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- 293 - 大学大学院 育学 第59 ・第1 (2010 糖尿病者用サポート環境尺度の開発 ** *** 6つ から ソーシャル・サポートを し、 が、 から れほ サポートを けているか するため Support Environment scale for Diabetics; SEDった。 100 を対 サポート・ニーズに する い、そ 404 に対し った。 サポート」(8 =.89, テスト r =.80) 「運 ポート」(3 =.72,r =.75) 2因 から SED (11 =.89,r =.80)、 SED (4 =.80,r =.75)、医 SED (10 =.94,r =.89)、 SED (10 =.94,r =.74)が された。 SEDSEDSED サポート、および医 SED -医 した がみられ、 が確 された。 SED いて、 サポートが コントロール よう たらしているか していく がある。 キーワード:糖尿病、ソーシャル・サポート、成人、尺度開発、信頼性・妥当性 1.問題と目的 1.1.は じ め に ここ にある( ,2008)。 悪い 多く( ,2003)、 による っている( 井,1999; ,2001)。そ よう りまく して「ソーシ ャル・サポート(Social Support;以 SS)」に まっている。 SS える して めている。SS セルフケアを すく(Schafer, McCaul & Glasgow, 1986;Wang & Fenske, 1996 )、 育学 ** 大学 *** 育学

糖尿病者用サポート環境尺度の開発 - Tohoku University ......糖尿病者のSS 研究における尺度の課題点も明らかになった。 一般的サポートと特異的サポートという二つの概念の違いについて、これまでの研究から、両者

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東北大学大学院教育学研究科研究年報 第59集・第1号(2010年)

糖尿病者用サポート環境尺度の開発

東海林 渉*

大 野 美千代**

安 保 英 勇***

本研究では6つの視点から糖尿病者のソーシャル・サポートを定義し、糖尿病者が、家族,友人,

医療従事者、同病者からどれほどの糖尿病特異的サポートを受けているか測定するための尺度

(Support Environment scale for Diabetics; SED)の開発を行った。成人糖尿病者100名を対象に

サポート・ニーズに関する予備調査を行い、その結果をもとに成人糖尿病者404名に対し質問紙調

査を行った。

その結果「食事・薬物サポート」(8項目、 係数=.89,再テスト信頼性 r=.80)と「運動サ

ポート」(3項目、 =.72,r=.75)の2因子からなる家族版 SED(11項目、 =.89,r=.80)、

友人版 SED(4項目、 =.80,r=.75)、医療従事者版 SED(10項目、 =.94,r=.89)、同

病者版 SED(10項目、 =.94,r=.74)が作成された。家族版 SED・友人版 SED・同病者版

SEDと一般的サポート、および医療従事者版 SEDと患者-医療従事者間の関係性の間に予想した

通りの関連がみられ、構成概念妥当性が確認された。

今後は SEDを用いて、糖尿病特異的サポートが血糖コントロールや精神健康にどのような影響

をもたらしているか検討していく必要がある。

キーワード:糖尿病、ソーシャル・サポート、成人、尺度開発、信頼性・妥当性

1.問題と目的

1.1.は じ め に

ここ数年、糖尿病者数は増加傾向にある(厚生労働省,2008)。糖尿病者の中には予後の悪い者

も多く(久保,2003)、合併症による疾患の重篤化が深刻な問題となっている(石井,1999;日本

糖尿病学会,2001)。そのような中で、近年、糖尿病者をとりまく心理社会的要因として「ソーシ

ャル・サポート(Social Support;以下,SS)」に注目が集まっている。

SSは、糖尿病者の疾患管理や精神的健康を支えるものとして注目を集めている。SSの高い者

はセルフケアを行いやすく(Schafer, McCaul & Glasgow, 1986;Wang & Fenske, 1996など)、

*教育学研究科 博士課程後期**淑徳大学看護学部 助手***教育学研究科 准教授

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糖尿病者用サポート環境尺度の開発

血糖コントロールが良好で(Eriksson & Rosenqvist, 1993;三浦・中越・岡村・坂井・彼末,

1994など)、抑うつ症状が少なく(Connell, Davis, Gallant & Sharpe, 1994;Bailey, 1996など)、

QOLも良い(Aalto, Uutela, & Aro, 1997;Rose, Burkert, Scholler, Schirop, Danzer & Klapp,

1998など)と報告されている。

しかし元来 SS研究には「SSの定義は研究者によってまちまちで、一貫していない」という問

題点ともいえる特徴が存在する(Brandt & Weinert, 1981;久田,1987;桑原・工藤・深山,2000

など)。この特徴ゆえに、SSのさまざまな効果は、単一のモデルないし視点では説明し得ないの

が現状であるという指摘もなされており(ローデス・レイキー,2001)、久田(1987)は、研究ご

とにさまざまに概念化され、測定された結果は比較のしようがなく、SSの効果についての一般化

を妨げていると指摘している。

SS概念の広がりは、多角的な視点から多くの知見をもたらすと思われるが、一方で久田(1987)

が指摘するように概念の多様化が生じ、結果の比較や解釈を困難にする。そのため、まず当該研究

領域において SSという概念がどのように定義され、どのように測定されているかを知ることが必

要となる。

1.2.問 題

筆者らは糖尿病者に対して実施された国内外の尺度のレビューを通して、糖尿病者の SS研究に

おける、SS概念の整理を行っている(東海林・安保,2010)。その結果、糖尿病者の SSは、「一

般的サポート」(糖尿病者に限らず、あらゆる人が受けることがあるサポート)と「特異的サポー

ト」(疾患に関連したサポートで、特定の疾患に罹患した当事者のみが受けることがあるサポート)

に大別され、一般的サポートと糖尿病特異的サポートを差別化して定義するためには、食事に関す

るサポートや運動に関するサポートといった、サポートの内容的側面に着目することが重要である

ことがわかった。さらにこの特徴以外にも、同病者からのサポートを測定できる尺度が少ないなど、

糖尿病者の SS研究における尺度の課題点も明らかになった。

一般的サポートと特異的サポートという二つの概念の違いについて、これまでの研究から、両者

には機能的な違いがあることが示唆されている。Connell et al.(1994)は抑うつに対する SSの影

響を検討しており、一般的サポートは直接もしくは糖尿病の脅威を介して間接的に抑うつを低減さ

せる方向に影響を及ぼしていたが、家族・友人からの道具的な糖尿病特異的サポートは抑うつに関

連していないことを報告している。さらに Bailey(1996)も、一般的サポートはマスタリーと自

尊心を介して間接的に抑うつに影響していたが、糖尿病特異的サポートは、抑うつへの直接効果と、

マスタリーもしくは自尊心を介した間接効果のどちらともみられなかったと報告している。したが

って、両者は全く違った特徴をもつ概念であると推測されるため、別の概念として区別して測定し

ていく必要がある。

しかし、既存の尺度では、両概念が必ずしも明確に区別されているわけではない。本邦で開発さ

れ、糖尿病者に実施された尺度について筆者らのレビュー(東海林・安保,2010)をもとに振り返

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東北大学大学院教育学研究科研究年報 第59集・第1号(2010年)

ると、レビューの対象となった10個の尺度のうち、一般的サポートを測定した尺度は1つ、一般的

サポートと特異的サポートを混合したまま測定した尺度は2つ、特異的サポートを測定した尺度は

7つであった(詳細は、東海林・安保(2010)を参照のこと)。そして特異的サポートを測定した

7つの尺度のうち、一般的サポートと差別化するのに重要な内容的側面に着目して糖尿病特異的サ

ポートを測定しているものは、1つのみであった(i)。ただしその尺度(矢田・横田・高間,2003)

は、サポート源が家族に限定されており、友人や医療従事者、同病者などから提供される多種多様

な支援を包括的に測定するには限界があるものであった。したがって、本邦の既存の尺度について

まとめると、特異的サポートを測定しているものは多いが、一般的サポートとの明確な差別化がさ

れているとは言いがたく、また、多様なサポート源から提供される支援を包括的に測定するには十

分でなく、測定されている SSについて多角的に検討することが難しい尺度となっている。

尺度作成時に、測定しようとする概念を可能な限り明確に定義することは、尺度作りの原則であ

る(村上,2006)。さらに SS尺度に関して言えば、もともと定義の曖昧さの問題があるため、特

に多角的かつ厳密に定義していくことが必要と思われる。そこで本研究では、後述する6つの視点

から、糖尿病者の SSをより多面的かつ詳細に定義し、糖尿病者のサポート環境を査定するための

新たな糖尿病者用 SS尺度の開発を試みる。

Table 1 本研究で定義するソーシャル・サポート概念の特徴

特 徴 内 容

(1) 一般的か特異的か糖尿病に罹患した者のみが受けることがあるサポート(糖尿病特異的サポート)に限定し、一般的サポートは含めない

(2) 内容的側面への注目糖尿病特異的サポートであることを特徴づけるため、食事・運動・服薬あるいは注射・管理全般の4つの側面を含める

(3) 人的なサポート源 家族・友人・医療従事者に加えて、同病者を含める

(4) 互恵性の観点 同病者については受領面に限定し、提供面は扱わない

(5) 機能的側面への注目 手段的サポートと情緒的サポートの両要素を含める

(6) 支援に対する価値判断「当該集団において、過半数の者がサポーティブであると認識する支援行動」をサポーティブな支援と定義して扱う

1.3.SS 概念の多角的な検討

SSは様々な視点から定義される。上述の一般的サポートか特異的サポートかという視点もその

うちの一つといえる。本研究では、東海林・安保(2010)のレビューで示された糖尿病者の SS概

念の特徴を参考に、以下の6つの視点から本研究で測定しようとする SSを定義する(Table 1)。

(1)一般的サポートと特異的サポートについて、および(2)サポートの内容的側面について:

本研究では糖尿病特異的サポートを測定するための尺度の作成を試みる。これまでにも糖尿病者の

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糖尿病者用サポート環境尺度の開発

特異的サポートを測定するために開発された尺度はいくつか存在するが(東海林・安保,2010)、

上述のように、それらは必ずしも特異的サポートのみをターゲットにして、その内容を特徴的かつ

網羅的にとらえているとはいえない。例えば、三浦ら(1994)が用いた質問票では一般的サポートと

特異的サポートが混在しており、また岡田・黒田・江村・米田・北岡・呉・寺嶋(2001)の尺度で

は食事や運動、血糖管理などの糖尿病独自の要素(内容的側面)が十分に反映されていないなどの

特徴がある。そこで本研究では、糖尿病特異的サポートとしての特徴を際立たせるために、食事・

運動・服薬あるいは注射・管理全般の4側面に関する項目を網羅的にプールして、一般的サポート

と差別化された糖尿病特異的サポートを測定する尺度の作成を試みる(ii)。

(3)サポート源について:既存の尺度には、家族・友人・医療従事者からのサポートを測定す

る尺度は多いが、同病者からのサポートを測定するための尺度は少なく、そのため同病者サポート

に関する研究が難しくなっている(東海林・安保,2010)。測定ツールの開発は、同病者サポート

に関する研究を行っていくために必要不可欠であるため、本研究では、これまでの研究で測定され

ることが多かった家族・友人・医療従事者に加え、同病者を含めた4つの人的なサポート源を想定

することとする。

(4)互恵性の視点について:これまでの糖尿病者を対象とした研究では、SSの互恵性につい

てほとんど関心が払われてこなかった。このことは、特異的サポートを提供するという行為が同病

者に対してしか遂行され得ないこと(授受可能性の問題)と関連しており(東海林・安保,2010)、

同病者サポートに関する尺度があまり開発されてこなかったことと関係がある。他人を助ける行為

が自らに恩恵をもたらすという指摘(Riessman,1990)や、重要なのはサポートの受領と提供の

バランスであるという指摘(福岡,1999;森本,2006)からも、同病者サポートに関する尺度におい

て、より積極的に受領と提供の側面について言及していく必要があるといえる。ただし本研究では、

他のサポート源の尺度と同時に同病者サポートの尺度を開発するという手続き上の制限があり、同

病者サポートの尺度だけが提供面を含むことで質問紙全体の中身が煩雑になることが懸念されたた

め、提供面に関する尺度開発については将来的な課題とし、受領面にのみ着目することとした。

(5)機能的側面について:糖尿病者へのサポートは上述したように食事や運動といった内容的

側面で特徴づけられるほか(矢田ら,2003;東海林・安保,2010)、手段的サポートと情緒的サポー

トの二つに分けることができるという指摘もあり(福西・秋本・橋本,1999)、それを支持する因

子分析の結果(金・嶋田・坂野,1998)も得られている。そこで本研究では、上述のように内容的

側面に関する項目を網羅的にプールすると同時に、機能的側面に関しても、手段的サポートと情緒

的サポートのいずれかの要素を各項目に反映させることとした。

(6)サポート行為に対する価値判断について:あるサポート行為をサポーティブとするか、ノ

ンサポーティブとするかについては、操作的な定義を用いることとする。これまでの研究から,サ

ポーティブな支援とノンサポーティブな支援ではその影響の仕方に違いがあることが明らかとなっ

ている(服部・吉田・村嶋・伴野・河津,1999;荒木・出雲・井上・服部・中村・高橋・高梨・手

島・矢富・冷水・井藤,1995;荒木・出雲・井上・高橋・高梨・手島・矢富・冷水・井藤,1995)。

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東北大学大学院教育学研究科研究年報 第59集・第1号(2010年)

しかし、あるサポートが当事者にとってサポーティブであるかノンサポーティブであるかというの

は、個々人の価値観を含む非常に主観的な問題であり、全員にとって完全にサポーティブあるいは

ノンサポーティブであるということは非常に稀である(東海林・安保,2009)。これまでの研究で

は、サポーティブであるかノンサポーティブであるかを研究者自身が独自に判断するか、具体的な

行動様式に言及せずに主観的な認識のレベルで知覚されたサポートを測定することでその問題を解

決しようとしてきたと思われるが、本研究では可能な限り SSの内容的側面や機能的側面を厳密に

定義しようとしているため、ある程度、具体的な行動のレベルで項目を記述していくことが求めら

れる。そのため、何らかの基準を用いてサポーティブとノンサポーティブを定義する必要がある。

そこで本研究では、以下のような操作的定義を採用し、サポーティブな支援に焦点を当てることと

した。

本研究におけるサポーティブな支援は、「当該集団において、過半数の者がサポーティブである

と認識する支援行動」とし、同一のサンプル集団を対象としたニーズ調査の結果をもとに判断する

こととした。もしサンプル集団において、あるサポートを必要としている者が過半数に達する場合

に、そのサポートを「サポーティブな支援」と定義し、反対に半数以下である場合には、「ノンサ

ポーティブな支援」であると定義した。

以上のように本研究では、6つの視点から糖尿病者のSSを定義することとし、糖尿病者のサポー

ト環境をアセスメントする新たな尺度の開発を目的とする。なお本研究の SS概念図を Figure 1

に示す。

Figure 1 本研究で定義するソーシャル・サポート概念図

2.方 法

2.1.項目プールの作成

東海林・安保(2010)において、特異的サポートの尺度として分類された16個の尺度を参考にし

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糖尿病者用サポート環境尺度の開発

て、項目プールを作成した。項目の整理は、臨床心理士1名と臨床心理学を専攻する大学院生1名

で行った。家族・友人・医療従事者からのサポートについては既存尺度項目の整理と修正に加え、

本研究の SS概念にあわせて適宜項目を追加した。同病者からのサポートについては、同病者サポー

トを測定している既存の尺度が少なく、既存尺度項目の整理と修正だけでは本研究の SS概念に即

した形で構成概念の内容を網羅できないと思われたため、セルフ・ヘルプ・グループへの参加が糖

尿病者の自己管理に及ぼす影響について検討した織田・大倉・佐伯・大澤・鈴木・寺島・野村・松

浦・山内(2007)を参考に項目を追加し、内容的妥当性の確保を目指した。以上の手続きを経て、

機能的側面の2側面(手段的、情緒的)と、内容的側面の4側面(食事、運動、服薬あるいは注射、

管理全般)を掛け合わせた8側面に関する項目プールをサポート源ごとに作成した(Table 3~

Table 6)。プールされた項目数はそれぞれ家族34項目、友人29項目、医療従事者40項目、同病者37

項目であった。

2.2.予備調査(iii)

「サポーティブな支援」と「ノンサポーティブな支援」を操作的に定義するために、糖尿病特異

的サポートのニーズに関する予備調査を行った。

2.2.1.予備調査の手続き

作成された項目プールを用いて、東京都にある朝日生命成人病研究所附属丸の内病院(iv)にて通

院治療を行っている成人の糖尿病患者100名を対象に予備調査を行った(配布数194部、回収率51.5

%)。対象者の属性を Table 2に示す。

Table 2 予備調査の分析対象者の属性(N=100)

属性(平均±SD) N 属性(平均±SD) N 属性(平均±SD) N 属性(平均±SD) N

【年齢】(66.10±9.12) 【配偶者】 いる 86 【罹病期間】 【病型】 1型 10

30代 2 いない 14 (200.48±115.73)a 2型 67

40代 3 【同居人数】(2.69±1.26) 5年未満 7 その他 2

50代 15 1人暮らし 11 5~10年 16 無回答 21

60代 42 2人暮らし 45 10~15年 16 【HbA1c 値】(6.79±0.82)

70代 34 3人暮らし 22 15~20年 21 【3大合併症】

80代 4 4人暮らし 14 20~25年 17 網膜症 19

【性別】 男性 84 5人暮らし 4 25年以上 18 腎症 6

女性 16 6人暮らし 2 無回答 5 神経障害 15

【仕事】 正職員 46 7人暮らし 2 【薬物治療の方法】 【3大合併症数】

バイト・パート 6 【主な食事提供者】 飲み薬 41 なし 74

無職(主婦) 46 自分 22 インスリン注射 28 1つ 14

無回答 6 配偶者 69 飲み薬&注射 12 2つ 7

【家族成員の糖尿歴】 その他 2 薬物治療なし 17 3つ 4

いる 55 無回答 7 無回答 2 無回答 1

いない 45

a)単位は月

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東北大学大学院教育学研究科研究年報 第59集・第1号(2010年)

「以下に示すご家族(“ご友人”“医療従事者”“糖尿病のお知り合い”)の行動や態度は、糖尿病の

あなたにとってどれくらい必要ですか?」という教示を用いて、「とても必要だ(4点)」「どちらか

と言うと必要だ(3点)」「どちらかと言うと必要でない(2点)」「まったく必要でない(1点)」

の4件法で回答を求めた。

$$$$$$なお、各サポート源に関する説明として、友人については「(ただし、糖尿病にかかっている友人

$$$は除きます)」という教示、医療従事者については「(あなたと関わりのある、医師や看護師、栄養

士などの医療にたずさわっている人)」という教示、同病者については「糖尿病の知り合いとは、

$$$$$$$ $$$糖尿病をもっている知り合い(ただし、糖尿病のご家族は除いてください)のことで、近くにいる

$$$$$$$$$人でも遠くにいる人でもかまいません。また、インターネットや手紙などを通して知り合った人な

$$$$$$$$$ど、直接会ったことのない人でも結構です。」という教示をそれぞれ付記した。

2.2.2.予備調査の分析方法と結果

各項目の50パーセンタイル値を算出し、50パーセンタイル値が3以上の項目を「サポーティブな

支援」、3未満の項目を「ノンサポーティブな支援」と定義した。その結果、家族で10項目、友人

で24項目、医療従事者で2項目、同病者で6項目がそれぞれ「ノンサポーティブな支援」と定義さ

れ、残りの項目(家族で24項目、友人で5項目、医療従事者で38項目、同病者で31項目)が「サポー

ティブな支援」として定義された(Table 3 ~ Table 6)。

2.3.本 調 査

予備調査で「サポーティブな支援」として定義された項目を用いて、糖尿病者のサポート環境を

アセスメントするための尺度(Support Environment scale for Diabetics ; SED)を作成し、その

信頼性と妥当性を検討した。

2.3.1.本調査の手続き

調査対象は、東京都にある朝日生命成人病研究所附属丸の内病院(v)にて通院治療を行っている

成人患者のうち、糖尿病もしくは糖尿病境界型の診断から1ヶ月以上経過した者とした。また、網

膜症の進行や高齢等により著しい視力の低下がみられたり、当日の体調不調により回答するのが困

難と判断された者はあらかじめ調査対象から除いた。

本研究の主旨を説明後、研究参加に同意の得られた404名(配布数610部、回収率66.2%)を対象

に質問紙調査を実施した。項目数の多さから対象者の負担を考慮して質問紙は2種類(Ver. Aお

よび Ver. B)用意し、それぞれ無作為に配布した(vi)。Ver. Aは SEDの家族版・友人版・同病者

版と一般的サポート尺度により構成され(配布部数305部、回収部数211;回収率69.2%)、Ver. B

は SEDの医療従事者版・同病者版と一般的サポート尺度、患者-医療従事者間の関係性尺度によ

り構成された(配布部数305部、回収部数193;回収率63.3%)。質問紙の回収方法は、その場で回

収もしくは、郵送法による回収とした。

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糖尿病者用サポート環境尺度の開発Tab

le3家族からの糖尿病特異的サポートに関するニーズ調査の結果

a

内容的側面の区分

項目

内容

必要度

(%)b

項目採択

c

食事

運動

薬全般

●きちんとした食事があなたにとってどれほど重要かわかっている。

88.5

sup.

●野菜、きのこ類、海藻類など健康に良い食べ物をすすめる。

88.4

sup.

●運動することがあなたにとってどれほど重要かわかっている。

86.5

sup.

●薬が糖尿病の悪化を防ぐのにどれほど重要かわかっている。

86.1

sup.

●毎日運動を続けることの大変さをわかっている。

85.4

sup.

●糖尿病をもっていることをあなたがどう感じているか理解している。

83.3

sup.

●あなたの病状を考えて食事を作る。

81.3

sup.

●食事制限を守っていくことの大変さをわかっている。

80.2

sup.

●糖尿病管理でのあなたの努力を認める。

75.8

sup.

●控えた方がよい食べ物や飲み物であなたを誘惑しないようにする。

72.6

sup.

●糖尿病とうまく付き合っていくにはどうしたらよいか、一緒になって考える。

72.6

sup.

●普段、あなたと一緒に食事する。

72.4

sup.

●スポーツ活動に参加することを勧めたり、励ましたりする。

67.0

sup.

●あなたの糖尿病管理がうまくいっているかどうかを気にする。

66.7

sup.

●毎日薬を服用しなければならない煩わしさをわかっている。

66.7

sup.

●あなたを「糖尿病管理を頑張ろう」という気持ちにさせる。

66.7

sup.

●あなたの糖尿病管理のことを考えて家族の予定をたてる。

64.6

sup.

●毎日いくらか運動するように言う。

64.2

sup.

●一緒にいるとき、徒歩で移動したり階段を使おうとする。

62.5

sup.

●糖尿病のことで「無理をしないように」とあなたに気を配る。

62.5

sup.

●一緒に外食に行くと、あなたのために健康に良いものを選んだり頼んだりする。

61.1

sup.

●あなたが外出するとき、必要な薬や器具を持ったか確認する。

57.5

sup.

●時間通り正しく薬を服用できるように声をかける。

54.5

sup.

●あなたと同じものを食べる。

51.5

sup.

●一緒に歩いたり、運動したりする。

49.5

non-

sup.

●あなたの糖尿病に関する悩みや不安を聴く。

47.9

non-

sup.

●あなたが使っている薬について、いろいろ知ろうとする。

45.0

non-

sup.

●最先端の治療や新薬の情報をあなたに伝える。

44.7

non-

sup.

●糖尿病管理に関するあなたの愚痴を聴く。

41.7

non-

sup.

●水を持って来たり必要な薬や器具を用意するなど、薬の服用の手伝いをする。

38.8

non-

sup.

●あなたが利用できる運動施設(体育館や運動場、公園など)を探す。

34.7

non-

sup.

●あなたの薬がなくなっていないかどうか確認する。

32.1

non-

sup.

●あなたが参加できる催し物(市民運動会やウォーキング集会、病院主催の健康

プログラムなど)を見つけてくる。

28.4

non-

sup.

●あなたの通院に付き添って待っている。

11.6

non-

sup.

「サポーティブな支援」の項目数

24項目

a)白地の項目は「手段的サポート」、灰色地の項目は「情緒的サポート」

b)「とても必要だ」「どちらかと言うと必要だ」と回答した者を「必要」、「どちらかと言うと必要でない」「まったく必要でな

い」と回答した者を「不必要」として、回答者に占める「必要」回答の割合を算出した。

c)

sup.:サポーティブな支援と定義された項目(本調査で使用)、

non-

sup.:ノンサポーティブな支援と定義された項目(本

調査に不採用)

Tab

le4友人からの糖尿病特異的サポートに関するニーズ調査の結果

a

内容的側面の区分

項目

内容

必要度

(%)b

項目採択

c

食事

運動

薬全般 ●

糖尿病だからといって見下したり馬鹿にしたりせずに、あなたと付き合う。

58.3

sup.

●きちんとした食事があなたにとってどれほど重要かわかっている。

57.0

sup.

●食事制限を守っていくことの大変さをわかっている。

56.4

sup.

●運動することがあなたにとってどれほど重要かわかっている。

55.8

sup.

●あなたの体調を気づかう。

51.1

sup.

●毎日運動を続けることの大変さをわかっている。

49.5

non-

sup.

●控えた方がよい食べ物や飲み物であなたを誘惑しないようにする。

45.7

non-

sup.

●糖尿病をもっていることをあなたがどう感じているか理解している。

44.2

non-

sup.

●薬が糖尿病の悪化を防ぐのにどれほど重要かわかっている。

42.9

non-

sup.

●食事会や飲み会などにあなたを無理に誘わない。

41.1

non-

sup.

●健康に良い調理法をあなたに教える。

38.9

non-

sup.

●関心をもってあなたの病気(糖尿病)の話を聴く。

38.3

non-

sup.

●あなたを「糖尿病管理を頑張ろう」という気持ちにさせる。

36.8

non-

sup.

●糖尿病のことで「無理をしないように」とあなたに気を配る。

35.8

non-

sup.

●良い医者や良い病院についてあなたに教える。

35.8

non-

sup.

●毎日薬を服用しなければならない煩わしさをわかっている。

35.1

non-

sup.

●一緒にいるとき、徒歩で移動したり階段を使おうとする。

34.0

non-

sup.

●一緒に外食に行くと、あなたのために健康に良いものを選んだり頼んだりする。

33.0

non-

sup.

●あなたの糖尿病に関する悩みや不安を聴く。

31.6

non-

sup.

●糖尿病管理のことであなたを褒める。

29.0

non-

sup.

●健康維持のための行事(市民運動会やウォーキング集会など)にあなたを誘う。

27.7

non-

sup.

●最先端の治療や新薬の情報をあなたに伝える。

26.0

non-

sup.

●一緒に歩いたり、運動したりする。

25.5

non-

sup.

●糖尿病管理に関するあなたの愚痴を聴く。

23.2

non-

sup.

●時間通り正しく薬を服用できるように声をかける。

21.8

non-

sup.

●普段、あなたと一緒に食事する。

21.5

non-

sup.

●あなたが利用できる運動施設(体育館や運動場、公園など)を教える。

18.9

non-

sup.

●一緒に食事に行くと、あなたと同じものを食べる。

18.8

non-

sup.

●あなたの薬のことを考えて活動の予定をたてる。

17.9

non-

sup.

「サポーティブな支援」の項目数

5項目

a)白地の項目は「手段的サポート」、灰色地の項目は「情緒的サポート」

b)「とても必要だ」「どちらかと言うと必要だ」と回答した者を「必要」、「どちらかと言うと必要でない」「まったく必要でな

い」と回答した者を「不必要」として、回答者に占める「必要」回答の割合を算出した。

c)

sup.:サポーティブな支援と定義された項目(本調査で使用)、

non-

sup.:ノンサポーティブな支援と定義された項目(本

調査に不採用)

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東北大学大学院教育学研究科研究年報 第59集・第1号(2010年)Tab

le5医療従事者からの糖尿病特異的サポートに関するニーズ調査の結果

a

内容的側面の区分

項目

内容

必要度

(%)b

項目採択

c食事

運動

薬全般 ●

親身になってあなたに接する。

96.9

sup.

●毎日運動を続けることの大変さをわかっている。

96.9

sup.

●あなたの身体の状態をしっかりと把握する。

96.9

sup.

●あなたの治療方針について十分に説明をする。

95.9

sup.

●きちんとした食事が糖尿病管理でどれほど重要か話す。

95.9

sup.

●薬を服用しないとどうなるか、あなたが理解できるように説明する。

95.0

sup.

●適切な食事の摂り方についてアドバイスする。

94.8

sup.

●検査(血液検査や尿検査など)の結果について十分な説明をする。

93.8

sup.

●糖尿病管理の方法や目標を決めるとき、あなたの意見を聞きながら決める。

93.8

sup.

●合併症について詳しく教える。

92.8

sup.

●食事制限を守っていくことの大変さをわかっている。

92.8

sup.

●あなたを「糖尿病管理を頑張ろう」という気持ちにさせる。

92.8

sup.

●運動が糖尿病管理でどれほど重要か話す。

92.7

sup.

●糖尿病についてのどんな質問にも答える。

91.8

sup.

●薬の服用が糖尿病管理でどれほど重要か話す。

91.3

sup.

●薬がどのような作用をもっているか、わかりやすく教える。

91.3

sup.

●薬の副作用や誤った使い方についてきちんと説明する。

91.1

sup.

●糖尿病がどのように進行していく病気なのか教える。

90.7

sup.

●十分な時間をとって、あなたの診察を行う。

90.7

sup.

●糖尿病とうまく付き合っていくにはどうしたらよいか、一緒になって考える。

90.7

sup.

●あなたが信頼できる医療サービスを提供する。

90.7

sup.

●日常生活でのあなたの事情を考えながら、薬の服用に関する問題点を指摘す

る。

90.0

sup.

●どういった運動が効果的か教える。

89.6

sup.

●日常生活でのあなたの事情を考えながら、食事に関する問題点を指摘する。

87.6

sup.

●日常生活でのあなたの事情を考えながら、運動に関する問題点を指摘する。

87.6

sup.

●糖尿病管理での失敗や困ったこと、将来の不安などについてのあなたの相談

に乗る。

86.6

sup.

●最先端の治療や新薬について教える。

83.8

sup.

●あなたの気持ちを無視して一方的に話さない。

83.3

sup.

●どれくらい運動したらよいかアドバイスする。

82.5

sup.

●健康に良い食材や食品、商品をあなたに教える。

82.5

sup.

●無理なく運動を続けるにはどうすればよいかアドバイスする。

80.4

sup.

●丁寧な言葉遣いであなたに優しく接する。

78.9

sup.

●糖尿病のことで「無理をしないように」とあなたに気を配る。

78.4

sup.

●カロリー計算の仕方をあなたに教える。

76.3

sup.

●糖尿病管理のことであなたを褒める。

75.0

sup.

●毎日薬を服用しなければならない煩わしさをわかっている。

73.8

sup.

●健康に良い調理法をあなたに教える。

73.2

sup.

●薬を服用し忘れないようにするにはどうすればよいかアドバイスする。

63.8

sup.

●あなたが利用できる運動施設(体育館や運動場、公園など)を教える。

46.3

non-

sup.

●あなたが参加できる催し物(ウォーキング集会や病院主催の健康プログラム

など)を教える。

45.4

non-

sup.

「サポーティブな支援」の項目数

38項目

a)白地の項目は「手段的サポート」、灰色地の項目は「情緒的サポート」

b)「とても必要だ」「どちらかと言うと必要だ」と回答した者を「必要」、「どちらかと言うと必要でない」「まったく必要でな

い」と回答した者を「不必要」として、回答者に占める「必要」回答の割合を算出した。

c)

sup.:サポーティブな支援と定義された項目(本調査で使用)、

non-

sup.:ノンサポーティブな支援と定義された項目(本

調査に不採用)

Tab

le6同病者からの糖尿病特異的サポートに関するニーズ調査の結果

a

内容的側面の区分

項目

内容

必要度

(%)b

項目採択

c食事

運動

薬全般

●毎日運動を続けることの大変さをわかっている。

79.1

sup.

●食事制限を守っていくことの大変さをわかっている。

76.1

sup.

●自身の経験から、運動することが糖尿病管理でどれほど重要か話す。

72.7

sup.

●あなたを「糖尿病管理を頑張ろう」という気持ちにさせる。

71.6

sup.

●自分が普段どのように運動しているかあなたに教える。

71.6

sup.

●自身の経験から、糖尿病がどのように進行していく病気なのか教える。

70.1

sup.

●自身の経験から、糖尿病になって思うことをあなたに話す。

69.7

sup.

●毎日薬を服用しなければならない煩わしさをわかっている。

67.9

sup.

●自身の経験から、薬の服用が糖尿病の悪化を防ぐのにどれほど重要か話す。

67.3

sup.

●自身の経験から、合併症について詳しく教える。

66.7

sup.

●自身の経験から、たくさん食べたくなった時の対処法を教える。

66.7

sup.

●自身の経験から、きちんとした食事が糖尿病管理でどれほど重要か話す。

66.2

sup.

●自身の経験から、うまく食事制限と付き合っていくにはどうすればよいかア

ドバイスする。

66.2

sup.

●健康に良い食材や食品、商品をあなたに教える。

64.6

sup.

●あなたを「孤独でない」という気持ちにさせる。

64.6

sup.

●自分が普段どのような食事をしているかあなたに教える。

61.2

sup.

●同一の体験から、糖尿病管理についてあなたと同じように考える。

60.6

sup.

●最先端の治療や新薬について教える。

60.0

sup.

●糖尿病をもっていることをあなたがどう感じているか理解している。

59.7

sup.

●自身の経験から、無理なく運動を続けるにはどうすればよいかアドバイスす

る。

59.7

sup.

●糖尿病管理で何かあったとき、あなたの相談に乗る。

59.1

sup.

●あなたの病状を気にかける。

58.2

sup.

●自身の経験から、薬とうまく付き合っていくにはどうすればよいかアドバイ

スする。

58.2

sup.

●自分が普段どれくらい運動しているかあなたに教える。

57.6

sup.

●良い医者や良い病院についてあなたに教える。

56.7

sup.

●健康に良い調理法をあなたに教える。

56.1

sup.

●糖尿病のことで「無理をしないように」とあなたに気を配る。

55.4

sup.

●病院の中で会うと気軽に話しかけてくる。

54.5

sup.

●自分が薬の服用に関してどんな工夫をしているか教える。

53.6

sup.

●あなたの糖尿病に関する悩みや不安を聴く。

52.3

sup.

●薬の作用や副作用についてあなたに教える。

51.8

sup.

●カロリー計算のコツをあなたに教える。

50.0

non-

sup.

●糖尿病管理に関するあなたの愚痴を聴く。

40.0

non-

sup.

●あなたが利用できる運動施設(体育館や運動場、公園など)を教える。

37.9

non-

sup.

●糖尿病管理のことであなたを褒める。

36.9

non-

sup.

●あなたが参加できる催し物(市民運動会やウォーキング集会、病院主催の健康

プログラムなど)に誘う。

34.4

non-

sup.

●一緒に歩いたり運動したりする。

28.8

non-

sup.

「サポーティブな支援」の項目数

31項目

a)白地の項目は「手段的サポート」、灰色地の項目は「情緒的サポート」

b)「とても必要だ」「どちらかと言うと必要だ」と回答した者を「必要」、「どちらかと言うと必要でない」「まったく必要でな

い」と回答した者を「不必要」として、回答者に占める「必要」回答の割合を算出した。

c)

sup.:サポーティブな支援と定義された項目(本調査で使用)、

non-

sup.:ノンサポーティブな支援と定義された項目(本

調査に不採用)

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糖尿病者用サポート環境尺度の開発

404名のデータのうち、特に記入もれの多かった11名(Ver. A-3名,Ver. B-8名)のデータ

をのぞき、最終的に393名のデータを分析に使用した。分析に使用したデータの中にも記入もれや

記入ミスのあるデータが存在したが、個別の欠損値の処理はおこなわず、適宜有効データのみを用

いて分析をおこなった。対象者の属性を Table 7に示す。

Table 7 本調査の分析対象者の属性(N=393)

属性(平均±SD) N(%) 属性(平均±SD) N(%) 属性(平均±SD) N(%) 属性(平均±SD) N(%)

【年齢】(64.28±9.81) 【配偶者】 いる 312(79.4%)【罹病期間】(181.58±111.44)a 【病型】 1型 19(4.8%)

20代 1(0.3%) いない 81(20.6%) 5年未満 46(11.7%) 2型 249(63.4%)

30代 7(1.8%) 5~10年 54(13.7%) その他 4(1.0%)

40代 24(6.1%) 【同居人数】(2.53±1.04) 10~15年 91(23.2%) わからない 79(20.1%)

50代 79(20.1%) 1人暮らし 47(12.0%) 15~20年 54(13.7%) 無回答 42(10.7%)

60代 146(37.2%) 2人暮らし 173(44.0%) 20~25年 71(18.1%)

70代 121(30.8%) 3人暮らし 108(27.5%) 25年以上 60(15.3%)【HbA1c 値】(6.92±0.98)

80代 15(3.8%) 4人暮らし 44(11.2%) 無回答 17(4.3%)

【性別】 男性 307(78.1%) 5人暮らし 12(3.1%) 【3大合併症】

女性 86(21.9%) 6人暮らし 4(1.0%) 【薬物治療の方法】 網膜症 49(12.5%)

【仕事】 正職員 140(35.6%) 7人暮らし 1(0.3%) 飲み薬 200(50.9%) 腎症 34(8.7%)

バイト・パート 22(5.6%) 無回答 4(1.0%) インスリン注射 90(22.9%) 神経障害 59(15.0%)

無職・主婦 166(42.2%) 飲み薬&注射 50(12.7%)

その他 62(15.8%)【主な食事提供者】 薬物治療なし 48(12.2%)【3大合併症数】

無回答 3(0.8%) 自分 118(30.0%) 無回答 5(1.3%) なし 262(66.7%)

【家族成員の糖尿歴】 配偶者 234(59.5%) 1つ 70(17.8%)

いる 226(57.5%) その他 18(4.6%) 2つ 24(6.1%)

いない 163(41.5%) 無回答 23(5.9%) 3つ 8(2.0%)

無回答 4(1.0%) 無回答 29(7.4%)

a)単位は月

また初回調査時に再調査への協力を求め、約2週間の間隔で、同意の得られた73名を対象に郵送

法による再調査を実施した。その結果、59名から回答があった(回収率80.3%)。回収したデータ

のうち、記入もれのあったデータと、友人版で外れ値を示していた1名のデータ、医療従事者版で

主治医の変更という大きな変化のあった1名のデータを分析から除いた。最終的に家族版で24名、

友人版で23名、同病者版で34名、医療従事者版で14名のデータが分析対象となった。

2.3.2.調査内容

フェイスシート

年齢、性別、仕事の有無、配偶者の有無、同居人数、主な食事の提供者、病型、罹病期間、現在

の薬物治療の方法、合併症の有無、最近の HbA1c値、家族成員の糖尿病歴について自己記入式で

回答を求めた。

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東北大学大学院教育学研究科研究年報 第59集・第1号(2010年)

糖尿病者用サポート環境尺度(Support Environment scale for Diabetics; SED)

予備調査で「サポーティブな支援」と定義された項目を用いて、サポート源ごとに糖尿病者用サ

ポート環境尺度(Support Environment scale for Diabetics ; SED)の原版を作成した(家族版24

項目、友人版5項目、医療従事者版38項目、同病者版31項目)。「以下に示す行動や態度は、あなた

のご家族(“ご友人”“医療従事者”“糖尿病のお知り合い”)の行動や態度にどれくらい当てはまり

ますか?あなたから見て、以下の行動や態度が、ご家族(“ご友人”“医療従事者”“糖尿病のお知

り合い”)の行動や態度に当てはまっているかどうかをお答えください。」という教示を用いて、「と

てもそうだ(4点)」「どちらかと言うとそうだ(3点)」「どちらかと言うとそうでない(2点)」「ま

ったくそうでない(1点)」の4件法で回答を求めた。

$$なお予備調査と同様、各サポート源に関する説明として、友人については「(ただし、糖尿病に

$$$$$$$かかっている友人は除きます)」という教示、医療従事者については「あなたと関わりのある医療

$$$$$$$$$$$$$$従事者とは、今現在、あなたの糖尿病治療にたずさわっている医師や看護師、栄養士などの医療の

$$$$専門家のことです。」という教示、同病者については「糖尿病の知り合いとは、糖尿病をもってい

$$$ $$$$$$$る知り合い(ただし、糖尿病のご家族は除いてください)のことで、近くにいる人でも遠くにいる

$$$人でもかまいません。また、インターネットや手紙などを通して知り合った人など、直接会ったこ

$$$$$$とのない人でも結構です。」という教示をそれぞれ付記した。

妥当性尺度

妥当性を検証するために、Zimet et al.が作成したソーシャル・サポート尺度(Multidimen-

sional Scale of Perceived Social Support; MSPSS)の日本語版(岩佐・権藤・増井・稲垣・河合

・大塚・小川・ 山・藺牟田・鈴木,2007)を実施した。日本語版MSPSSは、一般的サポート

を測定するための全12項目の尺度で、「家族のサポート」「大切な人のサポート」「友人のサポート」

の3つの下位尺度からなる。中高年者を対象とした調査により 係数は尺度全体で0.91、各下位

因子でそれぞれ0.94,0.88,0.90であり、住居形態・婚姻状況・親友の人数・親子関係満足度・夫

婦関係満足度・GHQとの関連が確認されている。本研究では「全くそう思わない(1点)」~「非

常にそう思う(7点)」の7件法で回答を求めた。

さらに医療従事者と患者の関係性を検討する尺度として、深井・新見・大倉(2000)の対象-看

護者関係評価尺度(Client-Nurse Relationship Scale ; CNRS)を実施した。CNRSは患者側から

看護者を評価する全24項目の心理社会的尺度であり、「人間的信頼感」「威圧感」「専門性への信頼

感」の3因子から構成される。全24項目の 係数は0.88であり、妥当性については看護学生を対

象とした調査を通して、各下位因子で「もっとも好ましくない看護者」の評価よりも「もっとも理

想とする看護者」の評価が有意に高かったという結果が得られている。CNRSはもともと患者と

看護者との関係の評価を目的とした尺度であるが、患者-看護者間に限らず、患者-医療従事者間

にも汎用可能な尺度と考えられたため、教示を「あなたと関係のある医療従事者に対して、以下の

ことはどれくらい当てはまりますか?」として用いた。本研究では「全然そうでない(0点)」~

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糖尿病者用サポート環境尺度の開発

「おおいにそうである(3点)」の4件法で回答を求めた。

本研究における SEDと妥当性尺度の間の仮説は以下の通りである。

食事に代表される糖尿病の管理は日常生活に密着しており、家庭における実践が不可欠である。

家族との基本的な支援関係の構造は、こうした日常的に生じる糖尿病に特異な問題にも強く反映し

ていると思われるため、家族からの一般的サポートの量と糖尿病特異的サポートの量には中程度の

正の関連が予想される。

一方、同じ病気を持っていない友人からの糖尿病特異的サポートに関しては、成人糖尿病者のニー

ズが低いことが報告されている(Connell et al., 1994;東海林・安保,2009)。本人が望まない支

援をあえて友人が提供するとは考えにくいことから、必ずしも基本的な支援関係の強さが糖尿病特

異的サポートの量に関連するとは限らないと思われる。したがって、友人からの一般的サポートの

量と糖尿病特異的サポートの量には正の関連がみられるが、関連の強さは弱いと予想される。

医療従事者からのサポートについては、サポーティブな支援をより多く受けている方が、医療従

事者に好感を抱きやすいと思われる。また相互作用的に、患者-医療従事者間の関係の良し悪しは、

医療従事者から提供される支援を糖尿病者が好意的に受け取るか、嫌悪的に受け取るかに強く影響

すると思われる。したがって、患者-医療従事者間の良好な関係性と医療従事者からのサポートの

量には中程度の正の関連が予想される。

糖尿病者と同病者の関係は、友人どうしであることも少なくないと思われる。そこで、同病者か

らの特異的サポートの妥当性については、友人関係を基礎として考えることにする。同じ病気を持

っていない友人からの一般的サポートと特異的サポートとの関連については上述の通りであるが、

同じ病気を持った友人との間では、セルフ・ヘルプ・グループで見られるような一種の共感性が生

じる(織田ら,2007)と考えられ、同病者からの一般的サポートと特異的サポートの関連のしかた

は、同病者でない友人の場合と異なると予想される。同病の友人に関しては、同病であることの共

感性や情報交換へのニーズが高いために、基本的な支援関係が強い方が疾患の話題も出しやすく特

異的な支援も多いと考えられる。したがって、同じ病気をもつ友人との間では、一般的サポートの

量と糖尿病特異的サポートの量には弱から中程度の正の関連が予想される。

本研究では、以上の関連がみられるかどうかを検証する。なお同病者については、同病者の知り

合いの中で最も信頼できる人について、選択式で回答してもらった(選択肢は、「親類」「身近な友

人」「職場の知り合い」「患者会の知り合い」「会ったことのない知り合い(インターネット上の友

人など)」「その他」「信頼できる人はいない」の7つ)。

3.結 果

3.1.糖尿病者用サポート環境尺度(SED)の作成

尺度構成は以下の手順で行った。はじめに回答頻度の極端に少ない項目と回答傾向に偏り(天井

効果・床効果)がみられた項目を除外し、続いて因子分析(重み付けのない最小2乗法・直接オブ

リミン回転)により因子構造を確認した。

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東北大学大学院教育学研究科研究年報 第59集・第1号(2010年)

3.1.1.家族版 SED の構成

はじめに24項目のうち天井効果のみられた4項目(「薬が糖尿病の悪化を防ぐのにどれほど重要

かわかっている」、「運動することがあなたにとってどれほど重要かわかっている」、「普段、あなた

と一緒に食事する」、「野菜、きのこ類、海藻類など健康に良い食べ物をすすめる」)を以降の分析

から除外した。

残りの20項目すべてに回答していた128名のデータを用いて、重みづけのない最小2乗法による

因子分析を行った。固有値の変化は9.75,1.41,1.07,0.94,0.78,…、であり、1因子構造もし

くは2因子構造が想定され、1因子構造の可能性が高いと思われたが、1因子を想定すると運動に

関するサポートについての項目がすべて除外されてしまうため、内容的妥当性を確保するために2

因子構造を想定した。再度、重みづけのない最小2乗法・直接オブリミン回転による因子分析を行

い、どちらの因子にも十分な因子負荷量(.40以上)を示さなかった項目と、両方の因子に高い因

子負荷量(両方に.30以上)を示した項目を除外し、すべての項目がいずれか1つの因子に高い負

荷量を示すようになるまで同様の因子分析を繰り返した。その結果、全11項目の家族版 SEDが作

成された。最終的な因子パターンと因子間相関を Table 8に示す。なお、回転前の2因子で11項

目の全分散を説明する割合は59.92%であった。

Table 8 家族版 SED の因子分析結果(N=128,重み付けのない最小2乗法・直接オブリミン回転)

項 目 内 容因 子

平均(SD)Ⅰ Ⅱ

第1因子:「食事・薬物サポート」因子(平均 22.57,SD 5.26)

あなたの病状を考えて食事を作る。 .772 -.133 3.01(0.81)

あなたが外出するとき、必要な薬や器具を持ったか確認する。 .706 .178 2.47(1.04)

時間通り正しく薬を服用できるように声をかける。 .686 .077 2.65(1.01)

あなたの糖尿病管理がうまくいっているかどうかを気にする。 .674 .215 2.95(0.86)

あなたの糖尿病管理のことを考えて家族の予定をたてる。 .643 .211 2.44(0.88)

控えた方がよい食べ物や飲み物であなたを誘惑しないようにする。 .622 .063 3.00(0.85)

糖尿病管理でのあなたの努力を認める。 .618 -.147 2.94(0.65)

きちんとした食事があなたにとってどれほど重要かわかっている。 .569 .247 3.12(0.84)

第2因子:「運動サポート」因子(平均 8.38,SD 1.98)

スポーツ活動に参加することを勧めたり、励ましたりする。 -.044 .794 2.63(0.87)

毎日運動を続けることの大変さをわかっている。 .123 .601 3.22(0.75)

一緒にいるとき、徒歩で移動したり階段を使おうとする。 .059 .550 2.52(0.87)

尺度得点(平均 30.95,SD 6.52) 因子間相関 .513

第一因子は「あなたの病状を考えて食事を作る」「あなたが外出するとき、必要な薬や器具を持

ったか確認する」など、食事や薬物の使用についてのサポートに関する項目から構成されており、

「食事・薬物サポート」因子と命名した。第二因子は「スポーツ活動に参加することを勧めたり、

励ましたりする」「毎日運動を続けることの大変さをわかっている」など、運動についてのサポー

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糖尿病者用サポート環境尺度の開発

トに関する項目で構成されており、「運動サポート」因子と命名した。

尺度の信頼性について、 係数は尺度全体で.89、「食事・薬物サポート」が.89、「運動サポー

ト」が.72であった。また再検査信頼性(n=24)は尺度全体で.80、「食事・薬物サポート」で.80、

「運動サポート」で.75、であった。

3.1.2.友人版 SED の構成

はじめに天井効果のみられた1項目(「糖尿病だからといって見下したり馬鹿にしたりせずに、

あなたと付き合う」)を除外した。

残りの4項目すべてに回答していた142名のデータを用いて、重みづけのない最小2乗法による

因子分析を行った。固有値の変化は2.51,0.67,0.56,0.27であり、1因子構造が妥当であると考

えられた。すべての項目で十分な因子負荷量(.40以上)が得られたため、以上をもって全4項目

の友人版 SEDとした。寄与率と共通性を Table 9に示す。なお、1因子で4項目の全分散を説明

する割合は52.18%であった。

尺度の信頼性について、 係数は.80であった。また再検査信頼性(n=23)は.75であった。

Table 9 友人版 SED の因子分析結果(N=142,重み付けのない最小2乗法・直接オブリミン回転)

項 目 内 容 因子負荷量 共通性 平均(SD)

きちんとした食事があなたにとってどれほど重要かわかっている。 .921 .849 2.77(0.80)

運動することがあなたにとってどれほど重要かわかっている。 .726 .527 2.81(0.76)

食事制限を守っていくことの大変さをわかっている。 .658 .433 2.58(0.81)

あなたの体調を気づかう。 .528 .279 2.67(0.79)

尺度得点(平均 10.83,SD 2.49) 因子寄与 2.09 寄与率 52.18

3.1.3.医療従事者版 SED の構成

はじめに天井効果のみられた7項目(「あなたの身体の状態をしっかりと把握する」、「毎日運動

を続けることの大変さをわかっている」、「あなたを「糖尿病管理を頑張ろう」という気持ちにさせ

る」、「糖尿病についてのどんな質問にも答える」、「検査(血液検査や尿検査など)の結果について

十分な説明をする」、「丁寧な言葉遣いであなたに優しく接する」、「あなたが信頼できる医療サービ

スを提供する」)を除外した。

残りの31項目すべてに回答していた121名のデータを用いて、重みづけのない最小2乗法による

因子分析を行った。固有値の変化は15.62,1.81,1.59,1.25,1.02,…であり、1因子構造が妥

当であると考えられた。また、すべての項目で十分な因子負荷量(.40以上)が得られた。1因子

に31項目すべてが含まれたが、実施の簡便性を考慮して、因子負荷量の高い方から順に10項目を選

択し、医療従事者版 SEDとした。寄与率と共通性を Table 10に示す。なお、1因子で10項目の

全分散を説明する割合は61.94%であった。

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東北大学大学院教育学研究科研究年報 第59集・第1号(2010年)

尺度の信頼性について、10項目の 係数は.94であった。また再検査信頼性(n=14)は.89で

あった。

Table 10 医療従事者版 SED の因子分析結果(N=121,重み付けのない最小2乗法・直接オブリミン回転)

項 目 内 容 因子負荷量 共通性 平均(SD)

どれくらい運動したらよいかアドバイスする。 .847 .717 2.82(0.73)

薬の服用が糖尿病管理でどれほど重要か話す。 .814 .662 3.07(0.77)

薬の副作用や誤った使い方についてきちんと説明する。 .813 .661 2.80(0.82)

どういった運動が効果的か教える。 .794 .631 2.96(0.77)

薬を服用しないとどうなるか、あなたが理解できるように説明する。 .785 .616 3.01(0.78)

糖尿病がどのように進行していく病気なのか教える。 .778 .606 3.14(0.72)

糖尿病管理の方法や目標を決めるとき、あなたの意見を聞きながら決める。 .775 .601 3.07(0.72)

無理なく運動を続けるにはどうすればよいかアドバイスする。 .770 .593 2.92(0.78)

きちんとした食事が糖尿病管理でどれほど重要か話す。 .753 .567 3.26(0.72)

あなたの治療方針について十分に説明をする。 .735 .541 3.24(0.70)

尺度得点(平均 30.29,SD 6.09) 因子寄与 6.19 寄与率 61.94

3.1.4.同病者版 SED の構成

はじめに項目の回答率が非常に低かった1項目(「病院の中で会うと気軽に話しかけてくる」回

答率66.7%)を除外した。残りの30項目に関して、回答傾向の偏りはみられなかった。

残りの30項目すべてに回答していた176名のデータを用いて、重みづけのない最小2乗法による

因子分析を行った。固有値の変化は15.79,1.40,1.21,1.15,0.95,…であり、1因子構造が妥

当であると考えられた。また、すべての項目で十分な因子負荷量(.40以上)が得られた。1因子

に30項目すべてが含まれたが、今後の研究における実施の簡便性を考慮して、因子負荷量の高い方

から順に10項目を選択し、同病者版 SEDとした。寄与率と共通性を Table 11に示す。なお、1

Table 11 同病者版 SED の因子分析結果(重み付けのない最小2乗法・直接オブリミン回転)

項 目 内 容 因子負荷量 共通性 平均(SD)

自身の経験から、うまく食事制限と付き合っていくにはどうすればよいかアドバイスする。 .820 .672 2.47(0.83)

あなたを「糖尿病管理を頑張ろう」という気持ちにさせる。 .813 .660 2.65(0.86)

自分が普段どのような食事をしているかあなたに教える。 .811 .658 2.51(0.82)

糖尿病管理で何かあったとき、あなたの相談に乗る。 .798 .637 2.53(0.85)

自身の経験から、薬の服用が糖尿病の悪化を防ぐのにどれほど重要か話す。 .789 .623 2.53(0.87)

健康に良い食材や食品、商品をあなたに教える。 .761 .579 2.59(0.86)

自身の経験から、無理なく運動を続けるにはどうすればよいかアドバイスする。 .759 .576 2.55(0.81)

薬の作用や副作用についてあなたに教える。 .755 .571 2.27(0.77)

自身の経験から、きちんとした食事が糖尿病管理でどれほど重要か話す。 .740 .548 2.78(0.86)

自身の経験から、糖尿病がどのように進行していく病気なのか教える。 .725 .525 2.53(0.89)

尺度得点(平均 25.41,SD 6.77) 因子寄与 6.05 寄与率 60.50

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糖尿病者用サポート環境尺度の開発

因子で10項目の全分散を説明する割合は60.50%であった。

尺度の信頼性について、10項目の 係数は.94であった。また再検査信頼性(n=34)は.74で

あった。

3.2.SED と妥当性尺度との関連

SEDと妥当性尺度の関連の検討に先立って、MSPSSおよび CNRSの因子構造を確認したとこ

ろ(重み付けのない最小2乗法・直接オブリミン回転)、MSPSSにおいて、3因子構造ではなく

「家族のサポート」(7項目、 =.95)と「友人のサポート」(5項目、 =.90)の2因子構造が

みられ、「大切な人のサポート」の項目がそれぞれの因子に分かれた。なお、回転前の2因子で12

項目の全分散を説明する割合は74.95%であった。また、CNRSでも3因子構造ではなく「信頼感」

(15項目、 =.95)と「威圧感」(9項目、 =.86)の2因子構造がみられ、「人間的信頼感」と

「専門性への信頼感」が第一因子にまとまった。なお、回転前の2因子で24項目の全分散を説明す

る割合は62.79%であった。

先行研究と因子構造が異なった原因については、対象となったサンプルの違いや、質問紙の構成

の仕方などが考えられる。ただし再分析により抽出された因子と元々の因子の数は違うものの、意

味的には共通する部分が多く、内的整合性も高かった。そこで、より本研究のデータに適した因子

構造を採用することとし、再分析の結果をもとに以降の分析を行うこととした。

なお相関係数の算出には、SED各版の因子分析に用いたデータのうち、各版の得点とMSPSS

Table 12 SED と妥当性尺度との相関係数

家族版 SED (N=100)

食事・薬物サポート 運動サポート 尺度全体

友人版 SED(N=115)

医療従事者版 SED

(N=101)

同病者版SED

(N=95)

SEDの平均(SD) 22.03(5.30) 8.35(1.94) 30.38(6.46) 10.66(2.44) 30.28(6.14) 25.47(6.27)

一般的サポート(MSPSS)

家族の一般的サポート .52** .37** .54** .12 .17

家族の一般的サポート平均(SD) 39.72(7.20) 39.72(7.20) 39.72(7.20) 38.81(7.65) 39.17(8.14)

友人の一般的サポート .14 .12 .15 .23* .54**

友人の一般的サポート平均(SD) 24.08(6.37) 24.08(6.37) 24.08(6.37) 23.88(5.81) 24.32(5.90)

患者-医療従事者関係(CNRS)

信頼感 .61**

信頼感の平均(SD) 33.77(7.42)

威圧感 -.02

威圧感の平均(SD) 21.43(4.07)

*p .05 **p .01

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東北大学大学院教育学研究科研究年報 第59集・第1号(2010年)

あるいは CNRSのすべての下位尺度得点が揃っているデータを用いた。

MSPSSおよび CNRSと、SEDとの関連を検討した(Table 12)。その結果、家族版 SEDと家

族からの一般的サポートの間に中程度の正の相関がみられた(食事・薬物サポート.52,運動サポー

ト.37,尺度全体.54)。

また、友人版 SEDと友人からの一般的サポートの間に、弱い正の相関がみられた(.23)。

さらに、医療従事者版 SEDと CNRSでは、信頼感との間に強めの正の相関がみられた(.61)。

Table 13 最も信頼できる同病者の知り合いに関する回答頻度

信頼できる同病者との関係 N (%)

親戚 28 (15.9%)

身近な友人 61 (34.7%)

職場の知り合い 57 (32.4%)

患者会の知り合い 3 (1.7%)

会ったことのない知り合い 0 (0.0%)

その他 5 (2.8%)

信頼できる人はいない 15 (8.5%)

無回答 7 (4.0%)

合計 176 (100.0%)

同病者版 SEDに関する分析には、「同病者

の中で最も信頼できる人は誰ですか?」という

質問に、「身近な友人」あるいは「職場の知り合

い」「患者会の知り合い」と回答した者のデー

タを用いた(回答者数は Table 13を参照)。

職場の知り合いと患者会の知り合いを含めた理

由は、それらが友人関係(あるいは、それに準

じる関係)である可能性が高いと思われたため

である。分析の結果、同病者版 SEDと友人の

一般的サポートの間に、中程度の正の相関がみ

られた(.54)。

以上より、SEDと妥当性尺度との間には、

ほぼ予想した通りの関連がみられた。

3.3.属性の違いによる糖尿病特異的サポートの差

対象者の基本属性の違いにより、SEDに差がみられるか検討した。

年齢(40代以下、50代、60代、70代以上)、同居人数(一人暮らし、二人、三人、四人以上)、罹

病期間(5年未満、5~10年、10~15年、15~20年、20~25年、25~30年、30年以上)、現在の薬

物治療の方法(薬なし、飲み薬のみ、インスリン注射のみ、飲み薬とインスリン注射)について、

属性を独立変数、SEDを従属変数として一元配置分散分析を行った。また、性別(男性、女性)、

仕事の有無(有職、無職)、配偶者の有無(いる、いない)、主な食事の提供者(自分、自分以外)、

合併症の有無(あり、なし)、HbA1c値(7%未満、7%以上)、家族の糖尿病歴(血縁関係のあ

る家族に糖尿病者がいる、いない)について、属性を独立変数、SEDを従属変数として対応のな

い t検定を行った。なお病型については、1型の人数が少なく、分析を行えるデータ数に満たなか

ったため分析を行わなかった。

さらに補足的に、家庭内役割として女性の方が家事を担うことが多いと予想されることから、性

別と主な食事提供者に関して x2検定を行った。

分析の結果、年齢、性別、配偶者の有無、主な食事の提供者において有意な差がみられた。それ

ぞれの結果を以下に記す。

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糖尿病者用サポート環境尺度の開発

3.3.1.年齢と糖尿病特異的サポートの関係

結果を Table 14に示す。家族版 SEDの「食事・薬物サポート」と、同病者版 SEDにおいて、

年代による差がみられた(食事・薬物 F(3,124)=2.87,p .05;同病者 SED F(3,172)=2.99,

p .05)。Tukeyの HSD法による多重比較の結果、家族からの「食事・薬物サポート」は40代以

下よりも70代以上の方が多く(p .05)、同病者からのサポートは50代よりも70代以上の方が多か

った(p .05)。

Table 14 SED への年齢の影響に関する一元配置分散分析の結果

40代以下 50代 60代 70代以上F 値

多重比較の結果(Tukey の HSD 法)N 平均 SD N 平均 SD N 平均 SD N 平均 SD

家族版 SED

食事・薬物サポート 16 19.8 5.2 24 21.5 5.3 37 22.8 4.5 51 23.8 5.5 2.87* 40代以下 70代以上

同病者版 SED 10 25.5 6.6 40 22.9 6.8 65 25.6 6.4 61 26.9 6.9 2.99* 50代 70代以上

*p .05

3.3.2.性別および主な食事提供者と糖尿病特異的サポートの関係

結果を Table 15, Table 16に示す。性別と食事提供者に関しては、ほぼ同様の結果が得られ、

女性あるいは食事を主に提供している人の方が家族からの食事・薬物サポートが少なく、友人や医

Table 15 SED への性別の影響に関する t 検定の結果

女性 男性t 値

N 平均 SD N 平均 SD

家族版 SED

食事・薬物サポート 28 20.6 5.92 100 23.1 4.96 2.27*

友人版 SED 31 11.8 2.62 111 10.6 2.4 -2.49*

医療従事者版 SED 21 33.2 5.42 100 29.7 6.06 -2.49*

*p .05

Table 16 SED への主な食事提供者の影響に関する t 検定の結果

自分 自分以外t 値

N 平均 SD N 平均 SD

家族版 SED

食事・薬物サポート 26 20.8 5.91 96 23.2 4.92 -2.17*

友人版 SED 36 11.6 2.41 102 10.7 2.45 1.97

医療従事者版 SED 33 32.6 5.01 81 29.1 6.33 2.77*

p .10 *p .05 **p .01

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東北大学大学院教育学研究科研究年報 第59集・第1号(2010年)

療従事者からのサポートが多かった(〔性別〕食事・薬物 t(126)=2.27,p .05;友人 SED t(140)

=2.42,p .05;医療従事者 SED t(119)=2.49,p .05〔食事提供者〕食事・薬物 t(120)=2.

17,p .05;友人 SED t(136)=1.97,p .10;医療従事者 SED t(112)=2.77,p .01)。

Table 17 性別と主な食事提供者に関するクロス集計表

性別

主な食事提供者 女性 男性 計

自分 75(20.3%) 43(11.6%) 118(31.9%)

自分以外 7(1.9%) 245(66.2%) 252(68.1%)

計 82(22.2%) 288(77.8%) 370(100.0%)

Fisherの正確確率 p .001

性別と食事提供者との関連

についてクロス集計表を確認

したところ、極端に頻度の少

ないセル(5%以下)がみら

れたため、Fisherの正確確

率検定により分布の偏りを検

討した。その結果、女性の方

が主たる食事提供者である場

合が多いことが示され(p .001;Table 17)、家庭において女性が食事に関する家庭内役割を担

う可能性が高いことが確認された。

4.考 察

4.1.SED の因子構造について

本研究では、6つの視点から糖尿病者の SSを定義し、糖尿病者が家族、友人、医療従事者、同

病者のそれぞれから受けている糖尿病特異的サポートを測定しうる尺度の作成を試みた。その結果、

家族版 SEDはサポートの内容的側面を反映した「食事・薬物サポート」因子、「運動サポート」

因子の2因子構造、友人版 SED、医療従事者版 SED、同病者版 SEDにおいては単因子構造とな

った。

SEDの因子構造は、サポートの機能的側面と内容的側面の2側面をそのまま反映した多面的構

造とはならなかった。多面的構造をもった既存尺度には Diabetes Family Behavior Checklist

(Schafer et al., 1986), Chronic Illness Resource Survey(Glasgow, Strycker, Toobert & Eakin,

2000; Glasgow, Toobert, Barrera & Strycker, 2005), Diabetes Social Support Questionnaire(La

Greca & Bearman, 2002; Bearman & La Greca, 2002)などがあるが、これらの尺度における多

面性は統計的分析の結果のもとに行われているわけではない。本研究の因子分析の結果は、糖尿病

の特異的サポートが、当事者の目から見るとそれほど複雑な因子構造を持たず、ある程度、単次元

的な視点で捉えられるものである可能性を示唆している。

また、家族 SEDの因子構造に関してであるが、固有値の変化をみると1因子構造による解釈も

少なからず考えられた。しかし、単因子構造を想定することで運動に関するサポートについての項

目が削除され、結果的に尺度としての内容的妥当性を欠くことは、因子構造の議論よりもより深刻

な問題であると考えられる。そのため本研究では、内容的妥当性の確保のために、あえて2因子構

造を採用した。

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糖尿病者用サポート環境尺度の開発

4.2.糖尿病でない友人からのサポートについて

友人版 SEDでは、予備調査において大幅な項目の削除が行われた。これには成人糖尿病者が友

人の特異的サポートをあまり求めていないことが関連していると思われる。本研究で予備的に行っ

たニーズ調査の結果、多くの成人糖尿病者が、友人からの特異的サポートを必要ないと認識してい

ることが明らかになった。Connell et al.(1994)は、多くの成人糖尿病者は、友人から必要なだ

けの糖尿病特異的サポートを得られていると感じていると指摘しているが、本研究の結果をあわせ

て考えると、成人糖尿病者においては、友人に対する特異的サポートのニーズはそれほど高くなく、

しかもそれは十分に満たされている可能性が高いことが推察される。

4.3.SED の信頼性について

SEDの信頼性について、各尺度の 係数はそれぞれ、家族版 SEDが.89(食事・薬物 .89、運

動 .72)、友人版 SEDが.80、医療従事者版 SEDが.94、同病者版 SEDが.94であった。家族版

SEDの「運動サポート」下位尺度の 係数がやや低めであったが、3項目という項目数の少なさ

を考慮すると十分な値と思われ、おおむね満足できる値を示していた。

また再テスト信頼性は、家族版 SEDが.80(食事・薬物 .80、運動 .75)、友人版 SEDが.75、

医療従事者版 SEDが.89、同病者版 SEDが.74であり、いずれも高い値が確認された。以上のこ

とから、SEDは尺度としての十分な信頼性を有するものであるといえる。

4.4.SED の妥当性

本研究では、妥当性の検証のために、家族版・友人版・同病者版 SEDと一般的サポートの関連

と、医療従事者版 SEDと患者-医療従事者の関係性の関連について検討した。その結果、SEDと

妥当性尺度との間に、ほぼ予想した通りの関連がみられ、SEDの構成概念妥当性が確認された。

家族版 SEDと家族からの一般的サポートの間には中程度の正の相関関係がみられた(食事・薬

物 .52;運動 .37;尺度全体 .54)。運動に関するサポートの方が食事や服薬・注射に関するサ

ポートに比べて関連が弱かったのは、日常生活において、食事場面などに比べて運動場面の方が特

殊性が高く、一般的サポートが得られていても運動に関する特殊なサポートが得られない場合もあ

るためと思われる。

友人版 SEDと友人からの一般的サポートの間には弱い正の相関関係がみられた(.23)。友人か

らの一般的サポートと特異的サポートの間に弱い関連しかみられない背景には、上述した友人の特

異的サポートに対するニーズの低さがあると思われる。つまり、糖尿病でない友人には、あまり特

異的サポートを求めないために、一般的サポートが十分に得られる親密な友人関係であっても、必

ずしも特異的サポートが友人から提供されているとは限らないと思われる。

医療従事者版 SEDでは、医療従事者への信頼感との間に強めの正の関連がみられ(.61)、特異

的サポートを多く受けている者ほど、医療従事者を信頼していることが示された。一方、医療従事

者に対する威圧感との間には関連はみられず、医療従事者の威圧的な印象がすなわちサポートの欠

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東北大学大学院教育学研究科研究年報 第59集・第1号(2010年)

如を意味するわけではないことが明らかとなった。

同病者版 SEDと友人からの一般的サポートの間には、中程度の正の相関関係がみられた(.54)。

友人版 SEDと同病者版 SEDの項目が同一でないため、両者の特異的サポートを単純に比較する

ことは難しいが、友人版 SEDで一般的サポートとの関連が弱かった一方、同病者版 SEDで中程

度の関連がみられたことは、たとえ同じ友人関係であっても求めるものが異なる可能性を示唆して

いる。同病者どうしのかかわりを基盤とするセルフ・ヘルプ・グループでは、情報の共有や意欲の

高まり、同病者どうしの共感などの独自の機能があるとされるが(服部・鈴木・伊藤,1996;織田

ら,2007)、個々の交流もそれと似た機能をもっている可能性がある。

4.5.SED と基本属性との関係について

属性との関連がみられた年齢、性別および主な食事提供者に関して考察を行う。

年齢により SEDに差がみられ、家族からの食事・薬物サポートは、40代以下よりも70代以上の

方が多く(p .05)、同病者からのサポートは50代よりも70代以上の方が多かった(p .05)。糖

尿病は自己管理が基本であるが(日本糖尿病学会,2004)、年齢が上がるにつれてその管理を一人

で行うのは難しくなり、家族のサポートが必要となる場合が多い(中村,2008)。そのため、高齢

になるにつれてインスリン注射や服薬、食事管理などにおいて、家族のサポートが多くなるのは自

然なことと思われる。また、ニーズ調査の結果からも高齢者の方がサポート・ニーズが高いことが

示されている(東海林・安保,2009)。おそらく、ごく自然に、年齢が増加するにつれて家族がサ

ポートを提供する量と、当事者が家族に求めるサポートの量が増加してくると考えられる。

また高齢になるにつれて同病者サポートの量が多くなることについては、同病者間交流の機会が

増加することが関連していると思われる。単純に高齢者ほど糖尿病罹患率が高いこと(厚生労働省,

2008)のほか、高齢になるにつれて仕事をリタイアする人が増加し(東海林・安保,2009)、時間

的余裕からセルフ・ヘルプ・グループなどに参加する場合や、年齢増加とともに罹患年数も増加し、

同病者のネットワークが広がることで結果的に得られるサポートが増加することなどが考えられ

る。

さらに性別や、食事提供者が自分かどうかによって SEDに差がみられ、女性あるいは食事を主

に提供している人の方が、家族からのサポートが少なく、友人と医療従事者からのサポートが多か

った。補足的な分析から、家庭において女性が食事を提供する場合が多いことが明らかとなったが、

本研究の結果はこの家庭内役割のあり方を反映したと思われる。女性の方が家族サポートを得られ

ていなかったのは、自らが食事を提供しているために相対的に男性よりもサポートの量が少なくな

ったためと考えられ、医療従事者サポートに関してそれと反対の結果が得られたのは、食事提供者

であることが多い女性の方が、栄養指導などのサポートをより多く受けるためと思われる。また、

一般に SS研究では、男性よりも女性の方が SSを知覚しやすいとされるが(和気,2007)、特異

的サポートに関する本研究においても、友人サポートでそれと同様の結果がみられたといえる。

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糖尿病者用サポート環境尺度の開発

5.まとめと今後の課題

本研究では、6つの視点から糖尿病者の SSを定義し、糖尿病者が家族、友人、医療従事者、同

病者のそれぞれから受けている糖尿病特異的サポートを測定するための尺度(Support Environ-

ment scale for Diabetics ; SED)を開発した。

SEDで測定される糖尿病特異的サポートは、サポーティブか否かについて集団の反応傾向をも

とに操作的に定義しているため、個別のアセスメントよりも比較的規模の大きい調査研究に向いた

尺度である。今後は、SEDで測定される糖尿病特異的サポートが、糖尿病者の精神健康や血糖コ

ントロールにどのように関連しているのかについて検討していく必要がある。

〈謝辞〉

調査を快諾いただきました協力者の皆様に心より感謝申し上げます。また本研究の実施にご協力

いただきました朝日生命成人病研究所丸の内病院のスタッフの皆様、ならびに調査の計画から実施

まで多大なご支援とご協力をいただきました朝日生命成人病研究所丸の内病院 看護師長 杉田和枝

先生に厚く御礼申し上げます。

〈参考文献〉

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〈註〉

(i) 内容的側面への着目があるかどうかに関しては、尺度作成過程でそれがとりあげられているか、あるいは

下位尺度の項目内容がそれに該当するかどうかにより判断した。

(ii) 糖尿病特異的サポートの代表的なものである「自己血糖測定」に関するサポートは含めないこととした。

その理由は、2型糖尿病者では自己血糖測定を課されていない者も多いためである。

(iii) 予備調査の結果の一部は、東海林・安保(2009)にて報告している。

(iv) 予備調査は朝日生命成人病研究所附属丸の内病院の倫理委員会の承認のもとに行われた。

(v) 本調査は朝日生命成人病研究所附属丸の内病院の倫理委員会の承認のもとに行われた。

(vi) Ver. Aの対象者と Ver. Bの対象者の基本属性に関する比較の結果、いずれにおいてもサンプリングによ

る差はみられなかった。そこで以降の分析は両方のデータを集約して行った。

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東北大学大学院教育学研究科研究年報 第59集・第1号(2010年)

Development of Support Environment scale for

Diabetics(SED).

Wataru SHOJI(Graduate Student, Graduate School of Education, Tohoku University)

Michiyo OHNO(Research Assistant, School of Nursing, Shukutoku University)

Hideo AMBO(Associate professor, Graduate School of Education, Tohoku University)

In the present study, we defined a constructive concept for Social Support in six points of view

and developed Support Environment scale for Diabetics(SED)that measure how much subjects

receive specific support from family, friends, medical staff, fellow patients. Preliminary survey of

100 adults with diabetes on support needs had been conducted, and then main survey of 404 adults

with diabetes was conducted to develop SED.

The result revealed that SED-family version( =.89, test-retest’s r=.80)was constructed

of two factors;“diet and medication support”( =.89, r=.80)and“exercise support”( =.72,

r=.75), and SED-friends version( =.80, r=.75), SED-medical staff version( =.94, r

=.89), and SED-fellow patients version( =.94, r=.74)have single factor structure. Further-

more the validity was examined by correlation between general support and SED-family, SED-

friends, or SED-fellow and between patient-medical staff relationship and SED-medical staff. In the

result expected correlations was examined respectively, more specifically the SED has sufficient

validity.

Examining of correlation among diabetes specific supports that are measured with SED,

glycemic control, and mental health is an issue in the future.

Key words : diabetes, social support, adult. scale development, reliability and validity,

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