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火力発電における論点
資源エネルギー庁
平成27年3月
総合資源エネルギー調査会⻑期エネルギー需給⾒通し⼩委員会(第5回会合)
資料3
エネルギー基本計画における火力の位置づけ
石炭
• 安定性・経済性に優れた重要なベースロード電源として再評価されており、高効率火力発電 の有効利用等により環境負荷を低減しつつ活用していくエネルギー源。
天然ガス
• ミドル電源の中心的役割を担う、今後役割を拡大していく重要なエネルギー源。
石油
• 運輸・民生部門を支える資源・原料として重要な役割を果たす一方、ピーク電源としても一定の機能を担う、今後とも活用していく重要なエネルギー源。
LPガス
• ミドル電源として活用可能であり、平時のみならず緊急時にも貢献できる分散型のクリーンな ガス体のエネルギー源。
1
石炭火力発電の高効率化
30
35
40
45
50
55
60
1960 1970 1980 1990 2000 2010 2020 2030 2040
○我が国の石炭火力は、現在、微粉炭火力の超々臨界圧(USC)が 高効率の技術として実用化されている。○今後、微粉炭火力の効率向上を進めるとともに、低品位炭も使用可能な石炭ガス化火力(IGCC、IGFC)の技
術開発を進めることで、更なる効率化を期待。〇一方、効率の良くない小規模火力の扱いも含め、省エネ法の適用のあり方などの検討が必要。
<石炭火力発電の効率向上>
亜臨界圧(Sub‐C)(蒸気圧22.1MPa未満)
超臨界圧(SC) (蒸気温度566℃以下,蒸気圧22.1MPa)
石炭ガス化複合発電(IGCC)実証機1200℃GT
IGCC 1500℃GT
先進超々臨界圧(A‐USC)(蒸気温度700℃,蒸気圧24.1MPa)
IGCC1700℃GT
石炭ガス化燃料電池複合発電(IGFC)
熱効率(%)(送電端・HHV)
年
超々臨界圧(USC)(蒸気温度566℃以上,蒸気圧22.1MPa)
既存の発電技術 今後の技術開発
2
Sub-C SC USC
435万kW(14%)
1250万kW(39%)
1530万kW(48%)
【一般・卸電気事業者の技術別石炭火力設備容量】
※技術別石炭火力設備容量の数値は2015年3月現在。なお、卸供給は除く。
LNG火力発電の高効率化
<LNG火力発電の効率向上>
我が国は、世界に先駆けて、1500℃級のガスタービンを実用化し、熱効率52%を達成。 大容量機向けには、1700℃級ガスタービンの技術開発に取り組み、熱効率57%の実用化を目指す。 中小容量機向けには、ガスタービンのみでコンバインドサイクルの熱効率に匹敵する、高湿分空気利用ガ
スタービン(AHAT)を開発し、実用化を目指す。
中小容量機向け
既存の発電技術
コンバインドサイクル発電
LNG火力発電(約38%)
1100℃級(約43%)
1350℃級(約50%)
1500℃級(約52%)
高湿分空気利用ガスタービン(AHAT)(約51%)
1700℃級(約57%)
今後の技術開発
大容量機向け
1600℃級(約54%)
3
従来型LNG コンバインドサイクルLNG
2390万kW (35%) 4525万kW (65%)
【一般電気・卸供給事業者の技術別LNG容量】 ※卸電気はLNG保有無し。
※コンバインド/従来型の数値は2015年3月現在
35
40
45
50
55
60
1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010 2015 2020 2025
熱効率(%)(送電端・HHV)
年
30.0
35.0
40.0
45.0
50.0
55.0
60.0
0.0 100.0 200.0 300.0 400.0 500.0 600.0 700.0 800.0
LNG
火力
効率
(%
・HHV)
LNG火力出力(MW)
30.0
35.0
40.0
45.0
50.0
0.0 200.0 400.0 600.0 800.0 1000.0
石炭
火力
効率
(%
・HHV)
石炭火力出力(MW)
火力発電は、設備容量の規模や利用技術によって効率が変化する。一般的には、規模が小さくなるほど、効率が悪化する傾向にある。
なお、廃熱の有効活用や熱供給との併設により効率向上を図っている設備や、製造業の自家発等の中には、事業規模により設備の大きさに制約がある設備も存在。
LNG・石炭火力の規模・技術と熱効率の関係
出典:BAT参考表(2014年4月)及びJSME分科会P-SCD353調べ〔小型石炭火力部分〕(2005年9月)
出典:”Gas Turbine World 2014 Performance Specs 30th Edition”等
規模別、利用技術別の効率の違い
LNG火力 石炭火力
従来型LNG火力:約38%
コンバインドサイクル
4
高効率火力への転換によるCO2削減効果
低効率の石炭・LNG火力から高効率設備へと転換が進んだ場合、全体として2600万トン/年程度のCO2排出量が削減できる可能性がある。
【試算の考え方】
(石炭火力)現状の設備が、全体としてUSC並みの効率になると仮定。[CO2排出係数の想定]石炭平均:0.864kg/kWh → USC:0.810kg/kWh設備容量4080万kW、稼働率80%と仮定し、
→約1550万tCO2/年の削減
(LNG火力)現状の設備が、全体としてコンバインドサイクル(GTCC)並みの効率になると仮定。[CO2排出係数の想定]従来型LNG: 0.476kg/kWh → GTCC:0.376kg/kWh[設備容量の想定]従来型LNG 2390万kW、GTCC 4525万kW設備利用率50%と仮定し、
→約1050万tCO2 /年の削減
技術 設備容量 導入本格化時期
Sub-C(亜臨界圧)
435万kW 1960年代~
SC(超臨界圧)
1250万kW 1980年代~
USC(超々臨界圧)
1530万kW 1995年頃~
※一般・卸電気事業者の合計。卸供給は除く。※設備容量は2015年3月時点。
技術 設備容量 導入本格化時期
従来型 2390万kW 1970年代~
コンバインドサイクル(GTCC)
4525万kW 1980年代~
※一般・卸供給事業者の合計。卸電気はLNG保有無し。※設備容量は2015年3月時点。
【技術の導入状況(石炭)】
【技術の導入状況(LNG)】
※CO2排出係数は送電端・HHVの値。 5
主要各国の天然ガス比率を比較すると、中国・台湾・フランス・インドは10%以下であり、世界平均は22%。 日本は、柏崎刈羽原発停止の影響等により震災前に既に29%と高かったが(2005年度は24%)、震災後にガス火力の発電
電力量が増加したことから43%にまで上昇。 G8+EU+中印韓の中で、天然ガス比率が震災後の日本より高いのは、イタリアとロシアであるが、イタリアはアルジェリ
アとロシアからガスパイプラインで天然ガスを大量に輸入しており、ロシアは世界 大の天然ガス輸出国といった、天然ガスに関する固有事情を有している国。
日本は天然ガス資源を国内にほとんど持たない(LNGとして輸入)にもかかわらず、国際的に見れば、天然ガスへの依存度が高い。
出典:日本以外はIEA “Energy balanced of OECD countries”, “Energy balanced of non-OECD countries”、日本は電源開発の概要等
主要各国の電源構成に占める天然ガス割合
電源構成比
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
中国
台湾
フランス
スペイン
インド
カナダ
ドイツ
EU 韓
国世界平均
英国
日本(2010)
アメリカ
日本(2013
)
イタリア
ロシア
再エネ等
水力
原子力
石油
石炭
天然ガス
6
LNG価格が2万円/t台で安定しており、USC(超々臨界圧)が実用化され建設段階にあった1990年代は、天然ガス割合は20%台で推移。LNG価格が3~6万円に上昇し、USCが運転開始した2000年代は、天然ガス割合は30%近くまで上昇。
震災後は、天然ガス割合が急激に増加し、LNG価格の高騰と相俟って、燃料費の増大につながっている。 電源構成に占める天然ガス割合が高止まりしている中で、天然ガスへの過度の依存リスクに留意する必要あり。
7
震災後LNG中価格期
LNGのCIF価格(円/t)(左軸)
電源構成に占める天然ガスの割合
燃料価格(円/t)
※IEAのWorld Energy OutlookのNew Policy Scenarioでは、2020~2040年にかけて$740~790/tで推移と分析。
LNG低価格期
20%
30%
40%
50%
0
10,000
20,000
30,000
40,000
50,000
60,000
70,000
80,000
90,000
1990 1995 2000 2005 2010
電源構成に占める天然ガス割合(右軸)
日本の電源構成に占める天然ガス割合の推移
石油火力の特性
1979年第3回IEA閣僚コミュニケにおいて採択された「石炭に関する行動原則」において、ベースロード用の石油火力の新設、リプレースの禁止が定められている。
石油は、燃料価格が高く、海外情勢により変動するが、短時間の需要変動への対応が可能であり、ピーク電源として活用されるなどの役割がある。
調達に係る地政学的リスクは も大きいものの、可搬性が高く、全国供給網も整い、備蓄も豊富なことから、他の喪失電源を代替するなどの役割を果たすことができる。東日本大震災時には、稼働停止していた石油火力を再稼働させることで供給力不足を補った。
石油は、LNGと比較すると、貯蔵性が高く、契約も短期間での取引が多いなど、需要に応じた燃料の調達が可能。
他方、今後、ディマンドレスポンスの進展等により、ピーク需要が下がっていくと、メリットオーダーの観点からは、石油のような変動費が大きい電源の抑制が進む見込み。
石油火力の特徴
現時点で も古い石油火力は運転開始後51年経過。 2030年時点で運転開始後51年を経過していない石油火力発電所は、1979年以降に運転開始した
合計1,893万kW。40年を経過していないものは、1990年以降に運転開始した合計513万kW。 仮にこれらの発電所が稼働率22%(震災前10年間の平均稼働率)で運転すると仮定すれば、2030
年における発電電力量は51年未満のもので365億kWh、40年未満のもので99億kWhとなる。
石油火力の設備の状況
8
今後の自然変動電源の導入拡大に対応して、火力発電の出力抑制が多くなると予想される。
昨年12月、新エネルギー小委員会系統ワーキンググループにおいて示された接続可能量算定においては、太陽光・風力発電を優先的に稼働させることによって、需要の低い時期には、各電力会社管内において、火力発電の設備容量の9割程度が抑制・停止するという算定結果が出ているところ。
こうした火力発電の抑制(設備利用率の低下)によって、採算性の悪化が懸念される。
【火力発電の抑制の状況(平成26年12月16日 系統ワーキンググループ資料を元に作成】
※1 副生ガスについては、火力ユニットの主な燃料の種別に含めて表示している※2 端数により、合計が一致しない場合がある。※3 複数の電力会社に供給している電源の設備容量については、各社の受電相当分を記載している。※4 昼間 低負荷については、4月又は5月のGWを除く晴れた休日昼間の太陽光発電の出力が大きい時間帯の需要に、余剰買取による太陽光発電の自家消費分を加算している。※5 域外の発電所からの受電分について、 大受電出力から 小需要時に見込んだ出力までの抑制量を記載。※6 火力発電については、再エネ導入のための出力制御により経済的運用(メリットオーダー)とはなっていない。
• 火力発電については、LFC調整力の確保や、ピーク時の需要に対応できること等を前提に、 大限出力を抑制することとして算出した。
• 結果として、経済面で有利な石炭火力発電の抑制が大量に発生し、効率的な電源利用の観点からは課題が見られることとなった。
7社計
524.0(※火力設備容量の10.0%)
5257.5
再生可能エネルギーの導入拡大による火力発電の稼働率低下について
9
スペインでは2000年代に入り、再エネ電源の導入を受け、年間の総発電電力量は伸びているものの、ガスや石炭火力の設備稼働率が低下。スペインのガスナトゥラル社のガス火力の稼働率は、2004年に66%であったものが、2011年には23%まで低下。
このような状況下で、欧州各国の火力発電事業者は再エネ電源の大量導入等による火力発電所の収益悪化のため、投資計画の見直しを余儀なくされている。
ドイツ 大のエネルギー供給事業者であるE.ON社は、2015年に会社を2分割し、2016年には発電(石炭・ガス・原子力)・国際エネルギー取引・上流部門を新事業会社にスピン・オフさせる計画を昨年11月に発表。
企業名 火力発電の投資の現状
SSE(英)
2013年時点で計画中の7件の新設火力のうち、3件は2015年末まで 終投資判断を先送り。
E.ON(独)
2013年の計画では、前年と比較して、認可申請手続中の2件の石炭火力をリストから削除。
Vattenfall(独)
投資計画を見直し、2件のガス火力の運転開始を2~4年延期。
出典:海外電力調査会等
欧州における火力発電所の稼働率低下
10
参考資料
出典: IEA, Energy Balances: OECD and Non‐OECD Countries, より試算
我が国の石炭火力の熱効率は世界 高水準。
日本熱効率(発電端、LHV)(%)
20
25
30
35
40
45
1990 1995 2000 2005 2010
発電
効率
[発電
端・LH
V] (
%)
中国 米国 インド 日本 ドイツ 韓国
オーストラリア ロシア ポーランド 英国 EU (27) 世界計
石炭火力の熱効率の国際比較
12
出典: IEA, Energy Balances: OECD and Non‐OECD Countries, より試算
熱効率(発電端、LHV)(%)
30
35
40
45
50
55
60
1990 1995 2000 2005 2010
発電
効率
[発電
端・LH
V] (
%)
中国 米国 インド 日本 ドイツ 韓国
オーストラリア ロシア ポーランド 英国 EU (27) 世界計
LNG火力の熱効率の国際比較
13
高効率火力の導入に加え、東日本大震災以降、火力焚増しのため経年火力が稼働する中においても、更なる運用管理の徹底に努め、結果として火力熱効率を維持。
火力発電の発電効率推移
14
我が国の石炭火力は、高効率技術(超臨界圧・超々臨界圧)と運転・管理ノウハウにより、世界 高水準の発電効率を達成し、運転開始後も長期にわたり維持。
日本で運転中の 新式の石炭火力発電の効率を米、中、印の石炭火力発電に適用すると、CO2削減効果は、約15億トン(試算)
相手国の産業構造に合わせた高効率石炭火力技術の技術移転や、石炭火力の運営管理技術(O&M)もセットにしたシステム輸出により、わが国の高効率石炭火力の海外展開を進めるともに技術競争力の維持を図る。
石炭火力・経年劣化の比較例
石炭火力の国際展開(技術移転による低炭素化の推進)
15出典:「IEA World Energy Outlook 2013」、「Ecofys International Comparison of Fossil Power Efficiency and CO2 Intensity 2014」から作成
高効率発電技術を早期に技術確立し、実用化していくことで、我が国のCO2削減に貢献するとともに、これら技術を海外展開していくことにより、我が国のみならず世界全体でのCO2削減への貢献が見込まれる。
我が国で技術開発が行われたIGCC(空気吹き)については、福島県における大型IGCC実証プロジェクトや、海外展開が同時並行で計画中。
二酸化炭素回収設備や、二酸化炭素の利用(CCU)についても、実証事業等に取り組んでいるところ。
IGCC 技術実証IGCC 要素技術開発
国内外への展開
○勿来IGCC実証(H11-21)
・世界初の空気吹石炭ガス化複合発電(空気吹IGCC)の開発を福島県にて実施。平成25年4月より常磐共同火力の発電所として商用運転を継続中。
○福島IGCC・東京電力が福島復興の一環として、福島県に50万kW級の大型IGCC実証プロジェクトを計画中。2020年までに建設を完了し、運転見込み。
アメリカのSCS社(SCS Energy LLC)が進める発電・肥料製造プロジェクトにおいて、CO2回収・貯留(CCS:Carbon dioxide capture and storage)機能を備えたIGCCを建設。IGCCの発電出力は40万キロワット、CO2回収・貯留機能を備えた商業レベルのIGCC発電所として計画中。回収したCO2は肥料生産と原油増進回収(EOR:Enhanced Oil Recovery)に使用予定。
○HECA(Hydrogen Energy California)プロジェクト
○IGCC要素研究、パイロットプラント研究等(S58~H14)
・S58年より空気吹IGCCの2t/dのプロセスディベロップメントユニット、H3年より200t/dのパイロットプラント研究を実施。
ここで得られた成果を元に、スケールアップ実証を実施。
高効率石炭火力発電技術の商用化、海外展開
16
エネルギーミックスや2020年以降の温暖化対策に係る約束草案の検討状況を踏まえつつ、電気事業全体でCO2排出を抑制するための自主的な枠組み作りについても現在議論を進めているところ。
具体的には、電気事業連合会と新電力有志との間で、枠組み検討の場を立ち上げることに合意し、3月25日に第1回会合を開催したところ。
■電⼒業界全体の枠組み構築に向けた検討状況■
【参考】電力業界全体の枠組み構築について
「東京電力の火力電源入札に関する関係局長級会議とりまとめ」(平成25年4月25日)において、電力業界全体で二酸化炭素排出削減に取り組む実効性のある枠組みの構築が求められている。
(枠組みの内容 [抜粋] )① 国の計画と整合的な目標が定められていること② 新電力を含む主要事業者が参加すること③ 目標達成に向けた責任主体が明確なこと(小売段階に着目することを想定)④ 目標達成について参加事業者が全体として明確にコミットしていること⑤ 新規参入者等に対しても開かれており、かつ事業者の予見可能性の高い枠組とすること
CO2排出抑制のための事業者の自主的枠組の検討状況
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