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様式2
研究結 果 報 告書
平成22年1月20日
財団法人長野県学校科学教育奨励基金
理事長田幸淳男様
学校名長野県飯田工業
学 校 長 名 篠 田 宏
1研究テーマ 環境に配慮した電気自動車(省電力競技車両)
2研究グ ループ名定時制電気部
高等学校
印
の開発
3指導者 教諭北淫勉
4 研究の動機及び目標
近年、地球環境・エネルギー環境の問題等により、無公害・低燃費な車が地球規模で
求められている。そして、各自動車メーカーや研究機関はこれらの諸問題を解決すべく
研究開発を続けている。
この様な状況の中、本校定時制電気部でも一昨年より「ものづくり教育を通しての環
境教育」として、省エネルギー(省電力)で走行する一人乗りの電気自動車の開発を行
ってきた。しかし働きながら学ぶ生徒たちは、授業終了後や土日を利用するなど時間を
生み出す工夫をして意欲的に活動しているが、予算的に厳しく目標とする性能の車両の
完成には至っていない。
そこで、本奨励金に応募し支援を受ける中で研究開発を続け、省エネルギーに配慮した
設計・製作ができる生徒を育て車両を完成させたい。その上で、大会に参加し車体'性能
を検証することにより次年度への課題を見つけたい。
5研究内容の概要
(1)車体の設計
①車両規則
車両を設計する上で最重要課題は安全性の確保である。また、車体性能の検証も重要
な要素であるため、各大会で決められた車両規則に沿った設計でなければならない。
目標とする大会は11月に岐阜県で行われる「エコノパワーin岐阜」であり、その
大会の車両規則に沿った設計とする必要がある。
全長 3000mm以下 視界 180度確保自由
全1幅 1200mm以下 ブレーキ 8%勾配で停車可
全高 1600mm以下 安全装置 クラクション
視界 180度確保 カウル フルカウル可
図1-1車両規則
-1-
図1-3設計図
(2)車体の製作
①フレーム
1.発泡剤を用いて大まかな形を作り、その上に自動車修理用のパテを塗り、表面
を滑らかにコーティングし雄型を作る。(図2-1,図2-2)
2.オス型の表面全体にガラス繊維に樹脂を含ませた布を均一に張り、樹脂が硬化
したら離型しメス型を作る(図2-3、図2-4)
3.メス型の表面に炭素繊維(プリプレグ)を張り、真空成型作業をしてボディー
を作る(図2-5、図2-6)
4.真空成型が終了したら雌型より離型し、ベースとなるボディーの完成である。
(図2-7,図2-8、図2-9)
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図1-2走行抵抗軽減のための具体的対・策
また、設計図はフリーのCADソフトである「JW-CAD」を使用し、場合によって
はて手作業で線を引き、細部まで検討・した上で製作を始めた。図1-3は設計図である。
②設計
走行中の車に働く走行抵抗は「転がり抵抗」「空気抵抗」「加速抵抗」「勾配抵抗」の
4つに分けられ、それぞれの抵抗を少なくする工夫をして設計する必要がある。
転がり抵抗はタイヤが回転しているかぎり働く抵抗でありタイヤやベアリング及び
車体重量が大きく影響する。空気抵抗は車両を前面から見た面積(前面投影面積)と空
位抵抗係数が大きく左右し、面積は部品配置などを考慮しながら極力小さく、空気抵抗
係数は車両を上下左右から見て滑らかな型とする必要がある。また、加速抵抗と勾配抵
抗は主に車体重量に影響される。
本研究ではこれらをもとに図1-2に示す具体的対策をとった。
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タイヤ
ベアリング
ホイール及びハブ
車体形状
車体重堂
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アルミニウム(A2017)からの削り出しによる剛性の強化
流線型
複合材料を利用することによる軽量化
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図2-1雄型の原型 図2-2雄型完成 図2-3雌型製作
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図2-10旋盤加工
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図2-4雛型後の雌型 図2-5炭素繊維の張付 図2-6真空成型
図2-7ボディーの離型
図2-12穴あけ加工
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②部品製作
生徒が実験実習の授業で習得した技術を用いて、設計図通りに部品を製作する。
図2-9ボディー図2-8ボディー
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図1-13放電加工 図2-14作業風景 図2-15炭素繊維の加工
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図2-16旋盤加工による
部品
図2-17フライス加工
による部品
図2-18溶接加工による
部品
(3) モーターの製作
目標とする大会において、バッテリーより常時取り出せる電気エネルギーは40
w弱であり、平坦な路面をで走行している限りはモーター効率の最高点を一点に決
めることができる。しかし、大会においては高低差がある上に加速時や追い越しな
ど高い出力を必要とする場面が多々ある。そこで、低出力域から高出力域まで変換
効率が高いモーターが求められる。本研究では先端企業と連携し製作することによ
り研究を進めた。
①モーターの選定
モーターには直流モータや交流モーターなど数多くあるが、本研究では検討の結
果DCブラシレスモーターの採用を決めた。
また、モーター内部での損失を少なくするため、コア(コイルが巻かれる部分)
は鉄系アモルファス(図3-1)を採用した。これは一般的に使われているケイ素鋼板
で作られたモーターより数%程度変換効率を高めることができる。
②モーターの製作
1.モーターを構成する備品を工作機械を使用して製作する。(図3-2)
2.モーターコアに導線を巻く。(図3-3)
3.構成部品を組み立てる。(図3-4)
4.モーターコントローラを取り付け回転を確かめる。(図3-5)
5.モーターの特’性を測り特性図を作成し、狙い特‘性か確認する。(図3-6)
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図3-7特性図
(4)組立て
それぞれ加工した部品をボディーに取り付ける。特に炭素繊維への部品の取り付
けは接着による場合が多いが、接着剤の使用法を間違えると強度が既定に達しない
ばかりか安全走行に支障を来たすおそれもある。細心の注意を払う必要がある。
①ボディーへ炭素繊維で製作した部品を取り付ける。(図4-1)
・マスキングテープで位置決めをし、それに沿って部品を配置する。
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・接着剤はエポキシ系樹脂を用い、確実に接着する。(図4-2)
。仕上げはバリなどが無いように丁寧に淵部分を接着剤で補修する。(図4-3)
②アルミニウムで製作した部品を取り付ける。
・接着面はサンドペーパー等で確実に脱脂し、エポキシ系樹脂(アラルダイト)
で接着する。この時に炭素繊維とアルミニウムの0.3mm程度隙間ができ、そ
の隙間に接着剤の層だできるように工夫する。(図4-4,図4-5,図4-6)
③足回りの部分を取り付ける。
・前後輪のタイヤの部分は、後に調整が必要な場面が多く発生するため、整備し
やすい構造にする。(図4-7,図4-8、図4-9)
④モーターおよび電気系統を取り付ける。
・走行途中で外れることの無いよう、確実に取り付ける。
⑤キャノピー(フロントスクリーン)等の取付。
・キヤノピーはブロー成型で製作し、丁寧にカウルに取り付ける。この時、手
の汚れなどが付着すると視界に影響するので注意を払う。(図4-13、図4-14)
⑥カッティングシートによる仕上げ。
.最後にカッティングシートを全体に貼りデザインを仕上げる。風の影響を受
けるため後ろから前に貼っていくのが大切である。(図4-15)
図4-1マスキングテープによる図4-2ボディーへの接着
位置決め
図4-4炭素繊維の
表面削り
図4-5金属部品図の
表面削り
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図4-3仕上げ
図4-6炭素繊維と
アルミニウムの接着
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図4-7前輪取付部 図4-8前輪足回り 図4-9後輪足回り
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図4-16完成車両
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図4-11モーター 図4-12運転席
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(5)大会の様子
平成21年度の大会は、11月1日(日)に岐阜県賀茂郡の日本ライン自動車学校
特設コースで行われた。飯田工業高校定時制電気部では電気自動車部門高校生クラス
(参加台数56台)に参加した。
競技は、既定の12v3Ahのバッテリー1個を使い、45分間で走行した距離を
競うものである。
始めに車両規則に沿った作りであるか確認するため車検(図5-4)が行われ、その後
2周のみのテスト走行があった。ここで必要なデーター取りが求められるが、ドライ
バーと記録員が不慣れであり、良いデーターは得られなかった。
スタート(図5-4)の合図とともに競技が開始され、飯田工業の車両は中盤まで
トップを快走した。しかし、周回遅れの車両を追い越すために想定していた以上の
電力を消費してしまい残り1o分位で失速し、高校生部門で4位の結果となった。
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図5-1車検の様子 図5-2スタート前 図5-3スタート前
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冠気日勤〕K 聞剛松ホエ莱高““郊野電虹、副恵爺允,胸火一箭工蕊高校樋奴師26竃気口勤恵YU錨“M改大IZ[府立淀川工科高汝自飴車都郡愈気日吐京洞制WO7SEUdG巾高山工苅25
盆虹回働取牧工キカイ航蚊工案在校礎域偶訓
図5-7大会結果(上位20チーーム)
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図5-6競技中
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図5-5データー管理図5-4スタート
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研究のまとめと今後の問題
車体を完成させ競技に参加でき当初の目標は達成できたように思う。しかし、地元の教
習所をお借りしてのテスト走行により単独走行でのデーターは取れたが、数十台の車両
と競いながらの走行では経験が少なく手探りの状態であり車体の性能はわかっていない。
次年度はデーター取得の方法を工夫したり、より多くの大会へ参加し車両の完成度を高
めたい。
また、本研究の機会を与えていただいたことにより、最初は定時制で車両を製作し全
日制と同じ全国大会で活躍できるか半信半疑であった生徒たちが、大会を終えてみると
自信を持ち来年度への希望を語るようになった。これは活動を通しての最大の成果だっ
たと感じる。
その他
本研究を進めている最中の10月頃より、信越放送様のニュース番組で放映するた
めの取材が始まり、11月に行われた岐阜の大会終了まで撮影していただいた6昼間
働き夜学習している生徒たちの、時間的制約がある中での活動を多くの人に知ってい
ただけたことはとても良いことであったと思っている。
-9‐