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U,D.C.るる9.15.782-415
異方性珪素鋼板の磁場中冷却処理についてCoolingTreatmentin Magnetic Field forOriented SiliconSteelPlate
小柴定雄* 重本陽正** 西沼輝美** 原田英樹**
内 容 梗 概3%内外のSiを含む珪素鋼板の磁性に対する磁場中冷却処理の効果はGoldlnannらが括摘してい
るように,パーマロイやFe-NトAトCo合金などにみられるほど顧著ではない。しかし多少改善される
ことを予期し,其方性珪素鋼板に磁場中処理を行なった。実験はおもに直交配列法を用い,冷却速鼠
磁場の強さ,磁場冷却開始温度および終了温度の磁性におよぼす影響を調べた。磁場冷却は〃肌,軋
晶およびガ≦1・00gに対するβに効果がある。冷却速度はおそい方が,また終了温度は低い方がよ
く・磁場の強さは月ふ≒200gですでに効果があらわれ,また開始温度は650。c以上にて磁場をくわ
えるとはとんど差が認められなかった。〃例=32,000の約3%Siの異方性珪素鋼板はこの処理により最
高〝勒≒50,000の値を示す。またこの磁場中冷却でえられた効果は約5000C以上の再加熱で漸次消え,
600ロCで完全に失われる。
〔Ⅰ〕緒
磁性材料を磁場中冷却処理すると磁性に好ましい効果
のあることは古く1934~5年にFe-NトCo およびFe-
Ni合金について,Kelsa11(1)およびDillinger&Bo-
ZOrtb(2)によって知られた√「当時すでにこの処理法はた
ゞちに珪素鋼板にも利用され,1937年にはその効果が発
表されている(3)(4)(5)。最近ほSi6%以上の珪
場冷却に研究が進展しているようであるが(6)(7)(8)(9),い
ずれの場合も系統的にこの処理効果をしらべていないよ
うである。
本実験は約3%Siを含む非常にすぐれた磁性を示し
ている0・35工nTn厚異方性珪素銅板にどのような磁場中
冷却処理がもつとも有効かを調べたものである。
〔ⅠⅠ〕実験 方 法
実験装置および試料
.1l および回路を弟1図に示す。常に酸化を防ぐ
ためH2中で処理できるようにし,冷却速度はブロアー
と直流による加 で制御した。加熱に利用した直流ほ方
向に注意し加熱コイルの巻数から加 しなかったときと
同じ磁場の強さとなるよう磁化コイル中の電流を加減し
た○炉内磁場の強さほ大略(1)式で示され,中央部に
380mmの均一部分を持っていた。
ガ=0血(症+扉ヵ)二】・1・4×(ip+0.16り……(1)
こゝで 乃√,:
据ゎ:
ト:
J.:
磁化コイル1cm当の巻数(=9.1)
加熱コイル1c皿当の巻数(≒1.45)
磁化コイル内 流(A)
加熱コイル内電流(A)
磁性の測定は25cm凡5.導磁率計を使用した。
試料の化学成分を弟1表に示す。なお脱炭処理,最終
*日立金属工業株式会社安来工場 工博
**
日立金属工業株式会社安来工場
焼鈍を行い,0・35×10×260mmにした異方性珪素鋼板
で,寸法比を小さくし,有効磁場をますよう凡5.導磁
率計で測定できる最低枚数8枚を一組とL子二。さらにこ
試料 ステンレス頗
第1図 磁場冷却実験装置お よ び回路Fig・1.Experimental Apparatus and Circuit
Of Magnetic Cooling
試 料 の 化 学 成 分(%)ChemicalCompositionofSamples(%)
炉 内 磁 場 の 潰 さ
Magnetic FieldinFurnace
37.0
*
7650Cは約3%Si鋼のキューリー点
日 金 属 特 集
れを18-8 ステンレスで4枚ずつにわけ,2.5×10×250
mmの電磁軟鋼板で両端をしめつらナ, 料の変形を防ぐ
とともに反磁場を小さくするようにした。
このような 料に上記の外部磁場 践ご を作用させた
場合の特に高温における有効磁場の強さ凡打が当然問
題になるが,本報においては常温におけるガげ′のみを
実測し第2表に示した。たゞし実測の方法は凡5.導磁
率計にて測定した磁化曲線より gβ〝を逆算したもので
ある。さらに試料は種々の磁場中冷却処理を行なったの
ち,約10ぐC/minの炉冷を行い,100OC前後にて空中に
攻り出した。
(2)実験計画
弟3表のごとき予備実験を行い,それから磁場冷却処
理効果が現われる可能性ある条件として磁場を加えてい
る問の冷却速度,磁場の強さ,磁場冷
却開始温度および終了温度の4要因を
とり,各々3水準をもつ直交配列法で
実験をすゝめた=実験計画は第4表の
通りである。また確認実験の意味で冷
却速度を連続的にかえ,成分,圧延工
程の異なる資料についても実験を行つ
た。直交配列法に使用した試料はNo.
第2集
(空こや童
戯7J(み)〟ey
第2図 磁 場 の 威 さ の 影 響
Fig.2,Effects of Magnetic Field to
Magnetic Properties
予 備 実 験
Preparatory Experiments
011,成分および圧延工程を異にする試料はNo.011お
よびNo.012である。
〔ⅠⅠⅠ〕実験 結 果
(1)直交配列法による結果
実験内容および磁性の変化率を--一一括して弟5表に示
す。この結果より 〃隅,βr,晶,乱5およびβ1に関して
分散を計算して弟5表に示した.。この値より測定値の平
第 5 表
Table5.
第 4 表
Table4.
Levels
30,000
31,000
38,000
39,000
実 験計 画,安 国 および水準
ExperimentalPlan,Factors and
\\ヂ困水準∵\、
0
1
磁場冷却終了(OC)
A
南 交 配 列 法 に よ る 実 験
ExperimentalResults by Orthogonal
結 果
Design
異方性珪素鋼板の磁場中冷却処理について
ヾ∵
㌧
h、
処理セナ
、-ヽ-、、・、
開始温顔(℃J
第3図 磁場冷却開始温度の影哲Fig.3.EfEects of Starting
Temperature for Magnetic
Cooling to Magnetic Pro-
perties
(8)受
(℃さ、、句、童搭
〃
月
77
〃
っJ
フL
毛王、童
すき≡ミ
(下笹ご∈卑
タ グ ∫ 7 タ 処王電せず
冷まロ速席(℃′如〃)
第4図 冷却速度の影響(その一)Fig.4.Effects of Cooling Ve-
locitytoMagneticProperties
(Partl)
J J 7 ∫ 処壬雪
冷餌逗蜃〔℃.../ホ川)せす
第6図 冷 却 速 度 の 影 響(その二)
(試料No.012,7400→4500C月ぞJ≒800e の
磁場冷却)Fig.6.Effects of Cooling Velocity to
Magnetic Properties(Part2)(Sample No.012,7400→450PC Magnetic
Cooling at HeJ・800e)
均を求め,弟2図~弟5図に示した〔.
結果はつぎのようにまとめうる.。
(a)磁場冷却効果は分散より見て〟三~10eの動こ
のみ効果があり,特に/ノ加,玖,β′に顕著である。
(b)磁場中冷却速度はおそい方がすぐれている。
(c)磁場中冷却終了温 ほ低い方がすぐれている。
(d)磁場の強さはこの実験範囲ではあまり顕著でな
い。.
\(e)磁場中冷却開始温度ほあまり顕著ではないが,
-∴・、、‥ ・-、-
ご:ニ
せす
終7退席(℃)
李≡
′童こ磨
(台)宝
第5図 磁場冷却終了温度の影響
Fig.5.Effects of Ending
Temperature for Magnetic
Cooling to Magnetic Pro-
perties
不 偏 分 散 の 値
Values of Variance
750ウCで最高を示L7700cではかえって低~Fする。
(2)確認実験の結果
葬る図に磁場冷却 度の影響を別の圧延工程である
No.012試料で740ロC より 4500cまで月ふ≒800eを
加え実験した結果せ示した。直交配夕り法による結果と大
差ないが,β1にもわずかに効果が認められる。
さらに成分の異るNo.011試料にも同じような処理を
行い,第6表に示すようにNo.011およびNo.012
料とほゞひとしい結果をえた。.
(3)磁場冷却効果の消失
このような磁場冷却でえられた磁性はH2中で再び加
熱すると,弟7図のごとく減少する。
〔ⅠⅤ〕莞 察
磁場冷却効果の原因は効果の大きいFe-AトNi-Co合
金とパーマロイを中心に研究がつゞけられている(10)。
前者の単磁区構造をもつ細長い強磁性析出物の発見(11)
後者の規則格子の発見(12)や規則,不規則相濃度差の検
出(13)など物理冶金学として興味ある問題が多い。珪素
鋼の場合は後者と 似の考察がなされよう。本実験の結
日
り.、
り㌧
(竜)車
(塁)童
〔屯
ヾ㌧㌧㌧、
金 属 特 集
勉理 槌冷 仰 仰せデ 風王竺
温 度(℃)
よご.-
第7図 磁場冷却効果の再加熱による消失Fig.7.Vanishment of Magnetic Cooling
Effects by Reheating
果は約3%SiDヽ
ノが板鋼 ーマロイほど磁場冷却効果
のいちじるしくないことを示しているが,その理由は磁
化機構をある程度表示する第(2)式により説明され
る(14)。
8汀J2g
一び0=~う~~~扁こゝで 拘:初 磁率
ム:飽和磁気の強さ
ス:磁歪定数
げg:内部応力
奥方性定数が大きくとも磁場冷却により磁区を磁場の
方向にそろえると,磁化ほほとんど1800 磁壁の移動で
すゝみ,その機構は磁歪と内部応力の関係した第(2)式
にて表わされるが,約3%Si珪 鋼ではス≒5~7×10~6
であるため効果が顕著でない。Si6~7%となると ょ≒0
となり大きな磁場冷却効果のあることが報告されてい
る(15)。
180P磁壁の固定のためには結晶主軸に沿っている磁壁
を磁場方向にそろえるためある程度以上の強さの磁場を
キューリー点以下でできうるかぎり長い間,かつ低温ま
でかけておくことがのぞましく,なるべく低温まで徐冷
確 認
012
211
号 第2集 別冊第16号
するのがすぐれているという実験結果を説明している。
磁場冷却iこより180Jにそろった磁壁は再加熱される
と以前の位置にある結晶主軸に漸次沿うようになり,磁
性は再加熱温度とともに処理前の値にもどる。
月ふ≒200e での効果が磁場のさらに強い場合と大差
ないのは,この磁場冷却効果が容易なスピン変換による
180ロ磁壁をそろえるにあることを示し,強磁性析出物が
原因する場合と大いiこ異なっている。
成分およごご圧延工程が異なれば異方性定数乾磁歪係
数スなどすべての物理量が変化するが,弟7表の結果は
これらの効果か, またほ処理前の磁性自体の影響かは判
然としない。しかしいずれの場合もこの程度の処理で約
30%〃別を増加することが確認された。なお弟る図より
処理前の/′研=32,000のものを十分徐冷する磁場冷却を
行えば一r′肌≒50,000をうることが推定される。
〔Ⅴ〕緯 言
(1)約3ア;Siの異方性珪素鋼板にも磁場中冷却処
理ほある程度有効である。
(2)効果の顕著に現われる磁性は 耳≦1.00β に対
するβト乱・,ガ・㍉およぴ/摘であり,なかでも/~肌はも
つともいちじるしい。
(3)磁場中冷却速度はかなり顕 に(2)に示す磁
性およびβ1iこも若干影響をあたえる。遅い方がすぐれ
ている。
(4)磁場の強さほ晶J>200gであればはとんど差
がみられない二 Lかしさら
月々′′であろう。
要なのは高温における
(5)磁場Hl冷却開始温度はキューリー点直下の場合
がもつともよい。
(6)磁場中冷却終了温度は低い力がすぐれている。
(7)磁場中冷却によりえられた磁性は約500コC以上
の再加熱で漸次失なわれ,600じCで完全に消失する。
(8)(1)、(7)の結論は磁壁の方向性にこの磁場冷
却効果がある点で理論と一致している。
(9)以上の結論にしたがって処理すれば約3%Si,
.甘肌≒30,000程度の異方性珪素鋼板を〃仇≒50.000まであ
ExperirnentalResults
験 結 果
Of Confirmation
異方性珪素鋼板の磁場中冷却処理について
げることができる。
最後にこの報告を終るにあたり本実験遂行に種々御助
言いたゞいた日立製作所日立研究所渡辺勇司主任に深謝
する。
参 鳶 文 献
A.Kelsall:Physics 5,169(193il)
S.F.Dillinger,R.M.Bozorth:Physics 6,
279(1935)(3)S.A.Milner:A.P.Kljutschew Shurnal
TechnitchesshoiFisiki7,371(1937)
(4)I.Gigoluk:NovastiTeehniki6,29~30
(193ア)
(5)0.Grechow,P.Gluschkowa:Stah18.40
/
「tノ\(′、(/∴し′、√/\(、(.(′l√′\/t′′・((・/
(・′\
殊
~46(1938)K.Mibara:ATIS No.3380
M・Goertz:J・Appl・Phys.22,964(1951)H.Fahlenbrach,W.Heister:Stahlu.Eisen,
73,1644(1953)
白川,雨宮= 日本金属学会講演集(1955~10)近角‥ 物理学会誌(1956~3)
E・A・Nesbitt,R.D.Heidenreich:J.Appl.
Pbys.23,3(1952)0・Dahl:Zeit Metallkde,28,133(1936)J・M・Hastingニ Rev.Mod.Phys.25,54
(1953)
茅:強磁性,131(1952~5)
J.E.Goldmann:Rev.Mod.Phys.25,53
(1953)
鋼
日立金属工業株式会社冶金研究所長工学博士
小 柴 定 雄 著
B列 5判 317頁 定価850円
本書は著者の約20年間における特殊鋼にかんする研究と経験を基とし,特殊鋼全般について記述したも
ので,その内容としてほ,まづ特殊鋼の 造法,つぎに熱処理にかんする基礎的事項を詳細に述べ,さらに
合金元素別により特殊鋼の基本的性質ならびに特に実用特殊鋼の種類,熱処理,性質およびその取扱などに
重点を置いて記述されている。
また重要な特殊合金材料についてもその概要を記述し,実際製造上および使用上の参考に資するため鋼塊
および鋼材の欠陥とその防止法ならびに試験換査法などについても記述されたものである。以上の通り本書は特殊鋼の製造者研究者,および使用者などの各機械電気 冶金,化学などそのほかの技
術者の好伴侶となるものである。
発行所
発 売
Vol.38 日 立 評 論
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◎逆転式熱間圧延機電気設術の自動制御〔1〕
◎日立800mmホプ盤について
◎油冷式多翼型回転圧縮機について
◎日立GSA-6塑戸ジメ機械について
◎事柄における点熔接の活用
◎ストロージャスイッチの改良(その2)
◎送信用真空管静掛性直視測定装置
◎酸化物陰極のスパーク発生機構について
◎伸株用WGダイスの放電加工
◎フェノールノボラックの加熱量特性
◎12%Cr系耐熱鋼の熱処理硬度および高温機械的
性質におよぼすW,Ⅴ,TiおよびMo+Ⅴ+Nbの
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誌代1カ月 ¥60(〒12)
東京都千代田区丸の内1ノ4(新丸ビル7階)
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