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総合的な学習の時間学習指導案 自分と出会う ~エゴグラムで自分を見つけよう!~ 自分と出会う ~ジョハリの窓を開ける~ 自己を見つめる ~Life Simulation 高等学校 第1学年~第3学年 神奈川県立新栄高等学校 入月 力 神奈川県立総合教育センター これは、高等学校における「総合的な学習の時間」の学習指導案として研究開発し たものです。 高等学校では、小学校・中学校での7年にわたる「総合的な学習の時間」の取組を 受けて、「生きる力」の育成をねらいに、とりわけ「知の総合化」をはかり、「自己の 在り方生き方」を探求することが大きなねらいの1つになっています。 そこで、本学習指導案は、高等学校「総合的な学習の時間」のカリキュラムとして、 自己の在り方生き方や進路を考察する学習、すなわち「キャリア・プランニング」を コアとした学習活動に着目し、体験活動や課題探求学習等を通じて、3年間の系統性 のある学習を展開することにより、生徒一人ひとりが変化の激しい社会の中で、自己 を見つめる力、自ら生き抜く力を培うことをねらいとして作成されたものです。

総合的な学習の時間学習指導案...総合的な学習の時間学習指導案 自分と出会う ~エゴグラムで自分を見つけよう!~ 自分と出会う ~ジョハリの窓を開ける~

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Page 1: 総合的な学習の時間学習指導案...総合的な学習の時間学習指導案 自分と出会う ~エゴグラムで自分を見つけよう!~ 自分と出会う ~ジョハリの窓を開ける~

総合的な学習の時間学習指導案 自分と出会う ~エゴグラムで自分を見つけよう!~

自分と出会う ~ジョハリの窓を開ける~ 自己を見つめる ~Life Simulation~

高等学校 第1学年~第3学年

神奈川県立新栄高等学校 入月 力

神奈川県立総合教育センター

これは、高等学校における「総合的な学習の時間」の学習指導案として研究開発し

たものです。

高等学校では、小学校・中学校での7年にわたる「総合的な学習の時間」の取組を

受けて、「生きる力」の育成をねらいに、とりわけ「知の総合化」をはかり、「自己の

在り方生き方」を探求することが大きなねらいの1つになっています。

そこで、本学習指導案は、高等学校「総合的な学習の時間」のカリキュラムとして、

自己の在り方生き方や進路を考察する学習、すなわち「キャリア・プランニング」を

コアとした学習活動に着目し、体験活動や課題探求学習等を通じて、3年間の系統性

のある学習を展開することにより、生徒一人ひとりが変化の激しい社会の中で、自己

を見つめる力、自ら生き抜く力を培うことをねらいとして作成されたものです。

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高等学校「総合的な学習の時間」

― ―学習指導案(1) 3年間の学習指導計画

ア 3年間の学習内容

イ 学習形態

ウ 各年次での学習のねらい

エ 3年間の学習指導計画

(2) 年間学習指導計画

ア 高等学校1学年「総合的な学習の時間」学習指導計画

イ 高等学校2学年「総合的な学習の時間」学習指導計画

ウ 高等学校3学年「総合的な学習の時間」学習指導計画

(3) 自己認識を深めることを目的とした「総合的な学習の時間」の学習指導案ア 自己認識を深めることを目的とした「総合的な学習の時間」の学習指導案①

イ 自己認識を深めることを目的とした「総合的な学習の時間」の学習指導案②

ウ 自己認識を深めることを目的とした「総合的な学習の時間」の学習指導案③

〔参考資料〕 参考資料Ⅰ……「エゴグラムで自分を見つけよう!」学習用ワークシート

参考資料Ⅱ……「ジョハリの窓を開ける」学習用ワークシート

参考資料Ⅲ……「Life Simuration」学習用ワークシート

平成13年度長期研修員神奈川県立新栄高等学校 入月 力

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高等学校「総合的な学習の時間」学習指導案

(1) 3年間の学習指導計画ア 3年間の学習内容学習活動の軸として、生徒が在り方生き方や進路を考察する学習(キャリア・プランニング)を展開し、深

化された学びのモチベーション(興味・関心)が生徒の課題研究学習や社会体験活動にフィードバックされる

ような学習活動の展開を考慮し、3年間のシラバスを編成した。また、これらに対する取り組みを通じ、生徒

が自己の在り方生き方や社会のしくみ、職業などについて考え、活動し、表現するなかで、進んで主体性を育

み、個々の興味や関心が次第に社会化され、社会との接点を通じた個々の将来への思いが、発展的に自己の進

路実現にむかっていくような学習内容とカリキュラムの編成に留意した。

具体的には、個人(グループ)研究、自己認識力を高める各種演習、スキル習得のための講習会、外部講師

による講演会、職場訪問・社会体験、ライフレポート(作文)、スピーチ、出前講座などを配するとともに、

教科学習や進路指導との連携をはかった。さらに、地域社会への貢献や地域住民との交流をはかる目的で、学

年単位で年に一度ずつ、地域美化ボランティア活動を実施することとした。

イ 学習形態グループ学習、個人学習を中心に、学習内容に応じて学年一斉・クラス単位などの学習形態を展開すること

とした。

ウ 各年次での学習のねらい(ア)1年次……自己探求学習:「自己発見・自己探求」を目標とし、生徒の自己理解力や社会認識力を高

めるとともに、自己の在り方生き方や進路、自己と社会との結びつきなどについて考察させ

る。

(イ)2年次……テーマ学習:「自己啓発」を目標とし、生徒が自ら課題を発見・追究・解決・表現してい

く活動を通じ、知の総合化や専門化、社会性の延伸、進路意識の拡充などをはかっていく。

(ウ)3年次……トライアル学習:「自己発展・自己実現」を目標とし、実体験を通じ社会に学び、社会へ

の参画と共生をはかりながら、高い理想をもって未来にむかう生徒を育んでいく。

〈学習構想図〉

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エ 3年間の学習指導計画

〈 学習計画「総合的な学習の時間」 iーReport〉

「自己探求学習」 「テーマ学習」 「トライアル学習」学習の名称

月 学校行事 時数 1学年(35時間) 2学年(35時間) 3学年(35時間)

全体オリエンテーション① 全体オリエンテーション① 全体オリエンテーション①4 入学式 4① ① ①生き方講演会 コース別ミニ講演会 キャリア講演会② ①「エゴグラム」 社会体験コース登録

④学習テーマ決定①「ジョハリの窓」演習

ライフ・レポート(作文)5 遠足 2① 社会コース別ガイダンス①中間考査 ~3

体験事前学習②⑤6 体育祭 調査研究4

~15 ④「セ・ラ・ビ!」⑥(ミニテーマ学習 (フィールドワーク 社会体験学習第1日⑥人物・生き方研究) 事前学習) 社会体験学習第2日

③報告書作成

① ライフ・レポート(作文)7 期末考査 1 企業訪問ガイダンス フィールドワーク④出前ゼミナール希望調査① ①球技大会 ~5

①地域美化ボランティア

フィールドワーク報告書作成8 夏季休業 職業人インタビュー

芸術鑑賞 (進路9 4 出前ゼミナール2分間スピーチ会 ⑥ 別出張講座)②企業訪問事前学習

「Young Message」④準備

④ ③10 2 調査研究修学旅行 企業訪問(2年) ~8

②(展 ②中間考査 壁新聞づくり クラス発表会示)

(文化祭)全体発表会②11 文 化 祭 2 生と死を見つめて

「ライフ・シミュレーシ ③ (映画上映と討論)(11/2, ~3 研究のまとめ作成ョン」演習②3)

ライフ・レポート(作文)② プレゼンテーション演習① ②12 期末考査 2 進路適性検査

①生徒総会 地域美化ボランティア

i-Report(文集)の製作1 卒業考査 2② ③ ①(3年) ~3 テーマ学習事前学習 発表準備

(コース予備登録) ①1年間の振り返り

③2 4 研究発表会見学③ テーマ学習研究発表会テーマ学習コース登録 発表会の反省①

社会体験学習予備調査①① ライフ・レポート(作文)3 2 地域美化ボランティア卒業式

学年末考 ① ①1年間の振り返り査 ①1年間の振り返り

この学習にとり組む生徒に望む、学習への基本的な心構えを、intellectual(知的な)、 imaginative註:(想像力に富む)、 individual(個別的な)とし、それぞれの頭文字「i」と、「i」というアルファベットの持つ多義性とデザイン性に着目し、本学習の名称を〈i-Report〉と命名した。

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(2) 年間学習指導計画ア 高等学校1学年「総合的な学習の時間」学習指導計画

35時間学習計画

月 単 元 学習活動の内容 学習形態 学習方法と教師の支援等つけたい力(配当時間)

4 □全体オリエンテーション(1) 学年一斉 ・概要、日程、ポートフォリオ等の理解。学習風景ビデオ上映。

□生き方講演会:「探求から探究へ」 学年一斉 ・外部講師によるこの学習の基調講(1) 自己 演。講演後、感想文記入。□ HR 理解 ・自己の性格傾向を理解する。「エゴグラムで自分を見つけよう」(2)

5 □「ジョハリの窓を開ける」(1) グループ 自己 ・ワークシートを用いたグループワ分析 ーク。自己の性格傾向の理解。

□ ン HR ・国語科の書き方表現指導との連携ライフ・レポート:「夢をデザイ(1) 情報 をはかる。する」

収集6 □ 「セ・ラ・ビ!」 HR ・歴史上の人物、著名人など関心のミニ・テーマ学習

&個人 情報 高い人物の生き方について各自調査〔C'est la vie!=これが人生だ!(4) 活用 研究を行う。~人物・生き方研究~〕

・教科「情報」との連携(ネット検索)。図書館利用ガイダンス

7 □「企業訪問」ガイダンス(1) HR& ・概要の理解、人物研究に選んだ人グループ 物類型からグループ編成を行う。

・夏休み課題「職業人インタビュー」の方法、マナーなどの確認。

8 □職業人インタビュー〔夏休み課題〕 個人 協働 *身近な社会人へのインタビュー。

9 □「企業訪問」事前学習(6) グループ 表現 ・ブレーンストーミング10 ・ネット検索などによる調査。

社会 ・訪問先の選定(交渉)。認識 ・調査計画書提出。

・アポイントメント演習、礼状書き方指導について、国語科と連携

□「企業訪問」(4) グループ ・原則的に指定日(午後)に実施。□ 壁新聞作成(2)〔文化祭で展 グループ ・「現代社会」でのNIE授業との示〕 連携をはかる。

11 □ HR& ・ワークシートを用いた演習。グル「ライフ・シミュレーション」演習グループ ープ内で付箋を用いて発表。(2)

12 □進路適性検査(2) HR ・進路指導部と協同。検査用紙の発送、結果処理等を業者に委託する。

1 □「テーマ学習」ガイダンス(1) 学年一斉 自己 ・概要、趣旨、各コースの特徴な理理解 解。前年度活動風景ビデオ上映。

□「テーマ学習」事前学習・コース予 HR ・「進路適性検査」の結果などを参備登録(1) 自己 考にコースの仮決定を行う。

分析2 □「2学年テーマ学習研究発表会」の 個人 ・①自然環境 ②サイエンス

見学(3) 課題 ③国際文化 ④人文科学発見 ⑤生活・健康 ⑥創作

上記6コースを予備登録したコースを中心に自由見学、感想記入。

□「テーマ学習」コース本登録(1) HR

3 □地域美化ボランティア(1) 学年一斉 ・美化委員会を中心に計画、実施。□1年間の振り返り(1) HR ・自己評価。**春休み課題指示。

*夏季休業中の課題として身近な社会人を生徒の任意で選択び、職業に関する聞き取り調査を行い、結果をレポートにまとめる。

社会を体感する

自己を見つめる

自分と出会う

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イ 高等学校2学年「総合的な学習の時間」学習指導計画

「テーマ学習」学習名

「自己啓発」を目標とし、生徒が自ら課題を発見・追究・解決・表現していく活動を通学習のじ、知の総合化や専門化、社会性の延伸、進路意識の拡充などをはかっていく。目標

35時間学習計画

月 単 元 学習活動の内容 学習形態 学習方法と教師の支援等つけたい力(配当時間)

4 □全体オリエンテーション(1) 学年一斉 ・概要、日程等の理解5 □コース別ガイダンス コース ・卒業生(or職員)を講師としたコー

コース別ミニ講演会(1) ス別パネルディスカッション。

①自然環境 ②サイエンス③国際文化 ④人文科学⑤生活・健康 ⑥創作

情報□研究テーマ決定ための調査研究 コース 収集 ・コース担当が適宜学習相談にあた(4)〔研究テーマ決定〕 &個人 る。□コース別ガイダンス(1) コース 課題 ・研究テーマの共通性をもとにコース

発見 内のグループ編成を行う。

6 □調査研究(4) 個人or ・調査研究の学習形態は、原則的に個グループ 課題 人によるが、状況に応じてグループに

整理 よる合同研究も可とする。・フィールドワークは原則的にグルー〔フィールドワーク計画書提出〕

協働 プ単位で行動する。必要に応じて訪問先との交渉も行う。・ブレーンストーミング、KJ法。

7 □フィールドワーク(4) グループ ・半日程度の行動。公的施設への訪問は校長名で依頼する。

HR ・進路指導部と協同。内容は進路別に□「出前ゼミナール」希望調査講義、実演、進路相談など。講師等の(1)手配は業者に委託する。

8 □ 個人or ・夏休み課題としてフィールドワークフィールドワークレポートグループ の結果をまとめる。(夏休み課題)

9 □出前ゼミナール(2) 社会 ・進路指導部と協同。LHRなども用進路10 認識 い、3時間相当で実施する。希望別11 □調査研究(2) 個人or

グループ 課題 ・担当者は生徒個々の進捗状況に配慮□*研究のまとめ作成(4) 個人or 分析 し、適宜学習相談にあたる。

グループ問題

12 □プレゼンテーション演習(1) コース 解決 ・プレゼン方法の紹介と実演。□地域美化ボランティア(1) 学年一斉 ・美化委員会を中心に計画、実施。

1 □発表準備(3) 個人or ・発表時間は、1人(または1グルーグループ プあたり)7分以内。

2 □「テーマ学習研究発表会」(3) 個人or ・コース別に会場を分けて発表(1年グループ 発表力 生、保護者が見学)。発表者以外は評

価シートを用い相互評価。□研究発表会の反省・次年度「社会 HR 表現力 ・受け入れ可能な施設や事業所の一覧体験学習」希望予備調査(1) を提示するとともに、極力生徒の希望

を生かせるよう配慮する。プレゼン技術

3 □ HR ・作文を通じ自己省察を深める。ライフ・レポート:『夢と現実』HR ・自己評価シートに記入。(1)

□1年間の振り返り(1)

課題を探究する

伝える・表現する

課題を具体化する

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高等学校3学年「総合的な学習の時間」学習指導計画ウ

「トライアル学習」学習名

「自己発展・自己実現」を目標とし、実体験を通じ社会に学び、社会への参画と共生をは学習のかりながら、高い理想をもって未来にむかう生徒を育んでいく。目標

35時間学習計画

月 単元名 学習活動の内容 学習形態 学習方法と教師の支援等つ け たい力(配当時間)

4 □全体オリエンテーション(1) 学年一斉 ・概要、日程等の理解。前年度社会体験学習ビデオ上映。

□キャリア講演会:「生き方と職業につ 学年一斉 ・社会人講師による講演。講演後、感いて」(1) HR 想文記入。・グループ編成、資料配布□*社会体験学習希望調査(1) コース

保育園、病院、警察、消防、図書館、ボランティアセンター、区役社会所、動物園、農園、製菓メーカ認識ー、ケーブルテレビ、伝統工芸等(生徒の希望も加えて調整する)

□ 社会社会体験学習コース別ガイダンス(1)参画

5 □社会体験事前学習(2) コース& ・情報の収集、現地までの交通、マナグループ 進路 ーなどの確認。

意識の6 □「体験学習」第1日(6) コース 明確化 ・施設や事業所の規模や参加人数、

□「体験学習」第2日(6) コース 受け入れ先の希望などに応じた学習□報告書作成(3) コース& 形態をとる。

個人

7 □ HR ・作文を通じ自己省察を深める。ライフ・レポート①:「私の職業観」学年一斉 ・美化委員を中心に計画、実施。(1)

□地域美化ボランティア(1)

8 夏季休業

9 □「Young Message」(2分間スピーチ) HR ・概要、日程理解。前年度コンテスト準備(4) 風景のビデオ上映。

・スピーチ原稿作成。「現代文」授業(話し方)との連携をはかる。

10 □「Young Message」クラス発表会(2) HR ・評価シートで相互評価する。・クラス代表を選ぶ(3~4名)。

発表力11 *「Youn Message」各クラス代表によ 全校 ・採点表による投票でグランプリを

る、文化祭での発表 表現力 決定する□「生と死を見つめて」(2) HR& ・『生きる』は約40分のダイジェスト

グループ 自己 版。人間の生や死の意味についてグル映画『生きる』(黒澤明監督)上映設計 ープで意見交換。感想文記入。

12 □ライフ・レポート②:『過去の自分 HR ・作文を通じて自己省察を深める。・未来の自分への手紙』(2)

1 □**「i-Report」(文集)の作成 HR ・原稿は、「スピーチ原稿」や「ラ(1) イフレポート」などを流用する。

・自己評価シートに記入。□1年間の振り返り(1)

*「社会体験学習」の企画・立案や、具体的な学習の受け入れ先の選定・交渉などについては、進路指導部と

の十分な連携をはかる。

は各クラスごとに冊子にまとめる。**「i-Report」

体験から学ぶ

自己を表現する

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(3)自己認識を深めることを目的とした「総合的な学習の時間」の学習指導案

思春期から青春期前期にある生徒のなかには、過剰なほどの自意識を有する反面、明確な自己像を確立す

ることができず、手探りの人間関係のなかで懸命に自己の在り方を模索している者も少なくない。確乎とし

た目的意識をもって高校生活で自己実現をはかっていくためには、まず自己と対峙する経験を通じて自己理

解を深めることが大切である。以上のような観点から、「総合的な学習の時間」に対する生徒のモチベーシ

ョンを高め、生徒の〈主体性を育んでいく〉意味からも特に、「自己発見期」にあたる高校1年次における

学習活動を重視し、生徒の自己認識を深めていくことを目的とした単元構成を考え、それに基づいた学習プ

ランを作成した。

ア 自己認識を深めることを目的とした「総合的な学習の時間」の学習指導案①

:「エゴグラムで自分を見つけよう!」〔本時は単元名「自分と出会う」(10時間)のなかA 活 動 名

の2時間分として実施する〕

:高校1年生(40名)B 対 象

:2時間C 時 数

:ホームルーム教室D 活動場所

:教師2名によるティームティーチングE 指導形態

:エゴグラム検査用紙の質問事項に回答して結果をエゴグラムに表すことにより、生徒に自己F ね ら い

の心情・態度・行動特性などについての自己評価をさせる。また、エゴグラムの見方を学び、

その分析を通じ自己の性格に対する理解を深める。グループワークでは、他者が見る自分の姿

をエゴグラムに表してもらい、結果について意見を発表しあって相互理解を深める。これらの

活動を通じてエゴグラムの結果をフィードバックし、生徒の自己認識の一層の深化をはかり、

自発的な性格改善の努力や自己啓発的な活動へと発展させていく。

:〈第1時〉~エゴグラムの作成と自己分析(1/2)G 展 開

生徒の学習活動 教師による指導(支援・励まし)

○ 教師の説明から、 の ・精神分析学の理論に基づいていること、「まじエゴグラム〔参考資料Ⅰ参照〕概略、本時の活動内容、学習のねらい等を理解する。 めにやるほど正しい結果が出る」点などを強調す

る。

○ 各4~5名からなるグループを編成する。

○ 「エゴグラム検査用紙」に一斉に記入を行う。 ・一定のリズムで回答させる。あまり考えこまずに、直感で答えるようアドバイスする。

○ 集計作業を行う前に、教師による説明とワークシートの記述を通じ、エゴグラムに現れる五つの自我(C ・基本的に個々の数値の高低よりも全体のバラン

P、NP、A、FC、AC)についての理解をはか スが大事なこと、ただしACが高い(抑圧傾向ある。 り)場合は注意が必要なことなどについて説明す

る。○ 集計作業を行い、折れ線グラフと「※エゴグラム ・TTの2名で巡回し、生徒の疑問点などに適宜パターン」をワークシートに記入する。できあがっ 対応する(※243パターンに分類されるエゴグラム

た折れ線グラフ(エゴグラム)から、自己の性格傾 パターンについては、後日、ワークシート返却時向を分析し、ワークシートに記入する。 にその詳細を記したテキストを個々に配布する。

なお、生徒のプライバシーに触れるので取り扱いには十分注意する)。

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〈第2時〉~エゴグラムの相互作成と発表、学習活動の振り返り(2/2)

生徒の学習活動 教師による指導(支援・励まし)

○ 教師の説明から、本時の活動内容について確認す ・生徒の活動の前に、TTの教師がそれぞれのエる。 ゴグラムを公開するなどによって、このあとの活

動内容の流れを示すとともに、生徒の心理的抵抗感を緩和させる。

○ 各グループに分かれ、グループ内でメモを回し、 ・エゴグラムを構成する5つの自我の特徴や、エそれぞれ自分以外のメンバーの性格を想像しながら ゴグラムの作り方などについて再度確認するよう

エゴグラムを描き、本人に渡す。 アドバイスする。・ワークシートのエゴグラム類型図を参考にグループ全員のエゴグラムを作成させる。また、作成したエゴグラムに、それぞれ簡単なコメント(そのエゴグラムを記入した理由等)を添えるよう助

言する。○ グループのメンバーに描いてもらったエゴグラム ・ただの結果確認作業に終わらせないよう留意をワークシートの所定の場所に転記し、次いで、先 し、特に〈自己と他者〉の間で性格評価(エゴグに作成したエゴグラムとの一致点と相違点、感想な ラム)のずれが生じた場合など、その理由についどを記入する。 て十分に省察させる。

○ 各自のエゴグラムの結果やそれぞれの感想をグル ・エゴグラムは、そのときどきの各自の置かれたープ内で発表しあい、自由に意見を交換する。 状況(環境・心理状態)や年齢などによってしば

しば変化することがある点、実施時期が1年次の○ 「学習振り返りカード」に感想等を記入する。 4月で、環境の変化に順応するためのストレスに

よって、一般にACの値が上昇しがちな点などについて簡単に説明しておく。

・このように、エゴグラムを通じて自分の性格のプラス面やマイナス面を把握し、自己の個性や適性を伸ばしたり、マイナス面については積極的な自己変革をはかっていくことの必要性などについてアドバイスする。

:次時の「ジョハリの窓」ワークシートを用いたグループ演習で、自意識と他者認識の関係やH 発 展積極的な自己表出の必要性などについて、さらに考えを進めさせる。:エゴグラム検査用紙には、東京大学心療内科開発による「TEGエゴグラム」(金子書房)I 備 考など多種類がある。なお、本指導案では「TEGエゴグラム」を使用することを前提にして立

案している。また、エゴグラムパターンのテキストには『エゴグラム』(創元社)、『自分がわかる心理テストPart2』(講談社)、『エゴグラムパターン』(金子書房)等がある。

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イ 自己認識を深めることを目的とした「総合的な学習の時間」の学習指導案②

ジョハリの窓を開ける〔単元名「自分と出会う」(10時間)のなかの1時間分として実施する〕A 活 動 名:

:高校1年生(40名)B 対 象

:1時間C 時 数

:ホームルーム教室D 活動場所

:教師2名によるティームティーチングE 指導形態

:アメリカの社会心理学者ジョー・ルフトとハリー・イングラムが考案した「ジョハリの窓」F ね ら い

を元に作成したワークシートを用い、生徒の自己認識を深めていく。また、その後のグループ

活動を通じ、自他による性格考察の一致点や相違点を把握させるとともに、青年期に特有の強

固な〈自意識〉の存在や、積極的な自己表出の必要性に気づかせる。また、グループ活動を通

じてグループ内での相互理解を深めていく。

:性格の自己分析、グループ内での相互性格分析、「ジョハリの窓」ワークシートを用いた再G 展 開

自己分析、学習活動の振り返り(1/1)

生徒の学習活動 教師による指導(支援・励まし)

○ の概要、本 ・TTにあたる教師の「ジョハリの窓」実践内容「ジョハリの窓」〔 〕参考資料Ⅱ参照

時の活動内容、学習のねらいについて確認する。 などを公開し、活動に対する生徒の関心を高め

る。

○ 各4、5人からなるグループを編成する。 ・前時「エゴグラム」でも性格の相互分析を行っ

ているため、前時とは別メンバーでグループを編

成することが望ましい。

○ まず、〈自分の知る自分〉についてメモに箇条書き ・自己分析にあたっては、前時のエゴグラムの結

にまとめる。続いて、〈他人から見た自分〉につい 果(この活動の前に、各自の「エゴグラムパター

てグループ内でメモを回覧し、互いに記入しあう。 ン」の特徴を詳細に記したテキストを配布してあ

ることが好ましい)を有効に活用させる。

○ 自己分析、他者分析の共通点・相違点などを、それ ・なぜ、自分と他人の見方のなかに共通点や相違

ぞれワークシートの「開放の窓」 「盲点の窓」「秘 点が生じたのか考察させる。またTTの側から、

密の窓」に記入する。 「秘密の窓」が拡大する原因となる虚栄心や、過

剰な自意識などについて気づかせるよう、適宜ア

ドバイスを行う。

○ 「学習振り返りカード」に感想などを記入する。 ・青春期にありがちな過大な自意識と戦い、

積極的に自己を表出していく(「開放の窓」を広

げる)ことが、けっきょく自己発展につながって

いくことなどについて説明する。

・前時「エゴグラム」とあわせ、生徒に自己の性

格の特徴や適性、改善すべき点などについて十分

に考察させる。

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ウ 自己認識を深めることを目的とした「総合的な学習の時間」の学習指導案③

〔単元名「自己を見つめる」(12時間)のなかの2時間分として実施する〕A 活 動 名:Life Simulation

:高校1年生(40名)B 対 象

:2時間C 時 数

:ホームルーム教室D 活動場所

:教師2名によるティームティーチングE 指導形態

:過去を振り返り未来を予見する活動を通じ、生徒の客観的な自己認識や、生き方・進路に対F ね ら い

する意識を深める。また、グループ活動を通じ相互理解と学習のフィードバックをはかる。

:〈第1時〉~過去の自分への自己評価、自分の現状の客観的な認識(1/2)G 展 開

生徒の活動内容 教師による指導(支援・励まし)

○ 本時の学習内容、学習のねらいについて確認する。

○ の指示にしたが ・冷静にかつての自己を見つめ直し、あえて過去ワークシート〔 〕参考資料Ⅲ参照

い、過去の充実度をグラフに表す。また、それぞれの の記憶を数値化する客観的な自己分析を通じ、自

要 素の平均値を求め、結果について客観的に自己分析す 身の現状を把握・評価するとともに、問題点の具

る。 体化や改善へとつなげていく姿勢の大切さに気づ

かせる。

○ 4~5人のグループに分かれ、各自現在の自分の人

生を振り返り、ワークシートにまとめる。

〈第2時〉未来の自分の予測、意見交換、学習活動の振り返り(2/2)

生徒の活動内容 教師による指導(支援・励まし)

○ 未来の自分の生き方を想像し、ワークシートにまと ・単なる夢物語を思い描くのではなく、自分や社

める。同じ内容を付箋紙に転記する。 会の現状を把握したうえで、できるだけ具体的な

未来の像を類推するようにアドバイスする。

○ ワークシートを拡大した用紙に付箋紙を貼りながら、 ・客観的な現状の把握なしには、将来の展望を拓

グループ内で各自の人生観について自由に話しあう。 くことが容易ではないこと、またその材料はテス

トなどによって測られる学力だけではないことな

どについて簡潔に説明する。

・キャリア・プランニングを通じ、この時期に生

き方や将来についてしっかりと考察することの意

義を強調しておく。

○ 「学習振り返りカード」に感想などを記入する。

:この後に実施する「進路適性検査」によって、さらに自己の能力・適性などへの認識を深めH 発 展

させる。

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その①〈自己探求学習〉 ~「自分と出会う」

「エゴグラム」で自分を見つけよう!- Report

〔 〕 〔 〕 〔 〕組 番 氏 名

エゴグラムの結果を見る前に、エゴグラムの見方によって簡単に知っておきましょう。

わたしたち人間の性格は、親からの遺伝や、育った環境などのさまざまな要素によってつくられており、また年齢やさまざまな経験を積み重ねることによって変化していくものです。

このように複雑な要因がからみあって織りなされる自分の性格というものを、エゴグラムは簡単な質問に答えるだけで分析し、234パターンの性格類型に分類することができます。

とは?「エゴグラム」エゴグラムは、アメリカの精神分析学者エリック・バーンらによって提唱された交流分析という

理論にもとづいてつくられた性格分析検査です。、 ( ) 、「 ( 、エゴグラムは 状況や場面によって異なる人の心の状態 自我= を 5人の家族 CPe g o

NP、A、FC、AC 」の勢力関係というかたちで図式化します。その5人の家族とは、それぞ)れ次のような性格を持っているのです。

私( ) ( )CP ACCrit ical Parent A d a p t e d C h i l d批判的な親 順応する子ども

( 保護的な親) ( 自由な子ども)NP FCN u r t u r i n g P a r e n t Free Child

( おとな)A A d u l t

これら5つのタイプの自我の特徴を、次の表にまとめてみました。

C P N P A F C A Cタイプ

批判的な親 優しい親 理知的なおとな 無邪気な子 良い子特徴

・理想、目標追求 ・暖かさ、包容力 ・合理的、理知的 ・自由奔放 ・協調性に富む良い面・ルールを守る ・思いやり、共感 ・沈着冷静 ・活発で創造的 ・素直、従順・頑固一徹 ・情にもろい ・客観的 ・落ち着きがない ・がまん、妥協・厳しい、支配的 ・過保護 ・冷たく機械的 ・わがまま ・萎縮、依存的悪い面

5つの自我にはこのような特徴がありますが、それぞれには良い面も悪い面もあります。たとえばCPの高い人は、一般には活動的でリーダー的な存在として一目おかれましょうが、少々、

近寄りがたい印象を与えることがあるかもしれません。同様にNPが高い人は、優しく包容力に富んでいる一方、過保護や甘やかしの傾向も見られるでしょう。要はバランスの問題といえます。

エゴグラムは、これら5つの自我を数値化し、そのバランスから性格傾向を判断していきます。A

高い

低いC

CP優位型 NP優位型 A優位型 上・平均・下型( )( ) ( ) ( )がんこオヤジ型 良母型 クール型 ハイパワー・平凡・無気力

逆N型 M型 W型 N型(自由奔放型) (甘えん坊型) (根暗型) (優柔不断)

〈参考資料Ⅰ〉

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〈参考資料Ⅱ〉

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〈参考資料Ⅲ〉

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