くフェアトレードに関心がない人にフェアトレ

ードを勧めるより、ベジタリアンやヴィ―ガンの人たち、環境問題や社会問題に関心が高い

人達に勧めることが大事なのではと考える。例えば、ベジタリアンやヴィ―ガンのお店に集

まっている人達を対象に、フェアトレードをアピールすると、購入率が上がると考えられる。

今後、日本でもフェアトレードが普及し、フェアトレード商品を買うことで途上国の生産者

の生活が少しでも改善されることに期待したいと思う。

16 フェアトレードタウンとは、「まちぐるみ」、つまり、まちの行政、企業・商店、市民団体などが一体

となってフェアトレードの輪を広げることで、不利な立場、弱い立場に置かれた途上国の生産者の人たち

の自立や環境の保護保全に貢献しようとする運動である。

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参考文献

1. FAIRTRADE JAPAN

http://www.fairtrade-jp.org/about_fairtrade/

2. 日本ベジタリアン協会

http://www.jpvs.org/menu-info/

3.シャンティ国際ボランティア会

http://sva.or.jp/activity/oversea/cambodia/background.html

4.フェアトレードラベルジャパンHP「フェアトレードの定義」

http://www.fairtrade-jp.org/about_fairtrade/000012.html

5.ピープル・ツリー

http://www.peopletree.co.jp/fairtrade/standard.html

6.イオングループ HP

https://www.aeon.info/environment/social/fair_trade/

7.ミニストップのフェアトレード

http://www.ministop.co.jp/corporate/fair_trade/activities/pdf/20110929.pdf

8.スターバックスジャパン

http://www.starbucks.co.jp/responsibility/ethicalsourcing/support.html

9.日本フェアトレード・フォーラム

フェアトレードと倫理的消費に関する全国意識調査 2015 P3,4,5

10.NTT コムリサーチ

http://research.nttcoms.com/database/data/001541/

11.企業とフェアトレード~日本国内での普及に向けて~樋口祥子 P45、46、47