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発表題名:ライフスタイルと健康状態の関連性 発表者:石井信 上田薫平 川浪翔大 長澤秀治 【背景及び目的】 ライフスタイルと健康状態との関連性の把握は、健康維持および健康指導に 非常に重要であることが分かっている。今回の環境医学実習では、大阪府下某 職域の男性従業員の9年間の調査データを用いて、労働環境や生活習慣などを 含めたライフスタイルと健康状態との関連性を、さまざまな指標を用いること で検討することを目的とした。 【方法】 20042012 年の間に大阪某会社の男性従業員を対象として、 HPIGHQ28SDS 3 指標の集計結果について解析を行った。 まず対象者の年齢分布を以下に示す。 次に、今回利用した 3 つの指標についてそれぞれ説明する。 1. HPIHealth Practice IndexHPI は健康習慣指数とも呼ばれ、下記の 8 項目から成り立っている。08 点満点で集計し、点数が高い程ライフスタイルが良好であると言える指標で ある。 125

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Page 1: 発表題名:ライフスタイルと健康状態の関連性 - …...発表題名:ライフスタイルと健康状態の関連性 発表者:石井信 上田薫平 川浪翔大

発表題名:ライフスタイルと健康状態の関連性

発表者:石井信 上田薫平 川浪翔大 長澤秀治

【背景及び目的】

ライフスタイルと健康状態との関連性の把握は、健康維持および健康指導に

非常に重要であることが分かっている。今回の環境医学実習では、大阪府下某

職域の男性従業員の9年間の調査データを用いて、労働環境や生活習慣などを

含めたライフスタイルと健康状態との関連性を、さまざまな指標を用いること

で検討することを目的とした。

【方法】

2004〜2012年の間に大阪某会社の男性従業員を対象として、HPI、GHQ28、SDSの 3指標の集計結果について解析を行った。 まず対象者の年齢分布を以下に示す。

次に、今回利用した 3つの指標についてそれぞれ説明する。 1. HPI(Health Practice Index)

HPI は健康習慣指数とも呼ばれ、下記の 8 項目から成り立っている。0〜8点満点で集計し、点数が高い程ライフスタイルが良好であると言える指標で

ある。

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2. General Health Questionnaire-28(GHQ-28)GHQ28は一般健康調査表とも呼ばれ、下記の 28項目から成り立っている。

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7 項目ごとに「身体症状」「不安不眠」「社会的活動障害」「うつ傾向」に分けられ、それぞれ選択肢 1または 2を 0点、3または 4を 1点とし、総合スコア0~28点満点とした。スコアが高いほど一般的健康状態は低いと考えられる。

3. Self-rating Depression Scale(SDS、自己評価式抑うつ性尺度)SDSは抑うつ尺度等とも呼ばれ、下記の 20項目よりなり、うつまたはうつに近い状態にあるかどうかを示す指標である。

採点方法は、問1、問3-4、問7-10、問13、問15、問19を

“1” =1点、 “2”=2点 “3”= 3点、“4”= 4点 問2、問5-6、問11-12、問14、問16-18、問20を

“1” =4点、 “2”=3点 “3”= 2点、“4”= 1点 とした。総スコアは20~80点の満点 80点である。 40点未満は抑うつ性に乏しく、40点台は軽度うつ傾向、50点以上で中等度抑うつ性あり、と考えられている。

【結果】

・HPI

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ライフスタイル良好の対象者(HPI=6~8点)は 229人(17.8%)、中庸(HPI=4~5点)のは 714人(55.5%)、不良(HPI=0~4点)のは 344人(26.7%)であり、正規分布を示した。

・GHQ28

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カットオフ値は 5点/6点に設定した。GHQ28は5点以下(健康状態は比較的に高い)の対象者は 655人(50.1%)、6点以上(健康状態は比較的に低い)のは653人(49.9%)であり、対数分布を示した。

次に GHQ28と HPIと関連性を調べてみた。

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相関係数 r=-0.298, p<0.0001。(単回帰分析:GHQ28=9.751-0.915HPI, R2=8.9%) これにより、HPIと GHQ28にある程度の関連性は見られた。そこで GHQ28を目的変数にとり、HPI、SDS、年齢、身長、体重、入社年数、事務職、管理職、学歴、婚姻状態を説明変数としてとり、重回帰分析を行った。

GHQ28= -10.26-0.21×HPI+0.45×SDS-0.04×入社年数+0.40×事務職+0.68×管理職 となり、十分に関係性を見てとる事ができた。またモデルの寄与率は 66.2%であった (n=1287, p<0.0001)。

【考察】

今回の解析で、対象者らの GHQ28 で表せられた健康状態は、 HPI、SDS、就職年数、職種職位と関連性が高いという結果になった。その内、HPI 高得点と入社年数は良い健康状態を有意に予測した。この結果によって、長期の安定

した労働環境と良い生活習慣は健康に良いと示唆された。

逆に SDS得点、事務職そして管理職は不良な健康状態に有意な関連性が見られた。事務・管理職の対象者、特に抑うつ状態を感じた対象者らは、十分に健

康に注意する必要があると考えられる。

しかし、プールデータであるために、調査参加者に重複がある(たとえば、

2010 年と 2011 年に同じ人が回答している、など)可能性があり、ライフスタ

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イルと健康状態の因果関係が完全に証明されたとは言い切れない。今後機会が

あれば、そのあたりのことも考慮して調べてみたい。また 9 年間のデータを合わせて考えるのではなく、各年に何が起こったかなどを踏まえながら、1年ごとの関係を調べてみるという事も必要だと考えられる。

【参考文献】

1) Sawako Maruhashi: Physical and Mental Health Problems and RelatedFactors of Main Care―Givers of Middle―Aged and Elderly Patients whohave been Discharged from a Specialized Care Facility

2) 独立行政法人 労働者健康福祉機構: 勤労者におけるメンタルヘルス不全と職場環境との関連の研究及び予防・治療法の研究・開発、普及」研究報告書

3) 森川 千鶴子: 地域高齢者における生活習慣と抑うつ状況・性格傾向との関連4) Suda M, Nakayama K, Morimoto K: Relationship between behavioral

lifestyle and mental health status evaluated using the GHQ-28 and SDSquestionnaires in Japanese factory workers.

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