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動的な白色光干渉に基づく三次元形状・振動分布映像法の研究システム情報学第3研究室 修士2年 佐藤 世智
指導教員 安藤 繁 教授平成 19年2月2日
Abstract: 本論文では,白色光干渉計に基づく新しい振動計測理論を提案すると共に,提案手法を時間相関イメージセンサによって実装した微小構造体の三次元振動分布計測システムを構築する.本手法により,これまで実現されてこなかった大振幅での振動分布映像化が実時間で可能となる.
1. はじめに近年,MEMS に代表される微小構造体の振動分布映像
化技術の研究が盛んに報告されるようになっている (1).これは振動分布の映像化,すなわち振動における中心位置・振幅・位相の3成分を構造体全体に渡って取得することで,MEMS 等の微小デバイスの固有モードや動作時の挙動を明らかにすることができるからである.ここで,振動中心の分布を取得することは三次元形状計測と基本的に等価である.しかしながら,これまでの研究で報告された MEMSの
振動分布計測技術は・振動中心と振動振幅・位相とを別々に議論している.・理論的な制約により振動振幅の計測レンジが 0~50 nm
程度である.・計測時間に 10秒以上を要するものが一般的であり,実用的でない
といった問題を有している (2).そこで本研究では,振動中心と振幅・位相を統一的に議
論し,更に振動振幅が 100 nm以上であっても計測可能な新しい振動計測理論を提案する.また,提案手法を用いて微小構造体の振動の三次元的な分布を短時間で映像化するシステムを構築する.
2. 原 理本研究で提案する手法は白色光干渉計(White-Light In-
terferometry : WLI)に基づいている.以下ではまずWLI
の基本原理について触れ,次にこの原理を応用した振動分布計測手法を述べる.
〈2・1〉 白色光干渉計白色光干渉映像法の光学系は,図 1 に示すように光源か
らの光がビームスプリッタによって参照側と試料側とに分けられ,参照ミラーおよび試料からの反射光が上部に設置されたイメージセンサに入射する構成となっている.基本的な構成はレーザー干渉計と同様であるが,白色光
源を用いているため,参照ミラーを垂直方向(z軸方向)に駆動して試料をスキャンしたときに微小構造体の各層の干渉波形を図 1 右側のグラフに示すように分離して計測することができる.ここで,奥行き位置 hに存在する反射層によって生じる
干渉光強度分布 I(z)は
I(z) = I0 + A(z − h) cos[k0(z − h)] (1)
と表される.A(z)は干渉の包絡線であり,用いる光源のスペクトル幅によって決まっている.また k0は光源の中心波
長によって決まる干渉波形の空間周波数である.
Image sensor
Reference mirror
Broad-bandlight source
Beam splitter
Sample surface
Light intensity
図 1 白色光干渉計の光学系
〈2・2〉 振動対象の干渉光強度信号対象反射面が振動している場合,式 (1)において hは
h(t) = h0 + a sin(ωt + φ) (2)
と時間の関数となる.したがって,振動計測の目的は観測される光強度信号
I(z, t) = I0 + A(z − h(t)) cos[k0z − k0h(t)] (3)
からこの振動パラメータ h0, a, φ を求めることである.さて,ここで I(z, t)は空間項 zと時間項 tが混在してお
り,このままでは解析が困難である.そこでまず光学系において参照ミラーを z = vt と一定速度で駆動することによって光強度を時間のみの関数にする.すなわち,
I(t) = I0 + A(vt− h(t)) cos[k0vt− k0h(t)] (4)
である.このとき,干渉のピーク付近において I(t)には表1に示すような周波数成分が含まれている.
表 1 Frequency components of modulated light signal
Frequency Amplitude Phase
ω0 AJ0(k0a) −φ0
ω − ω0 AJ1(k0a) φ + φ0
ω + ω0 AJ1(k0a) φ− φ0 + π
2ω − ω0 AJ2(k0a) 2φ + φ0
2ω + ω0 AJ2(k0a) 2φ− φ0
· · · · · · · · ·
ω0 ≡ k0v, φ0 = k0h0, Jn(x) は第一種 n 次の Bessel 関数
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〈2・3〉 三次元形状計測I(t)に含まれる周波数成分のうち,走査によって生じた
キャリア周波数 ω0 の成分は振幅が干渉の包絡線 A(z)を,位相が形状 h0 を含んでおり,対象の三次元形状はこの周波数成分を二次元的に同時取得することで再構成することが可能である.そしてこれは本研究室で開発された時間相関イメージセンサによって実現することができる (3).
〈2・4〉 振動分布計測振動振幅は各次数の高調波成分の振幅に Bessel関数とし
て含まれている.ここで Bessel関数の三項間漸化式
Jn−1(x) + Jn+1(x) =2n
xJn(x) (5)
を用いると,連続する3次数の周波数成分の振幅から振動振幅を直接的に求める式
a =1
k0· 2nAJn(k0a)
AJn−1(k0a) + AJn+1(k0a)(6)
を得る.また,振動の位相は2周波数成分の位相差から求めることができる.したがって,あとはこれらの周波数成分をいかにして二次元的に同時取得するかが問題となるわけだが,これは本研究室で開発された時間相関イメージセンサを用いることで実現することができる.
3. 構築したシステム提案手法を実装したシステムの写真を図 2に示す.システムはMirau型の干渉計を基本としており,白色光源にはハロゲンランプを狭帯域フィルタによって中心波長 600 nm,
半値幅 170 nm としたものを使用した.また,用いた時間相関イメージセンサの画素サイズは 200× 200,フレームレートは 8.3 Hz である.
図 2 構築したシステム
4. 実 験構築したシステムにより、MEMSの三次元形状計測およ
び振動分布計測実験を行った.図 3,4 に試料として本研究室で開発中の蝸牛基底膜型
MEMS音響センサを用いた計測結果を示す.図 3の形状計測結果において,対象各層が別々のフレームに映像化されていることが分かる.ここで位相画像における位相の一周
は 300 nmの奥行き位置変化に対応している.Fig. 4においても対象振動のパターンを映像化することに成功した.
5. 結 論本稿では、白色光干渉計に基づく新しい振動計測理論を
提案するとともに,提案手法を時間相関イメージセンサによって実装した微小構造体の振動分布計測システムを構築した.構築したシステムは対象の三次元的な振動分布をこれまでにない計測時間で映像化することが可能であり,今後の微小構造体計測の振動解析に非常に強力な手段となり得ると考えられる.
Intensity Amplitude Phase
図 3 三次元形状計測結果左から平均光強度画像,振幅画像,位相画像.位相は色相によって表現されており,2π の位相変化が 300 nmの奥行き位置変化を表している.
Amplitude Phase
図 4 振動分布計測結果(振動周波数 3.1kHz)
参考文献(1) Petitgrand S and Bosseboeuf A, “Characterization of
the static and dynamic behaviour of M(O)EMS by op-
tical technique: status and trends,” J. Micromech. Mi-
croeng., 13, (2003) 23-33.
(2) Petitgrand S and Bosseboeuf A, “Simultaneous map-
ping of phase and amplitude of MEMS vibrations by
microscopic interferometry with stroboscopic illumina-
tion” Proc. SPIE, 5145, (2003) 33-44.
(3) S. Ando and A. Kimachi, “Correlation image sen-
sor: Two-dimensional matched detection of amplitude-
modulated light,” IEEE Trans. Electron Devices, vol.
50, (2003) 2059-2066.
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