6
28 寒地土木研究所月報 №774 2017年11月 1.はじめに コンクリート構造物の解体に伴って発生するコンク リート塊は、道路用路盤材やコンクリート用骨材、埋 め戻し材、裏込め材等の用途で再資源化されている。 また、日本国内におけるコンクリート塊の再資源化率 は、2000年以降、95%を上回る高い水準で推移してい 1) 。しかしながら、再資源化後の用途を見てみると、 コンクリート材料としての再利用率は1%に満たない 状況が続いており、再生路盤材としての用途が99%を 占めている 2) 。このような中、将来、建設工事の減少 に伴って再生路盤材の生産が余剰となることが懸念さ れており、徐々にコンクリート用骨材としての利用を 増やしていくことが必要とされている。 本資料では、コンクリート塊を再資源化したコンク リート用骨材(以下、再生骨材という)に関して概説 するとともに、北海道内での再生骨材の利用拡大へ向 けた基礎的検討の結果について報告する。 2.再生骨材について 再生骨材は、解体構造物のコンクリート塊を、コン クリート用粗骨材(5~40mm)や細骨材(0~5mm)のサ イズまで砕いて製造される材料である。そのため、再 生骨材は一般に、旧コンクリートのモルタルと元々の 骨材とが付着し、一体化した材料となっている。 再生骨材を用いたコンクリートでは、この付着する 旧モルタル分が多ければ多いほど、コンクリートの品 質や耐久性が低くなる。そのため、再生骨材の製造工 程において、付着する旧モルタルの量を減らすための 工程が多いほど再生骨材の品質は高くなり、コンクリ ートとしての品質も良くなる。そのため、現在使われ ている再生骨材は、表-1に示す3種類のグレードが JISで規定されており、再生骨材の品質毎にコンクリ ートの用途を使い分けている。 L骨材(低品質再生骨材)は、コンクリート塊の破砕・ 分級のみを行い、その他の処理をほとんど行わない再 生骨材である。製造コストは低いものの、コンクリー ト用骨材としての品質が悪く、品質変動も大きいこと から、捨てコン等の構造部材ではない箇所のみに用途 が限定されている。 H骨材(高品質再生骨材)は、破砕・分級だけでは なく、加熱処理や磨砕処理(すり揉み)等の高度な処 理を行って再生骨材に付着する旧モルタル分を除去 し、天然骨材や砕石(以下、普通骨材という)と同程 度の水準まで品質を高めた再生骨材である。そのた め、H骨材は普通骨材と同様に取り扱うことが可能で、 一般用途のレディミクストコンクリート用の材料とし て使用することができるが、製造コストが高くなる。 M骨材(中品質再生骨材)は、品質面でL骨材とH 骨材の中間に位置づけられ、再生骨材コンクリートの 需要拡大を目的にJISとして策定されたもので、破砕・ 再生路盤材のコンクリート用骨材としての適用性に関する検討 野々村 佳哲  清野 昌貴  吉田 行  安中 新太郎 技術資料 規格 品質 呼び強度 適用範囲 主な用途 H 骨材 JIS A 5021 高品質 1845 1 普通骨材と同様に扱うこと が可能 一般用途のコンクリート M 骨材 JIS A 5022 中品質 1836 乾燥収縮及び凍結融解の影 響を受けにくい部材 地中構造物、無筋構造物、 プレキャスト製品等 L 骨材 JIS A 5023 低品質 18(~24 2 高い強度・高い耐久性が要 求されない部材及び部位 捨てコン、均しコン、間詰 めコン、裏込めコン等 1: JIS A 5308 レディミクストコンクリートによる(普通骨材を用いた場合と同じ) 2: 生コン購入者による材料・配合の指定および事前検討が必要 表-1 再生骨材のグレード

再生路盤材のコンクリート用骨材としての適用性に関する検討JIS A 5308 JIS A 5021 JIS A 5022 JIS A 5023 JIS A 5308 JIS A 5021 JIS A 5022 JIS A 5023 絶乾密度(g/cm3)

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  • 28 寒地土木研究所月報 №774 2017年11月

    1.はじめに

    コンクリート構造物の解体に伴って発生するコンクリート塊は、道路用路盤材やコンクリート用骨材、埋め戻し材、裏込め材等の用途で再資源化されている。また、日本国内におけるコンクリート塊の再資源化率は、2000年以降、95%を上回る高い水準で推移している1)。しかしながら、再資源化後の用途を見てみると、コンクリート材料としての再利用率は1%に満たない状況が続いており、再生路盤材としての用途が99%を占めている2)。このような中、将来、建設工事の減少に伴って再生路盤材の生産が余剰となることが懸念されており、徐々にコンクリート用骨材としての利用を増やしていくことが必要とされている。本資料では、コンクリート塊を再資源化したコンクリート用骨材(以下、再生骨材という)に関して概説するとともに、北海道内での再生骨材の利用拡大へ向けた基礎的検討の結果について報告する。

    2.再生骨材について

    再生骨材は、解体構造物のコンクリート塊を、コンクリート用粗骨材(5~40mm)や細骨材(0~5mm)のサイズまで砕いて製造される材料である。そのため、再生骨材は一般に、旧コンクリートのモルタルと元々の骨材とが付着し、一体化した材料となっている。

    再生骨材を用いたコンクリートでは、この付着する旧モルタル分が多ければ多いほど、コンクリートの品質や耐久性が低くなる。そのため、再生骨材の製造工程において、付着する旧モルタルの量を減らすための工程が多いほど再生骨材の品質は高くなり、コンクリートとしての品質も良くなる。そのため、現在使われている再生骨材は、表-1に示す3種類のグレードがJISで規定されており、再生骨材の品質毎にコンクリートの用途を使い分けている。L骨材(低品質再生骨材)は、コンクリート塊の破砕・分級のみを行い、その他の処理をほとんど行わない再生骨材である。製造コストは低いものの、コンクリート用骨材としての品質が悪く、品質変動も大きいことから、捨てコン等の構造部材ではない箇所のみに用途が限定されている。H骨材(高品質再生骨材)は、破砕・分級だけではなく、加熱処理や磨砕処理(すり揉み)等の高度な処理を行って再生骨材に付着する旧モルタル分を除去し、天然骨材や砕石(以下、普通骨材という)と同程度の水準まで品質を高めた再生骨材である。そのため、H骨材は普通骨材と同様に取り扱うことが可能で、一般用途のレディミクストコンクリート用の材料として使用することができるが、製造コストが高くなる。M骨材(中品質再生骨材)は、品質面でL骨材とH骨材の中間に位置づけられ、再生骨材コンクリートの需要拡大を目的にJISとして策定されたもので、破砕・

    再生路盤材のコンクリート用骨材としての適用性に関する検討

    野々村 佳哲  清野 昌貴  吉田 行  安中 新太郎

    技術資料

    規格 品質 呼び強度 適用範囲 主な用途

    H 骨材 JIS A 5021 高品質 18~45※1普通骨材と同様に扱うこと

    が可能一般用途のコンクリート

    M 骨材 JIS A 5022 中品質 18~36乾燥収縮及び凍結融解の影

    響を受けにくい部材

    地中構造物、無筋構造物、

    プレキャスト製品等

    L 骨材 JIS A 5023 低品質 18(~24※2)高い強度・高い耐久性が要

    求されない部材及び部位

    捨てコン、均しコン、間詰

    めコン、裏込めコン等

    ※1: JIS A 5308 レディミクストコンクリートによる(普通骨材を用いた場合と同じ)※2: 生コン購入者による材料・配合の指定および事前検討が必要

    表-1 再生骨材のグレード

  • 寒地土木研究所月報 №774 2017年11月 29

    分級に加え、比較的簡易な磨砕処理等を行って製造される。付着する旧モルタルの量を減らすための処理をほとんど行わないL骨材に比べて、呼び強度や用途制限が緩和されており、乾燥収縮および凍結融解の影響を受けにくい地中構造物、無筋構造物、プレキャスト製品等での利用が可能である。なお、積雪寒冷地で使用する場合には、M骨材自体の凍結融解抵抗性を確認する必要がある。以上の3種類の再生骨材のうち、再生骨材としての生産利用は、汎用的に利用できるH骨材が9割以上を占めることが、国土交通省の建設副産物実態調査で報告されている1)。しかしながら、H骨材の製造には専用の設備やノウハウが必要となる。また、H骨材の製造工場の運営が経済的に成立するためには、コンクリート塊の安定した供給が必要である。そのため、現在のところ、H骨材の製造工場があるのは建築物由来のコンクリート廃棄物が多い首都圏および大阪圏の大都市圏のみとなっており、北海道には存在しない。実際に、北海道におけるコンクリート塊の発生量を見てみると、表-2に示すように大都市圏を大きく下回っている。さらに、北海道は広大な圏域を有していることを併せて考えると、H骨材の製造工場の立地条

    件としては、北海道は非常に厳しい地域であると言える。そのため、北海道において、再生骨材の利用拡大を進める場合、北海道各地にある既存の再生路盤材の製造設備の有効活用も併せたL,�M骨材の利用拡大を図っていくことが重要になると考えられる。そこで、今回、再生骨材の利用拡大に向けた基礎的検討の1つとして、既存の中間処理場で製造される再生路盤材が、再生骨材としてどの程度の品質を有しているかの調査を行った。

    3.コンクリート用骨材としての品質試験

    3. 1 再生骨材に関するJISと品質試験項目

    再生骨材および普通骨材に関するJISの規格値の一部を表-3に示す。前節冒頭で述べたように、再生骨材の品質は、付着する旧モルタルの影響を大きく受ける。そのため、再生骨材の品質を管理するための指標としては、旧モルタルの付着率との相関が高い絶乾密度や吸水率が採用されている。なお、表-3に示す他に、アルカリシリカ反応性や粒度分布等に関する規格値が存在する。H骨材は、普通骨材と同等の骨材として使用される材料であるため、表-3に示すように普通骨材とほぼ同じ品質が求められている。一方、M,�L骨材は、より多くの旧モルタルが付着しているため、絶乾密度や吸水率、微粒分量の値が、H骨材よりも大きく設定されている。また、再生骨材では付着する旧モルタルの量だけではなく、旧モルタルの品質の影響を受けて耐久性が低下する場合がある。そのため、再生骨材では、骨材自身の塩化物量や凍結融解抵抗性等も規定されている。これらのことから、本資料では再生骨材に関する規格値のうち、表-3に示す5つの規格値について調査した。

    粗骨材 細骨材

    普通骨材 H 骨材 M 骨材 L 骨材 普通骨材 H 骨材 M 骨材 L 骨材JIS A 5308 JIS A 5021 JIS A 5022 JIS A 5023 JIS A 5308 JIS A 5021 JIS A 5022 JIS A 5023

    絶乾密度 (g/cm3) 2.5 以上 2.5 以上 2.3 以上 - 2.5 以上 2.5 以上 2.2 以上 -吸水率 (%) 3.0 以下 3.0 以下 5.0 以下 7.0 以下 3.5 以下 3.5 以下 7.0 以下 13.0 以下微粒分量 (%) 1.0 以下 1.0 以下 2.0 以下 3.0 以下 3.0 以下 7.0 以下 8.0 以下 10.0 以下FM 凍害指数 (-) - - 0.08 以下 - - - - -塩化物量 (%) - 0.04 以下 0.04 以下 0.04 以下 0.04 以下 0.04 以下 0.04 以下 0.04 以下

    表-3 骨材に関する規格値(抜粋)

    土木 建築 合計

    北海道 851.9 810.8 1,662.7 (5.2%)埼玉県 326.2 529.7

    6,306.0 (19.9%)千葉県 424.1 525.8 東京都 943.7 2,044.5 神奈川県 536.1 975.9 愛知県 793.6 1,030.1 1,823.7 (5.7%)大阪府 417.9 691.3

    2,621.2 (8.3%)兵庫県 429.1 651.6 全国合計 15,005.3 16,743.1 31,748.4 (100.0%)

    表-2 コンクリート塊の年間発生量1) (千tf)

  • 30 寒地土木研究所月報 №774 2017年11月

    3. 2 路盤用再生骨材の解体元と製造方法

    試験に使用する再生路盤材は、北海道内の複数の製造会社の協力を得て入手し、破砕元となるコンクリート構造物と破砕機械についてヒアリングを行った。その概要を表-4に示す。札幌近郊または地方都市に位置するA~Eでは、解体元の構造物は建築物が多い。また、地方町村に位置するFについては、原コンクリートが土木解体材のみであった。施工年次はほとんどが不明であり、明確に把握できたものはなかった。破砕は全て2次破砕まで行われており、1次破砕はジョークラッシャーかロールクラッシャーが、2次破砕は全てでインパクトクラッシャーが使用されていた。今回入手した再生路盤材の粒径は全て40-0mmであった。今回は、40-20,�20-15,�15-5,�5-0mmの各粒径に分級(ふるい分け)した後に各試験を実施した。

    3. 3 実験結果

    3. 3. 1 絶乾密度

    絶乾密度をJIS�A�1109およびJIS�A�1110により測定した結果を図-1に示す。建築物由来が多くを占める骨材A~Eでは粒径20-15mmが最大となる一方で、土木構造物由来の骨材Fでは粒径40-20mmが最大となった。建築物では、土木構造物と異なり、粗骨材の最大寸法40mmのコンクリートが使われることが少なく、20~25mm程度が指定されることから、原材料となったコンクリート塊の影響を受けていると考えられる。一般に、乾燥したモルタル分は岩石よりも軽いため、骨材A~Eでは、原骨材の粒径よりも大きい40-20mmの粒径の試料において付着モルタルが多量に含まれ、絶乾密度が小さくなったと考えられる。同様に、破砕されたモルタル分が多く含まれやすい5-0mmの領域でも、絶乾密度が低くなった。また、JISの規格値と比較すると、粗骨材の一部でM骨材の規格値を満たす材料があったものの、大半はL骨材相当品であった。3. 3. 2 吸水率

    吸水率をJIS�A�1109およびJIS�A�1110により測定した結果を図-2に示す。吸水率は、全ての骨材で20-15mmが最小となった。一方、40-20mmの大粒径および5-0mmの細骨材では、絶乾密度の場合と同様に、付着モルタルの影響を受けて品質が悪くなったと考えられる。また、JISの規格値と比較すると、一部の骨材を除き、概ねL骨材の範囲内となった。

    中間

    処理場

    元構造物 破砕機械

    解体元 施工年次 1次破砕 2次破砕

    A 不明 不明 ロール

    クラッシャー

    インパクト

    クラッシャー

    B 建築物 不明 ジョー

    クラッシャー

    インパクト

    クラッシャー

    C

    建築物基礎・

    道路二次製品

    基礎など

    不明 ロール

    クラッシャー

    インパクト

    クラッシャー

    D 建築物解体材 1979頃 ジョー

    クラッシャー

    インパクト

    クラッシャー

    E 建築物基礎 9割

    土木材 1割

    不明(20年

    以上前)

    ジョー

    クラッシャー

    インパクト

    クラッシャー

    F 土木解体材 不明(20年

    以上前)

    ジョー

    クラッシャー

    インパクト

    クラッシャー

    表-4 路盤用再生骨材の元構造物と破砕機械

    1.9

    2

    2.1

    2.2

    2.3

    2.4

    2.5

    2.6

    40-20 20-15 15-5 5-0 (細骨材)

    絶乾密度

    (g/c

    m3 )

    粒径 (mm)

    A

    B

    C

    D

    E

    F

    H骨材

    M骨材

    L骨材

    JIS

    図-1 絶乾密度

    0

    2

    4

    6

    8

    10

    12

    14

    40-20 20-15 15-5 5-0 (細骨材)

    吸水率

    (%)

    粒径 (mm)

    A

    B

    C

    D

    E

    F

    H骨材

    M骨材

    規格外

    L骨材

    JIS

    図-2 吸水率

  • 寒地土木研究所月報 №774 2017年11月 � 31

    3. 3. 3 微粒分量

    微粒分量をJIS�A�1103により測定した結果を図-3に示す。今回の調査では骨材を分級してから微粒分量を計測したため、40-20,� 20-15,� 15-5mmの粗骨材に相当する粒径に着目すると、その品質は安定していた。一方、細骨材に相当する5-0mmの範囲については微粒分量のバラツキが大きかった。また、粗骨材、細骨材ともにH~M骨材の規格値の範囲内に収まっていた。3. 3. 4 FM凍害指数

    FM凍害指数は、JIS�A�5022附属書Dによって得られる特性値で、再生骨材のうちM粗骨材を用いたコンクリートの耐凍害性を、比較的簡易かつ短期間で評価するための指標である。FM凍害指数の基準値を満足したM骨材は、耐凍害品として寒冷地でも使用することができるようになる。各粗骨材のFM凍害指数を図-4に示す。今回の調査では製造箇所の異なる6種類の再生骨材のうち骨材Eのみが基準値の0.08を満たした一方、残りの5つの再生骨材は基準値を満たさなかった。次に、図-5にFM凍害指数と吸水率の関係を示す。

    図より、吸水率が大きくなるほどFM凍害指数も大きくなる傾向があった。今回の試験で用いた再生骨材は、吸水率(図-2)の判定でL骨材相当品がほとんどであり、付着モルタルの量が多い。FM凍害指数に関する試験は、凍結融解前後における骨材の粒径変化を測定する試験であるため、付着モルタルの量が多い骨材ほど粒径変化が大きくなると考えられる。また、FM凍害指数の基準値は、M骨材の付着モルタル量を前提に定められている。そのため、今回の試験で用いた再生骨材では基準値を満足する骨材が少なくなったものと考えられる。3. 3. 5 塩化物量

    再生骨材では、その付着モルタルに塩化物イオンが含まれているため、骨材自身の塩化物量とコンクリートとしての総塩化物量が規定されている。ここでは、骨材径40-5mmを対象に、骨材自身の塩化物量を測定した結果を報告する。塩化物量の測定方法は複数あることから、比較のため表-5に示す4種類の試験方法を実施した。表-5には塩化物量の測定結果と、骨材中の全塩分を抽出・測定する試験であるJIS�A�1154に対する比率も示す。再生骨材のJISで指定されているJIS�A�5022附属書Aによる塩化物量試験は、試料の粉砕をせず、かつ常温水で塩分の一部のみを抽出する試験方法であるため、測定結果に一定倍率の補正係数を乗じることで全塩分

    図-3 微粒分量

    図-4 FM凍害指数

    図-5 吸水率-FM凍害指数関係

    0

    1

    2

    3

    4

    5

    6

    7

    8

    9

    10

    40-20 20-15 15-5 5-0 (細骨材)

    微粒分量

    (%)

    粒径 (mm)

    A

    B

    C

    D

    E

    F

    H骨材

    M

    規格外L骨材

    H骨材

    M

    L骨材

    JIS

    0

    0.05

    0.1

    0.15

    0.2

    0.25

    40-20 20-15 15-5 5-0 (細骨材)

    FM凍害指数

    粒径 (mm)

    A

    B

    C

    D

    E

    F

    M骨材 (耐凍害品) JIS

    0

    0.05

    0.1

    0.15

    0.2

    0.25

    0 2 4 6 8 10

    FM凍

    害指

    吸水率 (%)

    A

    B

    C

    D

    E

    FM骨材 (耐凍害品)

    5

    0.08

    JIS

  • 32 寒地土木研究所月報 №774 2017年11月

    を推定する。JIS策定の根拠となったL骨材の実験3)では、測定結果が全塩分に対して25~47%(1/4~1/2程度)であったため、L,�M骨材では測定結果を4倍することで安全側に全塩分量を評価できるとされている。しかし、今回の測定結果は全塩分量の13~23%(1/8~1/4程度)と既往の結果よりも小さい値であり、従来の4倍の補正係数ではやや過小評価となった。次に、寒地土木研究所で提案する簡易測定法の試験紙法4)およびJIS�A�1154附属書Aの結果を見ると、骨材Eを除き、全塩分量の50~90%程度の値となった。どちらの試験も粉砕および温水抽出を行っており、高い割合で再生骨材に含まれる塩分を抽出できている。試験紙法は、測定器具なども特殊なものを必要としないためどこでも測定が可能なこと、また試験紙による測定であり個人差が少ないこと、安全側の評価をする上では相当の正確な測定値を示すことから、試験紙法は、多様な場面での再生粗骨材の塩分量測定に有効と考えられる。

    表-6に塩化物量の測定結果から全塩化物量を推定した結果を示す。また、再生骨材の基準値である塩化物量0.04%以下に対する判定結果も併記している。なお、JIS�A�1154附属書Aは全塩分量への補正係数がないため、表-6には記載していない。表-6を見ると、最も測定精度が高いJIS�A�1154による結果では基準値外となるのは1つのみであったが、試験紙法では3つの骨材が基準値外と判定された。試験紙法では測定結果を2.11倍して全塩分量を推定するため、安全側に塩分量を評価した結果と考えられる。

    3. 4 コンクリート用骨材としての適用性

    再生路盤材を分級して、各種骨材試験を実施した結果、40-20mmの粒径において原コンクリートの構造物種類(粗骨材最大寸法)の影響を受けて品質が悪化する場合があったものの、多くの骨材でL~M品質相当の再生骨材が得られた。今後、既存設備を用いて再生骨材の品質をより高める方法や、L~M骨材相当の再生骨材と普通骨材との混合使用によってコンクリートの品質を高める方法等、再生骨材の利用拡大へ向けた検討を進めていきたい。

    4.まとめ

    北海道内での再生骨材の利用拡大へ向けた基礎的検討の1つとして、既存の中間処理場で製造される再生路盤材が、再生骨材としてどの程度の品質を有するか調査した。その結果、以下の知見が得られた。

    規格 JIS A 1154 JIS A 5022 附属書 A 試験紙法 JIS A 1154 附属書 A試料の粉砕方法 微粉砕(150 µm 以下) 粉砕なし 5 mm 以下 微粉砕(150 µm 以下)塩分の抽出方法 硝酸抽出および煮沸 20℃ 蒸留水 24 時間 95℃蒸留水 24 時間 50℃蒸留水 30 分

    全塩分 (JIS A 1154)に対する比率

    (既往文献)

    100%25~47%(文献 3)

    59~90%(文献 4)

    49~59%(文献 3)

    補正係数 1 倍4/3 倍 (H 骨材の JIS)4倍 (M, L骨材の JIS)

    2.11 倍 (文献 4) -

    補正前の

    塩化物量

    (%)[NaCl 換算]

    骨材 A 0.030 (100%) 0.007 (23%) 0.028 (93%) 0.026 (87%)骨材 B 0.016 (100%) 0.003 (19%) 0.008 (50%) 0.010 (63%)骨材 C 0.035 (100%) 0.006 (17%) 0.023 (66%) 0.018 (51%)骨材 D 0.025 (100%) 0.004 (16%) 0.015 (60%) 0.015 (60%)骨材 E 0.016 (100%) 0.002 (13%) 0.000 (0%) 0.008 (50%)骨材 F 0.043 (100%) 0.008 (19%) 0.037 (86%) 0.040 (93%)

    表-5 塩化物量の測定方法と測定結果(補正前)

    JIS A 1154JIS A 5022附属書 A

    試験紙法

    骨材 A 0.030 OK 0.028 OK 0.059 NG骨材 B 0.016 OK 0.012 OK 0.017 OK骨材 C 0.035 OK 0.024 OK 0.049 NG骨材 D 0.025 OK 0.016 OK 0.032 OK骨材 E 0.016 OK 0.008 OK 0.000 OK骨材 F 0.043 NG 0.032 OK 0.078 NG

    表-6 再生骨材の全塩化物量(%) [NaCl換算]

  • 寒地土木研究所月報 №774 2017年11月 33

    (1)�再生路盤材を分級し、物理的性質を調べた結果、そのバラツキは大きいものの、20-5mmに限ればL~M品質相当の再生粗骨材が得られた。

    (2)�FM凍害指数を満足する骨材は6種類中1種類のみであった。また、FM凍害指数に関するJIS試験は、付着モルタルの影響を受ける傾向が見られた。

    (3)�試験紙法を用いることで再生骨材の全塩分量を簡易に評価することができる。

    謝辞:再生骨材の品質調査にご協力いただいた北海道アスファルト合材協会と、各生産会社の方々に感謝の意を表します。

    参考文献

    1)� 国土交通省:建設副産物実態調査、20122)� 経済産業省:砕石等動態統計調査3)� 社団法人日本コンクリート工学協会:平成16年度経済産業省委託�建設廃棄物コンクリート塊の再資源化物に関する標準化調査研究成果報告書、2009.3

    4)� 清野昌貴、吉田行、島多昭典:コンクリート用再生骨材に含まれる塩化物量を簡易に評価する方法(試験紙法)、セメント・コンクリート、No.831、2016.5

    野々村 佳哲NONOMURA�Yoshinori

    寒地土木研究所寒地保全技術研究グループ耐寒材料チーム研究員

    清野 昌貴SEINO�Masaki

    北海道開発局網走開発建設部道路整備保全課道路整備保全専門官(前 寒地土木研究所 寒地保全技術研究グループ 耐寒材料チーム 研究員)

    吉田 行YOSHIDA�Susumu

    寒地土木研究所寒地保全技術研究グループ耐寒材料チーム主任研究員博士(工学)

    安中 新太郎YASUNAKA�Shintaro

    寒地土木研究所寒地保全技術研究グループ耐寒材料チーム上席研究員