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厚生労働省 平成 29 年度生活困窮者就労準備支援事業費等補助金 社会福祉推進事業 平成 29 年度 社会福祉法人に設置される会計監査人の 導入効果等に関する調査研究事業 平成 30 年 3 月 みずほ情報総研株式会社

社会福祉法人に設置される会計監査人の 導入効果等 …...厚生労働省 平成29年度生活困窮者就労準備支援事業費等補助金 社会福祉推進事業

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厚生労働省 平成 29年度生活困窮者就労準備支援事業費等補助金

社会福祉推進事業

平成 29年度

社会福祉法人に設置される会計監査人の

導入効果等に関する調査研究事業

平成 30年 3月

みずほ情報総研株式会社

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≪目次≫

はじめに .................................................................. 1

(1)調査の背景・目的 ..................................................... 1

(2)検討の視点と範囲 ..................................................... 1

(3)検討体制 ............................................................ 1

第1章 社会福祉法人への会計監査導入の背景 ................................. 3

1.導入の背景・趣旨 ....................................................... 3

(1)社会福祉法人とは ..................................................... 3

(2)会計監査導入の背景 ................................................... 3

2.会計監査制度の概要 ..................................................... 6

(1)公認会計士等による会計監査 ........................................... 6

(2)社会福祉法人における会計監査の導入の意義 ............................. 6

(3)社会福祉法人が受ける会計監査 ......................................... 8

(4)会計監査の対象 ....................................................... 8

(5)会計監査人による監査の流れ・イメージ ................................ 10

(6)会計監査を行うことによる監事監査・指導監査の負担軽減 ................ 12

第2章 会計監査導入の事例 ................................................ 14

1.社会福祉法人愛生会の事例 .............................................. 14

(1)法人概要 ........................................................... 14

(2)会計監査導入のきっかけ .............................................. 14

(3)予備調査での指摘事項 ................................................ 14

(4)会計監査導入のメリット・デメリット .................................. 15

(5)会計監査導入にあたっての課題 ........................................ 15

(6)委員会における質疑応答 .............................................. 16

2.社会福祉法人利生会の事例 .............................................. 17

(1)法人概要 ........................................................... 17

(2)会計監査導入のきっかけ .............................................. 17

(3)監査内容 ........................................................... 18

(4)会計監査導入のメリット・デメリット .................................. 18

(5)委員会における質疑応答 .............................................. 19

3.事例のまとめ.......................................................... 20

(1)会計監査導入にあたって .............................................. 20

(2)会計監査導入効果 .................................................... 20

(3)直面した課題........................................................ 21

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(4)社会福祉法人の監査の必要性などに対する説明や周知など ................ 21

(5)今後、会計監査を導入しようとしている法人へのメッセージ .............. 21

第3章 会計監査導入の効果・課題の検証 .................................... 22

1.アンケート調査の実施 .................................................. 22

(1)アンケート調査実施対象法人の事業種別ならびに事業規模 ................ 22

(2)調査実施スケジュール ................................................ 23

(3)調査票の作成に関する委員会での指摘事項 .............................. 24

(4)調査票(確定版) .................................................... 25

2.アンケート調査回答状況 ................................................ 31

3.アンケート調査の分析フレーム .......................................... 31

(1)中・長期的に期待される効果(総括編) ................................ 31

(2)現在の課題・取組み状況に関する法人と会計監査人との認識比較 .......... 31

(3)現在の課題・取組み状況と今後の改善水準との比較 ...................... 32

4.分析結果 ............................................................. 33

(1)中・長期的に期待される効果(総括編) ................................ 33

(2)現在の課題・取組み状況に関する法人と会計監査人との認識比較 .......... 39

(3)現在の課題・取組み状況と今後の改善水準との比較 ...................... 42

(4)改善の「必要性」と改善の「意欲」との統合指数 ........................ 45

(5)会計監査導入に関する課題 ............................................ 46

第4章 平成 29年度調査研究事業のまとめ ................................... 48

1.アンケート調査、事例調査から得られた結果 .............................. 48

(1)内部統制構築の重要性を認識 .......................................... 48

(2)自法人の強みや課題の明確化、中長期的視点での経営に向けた意識の確立 .. 49

(3)法人の経理担当者の実務能力向上 ...................................... 49

2.委員からあげられた意見 ................................................ 50

【会計監査導入について想定される効果について】 ............................ 50

(1)法人経営の透明性、信頼性の向上 ...................................... 50

(2)業界の社会的信頼性の向上 ............................................ 50

【会計監査導入について想定される課題について】 ............................ 50

(1)社会福祉法人の課題 .................................................. 50

(2)会計監査人の課題 .................................................... 51

(3)行政の課題.......................................................... 52

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1

はじめに

(1)調査の背景・目的

「社会福祉法人制度改革」の一環として、社会福祉法人の経営組織のガバナンス強化、

事業運営の透明性向上等を目的に会計監査人制度が導入された。

会計監査人の設置が義務付けられている社会福祉法人は、現在、収益 30億円超又は負

債 60億円超とされているが、今後、対象範囲の段階的な拡大が予定されている。

そこで、段階施行の具体的な時期および判断基準を検討するために、会計監査人による

会計監査の導入効果を調査することとした。

(2)検討の視点と範囲

会計監査人による会計監査の導入効果については、「社会福祉法人会計監査人設置モ

デル事業」(以下、「モデル事業」)にて、現在、設置義務の対象とならない法人を対象に

会計監査人設置の効果と課題について具体的検証を進めている。

本事業は、「モデル事業」を実施している社会福祉法人を対象にアンケート調査を実施

し、社会福祉法人にとっての会計監査導入による効果および会計監査を導入する上での

課題を整理し、今後の会計監査導入に向けた各種検討の基礎資料とする。

(3)検討体制

社会福祉法人制度および会計監査実務に精通した学識経験者、公認会計士および、法人

経営者により構成される検討委員会を開催し、課題整理、施策の検討を行った。

① 検討メンバー

<検討委員会委員>

梶川 融 日本公認会計士協会 公会計協議会 会長

金子 良太 國學院大學 経済学部 教授

木村 哲之 公益社団法人全国老人福祉施設協議会 副会長

社会福祉法人愛の会 特別養護老人ホーム笠間陽だまり館 施設長

澤田 和秀 公益財団法人日本知的障害者福祉協会 社会福祉法人秀愛会 理事長

柴 毅 日本公認会計士協会 常務理事

武居 敏 社会福祉法人全国社会福祉協議会

全国社会福祉法人経営者協議会 副会長

馬場 充 日本公認会計士協会 非営利法人委員会 社会福祉法人分科会長

早坂 聡久 東洋大学 ライフデザイン学部 准教授

(敬称略 五十音順)

<事務局(作業チーム)>

宇都 隆一 みずほ情報総研株式会社 社会政策コンサルティング部

野中 美希 みずほ情報総研株式会社 社会政策コンサルティング部

梅津 麻子 みずほ情報総研株式会社 社会政策コンサルティング部

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委員会の開催内容

回 開催日時 検討内容

1 平成 29年 9月 1日 ・事業概要案

・アンケート調査票案

2 平成 29年 9月 27日 ・アンケート調査票案

・ 社会福祉法人会計監査人設置モデル事業実施

法人紹介

3 平成 29年 11月 21日 ・アンケート調査の回答について

・監査会計導入事例紹介

(社会福祉法人愛生会、社会福祉法人利生会)

・報告書構成案

4 平成 30年 2月 26日 ・アンケート調査集計結果報告

・報告書案の中間報告

5 平成 30年 3月 20日 ・報告書案の取りまとめ

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第1章 社会福祉法人への会計監査導入の背景

1.導入の背景・趣旨

(1)社会福祉法人とは

社会福祉法人は、社会福祉事業を行うことを主たる目的として、社会福祉法(昭和 26年

法律第 45号。以下、「法」という。)に基づき設立される法人であり、社会福祉事業以外

にも公益事業と収益事業を行うことができる(図表 1)。

社会福祉事業には、第一種社会福祉事業および第二種社会福祉事業がある(法第二条)。

第一種社会福祉事業の多くは入所施設サービスであり、経営の適正を欠いた場合、利用者

の人権擁護の観点から問題が大きいため、確実公正な運営確保の必要性が高い事業とし

て位置付けられ、その経営主体は原則として、国、地方公共団体又は社会福祉法人に限ら

れている。一方で、第二種社会福祉事業は、比較的利用者への影響が小さいため、公的規

制の必要性が低い事業とされ、経営主体を問わず届け出をすることで事業を営むことが

できる。

図表 1 社会福祉法人が行う事業の概要

(出所)厚生労働省「社会福祉法人の概要」,

<http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/shakai-fukushi-

houjin-seido/01.html>,2018年 1月 11日アクセス.

(2)会計監査導入の背景

社会福祉法人は、社会福祉を目的とする法人であるが、昨今の福祉ニーズが多様化・複

雑化する中、公益性・非営利性を備えた法人としての役割がますます重要となっている。

そうしたなかで、今後も社会福祉法人が我が国の社会福祉の重要な担い手として国民の

期待に応えられる存在であり続けるべく、社会福祉法人制度改革を推し進めることとな

り、改革案を検討するため、厚生労働省において「社会福祉法人の在り方等に関する検討

会」(座長:田中滋(慶應義塾大学名誉教授))が平成 25(2013)年 9 月に設置された。

平成 26(2014)年 7月には、「社会福祉法人制度の在り方について」が検討会報告書とし

社会福祉事業

・特別養護老人ホーム

・児童養護施設

・障害者支援施設

・救護施設 等

第一種

・保育所

・訪問介護

・デイサービス

・ショートステイ 等

第二種

・子育て支援事業

・入浴、排せつ、食事等の支援事業

・介護予防事業、有料老人ホーム、老人保健施設

の経営

・人材育成事業

・行政や事業者等の連絡調整事業

公益事業

・貸しビル、駐車場、公共的な施設内の売店の経営

収益事業

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て取りまとめられた。同報告書では、社会福祉法人制度改革の論点として、「地域におけ

る公益的な活動の推進」、「法人組織の体制強化」、「法人の規模拡大・協働化」、「法人運営

の透明性の担保」、「法人の監督の見直し」の 5つが掲げられた1。そのうち、「法人の監督

の見直し」の一環として「財務に係る外部監査の活用等」が挙げられ、一定規模以上の社

会福祉法人に対して、公認会計士等の専門家による外部監査の義務付けを検討すること

が意見として盛り込まれた。

同報告を受け、平成 26(2014)年 8月より社会保障審議会福祉部会(部会長:田中滋(慶

應義塾大学名誉教授))において社会福祉法人制度の見直し議論を開始し、平成 27(2015)

年 2月に「社会保障審議会福祉部会報告書~社会福祉法人制度改革について~」が公表さ

れた。同報告書では、「経営組織の在り方の見直し」、「運営の透明性の担保」、「適正かつ

公正な支出管理」、「地域における公益的な取組の責務」、「内部留保の明確化と福祉サービ

スへの再投下」、「行政の役割と関与の在り方」等が、社会福祉法人制度の見直し事項とし

て取りまとめられた2。会計監査人の設置義務は「経営組織の在り方の見直し」の一項目

として挙げられるとともに、「会計監査人については、実効性のある会計監査を行うため、

その権限、義務、責任(監事への報告義務、損害賠償責任等)を法律上明記すべきである」

とされ、会計監査人の設置を義務付ける法人の範囲や会計監査人の設置の義務付けの対

象とならない法人に対する対応についても記された3。

社会保障審議会福祉部会報告書を踏まえ、「社会福祉法等の一部を改正する法律」(平成

28年法律第 21号。以下、「法」という。)は平成 28年 3月 31日に国会において承認され

た(図表 2)。法においては、社会福祉法人の公益性、非営利性を担保するため、全ての法

人に対して、ガバナンスの強化、財務規律の確立、運営の透明性の向上を図ることとされ、

これらの取組を通じて、国民に対する説明責任を果たすことが強く求められている。これ

により、 29 年 4 月 1日に開始する会計年度から一定規模を超える社会福祉法人に対し

て会計監査人の設置が義務付けられたところである。

図表 2 社会福祉法の改正を踏まえた取組の具体例

ガバナンスの強化 評議員会の必置、特殊関係にある役員等の排除、会計監査人の設置

財務規律の向上 役員報酬基準の策定・公表、充実財産、充実計画

事業運営の透明性の

向上

閲覧対象書類の拡大、計算書類等の公表の徹底

介護保険制度の導入以降、行政による措置制度から利用者との契約による福祉サービス

の提供の仕組みへと移行したことにより、法人の資金使途の制限も一定の緩和がなされて

きているが、社会福祉法人は、こうした制度改正や、社会状況の変化を踏まえつつ、行政に

よる指導監督に基づく運営から脱却し、自ら適正な運営を確保し、経営の方向性を決定して

1 社会福祉法人の在り方等に関する検討会(2014)「社会福祉法人制度の在り方について」, pp.20-38. 2 社会保障審議会福祉部会(2015)「社会保障審議会福祉部会報告書~社会福祉法人制度改革について

~」, pp.6-27. 3 社会保障審議会福祉部会(2015)「社会保障審議会福祉部会報告書~社会福祉法人制度改革について

~」, p.12.

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いく必要がある。

そうした自律的な運営の前提として、法人として財務状態(財務リスク)を適切に把握し、

建物・設備の維持更新に備えることも必要になるが、そのためには適正な財務情報をタイム

リーに作成し、財務状態を分析するとともに法人内部の関係者が共有する内部統制組織を

整備し運用する必要がある。

図表 3 社会福祉法人制度改革(平成 28年改正社会福祉法)の主な内容

(出所)厚生労働省「社会福祉法人制度改革の実施状況について」

(第 20回社会保障審議会福祉部会資料 2、平成 29年 12月 18日), p.1.

今般の社会福祉法人制度改革において計算書類の公表が法定化されたが、「社会福祉法人

の財務諸表等開示システム」の運用によって、国民一般への情報開示がすすめられている。

情報利用者は、財務諸表が会計基準に準拠して作成されていると考えて利用するため、情報

利用者の期待を損なうことのないよう、個々の社会福祉法人は会計基準に準拠して適正な

計算書類を作成しなければならない。公的資金が投入される社会福祉法人が国民に対する

説明責任を果たす観点からは、社会福祉法人が作成する財務諸表の信頼性を確保すること

がもとめられ、社会福祉法人を所管する行政並びに国として、公表される財務諸表の信頼性

1.経営組織のガバナンスの強化

□理事・理事長に対する牽制機能の発揮□財務会計に係るチェック体制の整備

○議決機関としての評議員会を必置※理事等の選任・解任や役員報酬の決定など重要事項を決議

(注)小規模法人について評議員定数に係る経過措置を設ける。

○役員・理事会・評議員会の権限・責任に係る規定の整備○親族等特殊関係者の理事等への選任の制限に係る規定の整備

○一定規模以上の法人への会計監査人の導入 等

2.事業運営の透明性の向上

□財務諸表の公表等について法律上明記

○閲覧対象書類の拡大と閲覧請求者の国民一般への拡大○財務諸表、現況報告書(役員報酬総額、役員等関係者との取引内容を含む。)、

役員報酬基準の公表に係る規定の整備 等

3.財務規律の強化

①適正かつ公正な支出管理の確保②いわゆる内部留保の明確化

③社会福祉事業等への計画的な再投資

①役員報酬基準の作成と公表、役員等関係者への特別の利益供与を禁止等② 純資産から事業継続に必要な財産(※)の額を控除し、福祉サービスに

再投下可能な財産額(「社会福祉充実残額」)を明確化※①事業に活用する土地、建物等 ②建物の建替、修繕に必要な資金 ③必要な運転資金

④基本金、国庫補助等特別積立金

③再投下可能な財産額がある社会福祉法人に対して、社会福祉事業又は

公益事業の新規実施・拡充に係る計画の作成を義務づけ(①社会福祉事業、

②地域公益事業、 ③その他公益事業の順に検討) 等

4.地域における公益的な取組を

実施する責務□社会福祉法人の本旨に従い他の主体で

は困難な福祉ニーズへの対応を求める

○ 社会福祉事業又は公益事業を行うに当たり、日常生活又は社会生活上支援を要する者に対する無料又は低額の料金で福祉サービスを提供す

ることを責務として規定※利用者負担の軽減、無料又は低額による高齢者の生活支援等

5.行政の関与の在り方

□所轄庁による指導監督の機能強化□国・都道府県・市の連携を推進

○都道府県の役割として、市による指導監督の支援を位置づけ○経営改善や法令遵守について、柔軟に指導監督する仕組み(勧告等)に

関する規定を整備

○都道府県による財務諸表等の収集・分析・活用、国による全国的なデータベースの整備等

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を確保する仕組みの導入が課題である。

2.会計監査制度の概要

(1)公認会計士等による会計監査

社会福祉法人が作成した財務諸表の信頼性を確保し、財務情報利用者の利益を保護す

る観点からは、独立した第三者としての公認会計士等による財務諸表監査が有効である。

公認会計士法

(公認会計士の使命)

第1条 公認会計士は、監査および会計の専門家として、独立した立場において、財務

書類その他の財務に関する情報の信頼性を確保することにより、会社等の公正な事業

活動、投資者および債権者の保護等を図り、もつて国民経済の健全な発展に寄与するこ

とを使命とする。

(2)社会福祉法人における会計監査の導入の意義

社会福祉法人の会計は、従前より行政指導目的に資するよう、施設あるいは事業毎に財

務諸表等を作成し、資金の使途制限に抵触していないことを明らかにしてきたが、これに

加えて平成 24年度以降、法人全体の経営分析を可能にし、外部への情報公開に資するよ

う改定された経過がある。

現行の社会福祉法人会計は、法人が実施する事業毎に拠点区分ならびにサービス区分

を設けて単年度の資金収支を明らかにして、公的資金の内容とその支出結果(使途)、及

び、中長期的に法人が社会福祉事業用資産を維持更新するのに必要な財産が確保されて

いるかを明らかにする目的の会計として形成されている。

その結果、社会福祉法人会計は従前に比べて複雑化しており、会計担当者の専門性が求

められるところとなったが、会計基準に対応しきれていない法人においては、会計の誤謬

により適正な計算書類が作成されない事態が生じている。

財務情報の信頼性を確保する方法としては、法人内部における内部統制が整備され、適

正な会計報告を作成する体制が整備される必要があるが、社会福祉法人にたいする公認

会計士等による会計監査は、法人から独立した第三者の立場で監査の指導的機能に重点

がおかれ、組織ガバナンスの整備、運用への助言・支援をおこなうものであり、社会福祉

法人の内部統制の向上ならびに社会福祉法人の財務諸表の信頼性の付与にあたって有効

である。

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図表 4 会計監査のイメージ

(出所)厚生労働省社会・援護局「第 2回社会福祉法人の財務規律の向上に係る検討会(平成 28年 5月 17

日)」における提出資料「資料 3:社会福祉法人の財務規律の向上に係る検討事項」。

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(3)社会福祉法人が受ける会計監査

法人が受ける会計監査には、以下のものがある。

① 法第 37条の定めにより会計監査人設置義務を負う法人(以下、「会計監査人設

置義務法人」という。)において行われる会計監査

② 法第 36 条第 2 項の定めにより、会計監査人設置義務を負わない法人において

定款の定めにより会計監査人を設置して行われる会計監査

③ 会計監査人による会計監査に準ずる監査

会計監査人による会計監査に準ずる監査は、会計監査人を設置せずに、法人と公認会計

士若しくは監査法人との間で締結する契約に基づき行われる監査であり、会計監査人に

よる監査と同じ計算関係書類および財産目録を対象とする監査を指す。いわゆる任意監

査であり、①や②の法定監査とは位置づけが異なる。

①の会計監査人設置義務法人の基準は、平成 29 年度と 30 年度においては、最終会計

年度の収益が 30 億円を超える法人又は負債が 60 億円を超える法人である(社会福祉法

施行令第 13 の 3)。31 年度以降は、収益 10 億円を超える法人又は負債 20 億円を超える

法人まで、段階的に対象範囲が確定される予定であるが、段階的な施行拡大の具体的な時

期や基準については、29 年度以降の会計監査の実施状況等を踏まえて、必要に応じて見

直しを検討することとされている4。

図表 5 会計監査人設置義務法人の基準

平成 29年度・30 年度 収益 30億円を超える法人又は負債 60億円を超える法人

平成 31年度・32 年度 収益 20億円を超える法人又は負債 40億円を超える法人

平成 33年度以降 収益 10億円を超える法人又は負債 20億円を超える法人

(注)段階施行の具体的な時期および判断基準については、平成 29 年度以降の会計監査の実施状況等を踏まえて、必要に応じて見直しを検討することとされている。

(4)会計監査の対象

社会福祉法人会計基準においては、法人全体、事業区分、拠点区分それぞれの計算書類

等を作成することが義務付けられている。

しかし、法に基づく会計監査の監査意見の対象となる計算書類および附属明細書は、上

記全てではなく、法人単位の計算書類と附属明細書のみである(法第 45 条の 28 第 2 項

第 1号および社会福祉法施行規則第 2条の 30第 1項)。

4 ここでいう「収益」とは、社会福祉法人の法人単位事業活動計算書(第 2号第 1様式)の中の「サー

ビス活動増減の部」の「サービス活動収益計」を、「負債」とは、法人単位貸借対照表(第 3号第 1

様式)中の「負債の部」の「負債の部合計」を指す。

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図表 6 会計監査人設置義務法人の基準(社会福祉法施行令第 13の 3)

※ 法人単位の計算書類とその附属明細書は拠点区分別の積み上げであることから、拠点区分別の計算

書類およびそれらの附属明細書についても留意し、監査手続が実施されることとなるが、社会福祉

法人の特性に合わせ、効率的・効果的な監査が行われることに留意すること。

(出所)厚生労働省社会・援護局福祉基盤課(2017)「社会福祉法人制度改革の施行に向けた全国担当者

説明会資料」(平成 28年 11月 28日開催), p.26.

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(5)会計監査人による監査の流れ・イメージ

会計監査人による監査は、会計年度を通じて実施される。

一般的な監査の流れとしては、まず、監査の基本的な方針の策定や財務諸表に重要な誤

りが生じるリスクの識別、採用する監査手続の決定、詳細な監査計画の作成等を行う(①

リスクの識別と評価の段階、7~12月)。その後、リスクに応じた監査手続きを実施し(②

リスクに対応する手続の段階、1月~5月)、実施した監査を総括し、意見表明に関する審

査を受け、監査報告書を提出する(③監査報告の段階、6月まで)。

具体的な内容は以下のとおりである。

① リスクの識別と評価の段階

法人全般に係る内部統制を理解、評価するため、理事長や業務執行理事に対する

インタビュー、評議員会および理事会の議事録を閲覧する手続などが実施される。

また、施設長や担当者へのインタビュー、各帳票の閲覧、業務の観察を通じ、事業・

日常業務運営や決算財務報告に係る管理体制を理解する。

これらの手続から財務諸表に重要な誤りが生じるリスクを識別し、採用する監査

手続をリスクに応じて検討し、監査計画を作成する。(リスク・アプローチ)

② リスクに対応する手続の段階

①で作成した監査計画に沿って、監査手続を実施する。期中に実施される監査手

続には、法人の内部管理体制ルールの運用状況の確認手続、期中取引の検討等があ

る。決算日付近で実施される監査手続には、現物の確認、法人の棚卸への立会、金

融機関等への残高確認、根拠となる証憑の閲覧等があり、決算数値の検証が行われ

る。法人が作成する計算関係書類については、検証済みの決算数値と一致すること

や会計基準省令で作成することが必要な書類が揃っているか、記載する項目にも

れはないか、各書類が整合しているか、といった観点でチェックされる。

③ 監査報告の段階

②で実施された監査手続の結果(監査証拠)を総合的に勘案し、会計監査人は結

果として意見を表明することになる。意見表明に先立ち、自らの意見が一般に公正

妥当と認められる監査の基準に準拠して適切に形成されていることを確かめるた

め、意見表明に関する審査を受けなければならない。

監査報告として、「独立監査人の監査報告書」および監査の実施概要や監査の過

程で発見された内部統制の重要な不備等を記載した報告書が法人に提出される。

社会福祉法人に対しては、法第 56条第 1項の規定に基づいて、所管庁による指導監査

(次項(6)②参照、以下指導監査)が行われるが、指導監査のうち一般監査は、評議員

会の計算書類承認後に実施され、かつ一定周期であるため、一般監査の対象である計算書

類に重要な不備が検出されても、通常は、一般監査の実施年度に会計処理の修正が行われ

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るため、監査対象の計算書類が修正されるとは限らない。一方、会計監査は評議員会の計

算書類承認前に実施され、かつ毎年実施される。監査実施の過程で検出された重要な不備

は、計算書類が各機関で承認され、および一般に開示される前に、指導、改善、修正が行

われ、計算書類の適正性に関して保証を受けられる点が会計監査の特徴である。さらには、

公認会計士は継続的に研修を受けることが義務づけられており、監査担当者の質を継続

的に維持していること、会計・監査に関連して、金融庁の企業会計審議会や日本公認会計

士協会から監査の基準に関連する実務指針等が多数公表されており、その内容について

も国際的な会計監査の水準に合わせるべく改訂が頻繁に行われている点が特徴的である

といえる。

これらを総合的に踏まえると、会計監査は会計部分に関して継続的に監査サービスを

提供するものであり、指導監査のうち会計部分を補完するものといえる。また、監査対象

や事項が重複しても、会計監査により指導、改善が促され、指導監査による指摘を未然に

防止する効果が期待できる。結果として、所轄庁はその他の項目に監査資源を割り当てる

ことが可能となり、より効果的、効率的な指導監査を実施することにつながる。

図表 7 監査スケジュール概要(例)

(出所)日本公認会計士協会(2016)「社会福祉法人・医療法人向け解説資料『公認会計士監査の概要』

資料 1『公認会計士監査とは』」, p.12.

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(6)会計監査を行うことによる監事監査・指導監査の負担軽減

社会福祉法人では、適正な法人運営と社会福祉事業の健全な経営の確保を図るため、法

に基づき、行政による指導監査が定期的に行われている。また、監事を設置することが義

務付けられており、計算書類等の監査が行われている。

しかし、法改正や関連通知の改正が行われたことに伴い、法人運営のガバナンス強化が

図られたことから、会計監査人による会計監査を行っている場合等には、以下の通り、そ

れらの負担軽減が図られることとなった。

① 監事監査

会計監査人を置く法人では、計算書類等は、理事会の承認を受ける前に、監事と会

計監査人による監査を受ける。ただし、監事は、会計監査人の監査の方法又は結果を

相当であるか否か、について意見表明することになる。相当でないとする場合以外は、

監事は監査報告の内容に計算関係書類についての意見を含める必要はない(法施行規

則第 2条の 31)。

② 指導監査

指導監査は、法第 56 条第 1 項の規定に基づいて、所管庁による指導監査が行われ

る。指導監査には、一般監査と特別監査があり、双方とも実地で行われるものである。

このうち、公認会計士等専門家による支援を受けた場合、所管庁の判断により、一

般監査の監査周期の延長、監査事項の一部省略等が可能となった。

図表 8 指導監査の類型

類型 対象・周期等 概要

一般監査 一定の周期で実施

原則、3年毎

年度当初に指導監査の方針、指導監査の対象

とする法人および指導監査の実施時期等を

内容として指導監査の実施計画を策定した

うえで、「指導監査ガイドライン(注)」に基

づき実施されるもの。

特別監査 運営等に重大な問題を有す

る法人を対象に随時実施

「指導監査ガイドライン」に基づいて行われ

るほか、問題の原因を把握するため、必要に

応じて詳細な確認を行うもの。

(注)「指導監査ガイドライン」は、「社会福祉法人指導監査実施要綱の制定について」(平成 29年 4月 27

日付厚生労働省雇用均等・児童家庭局長通知)の別紙として取りまとめられている。

(出所)「社会福祉法人指導監査実施要綱の制定について」(平成 29 年 4 月 27 日付厚生労働省雇用均等・

児童家庭局長、社会・援護局長、老健局長連名通知)

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図表 9 一般監査の周期

区分 監査周期 「会計管理」に関する監査事項

の省略

「組織運営」に関する監査事項の効

率的な実施

大きな問題が認められない法人 3 年に 1回 「指導監査実施要綱」に基づき実施

法に基づき会計監査人を設置する法人

で、会計監査報告に「無限定適正意見」

又は「除外事項を付した限定付適正意

見」が記載された場合(会計監査人によ

る会計監査に準ずる監査を含む。)

5 年に 1 回

まで延長可

「指導監査ガイ

ドライン」の

「Ⅲ管理 3 会

計管理」に関す

る監査事項の省

略可

「指導監査ガイド

ライン」の「Ⅰ組

織運営」に関する

効率的な実施可

専門家(公認会計士、監査法人、税理士

又は税理士法人)による①財務会計に

関する内部統制の向上に対する支援又

は②財務会計に関する事務処理体制の

向上に対する支援を受けた法人におい

て、専門家が当該支援を踏まえて作成

する書類が提出された場合

4 年に 1 回

まで延長可

「指導監査ガイ

ドライン」の

「Ⅲ管理 3 会

計管理」に関す

る監査事項の省

略可。

「指導監査ガイド

ライン」の「Ⅰ組

織運営」に関する

効率的な実施可

(ただし、①の場

合のみ)

(注)これら以外にも、苦情解決への取組等を行っている場合、4年に 1回まで延長可とされる。

(出所)「社会福祉法人指導監査実施要綱の制定について」(平成 29 年 4 月 27 日付厚生労働省雇用均等・

児童家庭局長、社会・援護局長、老健局長連名通知)

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第2章 会計監査導入の事例

1.社会福祉法人愛生会の事例

(1)法人概要

法人概要

● 法人認可:昭和 61年 5月 27日

(昭和 58年 4月 1日より無認可保育所として事業スタート)

● 法人所在地および事業実施地域:秋田県鹿角市

● 事業収入:9億 4千 2百万円(平成 28年度決算)

● 役職員数:191名

● 事業所数:5拠点 11事業所

● パイロット調査・予備調査を経て、本年 6月に平成 30年 3月期決算における

会計監査契約を公認会計士事務所(秋田県内)、監査法人(東京都内)と締結。

● 今回会計監査導入にかかわった職員は 4 人。専任はおらず、労務や請求関係

の担当職員が兼任。

(2)会計監査導入のきっかけ

当法人では、平成 29 年 4 月の温泉保養センターを、また、平成 29 年度中に障害者就

労継続支援B型事業所の開設する予定で、事業収入が 10億円を超えることが確実になっ

た。

現状では、平成 33 年度以降、収益 10 億円まで会計監査人の設置義務対象範囲が拡大

される予定となっている。そこで、今のうちに会計監査人を選任し各種対策をとってお

こうということから会計監査を導入することとなった。

ただ、実際にはなかなか引き受け手が見つからなかった。その理由は、秋田県内では

公認会計士の「高齢化」のほか、「3月決算というタイミング(他の事業法人の監査対応

で手いっぱい)」や「地理的要因(当法人は秋田市内から片道 3 時間ほどかかる)」など

であった。

(3)予備調査での指摘事項

予備調査での主たる指摘事項は、次の 8項目であった。

・預金残高

・前払費用・長期前払費用

・計算書類に関する注記

・借入金明細書

・財産目録

・退職給付引当金

・事業未収金

・未払従業員賞与

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これまでの監事監査、行政監査は、「一定時点での会計帳簿の整合性」と「資金使途」

が主な監査対象であり、実際的な会計処理方法を指摘されることは少なく、会計処理に

関する指摘は非常に有用・有益な機会であった。

また、施設長等の交代時に、数年にわたり繰り越され続けてきた内容不明の未収金の

存在なども明らかになった。

(4)会計監査導入のメリット・デメリット

① メリット

以下のようなメリットがあり、経営面で非常に有益であった。

・会計報告の正確性(会計帳簿、処理方法等の正確性・信頼性の確保)

・事業運営の継続性(経営状態の的確な把握)

・事業運営の透明性

・説明責任の履行

・事務スタッフのスキルアップ

・財務諸表に“専門家によるお墨付き”をもらえる安心感

② デメリット

費用負担と事務負担が課題であると感じている。現時点ではパイロット調査と予備調

査のみであるが、費用負担はもちろん事務的負担は相応にある。一定の会計知識を有す

るスタッフが複数いるような体制でなければ会計監査を受けるのは難しいのではない

かと感じる。

(5)会計監査導入にあたっての課題

① 会計監査人の選定

当法人では、伝を頼ることでようやく会計監査人を選定することができたが、地理的

な条件などから会計監査人をなかなか探せない法人も多いと思われる。

今後、会計監査人の設置義務対象範囲拡大の制度改革に対し、対象法人が飛躍的に増

加することから、対象法人の所在地分布と公認会計士および監査法人が実際に受託でき

るか否かまで把握した上で会計監査人の選定・マッチングが円滑に行われるような仕組

みが必要である。

② 「伴走型支援」の重要性

法人で最も重要なことは、日常的に行われている処理のプロセスが正確に行われてい

ることである。そのため、社会福祉法人の会計監査は、会計報告並びに内部統制の整備・

運用に対する「伴走型」支援(日常的な相談・指導・関与)が有効である。また社会福

祉法人の会計担当者に対して、公認会計士協会等の主催による会計や内部統制に関する

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講習・研修を行う仕組みが必要である。

③ 会計監査を導入するインセンティブ

予備調査を受けるまでは、会計監査のデメリットである「費用や事務負担」にばかり

目がいってしまい、メリットである「法人経営にどの程度有効であるのか」を理解して

いなかった。当法人ですら、“義務”“必要”という理由以外に導入する動機が薄かった。

一般的に会計監査の意義があまり意識・周知されていないのではないかと感じる。

(6)委員会における質疑応答

① 監査の受け入れ体制について

Q:会計監査の導入に従事した職員は何人か。また専任担当者はいるのか。

A:会計監査の導入に従事した職員は 4人。法人本部というのが存在しないため、

すべて現場との兼任。

② 内部統制構築の実施体制

Q:事業収益 10億円規模の法人の場合、内部統制、特に支払い関係の相互牽制で

十分な体制がとれないところが多いと思われるが、そのあたりはどうなのか。

A:予備調査では、出金担当者と申請者を分けてほしいとの指摘はあったが、当法

人でそこまでの人員を割くのは困難なのが実情。

③ 監査人との間のコミュニケーションについて

Q:会計監査人からは、時に、厳しい指摘がなされることもあると思われるが、た

とえば、「理不尽」と法人側が思うような指摘があった場合、どのようにコミュ

ニケーションをとっていけばよいのか。

A:今のところ「理不尽」と思うような指摘はないが、委嘱先の監査法人は、改善

すべき点について、「なぜそうするべきなのか」「それによって法人にとってど

のようなメリットがあるのか」を丁寧に説明してくれる。その点非常に感謝し

ている。

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2.社会福祉法人利生会の事例

(1)法人概要

法人概要

● 昭和 54 年 利生会認可

● 法人所在地および事業実施地域:京都府亀岡市

● 事業収入:約 10億 7千 7百万円(平成 28年度決算)

● 役職員数:職員 220 名〈4月1日現在〉

● 事業所数:5拠点

● 平成 9 年に医療事業、公益事業の展開をはじめ拠点が分散したことから、外

部監査を導入

● 平成 12 年~15年までの 4年間は外部監査なし

● 平成 15 年 経理面に課題があったことから、経理に精通した人物を事務長に

迎える

● 平成 18 年 上記の経理担当者が退職

● 平成 19 年~28年 外部監査(任意監査)契約

● 平成 29 年~会計監査人契約

(2)会計監査導入のきっかけ

平成 15年度に外部から招聘した経理担当者(経理に精通している人物)が平成 18年

に退職。これを契機に平成 19年に、以下の目的で、外部監査(任意監査)契約を締結し

た。

【外部監査(任意監査)を導入した目的】

1. 正確な計算書類の作成

2. 同族経営によるネガティブなイメージの払拭

3. 法人本部機能の強化(施設運営から法人経営へ)

4. 自律的な法人経営

5. 透明性確保、経営基盤強化

今後、制度改正に伴い 10 億円以上の社会福祉法人にも監査会計人の導入が義務化さ

れる予定であることから、会計監査人の指摘で改善すべきことがあるならば制度改正前

に対応しようと考え、平成 29年から会計監査人と契約した。

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(3)監査内容

外部監査(任意監査)でチェックを受けた主な項目は以下の通りである。

・期中取引(2拠点)

・組織・事業運営について(指導監査

要綱に基づいて)

・公印・銀行印の管理や役員の選任状

況等

・決算に向けての留意事項

・実査、残高確認書

・期末残高チェック

・計算書類のチェック

(4)会計監査導入のメリット・デメリット

① メリット

会計監査導入のメリットとしては、取引の正確性確保を通じた内部統制の構築、経営

基盤強化のほかに、経営状況の適時的確な把握を通じて法人経営の中長期的視点を獲

得できたこと、などをあげることができる。

これらを含め、具体的なメリットは以下のとおりである。

【外部監査(任意監査)を導入によるメリット】

1. 事前準備の段階からの専門家の活用

2. 会計処理の不明点を適宜相談できる

3. 行政監査とは異なる指摘・気づきがあった

4. 内部統制の強化、業務プロセスの改善・効率化(施設別に異なる会計処理方法

を監査法人が提案した方法に統一した)

5. 経営の透明性が向上するともに、社会的な信頼性が高まった

6. 経営状況がタイムリーに把握ができ、意思決定・経営判断に貢献(将来を見据

えた長期的視点の確保)

7. 経理担当者のレベル向上、育成に繋がる

8. 事務職員の定着が良くなり、7人が 10年以上勤務

9. 年間 300 万円の費用負担で済むなら、専門家による改善指導、担当者のレベル

向上を考えると追加で専門職員を雇うより合理的

② デメリット

デメリットは特に感じていない。

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(5)委員会における質疑応答

① 会計監査導入に要する費用(監査報酬)について

Q:会計監査導入の費用はどの程度か。

A:年間 300 万円から 500万円程度。

② 会計監査の効率性向上について

Q:会計監査導入に一定の費用が発生することはやむを得ないとしても、会計監査

人と法人の双方が事務負担を減らす工夫をして監査の効率性を向上させる(結

果として監査費用を縮減する)ようにするにはどうすればよいか。

A:出納プロセスを例にあげると、これまでは出金伝票に押印して終わっていたも

のが、内部統制構築の観点から相互牽制機能を働かせようとなると、その分事務

負担も増えるし、体制も増強しなければならなくなる。効率性を高めようという

視点も必要であるが、必要なプロセスを省略しようという間違った方向にいくの

は本末転倒。職員全員が、“そういうもの”と受け止めて、慣れを通じて習慣化

することが効率化につながり、その行きつく先として監査費用の削減につながれ

ばと考えている。

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3.事例のまとめ

(1)会計監査導入にあたって

・ 会計監査の導入により、過年度の会計処理の誤りに気づき、財務諸表の修正がはか

られた愛生会と内部統制の強化、業務プロセスの改善・効率化を通じて経営力の強

化に取り組んでいる利生会との間には会計監査の導入効果に差異が見られるが、

いずれの法人も、会計監査制度導入前から、外部専門家の視点を取り入れ、運営効

率化、経営改善を進めていくことの重要性を認識していた。

・ 会計監査導入による手間やコストに対する懸念もあったが、それでも会計監査導

入に踏み切ったのは、将来、会計監査導入対象の基準が引き下げられた場合、引受

け手となる会計士が少なくなることを懸念して、今から対応を練っておく必要が

あると考えたためである。

(2)会計監査導入効果

・ いずれの法人も会計監査導入の効果を高く評価している。実感された効果につい

て整理すると、

(従来誤っていた会計処理方法について)適切な会計処理方法を教示して

もらった

会計処理方法について迷った場合に、専門家に相談することが可能となっ

その結果

内部統制の強化や業務運営の効率化

経理担当者の育成(会計知識の向上)につながった

という点が指摘された。

・ こうした直接的な効果に加えて、

財務諸表に対して専門家によるお墨付きをいただいた

これによって、法人の信用力強化につながった

という点も指摘された。

・ これらを踏まえて

経営状況の適時適切な把握を通じて、適切な経営判断を行うことができる

ようになった

中長期的視点での経営計画立案が可能となった

という法人経営面での効果についても指摘された。

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(3)直面した課題

・ 課題については、「会計監査人の選定(受嘱してもらえる監査人をどのようにみつ

けるか)」「監査にかかる負担をいかに抑えるか」が主に指摘された点であった。

・ 「会計監査人の選定」については、特に地方都市で地理的条件などから会計監査人

を探せないという状況が指摘された。今後、会計監査人の設置義務対象範囲が拡大

すると会計監査人のアンマッチの問題はより深刻化すると思われる。

・ 「費用負担」は、年間 300万円~500万円程度の監査報酬以外に、会計監査人への

説明、資料の提供といった監査対応の負担も発生する。

(4)社会福祉法人の監査の必要性などに対する説明や周知など

・ 両法人とも、会計監査を導入してみて、当初想定していなかった様々な効果を実感

している。それは、会計監査導入の意義(効果)が、社会福祉法人全体に十分周知

されていないことであるともいえる。

・ 導入効果を含めて、指導監査周期の延長と監査範囲の簡略化などのインセンティ

ブも含めて、丁寧な説明・周知が必要である。

(5)今後、会計監査を導入しようとしている法人へのメッセージ

・ 会計監査の原則は「批判的機能」にあるが、監査人を選定する際には「指導的機能」

(適正な会計処理方法、計算書類の作成に関するアドバイスなど)をどこまで発揮

してくれるかという視点も重要である。

・ あわせて、内部統制に関する規程や業務マニュアルの見直しについても協力をい

ただけることで、施設長などのマネジメント層や担当者等の育成に繋がっている。

・ 会計監査導入には種々のコストが発生するものの、得られるメリットも大きい。

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第3章 会計監査導入の効果・課題の検証

1.アンケート調査の実施

今般、会計監査導入の対象ではない法人(収益規模 30億円未満、かつ、負債残高 60

億円未満の法人)における会計監査の導入効果・課題を明らかにするために、「社会福

祉法人会計監査設置モデル事業」(以下、モデル事業)に申請・許可された 17法人に対

してアンケート調査を実施した。

(1)アンケート調査実施対象法人の事業種別ならびに事業規模

法人番号 事業種別 H28収益額 H28負債額

1 老人福祉事業・障がい者福祉事業 29.5億円 13億円

2 障害福祉・老人福祉・児童福祉 18億円 7.2億円

3 介護・障害 17.7億円 3.7億円

4 障害 11.1億円 4.5億円

5 障害・介護 20.3億円 6.1億円

6 介護 13.1億円 9.8億円

7 介護・障害・その他(診療所等) 26.6億円 12.1億円

8 介護 6.8億円 2.4億円

9 介護 11.4億円 4.5億円

10 介護 11億円 1.8億円

11 介護・児童 14億円 6.9億円

12 障害・児童 14.1億円 2.1億円

13 介護・障害・児童 14.9億円 8.3億円

14 介護・障害・児童 25億円 9.5億円

15 介護・障害・児童 14.7億円 9億円

16 介護・障害・児童 14.7億円 8.7億円

17 児童・その他 16.4億円 3.5億円

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(2)調査実施スケジュール

本事業は、2018 年 3月末までが検討期間となっていることから、アンケート調査は、

2017年度の段階での導入状況を前提に効果・課題を明らかにすることとした。

検討状況は以下のとおりである。

○2017年9月1日

第一回委員会 ・・・調査票の全体像を委員会に提示

○2017年9月中旬

WG開催 ・・・・第一回委員会の意見をもとに、作業部会メンバーで調査票

案を作成

○2017年9月27日

第二回委員会 ・・・調査票案を委員会に提示

○2017年10月

事務局最終調整および各委員への最終確認

○2017年11月13日

調査票および回答要領の確定(全委員からの承認)

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(3)調査票の作成に関する委員会での指摘事項

① 委員会での主な指摘事項

第一回、第二回委員会にて、調査票の作成にあたって委員よりご指摘いただいた

事項は以下のとおりである。

A) モデル事業の対象となる法人は、会計監査を導入してから日が浅い。そのた

め、導入効果は、会計監査を通じて課題を把握し、経営改善に結び付けてい

くというプロセスを踏むことをもって「効果」と捉えてはどうか。調査票の

文言についても、“過去形”で結果を訊き出すのではなく、将来効果を見据え

た表現振りにする。

B) 「法人の経営状況の改善」といった効果は、会計監査の副次的効果であるも

のの、直接期待される効果とは言いがたい。会計監査に対する過剰な期待を

誘発しないよう、効果のレベルを区別・区分して調査票を設計すべき。

C) 法人担当者単独では回答が難しいものもあるので、適宜会計監査人のアドバ

イスを受け、協議しながら回答する方法が現実的である。ただし、法人の回

答内容と会計監査人の回答内容との間の差も確認したいので、両者が協議し

ながら回答することを想定しつつ、それぞれに回答を求める方法はどうか。

② 指摘事項に対する対応方針

○指摘事項A)への対応

アンケート調査で確認する「効果」は、具体的な成果として発現したものだけで

なく、将来期待される内容を含めて「効果」と捉える。

そのうえで、設問内容の文言は、過去形で結果を確認するのではなく、「○○が

期待される」という将来効果を見据えた表現にする。

○指摘事項B)への対応

アンケート調査の項目を大きく「総括編」「各論編」に区分し、「総括編」は中

長期的(間接的)に期待される効果を、会計実務に関連した直接的効果について

「各論編」として整理した。

○指摘事項C)への対応

アンケート調査票を「会計監査人様用」「法人様用」の 2種類にわけ、会計監査

人、法人のそれぞれに回答してもらう方法とした。

これら 2 種類の調査票は同一の設問項目であるが、会計監査人については、そ

の立場を考慮して、一部の設問項目のみ回答を求めることとした(社会福祉法人

は原則すべての項目を回答)。

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(4)調査票(確定版)

上記の検討プロセスを経て、確定版となった調査票は以下のとおりである。

① 調査票(確定版)のポイント

A)全体構成

本アンケート調査では、42 項目について効果・課題を検証することとした。これ

を「総論編」「各論編①」「各論編②」に区分した。

「総論編」は、会計監査導入による中長期的効果を、「各論編①」は、会計監査導

入による短期的直接的効果を、「各論編②」は、会計監査導入に関する課題をまとめ

たものである。

B)質問構成

上記 42項目に対して、質問構成は以下の通り。

区分 設問内容

総論編 【質問1】

・会計監査導入により中長期的視点から期待される効果について

※将来される効果を5段階で評価(選択式)

【質問2】

・質問1の回答について、具体的理由を記載(自由記述)

各論編① 【質問3】

・現状の取り組み状況について、「規程(ルール)が策定・整備さ

れているか」、「規程が運用されているか」、「運営の状況や結果が

記録・保管されているか」、「規程(ルール)が適宜見直し・改善

されているか」という視点から、5段階で評価

【質問4】

・質問3の回答について、具体的な状況を記載(自由記述)

※予備調査等で会計士からの指摘を受けた場合にはその内容を中

心に記載

【質問5】

・質問3の状況を今後どこまで改善していきたいか

※5段階で評価(段階については、質問3に準ずる)

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【質問6】

・質問3の回答について、具体的な状況を記載(自由記述)

※予備調査等で会計士からの指摘を受けた場合にはその内容を中

心に記載。

各論編② 【質問7】

・想定される課題の懸念の度合いについて、5段階で評価。

【質問8】

・質問7の回答について、具体的な状況を記載(自由記述)

※予備調査等で会計士からの指摘を受けた場合にはその内容を中

心に記載。

C)回答手順

調査票は、委嘱先の会計監査人が最初に記入作成し、それを参考にしながら法人

担当者が記入作成する。

会計監査人は、会計監査人としての立場、意見に基づいて記載し、また、法人は

法人としての立場、意見に基づいて記載する(したがって、同じ項目について異な

る評価、記載がなされてもかまわない)。

② 回答方法等についての説明

上記のように、本アンケート調査は回答の手順や回答方法が複雑であることか

ら、郵送方式をとらず、事務局が各法人を訪問し説明のうえ回答を依頼することと

した。

あわせて、巻末に記載されている回答マニュアル「ご回答にあたって」を作成し

説明に用いた。

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1(1  2  3  4  5  非該当)

のいずれかを右から選択してください

2(1  2  3  4  5  非該当)

のいずれかを右から選択してください

3(1  2  3  4  5  非該当)

のいずれかを右から選択してください

4(1  2  3  4  5  非該当)

のいずれかを右から選択してください

5(1  2  3  4  5  非該当)

のいずれかを右から選択してください

6(1  2  3  4  5  非該当)

のいずれかを右から選択してください

7(1  2  3  4  5  非該当)

のいずれかを右から選択してください

8

【各論編①】現在の課題・取組み状況と今後の期待する効果と改善の方向について

【質問4】

○【質問3】の理由について具体的に記載してくだ

さい(自由記述)

※ご回答にあたっては、予備調査等で会計監査人

から指摘された事項等を中心にご記載いただきます

ようお願いします。

【質問6】

○【質問5】の理由について具体的に記載してくださ

い(自由記述)

○社会福祉法人様のみご回答下さい。

※ご回答にあたっては、予備調査等で会計監査人か

ら指摘された事項等を中心にご記載いただきますよう

お願いします。

9 会計業務の効率化による、拠点区分(施設・事業所)の月次報告書(試算表)の作成。(1  2  3  4  5  非該当)

のいずれかを右から選択してください

(1  2  3  4  5)

のいずれかを右から選択してください

10 拠点区分の財務状態(リスク)を分析し、報告する体制の整備。(1  2  3  4  5  非該当)

のいずれかを右から選択してください

(1  2  3  4  5)

のいずれかを右から選択してください

11 法人全体の財務状態(リスク)を分析し、理事会へ報告する体制の整備。(1  2  3  4  5  非該当)

のいずれかを右から選択してください

(1  2  3  4  5)

のいずれかを右から選択してください

12施設・事業所の利用人数、職員数、稼働率等の非財務データによる要因分析をおこない、収益性

の評価と改善点を認識する体制の整備。

(1  2  3  4  5  非該当)

のいずれかを右から選択してください

(1  2  3  4  5)

のいずれかを右から選択してください

会計監査導入による効果等に関するアンケート調査票

【総括編】中・長期的に期待される効果(社会福祉法人様のみご回答下さい)

【視点1】 財務状態(財務リスク)の総合的な把握

【質問2】

期待される効果の具体的内容について記載してください(自由記述)

会計監査導入により、自法人の経営環境(内部経営環境・外部経営環境)を把握する機会にな

る。

計算書類等の誤りの修正や財務リスクの把握を通じて、経営戦略や中長期計画を実現するために財

務面の改善が必要であるとの認識につながる。

月次で財務情報・非財務情報を収集・分析し、理事長等の経営層に報告する体制を整備し、法人

の経営基盤強化につながる。

利害関係者(利用者、その家族、ボランティア、地域の方々、取引業者等)に法人の実態を反映し

た計算書類や財務状態に対する経営者の所見を開示することで、社会的信頼性の向上につながる。

コンプライアンス及びガバナンスの向上をつうじて、職員の労働環境の改善が図られ、職員満足度(E

S)の向上につながる。

その他(自由記述)

【質問1】期待される今後の効果について

「5」・・・大いに期待できる

「4」・・・ある程度期待できる

「3」・・・普通

「2」・・・あまり期待できない

「1」・・・ほとんど期待できない

(※該当しない法人様については「非該当」を記載)

【質問3】現状の課題・取組み状況について

①「規程(ルール)が策定・整備されているか」、

②「規程が運用されているか」、

③「運営の状況や結果が記録・保管されているか」、

④「規程(ルール)が適宜見直し・改善されているか」に

ついて

「5」・・・①、②、③、④の全てに対応できている

「4」・・・①、②、③に対応できている

「3」・・・①、②に対応できている

「2」・・・①に対応できている

「1」・・・いずれにも対応できていない

(※該当しない法人様については「非該当」を記載)

【質問5】今後、期待する効果と改善の方向性について

○【質問3】でご回答された選択肢番号を、会計監査の

導入を通じて、今後、貴法人にてどの水準まで改善してい

きたいと考えているか。

(選択肢番号の考え方は、質問3に準ずるものとする)

○社会福祉法人様のみご回答下さい。

人材育成の仕組みが定着することで、提供するサービスの質向上と利用者満足度(CS)の向上につながる。

行政指導監査の指摘とは異なる気づきにより、業務改善が期待される。

Page 32: 社会福祉法人に設置される会計監査人の 導入効果等 …...厚生労働省 平成29年度生活困窮者就労準備支援事業費等補助金 社会福祉推進事業

28

【質問4】

○【質問3】の理由について具体的に記載してくだ

さい(自由記述)

※ご回答にあたっては、予備調査等で会計監査人

から指摘された事項等を中心にご記載いただきます

ようお願いします。

【質問6】

○【質問5】の理由について具体的に記載してくださ

い(自由記述)

○社会福祉法人様のみご回答下さい。

※ご回答にあたっては、予備調査等で会計監査人か

ら指摘された事項等を中心にご記載いただきますよう

お願いします。

13過年度の会計処理の誤りによる計算書類並びに社会福祉充実残額の誤りの認識を修正する体

制の構築。

(1  2  3  4  5  非該当)

のいずれかを右から選択してください

(1  2  3  4  5)

のいずれかを右から選択してください

14 内容不明なまま繰り越された貸借対照表残高を解消する体制の構築。(1  2  3  4  5  非該当)

のいずれかを右から選択してください

(1  2  3  4  5)

のいずれかを右から選択してください

15 会計基準省令、運用指針、その他会計関係通知等の不明点を解消する体制の構築。(1  2  3  4  5  非該当)

のいずれかを右から選択してください

(1  2  3  4  5)

のいずれかを右から選択してください

16 法人の決裁基準、職務分掌・職務権限の整理による職務権限規程(規則)の実効性確保。(1  2  3  4  5  非該当)

のいずれかを右から選択してください

(1  2  3  4  5)

のいずれかを右から選択してください

17 財務、人事、ITなど管理機能の法人本部への集約化等による本部機能の強化。(1  2  3  4  5  非該当)

のいずれかを右から選択してください

(1  2  3  4  5)

のいずれかを右から選択してください

18 コンプライアンスにかかる法人の取り組み(組織、責任者、研修の実施)の可視化。(1  2  3  4  5  非該当)

のいずれかを右から選択してください

(1  2  3  4  5)

のいずれかを右から選択してください

19内部監査部門(監事監査を含む)の組織における位置づけの明確化、内部監査部門の役割・

体制の明確化、ならびに内部監査の実効性確保。

(1  2  3  4  5  非該当)

のいずれかを右から選択してください

(1  2  3  4  5)

のいずれかを右から選択してください

20 予算の積算、進捗管理、補正予算などを規定した予算管理規程等の整備・運用・見直し。(1  2  3  4  5  非該当)

のいずれかを右から選択してください

(1  2  3  4  5)

のいずれかを右から選択してください

21 IT(ハード、ソフト)の管理体制(責任者、職務内容、IT研修)の整備・運用・見直し。(1  2  3  4  5  非該当)

のいずれかを右から選択してください

(1  2  3  4  5)

のいずれかを右から選択してください

22 人材育成制度(考課制度、キャリアアッププラン、メンタルケア、研修計画等)の整備・運用・見直し。(1  2  3  4  5  非該当)

のいずれかを右から選択してください

(1  2  3  4  5)

のいずれかを右から選択してください

23 公印・銀行印の使用管理体制等の整備・運用・見直し。(1  2  3  4  5  非該当)

のいずれかを右から選択してください

(1  2  3  4  5)

のいずれかを右から選択してください

24関連当事者間取引の把握、取引実施の承認手続き、取引内容開示など、関連当事者間取引に

かかる情報開示。

(1  2  3  4  5  非該当)

のいずれかを右から選択してください

(1  2  3  4  5)

のいずれかを右から選択してください

25 請求業務にかかる内部牽制ならびに業務の標準化・手順書の整備・運用・見直し。(1  2  3  4  5  非該当)

のいずれかを右から選択してください

(1  2  3  4  5)

のいずれかを右から選択してください

26 購買業務にかかる内部牽制ならびに業務の標準化・手順書の整備・運用・見直し。(1  2  3  4  5  非該当)

のいずれかを右から選択してください

(1  2  3  4  5)

のいずれかを右から選択してください

27 人件費関連業務にかかる内部牽制ならびに業務の標準化・手順書の整備・運用・見直し。(1  2  3  4  5  非該当)

のいずれかを右から選択してください

(1  2  3  4  5)

のいずれかを右から選択してください

28 資金管理業務にかかる内部牽制ならびに業務の標準化・手順書の整備・運用・見直し。(1  2  3  4  5  非該当)

のいずれかを右から選択してください

(1  2  3  4  5)

のいずれかを右から選択してください

29 在庫管理業務にかかる内部牽制ならびに業務の標準化・手順書の整備・運用・見直し。(1  2  3  4  5  非該当)

のいずれかを右から選択してください

(1  2  3  4  5)

のいずれかを右から選択してください

【質問3】現状の課題・取組み状況について

①「規程(ルール)が策定・整備されているか」、

②「規程が運用されているか」、

③「運営の状況や結果が記録・保管されているか」、

④「規程(ルール)が適宜見直し・改善されているか」に

ついて

「5」・・・①、②、③、④の全てに対応できている

「4」・・・①、②、③に対応できている

「3」・・・①、②に対応できている

「2」・・・①に対応できている

「1」・・・いずれにも対応できていない

(※該当しない法人様については「非該当」を記載)

【質問5】今後、期待する効果と改善の方向性について

○【質問3】でご回答された選択肢番号を、会計監査の

導入を通じて、今後、貴法人にてどの水準まで改善してい

きたいと考えているか。

(選択肢番号の考え方は、質問3に準ずるものとする)

○社会福祉法人様のみご回答下さい。

【視点2】 計算書類等の誤り、社会福祉充実残額等の誤りの認識

【視点3】 内部統制・ガバナンスの向上・強化・可視化(見える化)

【視点4】 経理業務にかかる内部牽制ならびに業務手順の標準化・手順書の整備・運用の向上

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29

【質問4】

○【質問3】の理由について具体的に記載してくだ

さい(自由記述)

※ご回答にあたっては、予備調査等で会計監査人

から指摘された事項等を中心にご記載いただきます

ようお願いします。

【質問6】

○【質問5】の理由について具体的に記載してくださ

い(自由記述)

○社会福祉法人様のみご回答下さい。

※ご回答にあたっては、予備調査等で会計監査人か

ら指摘された事項等を中心にご記載いただきますよう

お願いします。

30 会計業務にかかるチェックリスト、会計業務マニュアルの整備・運用・見直し。(1  2  3  4  5  非該当)

のいずれかを右から選択してください

(1  2  3  4  5)

のいずれかを右から選択してください

31 決算手続きのリスト化、決算業務マニュアルの整備・運用・見直し。(1  2  3  4  5  非該当)

のいずれかを右から選択してください

(1  2  3  4  5)

のいずれかを右から選択してください

32 現金の入出金手続きにかかる内部牽制ならびに現金の保管にかかる管理体制の整備・運用・見直し。(1  2  3  4  5  非該当)

のいずれかを右から選択してください

(1  2  3  4  5)

のいずれかを右から選択してください

33預金の支払手続きにかかる内部牽制ならびに預金の保管にかかる管理体制の整備・運用・見直

し。

(1  2  3  4  5  非該当)

のいずれかを右から選択してください

(1  2  3  4  5)

のいずれかを右から選択してください

34 固定資産の現物の保管管理体制の整備・運用・見直し。(1  2  3  4  5  非該当)

のいずれかを右から選択してください

(1  2  3  4  5)

のいずれかを右から選択してください

35 利用契約時ならびに利用者情報更新時の確認体制の整備・運用・見直し。(1  2  3  4  5  非該当)

のいずれかを右から選択してください

(1  2  3  4  5)

のいずれかを右から選択してください

36 請求時における加算・減算要件の確認体制の整備・運用・見直し。(1  2  3  4  5  非該当)

のいずれかを右から選択してください

(1  2  3  4  5)

のいずれかを右から選択してください

37 事業収益の不正・誤謬を対象にした内部監査体制の整備・運用・見直し。(1  2  3  4  5  非該当)

のいずれかを右から選択してください

(1  2  3  4  5)

のいずれかを右から選択してください

38 業者選定手続きの透明性にかかる内部統制手続きの整備・運用・見直し。(1  2  3  4  5  非該当)

のいずれかを右から選択してください

(1  2  3  4  5)

のいずれかを右から選択してください

39 契約の透明性にかかる内部統制手続きの整備・運用・見直し。(1  2  3  4  5  非該当)

のいずれかを右から選択してください

(1  2  3  4  5)

のいずれかを右から選択してください

40 施設整備にかかる会計処理の不明点を相談することによる会計処理の重要な誤謬の回避。(1  2  3  4  5  非該当)

のいずれかを右から選択してください

(1  2  3  4  5)

のいずれかを右から選択してください

41

【視点7】 事業収益算定要件の確認体制の整備・運用の向上(収益の過誤請求の回避)

【視点8】 施設整備にかかる透明性の確保

【その他】【社会福祉法人様のみご回答下さい)

上記の【視点1】~【視点8】以外で会計監査人に期待する事項(自由記述)

【質問3】現状の課題・取組み状況について

①「規程(ルール)が策定・整備されているか」、

②「規程が運用されているか」、

③「運営の状況や結果が記録・保管されているか」、

④「規程(ルール)が適宜見直し・改善されているか」に

ついて

「5」・・・①、②、③、④の全てに対応できている

「4」・・・①、②、③に対応できている

「3」・・・①、②に対応できている

「2」・・・①に対応できている

「1」・・・いずれにも対応できていない

(※該当しない法人様については「非該当」を記載)

【質問5】今後、期待する効果と改善の方向性について

○【質問3】でご回答された選択肢番号を、会計監査の

導入を通じて、今後、貴法人にてどの水準まで改善してい

きたいと考えているか。

(選択肢番号の考え方は、質問3に準ずるものとする)

○社会福祉法人様のみご回答下さい。

【視点5】 会計業務の効率化・標準化・手順書の整備・運用の向上

【視点6】 資産の保全・管理体制の整備(不正による計算書類等の虚偽表示の回避)

Page 34: 社会福祉法人に設置される会計監査人の 導入効果等 …...厚生労働省 平成29年度生活困窮者就労準備支援事業費等補助金 社会福祉推進事業

30

【各論編②】想定される課題について(社会福祉法人様のみご回答下さい)

42(1  2  3  4  5  非該当)

のいずれかを右から選択してください

43(1  2  3  4  5  非該当)

のいずれかを右から選択してください

44

【ご回答にあたって、以下のA~DについてYes/Noのいずれかをお選びください】(会計監査人様のみご回答下さい) 【ご回答者について】 複数名でご回答された場合には、代表者のお名前を記載願います。

A 監査受嘱のための予備調査が終了している。 Yes、Noのいすれかを右から選んでください ご回答者の氏名

B 監査の基本的な方針を策定中である。 Yes、Noのいすれかを右から選んでください

C リスク評価手続・リスク対応手続きを実施中である。 Yes、Noのいすれかを右から選んでください ご回答者の役職

D 本件受嘱前から税務顧問契約等があり、当該社会福祉法人の状況をよく理解できている。 Yes、Noのいすれかを右から選んでください

ご回答者の連絡先(電話番号)

ご回答者の連絡先(メールアドレス)

ご回答年月日(○年○月○日)

【質問7】想定される課題について

「5」・・・大いに懸念している

「4」・・・やや懸念している

「3」・・・普通程度に懸念している

「2」・・・あまり懸念していない

「1」・・・ほとんど懸念していない

(※該当しない法人様については「非該当」を記載)

その他(自由記述)

【質問8】

想定される課題の具体的内容について記載してください(自由記述)

監査費用の負担に対して、費用対効果として、満足できる成果が得られないという懸念。

担当者の兼務状況や労務負担等、法人側の監査受け入れ体制の整備にかかる懸念。

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31

2.アンケート調査回答状況

第3章にて記載したアンケート調査実施については、対象17法人すべてから社会福

祉法人および会計監査人双方の回答をいただいた。

3.アンケート調査の分析フレーム

(1)中・長期的に期待される効果(総括編)

○対象項目番号 1~8(うち、項目番号8は自由記述)

○対象質問番号 質問1、2

項目番号1~7について、各法人の評価点数と17法人の評価点数の平均値(以下、「平

均値」)を比較(レーダーチャート分析)。

項目番号1~7のすべてにおいて評価点数が平均値を上回っている法人(監査導入に高

い期待を持っている法人群)、すべてにおいて平均値を下回っている法人(監査導入によ

る効果をあまり期待していない法人群)を抽出。

これら法人群の属性や自由回答(質問2)状況を確認し、特徴や傾向を分析する。

(2)現在の課題・取組み状況に関する法人と会計監査人との認識比較

○対象項目番号 9~41(うち、項目番号41は自由記述)

○対象質問番号 質問3、4

項目番号9~40について、法人が現時点での対応状況に関する17法人の評価点数平

均値と会計監査人の評価点数平均値とを比較。

これによって、社会福祉法人における会計監査に係る取組み状況について、法人の評価

と会計監査人との間で認識の差異のある項目を把握する。

差異については「法人の平均値」から「会計監査人の平均値」を控除することとした。

すなわち、この値がプラスの項目は、法人の自己認識に比べて専門家である会計監査人

の評価が低いことを意味する。

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32

(3)現在の課題・取組み状況と今後の改善水準との比較

○対象項目番号 9~41(うち、項目番号41は自由記述)

○対象質問番号 質問3、4、5、6

項目番号9~40について、取組み状況に関する自法人の評価点数平均値(質問3)

と今後の改善の方向性に対する評価点数平均値(質問5)とを比較。

これによって、法人の現状と将来達成したい水準の差異を把握する。

なお、差異については「将来達成したい水準の平均値」(質問5)から「自法人の現在

の取組み状況の平均値」(質問3)を控除することとした。すなわち、この値がプラスの

項目は、法人が現状よりも将来に改善したいと考えていることを意味する。

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33

4.分析結果

(1)中・長期的に期待される効果(総括編)

① 17法人の評価値平均

項目番号1~7につき、5段階評価の 17 法人平均値(以下、評価値平均)を高い順

に整理すると以下の通り。

項目番号 内容 評価値平均

7 行政指導監査の指摘とは異なる気づきにより、業務改善が期待される。 4.59

2 計算書類等の誤りの修正や財務リスクの把握を通じて、経営戦略や中長

期計画を実現するために財務面の改善が必要であるとの認識につながる。

4.47

4 利害関係者(利用者、その家族、ボランティア、地域の方々、取引業者

等)に法人の実態を反映した計算書類や財務状態に対する経営者の所見を

開示することで社会的信頼性の向上につながる。

4.38

1 会計監査導入により、自法人の経営環境(内部経営環境・外部経営環境)

を把握する機会になる。

4.35

3 月次で財務情報・非財務情報を収集・分析し、理事長等の経営層に報告

する体制を整備し、法人の経営基盤強化につながる。

4.35

5 コンプライアンスおよびガバナンスの向上をつうじて、職員の労働環境

の改善が図られ、職員満足度(ES)の向上につながる。

3.94

6 人材育成の仕組みが定着することで、提供するサービスの質向上と利用

者満足度(CS)の向上につながる。

3.75

② 評価値平均と比較した各法人の回答状況

法人1から17までの各法人の回答状況を上記①の評価値平均と比較し、レーダーチ

ャート化したものが以下である。

Page 38: 社会福祉法人に設置される会計監査人の 導入効果等 …...厚生労働省 平成29年度生活困窮者就労準備支援事業費等補助金 社会福祉推進事業

34

図表 10 法人1から17までの各法人の評価値平均

[凡例]

番号 内容

1 自法人の経営環境(内部経営環境・外部経営環境)を把握する機会になる。

2 財務リスクの把握を通じて経営戦略等実現のための財務改善が必要との認識につながる。

3 月次情報を収集・分析し経営層に報告する体制を整備し法人の経営基盤強化につながる。

4 利害関係者に計算書類等を開示することで社会的信頼性の向上につながる。

5 職員満足度(ES)の向上につながる。

6 利用者満足度(CS)の向上につながる。

7 行政指導監査の指摘とは異なる気づきにより、業務改善が期待される。

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35

[凡例]

番号 内容

1 自法人の経営環境(内部経営環境・外部経営環境)を把握する機会になる。

2 財務リスクの把握を通じて経営戦略等実現のための財務改善が必要との認識につながる。

3 月次情報を収集・分析し経営層に報告する体制を整備し法人の経営基盤強化につながる。

4 利害関係者に計算書類等を開示することで社会的信頼性の向上につながる。

5 職員満足度(ES)の向上につながる。

6 利用者満足度(CS)の向上につながる。

7 行政指導監査の指摘とは異なる気づきにより、業務改善が期待される。

Page 40: 社会福祉法人に設置される会計監査人の 導入効果等 …...厚生労働省 平成29年度生活困窮者就労準備支援事業費等補助金 社会福祉推進事業

36

[凡例]

番号 内容

1 自法人の経営環境(内部経営環境・外部経営環境)を把握する機会になる。

2 財務リスクの把握を通じて経営戦略等実現のための財務改善が必要との認識につながる。

3 月次情報を収集・分析し経営層に報告する体制を整備し法人の経営基盤強化につながる。

4 利害関係者に計算書類等を開示することで社会的信頼性の向上につながる。

5 職員満足度(ES)の向上につながる。

6 利用者満足度(CS)の向上につながる。

7 行政指導監査の指摘とは異なる気づきにより、業務改善が期待される。

Page 41: 社会福祉法人に設置される会計監査人の 導入効果等 …...厚生労働省 平成29年度生活困窮者就労準備支援事業費等補助金 社会福祉推進事業

37

① 分析フレームによる結果

全項目で平均を上回った法人

(レーダーチャートの赤枠)

法人2、9、11、12、13

(法人9、11、12、13は全項目で「5」)

全項目で平均を下回った法人

(レーダーチャートの青枠) 法人3、6、10

これら法人について、中長期的な効果に関する記述(質問 2)を整理すると、平均を上

回った法人の代表的なコメントは、

A) 会計監査人とのディスカッションを通じて、自法人の強み・弱み等の把握を

行うこと、法人の置かれている状況を客観的な視点から考えることは、外部

の視点を交えて経営環境を考える良い機会である。

B) 経営計画の達成状況を適切に把握するためにも、財務報告に係る内部統制を

整備し、法人本部における財務リスクを適時適切に把握できる。

C) 法人の各拠点において財務状況を分析することで、施設管理者自身が経営基

盤の強化に取り組めるよう研鑽を重ねていこうと考えている。

D) 法人の内部統制を整備し、月次での財務情報の作成が可能となり、理事長等

の経営層に報告する体制も整備される。それに伴い、理事長等の経営層に報

告すべき情報も整理されるため、報告に必要な情報(財務情報・非財務情報)

収集の体制も整備され、経営基盤強化につながると考えられる。

E) 会計監査の導入により、適切な計算書類等の作成体制が整備されることで法

人内での分析・報告体制が構築され、将来情報についても適時に検討を行う

ことができるようになる。その結果、開示情報の社会的信頼性の向上につな

がると考えられる。

F) 職務分掌、職務権限の明確化による業務標準化、また、人事評価制度の明確

化による労働環境の改善等が職員満足度(ES)の向上をもたらすと思われ

る。

G) 業務標準化で職員の事務作業が効率化され、その分利用者へのサービスに注

力することができ、利用者満足度(CS)の向上につながると思われる。

一方、平均を下回った法人の代表的なコメントは、

H) 会計監査導入前から、経理処理等については、税理士等との間で相互確認体

制を構築していたため、会計監査導入によって、特に新たな効果は見出しに

くい。

I) 会計監査の効果として「利害関係者に適正な計算書類を開示することによる

社会的信頼性の向上」という観点は考えていなかった。

Page 42: 社会福祉法人に設置される会計監査人の 導入効果等 …...厚生労働省 平成29年度生活困窮者就労準備支援事業費等補助金 社会福祉推進事業

38

J) 会計監査導入が、利害関係者の社会的信頼性向上に結び付くかどうかは疑

問。

K) 職員満足度(ES),利用者満足度(CS)の向上という観点で、会計監査の

効果を捉えていない。

L) 会計監査導入で、職員の労働環境が改善されるというよりも、事務負担増に

つながると思われる(ESにはつながらない)。

M) 行政の指導監査とは異なる点から専門的助言をしてもらえる期待はあるが、

行政との見解が異なる場合の対処方法に不安。

となっている。

これらコメントをみてわかることは、平均を上回った法人(すなわち会計監査に対して中

長期的に高い期待を有している法人)は、会計上の誤り等の指摘に対応するだけでなく、そ

れを契機に自法人の経営基盤の再構築を図るとともに、施設運営から法人経営への脱皮を

図ろうという姿勢がみてとれる。

また、効果・課題についても直接的短期的な視座でとらえるのではなく、監査導入に係る

当面の負担よりも中長期的な効果に高い期待を寄せている。

これに対して、平均を下回った法人は、計算書類の誤りの修正といった直接的な効果の認

識にとどまっており、会計監査導入に係る諸負担(事務負担や監査報酬)が相対的に重く感

じられているようである。

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39

(2)現在の課題・取組み状況に関する法人と会計監査人との認識比較

会計監査導入にあたって社会福祉法人の内部統制の整備状況等につき、社会福祉法人と

会計監査人との間の認識格差を表したのが下図である。

具体的には、社会福祉法人の評価平均値から会計監査人の評価平均値との差の大きい順

から並べなおしている。

上段が調査票の視点1~8の分類、下段が項目番号9~40の分類で整理している。

図表 11 法人と会計監査人の現状に関する評価の差異(視点別)

図表 12 法人と会計監査人の現状に関する評価の差異(項目別)

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40

図表 13 法人と会計監査人の現状に関する評価の差異(項目名入り)

項目番号 視点番号 内容法人の評価

平均値

会計監査人の

評価平均値

法人の評価平均

値-会計監査人

の評価平均値

28 4 資金管理業務にかかる内部牽制ならびに業務の標準化・手順書の整備・運用・見直し。 3.53 3.18 0.35

33 6 預金の支払手続きにかかる内部牽制ならびに預金の保管にかかる管理体制の整備・運用・見直し。 4.00 3.71 0.29

24 3関連当事者間取引の把握、取引実施の承認手続き、取引内容開示など、関連当事者間取引にかかる情

報開示。2.86 2.64 0.21

15 2 会計基準省令、運用指針、その他会計関係通知等の不明点を解消する体制の構築。 3.82 3.65 0.18

21 3 IT(ハード、ソフト)の管理体制(責任者、職務内容、IT研修)の整備・運用・見直し。 2.82 2.65 0.18

20 3 予算の積算、進捗管理、補正予算などを規定した予算管理規程等の整備・運用・見直し。 3.65 3.47 0.18

32 6 現金の入出金手続きにかかる内部牽制ならびに現金の保管にかかる管理体制の整備・運用・見直し。 4.18 4.06 0.12

30 5 会計業務にかかるチェックリスト、会計業務マニュアルの整備・運用・見直し。 3.35 3.24 0.12

17 3 財務、人事、ITなど管理機能の法人本部への集約化等による本部機能の強化。 3.75 3.69 0.06

37 7 事業収益の不正・誤謬を対象にした内部監査体制の整備・運用・見直し。 3.00 2.94 0.06

22 3 人材育成制度(考課制度、キャリアアッププラン、メンタルケア、研修計画等)の整備・運用・見直し。 4.18 4.12 0.06

16 3 法人の決裁基準、職務分掌・職務権限の整理による職務権限規程(規則)の実効性確保。 3.94 3.88 0.06

10 1 拠点区分の財務状態(リスク)を分析し、報告する体制の整備。 3.88 3.82 0.06

26 4 購買業務にかかる内部牽制ならびに業務の標準化・手順書の整備・運用・見直し。 3.41 3.35 0.06

14 2 内容不明なまま繰り越された貸借対照表残高を解消する体制の構築。 3.87 3.86 0.01

11 1 法人全体の財務状態(リスク)を分析し、理事会へ報告する体制の整備。 4.12 4.12 0.00

12 1施設・事業所の利用人数、職員数、稼働率等の非財務データによる要因分析をおこない、収益性の評価と

改善点を認識する体制の整備。4.00 4.00 0.00

18 3 コンプライアンスにかかる法人の取り組み(組織、責任者、研修の実施)の可視化。 4.53 4.53 0.00

27 4 人件費関連業務にかかる内部牽制ならびに業務の標準化・手順書の整備・運用・見直し。 3.24 3.24 0.00

31 5 決算手続きのリスト化、決算業務マニュアルの整備・運用・見直し。 3.35 3.35 0.00

34 6 固定資産の現物の保管管理体制の整備・運用・見直し。 3.35 3.35 0.00

36 7 請求時における加算・減算要件の確認体制の整備・運用・見直し。 3.88 3.88 0.00

38 8 業者選定手続きの透明性にかかる内部統制手続きの整備・運用・見直し。 4.41 4.41 0.00

39 8 契約の透明性にかかる内部統制手続きの整備・運用・見直し。 4.47 4.47 0.00

19 3内部監査部門(監事監査を含む)の組織における位置づけの明確化、内部監査部門の役割・体制の明

確化、ならびに内部監査の実効性確保。3.00 3.06 -0.06

35 7 利用契約時ならびに利用者情報更新時の確認体制の整備・運用・見直し。 3.71 3.76 -0.06

13 2 過年度の会計処理の誤りによる計算書類並びに社会福祉充実残額の誤りの認識を修正する体制の構築。 3.13 3.20 -0.07

29 4 在庫管理業務にかかる内部牽制ならびに業務の標準化・手順書の整備・運用・見直し。 3.09 3.17 -0.08

25 4 請求業務にかかる内部牽制ならびに業務の標準化・手順書の整備・運用・見直し。 3.00 3.12 -0.12

9 1 会計業務の効率化による、拠点区分(施設・事業所)の月次報告書(試算表)の作成。 4.12 4.24 -0.12

23 3 公印・銀行印の使用管理体制等の整備・運用・見直し。 4.12 4.35 -0.24

40 8 施設整備にかかる会計処理の不明点を相談することによる会計処理の重要な誤謬の回避。 4.24 4.56 -0.33

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41

視点別で最も大きな差が生じたのは、「視点6」(資産の保全・管理体制の整備)であった。

項目別で最も大きな差が生じたのは、「項目28」(資金管理業務にかかる内部牽制ならび

に業務の標準化・手順書の整備・運用・見直し)であり、いずれも法人の自己認識と比較し

て、会計監査人の評価が低くなっている。

視点6、評価項目28は、資産の保全・管理に関連するものであり、財産保全に関して、

会計監査人の評価と法人との認識格差が認められる。

ただし、最も大きな差が生じた「視点6」「項目28」でも、その差はそれぞれ「0.1

4」「0.35」であった。

これは、本調査の回答にあたって、予備調査実施前の段階では法人が自己を客観的に評価

できるほどの知識を持ち合わせていなかったものの、モデル事業を契機に会計監査人との

コミュニケーションを深める中で、的確な自己認識をしうるに至ったためと思われる。

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42

(3)現在の課題・取組み状況と今後の改善水準との比較

社会福祉法人が、自法人の体制整備状況を今後、会計監査導入によってどこまで改善して

いきたいのか、その差を表したのが下の図表である。

具体的には、法人の将来の改善水準の平均値から法人の現状の評価平均値との差の大き

い順から並べなおしている。

上段が調査票の視点1~8の分類、下段が項目番号9~40の分類で整理している。

図表 14 現状の評価と将来の改善水準の差(視点別)

図表 15 現状の評価と将来の改善水準の差(項目別)

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図表 16 現状の評価と将来の改善水準の差(項目名入り)

項目番号 視点番号 内容将来の改善

水準平均値

現状の評価

平均値

将来の改善水準の

評価平均値-現状の

評価平均値

24 3関連当事者間取引の把握、取引実施の承認手続き、取引内容開示など、関連当事者間取引にかかる

情報開示。4.86 2.86 2.00

37 7 事業収益の不正・誤謬を対象にした内部監査体制の整備・運用・見直し。 4.47 3.00 1.47

21 3 IT(ハード、ソフト)の管理体制(責任者、職務内容、IT研修)の整備・運用・見直し。 4.18 2.82 1.35

25 4 請求業務にかかる内部牽制ならびに業務の標準化・手順書の整備・運用・見直し。 4.35 3.00 1.35

19 3内部監査部門(監事監査を含む)の組織における位置づけの明確化、内部監査部門の役割・体制の

明確化、ならびに内部監査の実効性確保。4.29 3.00 1.29

27 4 人件費関連業務にかかる内部牽制ならびに業務の標準化・手順書の整備・運用・見直し。 4.41 3.24 1.18

30 5 会計業務にかかるチェックリスト、会計業務マニュアルの整備・運用・見直し。 4.47 3.35 1.12

31 5 決算手続きのリスト化、決算業務マニュアルの整備・運用・見直し。 4.47 3.35 1.12

26 4 購買業務にかかる内部牽制ならびに業務の標準化・手順書の整備・運用・見直し。 4.50 3.41 1.09

28 4 資金管理業務にかかる内部牽制ならびに業務の標準化・手順書の整備・運用・見直し。 4.59 3.53 1.06

35 7 利用契約時ならびに利用者情報更新時の確認体制の整備・運用・見直し。 4.71 3.71 1.00

34 6 固定資産の現物の保管管理体制の整備・運用・見直し。 4.35 3.35 1.00

20 3 予算の積算、進捗管理、補正予算などを規定した予算管理規程等の整備・運用・見直し。 4.53 3.65 0.88

13 2過年度の会計処理の誤りによる計算書類並びに社会福祉充実残額の誤りの認識を修正する体制の構

築。4.00 3.13 0.87

17 3 財務、人事、ITなど管理機能の法人本部への集約化等による本部機能の強化。 4.53 3.75 0.78

16 3 法人の決裁基準、職務分掌・職務権限の整理による職務権限規程(規則)の実効性確保。 4.71 3.94 0.76

33 6 預金の支払手続きにかかる内部牽制ならびに預金の保管にかかる管理体制の整備・運用・見直し。 4.71 4.00 0.71

10 1 拠点区分の財務状態(リスク)を分析し、報告する体制の整備。 4.59 3.88 0.71

12 1施設・事業所の利用人数、職員数、稼働率等の非財務データによる要因分析をおこない、収益性の評

価と改善点を認識する体制の整備。4.69 4.00 0.69

29 4 在庫管理業務にかかる内部牽制ならびに業務の標準化・手順書の整備・運用・見直し。 4.19 3.50 0.69

15 2 会計基準省令、運用指針、その他会計関係通知等の不明点を解消する体制の構築。 4.50 3.82 0.68

22 3 人材育成制度(考課制度、キャリアアッププラン、メンタルケア、研修計画等)の整備・運用・見直し。 4.81 4.18 0.64

36 7 請求時における加算・減算要件の確認体制の整備・運用・見直し。 4.50 3.88 0.62

14 2 内容不明なまま繰り越された貸借対照表残高を解消する体制の構築。 4.73 4.13 0.60

32 6 現金の入出金手続きにかかる内部牽制ならびに現金の保管にかかる管理体制の整備・運用・見直し。 4.75 4.18 0.57

9 1 会計業務の効率化による、拠点区分(施設・事業所)の月次報告書(試算表)の作成。 4.69 4.12 0.57

11 1 法人全体の財務状態(リスク)を分析し、理事会へ報告する体制の整備。 4.69 4.12 0.57

23 3 公印・銀行印の使用管理体制等の整備・運用・見直し。 4.56 4.12 0.44

38 8 業者選定手続きの透明性にかかる内部統制手続きの整備・運用・見直し。 4.81 4.41 0.40

39 8 契約の透明性にかかる内部統制手続きの整備・運用・見直し。 4.75 4.47 0.28

18 3 コンプライアンスにかかる法人の取り組み(組織、責任者、研修の実施)の可視化。 4.75 4.53 0.22

40 8 施設整備にかかる会計処理の不明点を相談することによる会計処理の重要な誤謬の回避。 4.69 4.50 0.19

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44

視点別で最も大きな差が生じたのは、「視点5」(会計業務の効率化・標準化・手順書の

整備・運用の向上)であった。

項目別で最も大きな差が生じたのは、「項目24」(関連当事者間取引の把握、取引実施

の承認手続き、取引内容開示など、関連当事者間取引にかかる情報開示)であった。

規程やマニュアル類の整備による法人の基盤整備、関連当事者間取引の透明性確保に向

けた取り組み姿勢がみてとれる。

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45

(4)改善の「必要性」と改善の「意欲」との統合指数

上記(2)で示された法人と会計監査人との現状認識格差が大きいもの(ただし、会計

監査人の評価のほうが、法人の評価よりも低い場合に限る)を改善の「必要」指数と定義

し、また、上記(3)で示された法人の現状評価と将来の改善水準との差を改善の「意欲」

指数と定義した場合、両指数の合計値(改善「必要」指数+改善「意欲」指数)が高いほ

ど、必要性の高い項目に対して、改善の対策を講じていこうという法人の姿勢を見て取る

ことができる。

これは、法人と会計監査人の対話を通じて、改善すべき項目が明確化されるとともに、

それを法人が自発的に改善していこうという認識に至ったという点で、会計監査導入に

より期待される効果の一つである。

図表 17 改善の「必要性」と改善の「意欲」との統合指数

(注)最上位の視点を「8点」、最下位の視点を「0点」とし、その間の視点については、差分を取り順位

をつけ、合計値を統合指数とした。

上図をみると、「視点5」(会計監査業務の効率化・標準化・手順書の整備・運用の向上)

が最も大きく、「視点4」(経理業務にかかる内部牽制ならびに業務手順の標準化・手順書の

整備・運用の向上)、「視点3」(内部統制・ガバナンスの向上・強化・可視化)、「視点6」

(資産の保全・管理体制の整備)が上位にきた。

規程やマニュアル類の整備・運用を通じて、法人経営の効率化・標準化を確保するととも

に、ガバナンス強化により、特定個人の力量に依存しない経営体質構築を目指す動きが重視

されている。

改善「必要」指数 改善「意欲」指数「必要」指数

+「意欲」指数

視点6 8.00 視点5 8.00 視点5 13.44

視点3 6.68 視点4 7.68 視点4 12.94

視点5 5.44 視点7 7.16 視点3 12.66

視点4 5.26 視点3 5.98 視点6 12.52

視点2 5.21 視点6 4.52 視点7 10.33

視点7 3.17 視点2 4.08 視点2 9.29

視点1 3.04 視点1 0.35 視点1 3.39

視点8 0.01 視点8 0.02 視点8 0.03

+ =

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(5)会計監査導入に関する課題

会計監査導入に関する課題としては、項目42「監査費用の負担に対して、費用対効

果として、満足できる成果が得られないという懸念」、項目43「担当者の兼務状況や

労務負担等、法人側の監査受け入れ体制の整備にかかる懸念」について5段階で評価し

ていただいた(「5」大いに懸念している~「1」ほとんど懸念していない)。

その結果、項目42、43の平均値はそれぞれ「2.59」「2.76」となり、懸

念の程度はさほど大きくない状況にあるといえる。

また、項目42、43ともに、法人間でのばらつきが大きく、法人によって課題の受

け止め方に差異がある(法人6のように、いずれも「5」と評価するものがある一方、

法人10、11、15はいずれも「1」の評価であった)

図表 18 会計監査に対する費用対効果の懸念

図表 19 会計監査に対する法人の受け入れ態勢設備にかかる懸念

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懸念事項に対する自由記述は以下のとおりである(全回答を掲載)。

A) 公認会計士等の地域偏在が課題。地方では会計監査人が確保できない、監査費用が高

額となるなど、大都市部と比較して不利な条件となる可能性が高い。

B) 監事のうち1名が公認会計士又は税理士の場合、会計監査人は不要と思われる。会計

監査人(会計の専門家)によるチェックよりも、法人が提供するサービスの評価(第

三者評価やISOなど)の徹底が国民からは求められているように感じる。

C) 会計監査導入は、会計担当者を含め法人全体の経営状況や業務内容を確認してもら

えるよい機会であり、大変有効と考えているが、内部管理体制の整備を含め、法人内

部の業務負担が重くなっている。

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第4章 平成 29 年度調査研究事業のまとめ

本章で以下に記載する平成 29年度調査研究事業の結果については、法人が会計監査報告

を受ける前の段階で、今後期待される効果や改善の方向性をアンケート調査等により確認

したものであることに留意が必要である。

今後、法人が会計監査報告を受けたのちに、改めて本調査結果の検証を行うことが必要で

ある。

1.アンケート調査、事例調査から得られた結果

17 法人へのアンケート調査および、検討委員会(第 3 回)で発表した2法人の事例に基

づいて、会計監査導入により期待される効果を整理すると以下のようになる。

(1)内部統制構築の重要性を認識

P45 のアンケート調査分析(統合指数分析)でみられるように、アンケート調査対

象となった 17法人については、会計や経理業務の効率化の推進、内部牽制機能の強化、

ガバナンス体制の向上といった内容が、法人にとって改善の必要性が高く、かつ、改善

に向けた意欲が高いものとしてあげられた。

内部統制とは、①業務の有効性および効率性、②財務報告の信頼性、③事業活動に関

わる法令等の遵守ならびに④資産の保全という四つの目的が達成されているとの合理

的な保証を得るために、業務に組み込まれ、組織内の全ての者によって遂行されるプロ

セスをいう。経営者は、適正な財務諸表を作成し、国民一般に対して開示する責任を有

するが、適正な財務諸表を作成するために必要な内部統制を整備し運用しなければな

らないとされている。

内部統制の整備及び運用は自律的な運営の前提であり、自ら適正な運営を確保し、経

営の方向性を決定する上で不可欠である。

また、内部統制の整備および運用状況は、監査手続に影響を与えることから、監査計

画時から期中監査を通じて検討されるが、会計監査人と法人のコミュニケーションを

通じて、法人は自らの内部統制の整備・運用状況にかかる問題の所在を客観的に認識す

るとともに、何を改善するべきかが明確になる。

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(2)自法人の強みや課題の明確化、中長期的視点での経営に向けた意識の確立

P33 のアンケート調査結果(中長期的に期待される効果)では、項目番号2「計算

書類等の誤りの修正や財務リスクの把握を通じて、経営戦略や中長期計画を実現する

ために財務面の改善が必要であるとの認識につながる」や項目番号1「会計監査導入に

より、自法人の経営環境(内部経営環境・外部経営環境)を把握する機会になる」とい

った項目が、5点満点中で4点を超える評価値平均となった。

法人の経営戦略や中長期計画の策定・実現においては、経営環境の把握のほか、財務

状況の適切な認識が必要である。会計監査の導入により、適正な計算書類等を作成する

ことは、法人の中長期的な取組みにも寄与するという効果が期待されている。

(3)法人の経理担当者の実務能力向上

2法人の事例調査では、職業専門家である会計監査人から適切な経理処理方法の指

導、および、実務相談等を通じて法人の経理担当者の実務能力が向上したという意見が

聞かれた。

具体的には、行政指導監査や監事監査は「その時点での会計帳簿の整合性」や「資金

使途」について問われることが多く、実際的な会計処理方法の指摘や指導を受けるケー

スは多くないが、経理担当者にとって会計監査人による監査は、行政指導監査とは異な

る気づき、知識が得られるよい機会であるとの期待が寄せられている。

今般の社会福祉法人会計は複雑化しており、会計担当者の専門性が求められるとこ

ろである。会計監査を通じて経理担当者の実務能力が向上することで、適正な財務諸表

の作成につながると期待される。

この点については、17法人へのアンケート調査結果でも明らかであり、P33にある

ように、会計監査導入により中長期的に期待される効果のうち、最も評価値平均が高い

項目が「行政指導監査の指摘とは異なる気づきにより、業務改善が期待される」であっ

た。

以上のように、アンケート調査、および、事例調査では会計監査導入によって期待さ

れる効果としては、法人の会計および経理面の基盤強化とそれを通じた経営力の向上

であるといえよう。ただし、本調査は以下の点で、「会計監査導入の効果」を分析し結

論付けるには、限界がある点に留意が必要である。

・ アンケート調査は、本監査実施前に行われたものであること。

・ アンケート調査の対象は 17 法人であり、かつ、これらは会計監査人の設置が義務

化されていないにもかかわらず会計監査人を先行して設置したという意味におい

て、会計監査導入に対して比較的前向きの意識を有している可能性が高いこと。

・ アンケート調査の対象法人に対して、ヒアリング調査を実施していないこと。

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50

2.委員からあげられた意見

本調査は、学識経験者、公認会計士、および法人経営者により構成される検討委員会を

設置し、各種検討を行った。

前述のように、本調査で実施したアンケート調査の結果のみでは、会計監査導入の効果

を分析し結論付けるためには限界がある。このため、検討委員会では、かかる点を補いつ

つ、会計監査導入の効果、および、課題について以下の意見を頂いた。

【会計監査導入について想定される効果について】

(1)法人経営の透明性、信頼性の向上

社会福祉法人を取り巻くステークホルダーは、利用者はもちろんその家族、ボランテ

ィア、地域住民、取引業者など多岐に渡る。

これらステークホルダーに対して、法人の実態を反映した計算書類や財務状態に対

する経営者の所見を適時・適切に開示することは、社会福祉法人が地域のなかで選ばれ

る存在になるためには不可欠といえる。

これら開示資料について会計監査人の監査を受けることは、専門家からの“お墨付き”

をもらうことになり、経営の透明性向上とともにステークホルダーからの信頼性向上

にも寄与することになると期待される。

(2)業界の社会的信頼性の向上

公認会計士法第 1 条に規定されている公認会計士の使命によると、会計監査は必ず

しも「不正」の発見を直接の目的とするのではないが、社会福祉法人の財務書類の信頼

性の確保を通じ、より良い運営、ひいては全てのステークホルダーに寄与することが期

待される。従って、会計監査制度は公共性が高く、その効果は、社会福祉法人のみなら

ず、社会全体に及ぶものと想定される。

【会計監査導入について想定される課題について】

(1)社会福祉法人の課題

会計監査導入における社会福祉法人側の課題としては、会計監査人に支払う監査費

用の負担があげられる。監査費用は、法人の内部統制の構築状況に依存するため、法人

の内部統制が整備充実し、会計監査導入の効果が中長期的に実感され、法人の内部統制

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が整備充実すれば、費用負担感はおのずから軽減されてこよう、との意見があった。

なお、アンケート調査では、会計監査人が設置されることにより社会福祉法人の書類

作成等の事務負担が大きくなるのではないかとの指摘もあったが、社会福祉法人が作

成するべき計算書類等は法令等により定められ、これを適正に作成すること及び内部

管理体制の整備・運用は、社会福祉法人にもともと求められているものであり、会計監

査人を設置することにより新たな義務が課されるわけではないことに留意する必要が

ある。

(2)会計監査人の課題

① 監査人の確保

会計監査制度導入対象となる法人にとって、引受け手となる会計監査人をいかに探

すかは重要な課題である。

第2章でみたように、地方都市部においては、そもそも会計監査人が少ないことから

選任には相当の時間と労力を割いているようである。

この点については、委員会で指摘されたように、地方において事業会社の会計監査に

従事している会計士が社会福祉法人監査にも対応できるよう業界を挙げて社会福祉法

人や社会福祉制度に関する教育やマッチングシステムを充実させることが必要であろ

う。

② 指導的機能の発揮

会計監査人による会計監査の対象は、計算関係書類、財産目録等であり、これらにつ

いて重要な点で適正表示がなされているかどうかの意見が提出されることになる。

一方で、社会福祉法人の公益的性格に鑑み、行政監督目的の補完的機能として、公認

会計士等には、会計監査を通じて社会福祉法人の経営力の強化に資するように研鑽を

すること、法人の実態にあわせたガバナンス体制への改善提案、監査意見の対象となら

ない計算書類(第2様式~第4様式)に誤りがあった場合には、改善に向けた助言をす

ること等の指導的機能の発揮が期待されている。また、監査の過程で識別した重要な内

部統制の不備を適時に書面により監事に報告しなければならないこと等とされており、

これらを着実に実施することにより、社会福祉法人が会計監査導入の効果を感じるこ

とにつながると考えられる。

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(3)行政の課題

① 指導監査との関係について

会計監査人による会計監査は、法人自らが財務報告の信頼性を担保し、説明責任を果

たすことを目的として実施される一方、行政による指導監査は、法人運営の適正性を担

保することを目的として実施される。

それぞれ監査の趣旨は異なるが、会計管理の部分についての監査・確認が重複してい

ること、会計監査により法人の財務会計に関する事務の適正性が確保されていると判

断することが可能であるため、所轄庁の判断により、監査事項の一部を省略するなど、

指導監査の重点化を図ることが可能である。また、監査の実施概要や監査の過程で発見

された内部統制の重要な不備等を記載した報告書を活用することで行政による指導監

査の効率的な実施を図ることが可能とされている。さらに、会計監査人による監査を受

けた場合には、所轄庁の判断により監査周期の延長が可能となっており、その年に実施

する監査について省力化・重点化が可能となるものである。

しかしながら、現在のルールでは、監査事項に重複部分があるとしながらも、所轄庁

の判断により監査事項の省略が行われることになっており、所轄庁の判断によっては

省略が行われない状況が考えられる。今後、制度施行の状況を確認しつつ、会計監査人

から適正意見が提出された場合には、適正な会計監査が実施されたものとし、所轄庁の

判断によらず、監査事項の省略や監査周期の延長を実施することも含めて、これら2つ

の監査の関係と在り方についても検討すべきではないかと考えられる。

② 専門家の積極的活用に向けて

今回の制度改正では、一定規模以上の社会福祉法人については会計監査人が設置さ

れ、財務規律の強化に資する一定の仕組みが担保されているが、会計監査人が設置され

ていない法人についても財務情報の信頼性を確保する観点からは、法人内部における

内部統制が整備され、適正な会計報告を作成する体制が整備される必要がある。一定規

模に満たない法人に対しても、専門家の活用が求められ、内部統制支援や事務処理体制

の支援が推奨されている。

こうした、会計監査人が設置されていない法人に対する支援については、全ての拠点

を対象に継続的な支援を推奨する仕組みだけでなく、例えば行政による指導検査の結

果を踏まえて、内部統制あるいは事務処理体制の弱いところに会計専門家の支援が提

供されるなど、法人の規模・実態に応じて弾力的で実効性のある会計専門家の活用もあ

わせて検討すべきではないかと考えられる。

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③ 会計監査導入の趣旨の明確化

検討委員会においては、会計監査の役割について、決算書類の適正性や適法性に関す

る“批判的機能”が中心との意見がある一方で、こうした批判的機能はもちろんのこと、

内部統制整備や経理担当者の実務能力向上といった“指導的機能”もあわせて発揮する

ことが、会計監査導入の趣旨を達成するために重要であるとの意見が聞かれた。

このように、会計監査導入における立場によって異なる見解がみられることから、今

後、行政としては会計監査導入の趣旨について、一層の明確化および周知をはかってい

くことが課題としてあげられる。

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厚生労働省 平成 29年度生活困窮者就労準備支援事業費等補助金 社会福祉推進事業

平成 29年度 社会福祉法人に設置される会計監査人の導入効果等に関する調査研究事業

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