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筋萎縮性側索硬化症診療ガイドライン 2013

筋萎縮性側索硬化症診療 ガイドライン20132009年から2011年にかけて 発行 された 治療 ガイドライン は, 代表的 な神経疾患 に関するもの

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筋萎縮性側索硬化症診療ガイドライン 2013

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Practical Guideline for Amyotrophic Lateral Sclerosis(ALS)2013© Societas Neurologica Japonica, 2013Published by Nankodo Co., Ltd., Tokyo, 2013

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監修 日本神経学会編集 「筋萎縮性側索硬化症診療ガイドライン」作成委員会

筋萎縮性側索硬化症診療ガイドライン2013                     萎筋「集編本日修監  

  イガ療診症化硬索側性縮萎会学経神本 

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監修日本神経学会

(協力機関:厚生労働省「神経変性疾患に関する調査研究」班)

編集「筋萎縮性側索硬化症診療ガイドライン」作成委員会

委員長中野 今治 東京都立神経病院 院長

副委員長梶  龍兒 徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部臨床神経内科学分野 教授

委 員青木 正志 東北大学大学院医学系研究科神経内科学 教授熱田 直樹 名古屋大学医学部附属病院神経内科 助教荻野美恵子 北里大学医学部神経内科学 専任講師郭   伸 国際医療福祉大学臨床医学研究センター 特任教授桑原  聡 千葉大学大学院医学研究院神経内科学 教授清水 俊夫 東京都立神経病院脳神経内科 部長成田 有吾 三重大学医学部看護学科基礎看護学講座 教授難波 玲子 神経内科クリニックなんば 院長野﨑 園子 兵庫医療大学リハビリテーション学部 教授法化図陽一 大分県立病院神経内科 部長割田  仁 東北大学大学院医学系研究科神経内科学 助教

研究協力者市原 典子 国立病院機構高松医療センター神経内科 診療部長小林 庸子 国立精神・神経医療研究センター病院リハビリテーション科 医長立石 貴久 飯塚病院神経内科 医長豊島  至 国立病院機構あきた病院 副院長中島  孝 国立病院機構新潟病院 副院長森田 光哉 自治医科大学医学部内科学講座神経内科学部門 講師

評価・調整委員糸山 泰人 国立精神・神経医療研究センター病院 院長木村  格 厚生労働省 社会保険審査会委員吉良 潤一 九州大学大学院医学研究院神経内科学分野 教授葛原 茂樹 鈴鹿医療科学大学保健衛生学部医療福祉学科 特任教授祖父江 元 名古屋大学大学院医学系研究科脳神経病態制御学神経内科学 教授西澤 正豊 新潟大学脳研究所臨床神経科学部門神経内科学分野 教授福永 秀敏 公益社団法人鹿児島共済会南風病院 院長

(50 音順)

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日本神経学会では,2001 年に当時の柳澤信夫理事長の提唱に基づき,理事会で主要な神経疾患について治療ガイドラインを作成することを決定し,2002 年に「慢性頭痛」,「パーキンソン病」,「てんかん」,「筋萎縮性側索硬化症」,「痴呆性疾患」,「脳血管障害」の 6疾患についての「治療ガイドライン 2002」を発行しました.「治療ガイドライン 2002」の発行から時間が経過し,新しい知見も著しく増加したため,2008

年の理事会(葛原茂樹前代表理事)で改訂を行うことを決定し,「治療ガイドライン 2010」では,「慢性頭痛」,「認知症」(2010 年発行),「てんかん」(2010 年発行),「多発性硬化症」(2010 年発行),「パーキンソン病」(2011 年発行),「脳血管障害」の 6疾患の治療ガイドライン作成委員会,および「遺伝子診断」(2009 年発行)のガイドライン作成委員会が発足しました.「治療ガイドライン 2010」の作成にあたっては,本学会としてすべての治療ガイドラインにつ

いて一貫性のある作成委員会構成を行いました.利益相反に関して,このガイドライン作成に携わる作成委員会委員は,「日本神経学会利益相反自己申告書」を代表理事に提出し,日本神経学会による「利益相反状態についての承認」を得ました.また,代表理事のもとに統括委員会を置き,その下に各治療ガイドライン作成委員会を設置しました.この改訂治療ガイドラインでは,パーキンソン病を除く全疾患について,他学会との合同委員会で作成されました.2009 年から 2011 年にかけて発行された治療ガイドラインは,代表的な神経疾患に関するもの

でしたが,その他の神経疾患でも治療ガイドラインの必要性が高まり,2011 年の理事会で新たに 6神経疾患の診療ガイドライン(ギラン・バレー症候群・フィッシャー症候群,慢性炎症性脱髄性多発根ニューロパチー・多巣性運動ニューロパチー,筋萎縮性側索硬化症,細菌性髄膜炎,デュシェンヌ型筋ジストロフィー,重症筋無力症)を 2013 年に発行することが決定されました.また,ガイドラインでは,診断や検査も重要であるため,今回のガイドライン作成では

「診療ガイドライン 2013」という名称を用いることになりました.各診療ガイドライン作成委員会委員長は代表理事が指名し,各委員長が委員,研究協力者,評価・調整委員の候補者を推薦して,候補者は利益相反自己申告書を提出し,利益相反審査委員会の審査と勧告に従って各委員長と調整した上で,理事会で承認するという手順を取っています.また,今回も他学会との合同委員会で作成されました.快く合同委員会での作成に賛同いただいた各学会には深謝いたします.「診療ガイドライン 2013」は,2002 年版,2010 年版と同じく evidence-based medicine

(EBM)の考え方に基づいて作成され,Q & A(質問と回答)方式で記述されていますので,2010 年版と同様に読みやすい構成になっています.回答内容は,引用文献のエビデンスを精査し,エビデンスレベルに基づく推奨のグレードを示しています.しかしながら,疾患や症状によっては,エビデンスが十分でない領域もあり,薬物治療や脳神経外科治療法が確立されているものから,薬物療法に限界があるために非薬物的介入や介護が重要なものまで,治療内容は疾患ごとに様々であり,EBMの評価段階も多様です.さらに,治療目標が症状消失や寛解にある疾患と,症状の改善は難しく QOLの改善にとどまる疾患とでは,治療の目的も異なります.

神経疾患診療ガイドライン 2013 の発行について

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そのような場合であっても現時点で考えられる最適なガイドラインを示しています.診療ガイドラインは,決して画一的な治療法を示したものではないことにも留意下さい.同

一疾患であっても,最も適切な治療は患者さんごとに異なり,医師の経験や考え方によっても治療内容は異なるかもしれません.診療ガイドライン 2013 は,あくまで,治療法を決定する医師がベストの治療法を決定する上での参考としていただけるように,個々の治療薬や非薬物的治療の現状における評価を,一定の方式に基づく根拠をもとに提示したものです.診療ガイドライン 2013 が,診療現場で活躍する学会員の皆様の診療に有用なものとなること

を願っております.神経疾患の治療も日進月歩で発展しており,今後も定期的な改訂が必要となります.日本神経学会監修の診療ガイドライン 2013 を学会員の皆様に活用していただき,さらには学会員の皆様からのフィードバックをいただくことにより,診療ガイドラインの内容はより良いものになっていきます.診療ガイドライン 2013 が,学会員の皆様の日常診療の一助になることを期待しますとともに,次なる改訂に向けてご意見とご評価をお待ちしております.

2013 年 11 月

日本神経学会

代表理事 水澤 英洋前ガイドライン統括委員長 辻 貞俊ガイドライン統括委員長 祖父江 元

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2002 年,日本神経学会「ALS治療ガイドライン作成小委員会(田代邦雄委員長)」により「ALS治療ガイドライン」(臨床神経 2002; 42: 676–719)が刊行されて以来,10 年余が経過した.この間,ALSに対する種々の薬物治験が行われたが,残念ながらリルゾール以外には病態修飾薬は見い出されることなく今日に至っている.一方,ALSの診断,検査法,対症療法およびケアにおいては着実な進歩が認められており,ALSガイドライン改訂の機運が高まってきた.この状況を受けて,日本神経学会主導のもと,厚生労働省「神経変性疾患に関する調査研究」班の協力を得て,2011 年秋,「筋萎縮性側索硬化症診療ガイドライン」作成委員会が発足,改訂に着手した.

【当ガイドラインの基本方針】1.ALS 診療に携わるすべての医師を対象とする1)最主要対象は神経内科医である:ALSと診断がついた時点でその患者へのかかわりは終了

したと考える神経内科医が見受けられる.これは,ALSに対する知識不足,理解不足のゆえの不本意ながらの対応と推察される.一方,ALS診療に取り組んでいる神経内科医でもその万全の知識を備えることは困難である.本ガイドラインは前者に対しては ALS診療の基本を伝え,後者に対してはその知識の補完を促し,よりよい ALS診療を行うための指針となることを目指すものである.2)ALS診療に携わる神経内科医以外の医師も対象とする:一般に ALS患者は四肢の筋力低

下で発症した場合には整形外科医もしくは脳外科医を,球症状で初発した際には耳鼻科医を初診する.当ガイドラインは,これらの医師が ALSの可能性を念頭に置き,時を失することなく神経内科医に紹介するための手助けになることも目指す.また,わが国では気管切開下陽圧換気(tracheostomy positive pressure ventilation:TPPV)下の在宅療養患者が少なくない.その在宅診療を担う往診医の多くは内科医であり,このような医師をも対象とする.2.実地診療に役立ち,活用されることを目指す

専門家の執筆内容は勢い詳細で難解に流れやすい.当ガイドラインでは煩雑な記載は極力避け,正確さは多少犠牲にしても簡明さを優先させた.執筆者は ALS診療のプロである.それぞれが,「複雑さを知り抜いたうえでの単純明快さ」を旨として執筆するように心がけた.3.執筆形式と項目「Minds診療ガイドライン作成の手引き 2007」(福井次矢,吉田雅博,山口直人編,医学書院)

に則り CQ(clinical question)形式を採用し,今回は「筋萎縮性側索硬化症診療ガイドライン」と命名して診断や検査法についても記載した.ALS診療ではエビデンスを求め難い CQ,あるいは推奨を決められない CQが多く,その場合には委員会判断で推奨もしくは回答を記載することにした.2011 年 10 月 10 日に評価調整委員を含めた全体会議を開いて全体の章立てを行い,その後の委員会で CQを決定した.

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4.エビデンスレベルと推奨グレード「Minds診療ガイドライン作成の手引き 2007」(福井次矢,吉田雅博,山口直人編,医学書院)中の以下(表 1,表 2)を用いた.

5.文献検索日本医学図書館協会に依頼して,医中誌,JMEDPlus,PubMed,Cochrane Libraryをデータ

ベースとして 2000 年以降の文献を検索した.これ以外の必要論文は,担当者が各自渉猟した.6.委員会見解本ガイドラインの CQには,EBMの方法論により検証が可能な医学的事項と,その方法論に

なじまない社会保障や制度的事項などを含め多様なものが含まれている.後者に関しては,委員会で討議し,委員会見解として記載した.7.利益相反

作成に携わった委員長をはじめとする各委員,研究協力者は,参加にあたり「日本神経学会診療ガイドライン作成に係る利益相反(conflict of interest:COI)自己申告書」を日本神経学会に提出し,同学会の承認を得た.8.作成費用

すべて日本神経学会の経費に依った.

ALSは,患者とその家族に強い精神的・身体的苦悩と重い経済的負担を強いる疾患であることは言を俟たないが,時にはその診療に当たる医師の意気をも挫きがちになる厳しい疾患である.本ガイドラインが,ALS診療に携わる医師の座右の書として活用され,ひいては患者・家族が負える重荷の些かなりの軽減に資することを願う次第である.

2013 年 11 月

「筋萎縮性側索硬化症診療ガイドライン」作成委員会委員長

中野 今治

表1 本ガイドラインで用いたエビデンスのレベル分類(質の高いもの順)Ⅰ システマティック・レビュー /RCTのメタアナリシスⅡ 1つ以上のランダム化比較試験によるⅢ 非ランダム化比較試験によるⅣ a 分析疫学的研究(コホート研究)Ⅳ b 分析疫学的研究(症例対照研究,横断研究)Ⅴ 記述研究(症例報告やケース・シリーズ)Ⅵ 患者データに基づかない,専門委員会や専門家個人の意見

(Minds 診療ガイドライン選定部会監修:Minds 診療ガイドライン作成の手引き2007,医学書院,東京,p15,2007より転載)

表2 本ガイドラインで用いたグレード分類推奨グレード 内容グレードA 強い科学的根拠があり,行うよう強く勧められる.グレードB 科学的根拠があり,行うよう勧められるグレードC1 科学的根拠はないが,行うよう勧められるグレードC2 科学的根拠はなく,行わないよう勧められるグレードD 無効性あるいは害を示す科学的根拠があり,行わないよう勧められる(Minds 診療ガイドライン選定部会監修:Minds 診療ガイドライン作成の手引き2007,医学書院,東京,p16,2007より転載)

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略語一覧

ACP advanced care planning 患者の人生設計ADL activities of daily living 日常生活動作または日常生活活動ALS amyotrophic lateral sclerosis 筋萎縮性側索硬化症ALSFRS‒R The revised Amyotrophic Lateral Sclerosis

Functional Rating ScaleALS 機能評価スケール改訂版

BMI brain-machine interfaceBMI body mass indexFTLD frontotemporal lobar degeneration 前頭側頭葉変性症FVC forced vital capacity 努力性肺活量% FVC 予測努力肺活量に対する割合IV invasive ventilation 侵襲的換気LMN lower motor neuron 下位運動ニューロンMAC mechanically assisted coughing 排痰補助装置,機械的排痰補助MCS minimal communication state 最小コミュニケーション状態MEP maximal expiratory pressure 最大呼気圧MIP maximal inspiratory pressure 最大吸気圧MRS magnetic resonance spectroscopy MRスペクトロスコピーNIV non-invasive ventilation 非侵襲的換気NPPV non-invasive positive pressure ventilation 非侵襲的陽圧換気PCF peak cough fl ow 最大咳嗽流速Pdi transdiaphragmatic pressure 経横隔膜圧PET positron emission tomography ポジトロン断層法PLS primary lateral sclerosis 原発性側索硬化症PMA progressive muscular atrophy 進行性筋萎縮症QOL quality of life 生活の質ROM range of motion 関節可動域SMA spinal muscular atrophy 脊髄性筋萎縮症SNIP sniff nasal inspiratory pressure 鼻腔吸気圧TLS totally locked-in state 完全閉じ込め状態TPPV tracheostomy positive pressure ventilation 気管切開下陽圧換気UMN upper motor neuron 上位運動ニューロンVC vital capacity 肺活量

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序 章

今,筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis:ALS)の概念が大きく揺らいでいる.その像は以前は比較的単純であった.すなわち,ALSは中年以降に発症し,上位運動ニューロン(UMN)細胞体と下位運動ニューロン(LMN)細胞体が進行性に侵され,数年で死に至る孤発性(非遺伝性)の神経変性疾患(古典型 ALS)という病像で捉えられていた.ところが,1993 年,家族性 ALSでの SOD1 変異発見 1, 2)を皮切りに家族性 ALSの原因遺伝子が相次いで同定され,孤発例にもこれらの遺伝子変異がみられることが明らかになった.また,古典型 ALSの運動ニューロンと前頭側頭葉変性症(frontotemporal lobar degeneration:FTLD)の大脳皮質ニューロンとに出現するユビキチン陽性封入体・蓄積構造の主構成蛋白が,ともに TDP43 であることが発見 3, 4)されて以来,古典型 ALSと FTLDとは一連のスペクトラム(ALS–FTLD spectrum)を成すとの考えも提唱され,過去の ALS観が大きく変わった.序章では,これらの状況を踏まえて,ALSの現在の立ち位置を概括するとともに,CQで触れる機会のなかった欧米の ALSガイドラインの要点に言及する.

1.ALS の定義UMNと LMNの両者の細胞体 soma(あるいは核周部 perikaryon)が散発性・進行性に変性脱

落する神経変性疾患である.ニューロンは神経単位もしくは神経元とも呼ばれ,細胞体,樹状突起および軸索から構成さ

れる.ALSで変性する主体はニューロンの細胞体であり,軸索と樹状突起の脱落は細胞体の変化に伴う二次的事象であることを認識しておくことが重要である.運動ニューロンの軸索変性のみでも運動ニューロン疾患と区別できない表現形を取るが,これはニューロパチーであり,運動ニューロン疾患とは呼ばない.また,神経変性という術語には「進行性」の概念がすでに含まれているため,ALSは神経細胞体変性の部位にのみ基づく解剖学的(anatomical)な疾患概念といえる.これは,前頭側頭葉変性症が,細胞病理の種類によらず前頭葉と側頭葉との変性萎縮(神経細胞の消失)のみに基づく解剖学的疾患概念であることと軌を一にするものである.

2.ALS の中核群(古典型 ALS もしくは Charcot 病)神経内科医が診療上最も多く目にする一群である.すなわち,中核群では,先の定義で述べ

た病態が主に中年以降に孤発性に生じ,UMN症候と LMN症候とが出現して,患者は主として呼吸筋麻痺のために数年で死に至る.一方,知能,感覚,自律神経系は保たれる.神経病理学的にも,UMN・LMN細胞体の変性脱落と Bunina小体,そして TDP43 陽性の封入体もしくは蓄積構造の出現で特徴づけられる均質な疾患群とみなされている.しかしながら,のちに述べるように,中核群に属するとみなされる症例でも症候や経過に様々のバラツキがあり,単一疾患であるとの確証はない.

3.ALS は症候群であるALSには中核群が厳然と存在するが,ALS一般における原因,病態機序が多様であることは

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序 章

定義上容易に理解できる.ALSは習慣的に孤発性 ALS(sporadic ALS)と家族性 ALS(familial ALS)に大別される.ただ

し,これは孤発性 ALSが単一遺伝子変異を有さず,また家族性 ALSのすべてが単一遺伝子変異を有することを意味するものではない.家族性 ALSでも単一遺伝子変異が見い出されない場合があり,孤発性 ALSでも単一遺伝子変異を有する例があるからである(表 1).前者の例としては,Guam島の ALSがあげられる.Guam島の原住民(Chammoro人)の間では,ALSは第二次大戦終了間もない頃には欧米や日本の 100 倍以上の有病率を示したが,半世紀の間に激減した.原住民には ALSの家族内発症もしばしばみられたが,単一遺伝子変異は今もって同定されていない.単一遺伝子変異の可能性は否定しきれないものの,単一遺伝子病であれば 50 年という短い期間では,その頻度はこれほどまでに減少しないものと考えられる.他方,孤発性 ALS

がMendel型遺伝子変異を示す顕著な例は 2011 年に見い出された C9orf72 変異例である 5, 6).わが国ではこの変異を有するのは家族性,孤発性を問わずごくまれであるが,フィンランド人においては孤発性 ALSの 20%強 6),ベルギーでは 5%7)がこの変異を有している.また,SOD1,TDP43,angiogenin などの変異も少数ながら孤発例で見い出されており,孤発性 ALS=古典型ALSとの構図は崩れつつある.家族性 ALSの現状に関しては CQ 1–5 の回答を参照されたい.ALSの発症年齢と罹病期間にも症例ごとに大きな開きがみられる.発症年齢に関しては,若

年側では,UMN症候と LMN症候を呈する 14 歳と 17 歳発症例が報告されている 8).若年発症例では好塩基性封入体を含む例が多く 8),古典型 ALSとは異なったグループである可能性が高い.これに対し,高齢発症側では,80 歳代発症例にはときどき,90 歳代発症例にもまれに遭遇する.高齢発症例は古典型 ALSのカテゴリーに属する可能性が高い.罹病期間においても非常なバラツキがあり,25 歳以上で発症した例に限っても 5ヵ月〜32 年にわたっている 9).

中核群とみなされるグループにおいても,その表現形は互いに独立した 3つの要素(症候の初発部位,UMNと LMNの障害強度の違い,病変の進行と拡大の速度)によって種々のサブタイプが存在する.進行性筋萎縮症(PMA)あるいは原発性側索硬化症(PLS)と ALSの関連が議論されるのもその一環と考えることができる(CQ 1–7〜1–8 の回答参照)(図 1).

古典型 ALSの神経病理は,UMN・LMN細胞体の脱落に加えて,Bunina小体と TDP43 陽性封入体・蓄積構造の出現である.特に,Bunina小体は古典型 ALSに特異的な所見としてその病理診断のよりどころとなっているが,TARDBP 10),C9orf72 11),VCP 12)変異例でも認められ,その病理学的診断マーカーとしての地位が危うくなっている(表 2).ただし,C9orf72 変異では古典型 ALSにみられない p62 陽性,TDP43 陰性封入体が小脳と海馬に認められ 13),TDP43 陽性構造と Bunina小体が出現する ALSでも,その病理像は多彩であることがわかってきた.ちなみに,グリア(おそらくアストロサイト)にも異常蛋白が蓄積することが判明し,ALSはニューロンのみでなくグリアをも侵す疾患であると考えられるようになっている 14).

表1 孤発性ALSおよび家族性ALSと単一遺伝子変異との関係孤発性 家族性

非遺伝性 古典型ALS(Charcot 病) Guam ALS遺伝性

などALS 1~

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4.ALS の診断と診断基準UMN症候と LMN症候の両者を同定して,はじめて ALSと臨床診断できる.しかし,経験

的には両者が揃わないことがまれでなく,ALSに特異的なバイオマーカーが存在しない現在,その診断は病歴,症状,神経所見,電気生理学的検査,画像検査,臨床化学検査に基づき,かつ他疾患を除外して総合的に下す必要がある(CQ 2–1).特に LMN症候のみが前景に出て,UMN症候が検出できない ALS例にはしばしばぶつかるので注意が必要である.一方,まれではあるが,中年以降に UMN症候のみで発症する ALS症例(典型的には痙性対麻痺例)もあり,このような場合は ALSを念頭に置いて検索を進め,注意深く経過を追う必要がある.たとえ明瞭な UMN症候もしくは LMN症候のいずれかを欠く場合でも,ALSである可能性とそうでない可能性を秤量して,ALSであるか否かの決断を下すことが求められる場合がある 15).

UMN優位変性群LMN優位変性群

PMAもしくはSMA?

古典型 ALS(UMN+LMN変性)

ALS with dementia=FTLD-MND

前頭側頭葉変性症?

PLS?

図 1 ALS とその亜型(サブタイプ)中央の大きな灰色の円が UMNと LMNが侵されている古典型 ALSを示している.❶の円で中央の円に重

なっている箇所は,LMN症候のみがみられるグループを示し,多くは ALSに属するが,灰色の円の外にはみ出したのは進行性筋萎縮症(PMA)もしくは脊髄性筋萎縮症(SMA)type Ⅳの可能性を示す.❷の円で中央の円に重なっている箇所は,UMN症候のみを示すグループを示し,多くは ALSに属するが,中央の円の外にはみ出した群は原発性側索硬化症(PLS)の可能性を示す.❸の円で中央の円に重なっている箇所は,認知症を伴う ALSを示すが,中央の円の外にはみ出した箇所は,前頭側頭葉変性症の可能性を示す

FTLD–MND:frontotemporal lobar degeneration with motor neuron disease,LMN:lower motor neu-ron,UMN:upper motor neuron

表2 ALSの LMNの細胞病理古典型と遺伝子

変異型蓄積構造

古典型ALS

10) 12) 13)

Bunina 小体 + + + + - - -封入体・蓄積蛋白 TDP43 TDP43 TDP43 TDP43 OPTN

TDP43SOD1

FUS SOD1OPTN

神経細糸貯留 spheroid spheroid + spheroid - - cord-like swelling

変異例は神経病理学的には古典型ALSと区別できない.ただ 変異例では,小脳と大脳皮質に p62陽性,TDP陰性封入体が認められる.

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序 章

現在広く用いられている改訂 El Escorial基準 16)(CQ 2–2 参照)は UMN症候と LMN症候が揃うことを必須条件としているが,これは治験用の基準である.日常診療用に作成されたものではない 15)ので,これに依拠することはいたずらに診断を遅らせることになる.進行速度や臨床像,画像などから ALS以外に考えにくいと判断すれば,その時点で ALSとの診断を伝えるのが望ましい(CQ 3–2 参照).改訂 El Escorial基準の内容を詳しく吟味すると,意味の曖昧な箇所,理解に苦しむ表現が所々

に認められる.たとえば,「Clinically Probable ALS」の箇所では「UMN signsと LMN signsが少なくとも 2つの領域にあり,かつその LMN signsより上に(rostral to:吻側)に UMN signs

が存在すること」とある 16).2 つの領域が脳幹と頸部の場合,脳幹より吻側の UMN signsはどこに求めるのであろうか.また,その table 1 には 4領域[脳幹,頸部,胸部(正確には胸腹部),腰仙髄部]の UMN症候と LMN症候が記載されているが,LMN症候はともかく,UMN症候には現実とは離れた記載がみられる.たとえば,脳幹で spastic toneをチェックするようになっているが,どのような状態を指しているのであろうか.胸部でも spastic toneと記されているが,腹部の spastic toneはどこでどのように判定するのであろうか.一方,腹壁皮膚反射の消失がUMN徴候にあげられているが,この反射は健常人であっても ALS年齢の人では誘発できない場合が多く,腹壁皮膚反射の消失を直ちに UMN徴候と考えられるだろうか,などである.改訂 El Escorial基準の厳しすぎる欠点を電気生理学的検査で補い,特異度は落とさず感度を高

めたのが,Awaji基準 17)であるが,批判的意見もある.

5.FTLD との関連ALS患者の大多数では明瞭な認知症を呈さないが,一部の患者では独特の認知症(前頭側頭

型認知症)を呈することが以前から知られていた(ALS with dementia:ALS–D).ALSの下位運動ニューロンで見い出されたユビキチン陽性封入体が ALSと ALS–Dの側頭葉と前頭葉の皮質ニューロンでも同定され 18),ALSには運動ニューロンと前頭側頭葉皮質ニューロンに共通の分子病理が存在することが示唆された.一方,Lund–Manchesterグループが 1994〜1996 年にかけて,前頭葉と側頭葉に病変の主座を有する非アルツハイマー病性認知症を前頭側頭葉変性症

(frontotemporal lobar degeneration:FTLD)として報告し 19),その背景病理として,①前頭側頭葉変性型,②Pick型,③運動ニューロン病(MND)型(英国では ALSのことを運動ニューロン病MNDと呼ぶ)を提示した.③の運動ニューロン病型はとりもなおさず ALS–Dのことである.当初,①の前頭側頭葉変性型ではユビキチン封入体は出現しないとされたが,その後その多くにこの封入体が存在することが判明し,ALS,ALS–D,FTLDの関連性がさらに強く考えられるようになった.

2006 年に ALSと FTLDに出現するユビキチン封入体の構成蛋白が,TDP43 という RNA結合蛋白であることが報告され 3, 4),両者を結びつける物質と考えられるようになった(TDP43 pro-teinopathy).2008 年には,家族性および孤発性 ALSの一部で TARDBP(TDP43 遺伝子)変異を呈することが見い出され 20),この蛋白の重要性が再認識された.TDP43 が前頭・側頭葉の非運動皮質ニューロンに蓄積する FTLD(FTLD–TDP)は,皮質ニューロンへの TDP43 の蓄積部位やパターンから A,B,C,Dの 4型に分類されている 21).ALS–Dの大脳皮質病理は B型に属し 22),B型の TDP43 のウエスタンブロットでのバンドパターンは ALSの LMNでの TDP43 のそれと同じである 23).以上から,ALS,ALS–Dは B型 FTLDと同一スペクトラムを構成すると考えられており,FTLD–MNDという病態は ALS–Dと同一である.

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TARDBP のほかにも,FUS/TLS 24),UBQLN2 25),C9orf72 5, 6)変異で ALSと FTLDの両病型が認められ,ALS–FTLD spectrum 説を裏づける所見と考えられている.なお,FUS/TLS はTDP43 と同じく RNA結合蛋白であることから,ALSにおける RNA代謝の関与が注目されている.

6.海外の ALS ガイドライン1)米国“Practice parameter: the care of the patient with amyotrophic lateral sclerosis(an evidence-

based review): report of the quality standards subcommittee of the American Academy of Neu-

rology”のタイトルで 1995 年に上梓された 26).このガイドラインでは,①告知,②症状管理,③栄養管理,④呼吸管理,⑤緩和ケア,の 5項目に関して,それぞれ 1〜5個の CQが設けられ,推奨・解説がなされている.その後,2009 年にこの改訂版 27)が出版され,①ALSの進行抑制,②栄養管理,③呼吸管理

を扱っている.①進行抑制ではリルゾールのみがレベル Aで推奨されており,②栄養管理では経皮内視鏡下胃瘻造設術(percutaneous endoscopic gastrostomy:PEG)が,延命法としてレベル Bの推奨度を得ている.さらに,③呼吸管理では非侵襲的換気療法(non-invasive ventila-

tion:NIV)が,延命効果(レベル B),努力性肺活量の低下遅延(レベル C),および QOL改善(レベル C)をもたらすとして推奨されている.また,カフアシストマシン(mechanical insuffla-

tor-exsufflator)は気道分泌物除去に有効である可能性があるとしてレベル Cで推奨されている(表 3).

2)ヨーロッパThe EFNS Task Force on Diagnosis and Management of Amyotrophic Lateral Sclerosisから診

療に関するガイドラインが 2005 年に発刊され 28),2012 年に改訂 15)されている.2005 年版では,内容が診断とケアに大きく分かれており,その点,日本の ALSガイドラインに似ている.そこでは,早期診断の重要性が強調されており,改訂 El Escorial基準は日常診療に用いるには厳格すぎるとして批判的に記載されているのが印象的である.ケアでは,①告知,②多職種チームによるケア,③神経保護治療,④対症療法,⑤遺伝子検査と遺伝カウセリング,⑥非侵襲的および侵襲的換気療法,⑦経腸栄養法,⑧意思伝達,⑨緩和および終末期ケア,の 9項目が取りあ

表3 AANガイドライン(http://www.aan.com/Guidelines/Home/   Development)での推奨のレベル(level of obligation)(A,B,C)

A(must or must not) B(should or should not) C(may)

ならない(してはならない)(スクリーニング,診断,治療に関して)試み,助言,あるいは追跡調査をしなければならない(してはならない)

る(すべきでない)(スクリーニング,診断,治療に関して)試み,助言,あるいは追跡調査をすべきである(すべきでない)

ない,助言,追跡調査,ある

いは指導を行っても構わない

を選択しても構わない,助言,あるいは追跡調

査をしないことを選択しても構わない

(http://tools.aan.com/globals/axon/assets/9024.pdf)

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序 章

げられている.各々について解説がなされたあと,“good practice points”として推奨ポイントが箇条書きにされているのが特徴である.改訂版(Andersen PM,2012)15)では 2005 年版に比べて内容的に大きな変更はない.改訂 El

Escorial基準に批判的なのも 2005 年版と同様である.ただ,Awaji基準は ALS診断の特異度を落とさずに感度を上げたと追記されている.

文献1) Deng HX, Hentati A, Tainer JA, et al. Amyotrophic lateral sclerosis and structural defects in Cu, Zn super-

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1.疫学,亜型,経過・予後,病因・病態CQ 1–1 発症率や有病率,家族性の割合はどのくらいか …………………………………………2CQ 1–2 孤発例の発症リスクにはどのようなものがあるか ………………………………………4CQ 1–3 孤発例の生命予後(侵襲的換気[IV]導入まで)はどのようであるか ……………………6CQ 1–4 孤発例の進行・予後を予測する因子は何か ………………………………………………8CQ 1–5 家族性 ALSにはどのようなものがあるか ………………………………………………10CQ 1–6 分類,亜型には何があるか …………………………………………………………………12CQ 1–7 原発性側索硬化症は ALSからは独立した疾患か ………………………………………14CQ 1–8 脊髄性筋萎縮症(進行性筋萎縮症)は ALSからは独立した疾患か ……………………16CQ 1–9 孤発例の認知機能障害の頻度はどのくらいで,その特徴は何か ………………………18CQ 1–10 気管切開による人工呼吸器装着長期生存例の経過はどのようであるか ………………20

2.診断・鑑別診断・検査CQ 2–1 診断はどのように行うか ……………………………………………………………………24CQ 2–2 診断基準にはどのようなものがあるか ……………………………………………………26CQ 2–3 鑑別すべき疾患にはどのようなものがあるか ……………………………………………29CQ 2–4 線維束性収縮のみを示す場合にどのように対応するか …………………………………31CQ 2–5 電気生理学的検査の意義は何か ……………………………………………………………32CQ 2–6 針筋電図の施行筋はどのように選択するか ………………………………………………34CQ 2–7 呼吸筋の評価にはどのようなものがあるか ………………………………………………36CQ 2–8 診断に有用な画像検査はあるか ……………………………………………………………38CQ 2–9 上位運動ニューロン障害の評価法としてはどのようなものがあるか …………………40CQ 2–10 診断における血液検査および脳脊髄液検査の意義は何か ………………………………42

3.告知,診療チーム,事前指示,終末期ケアCQ 3–1 どのように告知し,病状を説明するか ……………………………………………………46CQ 3–2 診断が確定していない場合にどのように話すか …………………………………………50CQ 3–3 遺伝についてどのように説明するか ………………………………………………………52CQ 3–4 認知症やうつがある ALSの告知や治療方針の選択の援助はどのように行うか ……54CQ 3–5 告知において生命予後はどのように伝えるか ……………………………………………56CQ 3–6 進行に即した医療処置についての告知はどのようにするか ……………………………58CQ 3–7 多職種連携診療チームの意義は何か ………………………………………………………60CQ 3–8 治療方針の選択において患者本人の意思をどのように尊重するか ……………………62CQ 3–9 事前指示がある場合どのように対応するか ………………………………………………64CQ 3–10 終末期ケアについてどのように説明するか ………………………………………………66CQ 3–11 終末期にはどのような苦痛があり,どのように対処するか ……………………………68CQ 3–12 強オピオイド(モルヒネなど)はどのように使用するか…………………………………70CQ 3–13 がんの終末期とはどのように異なるか ……………………………………………………73

4.薬物治療CQ 4–1 薬物治療にはどのようなものがあるか ……………………………………………………76CQ 4–2 リルゾールの延命効果はどの程度か ………………………………………………………77

目 次

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CQ 4–3 リルゾール投与上の注意点はどのようなものか …………………………………………79CQ 4–4 現在行われている治験情報はどのように得られるか ……………………………………80CQ 4–5 再生医療の現状はどのようなものか ………………………………………………………82CQ 4–6 代替療法についてはどのように説明するか ………………………………………………84

5.対症療法CQ 5–1 痛みにはどう対処すればよいか ……………………………………………………………86CQ 5–2 痙縮にはどう対処すればよいか ……………………………………………………………88CQ 5–3 流涎にはどう対処すればよいか ……………………………………………………………90CQ 5–4 不眠にはどう対処すればよいか ……………………………………………………………92CQ 5–5 うつ・不安にはどう対処すればよいか ……………………………………………………94CQ 5–6 褥瘡にはどう対処すればよいか ……………………………………………………………96CQ 5–7 便秘にはどう対処すればよいか ……………………………………………………………97CQ 5–8 認知症にはどう対処すればよいか …………………………………………………………98CQ 5–9 強迫笑・強迫泣にはどう対処すればよいか ……………………………………………100

6.嚥下・栄養CQ 6–1 代謝・栄養障害にはどう対処すればよいか ……………………………………………104CQ 6–2 摂食嚥下障害にはどう対処すればよいか ………………………………………………106CQ 6–3 経口摂取が困難になったときにはどう対処すればよいか ……………………………108CQ 6–4 経腸栄養による栄養管理はどのようにしたらよいか …………………………………110CQ 6–5 胃瘻造設・管理はどのようにしたらよいか ……………………………………………112CQ 6–6 家族または介護職に対する経管栄養法の指導はどのようにしたらよいか …………114

7.呼吸管理CQ 7–1 呼吸不全の早期診断はどうすればよいか ………………………………………………118CQ 7–2 呼吸機能障害に対するリハビリテーションはどのように行うか ……………………120CQ 7–3 排痰方法にはどのようなものがあるか …………………………………………………122CQ 7–4 家族または介護職に対する吸引の指導はどのようにしたらよいか …………………124CQ 7–5 人工呼吸療法にはどのようなものがあるか ……………………………………………126CQ 7–6 非侵襲的陽圧換気(NPPV)による呼吸補助はいつ開始するか ………………………128CQ 7–7 どのような場合に気管切開を考慮するか ………………………………………………130CQ 7–8 気管切開下陽圧換気(TPPV)療法を希望する場合,いつ,どのように行うか………132CQ 7–9 人工呼吸器はどのように選択するか ……………………………………………………133CQ 7–10 停電に備えてどのように対応するか ……………………………………………………136CQ 7–11 気管切開下陽圧換気(TPPV)開始後,患者本人または家族が呼吸器離脱を希望した

場合は,どのように対応するか ………………………………………………………138

8.リハビリテーションCQ 8–1 リハビリテーションの目的は何か ………………………………………………………142CQ 8–2 四肢・体幹運動機能障害に対するリハビリテーションはどのように行うか ………144CQ 8–3 構音機能障害に対するリハビリテーションは何が有用か ……………………………146CQ 8–4 ADL維持・向上に使われる補助具にはどのようなものがあるか ……………………148CQ 8–5 ALS患者の QOLはどのように考えたらよいか…………………………………………150CQ 8–6 QOLの評価に用いられる尺度にはどのようなものがあるか …………………………152CQ 8–7 患者の QOLを向上させるためにはどのようなことが有用か…………………………154CQ 8–8 介護者の QOLを向上させるためにはどのようなことが有用か………………………156CQ 8–9 性生活に制限はあるか ……………………………………………………………………158

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目 次

9.コミュニケーションCQ 9–1 コミュニケーション障害の特徴は何か …………………………………………………162CQ 9–2 コミュニケーションを補助する手段や機器にはどのようなものがあるか …………164CQ 9–3 コミュニケーション障害(構音障害ほか)の評価方法にはどのようなものがあるか

……………………………………………………………………………………………167CQ 9–4 コミュニケーション障害への補助機器(IT機器ほか)の選択と導入の時期はどうす

るか ………………………………………………………………………………………169CQ 9–5 気管切開下陽圧換気(TPPV)導入後のコミュニケーションをどうするか……………172CQ 9–6 文字盤にはどのようなものがあり,どのように利用するか …………………………174CQ 9–7 コミュニケーション用 IT機器利用の現状はどうなっているか ………………………176

10.難病ネットワーク,福祉サービス,災害時の対処CQ 10–1 公的援助や行政サービスにはどのようなものがあり,相談は誰にすればよいか …180CQ 10–2 診断書などを書くときの注意点は何か …………………………………………………183CQ 10–3 痰の吸引や胃瘻の介助は誰が行うことができるのか …………………………………186CQ 10–4 療養における費用負担はどのくらいか …………………………………………………187CQ 10–5 難病ネットワークとは何か ………………………………………………………………189CQ 10–6 在宅療養を成功させるためにはどのようにしたらよいか ……………………………191CQ 10–7 レスパイト入院とはどのようなものか …………………………………………………193CQ 10–8 地震などの大規模自然災害に対してどのような準備をするか ………………………195CQ 10–9 災害時に在宅医療機器の電源をどう確保するか ………………………………………197CQ 10–10 ALSの診療報酬はどのようになっているか ……………………………………………199

巻末資料 ……………………………………………………………………………………………………………201

索 引 ………………………………………………………………………………………………………………208